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睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療とは?

睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療とは?

効果や費用、CPAP治療との違いを解説 睡眠中に呼吸が止まる、いびきがひどい、日中の強い眠気に悩まされている方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

この病気の治療法として、CPAP治療が有名ですが、マウスピース(口腔内装置)による治療も効果的な選択肢の一つです。

睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療
  • 下顎を前方固定し気道拡大する治療法
  • 軽症〜中等症の睡眠時無呼吸症候群に有効
  • 携帯性に優れ、継続率が高い
  • 保険適用の3割負担約1〜1.5万円前後で作製可能(医科からの紹介状が必要)
  • 初期の顎違和感や歯列変化などの副作用がある

マウスピース治療は、軽症から中等症の睡眠時無呼吸症候群に対して推奨される治療法であり、CPAP治療と比較して携帯性に優れ、使用時の違和感が少ないという特徴があります。

本記事では、睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療について、医学的な根拠に基づいて詳しく解説します。

治療を検討されている方が、自分に合った治療法を選択できるよう、必要な情報を整理してお伝えします。

この記事でわかること
  • 睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療の仕組みと効果 
  • マウスピース治療が適している人の特徴
  • 治療にかかる費用と保険適用の条件 
  • CPAP治療との違いとそれぞれのメリット・デメリット
  • 治療開始までの具体的な流れ
目次

睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療の仕組みと効果

睡眠時無呼吸症候群の治療において、マウスピース(口腔内装置)は重要な治療選択肢の一つです。

この治療法は、特に軽症から中等症の患者さんに対して高い効果を示すことが、多くの研究で明らかになっています。

マウスピース治療の基本的な原理は、下顎を前方に固定することで気道を確保し、睡眠中の呼吸を改善することにあります。

マウスピース(口腔内装置)が無呼吸を改善するメカニズム

マウスピース治療で使用される口腔内装置は、主に下顎前方移動型装置(MAD:Mandibular Advancement Device)と呼ばれるタイプが用いられます。

この装置は、上下の歯列に装着し、下顎を通常の位置よりも前方に保持する構造になっています。

下顎を前方に移動させることで、舌根部も前方に引き出され、咽頭部の気道スペースが拡大します。

睡眠時無呼吸症候群の多くは、睡眠中に舌根部や軟口蓋が後方に落ち込み、気道を塞ぐことで発生します。

マウスピースはこの物理的な閉塞を防ぐことで、睡眠中の正常な呼吸を維持する効果があります。

多くの研究では、下顎を最大前突量の50〜75%(多くは6〜8mm程度)を目安に個別に調整することで、有意な気道拡大効果が得られると報告されています。

文献では、最大下顎前突 (MMP) の 50%~75% が一般的に選択されており、前進量が最大前突の 80% を超える場合もあります。

引用:PMC The effect of gradually increased mandibular advancement on the efficacy of an oral appliance in the treatment of obstructive sleep apnea

ただし、前方移動量は個人差があり、過度の前方移動は顎関節への負担となる可能性があるため、専門医による適切な調整が重要です。

マウスピース治療で期待できる効果と改善率

マウスピース治療の効果については、複数の臨床研究でその有効性が確認されています。

ORCADES研究によると、適切に調整されたマウスピースを使用した場合、無呼吸低呼吸指数(AHI)が平均して約50%減少することが示されています。

AHIの中央値(IQR)は、ベースラインの26.4件/時(17.70~37.10)から5年間の追跡調査では11.05件/時(6.10~17.30)に減少しました(中央値[IQR]の変化:-50.3% [-72.7~-24.2]、P < .0001、図3)。

引用:PMC Mandibular advancement device use in obstructive sleep apnea: ORCADES study 5-year follow-up data

具体的な改善効果として、以下のような症状の改善が期待できます。

マウスピース治療で期待できる改善効果
  • 睡眠中の無呼吸・低呼吸の回数が減少
  • 血中酸素濃度の低下が改善
  • いびきの音量や頻度が著しく減少

これらの改善により、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下といった症状も軽減されることが多く報告されています。

