AGA(男性型脱毛症)は多くの男性が直面する脱毛症の一つであり、進行を抑えるためには医師の診断に基づいた適切な対応が求められます。

AGA治療は基本的に公的保険制度の適用外となり、治療費が全額自己負担です。

しかし、「なぜ保険が適用されないのか」「皮膚科なら保険が使えるのか」といった疑問を抱く方も多いでしょう。

本記事では、AGA治療が保険適用にならない理由や、例外的なケースについて詳しく解説します。

また、治療費の目安と費用負担を軽減するための具体的な工夫も5つご紹介します。

自身に合った治療法を見つけるための参考として、ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること
  • AGA治療が保険適用外となる理由
  • 保険が適用される例外的なケース
  • AGA治療の費用の目安
  • 費用負担を軽減するための具体的な方法

日本では、病気やケガによる医療費負担を軽減するために、公的医療保険制度が設けられています。

患者の自己負担は原則3割(年齢や収入により異なる)で、治療を受けられる仕組みです。

しかし、美容目的など医学的必要性の低い治療については、公的医療保険制度ではカバーされない「自由診療」として扱われます。

AGA(男性型脱毛症)は健康に直結する病気ではなく、主に見た目の改善を目的とする治療とみなされます。

そのため、AGA治療は保険適用外の自由診療に分類され、治療費は全額が自己負担となります。

また、AGA治療は個々の症状や治療法によって内容が異なるため、費用面で無理なく続けられるかどうかを慎重に検討し、自分に合った治療計画を立てることが大切です。

自由診療として行われるAGA治療の種類 

AGA治療には治療法が複数ありますが、いずれも自由診療に分類され、費用は全額自己負担となります。

主なAGA治療法の種類

治療法特徴主な副作用のリスク
内服薬進行抑制作用のある治療薬を服用する方法性機能関連の症状など
外用薬発毛促進作用のある治療薬を頭皮に塗布する方法皮膚トラブルなど
注入治療成分を頭皮に直接注入する方法施術後の腫れや赤み
自毛植毛外科的手術で自分の毛髪を移植する方法施術後の腫れや赤み

※一部、公的に承認されていない治療法を用いるケースがあります。その場合、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
※参考:5α-還元酵素Ⅱ型阻害薬 ◎男性型脱毛症用薬◎ フィナステリド錠 / ミノキシジルのリスク区分について

クリニックごとに料金設定や治療内容が異なるため、複数のクリニックを比較し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。

なお、注入治療については、皮膚科学会のガイドラインにおいて「行わないほうがよい(C2)」と評価されています。

現時点では広く一般に実施できるとは言い難いため,行わない方がよいことにする

引用元:日本皮膚科学会ガイドライン「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」

治療を検討する際は、医師と十分に相談のうえ、慎重な判断が必要です。

AGA治療の費用は医療費控除も対象外 

1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、確定申告することで所得税の一部が還付される「医療費控除」という制度があります。

