熊本市東区の内科・循環器内科・糖尿病脂質代謝内科・禁煙治療・在宅診療のグレースメディカルクリニック
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薄毛や抜け毛が気になり始めたとき、多くの方はAGA(男性型脱毛症)を思い浮かべるかもしれません。
日本皮膚科学会によれば、AGAは日本人男性のおよそ3割の方に見られる一般的な脱毛症です。
しかし、「本当にAGAなのか」「病院に行くほどのことなのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
そのような悩みに役立つのが、自分で行うセルフチェックです。
まずは下記の9項目に目を通してみましょう。当てはまる項目が多いほど、AGAの可能性があるといわれています。
※上記項目は一般的な情報提供を目的としており具体的な診断・治療を希望する場合は、医師または医療機関にご相談ください。
複数の項目に当てはまる方は、AGAである可能性が高まります。
もちろんセルフチェックだけで確定するわけではありませんが、こうした気づきをきっかけに早めの対策や医療機関への相談を検討してみましょう。
本記事では、このセルフチェック9つの項目について解説するとともに、スマートフォンや鏡を使った自宅での観察方法をご紹介します。
また、AGA以外の脱毛症の特徴や、セルフチェックする際の注意点も解説します。
セルフチェックは日常的な健康管理の一環として有効ですが、正確な診断や治療については専門家の判断が必要です。
髪の状態で気になる点がある場合は、必要に応じて医療機関での相談も選択肢として検討するとよいでしょう。
薄毛や抜け毛に悩む方は、本記事を参考にセルフチェックを習慣にしてみてください。
本記事は、あくまでも一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医療上の助言や診断、治療を推奨するものではありません。
AGA治療薬をはじめとする医薬品や施術は、個人の健康状態や体質によって効果・副作用が異なる可能性があります。治療を希望される方は、必ず医師をはじめとする医療従事者と相談のうえ、十分な説明を受けてから自己責任においてご判断ください。
「以前より髪が少なくなった」と感じたら、まずはAGA(男性型脱毛症)のセルフチェックを実施してみることをおすすめします。
AGAは、男性ホルモンの影響を受けやすい部位から徐々に薄くなっていく脱毛症の一つです。
セルフチェックは医学的な診断ではありませんが、自分の髪や頭皮の変化に早めに気づくために役立ちます。
ただし、セルフチェックには限界もあります。
本当にAGAなのか、それとも別の原因による脱毛なのかを正確に判断するためには、専門の医療機関を受診することが最も確実です。
AGAの最大の特徴は、薄毛の範囲が徐々に広がっていくことです。
一般的に、前頭部やつむじ周辺の頭頂部から薄くなり始めるのが特徴とされており、一度始まると自然に治ることは少なく、時間の経過とともに徐々に進行していきます。
また、AGAの発症率は、年齢とともに高くなる傾向があります。
20代で約10%,30代で20%,40代で30%,50代以降で40数%と年齢とともに高くなる
引用元:眞鍋求,他.「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」.日本皮膚科学会雑誌,127(13),2763–2777(2017).