同研究によると、マウスピース治療を受けた患者において、治療開始3〜6か月時点では約79%、5年後の長期経過では約52%の治療性効率が報告されています。

軽症から中等症の睡眠時無呼吸症候群に適している理由

マウスピース治療が軽症から中等症の睡眠時無呼吸症候群に特に推奨される理由は、その効果と使用の容易さのバランスにあります。

軽症(AHI 5〜15)および中等症(AHI 15〜30)の患者さんでは、気道の閉塞が比較的軽度であるため、下顎の前方移動による気道拡大効果が十分に得られやすいのです。

アメリカ睡眠歯科学会のガイドラインでは、軽症から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対して、マウスピース治療を第一選択として推奨しています。

特に、BMIが30未満で、仰向けで寝た時に症状が悪化する体位依存性の睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、より高い治療効果が期待できるとされています。

一方、重症(AHI 30以上)の場合は、気道の閉塞が著しいため、マウスピースだけでは十分な改善が得られない可能性があります。

ただし、CPAP治療に不耐性がある重症患者さんに対しては、代替治療としてマウスピースが検討されることもあります。

このような場合でも、完全な正常化は困難でも、症状の部分的な改善により生活の質が向上する可能性があります。

マウスピース治療が向いている人の特徴と適応条件

マウスピース治療は、すべての睡眠時無呼吸症候群の患者さんに適しているわけではありません。

治療効果を最大限に得るためには、適切な患者選択が重要です。

医学的な適応基準に加えて、患者さんの生活スタイルや治療への希望も考慮する必要があります。

マウスピース治療の医学的な適応基準

マウスピース治療の適応を判断する際、最も重要な指標は無呼吸低呼吸指数(AHI)です。

日本呼吸器学会のガイドラインでは、AHIが5以上30未満の軽症から中等症の患者さんを主な適応としています。

ただし、数値だけでなく、患者さんの症状や合併症の有無も総合的に評価する必要があります。

適応となる患者さんの特徴として、以下のような条件が挙げられます。

適応となる患者の特徴
  • セファログラム検査で下顎前方移動による気道拡大を確認できる
  • 鼻呼吸が十分可能(高い鼻抵抗は治療効果低下の可能性)
  • 18歳以上の成人(歯・顎状態良好なら高齢者も可)
  • BMI30未満で良好効果(30以上でも絶対禁忌ではない)

まず、下顎を前方に移動させることで気道が拡大することが、セファログラム(頭部X線規格写真)などの検査で確認できることが重要です。

また、鼻呼吸が十分にできることが望ましく、高い鼻抵抗がみられる場合は治療効果が得られにくい可能性があります。

年齢についても考慮が必要です。

一般的に18歳以上の成人が対象となりますが、高齢者でも歯や顎の状態が良好であれば治療可能です。

体重については、BMI(体格指数)が30未満の方でより良好な治療効果が期待できますが、それ以上でも絶対的な禁忌ではありません。

CPAP治療が困難な方への代替治療としての役割

CPAP治療は重症の睡眠時無呼吸症候群に対する標準治療ですが、すべての患者さんが継続的に使用できるわけではありません。

複数の研究によると、CPAP治療を開始した患者さんのうち、国や定義・追跡期間によって異なりますが、約20〜50%が1年以内に治療を中断することが報告されています。

CPAP治療が困難な理由として、マスクの圧迫感や不快感、機械の音による睡眠障害、口や鼻の乾燥、閉所恐怖症などが挙げられます。

CPAPの使用を中止した患者の23%は、使用上の問題(騒音、マスクの接触不良、漏れなど)が中止の理由であると回答しました。

引用:PMC Factors Affecting CPAP Adherence in an OSA Population during the First Two Years of the COVID-19 Pandemic

