高血圧なのに手足が冷たい?末端冷え性が起こる原因と改善方法

高血圧なのに手足が冷たい?末端冷え性が起こる原因と改善方法

高血圧と聞くと、血圧が高いのだから体中に血液がよく巡っているイメージを持たれるかもしれません。

しかし実際には、高血圧の方の中には手足の先が冷たく感じる「末端冷え性」に悩まされている方も少なくありません。

血圧が高いのになぜ手足は冷えるのか、この一見矛盾するような症状には、血管の状態と血液の流れ方が深く関わっています。

高血圧と末端冷え性が同時に起こる背景には、血管が硬くなったり、体を調整する神経のバランスが崩れたりといった、いくつかの理由が考えられます。

特に、何年も高血圧が続いている方や、生活習慣が乱れがちな方では、この二つの症状が同時に現れることがあり、これは体からの大切なサインかもしれません。

末端冷え性と高血圧が同時に起こる主な理由
  • 動脈硬化の進行(血管が硬くなり弾力を失う)
  • 自律神経の乱れ(緊張で手足の血管が縮む)
  • 一部の降圧薬の副作用(手足への血流が減る)
  • 毛細血管の減少(手足の細い血管が減り血液が届きにくくなる)
  • 基礎疾患の存在(糖尿病や甲状腺の病気)

血圧の数値が高くても、実際には手足の先まで十分に血液が届いていない状態が起きているのです。

また、高血圧の治療で飲んでいる薬の中には、副作用として手足が冷えるものもあります。

さらに、糖尿病や甲状腺の病気といった別の病気が隠れていて、高血圧と末端冷え性の両方を引き起こしているケースもあります。

「年のせい」「体質だから仕方ない」と諦めずに、症状の背景にある原因を理解し、きちんと対処することが大切です。

この記事では、高血圧と末端冷え性の関係について、専門的になりすぎないように、できるだけわかりやすく解説していきます。

なぜこの二つの症状が同時に起こるのか、そのしくみを理解することで、ご自身の体に何が起こっているのかがわかるようになります。

また、日々の生活の中で実践できる改善方法や、病院を受診したほうがよいタイミングについても具体的にお伝えします。

この記事でわかること
  • 高血圧でも手足が冷える理由とそのしくみ
  • 末端冷え性と高血圧が一緒にある時の危険性
  • 生活習慣を変えて症状を和らげる方法
  • 病院に行くべき症状の見分け方
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧でも手足が冷える理由は血管の硬さと血流の悪さ

高血圧だからといって、体の隅々まで血液が十分に届いているとは限りません。

むしろ高血圧が長く続くと、血管が硬くなったり、血液の流れに問題が生じたりして、結果として手足の先まで温かい血液が届きにくくなることがあります。

血管は本来、ゴムホースのような弾力があり、心臓から送り出される血液を効率よく全身に運んでいます。

しかし、長い間高い圧力がかかり続けることで、血管の壁が厚く硬くなり、この弾力が失われていきます。

硬くなった血管では、血液をうまく手足の先まで押し流せなくなり、特に体の一番遠い部分である手足が冷えやすくなるのです。

また、体を自動的に調整している「自律神経」という神経の働きが乱れることも、手足の冷えに大きく関わっています。

高血圧の方では、体を緊張させる神経の働きが強くなりすぎていることが多く、これによって手足の血管がギュッと縮んでしまいます。

血管が縮めば、そこを流れる血液の量も減り、手足が冷たく感じられるようになります。

さらに、高血圧の治療で使う薬の中には、手足の血管への血流を少し減らしてしまうものもあり、これが冷えとして感じられることもあります。

高血圧なのに手足が冷える3つの主な理由
  • 血管が硬くなって、手足の先まで血液を送る力が弱まる
  • 自律神経の乱れで、手足の血管が縮んでしまう
  • 一部の降圧薬の副作用で、手足への血流が減る

ここでは、高血圧と末端冷え性が同時に起こるしくみについて、血管の状態、血液の流れ方、そして神経の働きという3つの面から詳しく見ていきます。

それぞれの理由がどのように絡み合って症状を引き起こすのかを理解することで、どう対処すればよいのかが見えてくるでしょう。

末端冷え性は手足の先まで温かい血液が届かない状態

末端冷え性とは、手足の指先など体の先端部分が、周りの温度や体全体の温かさに比べて異常に冷たく感じられる状態のことです。

これは、手足の細い血管に十分な血液が流れていないために起こります。

私たちの体では、心臓から送り出された血液が太い血管から細い血管へと枝分かれしながら、体の隅々まで酸素や栄養を運んでいます。

特に手足の先には、髪の毛よりも細い血管がたくさん張り巡らされていて、ここに十分な血液が流れることで温かさが保たれています。

ところが、何らかの理由で手足の細い血管に血液が十分に届かなくなると、その部分の温度が下がり、冷たく感じるようになります。

興味深いのは、手足の冷えを感じている人の中には、血圧が低い人もいれば高い人もいるという点です。

韓国の研究では、韓方医療機関を受診した方を対象とした調査で、手足の冷えを感じている人は高血圧の頻度が低かったという報告があります。

つまり、高血圧そのものが直接冷えを起こすのではなく、高血圧によって血管に起きる変化が問題になると考えられます。

末端冷え性の主な症状
  • 手足の指先が氷のように冷たい
  • 冬だけでなく夏でも手足が冷える
  • 温めてもなかなか温まらない
  • 靴下を履いても足先が冷たい
  • 手足が冷えて夜眠れないことがある

