この記事の監修者 | |
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塩澤宝<腸活薬剤師> | 東北医科薬科大学を卒業後、薬剤師として調剤薬局 チェーンで勤務。現在は腸活講師育成スクール 「腸活パズル」主宰。「一般社団法人日本腸活協会」 代表理事を務める。 |
自宅でぬか床を作成するには、一見複雑そうに思えるかもしれません。
よく言われるのは「毎日混ぜないといけないんでしょ?めんどくさそう。」
ところが、必要となる成分と作り方は驚くほど簡単です。
自作ぬか床の材料(2~3人分の適量)
- 生ぬか: 1㎏※
- 水: 1リットル(ぬかの量と同じ)※
- 塩: 130g(ぬかの量に対して13%程度)※
- 昆布: 5㎝角のものを3枚※
- 唐辛子: 2本※
- かつお節: 約8g※
- 煮干し: 5匹分
乾燥したシイタケ: 少量(あれば入れてください)
捨て漬け用の野菜: 必要に応じて(詳細は工程2を参照)※
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それ以外はなければないで入れなくても発酵ぬか床を作ることは可能です。
【はじめに】ぬか床の作り方
初めてのぬか床作成に挑戦する際に、まず必要となる基本的な成分は以下の通りです.
“米ぬか、塩、水、昆布、かつお節、そして唐辛子”。
ぬか床作りにおいては、”生ぬか”が最も適していて、これは”炒りぬか”よりも好ましいです。
市販の煎りぬかの多くは、かなりの高温で処理しているため、味も匂いも栄養価も低下しています。生ぬかは精米から3日程度で酸化していくのでできれば精米したての生ぬかをご用意ください。ご自宅で精米している方はそれで結構ですし、ご近所のお米屋さんに聞いてみると良いでしょう。鮮度の良い糠の用意が難しい場合は市販の煎りぬかでも対応可能です。
塩については、ミネラルが豊富なものを選ぶと良いです。食卓塩というようなNacl(塩のみ)しか入っていないお塩は、ぬか床以外にも健康を意識した生活には向きませんので、塩はカリウム(K)、マグネシウム(Mg)などいろんなミネラルを含んだお塩を使いましょう。
水は浄水器を通したものやミネラルウォーターがお勧めですが、そこまでこだわる必要はありません。また、昆布とかつお節は味の深みを追加するため、唐辛子は防腐効果と風味の強調のために加えます。昆布はグルタミン酸、かつお節はイノシン酸が入っていて、ぬか床自体の味がとてもよくなります。
※昆布、かつお節、唐辛子については、一般的なスーパーマーケットで見つけることができるもので問題ありません(唐辛子は種を含めたものを使用しますが、もし手に入らなければ輪切り唐辛子でも大丈夫です)。
更に、ぬか床を作り始める段階からプラスしたい成分として、「煮干しと干し椎茸」(旨味を増加させるため)、「実山椒」(防腐性と清新な香りを加えるため)は香りがよくなる一方で独特な匂いでもありますので、スタンダードな発酵ぬか床を最初目指す際はいれなくてもよいでしょう。
また、始める際に必要となるアイテムとして、食品保存に適したホーロー容器やプラスチック製のタッパーなどの蓋つきの容器や、ぬか床に新しい地域の善玉菌を増やし、初期発酵を促すための捨て漬け野菜も用意します。野菜には自然の中にある菌が住んでいるのでそれらをぬか床に移植していく作業として必要です。捨て漬け野菜はキャベツの外葉、大根の皮、大根の根本の葉っぱの部分、人参の皮、ブロッコリーの芯、白菜の芯、捨て漬けという名の通り、捨ててしまう野菜を用意しましょう。
初めてのぬか床:初期段階の混合作業と捨て漬けについて
【ぬか、塩、水を混ぜてコネコネする】
生ぬかを適した容器やボウルにセットし、最初の段階として塩を混ぜ込みます。一度全体を大まかに混ぜ合わせたら、次に水を加えてさらに混ぜます(この時点で、水のうち50~100mlほどは後の作業のために残しておきましょう)。※初めての試みだと混ぜ合わせるのが難しいかもしれませんが、しっかりと全体を混ぜ上げるように底からかき上げながら、同時に握りしめることでぬかと水をきちんと混ざっていきます。この過程で重要なことは、ぬか全体に水が均等に行き渡ることです。