また、頻繁に出張や旅行をする方にとっては、CPAP装置の持ち運びが負担となることもあります。

このような場合、マウスピース治療は有効な代替治療となり得ます。

米国歯科睡眠医学会(AADSM)のガイドラインでは、CPAP不耐性の患者さんに対して、積極的にマウスピース治療を検討することを推奨しています。

重症の患者さんでも、マウスピース治療により部分的な改善が得られれば、無治療の状態よりも心血管系リスクの軽減が期待できるためです。

ただし、この場合は定期的な経過観察と効果判定が特に重要となります。

歯科的な条件と事前検査の重要性

マウスピース治療を成功させるためには、適切な歯科的条件を満たしている必要があります。

上下顎それぞれ8〜10本程度の健康な歯があることが望ましいですが、欠損があっても装置設計で対応できる場合があります。

部分入れ歯を使用している場合でも、残存歯の状態によっては治療可能な場合があります。

総入れ歯の方は、通常のマウスピース治療は適応外となりますが、特殊な装置で対応できる場合もあります。

歯周病の有無も重要な評価項目です。

中等度以上の歯周病がある場合、マウスピースの装着により歯への負担が増加し、歯周病が悪化する可能性があります。

そのため、治療開始前に歯周病の治療を完了させることが推奨されます。

顎関節症の既往も確認が必要です。

軽度の顎関節症であれば、適切な調整により治療可能な場合が多いですが、重度の場合は慎重な判断が必要です。

米国睡眠歯科学会(AADSM)によると、治療前に顎関節の評価を行い、段階的に下顎を前方移動させることで、顎関節症のリスクを最小限に抑えられることが示されています。

主な歯科的条件

項目内容・条件注意点・補足事項
健康な歯の本数上下顎それぞれ8〜10本程度が望ましい欠損があっても装置設計で対応可能な場合あり
部分入れ歯の使用残存歯の状態によっては治療可能総入れ歯は通常適応外だが、特殊装置で対応できるケースあり
歯周病の有無治療前に確認が必要中等度以上の場合は歯への負担が増え悪化の恐れ。事前治療が推奨される
顎関節症の既往軽度であれば治療可能な場合あり重度の場合は慎重な判断が必要。段階的な下顎前方移動がリスク軽減に有効

事前検査として、歯科用パノラマX線撮影や歯周組織検査、顎関節の触診や開口量の測定などが行われます。

また、睡眠検査の結果と照らし合わせて、マウスピース治療の適応を総合的に判断します。

睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療の費用と保険適用

マウスピース治療を検討する際、多くの患者さんが気になるのが費用面です。

日本では一定の条件を満たせば保険診療での治療が可能ですが、その条件や手続きについて正しく理解しておくことが重要です。

保険診療でのマウスピース作製の流れと条件

睡眠時無呼吸症候群に対するマウスピース治療は、2004年から保険適用となっています。

ただし、保険診療を受けるためには特定の条件を満たす必要があります。

最も重要な条件は、医科での睡眠検査(終夜睡眠ポリグラフ検査またはスマートウォッチ等を用いた簡易検査)により、睡眠時無呼吸症候群と診断されていることです。

保険診療の流れは以下のようになります。

マウスピース作製の流れ(保険診療)
  1. 睡眠外来や呼吸器内科などで睡眠検査を受ける
  2. 医師により「睡眠時無呼吸症候群」と診断される
  3. 医師から歯科宛に紹介状(診療情報提供書)を発行してもらう
  4. 紹介状を持って、対応可能な歯科医院を受診
  5. 歯科で口腔内の診査を実施
  6. 問題がなければマウスピースの作製に進む

まず、睡眠外来や呼吸器内科などで睡眠検査を受け、睡眠時無呼吸症候群の診断を受けます。

その後、医師から歯科への紹介状(診療情報提供書)を発行してもらいます。

この紹介状を持って、口腔内装置の作製が可能な歯科医院を受診します。

歯科では口腔内の診査を行い、問題がなければマウスピースの作製に入ります。

保険診療でのマウスピース作製費用は、3割負担の場合で約1~1.5万円前後(初診料等含め最大2万円弱)です。

これには、初診料、検査料、装置作製料、調整料などが含まれます。

ただし、歯科医院によって若干の差があることがあります。

また、作製後の調整や経過観察にも別途費用がかかります。

自費診療との違いと費用の目安

医科からの紹介状がない場合や、より高機能な装置を希望する場合は、自費診療となります。

自費診療の場合、費用は簡易一体型で4〜6万円、上下分離・デジタルタイプでは10〜20万円以上と幅があります。

この価格差は、使用する材料や装置の種類、歯科医院の設備などによって生じます。

自費診療のメリットとして、より精密な装置の作製が可能な場合があることが挙げられます。

例えば、デジタル技術を用いた精密な型取りや、調整機能が優れた装置の選択が可能です。

また、医科での診断を待たずに治療を開始できるという利点もあります。

ただし、睡眠時無呼吸症候群の正確な診断なしに治療を開始することは推奨されません。

保険診療と自費診療で、基本的な治療効果に大きな差はないとされています。

イギリス国立医療技術評価機構(NICE)の報告では、重症度や装置タイプによる効果の違いには不確実性があるものの、装置の使用時間の方が臨床効果に大きく影響することが示されています。

