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CPAP治療で心房細動の再発リスクを低減する?睡眠時無呼吸症候群と不整脈の関係

CPAP治療で心房細動の再発リスクを低減する?睡眠時無呼吸症候群と不整脈の関係

睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に繰り返し起こる上気道の閉塞により、無呼吸や低呼吸が生じる疾患です。

近年の研究により、この睡眠時無呼吸症候群が心房細動という不整脈の発症や再発と密接に関連していることが明らかになってきました。

心房細動は最も一般的な不整脈の一つで、心臓の上部にある心房が不規則に震えるように動く状態を指します。

心房細動患者の実に21~74%が睡眠時無呼吸症候群を合併しているという報告があり、特に日本でカテーテルアブレーション治療を受ける患者では、88.6%という高い確率で睡眠時無呼吸症候群の合併が認められています。

CPAP治療が心房細動の再発を低減する理由
  • CPAPは低酸素と酸化ストレスを改善し心房リモデリングを抑える
  • 交感神経の過剰刺激を正常化し電気的不安定性を軽減する
  • 血圧を低下させ心房細動の再発リスク因子を緩和する
  • カテーテルアブレーション後の再発率を大幅に引き下げる
  • 適切な使用時間の遵守で再発率はOSA非合併例に近づく

このような背景から、CPAP(持続陽圧呼吸)治療が注目されています。

CPAPは、睡眠中に鼻マスクを通じて一定の陽圧をかけることで気道の閉塞を防ぐ治療法です。

複数の研究により、CPAP治療を適切に行うことで、心房細動の再発リスクを有意に低減できる可能性が示されています。

この記事でわかること
  • 睡眠時無呼吸症候群が心房細動を引き起こす具体的なメカニズム
  • CPAP治療による心房細動再発リスクの低減効果とそのエビデンス
  • カテーテルアブレーション後のCPAP併用の重要性
  • CPAP治療を成功させるための実践的なポイント
  • 心房細動患者における睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングの重要性
目次

睡眠時無呼吸症候群が心房細動を引き起こすメカニズム

睡眠時無呼吸症候群と心房細動の関係は、複数の病態生理学的メカニズムによって説明されています。

睡眠中の無呼吸エピソードは、単なる呼吸の停止ではなく、心臓に対して様々な負荷をかける複雑な現象です。

これらのメカニズムを理解することは、なぜCPAP治療が心房細動の管理において重要なのかを理解する上で不可欠です。

無呼吸による低酸素状態と心臓への負担

睡眠時無呼吸症候群では、上気道の閉塞により周期的な低酸素血症が生じます。

無呼吸エピソード中、血中の酸素飽和度は著しく低下し、これが心臓に直接的なストレスを与えます。

低酸素は心筋の電気特性を変え不整脈素地を高め、さらに胸腔内圧の陰圧化や変動も関与します。 

心不全合併例では陰圧が極端化する報告があり最大で約−65 mmHgに達した報告もありますが、これは特殊条件での値であり、一般的なOSA患者に一律には当てはまりません。 

強い陰圧は薄い心房壁に力学的負荷を与え、拡大や線維化など基質変化を介して心房細動リスクに寄与しうると考えられています。

心房の構造的変化は、心房細動の基質形成において重要な役割を果たすことが知られています。

また、低酸素状態と再酸素化の繰り返しは、酸化ストレスを増大させ、炎症反応を引き起こします

これらの病態は心房のリモデリング(構造的・電気的変化)を促進し、心房細動の発症および維持に寄与すると考えられています。

交感神経の活性化による不整脈リスクの上昇

睡眠時無呼吸症候群において、交感神経系の過剰な活性化は心房細動発症の重要な要因となります。

無呼吸エピソード中、頸動脈小体の化学受容器が低酸素と高二酸化炭素を感知し、強力な交感神経反射を引き起こします。

研究によると、睡眠時無呼吸症候群患者では血漿および尿中のカテコラミン濃度が上昇しており、これは持続的な交感神経活性化を示しています。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は主要な交絡因子とは独立して、尿中カテコラミンの神経外代謝物の濃度上昇と関連しており、交感神経副腎活動の亢進を示唆していると結論付けた。

