高血圧で治療を受けている方の中には、「薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」「まだ若いのに高血圧と診断された」という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、高血圧の原因がホルモンの異常にある場合があり、そのような時にはホルモン検査が診断と治療の鍵となります。
私たちの体では、複数のホルモンが血圧を調節する役割を担っており、これらのバランスが崩れると高血圧が引き起こされることがあるのです。
高血圧の方の中には、ホルモン異常が原因となっているケースがあります。
特に、3種類以上の血圧の薬を飲んでも血圧が十分に下がらない方や、30代以下で高血圧になった方では、ホルモン異常が原因である可能性がより高くなります。
ホルモン異常による高血圧の最も大きな特徴は、原因となっているホルモンの問題を解決すれば、高血圧そのものが良くなったり、場合によっては完全に治る可能性があるという点です。
これは、一生薬を飲み続けなければならない一般的な高血圧とは大きく違います。
高血圧の原因となり得る代表的なホルモンには、副腎(腎臓の上にある小さな臓器)から出るアルドステロンやコルチゾール、カテコールアミン、そして首にある甲状腺から出る甲状腺ホルモンなどがあります。
これらのホルモンが多く出過ぎると、体の中に水分や塩分が溜まったり、血管が縮んだりして血圧が上がってしまいます。
- 高血圧の一部はホルモン異常が原因である
- 若年発症高血圧の原因を調べるために実施される
- 複数の降圧薬でも改善しない場合に検討される検査
- 原因が特定できれば根本的な治療につながる可能性がある
- ホルモン異常を治療すれば高血圧が改善し、一部では完治も期待できる
ホルモン検査は主に血液検査や、1日分の尿をためて調べる検査で行われ、それほど難しい検査ではありません。
検査で異常が見つかったら、CTやMRIといった画像の検査で原因をさらに詳しく調べて、手術や特別な薬での治療など、その方に合った治療方法を決めていきます。
この記事では、高血圧とホルモンの関係、ホルモン検査が必要になる具体的なケース、検査の方法について、医学の専門知識がない方にも分かりやすくお伝えします。
- 一部の高血圧はホルモンの異常が原因であること
- ホルモンによる高血圧は治療で良くなる、または治る可能性があること
- 血圧に関わる主なホルモンの特徴と症状
- どんな時にホルモン検査を受けた方がよいのか
- ホルモン検査はどのように行われるのか
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
高血圧の一部はホルモン異常が原因
高血圧には大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは原因がはっきりしない「本態性高血圧」で、もう1つは特定の病気が原因で起こる「二次性高血圧」です。
高血圧の患者さん全体を見ると、約5〜10%が二次性高血圧だと言われています。
そして、この二次性高血圧の中でも、ホルモンの異常が原因で起こるものを「内分泌性高血圧」または「ホルモン性高血圧」と呼んでいます。
つまり、高血圧の患者さん全体で見ると、ホルモンの異常による高血圧は一定の割合で存在すると考えられています。
ホルモン性高血圧は、以前は非常にまれな病気だと考えられていました。
しかし最近の研究で、実際には思っていたよりも多くの患者さんがこのタイプの高血圧であることが分かってきました。
特に、薬がなかなか効かない治療抵抗性高血圧と呼ばれるタイプの患者さんでは、多い場合には5人に1人がホルモン異常による高血圧だと推定されています。
ホルモン検査の大切さが見直されている背景には、こうした新しい発見があります。
ホルモン異常を見逃さずにきちんと診断することで、その方に本当に合った治療を受けていただくことができるのです。
通常の降圧薬では改善しない高血圧がある
一般的な高血圧の治療では、血圧を下げる薬(降圧薬)を使います。
カルシウム拮抗薬、ARB、利尿薬といった種類の薬がよく使われます。
これらの薬は、原因のはっきりしない本態性高血圧にはよく効くのですが、ホルモン異常が原因の高血圧に対しては、十分な効果が得られないことがあります。