しかし、AGA治療など美容目的の治療は、医療費控除の金額にも算入できません

国税庁のウェブサイトにも、「容姿を美化するための費用」は控除対象外と明記されています。

そのため、AGA治療を検討する際には、保険適用外であることに加え、税制上の優遇が受けられない点も考慮する必要があります。

AGA以外の薄毛治療では保険適用されるケースがある

日本皮膚科学会のガイドラインによると、日本人男性の約3人に1人はAGAを発症しているとされており、薄毛や抜け毛の多くはAGAによるものです。

しかし、他の要因により、抜け毛や薄毛が引き起こされている可能性も無視できません。

美容目的とみなされるため保険適用外ですが、AGAの原因が病気や皮膚疾患である場合、その治療には保険が適用される可能性があります

ただし、薄毛そのものは健康に直接影響を与える病気ではないため、育毛や発毛促進を目的とする治療は保険適用外となる点に注意が必要です。

以下では、保険が適用される具体的なケースや留意点について解説します。

円形脱毛症の場合 

円形脱毛症は自己免疫疾患として位置づけられており、一部の治療法には保険が適用されます。

円形脱毛症は頭部などに円形または楕円形の脱毛斑が突然現れるもので、一般的に「10円ハゲ」と呼ばれることもあります。

主な原因として、免疫機能が毛根を異物と誤認し攻撃する「自己免疫疾患」が挙げられます。

また、ストレスや遺伝的要因も関係していると考えられています。

他の自己免疫疾患やアレルギー疾患を併発する可能性もあるため、早期の診断と治療が推奨されます。

ただし、局所免疫療法など一部の治療法は保険適用外となる場合があるため、治療方針については医師との相談が欠かせません。

頭皮トラブルや皮膚疾患が原因の場合 

脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎などの頭皮トラブルが薄毛や抜け毛の原因となっている場合、その疾患への治療には保険が適用されます。

主な頭皮トラブルや皮膚疾患
  • 脂漏性皮膚炎:頭皮などの皮脂分泌が盛んな部位に発生する湿疹。赤みや黄色味を帯びた脂っぽいフケ、かゆみを伴うことがあります。
  • 接触性皮膚炎:アレルゲンや刺激物と接触した部位に発生する皮膚炎。赤みやかゆみ、水疱などの症状を引き起こします。

これらの頭皮トラブルが頭皮環境を悪化させることで、抜け毛や薄毛につながる可能性があります。

そのため、まずは医師による診断を受けたうえで、適切な治療を進めていくことが求められます。

薄毛そのものの改善は保険適用外となる

円形脱毛症や頭皮トラブルなど病気が原因で抜け毛や薄毛が生じている場合、一部の治療に対して保険が適用されます。

しかし、育毛や発毛促進といった薄毛そのものの改善については、美容目的と判断されるため保険適用外です

AGAだと思ってクリニックで診察を受けた際に頭皮トラブルや疾患が見つかった場合は、まず原因となる疾患を治すことを優先しましょう。

このように、薄毛治療における保険適用の可否は原因や治療内容によって異なります。

医師による診断を受け、自分の症状に合った最善の治療方法を選択することが大切です。

AGAや薄毛治療における保険診療と自由診療の違い

AGA治療は基本的に自由診療に分類され、保険が適用されない場合がほとんどです。

これは、どの医療機関においても共通であり、一部の医療機関では保険診療でAGA治療を提供するということはありません

また、保険診療と自由診療を同時に行う「混合診療」は原則禁止されているため、頭皮トラブルと薄毛治療の両方を検討している場合は注意が必要です。

以下では、AGA・薄毛治療における保険診療と自由診療の違いについて、具体的なケースを紹介しながら解説します。

一般の皮膚科でもAGA治療に保険は適用されない 

AGA治療は、専門クリニックだけでなく一般の皮膚科でも受けられる場合があります。

しかし、一般の皮膚科であってもAGA治療は美容目的とみなされるため、保険適用外で全額自己負担となります。

例えば、AGA治療で使用されるフィナステリドやミノキシジルなどの薬剤は、自由診療の対象です。

一般の皮膚科で保険診療が適用されるのは、脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎など、脱毛の原因となっている疾患そのものに対する治療に限られます。

