熊本市東区の内科・循環器内科・糖尿病脂質代謝内科・禁煙治療・在宅診療のグレースメディカルクリニック
検索
薄毛に悩む男性にとって、「AGA(男性型脱毛症)」という言葉はすでに身近な存在かもしれません。
AGAの主な発症原因は、男性ホルモンや遺伝が大きく関係しています。
ただし、それだけでなく、生活習慣やストレス、頭皮環境の悪化など、日常に潜む要因も看過できないと考えられています。
自分に合ったケアを早めに始めることは、髪の健康を保つための生活習慣を整える第一歩です。
この記事では、AGAの原因として注目される男性ホルモンや遺伝の仕組みについて詳しく解説し、日常で気をつけたいポイントや手軽に始められる対策法もあわせてご紹介します。
原因カテゴリ | 主な作用メカニズム | こんなサインに要注意 | 今すぐできる対策 |
---|---|---|---|
男性ホルモン DHT | 5 α‑リダクターゼがテストステロンを DHT に変換 → 毛包ミニチュア化を促進 | 生え際が M 字に後退/頭頂部のボリューム低下 | 医師と相談し DHT 抑制薬(フィナステリド等)を検討 |
遺伝的要因 | ホルモン受容体の感受性が高く、DHT の影響を受けやすい体質 | 父母・祖父母に薄毛が多い/若年で同じパターンの薄毛 | 家族歴がある人は早期に頭皮チェック&専門医相談 |
生活習慣・ストレス (食生活・睡眠不足・運動不足・過度な飲酒 など) | 交感神経優位・血行不良・栄養不足 → 毛母細胞の働き低下 | 抜け毛増/頭皮が硬い・冷たい/慢性疲労 | 栄養バランスを整える・睡眠7h確保・週2~3回の有酸素運動 |
外的ダメージ (カラーリング・パーマ・紫外線・誤った洗髪) | キューティクル損傷・炎症で頭皮環境悪化 → 抜け毛が一時的に増加 | 施術後に頭皮がヒリヒリ/フケ・かゆみ増 | 低刺激カラーを選ぶ・紫外線対策・正しいシャンプー方法 |
AGAは徐々に進行する脱毛症であるため、早期の取り組みが重要です。
薄毛に悩んでいる方はもちろん、将来的に進行リスクを抑えたい方も、この記事を参考に原因と対策を把握し、ご自身に合ったケアを見つけていただければ幸いです。
AGA(androgenetic alopecia)は、「androgen=男性ホルモン」「genetics=遺伝」「alopecia=脱毛症」という意味を持ち、その名の通り、男性ホルモンと遺伝的要因が関与する脱毛症です。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、AGAの発症に男性ホルモンと遺伝的要因が深く関係していることが明記されています。
男性型脱毛症の発症には遺伝と男性ホルモンが関与するが10),遺伝的背景としてはX染色体上に存在する男性ホルモンレセプター遺伝子の多型や常染色体の17q21や20p11に疾患関連遺伝子の存在が知られている11).
引用元;眞鍋求,他.「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」.日本皮膚科学会雑誌,127(13),2763–2777(2017).
