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睡眠時無呼吸症候群の改善に効果的な寝方とは?横向きやうつ伏せなど姿勢別に解説

睡眠時無呼吸症候群の改善に効果的な寝方とは?横向きやうつ伏せなど姿勢別に解説

夜中にいびきや呼吸の停止を指摘されたり、十分に寝ているはずなのに日中の眠気がとれないといった悩みをお持ちの方は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりして体の低酸素状態が発生する病気です。

実は、睡眠時の姿勢(寝方)を工夫することで、症状を改善できる可能性があることをご存知でしょうか。

睡眠時無呼吸症候群の改善に効果的な寝方
  • 横向き寝(舌根沈下を防ぎ無呼吸を減少させる)
  • 頭部を傾斜15センチ挙上(無呼吸を軽減させる)
  • うつ伏せ寝(気道は開き易いが、首負担に注意)
  • 仰向けの回避(テニスボール、振動アラーム装置、抱き枕など)

研究によると、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの約半数以上が「体位依存性」といって、仰向けで寝ているときに症状が悪化する特徴を持っています。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と寝方の関係について医学的な根拠を交えながら解説し、症状改善に効果的な横向き寝やうつ伏せ寝の正しい方法、避けるべき寝方、枕の選び方などの実践的な対策をお伝えします。

寝方の工夫は、今夜からすぐに始められる対策です。

ぜひ最後までお読みいただき、質の良い睡眠を取り戻すための第一歩を踏み出してください。

この記事でわかること
  • 睡眠時無呼吸症候群と寝方の関係性
  • 横向き寝、うつ伏せ寝の効果と正しい実践方法
  • 避けるべき寝方とその理由
  • 効果的な枕の選び方と睡眠環境の整え方
  • 寝方改善だけでは不十分な場合の対処法
目次

睡眠時無呼吸症候群と寝方の関係性

睡眠時無呼吸症候群のメカニズムと姿勢の影響

睡眠時無呼吸症候群の大部分を占める閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に上気道(鼻腔から咽頭、喉頭にかけての空気の通り道)が狭くなったり、塞がったりすることで起こります。

睡眠中は筋肉の緊張が緩むため、舌や軟口蓋(のどちんこ周辺の柔らかい組織)が重力によって落ち込みやすくなります。

特に仰向けで寝ている場合、重力の影響で舌根(舌の付け根)が喉の奥に落ち込み、気道を塞ぎやすくなります。

米国国立衛生研究所(NIH)の研究では、仰向けで寝ている時の無呼吸・低呼吸指数(AHI)は、横向きで寝ている時と比較して約2倍高くなることが報告されています。

また、呼吸停止の持続時間も仰向けの方が長くなる傾向があります。

体位による気道の変化は、上気道の解剖学的な特徴と密接に関係しています。

研究によると、体位依存性の睡眠時無呼吸症候群患者では、仰向け時と横向き時で上気道の断面積に大きな差が生じることが分かっています

横向きでは気道の側方径が広がり、楕円形から円形に近い形状になることで、気道の虚脱(つぶれ)を防ぎやすくなります

なぜ寝方が症状の改善に重要なのか

睡眠時無呼吸症候群の治療において、寝方の改善は「体位療法(Positional Therapy)」として医学的に認められた治療法の一つです。

米国睡眠医学会(AASM)のガイドラインでは、体位依存性の睡眠時無呼吸症候群患者に対して、CPAP療法の補助的治療または代替治療として体位療法を推奨しています。

体位療法が重要な理由として、以下の点が挙げられます。

第一に、即効性があることです。

適切な寝方に変えることで、その夜から無呼吸の回数を減少させることができます。

一部の研究では、体位依存性の軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群患者において、振動式デバイスを用いた横向き姿勢保持により無呼吸・低呼吸指数が平均して約69%減少したと報告されています。

結果によると、参加者の83%で全AHIが50%以上減少し、平均減少率は69%、中央値減少率は79%でした。

引用:Sleep Medicine Research Positional Therapy for Obstructive Sleep Apnea: Therapeutic Modalities and Clinical Effects