混ぜる際、手袋などは使わず、素手で作業をしてください。
混ぜ合わせる作業を両手で進め、全体が均一に混ざり合ったところで、水分の含有度を確認します。基本的には、全ての水を使ってしまっても良いと考えて差し支えありませんが、水分が過多となり泥状になりそうならその時点で水を加えるのをやめましょう。適切な水分含有量の目安は、握った時に指と指の間から水分がすこしだけにじみ出る程度です。耳たぶの硬さやお味噌くらいに調整していきましょう。
明確な判断が難しい場合は、用意した水の全量を使っても問題ないと覚えておいてください。
水分量は多すぎても雑菌バイキンが繁殖しやすくなりますし、少なすぎると善玉菌・乳酸菌の繁殖ができづらくなり、ぬか床環境に影響大です。最初は水分の感覚はなかなかわからないとは思いますが、動画を参考にしていただき、ぬか床生活をしながらご自身の感覚を養っていきましょう。
【ぬか床に旨味を追加】
ぬか床の基本ベースが完成したら適切な保存容器へ移します。この段階で、まずはかつお節、唐辛子、乾燥した椎茸などをぬか床に風味を追加します。ただし、最初の段階で大きくて混ぜ込むのが難しい硬い昆布や煮干しは、混ぜ終わった最後にトッピングとして使用します。
次に、ぬか床が発酵を始めるための「善玉菌・乳酸菌などの種菌」となる捨て漬け用の野菜を追加します。今回使用するのは、キャベツの外葉、大根と人参の皮、大根の茎と根部、そして白菜の芯です。ご自身の素手にもご自身を守ってくれている菌が存在しますので、怪我や傷がない場合は素手でぬか床に触ってあげてください。
さらに、カブの皮や葉などのいつもは捨ててしまう部分、固くてあまり食べないブロッコリーの芯なども効果的です。基本的には、きゅうりやなすなどのアクの多い野菜は避け、そのまま漬物にすることで美味しくいただけるものが適しています。しかし、特別に必要な野菜はなく、冷蔵庫に残っている野菜であれば、どれでも適応できます。
無理に捨て漬け用の野菜を準備するのではなく、料理をしながら出た野菜の切れ端などをいれていくとよいでしょう。
全ての捨て漬け用野菜が加えられたら、ぬか床の表面を手のひらや手の甲で上から押し付け平らにし、空気を抜いていきます。最後に硬い昆布と煮干しをぬか床に埋めれば完了です。昆布や煮干しはぬか床の端っこに突き刺してもOKです。
そして、密封する前に、手のひらでぬか床の表面をしっかりと押し、空気を排除します。この作業は、ぬか床の中に住む乳酸菌や酪酸菌が最適に活動するために必要な、酸素が少ない状態を作り出すためです。酵母菌、乳酸菌、酪酸菌などがぬか床の中に住み着きますが、酸素が好きな菌と、酸素が嫌いな菌がいるのでぬか床を最後押して空気を抜くのは菌の環境を整えるためです。
最終段階では、保存容器の周辺のフチの部分や内側を清潔に保ち(できるだけ清潔な布で拭き取ると良い)、蓋をして、初期のぬか床の準備を完了します。ここから、捨て漬けの手順を定期的に繰り返し、ぬか床を健康的に育てていきます。捨て漬けの野菜は4~5日ごとに入れ替えをしていくといろんな菌が入るので、定期的に入れ替えをしていきましょう。
すでに発酵している熟成ぬか床の種菌を入れた場合、早い場合は1週間で発酵がはじまります。
今回お伝えしている方法は、種菌なしの方法ですので混ぜて、捨て漬け野菜を入れての繰り返しを半月~1ヶ月程度続ける必要があります。
話を元に戻し、これらの手順を踏むことで、ぬか漬けの美味しさを最大限に引き出すためのテクニックや、厳選された食材の使い方を学ぶことができます。そして、自分だけのぬか床を「育成」することで、その独特の風味と楽しみを最大限に体験することができます。
自分が最初から育てるというのはぬか床以外でも楽しいですし、愛着が湧きますよね。