AGAは、男性ホルモンによる毛髪の成長サイクルへの影響と、遺伝的背景が複合的に作用することで発症します。
以下では、男性ホルモン(DHT)の影響と遺伝的要因について、それぞれ詳しく解説します。
AGAの発症には、男性ホルモンであるDHT(ジヒドロテストステロン)が深く関わっています。
DHTはテストステロンが「5αリダクターゼ」という酵素によって変換されて生成される物質です。
このDHTが毛乳頭内の男性ホルモン受容体に結合すると、毛髪の成長サイクルに悪影響を与えるとされています。
このような過程によって薄毛が徐々に進行し、AGAの発症を自覚し始めます。
特に頭頂部や前頭部はDHTの影響を受けやすく、これらの部位から薄毛が目立ち始めることが特徴です。
AGAには遺伝的要素も強く関与しており、親族に薄毛の人がいる場合、発症リスクが高まることが知られています。
遺伝的背景には、主に次の2つの経路があります。
1. 母親から受け継ぐ要素
母親から受け継ぐX染色体上には、DHT生成に関わる男性ホルモン受容体(AR)の感受性を左右する遺伝子が存在します。
そのため、母方の祖父や曽祖父が薄毛であれば、その影響を受けやすい傾向があります。
2. 両親から受け継ぐ要素
両親から受け継ぐ常染色体上(17番染色体・20番染色体)にも、AGA発症に関連する遺伝子が存在します。
この遺伝子は父母双方から受け継ぐことがあり、父親が薄毛の場合もAGAを発症リスクが高まるとされています。
また、双子を対象とした研究によると、一卵性双生児476組と二卵性双生児408組のデータから、AGA発症の約81%は遺伝的要因によるものだと示唆されています。
ただし、親族に薄毛の人がいるからといって必ずAGAを発症するわけではありません。
不規則な食生活やストレスなどの生活習慣もヘアサイクルを乱す要因となり得るため、AGAを進行させる可能性があります。
遺伝や男性ホルモンの影響だけでなく、頭皮環境を悪化させる生活習慣もAGA(男性型脱毛症)の進行に影響を及ぼす可能性があります。
特に20代から50代の働く世代は仕事や生活環境の影響で不規則な生活習慣が定着しやすく、これがAGAリスクを高める一因になると考えられます。
以下では、公的機関の調査結果をもとに、働く世代の生活習慣とAGAの関連性について解説します。
会社勤めの男性の中には、昼食を職場近くの飲食店やコンビニで簡単に済ませる方が多いのではないでしょうか。
厚生労働省の「健康日本21(栄養・食生活)」によると、20〜30代男性における昼食時の外食率は約66%(3人に2人)と非常に高いことが示されています。
外食やジャンクフード、コンビニ弁当には高脂肪・高糖質の食品が多く含まれています。
過剰な摂取は皮脂分泌を増やし、頭皮環境を悪化させる恐れがあります。
さらに、東京大学医科学研究所の研究では、高脂肪食の過剰摂取が毛包をミニチュア化させ、毛が細くなるなど脱毛を助長する可能性が示唆されています。
髪の成長にはタンパク質、亜鉛、鉄分、ビタミンなどの栄養素が不可欠です。
不規則な食生活ではこれらの栄養素が不足しやすく、薄毛のリスクを高める一因となり得ます。
特に亜鉛や鉄分は毛髪の成長に欠かせない要素であり、不足するとAGAやその他の脱毛症リスクを高めると考えられます。
働く世代は、職場での人間関係や仕事へのプレッシャーなど、多くのストレス要因を抱えがちです。
内閣府が公表した「令和5年度 男女の健康意識に関する調査報告書」によると、「心理的ストレスが10点以上(要注意)」と判定された割合は、20代男性で39.6%、30代男性で32.3%と非常に高い数値が示されています。
慢性的なストレスは自律神経のバランスを乱し、血流やホルモンバランスに悪影響を及ぼす可能性があります。
自律神経で交感神経が優位になると血流が滞り、頭皮への酸素供給が不足しやすくなります。
さらに、ハーバード幹細胞研究所(HSCI)の研究では、ストレスホルモンであるコルチゾールの増加が毛根細胞の活性化を阻害し、ヘアサイクルが休止期に留まりやすくなる可能性が示唆されています。
このように、慢性的なストレスは血流不良やホルモンの乱れを引き起こし、AGAの進行リスクを高める要因になり得ます。
そのため、ストレス管理や生活習慣の改善は、髪の健康維持にも欠かせません。
働く男性が睡眠不足になりやすい背景としては、仕事の忙しさや不規則な勤務時間などが挙げられます。
厚生労働省の「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、睡眠で十分な休養が取れている人の割合は2009年の81.6%から2023年には74.9%まで減少しています。
