グレースメディカルクリニックの禁煙治療

喫煙はさまざまな疾患の原因となっているのは周知のことと思います。循環器疾患、呼吸器疾患、がん、妊娠合併症、その他数多くの疾患に悪影響であることが多数報告されています。現在では【受動喫煙】も非常に大きな問題で、喫煙する方だけの問題では済まされなくなっています。

喫煙は、特に循環器疾患とは切っても切れない関係といっても過言ではないくらい、密接な関係があります。動脈硬化には特に悪い影響があるのです。煙草に含まれるニコチンが交感神経を刺激すると血圧上昇や心拍上昇につながります。また、煙草に含まれる有害物質は血管の内側(内皮細胞)に様々なダメージを与え、さらに血管収縮などを起こし、動脈硬化の進行を加速させます。動脈瘤のような疾患にもつながりますし、なかには土管の錆みたいな状態になり、脳梗塞、心筋梗塞など、大事な臓器が死ぬことにもなります。

もっと身近なところでは睡眠の影響です。寝酒の一杯と同様に寝る前の喫煙は睡眠の質を下げ、昼間のパフォーマンスを非常に下げてしまいます。さらに、睡眠時無呼吸症候群の発生頻度もあげることにもつながるといわれ、いい影響はないと言えます。そのため、喫煙の習慣を疾患ととらえるようになり、ニコチン依存症と診断するようになりました。

2006年4月から、喫煙治療が保険適応となりましたが、健康保険等を使って治療するには一定の条件があります。2016年4月には保険適応で治療できる対象患者さんが拡大され、35歳未満の方に対しては、喫煙本数や喫煙年数にかかわらず、他の条件を満たせば保険治療が可能となりました。禁煙によって、喫煙による悪影響を回避することができれば、健康面だけでなく、さまざまなメリットがあると考えられます。

治療ができる方の条件(これらすべてを満たす必要があります)

  • ニコチン依存症と診断された方ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)という問診で5点以上であった方
  • 35歳以上の場合、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方
    (35歳未満の場合はこの条件はありません)
  • 直ちに禁煙することを希望され、その意思がある方
  • 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療についての説明を受け、治療を受けることを文書により同意された方(禁煙宣言書に署名いただける方)

また、過去に健康保険等で禁煙治療を受けたことのある方の場合、前回の治療の初回診察日から1年を経過した方であれば、再度保険適応で治療することができます。(ただし、上記の条件は同じです。)

禁煙外来の治療スケジュールと費用の目安

標準的なプログラムでは、12週間にわたり、計5回の受診が必要になります。初回診察でニコチン依存等の判定や呼気一酸化炭素濃度の測定、処方内容(パッチ剤)の決定を行い、初診から2週間後、4週間後、8週間後、12週間後に受診して頂きます。再診では禁煙補助薬の処方や禁煙に対するアドバイスをお伝えいたします。

禁煙治療スケジュール

禁煙補助薬は少量から開始し、徐々に増量していきます。8日目から通常の用量になり、禁煙開始になります。それまでの1週間は、喫煙してもよいとなっていますが、徐々に本数を減らすと、あとが楽です。

禁煙できるなら、できるだけ我慢して頂きたいのですが、どうしても吸ってしまいたければ吸ってもかまいませんと指導しています。ただし、【今日はもう吸わない!】【何本までにしておく!】などの目標は必ず定めてください。しばらく喫煙せず、自然と吸いたくなくなったら禁煙成功です。

禁煙治療(自己負担3割の方)は、処方される薬(パッチ剤)にもよりますが8~12週間で12,000円~20,000円程度です。1日で換算すれば、1日200円少々です。ご自身が吸われてる銘柄にもよるでしょうが、喫煙の継続と禁煙外来とどちらがお得でしょうか??税金もあがるでしょうし、保険の負担割合も増える可能性もあります。この際、少しでも禁煙を考えている方は、受診し相談してみてください。

喫煙はニコチン依存症という病気です

喫煙の習慣を疾患ととらえ、ニコチン依存症と診断できるようになりました。ニコチン依存度判定テスト(TDS)という、問診のスクリーニング検査で診断します。飲酒と同様で、習慣性が出てくると、依存となり、そのことが様々な疾患を引き起こします。