ただし、これは姿勢保持デバイスと横向き寝の複合介入の結果であり、単純な横向き寝のみの効果とは区別する必要があります。

第二に、非侵襲的で費用対効果が高いことです。

CPAP療法や口腔内装置と比較して、特別な機器を必要とせず、副作用もほとんどありません。

そのため、治療への抵抗感が少なく、継続しやすいという利点があります。

第三に、他の治療法との併用が可能なことです。

CPAP療法を受けている患者さんでも、適切な寝方を組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。

ただし、すべての睡眠時無呼吸症候群患者に体位療法が有効というわけではありません。

重症例や、体位に関係なく無呼吸が起こる「非体位依存性」の患者さんでは、寝方の改善だけでは不十分な場合があります。

そのため、まずは医療機関で適切な診断を受け、自分の症状の特徴を把握することが大切です。

睡眠時無呼吸症候群におすすめの寝方

横向き寝のメリットと正しい方法

横向き寝(側臥位)は、睡眠時無呼吸症候群の改善に最も推奨される寝方です。

研究によると、横向きで寝ることで、仰向けと比較して無呼吸・低呼吸指数が平均して50%以上減少することが報告されています。

両方の研究で、AHIの平均減少率は50%であった(選択基準と一致し、仰向け睡眠の回避に成功した)。

引用:ScienceDirect A review of supine position related obstructive sleep apnea: Classification, epidemiology, pathogenesis and treatment 

横向き寝が効果的な理由は、重力による舌根の落ち込みを防ぎ、気道の側方径を広げることで、空気の通り道を確保しやすくなるためです。

また、軟口蓋や咽頭周囲の軟部組織も気道を塞ぎにくい位置に保たれます。

横向き寝を正しく実践するためのポイントは以下の通りです。

枕の高さの調整が最も重要です。

横向きで寝る場合、頭から首、背骨が一直線になるような高さの枕を選ぶ必要があります。

一般的に、仰向け用の枕よりも高めの枕が必要となります。

肩幅や体格によって適切な高さは異なりますが、耳の穴から肩までの距離を目安に選ぶとよいでしょう。

体の支え方も大切です。

横向きの姿勢を安定させるために、抱き枕やボディピローを使用することをおすすめします。

膝の間にクッションを挟むことで、腰への負担も軽減できます。

背中側にクッションや丸めたタオルを置くことで、無意識に仰向けになることを防ぐこともできます。

左右どちら向きがよいかについては、基本的にはどちらでも構いませんが、胃酸逆流がある方は左向きの方が症状が軽減される可能性があります。

ただし、一晩中同じ姿勢でいると体に負担がかかるため、適度に左右を変えることも大切です。

うつ伏せ寝は効果的?注意点とポイント

うつ伏せ寝(腹臥位)についても、小規模な研究において軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群に対する改善効果が報告されています。

ただし、対象者が限定的な小規模試験の結果であり、長期的な安全性については十分なエビデンスがありません。

うつ伏せの姿勢では、重力により舌が前方に位置するため、気道の閉塞を防ぎやすくなります。

しかし、うつ伏せ寝には以下のような注意点があります。

うつ伏せ寝の主な注意点とポイント

首への負担

  • 顔を横に向ける必要があり、首のねじれや肩こりの原因になる。

枕の選び方

  • 非常に薄い枕か枕なしが推奨される。
  • 高い枕は首の後屈を招き、気道を圧迫するおそれがある。
  • 顔に穴が空いた専用枕なども市販されている。

慣れるまで時間がかかる

  • 姿勢の違和感から寝付きにくいことがある。
  • 徐々に慣らしていく必要がある。

首への負担が最大の問題です。

うつ伏せで寝る場合、呼吸のために顔を横に向ける必要があり、首が不自然にねじれた状態が続きます。

これにより、首の痛みや肩こりの原因となる可能性があります。

適切な枕選びが重要です。

うつ伏せ寝では、非常に薄い枕か、枕なしで寝ることが推奨されます。

高い枕を使用すると、首が過度に後屈し、かえって気道を圧迫する可能性があります。

専用のうつ伏せ寝用枕も市販されており、顔の部分に穴が開いているものなどがあります。

慣れるまでの期間が必要です。

普段仰向けや横向きで寝ている方がうつ伏せ寝に変更する場合、最初は違和感があり、なかなか寝付けないことがあります。

徐々に慣らしていく必要があります。

うつ伏せ寝は、横向き寝が難しい方や、横向きでも症状が改善しない方の選択肢として考慮できますが、体への負担を考慮すると、まずは横向き寝から試すことをおすすめします。