3種類以上の血圧の薬(そのうち1つは利尿薬を含む)を適切な量できちんと飲んでいるのに、目標血圧に達しない状態を「治療抵抗性高血圧」と呼びます。
このような場合には、実はホルモンの異常が隠れているかもしれないと考える必要があります。
ホルモン異常による高血圧では、血圧を上げるホルモンが体の中で多く作られ続けているため、普通の降圧薬だけでは根本的な原因に手が届きません。
そのため、何種類も薬を増やしても血圧が十分に下がらず、薬の副作用ばかりが目立つという困った状況が続くことがあります。
ホルモン検査で原因特定と適切な治療が可能になる
ホルモン検査を受けることで、高血圧の原因となっているホルモンの種類や、そのホルモンがどこから出ているのかを突き止めることができます。
原因がはっきりすれば、そのホルモンの働きを抑える特別な薬を使ったり、ホルモンを多く出している腫瘍がある場合にはそれを手術で取り除いたりと、より適切な治療方法を選ぶことができます。
例えば、副腎(腎臓の上にある小さな臓器)にできた腫瘍がアルドステロンというホルモンを多く出している場合、その腫瘍を手術で取ることで、10人中3~6人の方は高血圧が完全に治ったり、大きく良くなったりすることが分かっています。
また、手術ができない場合でも、アルドステロンの働きを特別にブロックする薬を使うことで、今まで使っていた降圧薬よりも効果的に血圧をコントロールできることが期待できます。
このように、ホルモン検査で原因を正確に見つけることは、ただ血圧を下げるだけでなく、高血圧の根っこの部分を治す可能性を開くという点で、とても大切な意味を持っているのです。
ホルモン異常による高血圧は治療で改善できる可能性が高い
ホルモン性高血圧の大きな特徴は、原因となっているホルモンの異常をきちんと治療すれば、高血圧そのものが良くなる可能性が高いという点です。
これは一生薬を飲み続けなければならない本態性高血圧とは大きく違います。
特に、副腎や下垂体(脳の下にある小さな臓器)の腫瘍が原因でホルモンが多く出ている場合、その腫瘍を手術で取ることで、高血圧が完全に治ったり、大きく良くなったりする可能性があります。
手術ができない場合でも、そのホルモンの働きを特別にブロックする薬を使うことで、今まで使っていた降圧薬よりも効果的に血圧をコントロールできることが期待できます。
また、ホルモンの異常を放っておくと、血圧が上がるだけでなく、心臓や血管、腎臓にも悪い影響が出ることがあります。
しかし、きちんと治療すれば、これらの臓器が傷つくのを防ぐことも可能になります。
本態性高血圧とホルモン性高血圧の治療の違いを知ることは、より良い治療を選ぶためにとても大切です。
一般的な高血圧は生活習慣が主な原因
本態性高血圧の場合、遺伝的な要因に加えて、塩分の取り過ぎ、運動不足、太り過ぎ、ストレス、タバコ、お酒の飲み過ぎといった生活習慣が複雑に絡み合って起こります。
これらの要因を一つ一つ完全になくすことは難しく、また年を取るにつれて血管も老化していくため、多くの場合、ずっと薬を飲み続ける必要があります。
生活習慣を改善することはもちろん大切ですが、それだけで血圧を正常な範囲にコントロールできる方は限られています。
ホルモン性高血圧は原因を治療すれば血圧が正常化することも
一方、ホルモン異常による高血圧では、はっきりした原因があります。
副腎や下垂体の腫瘍、副腎が大きくなり過ぎている状態(過形成)など、特定の病変がホルモンを多く出す原因になっているケースがよく見られます。
特に、片方の副腎だけに腫瘍がある場合、その副腎を手術で取ることで、10人中3~6人の方は高血圧が完全に治ると報告されています。
完全には治らない場合でも、多くの方で血圧のコントロールが大きく良くなり、必要な薬の数や量を減らすことができます。
副腎摘出術はPAの治癒に非常に効果的であり、ほぼすべての患者で低カリウム血症が是正され、約30~60%の症例で高血圧が治癒し、残りの患者では血圧が著しく改善します。
引用:Gland Surgery Approach to the surgical management of primary aldosteronism