引用:PubMed Obstructive sleep apnoea and urine catecholamines in hypertensive males: a population-based study

交感神経の過剰な刺激は、心房筋細胞のカルシウムハンドリング異常を引き起こし、遅延後脱分極などの不整脈トリガーを生じさせます。

さらに、自律神経のバランス異常は心拍変動の低下や圧受容器反射感受性の低下をもたらし、これらの変化も心房細動のリスクを高めることが示されています。

動物実験では、慢性間欠的低酸素曝露により心臓交感神経の過剰な神経支配が生じ、心房細動の誘発性が増加することが確認されています。

睡眠時無呼吸症候群と心房細動の発症率データ

疫学研究により、睡眠時無呼吸症候群と心房細動の強い関連性が明らかになっています。

睡眠時無呼吸症候群患者は、健常者と比較して約2.1倍心房細動を合併しやすく、重症例ほどその比率は高くなることが報告されています。

大規模な観察研究では、無呼吸低呼吸指数(AHI)が10増加するごとに、心血管リスクが25~32%増加するという推定が報告されていますが、研究により数値に幅があります。

メタ回帰分析では、無呼吸低呼吸指数(睡眠1時間あたりの無呼吸または低呼吸の発生回数)が1時間あたり10件増加するごとに心血管リスクが25~32%増加することが示され、これは当初想定していたよりも強い関係でした。

引用:The New England Journal of Medicine CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea

また、心房細動患者における睡眠時無呼吸症候群の合併率も非常に高く、特に持続性心房細動患者では、中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の合併率が50%を超えるという報告もあります。

日本における研究では、カテーテルアブレーション治療を受ける心房細動患者の88.6%がAHI 5以上の睡眠時無呼吸を有し、53.3%がAHI 15以上の中等症以上であることが明らかになっています。

これらのデータは、心房細動患者における睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングの重要性を強く示唆しています。

CPAP治療による心房細動再発リスクの低減効果

CPAP治療は、睡眠時無呼吸症候群の標準的治療法として確立されていますが、近年の研究により心房細動の再発予防においても重要な役割を果たすことが明らかになってきました。

複数の臨床研究やメタアナリシスの結果から、CPAP治療が心房細動の管理において有効であることを示すエビデンスが蓄積されています。

CPAP治療が心房細動の再発を抑制する仕組み

CPAP治療は、睡眠中に一定の陽圧を気道に加えることで上気道の閉塞を防ぎ、無呼吸エピソードを解消します。

これにより、睡眠時無呼吸症候群が引き起こす様々な病態生理学的変化を改善することができます。

CPAP治療により、まず夜間の低酸素血症が改善され、酸化ストレスや炎症反応が軽減されます。

研究では、CPAP治療により平均AHIが大幅に減少し、酸素飽和度の改善とともに交感神経活性の正常化が認められています。

さらに、CPAP治療は心房の構造的リモデリングを逆転させる可能性があります。

心房の電気生理学的研究では、CPAP治療を受けた患者で心房の伝導速度が改善し(0.69 m/sから0.86 m/s)、心房電位の振幅が増加し、複雑な電気信号の割合が減少することが示されています。

これらの変化は、心房細動の基質改善を示唆しています。

また、CPAP治療は血圧を低下させ、治療抵抗性高血圧では24時間収縮期血圧の低下は平均で約3〜5mmHgで、研究によっては6〜7mmHgに及ぶこともあります。

全体として効果は小〜中等度であり、降圧薬や生活習慣の改善と併用することが重要です。

CPAP治療後の24時間歩行時収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)の平均変化量の統合推定値は、それぞれ−7.21 mmHg(95%信頼区間(CI):−9.04~−5.38、P <0.001、I 2 58%)、−4.99 mmHg(95% CI:−6.01~−3.96、P <0.001、I 2 31%)でした。

引用:PubMed Central Effects of continuous positive airway pressure on blood pressure in patients with resistant hypertension and obstructive sleep apnea: a meta-analysis