頭を高くする寝方の効果

頭部挙上位での睡眠も、睡眠時無呼吸症候群の改善に効果的であることが科学的に証明されています。

研究によると、頭部を約7.5度(15cm程度)挙上することで、無呼吸・低呼吸指数が平均31.8%減少することが報告されています。

本研究は、7.5°のHOBEを使用した場合、主に軽症から中等症のOSA患者でAHIの中央値が31.8%減少することを示し、

引用:PMC The influence of head-of-bed elevation in patients with obstructive sleep apnea

頭部挙上が効果的な理由は、重力の影響を利用して舌根の落ち込みを軽減し、同時に上気道の長軸方向の緊張を保つことで、気道の虚脱を防ぐためです。

また、終末呼気肺容量の増加も報告されていますが、酸素飽和度の改善については研究によって結果が一貫していません。

頭部挙上を実践する方法として、以下のような選択肢があります。

頭部挙上を実践する主な方法と特徴

方法特徴
ウェッジピロー(くさび型枕)傾斜のある大きめの枕で上半身全体を挙上。
フォーム素材でしっかりしたものが望ましい。
ベッドの頭側を上げるベッドの脚の下にブロック等を設置して傾斜をつける。
電動ベッドでも調整可能。
リクライニングチェア重症例では通常のベッドが困難。
リクライニングチェアでのみ睡眠できることがある。

ウェッジピロー(くさび型枕)の使用が最も簡単な方法です。

傾斜のついた大きめの枕を使用することで、上半身全体を自然に挙上できます。

フォーム素材でできたしっかりとしたものを選ぶことが重要です。

ベッドの頭側を上げる方法もあります。

ベッドの頭側の脚の下にブロックやベッドライザーを置いて、ベッド全体に傾斜をつけます。

電動ベッドがある場合は、頭部を適切な角度に調整できます。

リクライニングチェアでの睡眠を選択する方もいます。

重症の睡眠時無呼吸症候群患者の中には、通常のベッドでは眠れず、リクライニングチェアでしか眠れないという方もいます。

ただし、頭部挙上位での睡眠には、胃酸逆流の悪化や腰痛のリスクもあるため、個人の状態に応じて適切な角度を見つけることが大切です。

避けるべき寝方と改善のための工夫

仰向け寝が症状を悪化させる理由

仰向け寝(仰臥位)は、睡眠時無呼吸症候群の症状を最も悪化させる寝方として知られています。

多くの研究で、仰向けでの無呼吸・低呼吸指数は、横向きと比較して2倍以上高くなることが報告されています。

仰向け寝が問題となる主な理由は、重力の影響です。

仰向けになると、舌、軟口蓋、咽頭周囲の軟部組織が重力により後方に落ち込み、気道を狭窄または閉塞させます。

特に、肥満の方や加齢により筋緊張が低下している方では、この影響が顕著に現れます。

さらに、仰向け寝では以下のような悪影響も生じます。

仰向け寝による悪影響の具体例
  • 呼吸努力の増大と心臓への負担:胸腔内圧の変動が大きくなり、不整脈や血圧上昇のリスクが高まる。
  • 睡眠の質の低下:無呼吸による覚醒反応が頻発し、深い睡眠が得られにくくなる。
  • いびきの悪化:気道が狭くなることで空気の流れが乱れ、大きないびきの原因となる。

呼吸努力の増大により、胸腔内圧の変動が大きくなり、心臓への負担が増加します。

これにより、不整脈や血圧上昇のリスクが高まります。

睡眠の質の低下も問題です。

無呼吸による覚醒反応が頻繁に起こるため、深い睡眠が得られず、日中の眠気や疲労感が強くなります。

いびきの増悪も起こります。

気道が狭くなることで、空気の乱流が生じやすくなり、大きないびきの原因となります。

体位依存性の睡眠時無呼吸症候群と診断された方は、できる限り仰向け寝を避けることが重要です。

ただし、完全に仰向け寝を避けることは現実的に難しいため、次に述べる工夫を取り入れることが大切です。

寝返りを促す環境づくり

睡眠中の体位を適切に保つためには、自然な寝返りを促す環境づくりが重要です。

健康な人は一晩に平均20~30回程度寝返りを打つとされていますが、睡眠時無呼吸症候群の方は、適切な体位を維持しながら必要な寝返りができるような工夫が必要です。

テニスボール法は、最も古典的で簡単な方法の一つです。

パジャマの背中側にポケットを縫い付け、その中にテニスボールを入れます。

仰向けになると背中の違和感により、自然に横向きに戻ることができます。

PTは、仰臥位睡眠時間をベースラインの中央値(IQR)155.3(97.8–193.7)分から33.5(0.5–66.9)分に効果的に短縮しました(p < 0.001)。

