睡眠不足が続くと、疲れが取れないだけでなく、血圧にも悪影響が及ぶ可能性があります。
実際に、毎日の睡眠時間が不足していると高血圧のリスクが高まることが、数多くの研究で明らかになっています。
- 睡眠時間が短いと高血圧リスクが上昇する
- 交感神経が過剰に働き血管が収縮して血圧が上がる
- ストレスホルモンが増加し血圧上昇を引き起こす
- 夜間の血圧低下が不十分で血管が休めない
- 長期化すると動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まる
本記事では、睡眠不足がどのように血圧に影響するのか、そのメカニズムと改善方法について、医学的根拠に基づいて解説します。
- 睡眠不足が血圧を上げる可能性がある理由
- 高血圧リスクを高める睡眠時間の目安
- 睡眠不足が血圧に影響する3つのメカニズム
- 血圧改善のための具体的な睡眠習慣
- 医療機関を受診すべき症状
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
睡眠不足は血圧を上げる可能性がある
「最近よく眠れていない」「仕事が忙しくて睡眠時間が短い」という方は少なくないでしょう。
実は、この睡眠不足が血圧を上昇させる一因となっている可能性があります。
国内外の複数の研究によると、睡眠時間が不足している人は、十分に眠っている人に比べて高血圧になりやすいことが確認されています。
特に、毎日6時間未満の睡眠しかとっていない場合、高血圧のリスクが明らかに高くなるというデータがあります。
では、なぜ睡眠不足が血圧に影響するのでしょうか。
健康な人の場合、睡眠中は体全体がリラックス状態になり、血圧が日中よりも自然に低下します。
この「夜間の血圧低下」は、心臓や血管を休ませるために非常に重要な働きをしています。
しかし、睡眠時間が不足すると、この血圧を下げる仕組みが正常に働かなくなってしまうのです。
その結果、血管は十分に休むことができず、常に負担がかかり続ける状態になります。
厚生労働省も、慢性的な睡眠不足が高血圧をはじめとする生活習慣病のリスクを高めると指摘しています。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)でも、成人は最低7時間の睡眠をとることを推奨しており、それ未満の睡眠は高血圧、糖尿病、心臓病などのリスク増加と関連しているとしています。
本章では、睡眠時間と血圧の関係について、具体的なデータとともに詳しく見ていきます。
睡眠不足がどの程度続くと高血圧のリスクが高まるのか、そして夜間の血圧低下がなぜ重要なのかを理解することで、日々の睡眠習慣を見直すきっかけになるでしょう。
6時間未満の睡眠で高血圧リスクが高まる
では、具体的にどの程度の睡眠時間が不足していると高血圧のリスクが上がるのでしょうか。
複数の研究を統合した分析によると、睡眠時間が5時間以下の人は、7時間睡眠をとっている人に比べて高血圧になる確率が約1.1〜1.7倍高くなることが報告されています。
睡眠時間と高血圧リスクの関係
| 睡眠時間 | 高血圧リスク | 推奨度 |
|---|---|---|
| 5時間以下 | 約1.1〜1.7倍 | ✗ |
| 6時間 | 約1.2倍 | △ |
| 7〜8時間 | 基準 | ◎ |
| 9時間以上 | 研究により異なる | △ |
※ 効果量は研究設計・対象集団により幅があります。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は、成人は1晩に最低7時間の睡眠をとることを推奨しており、7時間未満の睡眠は肥満、糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、脳卒中のリスク増加と関連していると発表しています。
日本の厚生労働省が策定した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、睡眠不足が高血圧の発症リスクの上昇や症状の悪化に関連することが明記されています。
睡眠不足が続くと血管が休まらず血圧が下がりにくい
通常、健康な人の場合、睡眠中には血圧が日中よりも約10〜20%低下します。
この現象は「夜間降圧」と呼ばれ、心臓や血管の健康を保つために重要な役割を果たしています。
- 日中(覚醒時):血圧が高い状態
- 睡眠中:血圧が10〜20%低下(夜間降圧)
- 早朝:血圧が上昇
しかし、睡眠が不足したり睡眠の質が悪かったりすると、この夜間降圧が十分に起こらなくなる可能性があります。
夜間に血圧が十分に下がらない状態は、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めることが研究で示されています。