ぬか床に入れると美味しくなる食材:隠し味から市販の美味しくするアイテムまで
“オススメの隠し味:調味料と野菜の組み合わせ”
隠し味の一般的なものは昆布、鰹節ですが、その他のものとすると、かつおぶしを入れたり、干し椎茸がおすすめです。
かつおぶしはイノシン酸、干し椎茸はグアニル酸です。
旨味成分は一種類だけでなく組み合わせることで相乗効果を発揮するため、ぬか床の味の深みを追求したい場合は、複数旨味を組み合わせてみましょう。
旨味成分だけでなく、野菜から出てくるエキスも芳醇な香りと旨味に変化してきます。
それがわかる理由の一つに、野菜を漬けずに継続的にぬか床だけを混ぜ、熟成した場合と、いろんな野菜を入れてぬか漬けをしながらぬか床を育てた場合、圧倒的に後者の野菜を入れて育てた糠のほうが、複雑な旨味を醸します。
科学的な旨味の組み合わせも良いですが、毎日おいしくいただき、季節のお野菜でぬか漬けをすることで、ぬか床内の微生物がたくさん繁殖し、乳酸菌生産物質やビタミンなどを作り出すことで旨味が増えていくのでしょう。
“市販品で美味しく:試しに使った話題のアイテム”
市販しているぬか床アイテムとして、メンテナンス用の水抜きグッズがあります。
ぬか床に突き刺すだけで、中に水分が溜まってぬか床の水分量調整には使いやすいアイテムです。
ぬか床の量が少ない場合、使いづらいかもしれませんが、毎日つけるハードユーザーさんの管理にはおすすめです。
次に紹介したいのが鉄卵です。
ぬか床の中に上図の鉄の塊を入れることで、ぬか床の中に鉄分が溶け出し、栄養価があがります。現代人の特に閉経前の女性や子どもは鉄不足の状態が多いと言われています。
ヘモグロビンの値もそうですが、フェリチンという貯蔵鉄の値が低いのは、子どもの成長やココロの安定などに役立ち、鉄分は体内の様々な機能に必要なミネラルです。
ぬか床に入れるだけで補給できるので、非常におすすめなアイテムです。
ぬか床の量が少ないと、野菜を埋めるときにじゃまになるので、薄型タイプの鉄卵を選ぶか、ぬか床の量を増やすとよいでしょう。
“熟成の秘訣:時間と温度で変わる美味しさ”
ぬか床の味の変化はやはり時間と温度帯です。
弊社はぬか床のメーカーとしてぬか床を取り扱っていますし、個人としてぬか床を楽しむ1人として、芳醇な香りに変わってきた瞬間というのはなんともいえない喜びです。
封を開けたての若い感じのぬか床も悪いわけではないのですが、2~3ヶ月毎日お手入れしていくと、ある瞬間から突然芳醇さをまとい、自分だけのぬか床になってきます。
その際に温度は20~30度くらいのそこそこの温度があったほうが早めにぬか床も熟成が進んできます。
【捨て漬け後のメンテナンス方法】
ぬか床の捨て漬け後の作り方とメンテナンス方法について細かく解説します。最初に捨て漬け野菜を加えたぬか床は、始めの10日間は一日に二回、ぬか床全体をよく混ぜて下さい。その後の10日から20日間は、混ぜる回数を一日一回に減らしてください。
捨て漬け野菜の入れ替えは、おおよそ4-5日ごとが良いタイミングです。交換する際には、ぬか漬けにした野菜からぬかを取り除き、そしてその野菜からしっかりと絞り出した汁をぬか床に戻します。この野菜から得られる汁が、ぬか床の味わい深さに寄与しますので、必ず絞るようにしてください。新たな捨て漬け野菜が必要になったら、新しい野菜を追加し、このサイクルを大体3回繰り返します(全体として約12-15日間の漬け込み期間)。
捨て漬け期間が終了した後でも、ぬか床の手入れは続けてください。初期の10日くらいで乳酸菌球菌が増殖しその後酵母菌、乳酸球菌が増えてきます。10日経過後は一日一回混ぜることで米ぬかの栄養を菌に回すのと、酸素が少ないぬか床環境状況を作り出し、乳酸菌の増殖を促進します。
室温が20-25℃の環境で2週間を過ぎると、ぬか床は酸味が増し、最初の味よりもぬか床らしい味に変化してきます。この時点でお好きなお野菜を漬け始めることで、まだすこし若いぬか床ですがそれはそれでいましかないタイミングの漬け物ですので楽しんでいきましょう。20~30日程度では、気温や環境によりますが十分に美味しいぬか床になってきます。
