睡眠時無呼吸症候群の治療で使用されるCPAP(シーパップ)。実は、このCPAPが血圧を下げる効果があることをご存知でしょうか。
「CPAPを使い始めてから血圧が下がった」という声を聞いたことがある方も多いかもしれません。
しかし、どのくらい使えば効果が期待できるのか、誰でも同じように血圧が下がるのか、疑問に思われる方も少なくないでしょう。
実際、睡眠時無呼吸症候群の患者さんの30~50%程度が高血圧を合併しており、特に薬を3種類以上使っても血圧が下がらない「治療抵抗性高血圧」の患者さんでは、60~80%程度の方に睡眠時無呼吸症候群が見つかることが研究により報告されています。
- 無呼吸時の低酸素状態による心臓の過剰な働きを防ぐ
- 覚醒反応による交感神経活発化と血圧急上昇を抑制
- 睡眠の質改善で正常な自律神経リズムを回復
- 血管内皮機能改善により動脈硬化進行を遅延
- 正常な夜間血圧降下パターンの回復を促進
この記事では、CPAPによる血圧改善効果について、最新の研究データを基に詳しく解説します。
特に「どのくらいの時間使えば効果が期待できるのか」という使用時間と効果の関係について、わかりやすくお伝えしていきます。
- CPAPが血圧を下げる仕組み
- 効果が期待できる使用時間の目安
- 夜間血圧と日中血圧への影響の違い
- 血圧改善効果が期待できる人の特徴
- 降圧薬との併用について注意すべきこと
CPAPが血圧に与える影響とそのメカニズム
CPAPが血圧に与える影響について理解するには、まず睡眠時無呼吸症候群がなぜ高血圧を引き起こすのかを知ることが大切です。
睡眠中に何度も呼吸が止まることで、体には様々な負担がかかります。
その結果として血圧が上昇し、心臓や血管に大きなダメージを与えることになるのです。
CPAPは、この悪循環を断ち切ることで血圧を改善させる効果が期待できます。
研究によると、CPAPを適切に使用することで、収縮期血圧(上の血圧)が平均2~3mmHg、拡張期血圧(下の血圧)が平均1~5mmHg程度低下することが報告されています。
ただし、集団や解析によっては上限側(特に夜間血圧や治療抵抗性高血圧)でより大きな低下が出る傾向にあります。
この数値は一見小さく見えるかもしれませんが、心臓病や脳卒中のリスクを減らすという観点では、とても意味のある改善といえます。
睡眠時無呼吸症候群と高血圧の関係性
睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、健康な人と比べて高血圧になるリスクが約2~3倍高くなる傾向があることが複数の研究で示されています。
睡眠中に呼吸が止まると、血液中の酸素濃度が低下します。
すると体は「酸素が足りない」という危険信号を受け取り、心臓の働きを強めて全身に酸素を送ろうとします。
その結果、血圧が上昇するのです。
さらに、呼吸が再開する際には「覚醒反応」という現象が起こります。
体は眠っている状態でも、脳は一時的に目覚めたような状態になり、交感神経が活発になります。
本来、睡眠中は副交感神経が優位になって血圧が下がるはずですが、この覚醒反応により血圧が急上昇してしまうのです。
一晩に何十回、重症の方では何百回もこのような血圧の急激な変動が繰り返されることで、血管や心臓に大きな負担がかかります。
CPAP治療による血圧改善の仕組み
CPAPは「Continuous Positive Airway Pressure」の略で、日本語では「持続陽圧呼吸療法」と呼ばれます。
鼻や口に装着したマスクから、一定の圧力をかけた空気を送り込むことで、睡眠中に気道が塞がるのを防ぐ治療法です。
CPAPが血圧を改善させる仕組みは主に3つあります。
- 無呼吸を防ぐことで低酸素状態を解消し、交感神経の過剰な活動を抑えることができる
- 睡眠の質が改善することで、正常な自律神経のリズムが回復する
- 血管内皮機能(血管の柔軟性を保つ機能)が改善し、動脈硬化の進行を遅らせる効果も期待できる
研究によると、CPAPを使用すると、治療開始から早ければ数週間という比較的早い時期から血圧の改善が見られることが報告されています。
動脈の硬さを示す指標の改善を報告する研究もありますが、結果は一貫しておらず、血管機能への効果については今後さらなる検証が必要とされています。
CPAP治療は、OSA患者のPWVを低下させることで動脈硬化を改善するのに効果的であった。しかしながら、これらの知見を確認するには、さらなるランダム化試験を実施する必要がある。
引用:PubMed Impact of CPAP on arterial stiffness in patients with obstructive sleep apnea: a meta-analysis of randomized trials