定期的なメンテナンスにかかる費用

マウスピース治療では、初回作製後も定期的なメンテナンスが必要です。

装置の調整や口腔内の変化への対応、治療効果の確認などが含まれます。

保険診療の場合、調整料は1回あたり1,000円から2,000円程度(3割負担)が一般的です。

メンテナンスの頻度は、治療開始直後は1〜2週間ごと、安定後は3〜6ヶ月ごとが推奨されています。

年間のメンテナンス費用は、保険診療で5,000円から10,000円程度を見込んでおくとよいでしょう。

装置の耐用年数は一般的に2〜5年とされていますが、使用状況や口腔内の変化により異なります。

歯ぎしりが強い方では、装置の摩耗が早く進む傾向があります。

装置の破損や劣化が生じた場合は、再作製が必要となり、初回と同様の費用がかかります。

ただし、2回目以降の作製でも、医科からの紹介状があれば保険適用となります。

マウスピース治療のメリット・デメリットとCPAPとの比較

睡眠時無呼吸症候群の治療法を選択する際、それぞれの治療法の特徴を理解し、自分のライフスタイルや症状に最も適した方法を選ぶことが重要です。

マウスピース治療とCPAP治療には、それぞれ特有のメリットとデメリットがあります。

マウスピース治療の主なメリット

マウスピース治療の最大のメリットは、その簡便性と携帯性にあります。

装置は小さく軽量で、旅行や出張の際も容易に持ち運びできます。

電源も不要なため、キャンプなどのアウトドア活動でも使用可能です。

装着時の違和感も、CPAP治療と比較して少ないと感じる患者さんが多く、睡眠の質を保ちやすいという利点があります。

使用時の静音性も大きなメリットです。

CPAP装置のような機械音がないため、パートナーの睡眠を妨げることがありません。

また、停電時でも問題なく使用できるため、災害時の備えとしても安心です。

マウスピース治療の主なメリット

項目内容
携帯性・簡便性小型・軽量で旅行や出張でも持ち運びが容易
電源不要キャンプなどアウトドアや停電時・災害時でも使用可能
装着時の快適性CPAPより違和感が少なく、睡眠の質を保ちやすい
静音性機械音がないため、パートナーの睡眠を妨げない
治療継続率約70〜80%の患者が1年後も治療を継続(追跡調査結果)
口腔内の健康維持定期的な歯科受診により虫歯や歯周病の早期発見・治療につながる

治療の継続率についても、マウスピース治療は優れた結果を示しています。

1年間の追跡調査では、マウスピース治療を開始した患者さんの約70〜80%が1年後も治療を継続していることが報告されています。

これは、装置の使いやすさと快適性が大きく影響していると考えられます。

口腔内の健康維持という副次的な効果も期待できます。

定期的な歯科受診により、虫歯や歯周病の早期発見・治療につながることがあります。

知っておくべきデメリットと副作用

マウスピース治療にもいくつかのデメリットや副作用があることを理解しておく必要があります。

最も一般的な副作用は、治療開始初期の顎の違和感や軽い痛みです。

これは通常、1〜2週間で改善しますが、個人差があります。

長期使用による歯列の変化も報告されています。

10年間の追跡調査によると、長期使用により、前歯の傾斜や咬み合わせの変化が生じる可能性があることが示されています。

MAD 療法では、噛み合わせの変化もこの現象の原因となる可能性があります。

引用:Journal of Clinical Sleep Medicine Long-term obstructive sleep apnea therapy: a 10-year follow-up of mandibular advancement device and continuous positive airway pressure

