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肥満といびきの危険な関係とは?メタボが引き起こす心血管リスクと改善方法

肥満といびきの危険な関係とは?メタボが引き起こす心血管リスクと改善方法

夜中に家族から「いびきがうるさい」と指摘されたことはありませんか。

最近体重が増えてきたことと関係があるのではないかと心配になっている方も多いのではないでしょうか。

実は、肥満やメタボリックシンドロームといびきには密接な関係があり、放置すると心臓や血管に深刻な影響を与える可能性があることが医学的に明らかになっています。

肥満によるいびきが危険な理由
  • 首回り・舌・のどの脂肪で気道が狭くなり無呼吸症候群になる
  • 内臓脂肪が横隔膜を圧迫し炎症で気道が狭くなる
  • 肥満度が増えるほど睡眠時無呼吸症候群になりやすくなる
  • 睡眠中の酸素不足で心臓に負担がかかり血管疾患リスクが高まる
  • 自律神経の乱れで高血圧や不整脈、脳卒中のリスクが上がる

肥満によるいびきは単なる生活の不便さにとどまらず、睡眠時無呼吸症候群という深刻な病気のサインである場合があります。

この状態が続くと、高血圧、不整脈、さらには心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる病気のリスクが高まることが報告されています。

この記事でわかること
  • 肥満やメタボがいびきを引き起こす具体的なメカニズム
  • いびきが示す心血管系への危険なサイン
  • BMI値やメタボの診断基準といびきの関係性
  • 効果的な改善方法と医療機関での治療選択肢
  • 早期対策の重要性と具体的な行動指針
目次

肥満やメタボがいびきを悪化させるメカニズム

肥満といびきの関係を理解するためには、まず呼吸のメカニズムと脂肪の蓄積がどのように気道に影響を与えるかを知ることが重要です。

体重が増加すると、全身のさまざまな部位に脂肪が蓄積されますが、特に首回りや舌の付け根、咽頭周辺の脂肪沈着が呼吸に大きな影響を与えます。

睡眠中は筋肉が弛緩するため、これらの脂肪による物理的な圧迫がより顕著になり、気道が狭くなることでいびきが発生しやすくなるのです。

体重増加が気道に与える影響

体重が増加すると、首回りだけでなく舌や軟口蓋(口の奥の柔らかい部分)にも脂肪が蓄積されます。

研究によると、BMIが1単位増加するごとに、睡眠時無呼吸症候群のリスクが14%増加することが報告されています。

特に注目すべきは、舌の体積増加です。

肥満により舌に脂肪が蓄積すると、仰向けで寝た際に舌根部が重力により後方に落ち込みやすくなり、気道を塞ぐ原因となります。

また、咽頭周囲の脂肪組織は気道の内径を物理的に狭めるだけでなく、気道の弾力性も低下させます。

これにより、呼吸時の陰圧で気道が虚脱しやすくなり、いびきや無呼吸が発生しやすい状態を作り出します。

首回りが40cm以上(男女共通)の場合、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まることが示されており、人種や個人差により最適な閾値は異なります。