夜間血圧の変化と日中血圧への影響
血圧は一日の中で変動しており、通常は夜間に10~20%程度低下します。
これを「夜間血圧降下(ディッピング)」と呼びます。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、この正常な夜間血圧降下が見られない「非ディッパー型」や、逆に夜間の血圧が上昇する「ライザー型」を示すことが多いのです。
CPAPを使用すると、まず夜間の血圧が改善されます。
無呼吸による血圧の急上昇がなくなることで、正常な夜間血圧降下パターンが回復するのです。
複数の研究では、CPAP使用により夜間の平均血圧が改善されることが示されています。
一般的な睡眠時無呼吸症候群患者では平均2~3mmHg程度の低下が認められていますが、集団や解析によっては夜間の平均血圧により大きな改善効果が達成される場合があります。
収縮期血圧の夜間成分と日中成分はそれぞれ14.4±4.4 mmHgと9.3±3.9 mmHgと有意に低下しました。夜間の拡張期血圧は7.8±3.0 mmHgと有意に低下しました。
引用:European Respiratory Journal Refractory hypertension and sleep apnoea: effect of CPAP on blood pressure and baroreflex
日中の血圧への影響については、夜間ほど顕著ではありませんが、継続的にCPAPを使用することで改善が期待できます。
夜間の睡眠の質が改善し、体の疲労が回復することで、日中の交感神経活動も正常化していく傾向にあります。
ただし、日中の血圧改善効果は個人差が大きく、効果が現れるまでに数か月かかることもあります。
CPAP使用時間と血圧改善効果の相関関係
CPAPの血圧改善効果を得るためには、使用時間が非常に重要な要素となります。
「どのくらいの時間使えば効果があるのか」という疑問は、多くの患者さんが抱く疑問でしょう。
研究データを基に、使用時間と血圧改善効果の関係について詳しく見ていきましょう。
最適な使用時間と血圧低下の関係
多くの研究で、CPAPの効果を得るためには「一晩に4時間以上」の使用が必要とされています。
アメリカのメディケア(高齢者医療保険)でも、CPAPの保険適用条件として「30日間のうち70%以上の日で、一晩4時間以上使用すること」が定められています。
しかし、血圧改善という観点から見ると、4時間というのは最低限の目安であり、より長時間使用することで、より大きな効果が期待できることがわかっています。
研究によると、使用時間と血圧低下の間には「用量反応関係」があることが示されています。
つまり、使用時間が長ければ長いほど、血圧改善効果も大きくなる傾向があるのです。
具体的には、一晩4時間未満の使用では血圧改善効果はほとんど見られませんが、4時間以上使用すると拡張期血圧が約1.4mmHg低下し、使用時間に比例して効果が高まる傾向があります。
夜間4時間未満のCPAP使用患者では収縮期血圧の上昇(1.5 mmHg、95%信頼区間 -0.0~3.1、p=0.052)が認められ、夜間4時間を超えるCPAP使用患者では拡張期血圧の低下(-1.4 mmHg、95%信頼区間 -2.5~-0.4、p=0.008)が認められました。
引用:PubMed Effect of CPAP on blood pressure in patients with minimally symptomatic obstructive sleep apnoea: a meta-analysis using individual patient data from four randomised controlled trials
理想的には、睡眠時間全体を通してCPAPを使用することが推奨されています。
使用時間別に見る血圧改善の実際のデータ
実際の研究データを見てみると、CPAP使用時間による血圧改善効果の違いがより明確になります。
ある大規模研究では、一晩の平均使用時間が1~2時間の患者さんでも、医療機関の受診回数や救急外来の利用が減少する傾向が見られました。
3 つの時点すべてで ER 受診を防ぐための最低閾値は 1 晩あたり 1~2 時間であった
引用:PubMed Central Dose-Response Relationship between Obstructive Sleep Apnea Therapy Adherence and Healthcare Utilization
別の研究では、一晩4時間以上使用している患者さんでは、24時間血圧測定で平均3.1mmHgの血圧低下が確認されました。
