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仕事や学校での眠気に悩むのはいびきが原因?症状の特徴と適切な相談先を解説

仕事や学校での眠気に悩むのはいびきが原因?症状の特徴と適切な相談先を解説

いびきは単なる騒音の問題ではありません。

実は、いびきが原因となって日中の強い眠気を引き起こし、仕事中の集中力低下や学校での居眠りといった深刻な問題につながることがあります。

米国国立心肺血液研究所(NHLBI)によると、いびきは睡眠時無呼吸症候群の主要な症状の一つであり、この疾患により日中の過度な眠気や集中力の問題が生じる可能性があると報告されています。

いびきが仕事・学校での眠気に与える影響
  • 無呼吸により深い眠りが得られず日中の強い眠気が発生する
  • 仕事の生産性低下やミス増加、交通事故リスクが上昇
  • 学校では注意力散漫や記憶力低下により学業成績が悪化する
  • 子供は扁桃腺肥大が主因で軽症でも学習能力に影響する可能性
  • 根本解決にはCPAP療法や体重管理など医学的治療が必要

本記事では、いびきと日中の眠気の関係について医学的な観点から解説し、症状の改善方法や適切な医療機関の選び方まで、実践的な情報をお伝えします。

特に、仕事や学業のパフォーマンスに影響を与えているケースでは、早期の対処が重要となります。

この記事でわかること
  • いびきが日中の眠気を引き起こすメカニズム
  • 仕事や学校生活への具体的な影響と対処法
  • 生活習慣の改善方法
  • 医療機関の選び方と治療の流れ
  • よくある疑問への回答
目次

いびきが引き起こす仕事中の眠気と集中力低下のメカニズム

いびきと日中の眠気の関係を理解するためには、まず睡眠中に何が起きているかを知る必要があります。

米国国立心肺血液研究所の研究によると、いびきは上気道の部分的な閉塞により生じ、これが睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)の徴候である可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が繰り返し停止し、血液中の酸素濃度が低下します。

この状態が一晩中続くことで、深い睡眠が得られなくなり、日中の強い眠気が出現するのです。

睡眠の質が低下する理由

睡眠時にいびきをかく人の体内では、複雑な変化が起きています。

厚生労働省のe-ヘルスネットによると、睡眠時無呼吸症候群では呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下するため、脳が覚醒して再び呼吸を始めますが、眠り出すとまた止まってしまうという悪循環が生じます。

これを一晩中繰り返すため、深い睡眠がまったくとれなくなるのです。

睡眠時無呼吸症候群は一般にAHI≥5で診断され、5–15(軽症)、15–30(中等症)、≥30(重症)に分類されます(重症度区分は臨床での標準)。

睡眠の分断化により、本来であれば深い睡眠段階に入るべき時間帯に、浅い睡眠や覚醒を繰り返すことになります。

その結果、睡眠時間は確保していても、実質的な休息が得られていない状態となるのです。

日中の眠気が仕事のパフォーマンスに与える影響

欧州呼吸器学会(European Respiratory Society)の研究では、睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度な眠気が、仕事の生産性に深刻な影響を与えることが報告されています。

米国での研究によると、過度の眠気を伴う睡眠時無呼吸症候群では、プレゼンティーイズムや作業能率の低下が統計学的に有意に大きいことが報告されています。

具体的には、仕事中の眠気、細かい作業の困難、全体的な生産性の低下といった問題が確認されており、中には上司や同僚からの指摘を受けるケースもあることが明らかになっています。

日本においても、国土交通省の調査により、睡眠時無呼吸症候群が交通事故のリスクを高めることが指摘されており、職業運転手への検査が推奨されています。

SASの場合、SASでない人に比べ交通事故のリスクが約 2.4 倍注1)であることが示されています

引用:国土交通省「自動車運送事業者における 睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル ~SAS対策の必要性と活用~