引用:PMC Usage of Positional Therapy in Adults with Obstructive Sleep Apnea

最近では、同様の原理を利用した専用のベストや装置も市販されています。

振動アラーム装置も効果的です。

体位を感知するセンサーを内蔵した装置で、仰向けになると振動により知らせてくれます。

音ではなく振動なので、パートナーの睡眠を妨げることもありません。

この装置を使用することで、仰向けで寝る時間を大幅に減少させることができると報告されており、観察研究では約90%の減少が確認されています。

睡眠姿勢トレーナー (SPT) はそのような胸部装着型デバイスであり、軽度または中等度の POSA 患者の平均仰向け睡眠時間を大幅に短縮 (46% から 5%)

引用:Springer Nature Durability of treatment effects of the Sleep Position Trainer versus oral appliance therapy in positional OSA: 12-month follow-up of a randomized controlled trial

寝具の配置も工夫できます。

背中側に抱き枕やクッションを配置したり、ベッドの片側を壁につけて寝ることで、仰向けになりにくい環境を作ることができます。

マットレスの硬さも重要です。

中硬度のマットレスが睡眠の質改善に有効との研究があり、柔らかすぎるマットレスは体が沈み込み、寝返りが打ちにくくなる可能性があります。

ただし、睡眠時無呼吸症候群への直接的な影響については十分に検証されていません。

適度な硬さのマットレスを選ぶことで、スムーズな寝返りが可能になります。

これらの方法は、最初は違和感があるかもしれませんが、多くの場合、2~4週間程度で慣れることができます。

継続することで、自然に横向きで寝る習慣が身につきます。

枕やマットレスの選び方

睡眠時無呼吸症候群の改善において、適切な寝具選びは非常に重要です。

特に枕の選択は、気道の確保と睡眠の質に直接影響します。

横向き寝用の枕選びでは、肩幅を考慮した高さが必要です。

実験研究では、横向きで寝る場合は仰向けよりも高い枕(約10cm程度)が頸椎アライメントに良いとされていますが、体型や個人差が大きいため、一律の数値ではなく個人に合わせた調整が重要です。

素材は、形状を保持できるメモリーフォームや高反発素材がおすすめです。

また、頭部と首をしっかり支える形状のものを選びましょう。

CPAP使用者向けの枕も開発されています。

これらの枕には、CPAPマスクのチューブを通すための切り込みやくぼみがあり、横向きで寝てもマスクがずれにくい設計になっています。

CPAP療法を受けている方は、専用枕の使用を検討するとよいでしょう。

枕の選び方のポイント

項目内容
高さの目安・横向きでは仰向けより高め(約10cm程度)が良いとされる
・個人差を考慮し調整が必要
素材の選び方形状を保持しやすいメモリーフォームや高反発素材がおすすめ
形状の工夫頭部と首をしっかり支える構造のものを選ぶ
CPAP使用者向け枕チューブ用の切り込み・くぼみがあり、マスクが横向きでもずれにくい設計
高さ調整の方法・低い枕:バスタオルを重ねて下に入れる
・高すぎる枕:中材を減らすか薄い枕に変更

マットレスの選択基準として、以下の点を考慮します。

体圧分散性に優れ、適度な硬さがあることが重要です。

柔らかすぎると体が沈み込み、寝返りが困難になります。

逆に硬すぎると、横向き寝の際に肩や腰に負担がかかります。

体重や体型に応じて、適切な硬さを選ぶ必要があります。

マットレスの選び方のポイント

項目内容
体圧分散性体の沈み込みを防ぎつつ、圧力が一部に集中しないように分散できるものを選ぶ
硬さの目安・柔らかすぎると寝返りが困難
・硬すぎると肩や腰に負担
→ 体重・体型に応じた硬さを選ぶ
購入時の注意点可能であれば店舗で実際に試してから購入するのが望ましい