特に治療抵抗性高血圧の患者さんでは、より大きな改善効果が見られ、収縮期血圧が5~7mmHg、拡張期血圧が3~5mmHg程度低下することが報告されています。
夜間収縮期血圧(SBP)は7.1mmHg(p = 0.003)、夜間拡張期血圧(DBP)は4.1mmHg(p = 0.003)低下しました。
引用:Nature Long-term effect of continuous positive airway pressure therapy on blood pressure in patients with obstructive sleep apnea
また、血圧の変動幅も小さくなり、心血管系への負担が軽減されることが複数の研究で示されています。
重要なのは、これらの効果を得るためには「毎日継続して使用すること」です。
週に数日だけ長時間使用するよりも、毎日4時間以上使用する方が効果的であることが研究で示されています。
継続使用による長期的な血圧への効果
CPAPの血圧改善効果は、短期的な効果だけでなく、長期的な効果も期待できます。
日本で行われた2年間の追跡調査では、CPAPを良好に使用(一晩4時間以上を70%以上の日で使用)している患者さんで、拡張期血圧の持続的な低下が確認されました。
CPAP遵守が良好な患者群(各時点で計算された4時間を超えるCPAPの平均使用率が70%以上)は、追跡期間中に拡張期血圧が有意に低下し、CPAP療法の有意な縦断的効果が示されました
引用:Nature Long-term effect of continuous positive airway pressure therapy on blood pressure in patients with obstructive sleep apnea
いくつかの研究では、CPAPを中止すると比較的短期間で血圧上昇が認められることが報告されていますが、CPAP中止による血圧変化を直接検証した研究は限定的です。
これは、CPAP使用時間と血圧改善効果に用量反応関係があることと一致しており、継続的な使用が血圧管理において重要であることを示唆しています。
長期使用による効果として注目すべきは、血圧の改善だけでなく、心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)の発生リスクが減少することです。
実際に、長期観察研究では、CPAPを適切に使用している患者さんの心血管イベント発生率は、未治療の重症患者と比較して大幅に低下し、健常者とほぼ同等のレベルまで改善することが報告されており、心血管イベントのリスク減少効果が期待されています。
ただし、大規模ランダム化比較試験では、主要心血管イベントの有意な予防効果は一貫して示されておらず、CPAPの心血管保護効果については観察研究と臨床試験で結果が異なっています。
また、CPAPを長期使用する際の注意点として、軽度の体重増加(平均0.4~1kg程度)の可能性が指摘されています。
睡眠の質が改善し、日中の活動性が向上することで食欲が増進する場合があるためです。
そのため、CPAP治療中も適切な体重管理を継続することが大切です。
CPAPで血圧が下がりやすい人の特徴と改善のポイント
CPAPによる血圧改善効果には個人差があります。
同じように治療を受けても、大きく血圧が下がる人もいれば、あまり変化が見られない人もいます。
ここでは、どのような人がCPAPで血圧改善効果を得やすいのか、また効果を最大化するためのポイントについて解説します。
血圧改善効果が期待できる患者の特徴
研究データから、以下のような特徴を持つ患者さんでCPAPによる血圧改善効果が大きいことがわかっています。
- 重度の睡眠時無呼吸症候群(AHI30以上)の人
- 治療抵抗性高血圧(3種以上の降圧薬でも不十分)の人
- 日中の眠気が強い人
まず、睡眠時無呼吸症候群の重症度が高い人ほど、CPAPによる血圧改善効果が大きい傾向があります。
AHI(無呼吸低呼吸指数)が30以上の重症患者さんでは、軽症の患者さんと比べて、より顕著な血圧低下が見られます。
これは、もともとの無呼吸による血圧への影響が大きいため、その改善効果も大きくなるためと考えられています。
次に、治療抵抗性高血圧を持つ患者さんです。
3種類以上の降圧薬を使用しても血圧がコントロールできない患者さんの多くに睡眠時無呼吸症候群が隠れており、CPAPによって顕著な血圧改善が期待できます。
研究により効果の幅がありますが、治療抵抗性高血圧患者さんでCPAPを使用すると、24時間血圧が平均3~7mmHg低下することが報告されています。