これは、単に個人の健康問題にとどまらず、社会的な安全性にも関わる重要な課題であることを示しています。

職場で気をつけたい危険信号

職場において、いびきに関連した睡眠障害の兆候を早期に発見することは重要です。

以下のような症状が複数見られる場合は、医療機関での相談を検討する必要があります。

会議中や作業中の強い眠気は最も一般的な症状です。

特に単調な作業や静かな環境での眠気が顕著な場合は注意が必要です。

また、判断力や記憶力の低下により、ミスが増えたり、重要な情報を忘れやすくなったりすることもあります。

午後の時間帯における極度の疲労感や、朝起きた時の頭痛、口の渇きなども重要なサインです。

米国国立心肺血液研究所によると、これらの症状は睡眠時無呼吸症候群の典型的な症状であり、未治療の場合、心血管疾患のリスクを高める可能性があるため、早期の診断と治療が推奨されています。

学校での居眠りといびきの関係性

子供や若年層におけるいびきと学業への影響は、成人とは異なる特徴があります。

米国疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、睡眠不足の子供は注意力や行動の問題を抱えやすく、これが学業成績の低下につながる可能性があることが示されています。

子供や若年層のいびきの特徴

小児のいびきは成人とは異なる原因で生じることが多く、その影響も独特です。

研究によると、習慣的にいびきをかく小学生の割合は地域や定義により3.5%から12%の幅で報告されており、年齢層により性差の傾向が変わることが知られています。

子供のいびきの主な原因として、扁桃腺やアデノイドの肥大が挙げられます。

これらの組織が大きいと、睡眠中に気道が狭くなりやすく、いびきや睡眠時無呼吸を引き起こします。

また、アレルギー性鼻炎や慢性的な鼻詰まりも、子供のいびきの重要な危険因子となります。

注目すべき点は、子供の場合、軽度の睡眠呼吸障害でも認知機能や学習能力に影響を与える可能性があることです。

成人では中等症以上で問題となることが多いのに対し、子供では軽症でも注意が必要となります。

学業成績や学校生活への影響

複数の研究により、習慣的にいびきをかく子供は学業成績に悪影響を受けることが明らかになっています。

ドイツで行われた研究では、習慣的にいびきをかく小学3年生は、数学、科学、スペリングの成績が有意に低いことが報告されました。

具体的には、毎晩いびきをかく子供は、いびきをかかない子供と比較して、数学で3.6倍、科学で4.3倍、スペリングで3.5倍、成績不良のリスクが高いことが示されています。

「常に」いびきをかくことは、数学(オッズ比:95%信頼区間:3.6、1.3-10.1)、理科(4.3、1.3-14.6)、スペリング(3.5、1.2-10.3)の学業成績の低下と有意に関連していました。

引用:PubMed Snoring, intermittent hypoxia and academic performance in primary school children

米国では、中学生と高校生の大多数が推奨される睡眠時間を確保できていないことが明らかになっています。

2015年時点で高校生の72.7%(全国)が睡眠不足、中学生の57.8%(9州)でも不足が報告されており、2021年の州別推計では高校生の不足は71~84%に及びます。

睡眠不足やいびきに関連した睡眠障害は、単に眠気を引き起こすだけでなく、記憶力、集中力、問題解決能力などの認知機能全般に影響を与えます。

これにより、授業内容の理解や記憶が困難になり、長期的には学力の低下につながる可能性があります。

保護者が注意すべきサイン

保護者が子供の睡眠呼吸障害を早期に発見することは、適切な治療につなげるために重要です。

以下のような症状が見られる場合は、医療機関での相談を検討する必要があります。

夜間の症状として、大きないびき、呼吸の一時停止、口呼吸、寝汗、頻繁な寝返り、夜尿などがあります。

特に、いびきの後に静かになり、その後大きな音とともに呼吸を再開するパターンは、睡眠時無呼吸の可能性を示唆します。

日中の症状では、過度の眠気、朝の頭痛、口呼吸、多動性、注意力散漫、学習困難などが挙げられます。

米国の研究では、睡眠呼吸障害のある未就学児の22%が日中の眠気のリスクがあり、学業成績の低下や多動性との関連も報告されています。

SDBと学習に対するSESの寄与を、白人とアフリカ系アメリカ人の低SESの未就学児の保護者から収集した1,010件の有効な質問票で調査した。恵まれない環境にある未就学児の22%がSDBのリスクがあると報告された。