アメリカで実施された24時間血圧モニタリングを用いた研究では、睡眠時間が7時間未満の人では、夜間の血圧低下が不十分になる傾向が観察されました。
つまり、睡眠不足によって血管が十分に休息できず、継続的に負担がかかり続けることになるのです。
睡眠不足で血圧が上がる3つの理由
「睡眠不足が血圧に悪い」ということは分かっても、なぜそうなるのか不思議に思う方もいるでしょう。
実は、睡眠不足が血圧を上昇させる背景には、体の中で起こる複数の変化が関わっています。
主なメカニズムとしては、自律神経の乱れ、ストレスホルモンの増加、そして夜間の血圧調節機能の低下の3つが挙げられます。
まず、自律神経についてです。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、それぞれが体の活動とリラックスをコントロールしています。
日中は交感神経が活発に働いて体を活動的にし、夜間は副交感神経が優位になって体を休ませます。
しかし、睡眠が不足すると交感神経が過剰に働き続け、血管が収縮して血圧が上がってしまうのです。
次に、ストレスホルモンの問題です。
睡眠不足は体にとってストレスとなり、コルチゾールというホルモンの分泌を増やします。
このホルモンは本来、朝に高く夜に低くなるリズムを持っていますが、睡眠不足によってこのリズムが乱れ、夜になっても高い状態が続くことがあります。
さらに、睡眠中に本来起こるはずの血圧低下が不十分になることも重要な問題です。
健康な人では睡眠中に血圧が10〜20%下がりますが、睡眠不足だとこの低下が小さくなったり、まったく起こらなくなったりします。
これらの3つの要因が複雑に絡み合って、睡眠不足による血圧上昇を引き起こしているのです。
本章では、それぞれのメカニズムについて、研究データとともに分かりやすく解説していきます。
- 交感神経の過剰な活性化 → 血管が収縮し、血圧上昇
- ストレスホルモン(コルチゾール)の増加 → 血圧を上げるホルモンが過剰に分泌
- 夜間の血圧低下不足 → 血管が休息できず、負担が継続
体が緊張状態になり血管が縮む
睡眠が不足すると、体は交感神経系が活発になり、常に緊張状態が続きます。
交感神経は「闘争・逃走反応」を引き起こす神経系で、ストレスや危険に対応するために体を活性化させる働きがあります。
通常、睡眠中は副交感神経が優位になり、体はリラックス状態になって血圧が下がります。
しかし、睡眠が不足すると交感神経の活動が過剰になり、血管が収縮して血圧が上昇しやすくなる可能性があります。
実際に、高血圧患者を対象とした研究では、睡眠不足の日には24時間を通じて血圧と心拍数が高くなり、特に夜間の上昇が顕著であったことが報告されています。
睡眠不足後の日中の24時間MBP、睡眠不足中および睡眠不足後の朝のBPの上昇が観察され、同時に夜間の血圧低下の減少と状態不安の増加が男女ともに認められた。
引用:PubMed Central The association between sleep deprivation and arterial pressure variations: a systematic literature review
この研究では、尿中のノルエピネフリン(交感神経系の活動を示す物質)の排泄量も睡眠不足時に増加しており、交感神経の活性化が確認されました。
ストレスを感じるホルモンが増えて血圧が上昇する
睡眠不足は、体にとって一種のストレスとなります。
その結果、「ストレスホルモン」として知られるコルチゾールの分泌が増加する可能性があります。
コルチゾールは、血圧や血糖値の調節に関わる重要なホルモンです。
通常、コルチゾールは朝に最も高く、夜間には低下するという日内リズムを持っています。
しかし、睡眠不足が続くと、このリズムが乱れ、本来低下すべき夕方から夜間にかけてのコルチゾール濃度が高いままになることが研究で示されています。
6日間にわたり睡眠時間を4時間に制限した研究では、午後から夜間にかけてのコルチゾール濃度が上昇し、通常よりも遅い時間までコルチゾールが高い状態が続くことが確認されました。
また、睡眠負債群では、夕方のコルチゾール濃度が上昇し(p=0.0001)、交感神経系の活動が亢進した(p<0.02)。
引用:PubMed Impact of sleep debt on metabolic and endocrine function
コルチゾールの上昇は血管の収縮を促し、結果として血圧を上昇させる可能性があります。
夜間に血圧を下げる働きが弱まる
先ほども触れましたが、健康な人では睡眠中に血圧が低下します。
これは、睡眠によって交感神経の活動が抑えられ、体全体がリラックス状態になるためです。
