しわはなぜできるのか
「どうして加齢に伴ってしわができるの?」「まだ若いのに目尻に小じわが出てきた」このようなお悩みをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか?
まず、しわの病態を理解するためには皮膚の構造を理解する必要があります。
皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3層構造で構成されており、それぞれの役割は異なります。
例えば、表皮には皮膚のバリア機能があり、体外からの刺激や感染から身を守る役割を担っています。
そのため表皮では常に細胞が新陳代謝されており、これをターンオーバーと呼びます。
表皮のターンオーバーによって古くなった細胞やメラニン色素は表面に押し出され、角層になってから脱落していきます。
一方で、真皮にはコラーゲンやエラスチンなどの弾性に富んだ繊維細胞が多く存在しており、肌の弾力性に関与しています。
また、コラーゲンやエラスチンの隙間を埋めるように、水分を多く含んだヒアルロン酸も真皮には多く存在し、肌の潤いやツヤに関与しています。
最も奥深くにある皮下組織には、脂肪細胞と脂肪細胞同士を連結するコラーゲンによって構成されており、筋肉と皮膚を繋いでいます。
表皮は定期的にターンオーバーを行っていますが、真皮層は日々大きく変化することはありません。
しかし、なんらかの原因で真皮の構造に変化が生じると、肌の弾力性やツヤに関わるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の含有量が低下し、真皮層が薄くなっていくことで肌の弾力が低下してしわが生じます。
さらに、しわ=老化と考えている方も多いですが、実はしわの原因は加齢などの経年変化よりも光老化によるものであることが多いことがわかっています。
光老化とは、赤外線や紫外線のダメージによって、真皮の線維が切断されてしまうことで皮膚がたるんでしまう状態を指します。
紫外線にはUVAとUVBの2種類があり、光老化にはUVBの影響が強いとされていますが、UVAは真皮にまで到達して肌にダメージを与えるため注意が必要です。
しわができる主な原因
しわができる原因は単一ではなく、複数の要因が複雑に絡み合って生じていることが多いです。
予防や対策を行うためには、しっかりとしわの原因を把握しておくことが重要です。
しわができる原因は主に4つです。
- 乾燥
- 紫外線
- 女性ホルモンの減少
- 表情の癖
それぞれについて解説します。
①乾燥
しわができる原因として、乾燥が挙げられます。
乾燥によって皮膚に含まれる水分量が失われると、バリア機能が低下して外界からの刺激を受けやすくなるため、しわなどの肌トラブルの発生につながります。
乾燥の主な原因は加齢による水分量や皮脂量の低下、気温の変化などが挙げられます。
また、しわが真皮の構造変化であるのに対し、小じわの場合は表皮の乾燥による変化であることが多いです。
表皮ではターンオーバーが行われているため、通常は内側から新しい細胞が生まれて乾燥も改善します。
しかし、慢性的に乾燥状態が続くと表皮の細胞も乾いてしまい、比較的溝が浅く細かい小じわが形成されます。
小じわであればスキンケアによる保湿によって目立たなくすることもできますが、進行して肌がたるみ始めると改善が難しくなります。
しわができないように、早期から日常的に肌の保湿を行うようにしましょう。
②紫外線
しわができる原因として、紫外線による光老化が挙げられます。
紫外線にはUVAとUVB があり、特に波長の長いUVAは真皮層にまで到達して構造変化をもたらします。
真皮層内のコラーゲン(弾性繊維)が損傷することで、肌の弾力性が失われてしまい、しわの原因となります。
また、UVBも光老化に大きな影響をおよぼすとされています。
光老化を予防するためにも、若い頃から紫外線対策を徹底しましょう。
③女性ホルモンの減少
しわができる原因として、女性ホルモンの減少が挙げられます。
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種があり、そのうちエストロゲンはコラーゲンやエラスチンの生成に関わっています。
若いうちは女性ホルモンの分泌が盛んに行われるため、肌艶もよく弾力のあるお肌をキープできます。
しかし、更年期を迎えるとエストロゲンの分泌量が急速に減少するため、真皮層におけるコラーゲンやエラスチンの含有量が低下し、肌のハリや弾力が低下することでしわが形成されやすくなります。
④表情の癖
しわができる原因として、表情の癖が挙げられます。
表情の癖によって表情筋の使用頻度に偏りがあると、年齢に関係なく筋肉と連動した皮膚にしわができやすくなります。
例えば、よく笑う人は目尻にしわができやすく、よく怒る人は眉間にしわができやすくなります。
これらの変化は表情じわと呼ばれ、本来は筋肉が弛緩すればもとに戻ります。
しかし、さらに肌が老化すると、表情じわの近くに表情じわに加えて小じわが発生するようになります。
肌のしわの予防法・対処法
肌のしわは一度できてしまうと自然に治癒することが難しいため、日常生活しっかり対策しておくことが重要です。
ここでは、日常生活から簡単に実践できる2つのセルフケアについて紹介します。
- 紫外線の対策
- スキンケア
それぞれについて解説します。
①紫外線の対策
肌のしわの予防法として、紫外線への対策が挙げられます。
前述したように、紫外線によって真皮層のコラーゲンがダメージを受けると肌の弾力が失われてしまい、シワやたるみの原因になるからです。
そこで、極力早期からの紫外線対策が肝要です。
具体的には、日焼け止めの塗布、日傘やサングラスの積極的な使用、紫外線が強い時間帯の外出を避けることも効果的です。
特に、日焼け止めの使用は自身の環境に合った量や質を選ぶことも重要です。
例えば、日焼け止めの効果を表すSPFは肌に炎症や色素沈着を起こすUVBを防ぐ指標で、2~50+まで表示があり、数値が高いほどUVBを防ぐ効果が高くなります。
一方で、PAという数値はPAは真皮に到達するUVAを防ぐ指標で、+~++++の4段階表記で表されており、+の表記が多いほど、UVAを防ぐ効果が高くなります。
屋外でのスポーツや外出中はSPFとPAが高い日焼け止めを使ったほうが良いですが、日常生活ではPA+程度でも十分有効です。
また、せっかく日焼け止めを使用しても塗布する量が不足していると期待していた効果は得られません。
衣服のこすれや汗などで落ちてしまうこともあるため、2~3時間おきに十分な量を塗り直しましょう。
②スキンケア
肌のしわの予防法として、適切なスキンケアが挙げられます。
適切なスキンケアによって皮膚のバリア機能を維持し、潤いやハリを維持することでしわを予防できます。
顔の洗浄ではあまり力を強くかけずに、こすらないようにして優しく洗いましょう。
洗顔料や石鹸は泡立ちネットなどを使用してしっかり泡だて、泡をクッションのようにして顔を洗い、最後は洗い残しのないようしっかりぬるま湯で洗い流します。
また、洗顔や入浴後の保湿も非常に重要です。
肌の水滴を丁寧に拭き取った後、乾燥する前に保湿用のローションやクリームを塗りましょう。
保湿の成分には、肌の表面を覆って水分の蒸発を抑えるワセリン、角質に水分を留めるグリセリン、バリア機能をサポートするセラミドなどがあります。