この数字からもわかるように、AGAは一般的な脱毛症であり、多くの男性に見られる症状です。
しかし、発症パターンや進行速度には個人差があり、全ての方に同じような変化が現れるわけではありません。
髪や頭皮の変化に早めに気づき、必要に応じて専門医に相談することが大切です。
セルフチェックは日常的な髪の変化に気づくためのきっかけとなり、自分の髪や頭皮の状態を把握するのに役立ちます。
誰でも手軽に行えることがメリットですが、あくまで参考情報に留まります。
一方、医師による診察では、専門的な知識と経験に基づいた総合的な評価が行われます。
問診による生活習慣や家族歴の確認、頭皮の状態検査、場合によっては血液検査なども実施されることがあります。
AGAなのか他の脱毛症なのかを正確に診断し、適切な治療方針を立てることが可能です。
セルフチェックで気になる点があれば、それを医師に伝えることで、より的確な診断につながります。
セルフチェックと医師の診察の違い
項目 | セルフチェック | 医師の診察 |
---|---|---|
目的 | ・気づきのきっかけになる ・医師への相談時に役立つ | ・症状の正確な診断 ・必要に応じて治療の検討 |
手間 | 自分で簡単に実施できる | 予約・来院が必要、待ち時間がある |
費用 | かからない | かかる(保険適用外の場合あり) |
判断 | 医学的根拠は限定的 | 専門知識、科学的根拠に基づく診断 |
以下の9つのチェック項目は、AGAに関連する可能性のある要素をまとめたものです。
セルフチェックの目的は、自身の髪の状態や生活習慣を振り返り、気づきを得ることにあります。
項目を見ていくと、遺伝的要素、髪の状態変化、生活習慣などさまざまな視点から考えるポイントがあることがわかります。
自分の状況に当てはまる項目があるかどうかを確認してみてください。
ただし、セルフチェックはあくまで参考情報です。
複数の項目に当てはまる場合でも必ずしもAGAとは限らず、当てはまらなくてもAGAの可能性を否定するものでもありません。
症状について心配な点があれば、医療機関で相談することも選択肢です。
AGAには複数の要因が関係していると考えられており、そのうちの一つが遺伝的背景です。
父親や母方の祖父など身近な家族に薄毛の方がいる場合は、AGAの可能性を考えてみる目安の一つです。
日本皮膚科学会ガイドラインによれば、男性ホルモン受容体など一部の遺伝子を親から受け継ぐことがあり、母方・父方の両方の薄毛歴が関係します。
遺伝的背景としては X 染色体上に存在する男性ホル モンレセプター遺伝子の多型や常染色体の 17q21 や 20p11 に疾患関連遺伝子の存在が知られている
引用元:眞鍋求,他.「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」.日本皮膚科学会雑誌,127(13),2763–2777(2017).
ただし、遺伝は絶対的な要素ではなく、生活習慣やストレスなどさまざまな要因も絡み合って発症すると考えられています。
家族に薄毛の方がいてもAGAにならない可能性があり、家族に薄毛の方がいなくてもAGAを発症する可能性はあります。
健康な髪でも日々一定量の抜け毛はありますが、急に量が増えたと感じる場合は注意が必要かもしれません。
AGAでは毛髪の成長サイクルの過程で成長期が短くなり、休止期にとどまる割合が増加する特徴があります。
健康な髪の毛は、一般的に次のような成長サイクルを繰り返しています。
通常のヘアサイクル(毛周期)
時期 | 内容 | 期間 |
---|---|---|
成長期 | 髪が伸び続ける時期 | 約2〜6年間 |
退行期 | 成長が止まり、毛根が小さくなる時期 | 約2〜3週間 |
休止期 | 古い毛が抜け落ち、新しい髪に生え変わる準備期間 | 約3〜4カ月 |
通常2〜6年ある成長期が数カ月〜1年程度に短くなり、休止期の毛の割合が通常よりも増加します。
抜け落ちやすい休止期の毛髪の割合が増えることで、抜け毛の量が増加するということです。
健康な頭髪でも一定量の抜け毛が見られることがありますが、普段よりも明らかに抜け毛が増えている場合は、何らかのサインかもしれません。
ただし、季節の変わり目やストレスなど、さまざまな要因で一時的に抜け毛が増えることもあります。
以前と比べて髪の毛のコシや太さが変わったと感じる場合、AGAの初期症状の一つかもしれません。
AGAでは男性ホルモン(DHT)の影響により、毛髪を作る組織(毛包)が徐々に小さくなる「ミニチュア化」という現象が起こることがあります。
その結果、髪の毛は次第に細く、短くなっていくのが特徴です。
いわゆるミニチュア化が起こり,毛髪が細く短くなり,外観上,薄毛と認識され るようになる.
引用元:坪井良治.「男性型脱毛症治療の現状と今後の展望」.日本薬理学雑誌,133(2),78–81(2009).
加齢によっても髪は自然に細くなる傾向がありますが、短期間での変化や前頭部・頭頂部など特定部位での変化を感じる場合は、AGAのサインかもしれません。
以前の写真と比べて前髪の生え際が後退してきたと感じる場合、複数の要因が考えられますが、その一つとしてAGAの可能性もあります。
おでこの生え際が徐々に後退する変化は、AGAでよく見られる初期症状の一つです。
前頭部や頭頂部は、AGAにおいて薄毛が進行しやすい部位とされています。
前頭部や頭頂部などの男性ホルモン感受性毛包においては逆に軟毛化現象を引き起こす
引用元:眞鍋求,他.「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」.日本皮膚科学会雑誌,127(13),2763–2777(2017).