しかし、睡眠不足の状態では、この夜間の血圧低下が不十分になります。
大規模な疫学研究では、夜間の血圧低下が5%不足するごとに、心血管疾患による死亡リスクが約20%増加することが報告されています。
平均して、夜間収縮期血圧/拡張期血圧の低下が5%減少するごとに、心血管疾患死亡リスクが約20%上昇した。
引用:PubMed Prognostic significance of the nocturnal decline in blood pressure in individuals with and without high 24-h blood pressure: the Ohasama study
また、睡眠中の深い睡眠(ノンレム睡眠の徐波睡眠)が不足すると、血圧を下げる働きがさらに弱まる可能性があります。
睡眠不足や睡眠の質の低下は、この深い睡眠の時間を減少させ、血圧調節機能に悪影響を及ぼすと考えられています。
睡眠不足と高血圧が続くと心臓病のリスクが高まる
睡眠不足による高血圧が一時的なものであれば、大きな問題にはならないかもしれません。
しかし、この状態が数ヶ月、数年と続いた場合、心臓や血管には深刻なダメージが蓄積されていきます。
血圧が高いということは、心臓が血液を送り出すために常に強い力を使い続けなければならず、また血管の壁にも絶えず強い圧力がかかっている状態です。
これは、まるで水道管に常に高い水圧がかかり続けているようなもので、いずれ管が傷んでくるのと同じことが体の中で起こります。
血管が傷つくと、その傷を修復するために様々な物質が集まってきます。
しかし、この修復過程が繰り返されるうちに、血管の壁が厚く硬くなってしまいます。
これが動脈硬化です。
動脈硬化が進むと、血管の弾力性が失われ、血液の流れが悪くなります。
その結果、心臓はさらに強い力で血液を送り出さなければならず、血圧はますます上がるという悪循環に陥ります。
さらに問題なのは、動脈硬化が進んだ血管では、血栓(血の塊)ができやすくなることです。
この血栓が心臓の血管を詰まらせると心筋梗塞に、脳の血管を詰まらせると脳梗塞になります。
また、高い血圧によって弱くなった血管が破れると、脳出血を起こす危険性もあります。
実際の研究データでも、睡眠不足と高血圧の両方がある人では、これらの重大な心血管疾患のリスクが明らかに高いことが示されています。
本章では、睡眠不足と高血圧が長期間続いた場合に、どのような健康リスクが生じるのかを詳しく見ていきます。
睡眠不足 → 高血圧 → 血管への負担増加 → 動脈硬化 → 心筋梗塞・脳卒中のリスク増加
血管に負担がかかり続けて傷みやすくなる
血圧が高い状態が続くと、血管の壁に常に強い圧力がかかります。
この状態が長く続くと、血管壁が傷つきやすくなり、動脈硬化が進行する可能性が高まります。
動脈硬化とは、血管の壁が硬く厚くなり、弾力性を失った状態です。
この状態になると、血液がスムーズに流れにくくなり、さらに血圧が上昇するという悪循環に陥ります。
研究によると、健康な成人が1週間程度の睡眠制限を受けると、血管の内皮機能(血管の柔軟性を保つ機能)が有意に低下することが報告されています。
睡眠制限群にランダム化された被験者は、FMDに有意な障害を示した(順応期8.6±4.6%に対し実験期5.2±3.4%、P =0.01)のに対し、対照群では変化は見られなかった(順応期5.0±3.0%に対し実験期6.73±2.9%、P =0.10)
引用:PubMed Central Experimental Sleep Restriction Causes Endothelial Dysfunction in Healthy Humans
血管内皮機能の低下は、心血管疾患のリスク増加と関連しており、睡眠不足による影響は決して小さくありません。
心筋梗塞や脳卒中につながる可能性がある
睡眠不足と高血圧の両方が存在すると、心筋梗塞や脳卒中といった重大な心血管疾患のリスクが高まる可能性があります。
アメリカの国立衛生研究所がまとめた報告書では、慢性的な睡眠不足や睡眠障害は、高血圧、糖尿病、肥満、うつ病、心臓発作、脳卒中のリスク増加と関連していることが指摘されています。
- 高血圧
- 糖尿病
- 肥満
- 動脈硬化
- 心筋梗塞
- 脳卒中
特に注目すべきは、睡眠不足が血圧を上昇させるだけでなく、血液中の炎症マーカーを増加させたり、血糖値のコントロールを悪化させたりする可能性があることです。
これらの要因が重なることで、動脈硬化がさらに進行し、血管が詰まったり破れたりするリスクが高まると考えられています。