内臓脂肪の蓄積と呼吸への影響

メタボリックシンドロームの主要な要素である内臓脂肪の蓄積は、見た目以上に呼吸機能に大きな影響を与えます。

腹部に蓄積した内臓脂肪は横隔膜を押し上げ、肺の拡張を制限します。

腹囲の増加により、機能的残気量(安静呼気後に肺に残る空気の量)が減少することが報告されています。

この肺容量の減少は、特に仰向けで寝ている時に顕著になります。

重力により内臓脂肪がさらに横隔膜を圧迫し、呼吸が浅くなることで、体は酸素不足を補うために呼吸数を増やそうとします。

その結果、気道を通る空気の流速が速くなり、軟部組織の振動が増加していびきが大きくなるのです。

さらに、内臓脂肪からは炎症性サイトカインと呼ばれる物質が分泌され、これが気道の炎症を引き起こし、気道の狭窄を悪化させる可能性があることも研究で示唆されています。

首回りの脂肪といびきの関係性

首回りの脂肪蓄積は、いびきの最も直接的な原因の一つです。

研究によると、首回りの太さは睡眠時無呼吸症候群の独立した予測因子であり、BMIよりも強い相関を示す場合があることが報告されています。

BMI スコアの補正にもかかわらず、NHR は小児と成人の両方において診断結果の予測において重要な予測的役割を果たしました。

引用:PubMed Central Neck Circumference-Height Ratio as a Predictor of Sleep Related Breathing Disorder in Children and Adults

首回りに蓄積した脂肪は、外側から気道を圧迫するだけでなく、咽頭腔内にも脂肪が沈着することで、気道の断面積を減少させます。

睡眠中は全身の筋肉が弛緩しますが、特に咽頭周囲の筋肉の緊張が低下すると、脂肪による圧迫と相まって気道が著しく狭くなります。

また、脂肪組織は単なる物理的な障害物としてだけでなく、局所的な炎症反応を引き起こし、気道粘膜の浮腫を生じさせることで、さらに気道を狭める要因となることも指摘されています。

いびきが示す心血管リスクのサイン

いびきは単なる騒音の問題ではなく、心血管系に深刻な負担をかけている可能性を示す重要な警告サインです。

特に大きないびきや不規則ないびき、呼吸が止まるような症状を伴ういびきは、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高く、これは心臓病や脳卒中のリスクを大幅に増加させることが多くの研究で証明されています。

睡眠中の低酸素状態と覚醒反応の繰り返しは、交感神経の過剰な活性化を引き起こし、血圧上昇や不整脈の原因となります。

睡眠時無呼吸症候群と心臓への負担

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が10秒以上停止することが1時間に5回以上起こる状態を指します。

中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群患者は、健常者と比較して心血管疾患のリスクが2〜3倍程度高いことが複数の研究で示されています。

呼吸が止まるたびに血中酸素濃度が低下し、心臓は酸素不足を補うために心拍数を増加させ、より強く血液を送り出そうとします。

この状態が一晩に何十回、何百回と繰り返されることで、心臓は慢性的な過負荷状態に陥ります。

また、睡眠中の低酸素状態は心筋細胞に直接的なダメージを与え、心筋の線維化や心室のリモデリング(形態変化)を引き起こすことも明らかになっています。

慢性の持続性低酸素症は炎症経路を活性化し、血管リモデリングを引き起こし、最終的には肺血管抵抗と右心室機能不全の不可逆的な増加につながります。

引用:American Heart Association Journals Obstructive Sleep Apnea and Cardiovascular Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association

高血圧や不整脈との関連性

睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係は特に強く、複数の国際的な高血圧治療ガイドラインでも、睡眠時無呼吸症候群は二次性高血圧の主要な原因の一つとして挙げられています。

睡眠中の無呼吸エピソードは交感神経を刺激し、カテコラミンと呼ばれるストレスホルモンの分泌を増加させます。

これにより血管が収縮し、血圧が上昇します。

研究では、中等度から重度の睡眠時無呼吸症候群患者(AHI≥15/h)の約70.8%が高血圧を合併していることが示されています。

このコホートの動脈性高血圧の有病率は、画期的な睡眠心臓健康研究と一致して、中等度/重度の OSA (無呼吸低呼吸指数 ≥ 15/時) 患者の 70.8% と推定されました。

PubMed Central Hypertension is the crucial link between obstructive sleep apnea and arterial stiffness