PubMed Snoring in preschoolers: associations with sleepiness, ethnicity, and learning

行動面では、イライラしやすい、落ち着きがない、攻撃的になるなどの変化が見られることがあります。

これらの症状は注意欠陥多動性障害(ADHD)と誤診されることもあるため、睡眠の問題を含めた包括的な評価が必要です。

いびきと日中の眠気を改善する生活習慣

いびきと日中の眠気の改善には、医療的な治療と並行して、生活習慣の見直しが重要な役割を果たします。

米国睡眠医学会のガイドラインでは、体重管理や飲酒回避、体位療法などの特定の生活習慣の変更が睡眠時無呼吸症候群の治療において効果的であることが示されています。

睡眠環境の整え方

良質な睡眠を得るためには、適切な睡眠環境の整備が不可欠です。

室温や湿度は個人差がありますが、涼しく静かで暗い環境が推奨されます(目安として室温16〜20℃程度、湿度40〜60%程度)。

過度に乾燥した環境は鼻腔や喉の粘膜を刺激し、いびきを悪化させる可能性があります。

寝具の選択も重要です。

枕の高さが適切でない場合、気道が圧迫されていびきが生じやすくなります。

首の自然なカーブを保持し、気道を開いた状態に保てる枕を選ぶことが大切です。

また、マットレスは体重を均等に分散し、背骨の自然な曲線を維持できるものを選びましょう。

睡眠環境を整えるためのポイント

項目内容・目安
室温・湿度室温16〜20℃程度、湿度40〜60%程度が目安
空気環境過度な乾燥は鼻や喉を刺激し、いびきを悪化させる可能性
首の自然なカーブを保持し、気道を開いた状態を保てる高さ
マットレス体重を均等に分散し、背骨の自然な曲線を維持できるもの
騒音対策防音対策や白色雑音(ホワイトノイズ)の利用が有効
電子機器寝室は睡眠専用空間とし、テレビやスマートフォンは極力置かない

騒音対策も睡眠の質に大きく影響します。

外部の騒音が気になる場合は、防音対策や白色雑音(ホワイトノイズ)の利用も一部の研究で効果が示されています。

また、寝室は睡眠専用の空間として、テレビやスマートフォンなどの電子機器は極力置かないようにすることが推奨されます。

日常生活で実践できる対策

体重管理は、いびきと睡眠時無呼吸症候群の改善において最も重要な要素の一つです。

研究によると、肥満患者における減量手術は睡眠時無呼吸症候群の重症度を有意に改善することが報告されています。

軽度から中等度の体重減少でも、症状の改善が期待できます。

BSは、特に術後早期において、肥満を伴うOSA患者の無呼吸およびOSA症状を軽減する可能性がある。

引用:PubMed Central Bariatric surgery reduces sleep apnea in obese patients with obstructive sleep apnea by increasing pharyngeal cross-sectional area during the early postoperative period

規則正しい運動習慣も効果的です。

有酸素運動は体重管理に役立つだけでなく、睡眠の質を向上させる効果もあります。

ただし、就寝直前の激しい運動は避け、夕方までに行うことが望ましいとされています。

週に150分以上の中強度の運動、または75分以上の高強度の運動が推奨されています。

睡眠姿勢の工夫も重要です。

体位依存性の睡眠時無呼吸症候群では、仰向けで寝ると気道が狭くなりやすく、横向きで寝ることで気道の開通性が保たれ、いびきが軽減される可能性があります。

体位療法デバイスの使用も、一部の患者には有効とされています。

食事のタイミングと内容にも注意が必要です。

カフェインについては、研究により就寝6時間前の摂取でも睡眠を阻害することが証明されており、6時間前からの摂取回避が強く推奨されます。

就寝時、就寝の 3 時間前、または就寝の 6 時間前に適度な量のカフェインを摂取すると、プラセボと比較して睡眠障害に有意な効果があることを示しました

引用:PubMed Central Caffeine Effects on Sleep Taken 0, 3, or 6 Hours before Going to Bed