前頭部にAGAの影響が見られる場合、左右の生え際から徐々に後退し、M字型に近づいていく症状が一般的です。
ただし、生まれつきの額の形にも個人差があり、すべての変化がAGAによるものとは限りません。
前頭部の後退が気になる場合は、過去の写真と比較してみるとよいでしょう。
頭頂部(つむじ周辺)の薄毛化も、AGAで見られることがある変化の一例です。
特に日本人の場合、世界基準のパターン分類(ハミルトン・ノーウッド分類)だけでは評価しきれない頭頂部の薄毛化が多く見られます。
そのため、日本では頭頂部の薄毛を加えたパターン分類が一般的に使用されています。
現在わが国では Norwood の分類に高島分類の頭頂部が薄くなる II vertex を加えた分類が広く使用されている
引用元:眞鍋求,他.「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」.日本皮膚科学会雑誌,127(13),2763–2777(2017).
頭頂部は自分では確認しづらい部位ですが、鏡を使って定期的に確認したり、スマートフォンなどで頭頂部を撮影して記録したりすることで、変化を客観的に観察できます。
食事からの栄養摂取は、体だけでなく髪の健康にも密接に関わっています。
偏った食事や不規則な食生活が続くと、髪に必要な栄養素が不足する可能性があります。
髪の毛の主要成分はタンパク質であり、新陳代謝には各種ビタミン、ミネラルが関係しています。
また、以下の研究によれば、高脂肪食の過剰摂取と、髪の成長サイクルとの関連性が報告されています。
高脂肪食の過剰摂取や遺伝性の肥満がマウスの脱毛症の発症を促進することを示しました。
引用元:「高脂肪食などによる肥満が薄毛・脱毛を促進するメカニズムの解明」―幹細胞における炎症・再生シグナルの異常が毛包の萎縮を引き起こす|東京大学医科学研究所
外食やコンビニ食品は極力控え、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど複数の栄養素を含むバランスの良い食事を心がけることが大切です。
過度なストレスは、体のさまざまな部分の不調を引き起こす要因となり得ますが、間接的に髪の健康に影響を与える可能性があります。
日頃からストレスを感じることが多いかどうか、日常生活を振り返ってみてください。
ストレスが与える影響の一つに、自律神経の乱れがあります。
交感神経が優位の状態が続くと血管が収縮し、頭皮への栄養供給に悪影響を与える可能性があります。
交感神経はいわゆる「活動モード」で、心拍数や血圧をあげて筋肉への血液の供給量を増やし、唾液の分泌は減り、血管は収縮します。
引用元:ストレスとは | 専門家コラム | 働く女性の心とからだの応援サイト
運動や趣味など自分に合ったストレス解消法を見つけ、適切にストレスと向き合うことが、髪の健康維持にも役立つかもしれません。
質の良い睡眠は体全体の健康維持に重要とされており、髪にも良い影響を与える場合があります。
特に、深い睡眠中に分泌される成長ホルモンは、髪の生成と修復に関与していると言われています。
また、睡眠の質や量が不足すると、自律神経やホルモンバランスが乱れ、血行不良の一因にもなりかねません。
休日に寝だめするという習慣は、平日での睡眠不足の現れです。
平日よりも2時間以上長い睡眠習慣は体内時計を乱し、体全体の健康状態にも悪い影響を与える可能性があります。
健康な髪を育むためには、毎日同じ時間に就寝・起床する習慣を心がけ、十分な睡眠時間を確保することが大切です。
自身の睡眠習慣を振り返り、改善できる点について検討してみてください。
喫煙は髪の健康に影響を与える可能性のある生活習慣の一つです。
タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、頭皮への影響が懸念される場合があります。
血管の収縮による血流量の低下、酸素や栄養の供給低下を招きます。
引用元:喫煙と循環器疾患 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
血行が悪くなると頭皮に十分な酸素や栄養が届きにくくなり、結果的に髪の成長に影響を与える恐れがあるため注意が必要です。