不整脈についても、睡眠時無呼吸症候群との強い関連が認められています。

特に心房細動のリスクは、睡眠時無呼吸症候群患者で2〜4倍高くなることが報告されています。

夜間の低酸素状態と覚醒反応は、心臓の電気的活動を不安定にし、期外収縮や心房細動などの不整脈を誘発します。

さらに、睡眠時無呼吸による胸腔内圧の変動は、心房の伸展を引き起こし、これが心房細動の発生基盤となることも指摘されています。

脳卒中リスクの増大について

睡眠時無呼吸症候群は脳卒中の独立した危険因子であることが、多くの疫学研究で証明されています。

アメリカ心臓協会(AHA)によると、重度の睡眠時無呼吸症候群患者は、健常者と比較して脳卒中のリスクが約2倍高いことが示されています。

睡眠中の反復的な低酸素状態は、脳血管の内皮機能を障害し、動脈硬化を促進します。

また、血小板の活性化や血液凝固能の亢進により、血栓形成のリスクも増加します。

特に注目すべきは、睡眠時無呼吸症候群患者では早朝の脳卒中発症リスクが高いことです。

一般的に脳卒中は早朝から午前中にかけて発症リスクが高くなる傾向があることが知られています。

これは、睡眠中の低酸素状態と覚醒時の血圧上昇が重なることで、脳血管への負担が最大になるためと考えられています。

さらに、睡眠時無呼吸症候群は脳卒中後の予後にも影響し、機能回復の遅延や再発リスクの増加と関連することも明らかになっています。

肥満度別に見るいびきの危険度と健康への影響

肥満の程度といびきや睡眠時無呼吸症候群の重症度には明確な相関関係があります。

体重が増加するにつれて、いびきの頻度や強度が増し、睡眠時無呼吸症候群のリスクも段階的に上昇します。

しかし、個人差も大きく、軽度の肥満でも重症の睡眠時無呼吸を呈する場合もあれば、高度肥満でも軽症にとどまる場合もあります。

これは、脂肪の分布パターンや顎顔面の形態、上気道の解剖学的特徴などが複雑に関与するためです。

BMI値といびきの相関関係

BMI(Body Mass Index)は肥満度を評価する最も一般的な指標であり、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスク評価にも広く用いられています。

研究によると、BMI 25以上(過体重)で睡眠時無呼吸症候群のリスクが約2倍、BMI 30以上(肥満)で約5倍に増加し、BMI値が高くなるほどリスクが上昇することが報告されています。

また、日本人は欧米人と比較して、より低いBMIでも睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいことが知られています。

これは、顎顔面の骨格構造の違いによるもので、日本人は下顎が小さく後退している傾向があるため、軽度の肥満でも気道が狭窄しやすいという特徴があります。

重症群のSNA(鞍部・鼻部・棘下角)およびSNB(鞍部・鼻部・顎下角)は、非肥満の軽症および中等症OSA患者と比較して低かった

引用:PubMed Facial axis angle as a risk factor for obstructive sleep apnea

さらに興味深いことに、体重の変化といびきの改善には強い相関があることも明らかになっています。

縦断的研究では、体重を10%減少させると、睡眠時無呼吸の重症度を示すAHI(無呼吸低呼吸指数)の改善が期待できることが示されています。

これは、減量がいびきや睡眠時無呼吸症候群の治療において極めて重要であることを示唆しています。

メタボリックシンドロームの診断基準といびき

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積を基盤として、高血圧、高血糖、脂質異常症などが複合的に存在する状態を指します。

日本の診断基準では、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上を必須項目とし、血圧、血糖、脂質の異常のうち2項目以上を満たす場合にメタボリックシンドロームと診断されます。

メタボリックシンドロームと睡眠呼吸障害には強い関連があることは、複数の研究で示されています。

メタボリックシンドロームといびきの関係は双方向性があることも重要なポイントです。

内臓脂肪の蓄積がいびきや睡眠時無呼吸を引き起こす一方で、睡眠時無呼吸による慢性的な睡眠不足や間欠的低酸素は、インスリン抵抗性を増大させ、脂質代謝を悪化させることで、メタボリックシンドロームをさらに悪化させる悪循環を形成します。