枕の高さ調整方法として、タオルを使った微調整が可能です。

枕が低い場合は、枕の下にバスタオルを折りたたんで入れることで高さを調整できます。

逆に高すぎる場合は、枕カバーの中身を一部取り出すか、より薄い枕に変更します。

適切な寝具を選ぶことで、体位療法の効果を最大限に引き出すことができます。

可能であれば、寝具店で実際に試してから購入することをおすすめします。

寝方以外の睡眠時無呼吸症候群対策

生活習慣の見直しポイント

睡眠時無呼吸症候群の改善には、寝方の工夫だけでなく、日常生活習慣の見直しも重要です。

複数の要因が重なって症状が悪化することが多いため、総合的なアプローチが必要です。

改善すべき主な生活習慣
  • 体重管理:体重10%減でAHI約26%改善。特に首周りの脂肪を減らす。
  • アルコール制限:寝る3〜4時間前の飲酒を避ける。無呼吸や低酸素が悪化。
  • 禁煙:気道の腫れを防ぐ。禁煙でリスクが下がる傾向。
  • 睡眠薬・筋弛緩薬の見直し:筋肉のゆるみで無呼吸が悪化。使用は医師と相談。
  • 規則正しい睡眠習慣:毎日同じ時間に寝起きして体内時計を整える。
  • 鼻呼吸の促進:鼻づまりを治療し、口呼吸を防ぐ。

体重管理は最も重要な要素の一つです。

肥満は睡眠時無呼吸症候群の主要な危険因子であり、体重を10%減少させることで、無呼吸・低呼吸指数を約26%改善できることが報告されています。

特に、首周りの脂肪を減らすことが重要で、首周りのサイズと睡眠時無呼吸症候群の重症度には関連性があることが報告されています。

首囲は、日中の主観的な眠気と睡眠中の呼吸イベントの重症度の両方を予測する最も有用な指標であることがわかりました。

引用:PMC The influence of socio-economic status on the severity of obstructive sleep apnea: a cross-sectional observational study

アルコール摂取の制限も必要です。

アルコールは筋肉を弛緩させる作用があり、上気道の筋緊張を低下させます。

就寝前3~4時間以内の飲酒は避けるべきです。

研究によると、アルコール摂取により無呼吸の持続時間が延長し、低酸素血症が悪化することが示されています。

喫煙の影響も無視できません。

喫煙は上気道の炎症を引き起こし、粘膜の腫脹により気道を狭窄させます。

近年の疫学研究では、喫煙者の睡眠時無呼吸症候群リスクが高く、禁煙者でリスク低下の傾向が示されていますが、具体的な改善効果については更なる研究が必要です。

これらの結果を踏まえると、現在喫煙している人はOSAのリスクにさらされていると言えます。

引用:Nature Scientific Reports Association between smoking and obstructive sleep apnea based on the STOP-Bang index

睡眠薬や筋弛緩薬の使用には注意が必要です。

これらの薬剤は、アルコールと同様に上気道の筋緊張を低下させ、無呼吸を悪化させる可能性があります。

睡眠障害がある場合は、医師に相談して適切な治療を受けることが大切です。

規則正しい睡眠習慣の確立も重要です。

不規則な睡眠は、睡眠の質を低下させ、日中の眠気を増悪させます。

毎日同じ時刻に就寝・起床することで、体内時計を整え、質の良い睡眠を得やすくなります。

鼻呼吸の促進も効果的です。

鼻づまりがあると口呼吸になりやすく、気道の乾燥や狭窄を引き起こします。

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、適切な治療を受けることが重要です。

これらの生活習慣の改善は、単独では劇的な効果は期待できないかもしれませんが、複数を組み合わせることで、相乗効果が期待できます。

医療機関での治療法と寝方の組み合わせ

睡眠時無呼吸症候群の治療は、重症度や個人の状態に応じて選択されます。

寝方の改善(体位療法)は、他の治療法と組み合わせることで、より効果的な結果が得られることが多いです。

CPAP療法との併用は最も一般的な組み合わせです。

CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、睡眠時無呼吸症候群の標準的治療法ですが、体位療法を併用することで、治療効果の向上が期待できるとの報告があります。

ただし、無作為比較試験による十分なデータは限られているため、個別に効果を評価する必要があります。

口腔内装置(マウスピース)との併用も効果的です。

下顎を前方に保持する口腔内装置は、軽度から中等度の睡眠時無呼吸症候群に有効ですが、横向き寝と組み合わせることで、さらなる改善の可能性が示唆されています。

ただし、長期的な効果については更なる研究が必要です。

主な治療法と体位療法の組み合わせ

組み合わせ治療対象や特徴
CPAP療法+体位療法標準治療に寝方を併用することで治療効果の向上が期待される。
データは限定的で個別評価が必要。
口腔内装置+横向き寝軽度〜中等度に有効。横向き寝を併用することで追加効果の可能性あり
。長期効果は今後の研究に期待。
外科的治療+体位療法術後も体位依存性が残るケースあり。
寝方を継続することで効果の維持が可能。
減量プログラム+体位療法栄養・運動指導と組み合わせることで、早期の症状改善が見込まれる。