高血圧は心房細動の重要なリスク因子であり、血圧管理の改善も心房細動再発リスクの低減に寄与すると考えられています。

カテーテルアブレーション後のCPAP併用効果

カテーテルアブレーションは心房細動の根治的治療として広く行われていますが、睡眠時無呼吸症候群を合併する患者では再発率が高いことが知られています。

しかし、CPAP治療の併用により、この再発リスクを大幅に低減できることが複数の研究で示されています。

122名の睡眠時無呼吸症候群合併心房細動患者を対象とした研究では、カテーテルアブレーション後にCPAP治療を行った群では、12か月後の心房細動非再発率が70.3%であったのに対し、CPAP非使用群では31.5%と有意に低い結果でした。

メタアナリシスの結果では、CPAP治療により心房細動の再発リスクが42%減少することが示されています(相対リスク:0.58)。

固定効果モデルを用いた解析では、CPAP群は非CPAP群と比較してAF再発率が統計的に低いことが示されました(相対リスク0.58、95%信頼区間0.49~0.69、p = 0.000、I 2 = 42.80%、図2)。

引用:PubMed Central Continuous positive airway pressure therapy might be an effective strategy on reduction of atrial fibrillation recurrence after ablation in patients with obstructive sleep apnea: insights from the pooled studies

さらに、CPAP治療を適切に行うことで、睡眠時無呼吸症候群を合併していない患者と同程度の再発率まで改善する可能性があることも報告されています。

重要な点として、CPAP治療の効果は使用時間に依存することが明らかになっています。

一晩あたり4時間以上のCPAP使用が推奨されており、最近の解析では287分(約4.8時間)付近でAF再発抑制効果が最大化するという報告もあります。

一方で、不規則な使用や短時間の使用では、CPAP治療を全く行わない場合と比較して有意な改善が認められないことも示されています。

継続的なCPAP使用による心血管イベント抑制データ

CPAP治療の長期的な効果について、心血管イベント全体への影響も検討されています。

大規模なランダム化比較試験では、結果が一様ではありませんが、適切なCPAP使用により脳卒中リスクが有意に減少することが示されています。

一部の観察研究では、一晩4時間以上のCPAP使用により脳卒中リスクが減少したと報告されています。

CPAP遵守が良好なグループと中等度から重度のOSAグループで有意な脳卒中リスクの減少が明らかになりました。

引用:ScienceDirect Continuous positive airway pressure with good adherence can reduce risk of stroke in patients with moderate to severe obstructive sleep apnea: An updated systematic review and meta-analysis

特に脳血管イベントに対する予防効果が顕著であり、これは睡眠時無呼吸症候群が脳循環により強い影響を与えることを反映している可能性があります。

高齢者を対象とした研究でも、CPAPアドヒアランスの良好な患者では脳卒中リスクが有意に低下することが示されており、年齢に関わらずCPAP治療の重要性が確認されています。

ただし、心血管死亡率や心筋梗塞などの心臓イベントに対する効果は、脳血管イベントほど明確ではないことも報告されています。

CPAP治療を成功させるための実践的なポイント

CPAP治療の効果は確立されていますが、その成功は患者の継続的な使用(アドヒアランス)に大きく依存します。

研究によると、CPAP治療を処方された患者の46~83%が推奨される使用時間を達成できていないという現実があります。

ここでは、CPAP治療を成功させるための実践的なアプローチについて解説します。

適切なマスクフィッティングと圧設定の重要性

CPAP治療の成功において、マスクの適切な選択とフィッティングは最も重要な要素の一つです。

マスクが合わない場合、空気漏れ、皮膚の圧迫、不快感などが生じ、治療の継続が困難になります。

マスクには鼻マスク、フルフェイスマスク、鼻ピローマスクなど複数のタイプがあり、患者の顔の形状、鼻呼吸か口呼吸か、睡眠時の体位などを考慮して選択する必要があります。