アメリカのNHANES(国民健康栄養調査)のデータを分析した研究では、睡眠時間が短い人(7時間未満)では高血圧のリスクが1.2倍、睡眠に問題がある人では1.45倍高くなることが示されました。
血圧を下げるには7時間以上の睡眠が理想的
ここまで、睡眠不足が血圧に与える悪影響について説明してきました。
では、具体的にどうすれば睡眠を改善し、血圧を下げることができるのでしょうか。
良いニュースは、睡眠習慣は生活習慣の中でも比較的自分でコントロールしやすい要素だということです。
実際に、睡眠時間を増やすことで血圧が低下したという研究結果も複数報告されています。
重要なのは、単に「長く眠ればいい」というわけではないことです。
睡眠の「量」だけでなく「質」も大切ですし、毎日の睡眠のリズムを整えることも非常に重要です。
例えば、平日は5時間しか眠らずに週末に10時間寝るという生活は、体内時計を乱し、かえって血圧管理に悪影響を及ぼす可能性があります。
理想的なのは、毎日同じ時刻に就寝・起床し、、7時間以上の質の良い睡眠を確保することです。
アメリカ睡眠医学会(AASM)は成人に7時間以上の睡眠を推奨しており、全米睡眠財団(NSF)は7〜9時間を推奨しています。
また、睡眠の質を高めるためには、就寝前の過ごし方や日中の活動も影響します。
寝る直前までスマートフォンを見ていたり、お酒を飲んで眠ったりすると、眠りが浅くなって十分な休息が得られません。
逆に、朝起きたら太陽の光を浴びたり、日中に適度な運動をしたりすることで、夜の睡眠の質が向上します。
本章では、血圧改善につながる具体的な睡眠習慣について、科学的な根拠とともに詳しく解説していきます。
今日からすぐに実践できる方法もたくさんありますので、できることから始めてみましょう。
毎日同じ時刻に寝起きすることが大切
体内時計(サーカディアンリズム)を整えることは、良質な睡眠と血圧管理の両方にとって重要です。
毎日同じ時刻に就寝・起床することで、体内時計が安定し、睡眠の質が向上する可能性があります。
年齢別の推奨される睡眠時間(CDCの推奨)
| 年齢層 | 推奨睡眠時間 |
|---|---|
| 18〜60歳 | 7時間以上 |
| 61〜64歳 | 7〜8時間 |
| 65歳以上 | 7〜8時間 |
アメリカ睡眠医学会とアメリカ睡眠研究学会は、成人は1晩に7時間以上の睡眠をとることを推奨しています。
一方、日本の厚生労働省は成人6時間以上を目安としており、各国の基準は対象や目的により異なります。
平日と休日で極端に睡眠時間が異なる「寝だめ」のパターンは、体内リズムを乱す原因になると指摘されています。
実際に、少規模な介入研究(参加者22名)では、習慣的に7時間以下しか眠っていない高血圧前症または高血圧の人が、睡眠時間を約35分増やしたところ、6週間後に収縮期血圧が14mmHg、拡張期血圧が8mmHg低下したという報告があります。
ただし、この数値は予備的研究に基づくため、より大規模な研究での検証が必要です。
寝る前のスマホやお酒は睡眠の質を下げる
就寝前の習慣は、睡眠の質に大きく影響します。
特に以下のような行動は避けることが望ましいとされています。
就寝前に避けるべき4つの習慣
| 避けるべき習慣 | 理由 | 推奨される対策 |
|---|---|---|
| スマートフォン・パソコンの使用 | ブルーライトがメラトニン分泌を抑制 | 就寝2〜3時間前から使用を控える |
| アルコールの摂取 | 睡眠後半の質を低下させる | 就寝3時間前までに済ませる |
| カフェインの摂取 | 覚醒作用が持続する | 就寝4〜6時間前までに済ませる |
| 重い食事 | 消化活動で睡眠の質が低下 | 就寝2〜3時間前までに済ませる |
スマートフォンやパソコンの使用
スマートフォンやパソコンの画面から発せられるブルーライトは、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制する可能性があります。
就寝の2〜3時間前からは、できるだけ画面を見る時間を減らすことが推奨されています。
アルコールの摂取
アルコールは一時的に眠気を誘いますが、睡眠の後半で睡眠の質を低下させる可能性があります。
深い睡眠が減少し、夜中に目が覚めやすくなるため、結果として十分な休息が得られません。
カフェインの摂取
コーヒーや緑茶に含まれるカフェインは、覚醒作用があり、就寝の4〜6時間前までには摂取を控えることが望ましいとされています。
重い食事
就寝直前の重い食事は、消化活動により睡眠の質を低下させる可能性があります。
夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませることが理想的です。
朝日を浴びて軽い運動をすると眠りやすくなる
良質な睡眠を得るためには、日中の過ごし方も重要です。