手術ができない場合や、両方の副腎に病変がある場合でも、ホルモンの働きを特別にブロックする薬を使うことで、今までの治療よりも効果的に血圧をコントロールできることが期待されます。
また、ホルモンの異常を放っておくと、血圧が上がるだけでなく、心臓や血管、腎臓などにも悪影響を及ぼすことがあります。
しかし、適切な治療を受けることで、これらの臓器が傷つくのを防ぐことができます。
このように、ホルモン性高血圧はきちんと診断して治療することで、高血圧そのものが良くなるだけでなく、将来の心臓病や脳卒中のリスクを大きく減らすことができる可能性のある病気なのです。
【本態性高血圧とホルモン性高血圧の違い】
| 項目 | 本態性高血圧 | ホルモン性高血圧 |
|---|---|---|
| 割合 | 高血圧全体の約90〜95% | 高血圧全体の約5〜10% |
| 原因 | 生活習慣、遺伝、加齢など複数の要因 | ホルモンの異常(腫瘍など) |
| 治療 | 生涯の薬物療法が基本 | 原因を治療すれば完治する可能性あり |
| 手術での完治 | 基本的に不可能 | 可能(10人中3~6人) |
| 薬の効果 | 通常の降圧薬が効く | 通常の降圧薬だけでは効きにくい |
高血圧の原因となる代表的な4つのホルモン
血圧の調節には複数のホルモンが関わっていますが、ここでは内分泌性高血圧の原因として特に重要な4つのホルモンについて説明します。
これらのホルモンは、それぞれ違う場所から出てきて、違うやり方で血圧を上げます。
副腎(腎臓の上にある小さな臓器)から出るアルドステロンやコルチゾールは、体の中の水分や塩分のバランスに影響を与えます。
カテコールアミンは心臓や血管に直接働きかけます。
そして甲状腺ホルモンは体全体の働きを調節することで血圧に影響します。
それぞれのホルモンが多く出過ぎると、特徴的な症状が現れます。
これらの症状を知っておくことで、ご自身の症状がホルモンの異常によるものかどうかを判断する手がかりになります。
また、各ホルモンの異常に対しては、それぞれに合った検査方法と治療法があります。
ここでは、各ホルモンがどんな働きをしているのか、そしてそのホルモンが多くなり過ぎた場合にどんな症状や影響が出るのかについて、詳しくお伝えします。
【血圧に関わる主な4つのホルモン】
| ホルモン名 | 分泌場所 | 血圧を上げる仕組み | 主な病気 | 高血圧患者での割合 |
|---|---|---|---|---|
| アルドステロン | 副腎 | 体に塩分と水分を溜め込む | 原発性アルドステロン症 | 5〜15%(最も多い) |
| コルチゾール | 副腎 | 血管を縮める、血糖値を上げる | クッシング症候群 | 比較的まれ |
| カテコールアミン | 副腎髄質・神経組織 | 心拍数を上げる、血管を縮める | 褐色細胞腫 | 0.2〜0.6%程度(まれだが危険) |
| 甲状腺ホルモン | 甲状腺 | 心臓の働きを強める、血液量を増やす | 甲状腺機能亢進症・低下症 | 比較的よく見られる |
アルドステロン – 血圧を上げる代表的なホルモン
アルドステロンは、腎臓の上にある副腎という小さな臓器から出てくるホルモンです。
このホルモンは腎臓に働きかけて、体の中にナトリウム(塩分)と水分を溜め込むように指示します。
その結果、血液の量が増えて血圧が上がります。
いわば、ホースの中の水の量が増えることで圧力が高くなるようなイメージです。
アルドステロンが多く出過ぎる病気を「原発性アルドステロン症」と呼びます。
これは、ホルモン性高血圧の中で最も多いタイプで、高血圧の患者さん全体の約5〜15%がこの病気だと考えられています。
特に薬がなかなか効かない治療抵抗性高血圧の方では、多い場合には5人に1人がこの病気だという報告もあります。
原発性アルドステロン症の推定有病率は長年にわたり大幅に増加しており、治療抵抗性高血圧の一部の集団では20%を超えることもあります。
引用:PubMed Central The Prevalence of Primary Aldosteronism and Evolving Approaches for Treatment
原発性アルドステロン症の特徴として、血液中のカリウム(ミネラルの一種)が少なくなることがあります。