美味しいぬか床ができたら覚えておくべきことは、①ぬか床の風味(塩味、酸味、香り)を覚えておくこと、そして②そのぬか床の柔らかさ(水分量)を記憶しておくことです。
ぬか床を長期間使用すると、野菜からの水分でぬか床が水分過多になったり、塩分が不足したりすることがあります。そのため、直接ぬか床を味見して、その味を記憶しておくことが重要です。通常塩分濃度は5%~8%程度が美味しいぬか床ですが、一度漬け始めたぬか床は野菜の水分で薄まったり、たしぬかで水分や塩分濃度が日々変わったりするものなので、自分の舌や鼻の感覚で覚えていくことが一番です。ぬか床に水分が増え柔らかくなった時は、適度に生ぬかや煎りぬかなどを追加して整えます。これらの詳細は、ぬか床の手入れに関する一般的な質問と答えのセクションで詳しく説明しています。
これらの要点を理解して、ぬか床の作成と管理を進めていけば、自家製のぬか漬けは一層美味しくなるでしょう。ご自身や家族、地域の菌が元気に生きている手作りのぬか床を使った美味しいぬか漬けの楽しみを、ぜひ体験してみてください。
【発酵したぬか漬けの野菜の漬け方とその保存法】
発酵したぬか漬けのメンテナンス・漬け方
つける野菜を用意し、きれいに洗った野菜に塩を振り、軽く揉むことがポイントです(これはきゅうり、人参、大根、茄子、オクラ、長芋などに適用します)。塩を揉み込むことで野菜の表面に傷が付きぬか床に浸かりやすく効果や、酸化を防ぎ漬け上がりの色彩も鮮やかになります。また、時間を短縮したい場合は、野菜を半分に切ったり、皮を一部剥いたり、切る断面を工夫して表面積を増やすことで漬け時間の短縮をすることができます。
※例えば、きゅうりをそのまま漬けると8時間程度かかりますが、半分に切ってから漬けると4時間~6時間程度で浸かり、漬ける時間は大きく短縮できます。
発酵ぬか床の保管法
ぬか床の発酵は温度により大きく影響され、特に30℃を超えると、異常発酵を起こす可能性があります。そのため、暑い夏季には冷蔵庫で保管することが推奨されます。その方法と利点については「ぬか床の冷蔵保管の方法」で詳しく解説しています。
ぬか床Q&A
容器の選び方、風味を引き立てる素材の選び方、ぬか床に追加するぬかの方法、不在時や長期間の休止時の管理法などについては、「ぬか床の保守と管理Q&A」で詳細に解説しています。
【補足情報】
ぬか床を始めるのに適した季節は初夏と秋です。これは、室温が25℃程度の時期がぬか床の発酵が進むのに最適だからです。ただしエアコンが普及している現在では室温は一定で有ることが多く、適した季節でなくても問題なく始めることができます。
ぬか床を混ぜる際には、直接手で触れるのが最良です。ゴム手袋等は臭いが移りやすいので避けるべきです。ネイルなどの爪に装飾がしてある場合や、手に傷や怪我、アトピーなどの肌が弱い方は無理に素手で触らずに、ゴム手袋やポリ手袋などを装着してかき混ぜるようにしてください。ただしこの際はご自身の手からは乳酸菌などの菌が入らないので基本は素手がおすすめです。
【発酵ぬか床作りのための容器と原材料のアドバイス】
ぬか床の作り方には、容器のサイズが大きな影響を与えます。例えば、1㎏のぬか床を準備する場合、容器には3-4Lの容量が必要です。2㎏のぬか床を考えているなら、6-8Lの容量を持つ容器が適しています。容器が小さすぎると、混ぜるのが難しくなり、ぬか床がこぼれる可能性もあります。横に広い容器を用意してしまうとぬか床の厚さ(深さ)が足りず、漬けづらくなることがありますので、深い容器がおすすめです。
1名~2名で楽しみたい場合はぬか床は1kg程度。
3~4名で楽しみたい場合はぬか床は2kg以上がおすすめです。
さらに、容器の素材も重要なポイントです。食品用のプラスチック、ホーロー、ガラス、陶器など、何でも適応可能。ただし、蓋付きのものが最適で、匂いが漏れることなく、虫などが入り込むのを防げます。