ただし、これらの変化は多くの場合軽微であり、定期的な歯科でのチェックにより早期に対処可能です。

朝起きた時の一時的な咬み合わせの違和感も、よく報告される症状です。

これは、睡眠中に下顎を前方に保持していたことによるもので、通常は起床後30分程度で改善します。

朝食時に硬いものが噛みにくいと感じる方もいますが、顎の体操を行うことで改善できる場合が多いです。

唾液分泌の変化も起こることがあります。

使用開始初期は唾液が増加し、よだれが出やすくなることがありますが、多くの場合、数週間で慣れて改善します。

逆に、口腔内の乾燥を感じる方もいます。

治療効果の個人差も考慮すべき点です。

同じ重症度でも、気道の形態や肥満度により効果に差が出ることがあります。

CPAP治療との効果・使用感の違い

CPAP治療と比較した場合、治療効果の面では一般的にCPAPの方が優れているとされています。

国際的なメタ解析論文では、重症患者においてCPAPの方がAHIの改善率が高いことが示されています。

MAD群と比較して、CPAP群はAHIの減少と関連しており、平均差は-5.83(95%信頼区間-8.85~-2.81、P < 0.01)であった。

引用:PMC Continuous Positive Airway Pressure vs Mandibular Advancement Devices in the Treatment of Obstructive Sleep Apnea: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis

しかし、軽症から中等症では、両者の効果の差は比較的小さいことも明らかになっています。

使用感の違いは顕著です。

CPAPは鼻や顔にマスクを装着し、持続的に空気を送り込むため、慣れるまでに時間がかかる方が多いです。

一方、マウスピースは口腔内に装着するだけなので、比較的受け入れやすいと感じる患者さんが多いです。

睡眠中の体位変換の自由度も異なります。

CPAPはホースでつながれているため、寝返りに制限が生じることがありますが、マウスピースは自由に体位を変えることができます。

横向きやうつ伏せで寝ることが多い方には、マウスピースの方が適している可能性があります。

CPAP治療との効果・使用感の比較

項目CPAP治療マウスピース治療
治療効果一般的により優れている(重症患者でAHI改善率が高い)軽症から中等症では効果の差は比較的小さい
装着方法鼻や顔にマスクを装着し、持続的に空気を送り込む口腔内に装着するだけ
使用感慣れるまでに時間がかかる方が多い比較的受け入れやすいと感じる患者さんが多い
体位変換の自由度ホースでつながれているため、寝返りに制限が生じることがある自由に体位を変えることができる
適応症例横向きやうつ伏せで寝ることが多い方には不向きな場合がある横向きやうつ伏せで寝ることが多い方に適している可能性がある

コンプライアンス(治療継続率)に関する興味深いデータがあります。

アメリカ睡眠医学会の報告によると、CPAPとマウスピースで治療効果に差があっても、実際の使用時間を考慮すると、健康への恩恵は同等になる可能性があることが示されています。

これは、マウスピースの方が長時間使用しやすいことに起因します。

費用面では、初期費用はマウスピースの方が低く抑えられますが、CPAPは月々のレンタル料で利用できるため、長期的なコストは使用期間により変わってきます。

よくある質問(FAQ)

マウスピースはどのくらいの期間で効果が出ますか?

多くの場合、適切に調整されたマウスピースであれば、数日~数週間でいびき改善を自覚する例もあります。

ただし、最大の治療効果を得るまでには1〜3ヶ月程度かかることが多いです。

マウスピース治療中も定期的な検査は必要ですか?

治療効果の確認と安全性の観点から、定期的な検査は重要です。

治療開始後3〜6ヶ月で睡眠検査を行い、効果を客観的に評価することが推奨されています。

その後も年1回程度の経過観察が望ましいとされています。

市販のいびき防止マウスピースでも効果はありますか?

市販のマウスピースは、医療用のものと比較して効果が限定的である可能性が高いです。

個人の顎の形態に合わせた調整ができないため、十分な下顎前方移動が得られないことが多く、場合によっては顎関節に悪影響を与える可能性もあります。

医療機関での適切な診断と治療を受けることをお勧めします。

マウスピースの耐用年数はどのくらいですか?

一般的に2〜5年程度とされていますが、使用状況により大きく異なります。

歯ぎしりが強い方や、毎日長時間使用する方では、早めの交換が必要になることがあります。

定期的な歯科でのチェックで、装置の状態を確認することが重要です。

旅行や出張時の持ち運びは簡単ですか?

