幹細胞治療

幹細胞治療について

「再生医療」とは？

以前までは損傷した臓器の治療法として臓器移植や人工心臓などの研究が盛んに行われてきましたが、感染や免疫反応など様々な問題があり、近年は再生治療が注目されています。
再生治療とは、身体機能を失った部位を医学的に再生させ、その部位の機能を修復する治療方法のことです。
見た目だけではなく、損傷以前と同程度の機能を再生させなくてはなりません。
特に肝臓や腎臓などの多種の細胞で成り立つ複雑な組織を再生させるには、多くの技術を要します。

再生医療の分野ではこれまでに、生きた細胞や人工材料、遺伝子を入れた細胞などの様々な材料を用いて、高度な医療技術を駆使して損傷部位の再生に注力してきました。

当院で移植する細胞は、患者様ご本人から採取した「幹細胞」を用いる治療法です。
あくまでご本人の細胞なので、多くの合併症のリスクを軽減できます。

「幹細胞」とは？

幹細胞とは、まだ何色にも染まっていない細胞であり未分化な細胞のことです。
幹細胞は各細胞に分化してそれぞれに見合った形態や機能を獲得し、組織を作ります。
その結果、数十兆個の多様な細胞が集まって人体が構成されています。

この幹細胞には「①自己複製能力」と「②多分化能」という特殊な能力が存在します。
①自己複製能：自分と同じ能力を持つ細胞に分裂する能力、つまりコピーを作り出す能力
②多分化能：皮膚、血液、神経、血管、骨、筋肉などの様々な細胞に変化する能力
これら2つの特殊能力から、人体の再生において幹細胞が注目されているのです。

例えば火傷で損傷した皮膚は、その後幹細胞が分裂を繰り返すこと（自己複製能）で増殖し、さらに皮膚の細胞に分化（多分化能）して、徐々に新しい皮膚が作り出され再生していきます。
さらに幹細胞の分泌する生理活性物質が炎症を抑えて血管新生を促すことで、細胞の増殖や組織の再生をさらに促します。
つまり「幹細胞」とは怪我や病気、老化などによって損なわれた細胞を新しく修復し、組織機能を回復させる働きを持った細胞のことです。

これだけ聞くと、自分の幹細胞がどんな損傷でも再生してくれるように思えますが、実際はそうではありません。
広範な損傷の場合、体内の幹細胞が増殖する足場を作れず、かつ量も不足しているため再生するにはパワー不足です。
そこで自分の幹細胞を増殖させて外部から注入する幹細胞治療が注目されているのです。

「幹細胞治療」とは？

自分の幹細胞を採取して細胞培養・増殖させ、その幹細胞を再び体内に戻す治療です。
幹細胞治療のポイントは大量の幹細胞による組織再生と、幹細胞から分泌される生理活性物質の副次的効果の2点です。
投与された幹細胞により、体内の修復を要する組織の再生を促し、生理活性物質が分泌されることで抗炎症作用や、異常な免疫の抑制など、損傷した細胞や老化した細胞の修復が期待できます。

幹細胞治療で改善する疾患・症状

〜幹細胞治療効果が示唆されている疾患・症状〜

心臓の病気：心筋梗塞

血液や血管の病気：白血病などの血液の癌、腎不全初期、糖尿病などの下肢の虚血、その他血管が病気になってくる病気全般
神経の病気：小児麻痺、認知症、脳梗塞、パーキンソン、ALS、脊髄損傷
骨・軟骨の病気：リウマチ、変形性関節炎
その他の疾患：糖尿病、肝臓病、免疫疾患（難治性の膠原病）、ぜんそく等

予防的効果：疾病の予防、体全体の若返りなど

幹細胞治療は新しい技術のため、まだ全てが解析されているわけではありません。
幹細胞治療の効果は非常に広範囲に渡ることが解ってきていますが、現制度では副作用が極めて少なくかつ治療効果が認められている疾患に限り個別に治療認可が厚生労働省より与えられています。
例えば、テルモ株式会社から発売されている「ハートシート」は既に認可が下りています。
これは大腿部から採取した骨格筋芽細胞（筋肉の元となる細胞）を特殊な技術でシート状にして、心筋梗塞によって壊死した心筋に直接移植する治療法です。
これによって壊死した心筋が再生し心機能を回復させることが可能です。

また、幹細胞治療には様々な副産物があることも解っています。
幹細胞から分泌される多種多様な「生理活性物質」と呼ばれる物質が、血管の修複や血流の改善、痛んだ細胞の再生に伴うアンチエイジング効果、抗炎症作用による創傷治癒促進、抗癌作用など様々な効果をもたらすのです。
下記のイラストのように、幹細胞治療は多くの効果が期待できるのです。

・動脈硬化血管の修復