平均収縮期血圧および平均拡張期血圧(24時間携帯型血圧測定による)の変化の統合推定値は、それぞれ−5.40mmHg(95%信頼区間:−9.17~−1.64、p = 0.001、I 2 = 74%)、−3.86mmHg(95%信頼区間:−6.41~−1.30、p = 0.00001、I 2 = 79%)であった。
引用:PubMed Central Effects of continuous positive airway pressure on blood pressure in patients with resistant hypertension and obstructive sleep apnea: a systematic review and meta-analysis of six randomized controlled trials
また、日中の眠気が強い患者さんも、CPAPによる血圧改善効果が大きいことがわかっています。
眠気は睡眠の質の低下を反映しており、CPAPによる睡眠改善効果が大きいためと考えられます。
年齢と血圧改善効果の関係については、研究により結果が異なり、必ずしも若年者で効果が大きいとは限りません。
血管の状態や併存疾患などを総合的に評価することが重要です。
効果を最大化するための使用方法
CPAPの血圧改善効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方と継続的な使用が不可欠です。
第一に重要なのは、適切な圧力設定です。
圧力が低すぎると無呼吸が残存し、高すぎると不快感から使用時間が短くなってしまいます。
定期的に医療機関でデータをチェックし、必要に応じて圧力を調整することが大切です。
最近では、自動的に圧力を調整するオートCPAP機器も使用されており、より快適な治療が可能になっています。
マスクの選択も重要なポイントです。
- 鼻マスク
- フルフェイスマスク
- 鼻ピローマスク
顔の形や呼吸パターンに合ったマスクを選ぶことで、空気漏れを防ぎ、快適に使用できます。
マスクのフィッティングが悪いと、効果が低下するだけでなく、使用を中断する原因にもなります。
使用開始時は、まず日中に10~15分程度装着して慣れることから始めると良いでしょう。
徐々に装着時間を延ばし、最終的に睡眠時間全体で使用できるようにしていきます。
最初の1~2週間は違和感があるかもしれませんが、多くの患者さんは3~4週間で慣れることができます。
加湿器の使用も快適性を高める重要な要素です。
特に冬場は空気が乾燥しやすく、鼻や喉の不快感の原因となります。
適切な加湿により、粘膜の乾燥を防ぎ、快適に使用を継続できます。
血圧測定のタイミングと記録の重要性
CPAPによる血圧改善効果を正確に把握するためには、適切なタイミングでの血圧測定と記録が重要です。
血圧測定は、毎日同じ時間帯に行うことが基本です。
起床後1時間以内(排尿後、朝食前、服薬前)と、就寝前の2回測定することが推奨されています。
測定前は5分程度安静にし、座位で測定します。
CPAP開始前の血圧を記録しておくことで、治療効果を客観的に評価できます。
血圧手帳やスマートフォンのアプリを活用して、継続的に記録することをお勧めします。
特に注目すべきは朝の血圧です。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、朝の血圧上昇(モーニングサージ)が問題になりやすく、予後にも影響します。
CPAPによって夜間の無呼吸が改善すると、朝の血圧上昇も改善することが期待できます。
血圧の変化は徐々に現れることが多いため、少なくとも3か月は継続して記録することが大切です。
また、体調の変化や睡眠の質、CPAPの使用時間なども併せて記録すると、より詳細な評価が可能になります。
CPAPと降圧薬の併用について知っておくべきこと
多くの睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、すでに高血圧の治療を受けており、降圧薬を服用しています。
CPAPを開始する際、降圧薬との併用について不安を感じる方も少なくありません。
ここでは、CPAPと降圧薬の併用について、安全性と注意点を解説します。
降圧薬服用中のCPAP導入時の注意点
降圧薬を服用中の患者さんがCPAPを開始する場合、基本的に降圧薬をそのまま継続しながらCPAP治療を始めます。
急に降圧薬を中止することは危険であり、医師の指示なく薬を調整してはいけません。
CPAP開始後、血圧が徐々に改善してくることが期待されますが、効果が現れるまでには個人差があります。
早い人では2~4週間で改善が見られますが、3か月以上かかることもあります。
この期間中は、降圧薬を継続しながら、定期的に血圧をモニタリングすることが重要です。
特に注意が必要なのは、朝の血圧測定です。