初期の段階で複数のマスクを試し、最も快適に感じるものを選ぶことが推奨されます。

圧設定については、現在では自動調整機能を持つオートCPAPが広く使用されています。

この機器は患者の呼吸パターンに応じて圧力を自動的に調整し、必要最小限の圧力で治療効果を得ることができます。

初期は自動モードで使用し、その後90パーセンタイル圧に固定する方法が一般的です。

また、加温加湿器の併用も重要です。

CPAP使用により鼻腔や咽頭の乾燥が生じやすく、これが不快感の原因となることがあります。

加温加湿器を使用することで、粘膜の乾燥を防ぎ、快適性を向上させることができます。

継続率を高めるための工夫と対処法

CPAP治療の継続率を高めるためには、治療開始初期の対応が特に重要です。

研究により、CPAP使用パターンは治療開始後1週間以内に確立され、これが長期的な使用を予測することが示されています。

初期の問題に迅速に対処することが重要であり、定期的なフォローアップによる問題の早期発見と解決が推奨されます。

一般的な問題とその対処法には以下のようなものがあります。

一般的な問題と対処法

問題対処法
閉塞感・圧迫感ランプ機能を活用して徐々に圧力に慣れる/覚醒時に短時間装着して慣れる練習
鼻づまり耳鼻咽喉科的治療の併用を検討
動機の低下認知行動療法的アプローチ、動機づけ面接、教育プログラムを実施
使用状況の把握不足遠隔モニタリングで医療者と共有し、早期発見・介入
支援不足家族やパートナーの理解と協力を得る
効果実感の欠如日中の眠気改善、いびき消失、起床時の爽快感を記録し確認する

閉塞感や圧迫感に対しては、徐々に圧力に慣れるためのランプ機能の活用や、覚醒時に短時間装着して慣れる練習が有効です。

鼻づまりがある場合は、耳鼻咽喉科的治療の併用を検討する必要があります。

行動介入も効果的であることが示されています。

認知行動療法的アプローチ、動機づけ面接、教育プログラムなどにより、CPAPアドヒアランスが改善することが報告されています。

また、遠隔モニタリングシステムを活用し、使用状況を医療者と共有することで、問題の早期発見と介入が可能になります。

家族のサポートも重要な要素です。

パートナーや家族の理解と協力により、治療への動機づけが維持されやすくなります。

治療効果を実感することも継続の動機となるため、日中の眠気の改善、いびきの消失、起床時の爽快感などの変化を記録することも有用です。

治療効果を最大化するための生活習慣改善

CPAP治療の効果を最大化するためには、並行して生活習慣の改善を行うことが重要です。

特に肥満は睡眠時無呼吸症候群の主要な原因であり、体重減少により無呼吸の程度が軽減することが多く報告されています。

体重管理においては、炭水化物の摂取を控えめにし、バランスの取れた食事を心がけることが推奨されます。

10%の体重減少により、AHIが26%減少するという報告もあり、減量はCPAP治療と相補的に作用します。

アルコールと喫煙も睡眠時無呼吸を悪化させる要因です。

アルコールは上気道の筋緊張を低下させ、無呼吸を増悪させるため、特に就寝前の飲酒は避けるべきです。

喫煙は上気道の炎症を引き起こし、気道抵抗を増加させるため、禁煙が推奨されます。

睡眠体位の工夫も有効な場合があります。

仰臥位では舌根沈下により気道閉塞が生じやすいため、側臥位での睡眠を促す体位療法が有効な患者もいます。

また、規則正しい睡眠習慣を確立し、十分な睡眠時間を確保することも重要です。

心房細動患者がCPAP治療を検討すべきケース

心房細動と睡眠時無呼吸症候群の密接な関係を考慮すると、心房細動患者における睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングは極めて重要です。