症状の強さは人によって違い、軽い場合は普段の生活にそれほど困らないこともありますが、ひどくなると痛みを感じたり、夜眠れなくなったりすることもあります。

血圧が高くても血管が硬いと手足に血液が届きにくい

高血圧が長く続くと、血管の壁が徐々に硬くなっていきます。

これを「動脈硬化」と呼びます。

血管が硬くなると弾力がなくなり、血液を効率よく手足の先まで送り届けることができなくなります。

通常、健康な血管は弾力があり、心臓が血液を送り出す時には膨らんで血液を一時的に蓄え、その後元に戻ることで拍動を和らげながら血液を送り出しています。

この血管の「クッション機能」のおかげで、手足の先の細い血管には安定した血流が届きます。

しかし、血管が硬くなると、このクッション機能が低下し、強い拍動が細い血管にまで伝わって負担をかけるようになります。

さらに、自律神経の働きで手足の血管が縮むことで、手足への血流が減り、冷えを感じやすくなります。

血管が硬くなる過程(動脈硬化の進行)

段階血管の状態手足への影響
初期血管の内側の層が傷つきやすくなる血管が広がりにくくなり始める
中期弾力のある成分が減り、硬い成分が増える血液を押し流す力が弱まる
進行期血管全体が硬く厚くなる手足の先まで十分な血液が届かなくなる

研究によると、血管が硬くなると、本来なら太い血管で吸収されるはずの血液の勢いが、そのまま手足の細い血管にまで伝わってしまい、かえって細い血管に負担がかかることがわかっています。

また、硬くなった血管では、弾力のある成分が減って、硬い成分が増えていくことで、さらに柔軟性が失われていきます。

高血圧と血管が硬くなることは、お互いに影響し合う関係にあります。

高血圧が血管を硬くする一方で、血管が硬くなるとさらに血圧が上がりやすくなるという悪い循環が起きる可能性があるのです。

動脈硬化と血圧には双方向の関係がある。動脈硬化が進むと、血圧の変動に応じて動脈を拡張・収縮する能力が低下する。

引用:PubMed Central Arterial stiffness and hypertension

こうなると、血圧の数値自体は高くても、実際に手足の先まで十分な血液が届いているとは限らず、結果として手足が冷える症状が現れることがあります。

特に高齢の方や、高血圧が何年も続いている方では、血管が硬くなっていることが多く、手足の冷えを感じやすくなります。

冬になると血圧がさらに上がりやすくなり、同時に手足の冷えも強くなることが報告されています。

自律神経の乱れで血管が縮んで冷えを感じる

自律神経とは、私たちが意識しなくても自動的に体のいろいろな働きを調整してくれている神経のことです。

この自律神経には、体を活動的にする「交感神経」と、体をリラックスさせる「副交感神経」の2種類があり、このバランスが崩れるといろいろな不調が起こります。

自律神経の2つの働き

神経の種類主な働き血管への影響
交感神経体を活動的にする(緊張・興奮)血管を縮める
副交感神経体をリラックスさせる(休息・回復)血管を広げる

高血圧の方では、交感神経の働きが強くなりすぎていることが多いことがわかっています。

交感神経が活発になると、血管を縮める指令が強く出され、特に手足の血管がギュッと縮んでしまいます。

この状態が続くと、手足に流れる血液の量が減り、冷えを感じるようになることがあります(ただし個人差があります)。

研究によると、高血圧の方は、正常な血圧の方と比べて、手足の筋肉につながる交感神経の活動がかなり高いことが確認されています。

筋交感神経活動(バースト/分)は、対照群(23.9+/-1.6)と比較して、本態性高血圧患者(33.3+/-1.7)、肥満患者(42.2+/-2.8)、うっ血性心不全患者(55.8+/-4.3)で顕著かつ有意に(P<.01)増加していました。

引用:PubMed Dissociation between muscle and skin sympathetic nerve activity in essential hypertension, obesity, and congestive heart failure

さらに、寒い環境では、高血圧の方は交感神経の反応が増強され、皮膚の血管がより強く縮むことが報告されています。

自律神経のバランスを崩す主な原因
  • 慢性的なストレス
  • 睡眠不足・不規則な睡眠
  • 不規則な生活リズム
  • 過度の疲労
  • 運動不足

また、高血圧の治療で使われる薬の一部、特に「ベータ遮断薬」という種類の薬では、副作用として手足の冷えが出ることがあります。

この副作用の頻度は研究によって幅があり、自発的な訴えとして4%程度という報告から、より高い頻度を示す報告まであります。

これは、薬の作用によって手足の血管への血流が減ることが原因と考えられています。

ストレスや睡眠不足、不規則な生活も自律神経のバランスを崩す原因になります。

現代社会では慢性的なストレスにさらされることが多く、これが交感神経を刺激し続けることで、高血圧と末端冷え性の両方を悪化させる可能性があるのです。

手足の冷えと高血圧が同時にある時は動脈硬化の可能性も

高血圧と末端冷え性が同時に現れている場合、それは単なる体質の問題ではなく、血管の健康が悪くなっているサインかもしれません。

特に注意すべきなのは、血管が硬くなる「動脈硬化」が進んでいる可能性です。

ただし、冷えの原因は薬の副作用、甲状腺の病気、貧血など様々であるため、自己判断せず医療機関で原因を調べることが大切です。

動脈硬化が進むと、血管の内側が狭くなったり硬くなったりして、血液がスムーズに流れにくくなります。

血管は全身に張り巡らされたネットワークで、太い血管から細い血管まで、それぞれが連携して働いています。

太い血管で動脈硬化が進むと、その影響は手足の細い血管にまで及び、手足への血流が悪くなる可能性があります。

また、長い間高血圧が続いていると、血管の壁に持続的な負担がかかり、血管の構造そのものが変わっていくことがあります。

さらに、高血圧と末端冷え性が一緒にある時は、糖尿病や甲状腺の病気など、他の病気が隠れている可能性もあります。

これらの病気は、それぞれ独自のしくみで血管や神経に影響を与え、高血圧と冷え性の両方を引き起こすことがあるのです。

ですから、この二つの症状が一緒にある場合は、体全体の健康状態をチェックする必要があります。

高血圧と末端冷え性が同時にある時に考えられる主なリスク
  • 動脈硬化が進行している可能性
  • 手足の血管に血液が十分に届いていない
  • 糖尿病などの他の病気が隠れている可能性がある
  • 心臓や脳の血管の病気のリスクが高まっている

