更年期を迎える頃から、血圧が気になり始めたという方は少なくありません。
実際、それまで血圧に問題がなかった女性でも、更年期に入ると血圧が上昇しやすくなることが知られています。
これには女性ホルモンの変化が大きく関わっています。
- 女性ホルモン減少で一酸化窒素が低下(血管拡張機能の低下)
- 血圧調整システムの活性化(血管収縮物質が増加する)
- 基礎代謝低下により内臓脂肪が増加(血圧上昇の要因)
- 閉経後は塩分感受性が高まる(同量でも血圧上昇)
- 血管の加齢性硬化とエストロゲン保護作用の喪失(柔軟性低下)
- 男性ホルモンの相対的増加(血管収縮を促進)
更年期は女性の体が大きく変化する時期であり、血圧もその影響を受けやすいのです。
高血圧を放置すると、心臓病や脳卒中などのリスクが高まるため、この時期の血圧管理は非常に重要です。
更年期の血圧上昇は、女性ホルモンの減少によって血管を守る働きが弱まることが主な原因です。
しかし、適切な対策を取ることで、健康的に更年期を過ごすことは十分に可能です。
この記事では、更年期と高血圧の関係について、医学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。
- 更年期になると血圧が上がりやすくなる理由
- 更年期の高血圧で起こりやすい症状
- 生理周期や閉経が血圧に与える影響
- 更年期の高血圧を予防・改善するための具体的な対策
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
更年期になると血圧が上がりやすくなる理由
更年期を迎えると、多くの女性が血圧の上昇を経験します。
米国では60歳以上の女性の約75%が高血圧を発症するというデータがあり、これは同年代の男性よりも高い割合です。
ただし、日本では60代女性の高血圧有病率は約60%程度と、国や調査により数値に差があります。
なぜ更年期になると血圧が上がりやすくなるのでしょうか。
その背景には、女性ホルモンの変化が深く関わっています。
女性ホルモンの減少が血圧に与える影響
更年期に血圧が上昇する最も大きな要因は、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの減少です。
エストロゲンには血管を拡げる働きがあり、血圧を正常に保つ重要な役割を果たしています。
具体的には、エストロゲンは血管の内側を覆う細胞(血管内皮細胞)に働きかけて、一酸化窒素という物質の産生を促します。
この一酸化窒素が血管を柔軟にし、血液がスムーズに流れるよう手助けしているのです。
しかし、更年期になると卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌量が急激に減少します。
その結果、血管を拡げる働きが弱まり、血圧が上がりやすくなります。
また、エストロゲンの減少は体内の血圧調整システムにも影響を与えます。
レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系と呼ばれる血圧調整の仕組みが活性化され、血管を収縮させる物質が増えることで、さらに血圧が上昇しやすくなるのです。
更年期特有の体の変化と血圧の関係
エストロゲンの減少以外にも、更年期には血圧を上昇させる要因がいくつかあります。
まず、体重の増加が挙げられます。
更年期になると、エストロゲンの減少により基礎代謝が低下し、同じ食生活を続けていても体重が増えやすくなります。
特に内臓脂肪が増えやすく、これが高血圧のリスクを高めます。
研究では体重1キログラムの減少につき血圧が約1mmHg低下することが示されており、逆に体重が増えると血圧も上昇すると考えられます。
ただし、個人差があるため目安として理解しておきましょう。
次に、塩分に対する感受性の変化も重要です。
閉経後の女性は、閉経前と比べて塩分の影響を受けやすくなることが研究で示されています。
これは食塩抵抗性のある12人(38.7%)の女性が閉経後に食塩感受性を発症したためである。
引用:PubMed Surgical menopause increases salt sensitivity of blood pressure
同じ量の塩分を摂取しても、閉経後のほうが血圧が上がりやすいのです。
これもエストロゲンの減少と関連していると考えられています。
さらに、更年期のストレスや睡眠障害も血圧に影響を与える可能性があります。
更年期には、ホルモンバランスの変化により、イライラや不安、不眠といった症状が現れやすくなります。
これらの精神的なストレスや睡眠不足は、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる要因となります。
加齢による血管の硬化も見逃せません。
年齢を重ねるにつれて、血管の柔軟性は自然と失われていきます。
更年期はちょうどこの血管の老化が進む時期と重なるため、エストロゲンの減少と相まって、血圧が上がりやすい状態になるのです。
更年期の高血圧ではどんな症状が現れる?