就寝前3時間以内の食事や高脂肪食、辛い食べ物の回避は、睡眠衛生の観点から広く推奨されていますが、睡眠時無呼吸症候群の直接的な改善効果については限定的なエビデンスに留まります。

避けるべき習慣と行動

アルコールの摂取は、いびきと睡眠時無呼吸を悪化させる主要な要因の一つです。

米国国立心肺血液研究所によると、アルコールは喉の筋肉を弛緩させ、上気道の閉塞を引き起こしやすくします。

就寝前のアルコール摂取は避け、飲酒する場合は就寝の少なくとも3〜4時間前までに済ませることが推奨されています。

喫煙も気道の炎症を引き起こし、いびきを悪化させます。禁煙により、気道の炎症が改善し、いびきの軽減が期待できます。

受動喫煙も同様の影響があるため、家族の協力も重要です。

睡眠薬や筋弛緩薬の使用には注意が必要です。

これらの薬剤は喉の筋肉を弛緩させ、睡眠時無呼吸を悪化させる可能性があります。

必要な場合は、医師と相談の上、適切な薬剤を選択することが重要です。

不規則な睡眠スケジュールも問題となります。

毎日同じ時刻に就寝し、起床することで、体内時計が整い、睡眠の質が向上します。

週末の寝だめは避け、一定のリズムを保つことが大切です。

いびきの相談先と医療機関の選び方

いびきや日中の眠気に悩む場合、適切な医療機関を選択し、専門的な診断を受けることが重要です。

米国睡眠医学会の立場声明によると、睡眠時無呼吸症候群の診断は医師のみが行うことができ、包括的な睡眠評価に基づいて行われるべきとされています。

最初に相談すべき診療科

いびきの相談先として、まず考慮すべきは内科または呼吸器内科です。

これらの診療科では、問診や身体診察を通じて、睡眠時無呼吸症候群の可能性を評価し、必要に応じて専門的な検査への紹介を行います。

日本呼吸器学会のガイドラインでは、睡眠時無呼吸症候群の診断と治療において、呼吸器内科医が中心的な役割を果たすことが示されています。

耳鼻咽喉科も重要な選択肢です。

特に、鼻づまりや扁桃腺の肥大など、上気道の構造的な問題が疑われる場合は、耳鼻咽喉科での評価が有用です。

最初に相談すべき診療科と適切なケース

診療科・施設相談が適切なケース
内科・呼吸器内科いびき全般の初期相談。問診・診察で睡眠時無呼吸症候群の可能性を評価し、必要に応じ専門検査を紹介。呼吸器内科は診断・治療の中心的役割。
耳鼻咽喉科鼻づまり・扁桃腺肥大など、上気道の構造的な問題が疑われる場合に有用。
小児科・小児耳鼻咽喉科子供で扁桃腺やアデノイド肥大が原因と考えられる場合に適切。
睡眠外来・睡眠センター睡眠障害専門の施設。睡眠医療認定医による包括的な検査・治療が受けられる。

子供の場合は、扁桃腺やアデノイドの肥大が原因となることが多いため、小児科または小児耳鼻咽喉科での相談が適切です。

近年では、睡眠外来や睡眠センターなど、睡眠障害を専門に扱う診療科も増えています。

これらの専門施設では、睡眠専門医による包括的な評価と治療が受けられます。

日本睡眠学会認定の睡眠医療認定医が在籍する施設では、より専門的な診療が期待できます。

専門的な検査と診断の流れ

睡眠時無呼吸症候群の診断には、客観的な検査が必要です。

米国睡眠医学会のガイドラインによると、ポリソムノグラフィー(PSG)が睡眠時無呼吸症候群診断のゴールドスタンダードとされています。

診断の流れ
  1. 初診・問診
    ・詳細な問診と身体診察
    ・いびきの頻度や大きさ、呼吸停止の有無、起床時の症状を確認
  2. 質問票による評価
    ・エプワース眠気尺度(ESS)で日中の眠気を測定
    ・11点以上で病的な眠気ありと判断
  3. 簡易検査
    ・自宅で携帯型睡眠検査装置を使用
    ・鼻呼吸、胸腹部の運動、酸素飽和度を記録しAHIを算出
    ・軽症~中等症を見逃す可能性があるため注意
  4. 精密検査(PSG)
    ・一泊入院で脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸、酸素飽和度を同時記録
    ・AHIの数値に基づき診断(5以上:OSA、15以上:中等症、30以上:重症)