ここでは、高血圧と末端冷え性が一緒にある時に考えられる危険性と、その背景にある体の変化について詳しく解説します。

これらの知識があれば、症状を単なる不快なものとして我慢するのではなく、体が発している警告信号として適切に受け止め、必要な対処ができるようになるでしょう。

血管が硬くなって血液が流れにくくなっている

動脈硬化とは、血管の壁が厚く硬くなり、弾力がなくなっていくことです。

高血圧が長い間続くと、血管の内側に持続的な圧力がかかり、これが血管の構造を変えてしまう可能性があります。

血管の変化は段階的に進んでいきます。

まず、血管の一番内側を覆っている薄い層が傷つきやすくなります。

この層は、血管を広げたり狭めたりする物質を出して血液の流れを調整する大切な役割を持っていますが、高血圧による負担でこの働きが弱まると、血管がうまく広がれなくなります。

さらに進むと、血管の中間の層で、弾力のある成分が減り、代わりに硬い成分が増えていきます。

研究によると、高血圧の方の血管では、正常な方と比べて硬い成分がかなり増えていて、これが血管を硬くする主な原因になっています。

血管が硬くなる過程(動脈硬化の進行)

段階血管の状態手足への影響
初期血管の内側の層が傷つきやすくなる血管が広がりにくくなり始める
中期弾力のある成分が減り、硬い成分が増える血液を押し流す力が弱まる
進行期血管全体が硬く厚くなる手足の先まで十分な血液が届かなくなる

血管が硬くなると、心臓から送り出された血液の勢いがそのまま手足の細い血管に伝わってしまい、本来は守られるべき毛細血管に強い圧力がかかります。

これによって、手足の細い血管がダメージを受けたり、血液の流れが不安定になったりして、手足への血液の供給が不十分になる可能性があります。

血管の硬さを調べる検査として、「脈波伝播速度」というものがあります。

この検査の数値が高いほど血管が硬いことを示し、将来的に心臓や血管の病気になるリスクが高まることがわかっています。

研究では、一部の集団において、若い人でも血管が硬い場合、将来高血圧になるリスクが高まることが示されています。

例えば、英国の研究では、17歳時点で動脈硬化度が高かった人は、7年後に高血圧になるリスクが高いという報告があります。

ただし、すべての人に当てはまるわけではなく、年齢や生活習慣などの影響も大きいと考えられます。

研究者らは、思春期に動脈硬化度が高いと、7年後の収縮期高血圧のリスクが20%、拡張期高血圧のリスクが2倍に増加することを発見した。

引用:ScienceDaily Arterial stiffness in adolescence may potentially cause hypertension and obesity in young adulthood

手足の先の細い血管に血液が届かず冷える

手足の先にある毛細血管は、直径が髪の毛よりも細く、とてもデリケートな構造をしています。

高血圧と動脈硬化が進むと、この手足の細い血管にいろいろな変化が起こる可能性があります。

まず、手足の細い血管の密度が低下することがあります。

高血圧によって血管にかかる負担が増すと、細い血管の一部が失われたり、新しい血管が作られにくくなったりして、血管の数が減少することがあるのです。

血管の密度が低下すれば、手足の先に届く血液の量も減り、冷えを感じやすくなります。

手足の血管に起こる主な変化
  • 血管の数が減る(血管の希少化)
  • 血管を広げる物質が減る
  • 血管を縮める物質が増える
  • 血管が周りの状況に合わせて調整する機能が低下する
  • 血液がドロドロになりやすくなる

また、手足の血管が周りの状況に合わせて広がったり縮んだりする機能が低下することも問題です。

普通、体は周りの温度や活動の状況に応じて、手足の血管を広げたり狭めたりして血液の流れを調整しています。

しかし、高血圧が続くと、血管の調整機能に変化が起きて、血管がうまく広がりにくくなることがあります。

特に寒い場所では、高血圧の方は正常血圧の方よりも手足の血管が強く縮んでしまい、手足への血液の流れがより大きく減ることが研究でわかっています。

高血圧は皮膚交感神経流出量の増大と非アドレナリン性神経伝達物質への依存度の増大を介して、寒冷に対する末梢皮膚血管収縮反応を増強することを示唆している。

引用:PubMed Neurovascular mechanisms underlying augmented cold-induced reflex cutaneous vasoconstriction in human hypertension

さらに、血管の内側の細胞の働きが悪くなることも重要です。

この細胞の働きが低下すると、血管が広がりにくくなるだけでなく、血液がドロドロになったり、血の塊ができやすくなったりする可能性もあります。

これらすべてが、手足の先への血液の供給を妨げる原因となります。

興味深いのは、手足の冷えの程度と高血圧の重症度が必ずしも比例するわけではないという点です。

むしろ、血管の状態や自律神経の働きなど、いくつかの要因が絡み合って症状が現れるため、人によって大きく違うのが特徴です。

糖尿病や甲状腺の病気が隠れている場合もある

高血圧と末端冷え性が一緒にある時は、他の病気が隠れていることもあります。

特に注意が必要なのは、糖尿病と甲状腺の働きが弱くなる病気(甲状腺機能低下症)です。

高血圧と末端冷え性を引き起こす可能性のある主な病気

病気名特徴冷えが起こる理由
糖尿病高血糖が続く血管の障害、神経の障害
甲状腺機能低下症代謝が低下する体温を保つ力が弱まる
膠原病免疫の異常血管の炎症
レイノー病手足の血管が過度に縮む血流の急激な低下