マウスピースは専用のケースに入れて持ち運ぶことができ、手のひらに収まるサイズです。

飛行機の機内持ち込みも問題なく、海外旅行でも電圧の心配がありません。

ただし、紛失防止のため、予備を自宅に保管しておくことをお勧めします。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療は、軽症から中等症の患者さんにとって有効な治療選択肢です。

下顎を前方に移動させることで気道を確保し、睡眠中の呼吸を改善する仕組みは、多くの研究でその効果が実証されています。

治療を成功させるためには、適切な患者選択が重要です。

医科での睡眠検査による診断、健康な歯の存在、鼻呼吸が可能であることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。

また、CPAP治療が困難な方にとっては、有効な代替治療となる可能性があります。

費用面では、保険適用により比較的負担を抑えて治療を受けることができます。

ただし、医科からの紹介状が必要となるため、まずは睡眠外来などでの受診が必要です。

定期的なメンテナンスも含めた長期的な費用も考慮に入れて検討することが大切です。

マウスピース治療には、携帯性、静音性、使用の簡便性といった多くのメリットがある一方で、顎の違和感や長期使用による歯列の変化といった副作用の可能性もあります。

CPAP治療と比較すると、重症例では効果が劣る可能性がありますが、使用感の良さから継続率は高い傾向にあります。

睡眠時無呼吸症候群は、放置すると心血管疾患のリスクを高める可能性がある疾患です。

日中の眠気やいびきでお悩みの方は、まず医療機関で適切な診断を受けることから始めましょう。

その上で、自分のライフスタイルや症状に最も適した治療法を、医師や歯科医師と相談しながら選択することが重要です。

マウスピース治療は、多くの患者さんにとって生活の質を改善する有効な選択肢となり得るでしょう。

参考文献・参考サイト

一般社団法人 日本呼吸器学会 「 睡眠時無呼吸症候群診療ガイドライン2020

PMC Mandibular advancement device use in obstructive sleep apnea: ORCADES study 5-year follow-up data

PMC The effect of gradually increased mandibular advancement on the efficacy of an oral appliance in the treatment of obstructive sleep apnea

American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy: An Update for 2015

PMC The Influence of a Mandibular Advancement Plate on Polysomnography in Different Grades of Obstructive Sleep Apnea

Sleep Medicine Research Oral Appliance Therapy for Obstructive Sleep Apnea: Clinical Benefits and Limitations

PMC Factors Affecting CPAP Adherence in an OSA Population during the First Two Years of the COVID-19 Pandemic

PubMed Clinical Practice Guideline for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Snoring with Oral Appliance Therapy: An Update for 2015

Sleep Apnea Common CPAP Side Effects and Prevention

PMC Treatment of obstructive sleep apnea with mandibular advancement appliance over prostheses: A case report

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Mandibular Advancement Devices | Rate of Contraindications in 100 Consecutive Obstructive Sleep Apnea Patients

American Academy of Dental Sleep Medicine  Management of Side Effects of Oral Appliance Therapy for Sleep-Disordered Breathing

National Institute for Health and Care Excellence The Continuous Positive Airway Pressure for the treatment of obstructive sleep apnoea-hypopnoea syndrome: a systematic review and economic analysis

厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要 【歯科】

PMC Oral Appliance Treatment for Obstructive Sleep Apnea: An Update

Journal of Clinical Sleep Medicine Long-term obstructive sleep apnea therapy: a 10-year follow-up of mandibular advancement device and continuous positive airway pressure

PMC Continuous Positive Airway Pressure vs Mandibular Advancement Devices in the Treatment of Obstructive Sleep Apnea: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis

American Academy of Dental Sleep Medicine Efficacy versus Effectiveness in the Treatment of Obstructive Sleep Apnea: CPAP and Oral Appliances

National Heart, Lung, and Blood Institute What Is Sleep Apnea?

この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、ポリソムノグラフィーなど最新の睡眠検査設備を導入し、CPAP療法・口腔内装置・生活習慣指導を組み合わせた包括的なSAS診療を提供。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「眠りから全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動に取り組んでいる。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする生活習慣病の早期発見と予防に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い眠りと健康」の実現を目指している。

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