禁煙は健康全般に良い影響を与えると考えられており、頭皮環境にも良い変化をもたらす場合があります。
健康のためにも、禁煙を検討してみてはいかがでしょうか。
髪の健康状態は日々少しずつ変化するため、小さな変化に気づくためには定期的な観察が大切です。
ここでは、自宅で簡単に行える3つの観察方法をご紹介します。
これらの方法を日常生活に取り入れることで、髪の状態変化を客観的に把握しやすくなります。
セルフチェック項目で気になる点があった方は、3つの方法を組み合わせて定期的に観察してみましょう。
記録を残しておくことで、医療機関へ相談する際に役立つ場合もあります。
手鏡や拡大鏡を使って、自分の髪の密度や髪質を定期的に観察してみましょう。
AGAの特徴として、細い毛や短い毛が増えるなど、髪質や密度に変化が生じる場合があります。
頭頂部など見えにくい部分は、手鏡と壁掛け鏡を組み合わせたり、自撮り機能を活用したりすると確認しやすくなります。
髪の太さや密度だけでなく、頭皮にフケや炎症がないかもチェックしておくとよいでしょう。
スマートフォンのカメラ機能を活用して、定期的に髪の状態を記録しておくことも効果的な方法です。
毎日鏡で見ていると小さな変化に気づきにくいものですが、写真で比較すると変化がはっきりと分かることがあります。
デジタル記録なら長期間の変化も簡単に比較できるため、微妙な変化も見逃しにくくなります。
髪の状態を把握するために、記録を残すことも参考になるかもしれません。
抜け毛の量や質も、髪の健康状態を知る手がかりの一つです。
通常、健康な頭髪の方でも1日に50〜100本程度の抜け毛があると言われていますが、それを明らかに超える場合は注意が必要かもしれません。
AGAの場合、髪が十分に成長せず、細く短い毛が抜け落ちる可能性もあるため、抜け毛の太さや長さも確認しておくとよいでしょう。
抜け毛は季節によっても変動するため、1〜2週間の短期間ではなく、月単位の変化を見ることが大切です。
継続的な増加傾向が見られる場合は、専門医に相談することをおすすめします。
AGAに関するさまざまなセルフチェック方法を紹介してきましたが、自己観察だけでは分からない情報もあります。
セルフチェックは日常的な変化に気づくきっかけとして有効ですが、正確な診断や適切な対処法を判断するには専門知識が必要です。
以下では、セルフチェックの限界と医療機関での診察の重要性について解説します。
それぞれの役割を理解し、状況に応じた対応を心がけましょう。
セルフチェックでは、髪の密度や抜け毛の量など表面的な変化は把握できますが、原因や進行度、最適な対処法までは判断できません。
特に脱毛症の種類を見分けるためには、専門的な知識や診断が必要です。
例えば、以下の点はセルフチェックでは分かりにくいポイントです。
また、自分では気づきにくい頭頂部の変化や、進行が緩やかで日々の観察では判断しづらい変化もあります。
自己判断だけで対策を講じると、時間やコストをかけても効果が得られないケースもあるでしょう。
AGAの場合、生活改善やヘアケアだけでは十分な効果が得られない場合もあるため、適切な診断と対応が求められます。
セルフチェックや日々の観察で気になる症状がある場合は、医療機関へ相談することも選択肢の一つです。
特に、以下のような通常とは異なる変化を感じた場合は注意が必要です。
髪の変化には個人差があり、さまざまな要因によって状態が変化することがあります。
AGAは全身疾患ではありませんが、見た目の印象が気になり、深い悩みになるようであれば医療機関での治療を検討してもよいかもしれません。
専門家に相談することで、頭皮の状況をより詳しく把握できる場合があります。
医療機関での診察は、脱毛の原因を探るために以下のような手順で進むことが一般的です。
AGAの一般的な診察内容
項目 | 主な内容 |
---|---|
問診 | ・発症時期や進行などの経過 ・家族に薄毛の方がいるかの確認 |
視診 | ・脱毛のパターンの確認 ・毛髪密度、毛髪の太さ、長さなどの確認 |
必要に応じた検査 | ・マイクロスコープによる頭皮の拡大観察 |
参考:酒本 裕明.他,「3i研究会報告 次世代ニーズを予測するための解析手法の研究 ~シャンプー開発を例として~」.情報の科学と技術,67(4),194–201(2017).