ただし、実際には低カリウム血症は少数派(約9〜37%)で、正常カリウム型の方が多いことが分かっています。
ですから、カリウムが正常だからといって、この病気ではないとは言い切れません。
アルドステロンが多く出過ぎると、ただ血圧が上がるだけでなく、心臓や血管、腎臓に直接ダメージを与えることが研究で分かっています。
例えば、心臓が固くなったり(線維化)、血管が硬くなったりして、心不全や脳卒中、腎臓病になるリスクが高くなることが示されています。
コルチゾール – ストレスホルモン
コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれ、アルドステロンと同じく副腎から出てきます。
このホルモンには、血圧を上げるいくつかの働き方があります。
具体的には、血管を縮める物質を増やしたり、インスリンの働きを邪魔して血糖値を上げたり、腎臓で塩分と水分を再び吸収するよう促したりする作用があります。
コルチゾールが多く出過ぎる状態を「クッシング症候群」と呼びます。
クッシング症候群の大人の患者さんの約80%、つまり5人中4人に高血圧が見られます。
また、子どもの患者さんでも約半数が高血圧になると報告されています。
クッシング症候群では、高血圧以外にも特徴的な症状が現れます。
顔が丸く膨らむ(満月様顔貌と呼ばれます)、お腹周りに脂肪がつく、皮膚が薄くなってあざができやすくなる、お腹や太ももに紫色の線(皮膚の割れ目のような線)が現れる、筋肉が弱くなる、骨がもろくなる(骨粗しょう症)、糖尿病になるなどの症状が見られることがあります。
- 顔が丸く膨らむ(満月様顔貌)
- お腹周りに脂肪がつく
- 皮膚が薄くなってあざができやすい
- お腹や太ももに紫色の線が現れる
- 筋肉が弱くなる
- 骨がもろくなる(骨粗しょう症)
- 糖尿病になる
- にきびができる
- 女性では生理が不規則になる、体毛が濃くなる
カテコールアミン – 動悸や発汗を伴う高血圧の原因
カテコールアミンは、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンの総称です。
これらは副腎の内側(副腎髄質)や体のあちこちにある神経組織から出てきます。
カテコールアミンには心臓の鼓動を速くしたり、血管を縮めたりする働きがあり、血圧を急に上げます。
褐色細胞腫という腫瘍ができると、カテコールアミンが多く出過ぎるようになります。
褐色細胞腫は比較的まれで、高血圧の患者さんの0.2〜0.6%程度と推定されますが、見逃すと命に関わる危険な状態を引き起こす可能性があります。
褐色細胞腫の特徴的な症状として、発作的に起こる激しい頭痛、胸がドキドキする(動悸)、大量の汗、顔が真っ青になる、不安な気持ちになるなどがあります。
これらの症状は突然現れて、数分から数時間続いた後で自然に治まることが多いです。
発作のきっかけになるのは、お腹を押される、運動、排便、特定の食べ物や薬、ストレスなど様々です。
褐色細胞腫の多くは良性ですが、約10〜20%は転移を起こす可能性があります。
そのため、早く見つけて適切に治療することがとても大切です。
- 激しい頭痛
- 胸がドキドキする(動悸)
- 大量の汗
- 顔が真っ青になる
- 体が震える
- 不安な気持ちになる
- 吐き気がする
甲状腺ホルモン – 代謝異常と血圧上昇を引き起こす
甲状腺ホルモンは、首の前側にある甲状腺という臓器から出るホルモンで、体の新陳代謝を調節する大切な役割を果たしています。
甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが多過ぎる状態)では、心臓から出る血液の量が増えたり、血液の量自体が増えたりして、主に上の血圧(収縮期血圧)が上がります。
特に若い方の甲状腺機能亢進症では、上の血圧が高くなることがより目立ちます。
一方、甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが足りない状態)では、血管の抵抗が増えて、主に下の血圧(拡張期血圧)が上がることが知られています。
実際、甲状腺機能低下症で拡張期血圧が高くなることがあるという報告があります。
甲状腺の働きの異常をきちんと治療することで、血圧の改善が期待でき、一部では正常化することもあります。
甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモンの補充や、甲状腺機能亢進症に対する治療によって、血圧の改善が期待できることが研究で示されています。
【甲状腺機能の異常による症状の違い】
| 症状 | 甲状腺機能亢進症(働き過ぎ) | 甲状腺機能低下症(働きが悪い) |
|---|---|---|
| 体重 | 減る | 増える |
| 心臓 | 胸がドキドキする | 脈が遅くなる |
| 体温調節 | 暑がりになる、汗をたくさんかく | 寒がりになる |
| 皮膚 | しっとりする | 乾燥する |
| 精神面 | イライラする、眠れない | 疲れやすい、無気力 |
| 手 | 震える | むくむ |
| 排便 | 下痢気味 | 便秘になる |
| 血圧 | 主に上の血圧が上がる | 主に下の血圧が上がる |
30代以下の高血圧や薬が効かない場合はホルモン検査を検討
すべての高血圧の方にホルモン検査が必要というわけではありません。
しかし、特定の条件に当てはまる場合には、ホルモンの異常が原因である可能性が高くなるため、積極的にホルモン検査を考える必要があります。
医学的には、若い年齢での発症、治療への反応が悪い、特徴的な症状があるといったことが、ホルモン検査を行った方がよい重要なサインとして知られています。
ホルモンの異常による高血圧を早く見つけることは、必要以上に多くの薬を飲み続けることを避けて、根本的な治療につなげるためにとても大切です。
また、ホルモンの異常を長い間放っておくと、心臓や血管、腎臓などの臓器に取り返しのつかない傷がつく可能性があります。
以下に示す症状やサインに当てはまる場合は、主治医に相談してホルモン検査の必要性について確認することをお勧めします。
- 年齢に関するサイン
- 30代以下で高血圧になった
- 40歳より前に高血圧と診断された
- 治療への反応に関するサイン
- 3種類以上の血圧の薬(うち1つは利尿薬)を飲んでも目標血圧に達しない
- 以前はコントロールできていたのに、急に血圧が上がった
- 4種類以上の薬が必要
- 血液検査の異常
- カリウムが少ない(3.5 mEq/L未満)
- 特に利尿薬を使っていないのにカリウムが少ない
- 特徴的な症状がある
- 発作的な頭痛、動悸、大量の汗(褐色細胞腫を疑う)
- 顔が丸くなる、紫色の線、筋力低下(クッシング症候群を疑う)
- 体重の大きな変化、暑がり・寒がり(甲状腺の異常を疑う)
- その他
- 副腎に偶然見つかった腫瘤がある
- 若い年齢で脳卒中や心筋梗塞になった家族がいる
若年での高血圧発症
原因のはっきりしない本態性高血圧は普通、40歳を過ぎてから、特に中高年になってから少しずつ血圧が上がっていくことが多いです。
しかし、30代以下の若い年齢で高血圧になった場合、あるいは40歳より前に高血圧と診断された場合には、二次性高血圧の可能性を考える必要があります。
研究によると、40歳より前の若い高血圧の患者さんでは、30%前後が二次性高血圧であったという報告があります。
2,090人の患者のうち、619人(29.6%)が2HTNであった。
引用:PubMed Prevalence and Risk Factors for Secondary Hypertension in Young Adults
若い方の高血圧では、ホルモンの異常だけでなく、腎臓の病気や腎動脈(腎臓に血液を送る血管)が狭くなっていることなども原因として考えられますが、いずれにしても原因を詳しく調べることが大切です。
若い年齢で高血圧になって、それを放っておくと、長い期間にわたって高血圧の悪い影響を受けることになり、心臓病や脳卒中、腎臓病などの合併症になるリスクが高まります。
そのため、若い方の高血圧は、積極的に原因を調べるべき大切なサインと考えられています。
複数の降圧薬を使用しても血圧が下がらない
3種類以上の血圧の薬(そのうち1つは利尿薬を含む)を適切な量できちんと飲んでいるのに、目標血圧に達しない状態を「治療抵抗性高血圧」と呼びます。
あるいは、血圧をコントロールするために4種類以上の薬が必要な場合も、これに含まれます。
治療抵抗性高血圧の患者さんでは、二次性高血圧の割合が約25〜30%程度に達するという報告があります。
