「最近、気分が落ち込むことが多い」「何をしても楽しくない」「疲れが取れない」このような症状に悩んでいませんか?
もしかすると、その原因は睡眠の問題、特に睡眠時無呼吸症候群(OSA)にあるかもしれません。
- 呼吸停止による睡眠中断で深い睡眠が取れない
- 慢性的睡眠不足で前頭葉の感情調節機能が低下
- 低酸素状態でセロトニンなど幸せホルモンが減少
- 脳の微小血管にダメージで認知機能に影響
- 日中の眠気で生活の質が低下し自己肯定感が減る
実は、睡眠時無呼吸症候群を持つ人のうち、73%もの人がうつ症状を示したという研究結果があります。
睡眠中に呼吸が何度も止まることで、脳や体に十分な酸素が行き渡らず、日中の気分や活力に大きな影響を与えているのです。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群とうつ病の深い関係について、最新の研究結果をもとに解説します。
また、適切な治療により両方の症状が改善する可能性についてもお伝えします。
- 睡眠時無呼吸症候群がうつ病を引き起こすメカニズム
- 両方の病気に共通する症状と見分け方
- CPAP治療などによるうつ症状の改善効果
- 自分でできる睡眠の質のチェック方法
- 生活習慣の改善による症状緩和の可能性
睡眠時無呼吸症候群がうつ病につながる理由
睡眠時無呼吸症候群とうつ病の関係は、近年の研究で次第に明らかになってきました。
ある研究によると、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、一般の人と比べてうつ病を発症するリスクが2〜3倍程度高いことが分かっています。
なぜ、睡眠中の呼吸の問題が心の健康に影響を与えるのでしょうか。
その理由を詳しく見ていきましょう。
慢性的な睡眠不足がもたらす心への影響
睡眠時無呼吸症候群では、一晩に何十回、重症の場合は何百回も呼吸が止まります。
その度に脳が目覚めの信号を送り、睡眠が中断されます。
本人は朝まで寝ていたつもりでも、実際には深い睡眠が取れていません。
この慢性的な睡眠不足は、感情の中枢である扁桃体の興奮を抑制する機能を低下させます。
前頭葉は感情の調節に重要な役割を果たしており、その機能が低下すると、些細なことでイライラしたり、悲観的になったりしやすくなります。
研究によると、睡眠の質が悪いと、うつ症状に似た症状が現れることが確認されています。
OSAに関連する一般的な徴候と症状には、日中の過度の眠気、朝の頭痛、集中力の低下、不眠症、意欲の欠如、多動性または易怒性、体重増加、疲労などがあります。
ScienceDirect Obstructive sleep apnea and depression: A systematic review and meta-analysis
脳の酸素不足と気分障害の関係
睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まることで血液中の酸素濃度が低下します。
重症の場合、血液中の酸素濃度が大幅に低下することがあります。
通常は95%以上であるべき数値が、これほど低下すると、脳への酸素供給が不足します。
脳の酸素不足は、神経伝達物質のバランスを崩し、セロトニンやドーパミンなどの「幸せホルモン」の分泌を妨げます。
これらの物質は気分の安定に欠かせないもので、不足するとうつ症状が現れやすくなる可能性が示唆されています。
研究によると、低酸素症は 5-HT レベルと受容体機能を変化させ、動物モデルでは血漿中の 5-HT の大幅な減少と取り込みおよび分解の増加が観察されている
PMC Obstructive Sleep Apnea and Serotoninergic Signalling Pathway: Pathomechanism and Therapeutic Potentia
また、慢性的な低酸素状態は、脳の微小血管にダメージを与え、認知機能や感情調節に関わる領域に影響を及ぼす可能性があります。
日中の眠気や疲労感による生活の質の低下
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状である日中の強い眠気は、仕事や日常生活に大きな支障をきたします。
集中力が低下し、ミスが増え、人間関係にも影響が出ることがあります。
このような状況が続くと、自己肯定感が低下し、「自分は何をやってもうまくいかない」という否定的な思考パターンに陥りやすくなります。
社会活動への参加も減り、孤立感が強まることで、うつ病のリスクがさらに高まります。
実際、睡眠時無吸症候群の重症度とうつ症状に関連があることが研究で示されています。
潜在的な共変量で調整した場合、うつ病症状を経験する可能性が1.36倍高く (オッズ比 [OR]、95%信頼区間は2.36 [1.71–3.25])、うつ病症状と睡眠時無呼吸症候群の重症度の間に正の相関関係が認められた。
引用:BioMed Central Association of sleep apnea and depressive symptoms among US adults: a cross-sectional study
睡眠時無呼吸症候群とうつ病の共通する症状