特に30〜50代の男性では、6時間未満の睡眠時間の割合が40%を超えている状況です。
睡眠不足や生活リズムの乱れは、睡眠の質を低下させるだけでなく、細胞修復や髪の成長を支える成長ホルモンの分泌を阻害する可能性があります。
睡眠中は、深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)が一定の周期で繰り返されます。
成長ホルモンは主に深い眠り(ノンレム睡眠)の間に活発に分泌されることがわかっています。
ただし、睡眠の質が低下するとこのサイクルが乱れ、ホルモン分泌に悪影響を及ぼす場合があります。
成長ホルモンは、主に眠ること(特に深い睡眠:ノンレム睡眠)で活発に分泌され、ノンレム睡眠は睡眠の最初で出現することが多い
引用元:薄毛を知る | 日本毛髪科学協会
その結果、毛髪の成長が十分に行われず、AGAの進行リスクを高める一因になる可能性があります。
さらに、睡眠不足は自律神経やホルモンバランスにも悪影響を及ぼすため、毛髪の健康を保つには規則正しい生活習慣と質の良い睡眠が欠かせません。
デスクワークやリモートワークを中心としたライフスタイルは運動不足を招きやすく、AGAの進行に影響を及ぼす可能性があります。
厚生労働省の「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、30代男性の運動習慣(週2回以上30分以上の運動を行う割合)は23.5%で、全世代の中で最も低い水準と報告されています。
運動不足は血行不良を引き起こし、頭皮への栄養供給を妨げる原因になり得ます。
その結果、毛母細胞への栄養が十分に行き届かず、髪の成長が阻害されます。
こうした状態が続くと短く細い髪が増え、薄毛の進行を招く可能性があります。
最近になり育毛の基礎的な研究により、男性型脱毛の原因が,毛包において血液中からの栄養素により毛髪が生合成される時の必要なエネルギー代謝の低下にあることが明らかにされました。
引用元:永山升三・西尾宏.「ヘアケアの科学」.繊維製品消費科学,28(6),219–226(1987).
さらに、運動不足はストレスの増加やホルモンバランスの乱れにもつながり、AGAリスクを高める一因となり得ます。
働く世代の男性は、職場の付き合いや取引先との会食などで飲酒の機会が多い傾向にあります。
厚生労働省の「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、生活習慣病のリスクを高める飲酒量(1日あたり純アルコール40g以上)を摂取している割合は、40代男性で23.6%、30代男性で13.4%と報告されています。
過度な飲酒は、髪の成長に欠かせないアミノ酸の不足を招く可能性があります。
味の素株式会社の研究によると、アルコール摂取後には12種類のアミノ酸(アラニン、バリンなど)の血中濃度が低下することが示されています。
アルコールが体内に吸収されると、肝臓で「アセトアルデヒド」という毒性物質が生成され、最終的に無害な酢酸へと分解されます。
この分解過程でアミノ酸が消費されるため、過度な飲酒はアミノ酸不足を引き起こす可能性があります。
アミノ酸は髪の主成分であるケラチンタンパク質を構成するうえで欠かせない栄養素です。
不足すると薄毛や抜け毛につながる恐れがあるため、適度な飲酒を心がけましょう。
頭皮や髪へ負担をかける習慣は、頭皮環境を悪化させる可能性があり、AGA(男性型脱毛症)やその他の脱毛症の進行に間接的な影響を与える場合があります。
頭皮や髪に負担をかける習慣は、頭皮環境を悪化させる可能性があり、AGA(男性型脱毛症)や他の脱毛症が進行する際に間接的な影響を及ぼす場合があります。
これらの外的要因は直接的にAGAを発症させるわけではありませんが、頭皮や毛髪の健康状態を損ない、薄毛の進行リスクを高める可能性があります。
頻繁なパーマやカラーリングは、髪や頭皮に強い化学的刺激を与えます。
この刺激によってダメージが蓄積し、髪の健康を損なう恐れがあります。
髪の主成分であるケラチンタンパク質は18種類のアミノ酸から構成されており、その中でもシスチン結合(ジスルフィド結合)は髪の形状や強度を維持する重要な役割を果たします。
パーマ施術では、還元剤や酸化剤が使用され、この過程でシスチン結合が一時的に切断されて再結合します。
その際にキューティクルが損傷し、髪内部のタンパク質が溶出することで、ハリやコシが失われる可能性があります。
架橋点の低下とタンパク質の変性・親水化により構成タンパク質の溶出が起きやすくなるなど髪のダメージの一因となるので,パーマ施術には注意が必要である。
引用元:伊藤隆司.「頭髪用製品とその作用」.日本香粧品学会誌,43(3),199–208(2019).