症状や状況によっては、血液検査などで全身の健康状態を確認する場合もあります。
このような診察をもとに医師が総合的に判断し、患者さんの状態に合わせた治療法を提案します。
診察時には疑問点を積極的に質問し、治療の目的や費用、副作用などについて十分な説明を受けることが大切です。
AGAの主な要因は遺伝的背景と男性ホルモンの影響とされており、セルフチェック項目1の「家族に薄毛の人はいる?」に関連しています。
AGAの発症メカニズムとして、一般的に次のような過程が考えられています。
そのため、AGAの発症が気になる場合は、セルフチェック項目「2. 最近、抜け毛が気になる?」「3. 髪が細くなった気がする?」をまずは確認するとよいでしょう。
頭皮の中でも、前頭部や頭頂部は男性ホルモン(DHT)の影響を特に受けやすく、AGAの初期症状としてM字型の後退やO型の薄毛化が知られています。
進行状況の確認については、セルフチェック項目「4. おでこが広くなった気がする?」「5. 頭頂部の薄毛が気になる?」が関係しています。
AGAには遺伝のほか、生活習慣や環境要因なども関係していると考えられており、同じ遺伝的背景を持つ方でも発症には個人差があります。
セルフチェック項目の「6. 食生活」「7. ストレス」「8. 睡眠」「9. 喫煙」なども、AGAの可能性を考えるうえで重要な要素です。
AGAの原因を詳しく知るならこちらの記事をチェック
AGAの原因を知る!発症しやすい人の傾向とストレス・生活習慣の関係性
薄毛の原因はAGA(男性型脱毛症)だけではありません。
脱毛症にはさまざまな種類があり、それぞれに異なる特徴や原因があるとされています。
脱毛症の特徴
特徴 | AGA(男性型脱毛症) | 円形脱毛症 | 粃糠性/脂漏性脱毛症 | びまん性脱毛症 |
---|---|---|---|---|
主な原因 | 遺伝・男性ホルモン(DHT)の影響 | 自己免疫疾患 | 頭皮疾患(フケ・皮脂過剰) | ホルモンバランス・栄養不良など |
主な症状 | 前頭部や頭頂部の薄毛 | 円形または楕円形の脱毛斑 | フケ・かゆみ・赤みを伴う | 髪全体が薄くなる |
発症しやすい人 | 思春期以降の男性に多い | 性別・年齢問わず | 性別・年齢問わず | 女性に多い |
進行パターン | 徐々に進行することが多い | 突然発生することが多い | 頭皮の疾患部分から脱毛 | 慢性と急性がある |
※上記は一般的な傾向であり、症状や進行速度、発症傾向には個人差があります。
自分の症状がどの脱毛症に当てはまるのかを正確に判断するのは難しいですが、基本的な知識を持っておくことで、早期発見や適切な対応につながるでしょう。
ただし、最終的な診断については専門医による診察が必要です。
円形脱毛症はその名の通り、円形または類円形の脱毛斑が特徴的な後天性の脱毛症です。
日本皮膚科学会のガイドラインによれば、円形脱毛症は自己免疫性疾患と考えられています。
これまでの研究結果から,頭部で多くを占める成長期(毛を作り出す時期) にある毛包を主たる標的とする自己免疫性疾患であることが明らかとなっている.
引用元:大山学,他.「円形脱毛症診療ガイドライン 2024」.日本皮膚科学会雑誌,134(10),2491–2526(2024).