二次性高血圧は、明らかなRH(定義や臨床状況に応じて約3分の1の患者が罹患する)を有する患者によく見られ、腎疾患と原発性アルドステロン症が最も一般的な病因である[ 113 ]。
引用:Nature Investigation and management of resistant hypertension: British and Irish Hypertension Society position statement
特に原発性アルドステロン症は、薬が効きにくい高血圧の最もよく見られる原因の一つとされています。
また、以前は血圧が良くコントロールできていたのに、急にコントロールが難しくなった場合も注意が必要です。
これは新しくホルモンの異常が起きた可能性を示しています。
低カリウム血症や体重増加などの症状を伴う場合
血液検査で血清カリウム値が3.5 mEq/L未満、つまりカリウムが少ない状態(低カリウム血症)が見つかった場合、特に利尿薬(尿を出す薬)を使っていない状態での低カリウム血症は、原発性アルドステロン症を強く疑う所見です。
カリウムが少なくなると、筋肉の力が弱くなる、筋肉がつる、疲れやすい、尿量が増える(夜間頻尿を含む)といった症状が現れることがあります。
クッシング症候群が疑われる症状として、以下のようなものがあります。
急に体重が増える(特に顔、首の後ろ、お腹周り)、顔が丸くなる、皮膚が薄くなってあざができやすくなる、お腹や太ももに幅の広い紫色の線が出る、筋肉の力が弱くなる、骨がもろくなる(骨粗しょう症)、にきびができる、女性では生理が不規則になったり体毛が濃くなったりするなどです。
褐色細胞腫を疑う症状には、発作的に起こる激しい頭痛、胸がドキドキする、大量の汗をかく、顔が真っ青になる、体が震える、不安な気持ちになる、吐き気がするなどがあります。
これらの症状は突然現れて、数分から数時間続いた後で消えることが特徴です。
甲状腺の働きの異常の症状として、甲状腺機能亢進症(働き過ぎ)では体重が減る、胸がドキドキする、手が震える、暑がりになる、汗をたくさんかく、イライラする、眠れないなどが見られます。
一方、甲状腺機能低下症(働きが悪い)では体重が増える、疲れやすい、寒がりになる、肌が乾燥する、便秘になる、むくむなどが見られます。
また、副腎に偶然見つかった腫瘤(かたまり)がある場合や、若い年齢で脳卒中や心筋梗塞になった家族がいる場合なども、ホルモン検査を考えた方がよい状況です。
ホルモン検査は主に血液検査と尿検査で実施
ホルモンの異常による高血圧が疑われる場合、まず血液検査や尿検査でホルモンの値を調べます。
これらの検査は比較的簡単に行うことができ、原因となるホルモンの異常を見つける手がかりになります。
ホルモン検査の多くは通院で受けることができて、特別な準備もほとんど必要ありません。
ただし、検査の正確さを高めるため、一部の血圧の薬を一時的にやめたり、決まった時間帯に採血を行ったりする必要がある場合もあります。
血液検査では、その時点でのホルモンの血液中の濃度を測ります。
一方、24時間蓄尿検査(1日分の尿をためて調べる検査)では、1日を通じたホルモンの出る量を調べることができるため、より正確な診断につながることがあります。
最初の検査で異常が疑われたら、診断を確定するために追加の機能検査や画像検査が必要になります。
ここでは、各ホルモンに対する具体的な検査方法と、その後の診断の流れについて詳しく説明します。
血液検査でホルモン値を測定
血液検査は、ホルモン検査の中で最も基本的でかつ大切な方法です。
採血した血液から、様々なホルモンの濃度を測ることができます。
原発性アルドステロン症のふるい分け検査には、アルドステロン・レニン比(ARR)という検査が広く使われています。
これは血液中のアルドステロンの濃度と、レニンという別のホルモンの活性の比率を計算するものです。
測定法や施設により基準は異なりますが、この比率が一定値以上で、かつアルドステロンの濃度が一定以上の場合に、原発性アルドステロン症が疑われます。
この検査は、朝、起きてから2時間以上経ってから、座った状態または立った状態で採血することが勧められています。
褐色細胞腫のふるい分け検査には、血漿遊離メタネフリン(血液中の特定の物質)の測定が最も高い精度の検査とされています。