睡眠時無呼吸症候群とうつ病には、多くの共通する症状があります。
このため、どちらか一方だけが診断され、もう一方が見過ごされることがよくあります。
両方の病気に共通する症状を正しく理解することで、適切な診断と治療につながります。
集中力や記憶力の低下
両方の病気で最もよく見られる症状の一つが、認知機能の低下です。
睡眠時無呼吸症候群では、夜間の低酸素状態と睡眠の分断により、脳の働きが低下します。
一方、うつ病でも脳内の神経伝達物質の異常により、同様の症状が現れます。
具体的には、仕事でケアレスミスが増える、人の名前が思い出せない、読んだ内容が頭に入らないなどの症状が現れます。
研究によると、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くが、集中力の問題を訴えており、これはうつ病の診断基準にも含まれる重要な症状です。
OSA患者は集中的注意プロセスと選択的注意プロセスの両方で欠陥を示し、反応時間(RT)のみでは患者の問題を検出して特徴付けるのに効果的ではなく、エラー分析とパフォーマンスの安定性も考慮する必要があることを示唆しています。
引用:PMC The Neuropsychological Profile of Attention Deficits of Patients with Obstructive Sleep Apnea: An Update on the Daytime Attentional Impairment
イライラや不安感の増加
睡眠不足と慢性的な疲労は、感情のコントロールを困難にします。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約33〜44 %が何らかの不安症状を抱えているという報告があります。
些細なことで怒りっぽくなったり、将来への漠然とした不安を感じたりすることが増えます。
これらの症状は、周囲の人との関係にも影響を与えます。
家族や同僚との衝突が増え、それがさらなるストレスとなって症状を悪化させる悪循環に陥ることもあります。
身体的な疲労感と意欲の低下
「朝起きても疲れが取れていない」「何もする気が起きない」という症状は、両方の病気に共通しています。
睡眠時無呼吸症候群では、質の良い睡眠が取れないため、身体の回復が不十分になります。
日中の活動量が減り、趣味や社交活動への興味も失われていきます。
これは、うつ病の中核症状である「興味・喜びの喪失」と重なる部分が多く、診断を難しくする要因の一つとなっています。
臨床研究では、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの40〜51 %がうつ症状を示すことが報告されています。
睡眠時無呼吸症候群の治療でうつ症状も改善する可能性
睡眠時無呼吸症候群の適切な治療により、うつ症状が大幅に改善することが、多くの研究で明らかになっています。
特に、CPAP(持続陽圧呼吸療法)治療は、睡眠の質を改善するだけでなく、気分の改善にも効果的であることが分かっています。
CPAP治療による睡眠の質の向上
CPAP治療は、睡眠時無呼吸症候群の第一選択治療です。
マスクを通じて一定の圧力で空気を送り込むことで、気道の閉塞を防ぎます。
研究によると、CPAP治療を3か月間継続し、1日5時間以上使用した患者さんでは、治療前は約74%がうつ症状を示していたのに対し、治療後はわずか約4%にまで減少しました。
治療により、AHIは46.7 ± 27.4回/時間から6.5 ± 1.6回/時間に、PHQ-9は11.3 ± 6.1回/時間から3.7 ± 2.9回/時間に、PHQ-9 ≥ 10は74.6%から3.9%に減少しました(いずれの場合もp < 0.001)。
引用:PMC Depressive Symptoms before and after Treatment of Obstructive Sleep Apnea in Men and Women
さらに同研究で注目すべきは、自殺念慮を持っていた41名の患者さん全員が、CPAP治療後にはそのような考えを持たなくなったという報告です。
これは、良質な睡眠が精神的健康にいかに重要であるかを示しています。
CPAP治療を1日5時間以上使用することで、うつ症状の改善効果が高まることも分かっています。
生活習慣の見直しがもたらす相乗効果
体重減少は、睡眠時無呼吸症候群の改善に大きく貢献します。
10%の体重減少により、睡眠時無呼吸症候群の重症度が26%改善するという研究結果があります。
さらに、運動や食事療法を含む包括的な生活習慣改善プログラムは、睡眠の質だけでなく、気分の改善にも効果的です。
8週間の集中的な生活習慣改善プログラムを受けた患者さんの45%が、プログラム終了時にはCPAP治療が不要になり、6か月後には62%の方がCPAP不要となったという報告もあります。
ただし、この研究は男性の中等度から重症の患者さんを対象としています。
8週間後、介入群の参加者の45%がCPAP療法を必要としなくなり、6ヶ月後には介入群の参加者の62%がCPAP療法を必要としなくなりました。