しかし、実際には多くの患者が未診断のまま過ごしているのが現状です。

ここでは、どのような場合にCPAP治療を検討すべきか、具体的な指標と検査方法について解説します。

睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック項目

睡眠時無呼吸症候群は、本人が睡眠中の症状に気づかないことが多いため、周囲からの指摘や日中の症状から疑うことが重要です。

以下のような症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性を考慮する必要があります。

夜間・日中の症状

夜間の症状

  • 不規則ないびき
  • 無呼吸の後に大きないびき
  • 睡眠中の呼吸停止を家族から指摘される
  • 夜間の頻尿(2回以上)
  • 起床時の頭痛や口渇感

日中の症状

  • 強い眠気や居眠り(十分な睡眠時間でも)
  • 集中力の低下
  • 記憶力の低下
  • 気分の変調
  • 慢性的な疲労感

夜間の症状としては、いびきが最も一般的な症状です。

特に、いびきが不規則であったり、無呼吸の後に大きないびきが生じる場合は要注意です。

睡眠中の呼吸停止を家族から指摘される、夜間の頻尿(2回以上)、起床時の頭痛や口渇感なども重要な症状です。

日中の症状では、過度の眠気が特徴的です。

十分な睡眠時間を取っているにも関わらず、日中の強い眠気や居眠りがある場合は疑うべきです。

また、集中力の低下、記憶力の低下、気分の変調、疲労感なども睡眠時無呼吸症候群に関連する症状です。

リスク因子の評価も重要です。

リスク因子の評価
  • 肥満(BMI 25以上)
  • 首回りが太い(男性43cm以上、女性38cm以上)
  • 顎が小さい、扁桃肥大、鼻中隔彎曲症など解剖学的特徴
  • 高血圧、糖尿病、心血管疾患の既往

肥満(BMI 25以上)、首回りが太い(男性43cm以上、女性38cm以上)、顎が小さい、扁桃肥大、鼻中隔彎曲症などの解剖学的特徴がある場合、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高くなります。

また、高血圧、糖尿病、心血管疾患の既往がある患者では、睡眠時無呼吸症候群の合併率が高いことが知られています。

医療機関での検査と診断の流れ

睡眠時無呼吸症候群の診断には、客観的な検査が必要です。

まず、簡易検査として、自宅で行える携帯型モニターによる検査があります。

この検査では、鼻の気流、いびき、血中酸素飽和度などを測定し、無呼吸低呼吸指数(AHI)を算出します。

AHIが40以上の場合、日本の保険診療では終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行わなくてもCPAP治療の適応となります。

しかし、より詳細な評価が必要な場合や、AHIが5以上40未満の場合は、入院でのPSG検査が推奨されます。

PSG検査は睡眠時無呼吸症候群診断のゴールドスタンダードであり、脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸運動、気流、酸素飽和度など多数のパラメータを同時に記録します。

これにより、睡眠の質、無呼吸のタイプ(閉塞性か中枢性か)、重症度を正確に評価できます。

検査の流れ

検査内容適応・特徴
簡易検査(携帯型モニター)鼻の気流、いびき、酸素飽和度などを測定し、AHIを算出自宅で実施可能。AHIが40以上ならPSGなしでCPAP適応
PSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸運動、気流、酸素飽和度など多数の指標を記録入院で実施。AHIが5〜40未満、または詳細評価が必要な場合に推奨。診断のゴールドスタンダード

国際睡眠障害分類第3版(ICSD-3)の診断基準では、AHI 15以上であれば症状の有無に関わらず睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

また、AHI 5以上15未満でも、日中の眠気、いびき、高血圧、心房細動などの症状や合併症がある場合は診断基準を満たします。

CPAP以外の治療選択肢との比較

睡眠時無呼吸症候群の治療にはCPAP以外にも複数の選択肢があり、患者の状態や希望に応じて選択されます。

それぞれの治療法には長所と短所があり、心房細動管理の観点からも考慮が必要です。

口腔内装置(マウスピース)は、軽症から中等症の睡眠時無呼吸症候群に対して有効な治療法です。

下顎を前方に固定することで気道を確保しますが、CPAPと比較すると治療効果は劣ることが多く、心房細動再発予防効果についてのエビデンスも限定的です。

外科的治療として、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UVPPP)や顎骨前方移動術などがあります。

これらは解剖学的異常が明確な場合に考慮されますが、侵襲的であり、効果の予測が困難な場合があります。

心房細動に対する効果も十分に検証されていません。

主な治療法の比較

治療法特徴短所・限界心房細動への効果
口腔内装置(マウスピース)下顎を前方に固定し気道を確保。軽症〜中等症に有効CPAPより効果は劣る再発予防効果のエビデンスは限定的
外科的治療(UVPPP、顎骨前方移動術など)解剖学的異常がある場合に検討侵襲的、効果予測が困難効果は十分に検証されていない
上気道刺激療法舌下神経を電気刺激し上気道を開存長期データが少ない効果は不明
体位療法体位依存性に有効単独では効果が限定的他治療との併用が推奨される
減量手術高度肥満患者で考慮リスクを伴う心房細動への直接効果は不明