そのため、2006年4月から、治療が開始されるようになりましたが、処方なしでは、なかなか本人の意志だけでは禁煙に至るのは難しいのが現実です。それは、禁煙することによる体内での急激なニコチン減少に伴う離脱症状があるからです。喫煙が習慣となり一度ニコチン依存に陥ると、その不快な離脱症状を改善するためにニコチン摂取を繰り返し、さらにニコチン依存が増強されるという悪循環に陥ると言われています。禁煙に伴う離脱症状等を緩和する目的で処方されるのが、禁煙補助薬ですが、現在、保険適応で使用できるのは、ニコチン受容体作動薬とニコチン製剤(パッチ剤)、2種類の禁煙補助薬があります。

ニコチン製剤(パッチ剤)はニコチン代替療法とも呼ばれ、たばこに含まれるニコチンを製剤中のニコチンで置き換え、徐々に減量する方法で禁煙をサポートします。
一方、禁煙補助薬は脳内のニコチン受容体に作用し

  1. 1喫煙による快感や満足感を抑制する (アンタゴニスト作用)
  2. 2禁煙によるイライラなどの離脱症状を軽減する (アゴニスト作用)

することで、ご自身の意志だけでは難しい禁煙をサポートします。

なかなか、健康のために禁煙をしよう!として受診されることは多くはありませんが、喫煙者で下記のような悩みがあれば、是非、医療機関を受診して相談することをお勧めします。

  • お肌の調子があまりよくない…
  • 匂いや口臭が気になる…
  • 目覚めがいまいち…
  • 息苦しさがある…
  • 禁煙外来に興味はあるが…
  • たばこ代が高い…
  • 病気が気になる…
  • 子供ができたから…

喫煙による悪影響

たばこが健康にはよくないということを否定する人はいないでしょう。喫煙者も十分そのことをわかっていると思われますが、実際はどうでしょうか?本当の危険性が理解されていないのではないでしょうか?

たばこの煙には、実に数多くの有害物質が含まれるといわれます。発がん性のあるものは、200以上含まれる有害物質のうち、70種類ほどが確認されているそうです。単に煙をすってるだけでなく、有害な、がんになりうる物質を吸っていることになります。直接、煙が触れる口、喉、肺だけの影響だけではなく、吸収されてからもさまざまな臓器に影響を及ぼす、いわば、全身に影響を与える恐ろしい毒を服用しているのと同等と考えられます。

成人においては、喫煙との因果関係がある十分な証拠のある疾患は以下になります。

  • がん

    肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝、膵、膀胱、子宮頸部

  • 循環器系

    虚血性心疾患、脳血管疾患、腹部大動脈瘤、末梢動脈疾患

  • 呼吸器系:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸機能低下

  • 2型糖尿病

  • その他

    歯周病、骨密度の低下、創傷治癒遅延、大腿部頚部骨折の増加、消化性潰瘍、加齢性黄斑変性 など

未成年においては以下の疾患になります。

  • 全死因死亡、がん死亡、循環器系疾患による死亡、がんにかかるリスクの増加

また、妊娠期の喫煙ではさらに恐ろしく、乳幼児突然死症候群(SIDS: Sudden Infant Death Syndrome)、早産、低出生体重・胎児発育遅延のほか、子宮外妊娠・自然流産・口蓋裂なども関係があるといわており、将来のある子供たちに多大な影響を起こすことにつながります。

最近では、受動喫煙も話題になりました。受動喫煙との因果関係が確実と言われる肺癌、虚血性心疾患、脳卒中、乳幼児突然死症候群(SIDS)の4疾患については、年間約1万5千人が受動喫煙で死亡しているといわれており、喫煙は自分だけの問題ではありません。

近年、加熱式たばこが人気になっているようです。煙が出ない、匂いが少ないため周囲への影響が少ないと宣伝されていますが、健康への被害は通常のたばこ同様、むしろそれ以上の可能性があるとも様々なところで言われており、まったく安全ではないと思われます。

これらを考慮すると禁煙によってさまざまな恩恵を受けることができると思われます。禁煙してから早い時期から心臓発作のリスクを下げることができるといわれますが、脳血管疾患のリスクが低下したり、冠動脈疾患のリスクがたばこを吸わない人と同等になるには数年かかると言われます。早い時期からの禁煙への取り組みが重要です。