具体的には、リンパ球が毛根を異物と誤認して攻撃することで発症するとされており、健康な髪の毛でも免疫反応によって突然抜け落ちてしまうのが特徴です。
発症の誘因としては、疲労やウイルス感染症、ワクチン接種、出産、精神的・身体的ストレスなどが挙げられていますが、明らかな誘因がない場合も少なくありません。
また、遺伝的要素も関連している可能性が指摘されています。
粃糠性脱毛症や脂漏性脱毛症は、頭皮環境の乱れから生じる脱毛症です。
粃糠性脱毛症と脂漏性脱毛症の主な違い
項目 | 粃糠(ひこう)性脱毛症 | 脂漏(しろう)性脱毛症 |
---|---|---|
主な症状 | 乾燥した細かいフケ、かゆみ | ベタつきのあるフケ、かゆみ、炎症 |
主な原因 | 頭皮のターンオーバーの乱れ、皮脂分泌異常 | 脂漏性皮膚炎、皮脂の過剰分泌、マラセチア菌の増殖 |
関連する要因 | 刺激の強い製品、栄養不足、ホルモンバランスの乱れ | 不十分な洗髪、ストレス、生活習慣 |
粃糠性脱毛症は、皮脂の分泌異常によって角質がはがれてフケが生じ、毛穴をふさぐことにより引き起こされると考えられています。
頭皮の常在微生物の増殖や外的刺激、栄養状態やホルモンバランスの乱れなどの内的要因によって頭皮のターンオーバーが乱れ、過剰なフケが発生します。
一方、脂漏性脱毛症は、脂漏性皮膚炎によって引き起こされる脱毛症です。
脂漏性皮膚炎は皮脂の過剰分泌が主な原因と考えられているものの、頭皮の常在菌やビタミン代謝異常、栄養障害など複数の関連要因の可能性が報告されています。
資生堂の調査によれば、男性は女性より皮脂量が多い傾向があるとされており、日々の洗髪を怠ると発症リスクを高める可能性があります。
薄毛や抜け毛に加え、フケや炎症が気になる場合は、頭皮環境に何らかの変化が起きているかもしれません。
びまん性脱毛症は、特定の部位ではなく頭髪全体が徐々に薄くなるタイプの脱毛症です。
女性に多く見られる症状で、AGAのように前頭部や頭頂部だけが薄くなるのではなく、全体的に髪の密度が低下していくのが特徴です。
AGAとびまん性脱毛症の主な違い
項目 | びまん性脱毛症 | AGA(男性型脱毛症) |
---|---|---|
脱毛パターン | 全体が均等に薄くなる傾向がある | 前頭部や頭頂部など特定部位から薄くなる |
進行速度 | 急性と慢性がある | 緩やかに進行する傾向がある |
発症傾向 | 女性に多い | 男性に多い |
主な原因 | 加齢、ホルモンバランスの乱れ、 全身性疾患、栄養障害など | 遺伝、男性ホルモン(DHT)の影響 |
参考:植木理恵.「髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜」.順天堂醫事雑誌,59(4),327–330(2013).
びまん性脱毛症は更年期前後の女性に多く見られ、加齢に伴うホルモンバランスの乱れによる「慢性休止期脱毛」であるケースが多いとされています。
その他の原因として、甲状腺異常や膠原病といった全身疾患、精神的ストレス、高熱、外科手術、栄養不良、出産などをきっかけに発症することがあります。
髪には自然な生え変わりのサイクルがあり、一定量の抜け毛は日常的に見られるものです。
抜け毛の量には個人差がありますが、自然な成長サイクルの過程では1日50〜100本程度の抜け毛が生じると言われています。
頭髪は約10万本あり,休止期の毛は頭髪の7〜13%を占め,1日の脱毛数は平均して100 本以内であれば正常範囲と考えられている.
引用元:植木理恵.「髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜」.順天堂醫事雑誌,59(4),327–330(2013).
通常、髪が伸びる「成長期」の割合は頭髪全体の約85〜90%を占め、日常的な脱毛があっても地肌が目立つことは少ないとされています。
以下のような変化が見られる場合は、自然な脱毛ではない可能性も考えられます。
ただし、季節の変わり目は抜け毛が増加しやすいことで知られており、特に秋頃に多くなるという研究も報告されています。
10月 ~11 月では一日約140本前後と,一過性に急激に多く抜けている
引用元:服部道廣.「養毛・育毛剤の評価法 -人における新評価法-」.順天堂医学,37(4),595–600(1992).