更年期に伴う高血圧は、一般的な高血圧と同様に自覚症状が少ないことが多いですが、更年期特有の症状と重なって現れることもあります。
高血圧自体は「サイレントキラー」とも呼ばれ、気づかないうちに進行することがあるため、定期的な血圧測定が重要です。
血圧の上がり方の特徴
更年期の女性に見られる血圧上昇には、いくつかの特徴があります。
まず、収縮期血圧(上の血圧)が上がりやすい傾向があります。
女性は60歳以降、収縮期血圧が上昇しやすくなり、同年代の男性と同程度か、それ以上になることがあります。
ただし、個人差や治療の有無によって異なります。
これは血管の硬化とエストロゲンの減少が重なって起こる現象です。
また、血圧の変動が大きくなることがあります。
高血圧では一般的に、時間帯によって血圧が大きく変動することがあり、朝の血圧が高くなる「早朝高血圧」や、夜間に血圧が下がりにくい「非降圧型(夜間非降圧型)」と呼ばれるパターンがあります。
これらは更年期女性を含む高血圧患者でみられることがあり、心臓や血管への負担を増やす可能性があります。
ストレスや感情の変化によっても血圧が上がりやすくなります。
更年期は精神的に不安定になりやすい時期でもあり、ちょっとしたストレスで血圧が急激に上昇することもあります。
高血圧に伴って起こりやすい体の変化
高血圧そのものは無症状のことが多く、軽度から中等度の高血圧では特有の症状がないことがほとんどです。
更年期に起こる以下のような症状は、主に更年期障害によるものであり、高血圧が直接の原因とは限りません。
- 頭痛、頭重感
- ほてり、のぼせ(ホットフラッシュ)
- 動悸、息切れ
- めまい、ふらつき
- 肩こり、首こり
頭痛や頭重感を訴える方がいますが、軽度から中等度の高血圧と頭痛の関連は明確ではありません。
重症高血圧(収縮期血圧180mmHg以上など)の場合を除き、頭痛は高血圧特有の症状とは言えません。
ほてりやのぼせ(ホットフラッシュ)は更年期症状の代表的なものです。
これらの血管運動神経症状(VMS)と心血管疾患リスクとの関連を示唆する研究がありますが、因果関係は明確になっておらず、現時点では関連性の示唆にとどまります。
頻繁かつ持続的なVMSは、後期のCVDイベントリスクの増加と関連していた。VMSは、女性特有の新たなCVDリスク因子となる可能性がある。
引用:American Heart Association Journals Menopausal Vasomotor Symptoms and Risk of Incident Cardiovascular Disease Events in SWAN
動悸や息切れ、めまいやふらつき、肩こりや首のこりなども、更年期によく見られる症状です。
これらの症状は更年期障害と重なることが多いため、高血圧によるものかどうかを自己判断することは困難です。
そのため、定期的に血圧を測定し、数値で確認することが大切です。
血圧が140/90mmHgを超える場合や、症状が気になる場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
生理周期や閉経で血圧はどう変わる?