糖尿病では、血糖値が高い状態が続くことで血管の内側がダメージを受けやすくなり、血管が硬くなるのが普通よりも早く進む傾向があります。

さらに、糖尿病特有の合併症として、神経の障害や手足の血管の病気があり、これらが手足の冷えや痛み、しびれといった症状を引き起こす可能性があります。

実際、糖尿病の方では、高血圧と手足の血液の流れが悪くなる症状を同時に持っているケースが少なくありません。

糖尿病による神経の障害では、温度を感じる神経が傷つくため、手足が冷えていても気づきにくくなることがあります。

これは不思議に思えるかもしれませんが、実際には血液の流れが悪くなっているのに、冷たさを感じる感覚が鈍っているために、症状に気づくのが遅れることもあるのです。

ですから、糖尿病の方で手足に何か違和感がある場合は、たとえ強い冷えを感じていなくても、病院で診てもらうことをお勧めします。

糖尿病と末端冷え性の関係
  • 血管が硬くなるのが早く進む
  • 神経が傷ついて温度を感じにくくなる
  • 手足の血管の病気を起こしやすい
  • 傷が治りにくくなる

甲状腺機能低下症では、体の代謝が全体的に低下するため、体温を保つ力が弱まります。

この病気では、全身の冷え、特に手足の冷えが典型的な症状の一つとして現れます。

また、甲状腺ホルモンが不足すると、血管の働きにも影響が出て、手足の血管の血液の流れが悪くなりやすくなります。

甲状腺機能低下症は高血圧になりやすい病気としても知られており、両方が一緒にあることも珍しくありません。

本メタアナリシスでは、潜在性甲状腺機能低下症は収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)の上昇と関連しているのに対し、潜在性甲状腺機能亢進症は関連していないことが示唆されています。

引用:Nature Blood pressure levels in patients with subclinical thyroid dysfunction: a meta-analysis of cross-sectional data

その他にも、免疫の異常で起こる病気や、手足の血液の流れが悪くなる病気なども、高血圧と末端冷え性を同時に引き起こす可能性があります。

これらの病気では、免疫の異常によって血管に炎症が起きたり、血管が強く縮んだりすることで、手足の冷えが起きます。

ですから、高血圧と末端冷え性が長く続いている場合や、症状が徐々にひどくなっている場合は、単なる体質の問題と考えず、病院で総合的な検査を受けることが大切です。

塩分を控えて体を温める生活で改善できる

高血圧と末端冷え性への対処には、生活習慣を見直すことが大切です。

薬での治療も効果的ですが、毎日の食事や運動、お風呂の入り方などを整えることで、血圧を下げたり、血液の流れを良くしたりすることが期待できます。

ただし、末端冷え性は原因によって改善の程度が異なるため、症状が続く場合は医療機関での相談も必要です。

生活習慣の改善は、薬のようにすぐ効くわけではありませんが、続けることで体質そのものを変えていく力があります。

食事では塩分を控えることが血圧管理の基本になります。

運動は血管の働きを高め、全身の血の巡りを良くします。

お風呂は一時的に体を温めるだけでなく、自律神経のバランスを整える作用もあります。

そして、十分な睡眠とストレスを減らすことで、交感神経の働きすぎを抑えることができます。

これらの習慣は、血圧管理に役立ち、血流を改善することで、手足の冷えの軽減にもつながる可能性があります。

これらの生活習慣の改善は、一つひとつは小さな変化に思えるかもしれませんが、組み合わせて続けることで、お互いに良い効果を高め合います。

研究によると、いくつかの生活習慣を同時に改善することで、一つだけ改善するよりも大きな血圧を下げる効果が得られることがわかっています。

また、生活習慣の改善は高血圧や冷え性だけでなく、糖尿病や脂質異常症など、他の生活習慣病の予防や改善にも役立つという良い点があります。

生活習慣改善による期待できる効果

改善項目主な効果血圧への影響
減塩体内の水分量を調整1g減らすと約1mmHg低下(個人差あり)
運動血管の働きを高める上8.3/下5.2mmHg程度低下(メタ解析の平均値)
入浴自律神経を整えるリラックス効果で安定
睡眠・ストレス管理交感神経の働きを抑える徐々に安定

ここでは、科学的な根拠に基づいた具体的な生活改善の方法について、食事、運動、お風呂、そして睡眠・ストレス管理の4つの面から詳しく解説します。

できることから少しずつ始めて、無理なく続けられる方法を見つけていただければと思います。

減塩と体を温める食材で血流を良くする

食事は高血圧管理の基本であり、同時に末端冷え性の改善にも大きく役立ちます。

特に大切なのが、塩分の摂り方をコントロールすることです。

日本人の食塩摂取量は、厚生労働省の「国民健康・栄養調査(令和元年)」によると、成人男性で平均約10.9g、女性で約9.3gと、目標値(男性7.5g未満、女性6.5g未満)を大きく上回っています。

塩分を摂りすぎると、体の中に水分が溜まって血液の量が増え、血圧が上がります。

研究によると、1日の食塩摂取量を1g減らすと、血圧を約1mmHg下げる効果が期待できることがわかっています(ただし、年齢や元の血圧値によって効果の大きさは異なります)。

減塩の具体的なコツ
  • しょうゆやソースは「かける」のではなく小皿に入れて「つける」
  • 加工食品(ハム、ソーセージ、漬物など)を控える
  • 外食の回数を減らす
  • だしの旨味をしっかり出して薄味でも美味しく感じる工夫をする
  • 香辛料やハーブ、レモンなどで風味をつける
  • 減塩しょうゆや減塩みそを活用する

また、塩分を体の外に出す働きのあるカリウムをたくさん含む野菜や果物を積極的に食べることもお勧めです。

ただし、腎臓の働きが低下している方や一部の降圧薬を飲んでいる方は、カリウムの摂りすぎに注意が必要なため、主治医に相談してください。

一般に「体を温める食材」としては、しょうがやにんにく、根菜類(大根、にんじん、ごぼうなど)がよく知られていますが、こうした分類には科学的に確立された基準があるわけではありません。