カラーリング剤の中では、酸化染毛剤(ヘアカラー・白髪染め)や脱色剤(ヘアブリーチ)は髪への負担が大きいとされています。
酸化染毛剤や脱色剤には、強力な酸化剤(過酸化水素など)が含まれており、メラニン色素だけでなく髪内部のタンパク質にも影響を与えます。
そのため、過度な施術は髪の痛みや切れ毛の原因となる可能性があります。
酸化染毛剤は(脱色剤も)アルカリ性過酸化水素で強い酸化力を有することから,毛髪タンパク質への影響が少なくない。
引用元:伊藤隆司.「頭髪用製品とその作用」.日本香粧品学会誌,43(3),199–208(2019).
また、カラーリング剤によって頭皮にかぶれや炎症が生じる場合もあります。
特に酸化染料には、アレルギー性接触皮膚炎を引き起こしやすい物質が含まれているため注意が必要です。
そのため、カラーリング前には必ずパッチテストを行い、安全性を確認することが大切です。
異常を感じた際は速やかに医療機関へ相談しましょう。
ヘアカラーリング剤の中では酸化染毛剤が最も広く使用されているが、主成分として酸化染料を含むため、染毛料等の他のカラーリング剤と比べてアレルギーを引き起こしやすい。
引用元:毛染めによる皮膚障害|厚生労働省
紫外線を過剰に浴びると、頭皮環境の悪化や髪質の低下を招くおそれがあります。
日焼けによる炎症は、頭皮のバリア機能を低下させます。
その結果、乾燥やフケ、かゆみなどのトラブルが発生する恐れがあります。
また、紫外線は頭皮の皮脂を酸化させ、毛穴詰まりや血行不良を引き起こす可能性もあります。
大正製薬株式会社の研究によると、紫外線照射によって頭皮環境が悪化し、髪の成長に重要な遺伝子の発現が抑制されることが示されています。
紫外線は髪の主成分であるケラチンタンパク質を酸化・分解し、髪表面のキューティクルが剥がれやすくなります。
その結果、髪の水分保持力が低下し、切れ毛やパサつきなどのトラブルにつながります。
株式会社資生堂の研究によれば、紫外線の照射時間が長いほど毛髪内のタンパク質溶出量が増加することが示されています。
また、洗髪のたびにタンパク質が少しずつ失われるという結果も示唆されています。
つまり、日頃から紫外線を浴びる時間が長いほど髪質が悪化しやすく、日常のお手入れの際にもダメージを与えているということです。
このような複合的な紫外線ダメージによって、頭皮環境や髪質が悪化する可能性があります。
AGAと紫外線の関係についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
毎日シャンプーをしていても、洗い方が適切でないと頭皮トラブルの原因になることがあります。
頭皮には、常在菌という微生物が常に存在しています。
常在菌は、洗い残した皮脂や汚れを分解し、刺激性の高い遊離脂肪酸や過酸化脂質を生成します。
これらの刺激物質が頭皮に蓄積すると、フケやかゆみ、ベタつき、ニオイなどのトラブルが起きやすくなります。
さらに、頭皮に残った皮脂が遊離脂肪酸や過酸化脂質へ変化することで、毛根細胞の生理活性が低下し、髪の成長に悪影響を及ぼす可能性も示唆されています。
皮膚を清潔に保たないと頭皮の皮脂が常在微生物の働きにより遊離脂肪酸や過酸化脂質を生成して毛根の細胞の生理活性を低下させ,
引用元:永山升三・西尾宏.「ヘアケアの科学」.繊維製品消費科学,28(6),219–226(1987).