重度の睡眠時無呼吸症候群患者では、インスリン抵抗性の増加や2型糖尿病の発症リスク上昇が報告されています。

OSA患者は非OSA患者よりも2型糖尿病を発症する可能性が高く、2型糖尿病患者の半数以上がOSAに罹患している。

引用:PubMed Central Sleep apnea and type 2 diabetes

また、メタボリックシンドロームに伴う慢性炎症も、いびきや睡眠時無呼吸を悪化させる要因となります。

内臓脂肪から分泌される炎症性サイトカインは、上気道の粘膜に炎症を引き起こし、気道の狭窄を助長します。

このため、メタボリックシンドロームの改善は、単に体重を減らすだけでなく、炎症を抑制し、代謝を改善することで、いびきや睡眠時無呼吸の改善にもつながることが期待されます。

年齢や性別による影響の違い

いびきや睡眠時無呼吸症候群の発症には、年齢と性別が大きく影響します。

一般的に、加齢とともに筋肉の緊張が低下し、気道を開いた状態に保つ力が弱くなるため、いびきをかきやすくなります。

性別による違いも顕著で、閉経前の女性は男性と比較して睡眠時無呼吸症候群の有病率が低いことが知られています。

これは、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが上気道の筋緊張を維持し、呼吸中枢の感受性を高める作用があるためです。

しかし、閉経後はこれらのホルモンが急激に減少するため、睡眠時無呼吸症候群のリスクが男性と同等レベルまで上昇します。

女性のOSAの有病率は閉経後に著しく上昇します。閉経後女性の47%~67%にOSAがみられます。

引用:PubMed Central Obstructive Sleep Apnea: Women’s Perspective

また、肥満の分布パターンにも性差があり、男性は内臓脂肪型肥満になりやすく、女性は皮下脂肪型肥満になりやすい傾向があります。

しかし、閉経後の女性では内臓脂肪が蓄積しやすくなり、これがいびきや睡眠時無呼吸症候群のリスク上昇につながります。

さらに、妊娠中の女性では、体重増加と妊娠に伴うホルモン変化により、一時的にいびきが増加することも報告されています。

肥満といびきを改善する実践的な対策法

肥満といびきの改善には、包括的なアプローチが必要です。

減量は最も根本的な解決策ですが、それと並行して睡眠環境の改善や、必要に応じて医療機関での専門的な治療を組み合わせることで、より効果的な改善が期待できます。

重要なのは、個人の状況に応じた現実的で持続可能な方法を選択することです。

急激な減量は体に負担をかけるだけでなく、リバウンドのリスクも高いため、段階的で着実な改善を目指すことが推奨されています。

効果的な減量方法と目標設定

減量によるいびきの改善効果は科学的に実証されており、体重の5〜10%の減少でも顕著な改善が見られることが報告されています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインでは、肥満者に対して週0.5〜1kgの減量ペースを推奨しており、これは月に2〜4kg、3ヶ月で6〜12kgの減量に相当します。

この程度のペースであれば、極端な食事制限や過度な運動を必要とせず、日常生活に無理なく取り入れることができます。

食事療法については、総カロリー摂取量を1日あたり500〜750kcal減らすことで、週0.5〜0.75kgの減量が可能です。

地中海食やDASH食(高血圧予防食)などの食事パターンは、減量効果だけでなく、炎症の抑制や血圧の改善効果も期待でき、睡眠時無呼吸症候群の改善にも有効であることが示されています。

特に、夕食の時間と量に注意することが重要で、就寝3時間前までに夕食を済ませ、炭水化物の摂取を控えめにすることで、睡眠中の胃食道逆流を防ぎ、いびきの軽減につながります。

食事療法のポイント
  • 1日あたり500〜750kcal減らす
  • 地中海食やDASH食を取り入れる
  • 夕食は就寝3時間前までに済ませる
  • 炭水化物を控えめにして逆流を予防