たまに聞かれるので私の使っている容器についてご紹介します。(特にPRとかではありません)
私は野田琺瑯さんのぬか漬け美人 日本製 TK-32というホーローを使っています。
大人二人で楽しむくらいだとこの大きさがとても使い勝手がよく、暑い夏場は冷蔵庫に入れられますし、キッチンに置いておいてもスタイリッシュでお気に入りです。
私のオススメは、直接お米屋さんから生ぬかを手に入れるか家庭用精米機で精米したての生ぬかを利用する方法です。生ぬかは酸化しやすいので、買ってすぐにぬか床に混ぜ込むか、保管が必要な場合は冷凍してください。煎りぬかは保存が容易であるという利点がありますが、加熱により酵素やビタミン、風味が減少するため、生ぬかの方が優れています。
ちなみにうちの会社でも発酵ぬか床を開発していますが、煎りぬかを開発しようとチャレンジしたところ、かなりの糠の量を集め、長時間じっくりと炒る作業が必要で、水分が相当量飛ぶためコスト的に難しかった経験があります。簡単にフランパンで炒るというレベルでなくきっちりと水分を飛ばす工程は、相当な熱量がかかるのを目の当たりにして、生ぬかを使った発酵ぬか床の開発に至りました。(開発秘話)
弊社で開発しました発酵ぬか床、たしぬかは生ぬかを使った商品で、煎りぬかと比べると糠の風味が生きている商品ですので、もしご興味がありましたらネット通販サイトよりご利用ください。子ども食堂支援など社会貢献のぬか床でもあります。
ぬか床に必要な材料はそれほど多くはないため、塩や水についても慎重に選ぶと良いぬか床環境が得られます。塩については、精製塩よりもミネラル等が豊富に含まれている自然塩が良いでしょう。一番選択してほしくないのは食卓塩のNACL塩のみが入っている安価なお塩です。とはいえ、とても有名なミネラルたっぷりの超高級塩もネット通販などで購入することができますが、普段使いのぬか漬けにこういった高級なお塩を利用するのもこだわりすぎな面があります。各家庭で経済状況が違いと思うので一概には言えませんが、お塩の裏面を見て、マグネシウムやカリウム、カルシウムなどたくさんのミネラルの表記がある手に取りやすいお塩をご利用ください。
お水についても同様で、超高級なミネラルウォーターやシリカ入りの〇〇などのようないいお水を使いたい方もいるようですが、あまりこだわりすぎず浄水器があればそれを通してもらい、ない場合は水道水で十分です。水道水の塩素を除去する場合、一度煮沸して冷ましてから使うとよいでしょう。
ぬか床はその本質から美味しくさせる乳酸菌、酵母菌、酪酸菌を育てる場所であり、基本はなにを追加する必要があるかというよりは、善玉菌がどれだけ元気に過ごす環境が作れるかということになります。また、すこしメンタル的な話にはなりますが、どれだけ愛情を持ってぬか床に接してあげられるかというところだと思います。混ぜるのが面倒くさいからと冷蔵庫に入れっぱなしの状態で、高級な昆布を入れれば美味しいですか?と、たまに聞かれることがありますが、それは毎日常温で愛情込めて作っているぬか床のほうがきっと美味しくなります。
当然、中に住んでいる善玉菌も元気な状態です。子育てと一緒で、自分からの愛情なしで元気に育つことはないですよね。質問からすこしズレてしまいましたが大切なことなのでご説明しました。簡単に言うと、美味しいな、かわいいな、ありがとね!って思ってぬか床ちゃんにポジティブに接しているかだと思います。
すみません。余計な話が多くなりましたが回答は、昆布、かつお節、煮干し、干し椎茸など、和食の味を作るのに欠かせない素材を加えることで、ぬか床はさらに美味しくなります。これらの食材は強いうま味を持ちつつ、ぬか床の風味を損なわない程度のクセがあります。
グルタミン酸(昆布の旨味)、イノシン酸(鰹節の旨味)、グアニル酸(干し椎茸の旨味)がぬか床の中に入って、とても芳醇な味に変化します。