女性の血圧は、生理周期や閉経によって変化することが知られています。
これは女性ホルモンの変動が血圧調整に影響を与えるためです。
生理がある時期と閉経後では、血圧の変化のパターンが異なります。
生理周期による血圧の変動
生理周期の中で、血圧は微妙に変動しています。
これはエストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの量が周期的に変化するためです。
生理周期による血圧変動については、古い研究で生理開始時に血圧がやや高く、17日目から26日目頃に低くなる傾向が報告されています。
しかし、最近のレビューでは研究結果が一貫しておらず、個人差や測定方法による違いが大きいことが指摘されています。
月経周期中の健康な女性の血圧に関するデータは一貫していません。
引用:PubMed Central Cardiovascular Function in Different Phases of the Menstrual Cycle in Healthy Women of Reproductive Age
卵胞期と黄体期の血圧については、研究によって結果が異なります。
黄体期のほうが血圧が高いとする報告もあり、一定の結論は得られていません。
いずれにしても、変動は数mmHg程度であることが多く、個人差があります。
また、生理前症候群(PMS)がある方では、生理前に血圧が上昇しやすいことも知られています。
PMSの症状として、むくみや体重増加が起こりますが、これは体内の水分貯留と関連しており、血圧の上昇につながることがあります。
米国の看護師を対象とした研究では、PMSがある女性は将来的に高血圧を発症するリスクが約40%高いと報告されています。
年齢、喫煙、BMI、その他の高血圧リスク因子を調整後、PMSのある女性はPMSのない女性と比較して、高血圧のハザード比は1.4(95%信頼区間:1.2~1.6)であった。
引用:Oxford Academic Premenstrual Syndrome and Subsequent Risk of Hypertension in a Prospective Study
ただし、他の研究では関連性が小さいか、不一致の結果も示されており、この関連性の一般化には慎重さが必要です。
閉経後の血圧変化とその仕組み
閉経を迎えると、血圧の変化はより顕著になります。
閉経前は男性よりも低かった女性の血圧が、閉経後は男性と同程度、あるいはそれ以上になることが一般的です。
閉経によってエストロゲンの分泌がほぼ停止すると、血管を保護する働きが失われます。
エストロゲンは血管内皮細胞の機能を維持し、血管の柔軟性を保つ役割を果たしていました。
この保護作用がなくなることで、血管が硬くなりやすくなり、血圧が上昇します。
また、閉経後はアンドロゲン(男性ホルモン)の相対的な割合が増えることも影響します。
エストロゲンが減少する一方で、アンドロゲンの量はあまり変わらないため、ホルモンバランスが変化します。
アンドロゲンは血管を収縮させる物質の産生を促すため、これも血圧上昇の一因となります。
更年期移行期に生じる「相対的アンドロゲン過剰」は、閉経後女性における心血管疾患リスクの上昇を説明する一助となる可能性があります。
引用:PubMed Central Relative Androgen Excess During the Menopausal Transition Predicts Incident Metabolic Syndrome in Mid-Life Women: SWAN
体内の血圧調整システムも変化します。
血圧調整システムの変化
| 要因 | 主な変化・影響 | 血圧への作用 |
|---|---|---|
| レニン-アンジオテンシン系の活性化 | アンジオテンシンⅡ・エンドセリン産生増加 | 血管収縮による血圧上昇 |
| 塩分感受性の上昇 | 同量の塩分でも血圧が上がりやすくなる | ナトリウム排泄低下による血圧上昇 |
| 交感神経活動の亢進 | 心拍数増加・血管収縮促進 | 血圧上昇 |
レニン-アンジオテンシン系という血圧を調整する仕組みが活性化され、血管を収縮させる物質であるアンジオテンシンⅡやエンドセリンの産生が増えます。
これらの物質は血管を収縮させ、血圧を上昇させる働きがあります。
さらに、閉経後は塩分感受性が高まります。
同じ量の塩分を摂取しても、閉経前よりも血圧が上がりやすくなるのです。
これは、エストロゲンが腎臓でのナトリウム(塩分)の排泄を促す働きをしていたためで、その働きが失われることで、体内に塩分が溜まりやすくなります。
交感神経の活動も活発になる傾向があります。
交感神経は心拍数を上げたり、血管を収縮させたりする働きがあるため、その活動が高まると血圧も上昇します。
これらの複数の要因が重なり合うことで、閉経後の血圧は上昇しやすくなります。
更年期の高血圧を予防・改善するためにできること
更年期の高血圧は、生活習慣の見直しや適切な対応によって予防・改善できる可能性があります。
ここでは、日常生活で取り組める具体的な対策と、医療機関を受診すべきタイミングについて解説します。
日常生活で取り組める対策
更年期の高血圧を予防・改善するために、まず取り組んでいただきたいのが生活習慣の改善です。
減塩を心がける
塩分の摂り過ぎは高血圧の大きな原因です。
特に閉経後の女性は塩分に敏感になるため、減塩は非常に重要です。
世界保健機関(WHO)は1日の塩分摂取量を5グラム未満に抑えることを推奨していますが、日本人の平均摂取量はこれを大きく上回っています。
具体的には、加工食品や外食を控える、醤油やソースは「かける」のではなく「つける」、だしの旨味を活かして調味料を減らす、といった工夫が効果的です。
さらに、減塩と野菜・果物・低脂肪乳製品を多く摂るDASH食を組み合わせることで、相加的に血圧が低下することが研究で示されています。