CPAPによって夜間の血圧が改善すると、朝の血圧も下がることがあります。
めまいやふらつきなどの症状が現れた場合は、血圧が下がりすぎている可能性があるため、速やかに医師に相談してください。
研究によると、CPAPと降圧薬の併用は、それぞれ単独で使用するよりも効果的であることが示されています。
降圧薬単独治療と比較して、CPAPを併用することで24時間平均血圧がさらに約3mmHg低下することが報告されています。
CPAPグループは対照グループと比較して、24時間平均血圧(3.1 mm Hg [95% CI、0.6 ~ 5.6]、P = .02)および24時間DBP(3.2 mm Hg [95% CI、1.0 ~ 5.4]、P = .005)でより大きな低下を達成しました
引用:PubMed Effect of CPAP on blood pressure in patients with obstructive sleep apnea and resistant hypertension: the HIPARCO randomized clinical trial
これは、CPAPと降圧薬が異なるメカニズムで血圧を下げるため、相乗効果が期待できるためです。
血圧改善後の薬の調整について
CPAPを継続使用して血圧が改善した場合、降圧薬の減量や中止を検討できる場合があります。
ただし、これは必ず医師の判断のもとで行う必要があります。
一般的に、CPAPを3~6か月継続使用し、血圧が安定して目標値(標準的な数値は130/80mmHg未満)を達成している場合、降圧薬の調整を検討します。
- まず薬の量を減らす
- 複数の降圧薬がある場合は一つずつ減量
- より頻繁な血圧モニタリング実施
- 血圧再上昇時は元の量に戻す
調整は段階的に行われ、まず薬の量を減らすことから始めます。
複数の降圧薬を服用している場合は、一つずつ慎重に減量していきます。
降圧薬を減量する際は、より頻繁な血圧モニタリングが必要です。
朝夕の家庭血圧測定に加えて、定期的な24時間血圧測定を行うこともあります。
血圧が再上昇した場合は、速やかに薬を元の量に戻す必要があります。
重要なのは、CPAPの使用を継続することです。
研究によると、CPAPを中止すると、1–2週以内に血圧が元のレベルに戻ってしまうことが示されています。
つまり、降圧薬を減量できたとしても、CPAPは継続して使用する必要があるのです。
また、すべての患者さんで降圧薬を完全に中止できるわけではありません。
降圧薬継続が必要な場合
| 分類 | 原因・状況 | 理由 |
|---|---|---|
| 他の高血圧原因 | 遺伝的要因、塩分摂取過多、運動不足など | 睡眠時無呼吸症候群以外の要因による高血圧のため |
| 合併症あり | 心臓病や腎臓病など | 血圧管理と臓器保護の両方の目的で使用 |
睡眠時無呼吸症候群以外の原因(遺伝的要因、塩分摂取過多、運動不足など)による高血圧もある場合は、降圧薬の継続が必要なことが多いです。
特に注意が必要なのは、心臓病や腎臓病などの合併症がある患者さんです。
これらの疾患では、血圧管理だけでなく、臓器保護の目的でも降圧薬が使用されています。
このような場合は、血圧が改善しても降圧薬の継続が推奨されることがあります。
よくある質問(FAQ)
- CPAPを使えばすぐに血圧は下がりますか?
-
血圧の改善には個人差がありますが、多くの場合、効果が現れるまでに時間がかかります。
早い方では2~4週間で改善が見られることもありますが、一般的には1~3か月程度の継続使用が必要です。
また、一晩4時間以上、できれば睡眠時間全体を通して使用することが重要です。
- 何時間以上使用すれば血圧改善効果が期待できますか?
-
研究データによると、最低でも一晩4時間以上の使用が必要とされています。
ただし、より確実な効果を得るためには、睡眠時間全体を通しての使用が推奨されます。
使用時間が長いほど血圧改善効果も大きくなる傾向があります。
- CPAPで血圧が下がったら降圧薬はやめられますか?
-
血圧が改善した場合でも、降圧薬の調整は必ず医師の指示のもとで行う必要があります。
急な中止は危険であり、段階的な減量が基本です。
また、すべての方で降圧薬を完全に中止できるわけではなく、他の要因による高血圧がある場合は継続が必要なこともあります。
- 夜間だけでなく日中の血圧も改善されますか?
-
CPAPは主に夜間の血圧を改善しますが、継続使用により日中の血圧も改善することが期待できます。
夜間の睡眠の質が向上し、自律神経のバランスが整うことで、日中の血圧も徐々に改善していきます。
ただし、日中の血圧改善には夜間よりも時間がかかることが多い傾向にあります。
- CPAPを使っても血圧が下がらない場合はどうすればよいですか?