最近では、上気道刺激療法という新しい治療法も登場しています。

舌下神経を電気刺激することで上気道の開存を維持する方法ですが、まだ長期的なデータは限られており、心房細動への効果も不明です。

体位療法は、体位依存性の睡眠時無呼吸症候群に有効ですが、単独では効果が限定的なことが多く、他の治療法との併用が推奨されます。

減量手術は高度肥満患者では考慮されますが、リスクも伴います。

心房細動管理の観点からは、現時点でCPAP治療が最もエビデンスが豊富であり、非侵襲的で可逆的であることから第一選択として推奨されます

よくある質問(FAQ)

CPAP治療をすれば心房細動は完全に治りますか?

CPAP治療により心房細動が完全に治癒するわけではありませんが、再発リスクを大幅に低減する可能性があります。

研究では、CPAP治療により心房細動の再発率が約30~42%減少することが示されています。

ただし、効果は個人差があり、他の治療法との併用が必要な場合もあります。

CPAP治療の効果が現れるまでどのくらいかかりますか?

CPAP治療の効果は、症状により現れる時期が異なります。

いびきや日中の眠気は数日から数週間で改善することが多いですが、心房細動への効果は数か月以上の継続使用が必要とされています。

心房の構造的変化の改善には6か月程度かかるという報告もあります。

心房細動の薬とCPAPは併用できますか?

はい、心房細動の治療薬とCPAP治療は安全に併用できます。

むしろ、抗不整脈薬や抗凝固薬とCPAP治療を併用することで、より良好な治療効果が期待できます。

ただし、薬の種類や用量については、必ず主治医と相談してください。

CPAP治療の費用はどの程度かかりますか?

日本では、AHI 20以上で日中の眠気などの症状がある場合、またはAHI 40以上の場合、CPAP治療は保険適用となります。

3割負担の場合、月額約4,000~5,000円程度(再診・管理料などで変動)の自己負担となりますが、施設により変動があります。

ただし、定期的な受診が必要であり、その際の診察料等が別途かかります。

高齢者でもCPAP治療は効果的ですか?

はい、高齢者においてもCPAP治療は効果的です。

年齢に関わらず、睡眠時無呼吸症候群の改善と心房細動再発リスクの低減効果が報告されています。

ただし、認知機能や手指の巧緻性などを考慮し、機器の操作方法について十分なサポートが必要な場合があります。

まとめ

睡眠時無呼吸症候群と心房細動は密接に関連しており、CPAP治療は両疾患の管理において重要な役割を果たします。

睡眠時無呼吸症候群は、低酸素血症、交感神経活性化、胸腔内圧変動などの複数のメカニズムを介して心房細動の発症・維持に関与しています。

CPAP治療により、これらの病態生理学的変化が改善され、心房細動の再発リスクが有意に低減することが多くの研究で示されています。

特にカテーテルアブレーション後の患者では、CPAP治療の併用により再発率を大幅に低下させることができます。

ただし、その効果を得るためには、一晩4時間以上の継続的な使用が必要です。

CPAP治療を成功させるためには、適切なマスク選択、圧設定の最適化、生活習慣の改善など、包括的なアプローチが重要です。

初期の問題に迅速に対処し、長期的なアドヒアランスを維持することが治療成功の鍵となります。

心房細動患者、特に治療抵抗性の患者や再発を繰り返す患者では、睡眠時無呼吸症候群の積極的なスクリーニングが推奨されます。

いびき、日中の眠気、起床時の頭痛などの症状がある場合は、早期に専門医療機関での検査を受けることが重要です。

睡眠時無呼吸症候群の適切な診断と治療は、心房細動の管理を改善するだけでなく、脳卒中リスクの低減、生活の質の向上、全体的な心血管予後の改善にもつながります。

医療者と患者が協力して、継続的な治療管理を行うことが、最良の治療成果を得るために不可欠です。

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伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、ポリソムノグラフィーなど最新の睡眠検査設備を導入し、CPAP療法・口腔内装置・生活習慣指導を組み合わせた包括的なSAS診療を提供。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「眠りから全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動に取り組んでいる。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする生活習慣病の早期発見と予防に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い眠りと健康」の実現を目指している。

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