初診時には、詳細な問診と身体診察が行われます。

エプワース眠気尺度(ESS)などの質問票を用いて、日中の眠気の程度を評価します。

11点以上の場合、病的な眠気があると判断されます。

また、いびきの頻度や大きさ、呼吸停止の有無、起床時の症状などについて詳しく聞き取りが行われます。

簡易検査として、自宅で行える携帯型睡眠検査装置を用いた検査があります。

これは、鼻呼吸センサー、胸腹部の呼吸運動センサー、酸素飽和度計などを装着して一晩記録するもので、無呼吸低呼吸指数(AHI)を算出できます。

ただし、米国睡眠医学会の研究では、簡易検査は軽症から中等症の睡眠時無呼吸を見逃す可能性があることが指摘されています。

精密検査であるポリソムノグラフィーは、通常一泊入院で行われます。

脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸、酸素飽和度などを同時に記録し、睡眠の質と呼吸状態を詳細に評価します。

AHIが5以上で睡眠時無呼吸症候群と診断され、15以上で中等症、30以上で重症と分類されます。

治療法の選択肢と期待できる効果

睡眠時無呼吸症候群の治療には、重症度や原因に応じて様々な選択肢があります。

米国睡眠医学会のレビューによると、適切な治療により生活の質が改善し、交通事故のリスクが低下し、慢性的な健康問題のリスクが軽減されることが示されています。

持続陽圧呼吸(CPAP)療法は、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群に対する第一選択治療です。

睡眠中に鼻マスクを通じて一定の圧力で空気を送り込み、気道を開いた状態に保ちます。

欧州呼吸器学会の研究では、CPAP治療を適切に使用した患者において生産性の改善が期待でき、日中の眠気が軽減することが報告されています。

口腔内装置(マウスピース)は、軽症から中等症の患者や、CPAPが使用できない患者に適応されます。

米国睡眠医学会と米国睡眠歯科医学会の共同ガイドラインでは、カスタムメイドの調整可能な装置の使用が推奨されています。

下顎を前方に保持することで気道を開き、いびきと無呼吸を改善します。

睡眠時無呼吸症候群の治療法と特徴

治療法適応・特徴期待できる効果
CPAP療法中等症〜重症の第一選択治療。鼻マスクから空気を送り気道を保持。日中の眠気改善、生産性向上、事故リスク低減
口腔内装置(マウスピース)軽症〜中等症、またはCPAPが困難な場合。下顎を前方に保持。いびき・無呼吸の改善
外科的治療UPPP、扁桃摘出、舌根縮小など。気道を広げ症状を改善
舌下神経刺激療法胸部装置で舌下神経を刺激。新しい治療法。睡眠中の気道開通を維持
薬物療法炭酸脱水酵素阻害薬(主に中枢性無呼吸)。閉塞性への適応は限定的。効果は限定的
減量薬(チルゼパチド)肥満を伴う中等症〜重症例(米国承認)。体重減少による無呼吸改善

外科的治療も選択肢の一つです。

口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)、扁桃摘出術、舌根部の縮小術などがあります。

最近では、舌下神経刺激療法という新しい治療法も登場しています。

これは、胸部に埋め込んだ装置から舌下神経を刺激し、睡眠中の気道開通性を保つものです。

薬物療法については限定的ですが、炭酸脱水酵素阻害薬は主に中枢性無呼吸での知見が中心で、閉塞性睡眠時無呼吸症候群への一般的適応は限定的です。

また、最近では肥満を伴う中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群に対する減量薬(チルゼパチド)米国で承認されています。

よくある質問(FAQ)

いびきがひどくても日中眠くない場合は問題ないですか?