運動療法は、有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせが最も効果的です。

世界保健機関(WHO)は、週150分以上の中強度有酸素運動、または週75分以上の高強度有酸素運動を推奨しています。

さらに、週2回以上の筋力トレーニングを加えることで、基礎代謝の向上と筋肉量の維持が期待できます。

興味深いことに、一部の研究では、舌や咽頭の筋肉を鍛える特別な運動(口腔咽頭エクササイズ)を3ヶ月間継続することで、いびきの強度が大幅に減少したことが報告されています。

睡眠時の姿勢や環境の工夫

睡眠時の姿勢は、いびきの発生に大きく影響します。

仰向けで寝ると、重力により舌根部が後方に落ち込み、気道が狭くなりやすくなります。

体位依存性の睡眠時無呼吸症候群では、横向きで寝ることでいびきの軽減や改善が期待できることが報告されています。

横向き寝を維持するための工夫として、背中にテニスボールを入れたポケット付きのTシャツを着用する方法や、体位変換防止用の特殊な枕を使用する方法があります。

睡眠環境の最適化も重要な要素です。

室温は18〜22度、湿度は40〜60%が目安とされています。

特に乾燥した環境では鼻腔や咽頭の粘膜が乾燥し、気道の狭窄を悪化させる可能性があるため、加湿器の使用が推奨されます。

また、アレルギー性鼻炎がある場合は、寝具を定期的に洗濯し、ダニやハウスダストを減らすことも重要です。

適切な治療により鼻呼吸が改善し、いびきの軽減が期待できます。

姿勢と環境の工夫

項目工夫・ポイント期待できる効果
姿勢と維持方法横向きで寝る、背中にテニスボール入りTシャツや体位変換防止枕を使用舌根の沈下を防ぎ、いびきを軽減
室温・湿度と加湿室温18〜22度、湿度40〜60%、加湿器の活用粘膜の乾燥を防ぎ、気道の狭窄を予防
アレルギー対策寝具を定期的に洗濯、ダニ・ハウスダスト除去鼻呼吸改善、いびき軽減
枕の高さと特殊枕頸椎が床と平行になる高さ、いびき対策用特殊枕の使用気道を確保しやすく、呼吸の通りを改善

枕の高さも気道の開通性に影響します。

枕が高すぎると頸部が屈曲し、気道が狭くなります。

逆に低すぎると、舌根部が後方に落ち込みやすくなります。

理想的な枕の高さは、横向きで寝た時に頸椎が床と平行になる高さです。

最近では、いびき対策用の特殊な形状の枕も開発されており、頸部を適切な角度に保ちながら気道を開いた状態に維持する効果が期待されています。

医療機関での治療オプション

いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療には、重症度に応じたさまざまな医療的介入があります。

最も一般的で効果的な治療法は、CPAP(持続陽圧呼吸療法)です。

これは、鼻マスクを通じて一定の圧力で空気を送り込み、気道を開いた状態に保つ装置です。

アメリカ胸部医師会の報告によると、CPAP療法により睡眠時無呼吸症候群の症状が大幅に改善し、血圧の低下(平均数mmHg程度)や心血管リスクの減少も期待できることが示されています。

軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群に対しては、口腔内装置(マウスピース)も有効な選択肢です。

これは、下顎を前方に固定することで気道を広げる装置で、歯科医師により個人に合わせて作製されます。

米国睡眠医学会(AASM)と米国歯科睡眠医学会(AADSM)による研究報告では、適切に調整された口腔内装置により、軽症から中等症の睡眠時無呼吸症候群患者の約50〜70%でAHIが50%以上改善することが示されています。

CPAPと比較して装着の煩わしさが少なく、携帯性に優れているため、軽症例や出張の多い方に適しています。

主な治療オプションと特徴

治療法対象・適応効果・特徴留意点
CPAP(持続陽圧呼吸療法)中等症〜重症症状改善、血圧低下、心血管リスク減少装着が煩わしい場合あり
口腔内装置(マウスピース)軽症〜中等症気道を広げて呼吸改善歯科で個別作製、携帯性に優れる
外科的治療(UPPPなど)扁桃肥大・軟口蓋過剰など解剖学的要因組織を切除し気道を拡大効果は中等度で長期的に減弱の可能性
減量手術肥満例大幅な減量により症状改善リスクあり、完全治癒は保証されない