そのため、AGA治療を一般の皮膚科で受ける際は、保険が適用されないことを十分に理解したうえで検討する必要があります。

保険診療と自由診療の併用は原則禁止 

日本では、保険診療と自由診療を同時に行う「混合診療」は原則として禁止されています。

例えば、頭皮の炎症(保険適用)と薄毛治療(自由診療)を同時に受けた場合、その全体が自由診療として扱われ、全額自己負担となる可能性があります。

このルールは、患者負担の不当な拡大や、安全性・有効性が確認されていない医療行為の助長を防ぐために設けられています。

厚生労働省も以下のように明記しています。

保険診療と保険外診療の併用は原則として禁止しており、全体について、自由診療として整理される。

引用元:保険診療と保険外診療の併用について|厚生労働省

頭皮トラブル等の治療と薄毛治療の両方を検討している場合は、同時に行えない点に注意が必要です。

頭皮トラブルはまず一般の皮膚科で診察を

頭皮のかゆみや赤み、フケなどの症状がある場合は、まず一般の皮膚科を受診することをおすすめします。

一般の皮膚科では、頭皮トラブルの原因となる疾患に対する治療には、保険適用される可能性があります。

そのため、まずは頭皮環境や脱毛原因を確認し、その後必要に応じてAGA専門クリニックでの治療を検討すると良いでしょう。

一般の皮膚科とAGA専門クリニックの違い

医療機関AGA治療の特徴
一般の皮膚科基本的なAGA治療薬(内服薬・外用薬)の処方が中心
AGA専門クリニック自毛植毛や注入治療など、多様な治療法を提供している場合もある

ただし、AGA専門クリニックでは公的に承認されていない治療法を用いるケースもあります。

未承認の治療により副作用が発生した場合は、国の「医薬品副作用被害救済制度」の対象外となるため、十分な注意が必要です。

以上を踏まえ、自分に適したクリニック選びと治療方針を慎重に検討することが重要です。

AGA治療の費用目安と安く抑える5つの方法 

薄毛や抜け毛の原因がAGAである場合、基本的に保険適用外の自由診療に該当します。

そのため、治療費は全額自己負担となることを踏まえて、無理なく継続できる方法を検討することが大切です。

以下は一般的な費用の目安です。

AGA治療の費用目安   

治療内容費用目安
内服薬月額2,000〜12,000円
外用薬月額4,000〜13,000円
注入治療1回2万〜20万円
自毛植毛1回70万円以上※1,000株以上で算出

※金額はすべて税込表記。保険適用外の自由診療です。
※公的に承認されていない治療法を用いるケースもあります。その場合、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。

費用目安の参考クリニック一覧

2025年3月時点の各クリニックHPに記載の金額を参照しています。

内服薬・外用薬

  • DMMオンラインクリニック
  • クリニックフォア
  • デジタルクリニック
  • Oops HAIR
  • AGAヘアクリニック
  • 湘南美容クリニック
  • AGAスキンクリニック
  • ゴリラクリニック
  • Dクリニック

注入治療

  • 湘南美容クリニック
  • AGAスキンクリニック
  • ゴリラクリニック
  • Dクリニック
  • B&Hメディカルクリニック
  • スマイルAGAクリニック

自毛植毛

  • モア&モアクリニック
  • アイランドタワークリニック
  • アスク井上クリニック
  • 親和クリニック
  • 湘南美容クリニック
  • AGAスキンクリニック
  • 紀尾井町クリニック
  • ヘアー&スキンクリニック