薄味に慣れるまでには時間がかかりますが、徐々に減塩を進めていくことで、血圧の改善が期待できます。
適度な運動を継続する
運動は血圧を下げる効果があり、更年期の健康管理に欠かせません。
週に150分以上の中強度の有酸素運動(速歩、軽いジョギング、水泳など)と、週2回程度の筋力トレーニングを組み合わせることが推奨されています。
有酸素運動は血管の柔軟性を高め、血圧を下げる効果があります。
また、筋力トレーニングは基礎代謝を維持し、体重管理にも役立ちます。
ただし、すでに高血圧がある場合や、運動習慣がない方は、急に激しい運動を始めるのではなく、散歩など軽い運動から始め、徐々に強度を上げていくことが大切です。
適正体重を維持する
体重が増えると血圧も上昇しやすくなります。
更年期は基礎代謝が低下し、体重が増えやすい時期ですが、食事と運動のバランスを整えることで、適正体重を維持することは可能です。
5キログラムから10キログラムの減量でも、血圧の改善効果が期待できます。
極端なダイエットは避け、バランスの取れた食事と適度な運動で、無理なく体重管理を続けることが重要です。
禁煙し、飲酒を控える
喫煙は一時的に血圧や心拍数を上昇させ、動脈硬化を促進することで心臓病や脳卒中のリスクを高めます。
更年期を機に禁煙することは、血圧管理だけでなく、全身の健康にとって非常に有益です。
飲酒は血圧を上昇させるため、制限することが推奨されます。
近年の研究では、アルコール摂取量は少ないほど望ましいとされていますが、飲む場合は女性で1日1杯程度(ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合程度)を上限とすることが推奨されています。
ストレス管理と十分な睡眠
ストレスは血圧を上昇させる要因の一つです。
更年期には精神的に不安定になりやすいため、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
趣味の時間を持つ、友人と話す、ヨガや瞑想を取り入れるなど、リラックスできる時間を意識的に作りましょう。
また、睡眠不足も血圧に悪影響を与えます。
短時間睡眠(5時間以下)は高血圧の発症リスクを高めることがメタ解析で示されており、特に女性でリスクが高い傾向があります。
1日7時間から8時間程度の質の良い睡眠を確保することが、血圧管理には重要です。
食事内容の見直し
減塩に加えて、野菜や果物を多く摂ることも大切です。
カリウムは余分な塩分の排出を助ける働きがあり、血圧を下げる効果が期待できます。
また、魚や大豆製品などの良質なたんぱく質、全粒穀物なども積極的に取り入れましょう。
地中海式食事法のように、野菜、果物、魚、オリーブオイルなどを中心とした食事パターンは、血圧を平均1~2mmHg程度低下させ、長期的な心血管疾患リスクの低減に寄与することが研究で示されています。
しかし、地中海式ダイエットは、拡張期血圧(MD = -1.20; 95% CI: -2.21~-0.19)および収縮期血圧(MD = -4.17; 95% CI: -7.12~-1.22)を低下させました。
引用:PubMed Central The effects of Mediterranean diet on cardiovascular risk factors, glycemic control and weight loss in patients with type 2 diabetes: a meta-analysis
医療機関を受診するタイミング
生活習慣の改善に取り組んでも血圧が下がらない場合や、以下のような状況では、医療機関を受診することをお勧めします。
- 家庭血圧が繰り返し135/85mmHg以上
- 生活習慣を見直しても血圧が下がらない
- 更年期症状がつらく、日常生活に支障がある
- 頭痛・めまい・胸の痛み・動悸・息切れがある
- 血圧が180/120mmHg以上に達して、頭痛や胸痛などの症状がある
家庭で測定した血圧が、繰り返し135/85mmHg以上を示す場合は、高血圧の可能性があります。
朝晩各1回ずつ5~7日以上測定した平均値で判断し、高い値が続くようであれば受診をお勧めします。
なお、診察室での血圧基準は140/90mmHg以上ですが、家庭血圧はこれより低い基準が用いられます。
更年期症状がひどく、日常生活に支障をきたしている場合も、婦人科や内科を受診することが大切です。
ホルモン補充療法や漢方薬などの治療により、症状が改善される可能性があります。
ただし、ホルモン補充療法は血圧への影響も考慮する必要があるため、医師とよく相談することが重要です。
頭痛、めまい、胸の痛み、動悸、息切れなどの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
これらは高血圧の合併症や、他の疾患の可能性もあります。
特に血圧が180/120mmHg以上に達し、上記の症状がある場合は、重度の高血圧の可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください。
また、以下に該当する方は高血圧のリスクが高いため、定期的な健康診断を受け、血圧をチェックすることが大切です。
- 高血圧の家族歴がある方
- 糖尿病や脂質異常症などの他の生活習慣病がある方
- 肥満の方
医師の診察を受けた結果、降圧薬による治療が必要と判断された場合は、指示通りに服薬を続けることが重要です。
高血圧は症状がないことも多いですが、放置すると心臓病や脳卒中などの重大な合併症につながる可能性があります。
薬を飲み始めたからといって生活習慣の改善をやめるのではなく、薬と生活習慣改善を組み合わせることで、より良い血圧管理が可能になります。
よくある質問(FAQ)
更年期と高血圧に関して、よくいただく質問にお答えします。
- 更年期の高血圧は一時的なものですか?