そのため、抜け毛の量を観察する際は、季節による変動も考慮するとよいでしょう。
ここでは、セルフチェックで確認できる内容や注意点など、AGAセルフチェックについて多くの方が抱える疑問を解説します。
これからセルフチェックを始める方や、髪の変化が気になる方は、参考にしてみてください。
セルフチェックでは、髪の量や密度の変化、頭皮の状態、抜け毛の状況など、見た目で感じる変化を把握できます。
継続的なチェックにより、小さな変化にも気づきやすくなるでしょう。
ただし、セルフチェックは医学的診断ではないため、脱毛の種類や原因、適切な治療法までは判断できません。
気になる症状がある場合は、医療機関での相談を検討してみることも選択肢の一つです。
おでこの広さは生まれつきの特徴である場合も多く、必ずしもAGAの兆候とは限りません。
重要なのは「以前と比べて生え際が後退したかどうか」という時間の経過に伴う変化です。
したがって、生え際が徐々に後退している場合はAGAの可能性がありますが、もともとおでこが広い場合も考えられます。
過去の写真と比較して変化が気になる場合は、専門医に相談して正確な判断を受けましょう。
健康な頭髪では、1日に50〜100本程度の抜け毛が見られることがあります。
日常的な抜け毛は、毛髪が自然に生え変わるサイクルの一部です。
シャンプー時やブラッシング時に多く抜けるように感じるのも、蓄積された抜け落ちる寸前の髪が一度に出てくるためです。
また、季節の変わり目には抜け毛が増加する傾向にあります。
一時的な増加であれば心配はいりませんが、急激な増加や、長期間にわたり明らかに100本を超える抜け毛が続く場合は注意が必要です。
髪の変化はさまざまな年齢で起こりうるものです。
例えば、AGAは男性ホルモンの分泌が活発化する思春期以降から発症する可能性があります。
大切なのは、自分の髪の状態に気を配り、変化に気づくことです。
年齢に関わらず、定期的なセルフチェックを通じて髪の状態を把握し、必要に応じて適切な対応方法を検討してください。
AGAには遺伝的要因が関係するとされており、家族に薄毛の方がいることはAGAの可能性を考える目安の一つです。
ただし、AGAの発症には遺伝だけでなく、食生活、ストレス、睡眠、喫煙など生活習慣も複合的に影響する場合があります。
家族に薄毛の方がいる場合は、より早い段階からセルフチェックを習慣にし、必要に応じて専門的なアドバイスを受けることを検討してみてください。
この記事では、AGAセルフチェックの方法や他の脱毛症との違い、専門医への相談タイミングなどについて解説しました。
セルフチェックは髪の変化に早く気づくための大切な習慣ですが、正確な診断や適切な治療は専門医に任せることが重要です。
AGAセルフチェックに関する重要ポイントを、以下にまとめます。
髪の健康は日々の生活習慣やケアによっても影響を受けます。
小さな変化に早く気づくことで、自分に合った対応を検討する時間的余裕が生まれます。
ただし、セルフチェックで気になる点があっても、必ずしもAGAであるとは限りません。
髪の変化が気になる場合は信頼できる情報源から知識を得て、必要に応じて適切な対応を検討してください。
セルフチェックを通じて自分の髪と向き合いながら、健やかな髪を維持するための習慣を心がけましょう。
眞鍋求,他.「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」.日本皮膚科学会雑誌,127(13),2763–2777(2017).
今川賢一郎.「美容医療の基礎知識第8回『AGA治療、植毛』」.国民生活,2024年6月号(142).
乾重樹.「毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA)」.香粧会誌,42(2),93–97(2018).
植木理恵.「髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜」.順天堂醫事雑誌,59(4),327–330(2013).
坪井良治.「男性型脱毛症治療の現状と今後の展望」.日本薬理学雑誌,133(2),78–81(2009).
田中純江.「めざせ、美髪美人!」.医療生協さいたま広報(2016年7月号),1–2(2016).
永山升三,西尾宏.「ヘアケアの科学」.繊維製品消費科学会誌,28(6),219–226(1987).
望月隆,他.「日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019」.日本皮膚科学会雑誌,129(13),2639–2673(2019).