引用:PMC Effect of an Interdisciplinary Weight Loss and Lifestyle Intervention on Obstructive Sleep Apnea Severity: The INTERAPNEA Randomized Clinical Trial
適度な運動は、睡眠の質を向上させるだけでなく、うつ症状を改善する効果もあります。
エンドルフィンの関与が指摘されていますが、詳しいメカニズムは研究が続けられています。
治療を受けた方の体験談から見る改善例
実際の治療例では、CPAP治療開始後、多くの患者さんが「人生が変わった」と表現するほどの改善を経験しています。
ある50歳の男性患者さんは、重度の睡眠時無呼吸症候群とうつ症状に悩んでいましたが、CPAP治療開始後、「今までの人生で最も調子が良い」と述べています。
長期的な研究では、CPAP治療を1年間継続することで、うつ症状だけでなく、不安症状も改善することが示されています。
遵守患者は、うつ病および不安症状が有意に改善しました。
引用:Dove Medical Press Cognitive Functions, Depressive and Anxiety Symptoms After One Year of CPAP Treatment in Obstructive Sleep Apnea
ただし、改善の程度は個人差があり、基礎にあるうつ症状が重い場合は、より大きな改善が期待できることも分かっています。
うつ病かもと思ったら睡眠の質もチェックしよう
うつ症状を感じたとき、その原因が睡眠時無呼吸症候群にある可能性を考えることは重要です。
適切な診断を受けるために、自分でできるチェック方法と、医療機関への相談の仕方について説明します。
睡眠時無呼吸症候群のセルフチェックポイント
睡眠時無呼吸症候群の可能性を自己評価するには、いくつかのチェックポイントがあります。
まず、最も重要なのは「いびき」です。
特に、大きないびきをかく、呼吸が止まっているのを指摘されたことがある場合は要注意です。
その他のチェックポイントとして、朝の頭痛、日中の強い眠気、夜間の頻尿(2回以上トイレに起きる)、起床時の口の渇きなどがあります。
また、BMI(体格指数)が25以上、首回りが太い場合(一般的に男性で40-43cm以上、女性で37-40cm以上)もリスクが高くなります。
簡易的なスクリーニングツールとして、STOP-Bang質問票があります。
- いびき(Snoring)
- 疲労感(Tired)
- 呼吸停止の目撃(Observed apnea)
- 高血圧(Pressure)
- BMI(Body mass index)
- 年齢(Age)
- 首回り(Neck)
- 性別(Gender)
これら8項目をチェックするもので、3項目以上該当する場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
医療機関を受診する際の準備と相談のコツ
医療機関を受診する際は、睡眠に関する情報を整理しておくことが大切です。
睡眠日記をつけて、就寝時間、起床時間、夜間の覚醒回数、日中の眠気の程度などを記録しておくと、医師の診断に役立ちます。
また、パートナーや家族からの情報も重要です。
いびきの大きさ、呼吸停止の有無、寝相の悪さなど、本人では気づけない情報を聞いておきましょう。
受診時は、うつ症状だけでなく、睡眠の問題についても必ず伝えることが大切です。
「最近気分が落ち込んでいるが、睡眠の質も悪い気がする」というように、両方の症状を伝えることで、適切な検査につながります。
睡眠専門外来と精神科の連携の重要性
睡眠時無呼吸症候群とうつ病が併存している場合、睡眠専門外来と精神科の連携が重要になります。
まず、睡眠検査(ポリソムノグラフィー)を受けて、睡眠時無呼吸症候群の有無と重症度を確認します。
睡眠時無呼吸症候群が診断された場合、CPAP治療などの適切な治療を開始します。
同時に、うつ症状が重い場合は、精神科での治療も並行して行うことがあります。
睡眠専門外来と精神科の主な役割と治療内容
| 診療科 | 主な役割 | 実施される治療・対応 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 睡眠専門外来 | 睡眠時無呼吸症候群(OSA)の診断と治療 | ・ポリソムノグラフィーによる検査 ・CPAP療法などの導入 | OSAがうつ症状に与える影響も評価 |
| 精神科 | うつ症状への対応 | ・抗うつ薬の処方 ・精神療法など | 症状が重い場合は睡眠治療と並行実施 |
研究によると、抗うつ薬治療で改善しなかった患者さんが、睡眠時無呼吸症候群の治療を追加することで、症状が改善したケースが多く報告されています。
MDDと診断され、抗うつ薬による治療を受けたが改善がみられなかった患者は、CPAP療法を始めるとうつ病の症状が改善し始めた
引用:PMC Depression, Obstructive Sleep Apnea and Psychosocial Health
重要なのは、両方の専門医が情報を共有し、総合的な治療計画を立てることです。
睡眠の改善がうつ症状の改善につながり、うつ症状の改善が睡眠の質をさらに向上させるという好循環を作ることができます。
よくある質問(FAQ)
- 睡眠時無呼吸症候群の治療でうつ病は完全に治りますか?