しょうがの摂取で一時的に手足の温度が上がったという小規模な研究報告はありますが、末端冷え性を改善する効果については、現時点では十分な証拠がありません。

体を温める食材と冷やす食材

分類食材例特徴
体を温める食材しょうが、にんにく、ねぎ、とうがらし、根菜類(にんじん、ごぼう、大根など)血行を促進し、体温を上げる(科学的根拠は限定的)
積極的に摂りたい食材野菜、果物、低脂肪の乳製品、魚、大豆製品カリウム豊富、血管に良い(※腎機能低下者は医師に相談)
控えめにしたい食材加工食品、インスタント食品、ファストフード塩分が多い

DASH食(ダッシュ食:高血圧を防ぐ食事法)と呼ばれる食事のとり方も効果的です。

この食事法は、野菜、果物、低脂肪の乳製品をたくさん摂り、脂肪の多い食べ物を控えるというもので、研究では血圧を下げる効果が確認されています。

効果の大きさは元の血圧値や減塩の程度によって異なりますが、血圧を6〜11mmHg程度下げる効果があることが確認されています。

結果、アドバイスのみのグループでは収縮期血圧が6.6 mmHg低下し、確立されたグループでは10.1 mmHg低下し、確立された食事療法にDASH食を加えたグループでは11.1 mmHg低下した

引用:PubMed Central DASH Diet: A Review of Its Scientifically Proven Hypertension Reduction and Health Benefits

DASH食は減塩だけでなく、カリウム、マグネシウム、カルシウムといったミネラルや食物繊維もたっぷり摂れるため、血管の健康を保つのにも役立ちます。

また、適度なたんぱく質を摂ることも大切です。

研究によると、ごはんやパンなどの炭水化物の一部をたんぱく質に置き換えることで、血圧を下げる効果が期待できることがわかっています。

ただし、効果は総カロリーや減塩の程度によって変わります。

大豆製品や魚、鶏肉などの良質なたんぱく質を毎日の食事に取り入れることをお勧めします。

ウォーキングなど軽い運動で血の巡りを改善

適度な運動は、高血圧と末端冷え性の両方に効果的です。

運動には血圧を下げる効果があるだけでなく、全身の血液の流れを良くし、血管の働きを高める作用があります。

厚生労働省の健康情報サイト(e-ヘルスネット) では、高血圧を改善するための運動として、できれば毎日、1回30分以上の中くらいの強さの有酸素運動を続けることが推奨されています。

中くらいの強さの運動とは、「ちょっときつい」と感じる程度で、おしゃべりはできるけど歌は歌えないくらいの強さです。

お勧めの運動と運動強度の目安

運動の種類強度特徴
ウォーキング中程度特別な道具不要、誰でも始めやすい
ジョギングやや強め慣れてきたら取り入れる
サイクリング中程度膝への負担が少ない
水泳・水中ウォーキング中程度関節への負担が少ない
ラジオ体操軽め〜中程度全身をバランスよく動かせる

具体的には、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが適しています。

特にウォーキングは、特別な道具もいらず、誰でも気軽に始められる運動としてお勧めです。

メタ解析(複数の研究をまとめた分析)によると、高血圧の方が定期的に運動を続けることで、上の血圧を平均8.3mmHg、下の血圧を5.2mmHg程度下げる効果が報告されています。

ただし、効果は運動の種類や個人の状態によって異なります。

運動強度の目安(自分でチェックする方法)
  • 軽い運動:楽に会話ができる、歌も歌える
  • 中程度の運動:会話はできるが歌は歌えない(これが目標)
  • 強い運動:会話も難しい(やりすぎ)

運動が血圧を下げるしくみとしては、血管の内側の働きが良くなること、交感神経の働きが適度に抑えられること、血管を広げる物質が作られやすくなることなどが挙げられます。

また、運動を続けることで、血管が硬くなるのを遅らせたり、場合によっては改善したりする効果も報告されています。

末端冷え性を改善する面でも、運動は効果的です。

運動中は全身の血液の流れが増え、手足の先まで血液が届きやすくなります。

さらに、定期的に運動する習慣をつけることで、血管の柔らかさが高まり、手足の血管が周りの状況に合わせて広がったり縮んだりする機能も良くなる可能性があります。

運動を始める前の注意点
  • 重症の高血圧(上の血圧180mmHg以上または下の血圧110mmHg以上)の方は必ず医師に相談
  • 心臓病などの合併症がある方は医師の指導のもとで行う
  • 運動中に胸の痛み、息切れ、めまいなどが出たらすぐに中止して病院へ

ただし、重症の高血圧(上の血圧が180mmHg以上または下の血圧が110mmHg以上)の場合や、心臓病などの他の病気がある場合は、運動を始める前に必ず医師に相談することが大切です。

また、運動中に胸の痛み、息切れ、めまいなどの症状が現れた場合は、すぐに運動をやめて、病院を受診してください。

ぬるめのお風呂にゆっくり浸かって全身を温める

お風呂に入ることは、日本人にとって身近なリラックス法であり、高血圧と末端冷え性の両方に効果的です。

ただし、入り方を間違えると、かえって血圧が急に変わったり、心臓に負担がかかったりする可能性があるため、正しい入り方を知っておくことが大切です。

高血圧の方には、38〜40℃程度のぬるめのお湯に、10〜15分程度ゆっくり浸かる入浴が勧められています。

熱すぎるお湯(42℃以上)は、交感神経を刺激して血圧を上げる可能性があるため注意が必要です。

ただし、適切な温度や時間は個人の状態によって異なる場合があります。

また、長時間の入浴は脱水や立ちくらみの原因になることがあるため、適度な時間を守ることが大切です。

高血圧の方のための正しい入浴法

項目お勧めの方法避けるべき方法
お湯の温度38〜40℃(ぬるめ)42℃以上(熱すぎ)
入浴時間10〜15分程度20分以上(長すぎ)
入る時間帯夕食後1時間以上あけて食後すぐ、飲酒後
入り方ゆっくり浸かる、半身浴もOK急に入る、首まで浸かる

ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、副交感神経が優位になり、リラックス効果が得られます

これによって、ストレスが減り、交感神経の働きすぎが抑えられることで、血圧が安定することが期待できます。

同時に、温かいお湯に浸かることで手足の血管が広がり、手足への血液の流れが増えるため、冷え性の改善にもつながります。

入浴時の注意点とヒートショック予防
  • 脱衣所や浴室を事前に暖めておく(冬場は特に重要)
  • お湯に入る前にかけ湯をして体を慣らす
  • 急に立ち上がらず、ゆっくり出る
  • 入浴前後に水分補給をする(コップ1杯程度)
  • 飲酒後の入浴は避ける

お風呂に入る時の注意点として、急な温度の変化を避けることが挙げられます。

特に冬は、暖かい部屋から寒い脱衣所、そして熱いお風呂へと移動することで、血圧が大きく変わる「ヒートショック」が起こりやすくなります。

これを防ぐために、脱衣所や浴室を事前に暖めておく、お湯に入る前にかけ湯をして体を慣らす、といった工夫が効果的です。

また、お風呂の前後には十分な水分補給をすることも大切です。

入浴中は気づかないうちに汗をかいて水分が失われるため、お風呂に入る前にコップ1杯くらいの水を飲み、お風呂から出た後にも水分を補給することをお勧めします。

半身浴も良い方法の一つです。

みぞおちくらいまでの深さのお湯にゆっくり浸かることで、心臓への負担を減らしながら、下半身を中心に温めることができます。

特に末端冷え性で足先の冷えが強い方には、半身浴が向いている可能性があります。

十分な睡眠とストレス解消で自律神経を整える

自律神経のバランスを整えることは、高血圧と末端冷え性の両方を改善する上でとても大切です。

現代社会では慢性的なストレスや睡眠不足によって、交感神経が働きすぎてしまいがちですが、これが血圧を上げたり、手足の血管を縮めたりする大きな原因になっています。

睡眠は、自律神経のバランスを元に戻す最も基本的な方法です。

質の良い睡眠を十分にとることで、副交感神経が優位になり、心と体がリラックスした状態になります。

研究によると、睡眠時間が短い人や眠りの質が悪い人は、高血圧になりやすいことがわかっています。

理想的な睡眠時間は人によって違いますが、一般的に成人では7〜9時間が推奨されています。

質の良い睡眠をとるための工夫
  • 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
  • 寝る1〜2時間前にはスマートフォンやパソコンを見ない
  • 寝室を暗く静かに保つ
  • 寝る前のカフェイン(コーヒー、お茶など)を避ける
  • 寝る前の激しい運動を避ける
  • 適度な運動を日中に行う
  • 昼寝は30分以内にする

ストレスを減らすことも大切です。

慢性的なストレスは交感神経を刺激しすぎて、血圧を上げるだけでなく、血管に炎症を起こしたり、血管が硬くなるのを早めたりする可能性があります。

効果的なストレス解消法としては、深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラックス法があります(効果には個人差があります)。

効果的なストレス解消法

方法やり方効果
深呼吸ゆっくり息を吸って、ゆっくり吐く(5〜10分)副交感神経が働き、リラックス
瞑想静かに座って呼吸に意識を向ける心が落ち着く
ヨガゆっくりした動きとストレッチ体と心の両方がほぐれる
趣味の時間音楽、読書、ガーデニングなど気分転換になる
軽い運動散歩、ストレッチなどストレスホルモンが減る

特に深呼吸は、いつでもどこでも簡単にできる方法です。

ゆっくりと深く呼吸することで、副交感神経が刺激され、心拍数や血圧が自然と下がる可能性があります。

1日に何回か、5〜10分程度の深呼吸の時間を作ることで、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。

また、趣味や楽しい活動に時間を使うことも、ストレスを減らすのに役立ちます。

音楽を聴く、本を読む、友人とおしゃべりを楽しむなど、自分がリラックスできる活動を日常生活に取り入れることをお勧めします。

生活のリズムを整えることも自律神経を安定させるのに役立ちます。

毎日同じ時間に起きて寝る、規則正しい時間に食事をとることで、体内時計が整い、自律神経の働きも安定しやすくなります。

これらの生活習慣の改善は、一度に全部を完璧にやる必要はありません。

できることから少しずつ始めて、無理のない範囲で続けることが大切です。

小さな変化の積み重ねが、長い目で見れば大きな健康の改善につながる可能性があります。

しびれや痛みがある時は早めに内科を受診する

高血圧と末端冷え性があるからといって、必ずしもすぐに病院に行く必要があるわけではありません。

しかし、特定の症状が現れた場合は、もっと深刻な血管の問題や他の病気のサインである可能性があるため、早めに病院で相談することが大切です。

末端冷え性の多くは、生活習慣を改善することである程度良くなる症状です。

しかし、単なる冷えと思っていたものが、実は重大な血管の障害や神経の障害の初期症状であることもあります。

特に高血圧がある方では、血管や心臓に関連した病気になるリスクが高まっているため、注意深く症状を観察することが大切です。

また、高血圧の治療中に新しく冷えの症状が出てきた場合や、もともとあった冷え性が急にひどくなった場合も、医師に相談すべきタイミングといえます。

薬の副作用である可能性もあれば、病状の変化を示している可能性もあるためです。

自分で判断して対処せず、医療の専門家に診てもらうことで、適切な治療の方針を立てることができます。

ここでは、注意すべき症状と、病院で行われる主な検査について解説します。

これらの知識を持つことで、いつ病院を受診すべきかを適切に判断し、早く見つけて早く治療することにつなげられるでしょう。

片方だけ冷える・色が変わる・痛みがある症状は要注意

末端冷え性は普通、両方の手と両方の足に同じように現れることが多いのですが、もし片方の手足だけが極端に冷たかったり、色が変わったりする場合は、血管が詰まっていたり血の塊ができていたりする、もっと深刻な問題が隠れている可能性があります。