この検査は約97〜99%、つまりほぼ100%という非常に高い精度を持ち、褐色細胞腫を見逃すリスクを最小限に抑えることができます。
採血は静脈に点滴の管を入れてから、仰向けの姿勢で20〜30分以上安静にしてから行うことが勧められています。
クッシング症候群のふるい分け検査には、デキサメタゾン抑制試験という検査が使われることが多いです。
これは夜11時頃にデキサメタゾン(特別な薬)1mgを飲んで、翌朝8~9時に血液中のコルチゾールの値を測る検査です。
正常な方ではコルチゾールが1.8 μg/dL未満に下がりますが、クッシング症候群ではこの下がり方が起こりません。
甲状腺の働きの評価には、まず甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測ります。
TSHが低い値の場合は甲状腺機能亢進症(働き過ぎ)が、高い値の場合は甲状腺機能低下症(働きが悪い)が疑われます。
その後、必要に応じて遊離T4(FT4)や遊離T3(FT3)という甲状腺ホルモンそのものを測って診断を確定します。
【主なホルモン検査(血液検査)】
| 検査対象 | 検査名 | 検査のポイント | 異常を疑う基準 |
|---|---|---|---|
| 原発性アルドステロン症 | アルドステロン・レニン比(ARR) | 朝、起床2時間後に座位・立位で採血 | 測定法・施設により基準が異なる |
| 褐色細胞腫 | 血漿遊離メタネフリン | 静脈に管を入れて仰臥位で20〜30分以上安静後に採血 | 精度97〜99%の高感度検査 |
| クッシング症候群 | デキサメタゾン抑制試験 | 夜11時に薬1mg内服、翌朝8~9時に採血 | コルチゾールが1.8 μg/dL未満に下がらない |
| 甲状腺機能異常 | TSH、FT4、FT3 | 通常の採血 | TSH低値(亢進症)、TSH高値(低下症) |
24時間蓄尿検査でより正確な評価
尿検査は、24時間かけて尿をすべてためて検査する「24時間蓄尿検査」が行われることが多いです。
この方法で、1日を通じたホルモンの出る量を正確に調べることができます。
原発性アルドステロン症の診断を確定するための検査には、高塩食負荷試験や生理食塩水負荷試験などが使われます。
高塩食負荷試験では数日間高塩食を摂取し、24時間蓄尿を行います。
尿中ナトリウム排泄量が200 mEq以上であることを確認した上で、尿中アルドステロン排泄量が12 μg/日以上であれば診断されます。
この検査の間は、カリウムが少なくなるのを防ぐため、カリウムを補う必要があることがあります。
褐色細胞腫の診断には、24時間蓄尿でメタネフリン、ノルメタネフリン、カテコールアミンの測定が行われます。
尿検査の感度は研究により異なりますが、血液検査とともに有用な検査とされています。
クッシング症候群の診断には、24時間の尿の中の遊離コルチゾールの測定も使われます。
正常値の上限を大きく超える値が出れば、クッシング症候群の可能性が高いと考えられます。
ただし、軽度の上昇の場合は、偽性クッシング症候群(アルコール依存症、うつ病、肥満などで見られる)との見分けが必要になることがあります。
異常が見つかった場合の追加検査
血液検査や尿検査でホルモンの異常が疑われたら、次のステップとして画像検査や追加の機能検査が行われます。
原発性アルドステロン症では、副腎のCT検査やMRI検査で、副腎に腫瘍があるか、両方の副腎が大きくなっているかを調べます。
さらに、片方だけなのか両方なのかを正確に判断するために、副腎静脈サンプリングという検査が行われることがあります。
これは、左右の副腎静脈(副腎から出る血管)からそれぞれ血液を採って、どちらの副腎からアルドステロンが多く出ているのかを直接確認する検査です。
この結果で、手術ができるかどうかの判断や治療方針の決定が行われます。
褐色細胞腫では、CTやMRIで腫瘍の場所と大きさを確認します。
さらに、MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)シンチグラフィという特別な画像検査で、全身の褐色細胞腫や転移(他の場所への広がり)の有無を調べることができます。