- 朝の光を浴びる:起床後すぐにカーテンを開けて太陽光を浴びる
- 適度な運動:日中に30分程度の運動を行う(就寝3〜4時間前までに)
- 昼寝:必要なら20〜30分程度の短時間に留める
- 夕方以降の刺激を避ける:カフェイン、激しい運動を控える
朝の光を浴びる
朝起きたらすぐにカーテンを開けて太陽光を浴びることで、体内時計がリセットされます。
これにより、夜になると自然に眠気が訪れやすくなります。
朝の散歩やランチタイムの外出も効果的です。
適度な運動
日中の適度な身体活動は、夜の睡眠の質を高める可能性があります。
ただし、就寝直前の激しい運動は交感神経を刺激して眠りにくくなることがあるため、就寝の3〜4時間前までに終えることが推奨されています。
睡眠環境の整備
寝室は暗く、静かで、適切な温度(一般的に16〜19度程度)に保つことが良質な睡眠に役立ちます。
夏場は冷房、冬場は暖房を適切に使用し、快適な睡眠環境を整えましょう。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、体内リズムを整えるために、毎朝同じ時刻に太陽の光を浴びること、朝食をしっかり食べること、夜に強い光を浴びないことなどが推奨されています。
睡眠中のいびきや息苦しさがあれば受診を
ここまで、睡眠時間を確保することの重要性や、睡眠の質を高める方法について説明してきました。
しかし、中には「毎日7〜8時間ベッドに入っているのに、朝起きても疲れが取れない」「日中どうしても眠くなってしまう」という方もいるでしょう。
このような場合、単なる睡眠不足ではなく、睡眠の質に深刻な問題がある可能性があります。
特に注意が必要なのは、睡眠時無呼吸症候群という病気です。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まってしまう病気で、日本でも多くの人が気づかないうちに罹患しています。
寝ている本人は意識していないことが多いのですが、家族から「いびきがうるさい」「寝ている間に息が止まっている」と指摘されて初めて気づくケースが少なくありません。
この病気では、呼吸が止まるたびに体が酸欠状態になり、脳が目を覚まそうとするため、深い睡眠が得られません。
また、酸素不足を補おうとして交感神経が活発になり、血圧が上昇してしまいます。
睡眠時無呼吸症候群は高血圧と密接に関連しており、高血圧患者の3〜4割がこの病気を合併しているとも言われています。
逆に言えば、適切な治療を受けることで血圧が改善する可能性があるということです。
また、睡眠時無呼吸症候群以外にも、不眠症や他の睡眠障害が血圧に影響している場合もあります。
本章では、医療機関を受診すべき症状や、受診のタイミングについて詳しく解説します。
「睡眠を十分とっているつもりなのに血圧が高い」という方は、ぜひ参考にしてください。
睡眠時無呼吸症候群は高血圧の原因になる
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に止まる病気です。
この状態では、睡眠中に何度も目が覚めるため、深い睡眠が得られません。
また、呼吸が止まることで血液中の酸素濃度が低下し、これを補うために交感神経が活性化され、血圧が上昇する可能性があります。
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、睡眠時無呼吸症候群では酸素濃度が下がるため心臓の働きが強まり、高血圧となることが指摘されています。
さらに、酸素濃度の低下により動脈硬化も進行し、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなる可能性があります。
睡眠中の症状:
- 大きないびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘される
- 何度も目が覚める
起床時の症状:
- 朝起きたときに頭痛がする
- 口が渇いている
- 熟睡感がない
日中の症状:
- 日中に強い眠気がある
- 集中力が低下している
- 疲労感が続く
これらの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるため、医療機関での検査をお勧めします。
血圧が140/90mmHg以上なら早めに相談を
家庭で測定した血圧が135/85mmHg以上、または診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上の場合は、高血圧と診断される可能性があります。
睡眠不足があり、かつこれらの血圧値を超えている場合は、早めに医療機関を受診することが望ましいでしょう。