ただし、洗浄力が強すぎるシャンプーや過度な洗髪は必要な皮脂まで取り除き、頭皮の乾燥や炎症リスクを高めます。
汚れをしっかりと落としつつ、適切なシャンプー選びと洗髪方法で頭皮環境を守ることが大切です。
AGA(男性型脱毛症)は、中高年の悩みと見られがちですが、実際には20代で発症するケースもあることが知られています。
日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」によると、日本人男性のAGA発症割合は全年齢平均で約30%、20代では約10%が該当するとされています。
年齢とともに発症率は増加し、30代で20%、40代で30%、50代以降で約40%に達します。
また、AGAは進行性の脱毛症であり、初期段階から適切な対策を講じることが重要です。
AGAの発症には男性ホルモン「テストステロン」が関係しています。
テストステロンは男性らしい体格や筋肉、骨格を作るために重要なホルモンです。
しかし、テストステロンは頭皮に存在する「5αリダクターゼ」という酵素によってDHT(ジヒドロテストステロン)へ変換される性質も持っています。
このDHTが頭部の男性ホルモン受容体と結合すると、AGAを進行させる原因になると考えられています。
以下のように、テストステロンの分泌量は思春期以降に急増し、20代でピークを迎えます。
日本人男性のフリーテストステロン値の年代別基準値
年齢 | テストステロン基準値(pg/mL) |
---|---|
20歳代 | 8.5~27.0 |
30歳代 | 7.6~23.1 |
40歳代 | 7.7~21.6 |
50歳代 | 6.8~18.4 |
60歳代 | 6.0~18.4 |
参考:岩本晃明,他.「日本人成人男子の総テストステロン, 遊離テストステロンの基準値の設定」.日本泌尿器科学会雑誌,95(6),751–760(2004).
※総テストステロン基準値は加齢の影響が少ないため20〜77歳全体で2.01~7.50ng/mL (平均±2SD)。
したがって、AGA発症のメカニズムから見ると、20代でもAGA発症リスクはあると言えます。
ただし、AGAの発症にはホルモンだけでなく、遺伝的要素も深く関与しています。
男性ホルモン受容体の感受性や5αリダクターゼ還元酵素の活性度には遺伝が大きく影響するため、テストステロン値が高いだけで必ずしもAGAを発症するわけではありません。
AGAは急激に薄毛が進むのではなく、時間をかけて徐々に進行する脱毛症です。
進行パターンを示す世界的基準として、進行程度を7段階に分ける「ハミルトン・ノーウッド分類」が広く使用されています。
「ハミルトン・ノーウッド分類」では、額の後退や頭頂部の薄毛など、進行パターンごとに特徴を示しています。
ハミルトン・ノーウッド分類
段階 | 症状の特徴 |
---|---|
Ⅰ型 | 薄毛はほとんど目立たない初期段階 |
Ⅱ型 | 生え際が後退し始める(M字型) |
Ⅲ型 | 生え際の後退が明確になる |
Ⅲvertex型 | 頭頂部の薄毛が目立ち始める |
Ⅳ型 | 前頭部と頭頂部の薄毛範囲が拡大 |
Ⅴ型 | 前頭部と頭頂部の薄毛部分が繋がり始める |
Ⅵ型 | 前頭部から頭頂部まで広範囲で薄毛になる |
Ⅶ型 | 側頭部や後頭部を除きほぼ全体的に薄毛になる |
参考:今川賢一郎.「美容医療の基礎知識第8回『AGA治療、植毛』」.国民生活,2024年6月号(142).