すぐに病院を受診すべき症状チェックリスト

症状考えられる問題緊急度
片方だけが極端に冷たい血管の詰まり、血栓
手足の色が白、青紫、赤に変わるレイノー現象、血流障害
痛みやしびれを伴う神経障害、血流障害
傷ができる、治りにくい重度の血流障害非常に高
夜間の痛みで目が覚める重症虚血肢の可能性非常に高
胸痛、息切れ、動悸を伴う心臓・脳血管の問題非常に高(救急受診)

片方だけが冷えたり痛んだりするのは、その部分の血管が詰まっている、または狭くなっている可能性を示しています。

これは「末梢動脈疾患」と呼ばれる状態で、特に糖尿病や脂質異常症、タバコを吸う習慣のある方ではリスクが高くなります。

この病気では、歩いている時に足が痛くなり、休むと楽になるという症状が典型的ですが、進むと何もしていない時にも痛みが出たり、冷たさが強くなったりします。

特に注意が必要な症状の詳細
  • 片側だけの冷えや痛み(血管が詰まっている可能性)
  • 手足の色の変化(白→青紫→赤と変わる場合は特に注意)
  • しびれや感覚の異常(神経の障害の可能性)
  • 手足に傷ができる、治りにくい(重度の血流障害)
  • 夜間に痛みで目が覚める(重症虚血肢の初期症状)
  • 胸痛、息切れ、動悸、めまい、気を失う(心臓・脳の問題)

手足の色の変化も大切なサインです。

普通より白っぽくなる、青紫色になる、赤くなるといった変化がある場合は、血液の流れに異常が起きている可能性があります。

特に「レイノー現象」と呼ばれる状態では、寒さやストレスをきっかけに、指先が白くなり、その後青紫色、赤色と変わることがあります。

この症状は、免疫の異常で起こる病気に伴うことがあるため、専門の医師の診察が必要です。

しびれや感覚の異常も見逃せない症状です。

単なる冷えだけでなく、ピリピリとした感じや、触っても感じにくいといった症状がある場合は、神経に障害が起きている可能性があります。

糖尿病による神経の障害や、背骨の問題、神経の炎症などが考えられます。

糖尿病性神経障害は、糖尿病患者に起こりうる神経障害です。神経障害の種類によって症状は異なり、足の痛みやしびれから、心臓や膀胱などの内臓機能の障害まで、症状は多岐にわたります。

引用:National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Diabetic Neuropathy

手足に傷ができる、傷が治りにくいといった症状も注意が必要です。

これらは血液の流れがかなり悪くなっているサインで、放っておくと壊疽(組織が腐ってしまうこと)などの重い合併症につながる恐れがあります。

夜に手足の痛みで目が覚める、横になると症状がひどくなるといった場合も、血液の流れの障害が進んでいる可能性があります。

これは「重症虚血肢」と呼ばれる状態の初期症状であることがあり、すぐに治療が必要です。

また、手足の冷えに加えて、胸の痛み、息切れ、動悸、めまい、気を失うなどの症状がある場合は、心臓や脳の血管に問題が起きている可能性もあるため、すぐに病院を受診すべきです。

高血圧の薬を飲み始めてから手足の冷えが急にひどくなった場合も、医師に相談することが大切です。

前に述べたように、一部の血圧を下げる薬では副作用として手足の冷えが出ることがあり、薬を変えることで良くなる可能性があります。

血圧測定と血液検査で血管の状態を調べる

病院を受診した場合、高血圧と末端冷え性を調べるために、いくつかの検査が行われる可能性があります。

これらの検査は、症状の原因を特定し、適切な治療の方針を立てるために大切です。

病院で行われる主な検査

検査の種類何がわかるか検査方法
血圧測定血圧のコントロール状況、1日の変動診察室、家庭、24時間測定
血液検査糖尿病、脂質異常症、腎機能、甲状腺機能、貧血採血
脈波伝播速度(PWV)血管の硬さ手足に装置をつける
ABI検査足の血管の詰まり手足の血圧を測る
超音波検査(エコー)血管の壁の厚さ、血流の状態体の表面から観察
心電図心臓への影響胸に電極をつける
胸部X線心臓の大きさや形レントゲン撮影

最も基本的な検査は血圧測定です。

診察室での血圧測定に加えて、家での血圧測定24時間血圧測定(携帯できる装置をつけて1日中の血圧の変化を記録する)が行われることもあります。

これによって、血圧がどれくらいコントロールされているか、また1日の中でどのように変わるかを調べます。

血液検査で調べる主な項目
  • 血糖値・HbA1c:糖尿病の有無
  • コレステロール値・中性脂肪値:脂質異常症の有無
  • クレアチニン値・尿素窒素:腎臓の働き
  • TSH・FT4:甲状腺の働き
  • 赤血球数・ヘモグロビン値:貧血の有無

血液検査では、糖尿病があるかを調べるための血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、脂質異常症を調べるためのコレステロール値や中性脂肪値、腎臓の働きを示すクレアチニン値や尿素窒素などが測られます。