上記の費用はあくまで参考値であり、実際の金額はクリニックや治療内容によって変動するため、詳細は医師やクリニックへご確認ください。

AGA治療の費用は、治療開始の時期や選び方を工夫することで、負担を軽減できる可能性があります。

以下では、AGA治療の費用を安く抑える5つの方法をご紹介します。

早期に治療を開始する

AGAは進行性の脱毛症であるため、早期に治療を始めることで症状の進行を抑えられる可能性があります。

症状が進行すると治療が複雑化し、結果的に費用が増加する場合もあるため、早めの対応が推奨されます。

ただし、進行速度や効果には個人差があるため、医師と相談しながら適切なタイミングで開始しましょう。

オンライン診療を活用する

オンライン診療では通院時間や交通費を削減できるため、経済面でも効率的です。

AGA治療中は医師による定期的な診察や経過観察が必要となるため、自宅や職場近くにクリニックがない方には特におすすめです。

ただし、診断結果や治療内容によっては対面診療が必要になる場合もあるため、自分に合った診療方法を選びましょう。

ジェネリック医薬品を選ぶ

ジェネリック医薬品は先発薬と同じ有効成分を含みながら価格が抑えられているため、コスト削減につながる場合があります。

例えば、フィナステリドやミノキシジルのジェネリック薬は月額2,000〜6,000円程度で利用可能です。

ただし、ジェネリック医薬品の使用は他の治療薬と同様に医師による診断と処方が必要です。

自己判断ではなく、専門家と相談しながら選択してください。

まとめ買いや定期購入プランを活用する

一部のクリニックでは複数か月分の薬をまとめて購入したり、定期購入プランを利用したりすることで割引価格が適用される場合があります。

ただし、副作用や経過に変化があった際に対応できるよう注意が必要です

例えば、定期購入プランでは「3回目以降から解約可能」などの条件が設けられている場合があります。

まとめ買いや定期プランを活用する際は、事前に契約内容や条件を十分確認しましょう。

複数クリニックで比較検討する

AGA治療の費用はクリニックごとに異なるため、複数のクリニックで料金体系やプラン内容を比較することが重要です。

費用を確認する際は、初診料・再診料や検査費用なども含めた料金を確認し、相場からかけ離れていないクリニックを選びましょう。

また、費用面だけでなく医師の対応やサポート体制なども含めて総合的に判断し、自分に合ったクリニックを選ぶことが大切です。

AGA治療の保険適用に関するよくある質問 

AGA治療に関しては、保険適用の有無や費用、治療を中止した場合の影響など、多くの方が疑問を抱えるポイントがあります。

ここでは、AGA治療の保険適用に関するよくある質問について、わかりやすく回答します。

AGA治療は健康保険でカバーされますか? 

基本的にAGA治療は美容目的とみなされるため、健康保険の適用外となり、治療費は全額自己負担です。

ただし、頭皮トラブルや病気が原因で脱毛症が生じている場合、その疾患への治療には保険が適用される可能性があります。

まずは医師に相談し、自分の症状の原因を確認することが重要です。

AGA治療の費用はどれくらいですか?

AGA治療の費用は治療内容によって異なりますが、内服薬や外用薬は月額4,000〜13,000円程度が目安です。

これらの治療はすべて自由診療に分類され、費用は全額自己負担となります。

詳細な金額についてはクリニックで直接ご確認ください。

AGA治療をやめるとどうなりますか?

AGA治療を中止すると、進行が再開する可能性があります。

AGAは進行性の脱毛症であり、治療によって抑制されていた症状が再び進行することが一般的です。

ただし、進行具合や速度には個人差があるため、治療を中止するかどうかは医師と相談しながら判断することをおすすめします。

薄毛治療は皮膚科で保険適用になりますか?

一般の皮膚科では、脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎などの疾患が原因で薄毛や抜け毛が生じている場合、その疾患への治療には保険が適用される場合があります。

ただし、薄毛そのものを改善するための治療については美容目的とみなされるため、保険適用外です。

頭皮トラブルが気になる場合は、まずは一般の皮膚科で診察を受け、必要に応じて専門クリニックでの治療を検討してください。

女性の薄毛治療も保険適用外ですか?

FAGA(女性型脱毛症)の場合も美容目的とみなされるため、保険適用外の自由診療となります。

ただし、抜け毛の原因が自己免疫疾患やストレスなど病気によるものであれば、その疾患への治療には保険が適用される可能性があります。

女性特有の薄毛についてもまず医師に相談し、原因を特定したうえで適切な治療法を選択することが大切です。

AGA治療の保険適用を理解し、自分に合った方法で治療を始めよう

本記事では、AGA治療の保険適用について、適用外となる理由から例外ケース、費用負担の軽減策まで詳しく解説しました。

AGA治療は基本的に保険適用外の自由診療に分類されるため、治療費は全額自己負担となります。

例外的なケースとして、頭皮トラブルや他の疾患が原因の場合、その疾患への治療には保険が適用される可能性があります。

まずは医師に相談し、自分の症状の原因を正確に把握することが重要です。

また、AGA治療は長期的な取り組みが必要な場合が多いため、費用相場や治療方法を事前に確認し、自分に合った計画を立てることが大切です。

費用負担を軽減するための工夫として、以下の方法も検討してみてください。

クリニックを選ぶ際は、診察の丁寧さやサポート体制なども判断基準の一つとなります。

AGA治療は個人差が大きいため、不明点や不安があれば専門医に相談し、自分に合った計画を立てて取り組むことが大切です。

保険適用の有無や治療内容を正しく理解し、自分に最適な方法でAGA治療を始めましょう。