-
更年期の高血圧は、残念ながら一時的とは言えません。
閉経後は女性ホルモンの分泌がほぼ停止するため、血管を保護する働きが失われ、血圧が上がりやすい状態が続きます。
適切な対策を取らなければ、高血圧が持続し、心臓病や脳卒中のリスクが高まる可能性があります。
- ホルモン補充療法は高血圧の治療になりますか?
-
ホルモン補充療法は更年期症状の緩和には効果的ですが、高血圧の治療としては推奨されていません。
特に経口エストロゲン製剤は血圧上昇リスクと関連する可能性があり、経皮吸収型(パッチやゲル)の方が血圧への影響は小さいと報告されています。
高血圧や心血管リスクのある方は、ホルモン補充療法を始める前に医師と十分に相談することが重要です。
- 血圧の薬は一生飲み続けなければなりませんか?
-
必ずしもそうとは限りません。
生活習慣の改善により血圧が十分に下がり、安定すれば、医師の判断のもとで減薬や中止が検討されることもあります。
ただし、自己判断で服薬を中止することは危険ですので、必ず医師に相談してください。
- 更年期の血圧上昇は予防できますか?
-
完全に予防することは難しいですが、適切な生活習慣を維持することで、血圧の上昇を抑えることは可能です。
特に、更年期を迎える前から減塩、運動、体重管理などを心がけることが重要です。
- 家庭用血圧計で測った値は信頼できますか?
-
適切に使用すれば、家庭用血圧計の測定値は信頼できます。
まず、検証済みの上腕式血圧計を選びましょう。
測定時は、椅子に座って3~5分安静にした後、上腕にカフを巻き、1分間隔で2回以上測定します。
毎日同じ時間帯(起床後と就寝前)に測定し、その平均値を記録することで、より正確な血圧管理が可能になります。
まとめ
更年期になると血圧が上がりやすくなるのは、女性ホルモンであるエストロゲンの減少が主な原因です。
エストロゲンには血管を拡げる働きがあり、この保護作用が失われることで、血圧が上昇しやすくなります。
米国では60歳以上の女性の約75%が高血圧であると報告されていますが、日本では60代女性の有病率は約60~70%程度とされており、国や年齢層によって数値は異なります。
生理周期でも血圧は変動し、生理開始時には高くなり、黄体期後半には低くなる傾向があります。
閉経後はこの周期的な変動がなくなり、血圧が上昇しやすい状態が続きます。
更年期の高血圧を予防・改善するには、減塩、適度な運動、適正体重の維持、禁煙、節酒といった生活習慣の改善が基本です。
これらの対策は、すぐに効果が現れなくても、継続することで血圧の改善につながります。
家庭での血圧測定が135/85mmHgを繰り返し超える場合や、更年期症状で日常生活に支障がある場合は、医療機関を受診しましょう。
高血圧は自覚症状が少ないため、定期的な血圧チェックと適切な対応が、将来の心臓病や脳卒中を予防する鍵となります。
更年期は人生の新しいステージの始まりです。
この時期の血圧管理をしっかり行うことで、その後の健康的な生活の基盤を作ることができます。
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