外科的治療後の体位療法も重要です。

扁桃摘出術や軟口蓋形成術などの手術を受けた後も、体位依存性が残存する場合があります。

術後も適切な寝方を継続することで、治療効果を維持できます。

減量プログラムとの組み合わせも推奨されます。

医療機関での栄養指導や運動療法を受けながら、同時に体位療法を実践することで、より早期の症状改善が期待できます。

定期的なフォローアップが重要です。

体位療法の効果は個人差があるため、治療開始後は定期的に医療機関を受診し、効果を評価する必要があります。

必要に応じて、睡眠ポリグラフ検査を再度実施し、客観的な改善度を確認します。

医療機関での治療を受ける際は、必ず医師に現在実践している体位療法について伝え、総合的な治療計画を立ててもらうことが大切です。

よくある質問(FAQ)

睡眠時無呼吸症候群で横向き寝を続けるコツは?

横向き寝を習慣化するには、まず適切な枕の高さを見つけることが重要です。

抱き枕やボディピローを使用すると、姿勢が安定しやすくなります。

また、背中にテニスボールを入れたポケット付きシャツを着用する方法や、振動式の体位アラーム装置を使用することも効果的です。

最初は違和感があるかもしれませんが、2~4週間程度で慣れることが多いため、根気よく続けることが大切です。

うつ伏せ寝は本当に安全?

うつ伏せ寝は気道を開放する効果がある一方で、首への負担が懸念されます。

長時間首をひねった状態が続くと、頸椎への負担や筋肉の緊張を引き起こす可能性があります。

うつ伏せ寝を選択する場合は、非常に薄い枕を使用するか、専用のうつ伏せ寝用枕を使用し、定期的に首の向きを変えることが推奨されます。

首や肩に痛みを感じる場合は、横向き寝への変更を検討してください。

どれくらいで寝方の効果を実感できる?

体位療法の効果は比較的早く現れることが多く、適切な寝方に変更した初日から無呼吸の回数が減少する場合があります。

ただし、日中の眠気や疲労感などの自覚症状の改善には、2~4週間程度かかることが一般的です。

効果の程度は個人差があり、重症度や体位依存性の程度によって異なります。

1か月程度続けても改善が見られない場合は、医療機関での再評価が必要です。

パートナーのいびきがひどい場合の対処法は?

パートナーのいびきが激しく、呼吸が止まっているような場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

まず、寝ている姿勢を観察し、仰向けの時にいびきがひどくなるようであれば、優しく体を横向きにしてあげるとよいでしょう。

ただし、根本的な解決のためには、医療機関での検査を勧めることが重要です。

睡眠時無呼吸症候群は放置すると心血管疾患のリスクが高まるため、早期の診断と治療が必要です。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群の改善において、適切な寝方の選択は重要な治療戦略の一つです。

本記事で紹介した体位療法は、科学的根拠に基づいた効果的な方法であり、多くの患者さんで症状の改善が期待できます。

重要なポイントをまとめると、横向き寝が最も推奨される寝方であり、適切な枕の高さと体の支えが成功の鍵となります。

仰向け寝は症状を悪化させるため、できる限り避けるべきです。

うつ伏せ寝や頭部挙上も選択肢となりますが、それぞれに注意点があります。

体位療法は即効性があり、費用対効果も高い治療法ですが、すべての患者さんに有効というわけではありません。

特に重症例では、CPAP療法などの医学的治療との併用が必要になることが多いです。

また、体重管理やアルコール制限などの生活習慣の改善も並行して行うことで、より良い結果が得られます。

寝方の改善を1か月程度続けても症状が改善しない場合や、日中の強い眠気、集中力低下などが続く場合は、必ず医療機関を受診してください。

睡眠時無呼吸症候群は適切な治療により劇的に改善することが多い疾患です。

質の良い睡眠を取り戻し、健康的な毎日を送るために、今夜から実践できる寝方の工夫を始めてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、ポリソムノグラフィーなど最新の睡眠検査設備を導入し、CPAP療法・口腔内装置・生活習慣指導を組み合わせた包括的なSAS診療を提供。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「眠りから全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動に取り組んでいる。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする生活習慣病の早期発見と予防に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い眠りと健康」の実現を目指している。

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