クッシング症候群では、まず原因がACTH依存性(下垂体や他の場所からのACTH産生)かACTH非依存性(副腎性)かを判断するために、血液中のACTH濃度を測ります。
その後、下垂体や副腎のMRI・CT検査が行われます。
甲状腺の働きの異常が確認された場合は、必要に応じて甲状腺の超音波検査や甲状腺シンチグラフィが行われ、甲状腺の形や働きを詳しく調べます。
これらの追加検査で、ホルモンの異常の原因となっている病変の正確な場所や性質を把握して、最も適した治療法を選ぶことができるようになります。
- ステップ1:ふるい分け検査(血液検査・尿検査)
↓ 異常が疑われる - ステップ2:確定検査(負荷試験・24時間蓄尿など)
診断が確定 - ステップ3:画像検査(CT・MRI・シンチグラフィなど)
↓ 病変の場所と性質を確認 - ステップ4:治療方針の決定(手術・薬物療法など)
よくある質問(FAQ)
- ホルモン検査は誰でも受けられますか
-
ホルモン検査そのものは特別な制限はなく、医師が必要だと判断すれば受けることができます。
ただし、すべての高血圧の方にホルモン検査が必要というわけではありません。
若い年齢での高血圧、薬がなかなか効かない高血圧、特徴的な症状がある場合など、ホルモンの異常が疑われる状況で検査が勧められます。
- ホルモン検査の費用はどのくらいかかりますか
-
ホルモン検査の費用は、検査の種類や医療機関によって異なりますが、医師が医学的に必要だと判断した場合は健康保険が適用されます。
基本的な血液検査から、負荷試験や画像検査まで、検査内容により自己負担額は変わります。
詳しい費用については、受診される医療機関にご確認ください。
- ホルモンが原因の高血圧は治りますか
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ホルモン異常の種類や程度によって違いますが、原因となる腫瘍を手術で取れる場合、10人中3〜6の方は高血圧が完全に治ったという報告があります。
完全には治らない場合でも、多くの方で血圧のコントロールが大きく良くなり、必要な薬の数や量を減らすことが期待できます。
- 検査結果が出るまでどのくらいかかりますか
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基本的な血液検査の結果は、医療機関や検査項目により異なりますが、通常数日から数週間で分かります。
特殊なホルモン検査や診断を確定するための負荷試験などが必要な場合は、さらに時間がかかることがあります。
また、画像検査の結果と合わせて総合的に判断するため、最終的な診断まではさらに時間がかかることがあります。
- ホルモン検査は痛いですか
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基本的なホルモン検査は普通の採血と同じで、注射針を刺す時の痛みがある程度です。
24時間蓄尿検査は自宅で行うことができて、痛みはありません。
ただし、診断を確定するための負荷試験や、副腎静脈サンプリングといった特別な検査が必要になる場合は、少し不快感や痛みを伴うことがあります。
医師や看護師がきちんと説明とケアをしてくれますので、不安な点があれば遠慮なく相談してください。
まとめ
高血圧の方の約5〜10%はホルモンの異常が原因であり、適切な診断と治療で血圧が良くなったり治ったりする可能性があります。
特に若い年齢での高血圧、薬がなかなか効かない高血圧、カリウムが少ない、特徴的な症状があるといった場合には、ホルモン検査を受ける価値があります。
高血圧に関わる主なホルモンとして、アルドステロン、コルチゾール、カテコールアミン、甲状腺ホルモンがあり、それぞれ血液検査や24時間蓄尿検査(1日分の尿をためて調べる検査)で調べることができます。
検査で異常が見つかったら、画像検査や追加の機能検査で原因を詳しく調べて、手術や特別な薬での治療など、適切な治療方針を決めます。
高血圧の治療を受けていても血圧が十分に下がらない、若い年齢で高血圧と診断された、特徴的な症状があるなど、気になることがある方は、主治医に相談してホルモン検査の必要性について確認することをお勧めします。
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