上表のように、AGAは前頭部や頭頂部から徐々に薄毛範囲が広がる特徴があります。
初期段階では本人も気づきにくいため、早期発見と対策が重要です。
生活習慣を改善し、必要に応じて適切な治療を早めに始めることで、AGAの進行を抑えられる可能性があります。
もし疑わしい症状や進行を感じた際は、できるだけ早めに医療機関に相談することが推奨されます。
AGA(男性型脱毛症)は、男性ホルモンや遺伝に加え、食生活や睡眠不足、ストレスなどの生活習慣が間接的に影響を及ぼす可能性があります。
また、パーマや紫外線、汚れの蓄積といった外的要因も見過ごせません。
そのため、日常生活の中で積極的に対策を取り入れることが重要です。
以下で紹介する7つの生活習慣は、頭皮環境を整えるだけでなく、全身の健康維持にも貢献します。
20代や30代で薄毛をまだあまり感じていない方でも、早めに生活改善に取り組むことで、将来的なリスクを軽減できる可能性があります。
自分のライフスタイルに合わせて、無理なく取り入れられる方法を選びましょう。
髪を健康に保つためには、栄養バランスの良い食事が欠かせません。
特に、以下の栄養素は髪の成長に深く関わっているため、意識的に摂ることをおすすめします。
髪の成長や頭皮環境をサポートする可能性がある栄養素
栄養素 | 髪に関係する働き | 主な食品 |
---|---|---|
タンパク質 | 髪の主成分ケラチンを構成し、髪の成長を促進する。 | 肉類、魚介類、卵、大豆製品 |
亜鉛 | 毛母細胞の分裂を促進し、髪の成長を助ける。 | 牡蠣、牛肉、豚レバー、いわし |
鉄分 | 毛根への酸素供給を助け、髪の成長をサポート。 | レバー、赤身肉、あさり、ひじき |
ビタミンB6 | タンパク質代謝や栄養素吸収を助ける。 | 赤身魚、豚ヒレ肉、バナナ、にんにく |
ビタミンB12 | 赤血球生成を促進し毛根への酸素供給を助ける。 | しじみ、あさり、海苔、レバー |
参考:食品成分データベース|文部科学省、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」
各栄養素は互いに補完し合うため、単独ではなくバランスよく摂取することが重要です。
日常的に肉類や魚介類、大豆製品など良質なタンパク質源を中心に取り入れつつ、野菜や海藻など幅広い食品から栄養補給しましょう。
不規則な食生活になりがちな方は、特に意識して摂取を心がけましょう。
AGAリスクを抑えるためには、6〜8時間程度の十分な睡眠時間を確保し、質の良い睡眠を取ることが欠かせません。
睡眠不足や質の低下は心身の健康に加え、髪の成長にも悪影響を与える恐れがあります。
厚生労働省によれば、良質な睡眠とは単に時間が長いだけでなく「朝起きた時にすっきりとした休養感がある」状態を指します。
そのため、睡眠時間だけでなく、睡眠環境や日中の生活習慣を整えることが大切です。
これらの習慣は体内時計(概日リズム)や自律神経のバランスを整え、深いノンレム睡眠を得やすい環境をつくります。
ノンレム睡眠中には成長ホルモンが多く分泌されるため、頭皮環境改善や髪の成長促進につながる可能性があります。
まずは、自分のライフスタイルに合った方法から少しずつ試してみましょう。
継続することで、髪だけでなく全身の健康維持にもつながります。
AGAリスクを減らすには、日常的に運動を行い、全身の血流を促すことが大切です。
運動は頭皮の血行を促進し、毛根に酸素や栄養供給をサポートします。
さらに、運動によりストレスを軽減することで、自律神経やホルモンバランスを整えることにも役立ちます。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」では、成人に対して1日あたり約8,000歩(歩行約60分)程度の身体活動を推奨しています。
通勤時に一駅分歩いたり、昼休みに短時間散歩したりなど、無理なく始められる方法がおすすめです。
ただし、過度な運動は体に負担をかけて逆効果になる可能性があるため、無理なく続けられる運動から始めることが大切です。
また、運動後はタンパク質やビタミン類などの栄養補給も忘れずに行いましょう。
AGAリスクを軽減するためには、ストレス管理も重要です。
慢性的なストレスは血行不良やホルモンバランスの乱れを引き起こし、頭皮環境に悪影響を及ぼす可能性があります。
文部科学省では、以下の方法をストレス解消に有効としています。
ストレス管理には、自分自身の考え方を柔軟にすることも大切です。
完璧主義になりすぎず、「最低限できれば良い」と考えることで精神的負担が軽減されます。
まずは、自分が楽しめる活動やリラックス方法から始めてみましょう。
毎日洗髪していても、適切に洗い流せていない場合は頭皮トラブルやニオイの原因になることがあります。
正しい洗髪方法を実践することで、頭皮環境を清潔に保ち、髪の健康維持につながります。
以下に、正しい洗髪方法をご紹介します。