外科的治療も選択肢の一つです。

扁桃肥大や軟口蓋の過剰な組織がいびきの原因となっている場合は、UPPP(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)などの手術が考慮されます。

UPPPの成功率は患者選択や成功の定義により約40〜60%と中等度であり、長期的には効果が減弱する場合もあることから、適応は慎重に検討する必要があります。

減量手術により大幅な減量が達成され、睡眠時無呼吸症候群の寛解率は4065%程度であることが報告されており、完全な治癒が保証されるものではありません。

ただし、手術療法はリスクも伴うため、適応は慎重に検討される必要があります。

よくある質問(FAQ)

どのくらい体重が増えるといびきがひどくなりますか?

体重増加といびきの関係は個人差が大きいものの、一般的に体重が5kg増加すると、いびきの頻度や強度が明らかに増加する可能性があります。

特にBMIが25を超えると、リスクが急激に上昇する傾向があります。

ただし、脂肪の付き方や体質により影響の程度は異なります。

痩せればいびきは必ず改善しますか?

減量によりいびきが改善する可能性は高いですが、必ず完全に解消するわけではありません。

体重の10%程度の減量でAHI(無呼吸低呼吸指数)の改善が期待できますが、骨格構造や加齢による影響もあるため、個人差があります。

減量と併せて他の対策も検討することが推奨されます。

肥満でなくてもいびきをかく場合の対処法は?

肥満以外の原因として、鼻づまり、扁桃肥大、顎の形態異常、アルコール摂取、加齢などが考えられます。

まず耳鼻咽喉科で鼻腔や咽頭の状態を確認し、必要に応じて睡眠検査を受けることをお勧めします。

横向き寝や禁酒も効果的な場合があります。

いびきの検査はどこで受けられますか?

睡眠外来、呼吸器内科、耳鼻咽喉科などで検査を受けることができます。

簡易検査は自宅でも可能ですが、詳細な診断には入院での終夜睡眠ポリグラフ検査が必要な場合があります。

まずはかかりつけ医に相談し、適切な専門医療機関を紹介してもらうとよいでしょう。

メタボといびきの両方がある場合、まず何から始めるべきですか?

両者は相互に影響し合うため、同時にアプローチすることが理想的です。

まず食事と運動による段階的な減量を開始し、並行して睡眠時の体位改善を試みることをお勧めします。

症状が重い場合は、早期に医療機関を受診し、CPAP療法などの治療を検討することも重要です。

まとめ

肥満やメタボリックシンドロームといびきの関係は、単なる生活の質の問題にとどまらず、心血管疾患のリスクを大幅に増加させる深刻な健康問題です。

体重増加による首回りや舌、咽頭への脂肪蓄積が気道を狭め、いびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こし、これが高血圧、不整脈、脳卒中などの命に関わる疾患につながる可能性があることを理解することが重要です。

幸いなことに、適切な対策により改善が期待できます。

体重の5〜10%の減量でも顕著な効果が得られ、睡眠時の姿勢改善や環境整備といった簡単な工夫も有効です。

重要なのは、早期に問題を認識し、個人の状況に応じた対策を継続的に実施することです。

いびきが続く場合や、日中の強い眠気、起床時の頭痛、夜間の頻尿などの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いため、早期の医療機関受診を強く推奨します。

適切な診断と治療により、健康リスクを大幅に減少させ、生活の質を向上させることが可能です。

肥満といびきの改善は、将来の重大な健康問題を予防する最も効果的な投資といえるでしょう。

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、ポリソムノグラフィーなど最新の睡眠検査設備を導入し、CPAP療法・口腔内装置・生活習慣指導を組み合わせた包括的なSAS診療を提供。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「眠りから全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動に取り組んでいる。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする生活習慣病の早期発見と予防に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い眠りと健康」の実現を目指している。

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