どの程度の量を加えるべきかは当ページ情報の、「ぬか床の作り方」の指示に従って、1㎏のぬか床に対する量を参考にしてみてください。さらに、残っただし素材や余分なぬかがある場合は、それらを足し入れても良いです。
※ぬか床の中で漬け込んだ旨味成分の食材は水分や菌の分解でやわらかくなり、最終的にはぬか床と同化して細かく混ざります。なので、後から足し入れるものについては、乾物の袋の残りを加えても問題ありません。しかし、最初に作るときは、特に風味が強い昆布を選ぶなどして、ぬか床の味を一層引き立ててみてください。
ぬか漬けの風味が物足りないと感じているなら、まず考えるべきは調味素材のバランスです。
ぬか床の中身はシンプルで、ぬか、水、塩、昆布、唐辛子などです。
まずは塩分濃度は適正か?6~8%程度の塩分濃度が美味しく保存効果もしっかりとでてくる濃度です。酸味はPH4~5程度で、比較的酸味も感じ、酵母菌が増殖すると芳醇な香りがしてきます。
美味しいぬか漬けには、旨味だけでなく、酸味も十分に感じられるよう調整することが重要です。味を一層引き立てるためにも、風味豊かな素材を使用することをお勧めします。
乳酸発酵のプロセスが酸味を生み出しますので、”ぬか床の作り方”を参考に適切な発酵を促進してみてください。また、味の深みと香りを加えるために、特に「唐辛子」と「実山椒」を推奨します。唐辛子は味を整えるために非常に有効で、種を取らずそのまま加えてみてください。また、「粉唐辛子」も風味と辛味を強調するための一つの選択肢です。
旨味に関しては昆布や鰹節、干し椎茸などが有効です。
さらに、ぬか床に豊かな香りを加えるために、「実山椒」は絶対に外せません。その爽やかな香りと防腐効果は、一段と変化した新しいぬか床の一面を感じられます。加えて、ゆずの皮も一層の風味を加えてくれます。ただし、香りが強いため、適度な量で使用することをおすすめします。
逆に酸味が多く、苦手という方もいますが、乳酸菌が元気になりすぎて酸味が苦手な方は、いろんな回避方法がありますが、半分くらいに糠を減らして(捨てるか肉、魚を漬けて減らし)、たしぬかを全体量の半分くらいすることでぬか床がフレッシュになり、再度発酵していくので味が落ち着きます。
ぬか床の状態を一年中良好に保つには、季節の変化や野菜の水分による影響を適切に管理することが求められます。例えば、夏野菜など水分が多いものを漬けると、ぬか床がべちゃっとしてきます。その時は、「ぬか」と「塩」を足すことと、きれいなキッチンペーパーなどで水分を吸着させて減らす方法で、水分のバランスを取り戻すことが可能です。
それ以外には高野豆腐や干し椎茸などの乾いた食材を入れて、その食材に水分を吸ってもらう方法もあります。水分を取ると塩分も減るので追加で塩を入れるのをお忘れなく。
塩分量を増やすことで、外出や長期の留守の際には、ぬか床を冷蔵庫で保管することで、発酵の速度を抑制し、状態を維持します。
ぬか床は冷凍庫保管が可能です。長期の旅行や入院、ご事情があって休みたい場合は水分量をきっちりと減らし、塩分量を増やし、塩で上の方に蓋をするようにしてもらい冷凍庫に入れてください。また、ご自身のぬか床の種菌として冷凍保管しておくこともできます。
ただし、再使用する際は、解凍後に適切な室温で乳酸菌が活性化するまで放置することが重要です。間違っても電子レンジでの解凍などせず、自然解凍で解凍してくださいね。
新たな食材や香り付けやチャレンジングな食材を試す場合は、ぬか床全体の風味が変わらないように、試験的に小さな量のぬか床で漬けてみてください。その結果に満足したら、それを本体のぬか床に適用することができます。
ぬか床の表面に白い膜が見られる場合、それは通常、産膜酵母という酵母菌が元気になった証拠です。これは無害で、混ぜ込んでしまって大丈夫です。もし、膜の色が白ではなく、黒や赤、青っぽいものが見られる場合、それはカビの可能性がありますので、その部分は速やかに取り除くか新しいぬか床で再チャレンジすることをおすすめします。