手ぐしや目の粗いブラシで髪の絡まりをほぐし、洗髪時の摩擦を軽減します。
髪と頭皮全体を十分濡らすことでシャンプーの泡立ちが良くなります。泡立ちによって摩擦が軽減され、頭皮への負担も少なくなります。
耳上・後頭部・頭頂部など洗い残しがちな部分から塗布します。指の腹で小刻みに動かしながら、頭皮全体に行き渡らせましょう。
耳後ろや後頭部などすすぎ残しがちな部分を中心に、念入りにすすぎます。指の腹で小刻みに動かしながらシャンプーを完全に落とすよう心がけましょう。
コンディショナーは髪の根元には直接つけず、毛先を中心になじませます。すすぎ時に頭皮に残らないよう注意してください。
※参考:髪と頭皮にやさしい洗髪方法|髪と頭皮のお手入れ|花王株式会社 ヘアケアサイト
毎日の洗髪で洗い残しやすすぎの残しをなくし、頭皮環境を清潔に保ちましょう。
紫外線は頭皮や髪にダメージを与え、頭皮環境を悪化させる恐れがあります。
頭皮環境の悪化がAGAの進行を間接的に促進する要因となる場合もあるため、日々の紫外線対策は重要です。
気象庁のデータによると、日本では紫外線量が7〜8月にピークを迎えますが、紫外線は一年中降り注いでいます。
特にUV-A波は5月頃から増加し始めるため、夏だけでなく春先からの対策が必要です。
日最大UVインデックス(解析値)の年間推移(東京/2024年)
月 | UVインデックスの月平均値 |
---|---|
1月 | 1.7 |
2月 | 2.3 |
3月 | 3.0 |
4月 | 4.0 |
5月 | 5.3 |
6月 | 5.6 |
7月 | 7.2 |
8月 | 6.6 |
9月 | 5.0 |
10月 | 3.1 |
11月 | 2.1 |
12月 | 1.7 |
参考:日最大UVインデックス(解析値)の年間推移グラフ|気象庁
日常生活から取り入れやすい紫外線対策として以下の方法があります。
また、紫外線を浴びすぎると頭皮に炎症や乾燥が起きる可能性があるため、以下のケアを行い、ダメージを最小限に抑えましょう。
まずは帽子や日傘など手軽なアイテムから紫外線対策を始めてみましょう。
特に春先から意識することで、年間を通じた頭皮ケアにつながります。
喫煙や過度の飲酒は頭皮環境を悪化させ、髪の健康を損なう恐れがあります。
そのため、喫煙は可能な限り控え、飲酒も適量に抑えることが推奨されます。
厚生労働省では、生活習慣病のリスクを高める飲酒量として、1日あたりの平均純アルコール量を男性で40g以上、女性で20g以上と定めています。
また、週に1〜2日は休肝日を設けることが望ましいとされています。
以下は、主なアルコール飲料における純アルコール量20gの目安です。
純アルコール20gの目安
お酒の種類 | アルコール度数 | 20g相当量 |
---|---|---|
ビール | 5% | 中瓶1本(500ml) |
日本酒 | 15% | 1合(180ml) |
焼酎 | 25% | 約110ml |
ワイン | 14% | 約180ml |
ウイスキー | 43% | 約60ml |
缶チューハイ | 5% | 約500ml |
※参考:厚生労働省「あなたが決める、お酒のたしなみ方」2024年11月版
※上記は一般的な目安であり、商品サイズやアルコール度数によって異なる場合があります。
喫煙は血管を収縮させ、頭皮への血流を悪化させます。
結果として毛根への酸素や栄養の供給が滞り、頭皮環境の悪化につながる恐れがあります。
過度な飲酒や喫煙は髪だけでなく、全身の健康にも深刻な影響を与える恐れがあります。
喫煙・飲酒習慣を見直し、健康的な生活を意識しましょう。
生活習慣の改善は、AGAが進行する要因を軽減するうえで有効ですが、症状そのものを直接改善するものではありません。
AGAがすでに進行し、症状が気になる場合には、医療機関での治療も検討しましょう。
AGA治療には主に、以下のような方法があります。
主なAGA治療の特徴
項目 | 内服薬 | 外用薬 | 自毛植毛 |
---|---|---|---|
特徴 | 進行抑制作用のある治療薬を使用 | 発毛促進作用のある治療薬を使用 | 自分の毛髪を薄毛部分に移植 |
メリット | 日常生活に取り入れやすい | 日常生活に取り入れやすい | 一度定着すると基本的には生え変わり続ける |
デメリット | ・継続治療が必要 | ・継続治療が必要 | ・初期費用が高額 ・施術による痛みや腫れが出る可能性 |
主な副作用 | 男性機能低下、肝機能障害など | 頭皮のかゆみ、かぶれなど | 術後の腫れ、傷跡、違和感など |
費用の目安 | 月々2,000〜12,000円程度 | 月々4,000〜13,000円程度 | 1回70万円以上 ※1,000株以上で算出 |
参照:5α-還元酵素Ⅱ型阻害薬 ◎男性型脱毛症用薬◎ フィナステリド錠 / ミノキシジルのリスク区分について / 今川賢一郎.「美容医療の基礎知識第8回『AGA治療、植毛』」.国民生活,2024年6月号(142).