-
睡眠時無呼吸症候群の治療により、多くの方でうつ症状の改善が見られますが、完全に治るかどうかは個人差があります。
ある研究では、CPAP治療により約96%の患者さんでうつ症状の改善が見られましたが、症状が完全になくなるとは限りません。
また、実際の臨床現場では改善率に幅があることも報告されています。
ただし、睡眠の質が改善することで、うつ病の治療効果も高まる可能性があります。
- 抗うつ薬を飲んでいても睡眠時無呼吸症候群の検査は受けられますか?
-
はい、抗うつ薬を服用中でも睡眠検査は受けられます。
むしろ、抗うつ薬で改善しない場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性を考慮すべきです。
検査前に服用中の薬について医師に伝えることで、より正確な診断が可能になります。
- いびきがなくても睡眠時無呼吸症候群の可能性はありますか?
-
はい、いびきがない場合でも睡眠時無呼吸症候群の可能性はあります。
特に中枢性睡眠時無呼吸症候群では、いびきが目立たないことがあります。
日中の眠気、疲労感、集中力低下などの症状がある場合は、いびきの有無にかかわらず検査を受けることをお勧めします。
- 睡眠時無呼吸症候群とうつ病、どちらを先に治療すべきですか?
-
両方の病気が診断された場合、同時に治療を開始することが理想的です。
睡眠時無呼吸症候群の治療は比較的早く効果が現れるため、まずCPAP治療などを開始し、うつ症状の変化を観察しながら、必要に応じて精神科治療を調整するアプローチが一般的です。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群とうつ病には深い関係があり、適切な診断と治療により、両方の症状を改善できる可能性があることをお伝えしました。
重要なポイントは、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くがうつ症状を抱えており、逆にうつ症状がある方は睡眠の質についても評価すべきだということです。
CPAP治療や生活習慣の改善により、睡眠の質が向上すると、うつ症状も大幅に改善する可能性があります。
もし、気分の落ち込みと共に、いびきや日中の眠気、朝の頭痛などの症状がある場合は、睡眠専門外来での検査を検討してください。
また、現在うつ病の治療を受けていて改善が見られない場合も、睡眠時無呼吸症候群の可能性を医師に相談することをお勧めします。
良質な睡眠は、心身の健康の基盤です。
睡眠の問題を解決することで、より充実した日々を送ることができるでしょう。
一人で悩まず、専門医に相談して、適切な診断と治療を受けることが、回復への第一歩となります。
American Academy of Sleep Medicine CPAP therapy reduces symptoms of depression in adults with sleep apnea
PMC The Role of Sleep in Emotional Brain Function
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PMC Weight Loss Is Integral to Obstructive Sleep Apnea Management. Ten-Year Follow-up in Sleep AHEAD
PMC The impact of exercise on depression: how moving makes your brain and body feel better
Dove Medical Press Cognitive Functions, Depressive and Anxiety Symptoms After One Year of CPAP Treatment in Obstructive Sleep Apnea
Mayo Clinic News Network Mayo Clinic Q and A: Neck size one risk factor for obstructive sleep apnea
Sleep Foundation STOP-Bang Score and Obstructive Sleep Apnea
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