-
まず使用時間と使用方法を確認することが大切です。
一晩4時間未満の使用では効果が期待できません。
また、マスクの空気漏れや圧力設定が不適切な場合も効果が低下します。
それでも改善しない場合は、睡眠時無呼吸以外の高血圧の原因がある可能性があるため、医師に相談して総合的な評価を受けることをお勧めします。
まとめ
CPAPによる血圧改善効果について、研究データを基に詳しく解説してきました。
睡眠時無呼吸症候群と高血圧は密接な関係があり、CPAPによる適切な治療で血圧の改善が期待できることがおわかりいただけたでしょうか。
重要なポイントを改めて整理すると、CPAPの血圧改善効果を得るためには「一晩4時間以上」の使用が必要であり、「毎日継続すること」が何より大切です。
使用時間が長いほど、血圧改善効果も大きくなる用量反応関係があることも明らかになっています。
特に、重症の睡眠時無呼吸症候群の方や治療抵抗性高血圧の方では、より大きな改善効果が期待できます。
CPAPは対症療法であり、使用を中止すると血圧は元に戻ってしまいます。
しかし、継続使用により、長期的な心血管リスクの低減が期待できます。
降圧薬との併用も安全であり、相乗効果も期待できます。
最後に、CPAPによる治療効果を最大限に引き出すためには、適切な圧力設定、マスクの選択、そして何より患者さん自身の治療への理解と協力が不可欠です。
定期的な血圧測定と記録を行い、医療機関との連携を保ちながら、根気よく治療を続けることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群の治療は、単に睡眠の質を改善するだけでなく、高血圧をはじめとする様々な生活習慣病のリスクを減らし、健康寿命の延伸につながります。
CPAPを正しく継続使用することで、より健康的な生活を送ることができるでしょう。
PubMed Central Review of and Updates on Hypertension in Obstructive Sleep Apnea
PubMed Central Management of hypertension in obstructive sleep apnea
American Thoracic Society Journals Effects of Continuous Positive Airway Pressure on Central and Peripheral Blood Pressure in Patients with Uncontrolled Hypertension and Obstructive Sleep Apnea: The Randomized Controlled MORPHEOS Clinical Tria
JAMA Network Association of Sleep-Disordered Breathing, Sleep Apnea, and Hypertension in a Large Community
PubMed Central Obstructive sleep apnea and hypertension; critical overview
American Heart Association Journals Treatment of Sleep Apnea and Reduction in Blood Pressure: The Role of Heart Rate Response and Hypoxic Burden
American Heart Association Journals Obstructive Sleep Apnea and Cardiovascular Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association
Journal of the American College of Cardiology Sleep Disordered Breathing and Cardiovascular Disease
American Heart Association Journals Effects of Continuous Positive Airway Pressure Versus Supplemental Oxygen on 24-Hour Ambulatory Blood Pressure
European Respiratory Journal Effect of continuous positive airway pressure on blood pressure and metabolic profile in women with sleep apnoea
American Thoracic Society Journals Impact of Mandibular Advancement Therapy on Endothelial Function in Severe Obstructive Sleep Apnea
Dove Press Blood-pressure variability in patients with obstructive sleep apnea: c
European Respiratory Journal Refractory hypertension and sleep apnoea: effect of CPAP on blood pressure and baroreflex
Centers for Medicare & Medicaid Services Positive Airway Pressure (PAP) Devices for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea (L33718)
PubMed Central Dose-Response Relationship between Obstructive Sleep Apnea Therapy Adherence and Healthcare Utilization
PubMed Central Effect of CPAP on Blood Pressure in Patients with Obstructive Sleep Apnea and Resistant Hypertension
American Thoracic Society Journals Effect of Supplemental Oxygen on Blood Pressure in Obstructive Sleep Apnea (SOX). A Randomized Continuous Positive Airway Pressure Withdrawal Trial
American Academy of Sleep Medicine CPAP rapidly improves blood pressure and arterial tone in adults with sleep apnea
New England Journal of Medicine CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea
PubMed Central Sleep Apnea Syndrome (SAS) Clinical Practice Guidelines 2020
PubMed Central Up, down, or no change: weight gain as an unwanted side effect of CPAP for obstructive sleep apnea
PubMed Japanese society of hypertension (JSH) guidelines for self-monitoring of blood pressure at home
American Heart Association Journals Measurement of Blood Pressure in Humans: A Scientific Statement From the American Heart Association
American Heart Association Home Blood Pressure Monitoring
PubMed Central Morning blood pressure surge: pathophysiology, clinical relevance and therapeutic aspects
American Heart Association Journals Systolic Blood Pressure Control Targets to Prevent Major Cardiovascular Events and Death in Patients With Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Network Meta-Analysis
国立精神・神経医療研究センター 睡眠時無呼吸診療について
一般社団法人 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020 」

コメント