※AGA治療は保険適用外の自由診療であり、医師による診察が必要です。
※効果や副作用の現れ方には個人差があり、すべての方に当てはまるわけではありません。
ただし、AGA治療を始める際には、以下のような注意点があります。
AGA治療は保険適用外の自由診療にあたるため、治療内容や費用は医療機関によって異なり、全額自己負担となります。
基本的な治療には内服薬や外用薬が使用されますが、最低でも6ヶ月以上継続する必要があり、短期間で効果を実感しづらい場合があります。
また、効果や副作用には個人差があるため、事前に医師と十分に相談し、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
まずは専門医の診察を受け、自分の症状や予算に合った治療法を相談しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な治療を希望する場合は、医師または医療機関にご相談ください。
2025年3月時点の各クリニックHP掲載情報を参考に作成しています。
内服薬・外用薬
自毛植毛
AGA(男性型脱毛症)の原因には、男性ホルモンや遺伝的要因、生活習慣などさまざまな要素が関係しています。
ここでは、AGAの原因についてよくある質問を取り上げ、疑問点を分かりやすく解説します。
ストレスそのものがAGAの直接的な原因ではありません。
しかし、自律神経の乱れによる血行不良や睡眠不足を介して、AGA進行を助長することがあります。
日頃からストレス解消法を取り入れ、心身の健康を意識しましょう。
生活習慣の改善は、AGAの進行リスクを軽減することが期待できます。
しかし、AGAは完治する脱毛症ではないため、症状が気になる場合は生活改善に加えて専門医療機関での治療を検討しましょう。
男性ホルモン(テストステロン)の量が多いだけでは、AGAになりやすいとは限りません。
AGA発症には、DHT(ジヒドロテストステロン)への変換酵素である5αリダクターゼの活性度や、男性ホルモン受容体の感受性といった遺伝的要因が深く関わっています。
AGAの原因物質であるDHTは思春期以降に生成が始まるため、20代でも発症する可能性があります。
薄毛の症状が気になる前から、生活習慣改善などの対策を意識することが推奨されます。
AGAの初期症状として、生え際が後退しM字型になる、頭頂部が薄くなるなどが挙げられます。
AGAの症状は、時間をかけて徐々に進行します。
抜け毛や髪のボリューム低下を感じたら、まずは専門医へ相談することが推奨されます。
女性の場合、「女性型脱毛症(FAGA)」という形で発症することがあります。
FAGAは、女性ホルモンの減少や加齢、ストレスなどが主な原因です。
症状が気になる場合は、女性薄毛治療専門院で相談することを検討してください。
この記事では、AGA(男性型脱毛症)の主な原因と、間接的に進行を促進する要因について解説しました。
AGAの主な原因は、男性ホルモンと遺伝による影響です。
男性ホルモンの一種であるDHT(ジヒドロテストステロン)や、遺伝によるホルモン受容体の感受性がAGA発症に深く関わっています。
また、頭皮や髪に負担をかける習慣も、AGAの進行を助長する恐れがあります。
AGAは原因を理解し、早期から適切な対策を取ることで進行を抑えられる可能性があります。
特に、以下のポイントを意識して生活習慣を見直しましょう。
これらの生活習慣は、髪の健康だけでなく、全身の健康維持にも役立ちます。
まずは栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠など、自分に合った方法から取り入れてみましょう。
ただし、すでにAGAが進行している場合には、早めに医療機関での相談を検討してみてください。
小さな改善でも継続することで、髪と健康を守る大きな一歩につながります。