日中の眠気がなくても、いびきが習慣的である場合は注意が必要です。

米国国立心肺血液研究所の研究によると、睡眠時無呼吸症候群の患者の中には、日中の眠気を自覚していない人も存在します。

これは、慢性的な睡眠不足に体が適応してしまい、眠気を感じにくくなっている可能性があります。

また、睡眠時無呼吸症候群は高血圧、心疾患、脳卒中などのリスクを高めるため、症状の有無にかかわらず、習慣的な大きないびきがある場合は医療機関での評価を受けることが推奨されます。

仕事中の眠気対策として市販薬は効果的ですか?

市販の眠気覚ましや栄養ドリンクは一時的な対症療法にすぎず、根本的な解決にはなりません。

カフェインなどの覚醒作用のある成分は短期的には効果がありますが、睡眠時無呼吸症候群が原因の場合、適切な治療なしには症状の改善は期待できません。

また、過度のカフェイン摂取は睡眠の質をさらに悪化させる可能性があります。

根本的な原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。

子供のいびきはいつ頃から相談すべきですか?

子供の習慣的ないびき(週3回以上)は、年齢に関わらず医療機関での相談が推奨されます。

特に、呼吸の一時停止、口呼吸、夜尿、日中の多動や注意力散漫などの症状を伴う場合は、早期の評価が必要です。

米国の研究では、未治療の睡眠呼吸障害が学業成績や認知発達に長期的な影響を与える可能性が示されているため、早期診断と治療が重要です。

いびき外来と睡眠外来の違いは何ですか?

いびき外来は主にいびきの原因となる上気道の問題に焦点を当て、耳鼻咽喉科医が中心となって診療を行うことが多いです。

一方、睡眠外来は睡眠障害全般を扱い、睡眠時無呼吸症候群だけでなく、不眠症、過眠症、睡眠時随伴症など幅広い睡眠の問題に対応します。

どちらを選ぶかは症状によりますが、日中の眠気を伴ういびきの場合は、包括的な評価が可能な睡眠外来が適している場合があります。

健康保険は適用されますか?

睡眠時無呼吸症候群の診断と治療には健康保険が適用されます。

ポリソムノグラフィー検査、CPAP治療、口腔内装置の作成などは、医師の診断に基づいて保険適用となります。

ただし、単純ないびきの治療(いびき防止グッズなど)は保険適用外となることが多いです。

CPAP治療の場合、月1回の受診が保険適用の原則となっており、使用実態の目標として「1日4時間以上を月の約70%以上」が広く用いられています。

まとめ

いびきと日中の眠気は、単なる生活の質の問題ではなく、健康と安全に関わる重要な医学的問題である可能性があります。

本記事で解説したように、いびきが睡眠時無呼吸症候群の症状である場合、未治療のまま放置すると、仕事や学業のパフォーマンス低下だけでなく、心血管疾患などの深刻な健康問題につながるリスクがあります

重要なのは、症状を正しく認識し、適切な医療機関で評価を受けることです。

生活習慣の改善と医学的治療を組み合わせることで、多くの患者で症状の改善が期待できます。

特に、CPAP療法などの適切な治療により、日中の眠気が改善し、生活の質が向上することが多くの研究で示されています。

もし、あなたやご家族が習慣的ないびきや日中の眠気に悩んでいる場合は、早期に医療機関を受診することをお勧めします。

適切な診断と治療により、健康的で充実した日常生活を取り戻すことができるでしょう。

睡眠の質の改善は、仕事や学業のパフォーマンス向上だけでなく、長期的な健康維持にもつながる重要な投資となります。

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、ポリソムノグラフィーなど最新の睡眠検査設備を導入し、CPAP療法・口腔内装置・生活習慣指導を組み合わせた包括的なSAS診療を提供。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「眠りから全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動に取り組んでいる。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする生活習慣病の早期発見と予防に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い眠りと健康」の実現を目指している。

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