高血圧の診断基準
| 測定場所 | 収縮期血圧(上) | 拡張期血圧(下) |
|---|---|---|
| 診察室 | 140mmHg以上 | 90mmHg以上 |
| 家庭 | 135mmHg以上 | 85mmHg以上 |
日本高血圧学会の診断基準では、診察室での収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧としています。
家庭血圧の場合は、これよりも低い基準(135/85mmHg以上)が用いられます。
- 睡眠時間は確保しているが、日中の眠気が強い
- いびきや睡眠中の無呼吸を指摘されている
- 血圧が高い状態が続いている
- 高血圧の治療を受けているが、なかなか改善しない
- 胸の痛みや動悸、息切れなどの症状がある
医師は、睡眠の状態や血圧の測定結果、その他の健康状態を総合的に評価し、必要に応じて睡眠検査や詳しい血圧測定(24時間血圧測定など)を提案する可能性があります。
よくある質問
- 週末に寝だめをすれば、平日の睡眠不足は解消できますか
-
週末の寝だめは一時的な疲労回復には役立ちますが、平日の慢性的な睡眠不足による健康への影響を完全に解消することは難しいと考えられています。
むしろ、平日と休日の睡眠時間の差が大きいと体内リズムが乱れ、かえって睡眠の質が低下する可能性があります。
毎日規則正しい睡眠時間を確保することが理想的です。
- 睡眠時間が長すぎても血圧に悪影響がありますか
-
研究によって結果が混在しており、最新のコホート研究では9時間を超える睡眠と高血圧発症の明確な関連は認められていません。
長時間睡眠が必要な場合は基礎疾患が影響している可能性があるため、疲れが取れない場合は個々の背景を含めて医療機関で評価を受けることをお勧めします。
- 昼寝は血圧に良い影響がありますか
-
短時間(20〜30分程度)の昼寝は疲労回復に役立つ可能性があります。
一方、頻回または長時間(30分超)の昼寝は高血圧や脳卒中のリスク上昇と関連する研究もあります。
夕方以降の昼寝は夜間の睡眠の質を低下させる可能性があるため、実施する場合は短時間・午後早めに留めましょう。
- 不眠症の薬は血圧に影響しますか
-
睡眠薬の種類によっては血圧に影響を与える可能性がありますが、適切に使用すれば睡眠の質が改善され、結果として血圧管理に役立つことがあります。
睡眠薬の使用を検討する場合は、必ず医師に相談し、高血圧があることを伝えてください。
- 高血圧の薬を飲んでいますが、睡眠不足だと薬の効果は落ちますか
-
睡眠不足は交感神経の活性化や夜間の血圧低下不足を引き起こすため、降圧薬を服用していても血圧のコントロールが難しくなる可能性があります。
特に睡眠時無呼吸症候群など睡眠障害がある場合は、その治療により血圧が2〜3mmHg改善することが報告されています。
薬物療法と並行して、十分な睡眠時間を確保することが重要です。
- 血圧を下げるために、今日からできることは何ですか
-
まずは毎日同じ時刻に就寝・起床することから始めましょう。
就寝2〜3時間前からはスマートフォンやパソコンの使用を控え、寝室を暗く静かに保つことも効果的です。
また、朝起きたら太陽の光を浴び、日中に適度な運動を取り入れることで、夜の睡眠の質が向上する可能性があります。
まとめ
睡眠不足は高血圧のリスクを高める可能性のある重要な要因です。
睡眠時間が6時間未満の状態が続くと、交感神経の活性化やストレスホルモンの増加、夜間の血圧低下不足などにより、血圧が上昇しやすくなります。
血圧を適切にコントロールするためには、毎日7〜8時間の睡眠を確保することが理想的です。
規則正しい生活リズム、就寝前のスマートフォンやアルコールの控え、朝の太陽光を浴びることなど、日常生活の中で実践できる睡眠改善策があります。
もし睡眠中のいびきや息苦しさがある場合、あるいは十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず血圧が高い状態が続く場合は、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が隠れている可能性があります。
血圧が140/90mmHg以上の方や、睡眠に関する気になる症状がある方は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
良質な睡眠は、血圧管理だけでなく、心臓や血管の健康、さらには生活の質全般を向上させる可能性があります。
まずはできることから始めて、健康的な睡眠習慣を身につけていきましょう。
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