また、甲状腺の働きを調べるためのTSH(甲状腺刺激ホルモン)やFT4(遊離サイロキシン)の測定も行われることがあります。

貧血があるかを調べるために、赤血球数やヘモグロビン値も確認されます。

血管の状態を調べる検査として、血管の硬さを調べる「脈波伝播速度」検査や、足首と上腕の血圧の比(ABI)を測る検査があります。

ABI検査は、手足の血管の病気を見つけるのに役立ち、0.9以下の値が出た場合は、足の血管に狭くなっているところや詰まっているところがある可能性が示されます。

超音波検査(エコー検査)も役に立ちます。

首の血管のエコーでは、首の血管の壁の厚さや血管が硬くなっている程度を調べることができ、足の血管のエコーでは、足の血管の血液の流れの様子を直接見ることができます。

心電図検査で、高血圧による心臓への影響(左心室が大きくなっているかなど)があるかを確認します。

胸のレントゲン検査で心臓の大きさや形を調べることもあります。

より詳しい検査が必要な場合
  • CT血管造影:血管を立体的に見る
  • MRI検査:血管や組織の詳しい状態を見る
  • カテーテル血管造影:管を血管に入れて詳しく調べる
  • 神経伝導速度検査:神経の働きを調べる
  • 筋電図検査:筋肉の電気的な活動を調べる

もっと詳しい検査が必要な場合は、CTやMRIでの血管の検査、場合によっては管を血管に入れて行う血管造影検査が行われることもあります。

これらの検査で、血管が狭くなっているところや詰まっているところの正確な場所や程度がわかります。

神経の問題が疑われる場合は、神経の働きを調べる検査や筋肉の電気的な活動を調べる検査が行われることもあります。

これらで、神経の障害があるかどうかや、その程度を調べることができます。

これらの検査結果を総合的に判断することで、高血圧と末端冷え性の原因が明らかになり、それぞれの方に最適な治療の方針を立てることができます。

必要に応じて、循環器内科、神経内科、糖尿病内科など、専門の診療科への紹介が行われることもあります。

よくある質問(FAQ)

高血圧の薬を飲んでいるのに手足が冷えるのはなぜですか

血圧を下げる薬の一部、特に「ベータ遮断薬」と呼ばれる種類の薬では、副作用として手足の冷えが出ることがあります

この薬は心臓の拍動を抑えて血圧を下げる働きがありますが、同時に手足の血管への血液の流れも少し減らしてしまう可能性があります。

手足の冷えが気になる場合は、主治医に相談することで、薬の種類や量を調整してもらえる場合があります。

自分の判断で薬をやめることは絶対に避けてください。

末端冷え性は女性に多いと聞きますが、高血圧との関係は男女で違いますか

確かに末端冷え性は一般的に女性に多く見られますが、これにはホルモンバランスや筋肉の量のほか、末梢循環や自律神経の働きなど、様々な要因が関わっていると考えられています。

高血圧に伴う末端冷え性については、男性も女性も同じように起こりうる症状です。

ただし、女性では更年期以降にホルモンバランスが変わることで自律神経が乱れやすくなり、高血圧が悪化することがあります

性別に関わらず、症状が気になる場合は病院での相談をお勧めします。

手足が冷たいだけで病院に行く必要はありますか

単なる手足の冷えだけであれば、まずは生活習慣を改善してみることから始めても良いでしょう。

しかし、高血圧がある方で、片方だけが極端に冷たい、色が変わる、痛みやしびれがある、症状が徐々にひどくなっている、といった場合は、早めに病院を受診することをお勧めします。

また、生活習慣を改善しても症状が良くならない場合も、一度医師に相談してみると良いでしょう。

サプリメントで高血圧と冷え性を同時に改善できますか

一部のサプリメント(オメガ3脂肪酸、カリウム、マグネシウムなど)には血圧を下げたり血液の流れを良くしたりする効果が報告されていますが、その効果は普通、食事や運動などの生活習慣の改善に比べると限られています。

また、サプリメントの中には血圧を下げる薬と一緒に飲むと良くない影響が出るものや、高血圧の方には向かないものもあります。

サプリメントを使う前には、必ず主治医や薬剤師に相談することが大切です。

冷え性対策のカイロや電気毛布を使っても大丈夫ですか

カイロや電気毛布を正しく使うこと自体は問題ありませんが、いくつか気をつける点があります。

まず、直接肌に長い時間当て続けると低温やけどの危険があるため、必ず服の上から使ってください。

また、糖尿病などで手足の感覚が鈍くなっている方は、熱さを感じにくいためやけどに気づきにくいことがあります。

外から温めることに頼りすぎるのではなく、運動や食事などで体の内側から温める工夫も一緒に行うことが大切です。

まとめ

高血圧と末端冷え性は、一見すると正反対の症状のように思えますが、実際には血管が硬くなること、血液の流れのバランスが崩れること、自律神経の乱れといった共通の原因によって同時に起こりうる症状です。

特に何年も高血圧が続いている方や、血管が硬くなるリスクがある方では、両方の症状が現れやすくなります。

これらの症状が一緒にある場合、それは単なる体質の問題ではなく、血管の健康状態や他の病気が関係している可能性があります。

血管が硬くなっていたり、糖尿病、甲状腺の働きが弱くなる病気などの他の病気が隠れていたりすることもあるため、症状を軽く見ず、きちんと調べて対処することが必要です。

生活習慣を改善することは、高血圧と末端冷え性の両方を良くする最も基本的で効果的な方法です。

塩分を控えた食事、適度な運動を続けること、正しいお風呂の入り方、十分な睡眠とストレスを減らすことで、血圧のコントロールと手足の血液の流れの改善が期待できます。

これらの改善はすぐには結果が出ませんが、小さな変化を積み重ねることで、長い目で見れば健康の増進につながります。

ただし、片方だけが冷える、色が変わる、痛みやしびれがあるといった症状がある場合は、もっと深刻な血管の障害のサインかもしれません。

このような場合は、早めに病院を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。

高血圧の治療を受けている方で、手足の冷えが気になる場合は、主治医に相談してみましょう。

薬の調整や、追加の検査で、症状が良くなる可能性があります。

自分の判断で薬をやめたり、サプリメントを使ったりすることは避け、必ず医療の専門家に相談してください。

高血圧と末端冷え性の両方とうまく付き合いながら、質の高い生活を送るためには、正しい知識と適切な対処法を知ることが第一歩です。

この記事が、皆様の健康管理の役に立てば幸いです。

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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