健康診断で血圧が高いと指摘されたとき、多くの方は「生活習慣が原因だろう」と考えます。
しかし実は、高血圧の約10%は特定の病気が原因で起こる「二次性高血圧」である可能性があります。
- 特定の病気や薬剤が原因で血圧が上昇する高血圧
- 腎臓病やホルモン異常など多様な原因で発症する
- 若年発症や急激な血圧上昇の場合に特に疑われやすい
- 原因治療により血圧改善や薬剤減量が期待できる
- 放置すると心臓や脳など臓器障害のリスクが増す
二次性高血圧は、原因となる病気を見つけて治療することで、血圧が改善したり、場合によっては完全に治る可能性がある高血圧です。
特に若い年齢で高血圧と診断された方、複数の降圧薬を使用しても血圧がうまく下がらない方、急に血圧が上がってきた方は、二次性高血圧の可能性を考える必要があります。
この記事では、二次性高血圧の基本的な知識から、原因、症状、治療法まで、専門知識がない方にもわかりやすく解説します。
- 二次性高血圧と通常の高血圧の違い
- 二次性高血圧の主な原因疾患
- 見逃してはいけない症状やサイン
- 検査方法と治療の選択肢
- 二次性高血圧が疑われた時に取るべき行動
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
二次性高血圧とは?普通の高血圧と何が違うの?
二次性高血圧は、特定の病気や薬剤が原因で血圧が上昇する状態を指します。
これに対して、はっきりとした原因が特定できない高血圧を「本態性高血圧」と呼び、日本の高血圧患者の約90%を占めています。
本態性高血圧は遺伝的要因や生活習慣(塩分の取りすぎ、肥満、運動不足など)が複雑に絡み合って起こると考えられています。
一方、二次性高血圧は原因となる疾患や薬剤がはっきりしているため、その原因に対する適切な治療を行うことで、血圧が正常化する可能性があります。
二次性高血圧ってどんな病気?
二次性高血圧は、腎臓の病気、ホルモンの異常、血管の問題、薬の副作用など、明確な原因によって引き起こされる高血圧です。
原因疾患を治療することで血圧のコントロールが改善される、あるいは降圧薬が不要になることもあるため、早期発見が重要となります。
近年の研究では、二次性高血圧は従来考えられていたよりも頻度が高いことがわかってきました。
説得力のある証拠が蓄積されるにつれ、徹底的に調査すると、二次性高血圧が非常に多く存在することを示しています。
引用:American Heart Association Journals Clinical Management of Primary Aldosteronism: An Update
特に治療抵抗性高血圧(3種類以上の降圧薬を使用しても血圧のコントロールが困難な状態)の患者さんでは、二次性高血圧の割合がさらに高くなる可能性が報告されています。
なお、治療抵抗性高血圧の定義における血圧基準は、日本の高血圧治療ガイドライン(JSH2019)では140/90 mmHg、米国のガイドライン(ACC/AHA)では130/80 mmHgとされており、地域により異なります。
普通の高血圧との違いと見分け方
二次性高血圧と本態性高血圧を見分けるポイントはいくつかあります。
- 30歳未満での高血圧発症
- 急激な血圧上昇
- 重度の高血圧(180/120 mmHg以上)
- 複数の降圧薬を使用しても血圧がコントロールできない状態
また、血液検査でカリウム値が低い、腎機能の異常がある、いびきや日中の眠気が強いなどの症状がある場合も、二次性高血圧の可能性を考慮する必要があります。
ただし、これらの特徴がなくても二次性高血圧である可能性は否定できないため、医師による総合的な評価が重要です。
どれくらいの人が二次性高血圧なの?
全体として、高血圧患者さんの約5~10%が二次性高血圧と考えられています。
しかし、患者さんの年齢や高血圧の重症度によって、その割合は大きく変わります。
患者層別の二次性高血圧の割合
| 患者層 | 二次性高血圧の割合 |
|---|---|
| 全体の高血圧患者 | 約5~10% |
| 若年者(30歳未満) | より高い割合 |
| 治療抵抗性高血圧患者 | 10~30%程度 |
若年者(30歳未満)で高血圧を発症した場合、二次性高血圧の可能性がより高くなります。
また、治療抵抗性高血圧の患者さんでは、二次性高血圧の割合がさらに増加し、10~20%程度、研究によっては最大30%程度に達するという報告もあります。
大規模臨床試験のデータは、治療抵抗性高血圧の有病率が比較的高いこと(20 ~35 %)を示唆している。
引用:Wiley Online Library Common Secondary Causes of Resistant Hypertension and Rational for Treatment
このため、高血圧の治療がうまくいかない場合は、二次性高血圧の可能性を積極的に調べることが推奨されています。
二次性高血圧の原因は?何が血圧を上げているのか
二次性高血圧の原因は多岐にわたりますが、主なものは腎臓の病気、ホルモンの異常、血管の問題、薬剤や生活習慣に分類できます。
原因によって治療方法が異なるため、正確な診断が重要です。
最も多いのは腎臓の病気
腎臓に関連した病気は、二次性高血圧の中で最も頻度が高い原因です。
主なものとして「腎実質性高血圧」と「腎血管性高血圧」があります。
腎実質性高血圧は、腎臓そのものの病気によって引き起こされます。
慢性腎臓病、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎などが代表的です。
腎臓の機能が低下すると、体内の塩分や水分の排出がうまくできなくなり、血液量が増えることで血圧が上昇します。
腎血管性高血圧は、腎臓に血液を送る腎動脈が狭くなることで起こります。
腎動脈が狭くなると、腎臓への血流が減少し、腎臓が「血圧を上げて血流を確保しよう」と反応することで、全身の血圧が上昇します。
腎血管性高血圧については、腎動脈狭窄に伴うレニン・アンジオテンシン(RA)系の亢進が血圧上昇に寄与する。
引用:Nature Chapter 13. Secondary hypertension
腎血管性高血圧の原因としては、動脈硬化によるものが最も多く、特に高齢者でよく見られます。
若い女性では、線維筋性異形成という血管の病気が原因となることもあります。
ホルモンのバランスが崩れて起こる高血圧
ホルモンの異常によって引き起こされる二次性高血圧も重要です。
最も頻度が高いのは「原発性アルドステロン症」です。
原発性アルドステロン症は、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌される病気です。
アルドステロンは体内に塩分と水分を溜め込む働きがあるため、これが過剰になると血圧が上昇します。
原発性アルドステロン症は、以前は稀な病気と考えられていましたが、近年の研究では二次性高血圧の中で最も多い原因の一つであることがわかってきました。
特に治療抵抗性高血圧の患者さんでは、10~20%程度が原発性アルドステロン症である可能性が報告されています。
治療抵抗性高血圧の患者コホートでは、原発性アルドステロン症の有病率は10%から20%と報告されており15,16 、軽症から中等症の高血圧患者(例えば、プライマリケアで典型的に見られる)のより限定された集団では、有病率は1%から6%と報告されています17。
引用:PubMed Central Primary aldosteronism: a common cause of resistant hypertension
その他のホルモン異常としては、以下のような症状があります。
- 褐色細胞腫: 副腎からカテコールアミンというホルモンが過剰に分泌される
- クッシング症候群: コルチゾールというホルモンの過剰
- 甲状腺機能亢進症または低下症: 甲状腺ホルモンの異常
これらは比較的稀ですが、特徴的な症状を伴うことが多いため、注意深い観察が重要です。
血管に問題があって起こる高血圧
血管の構造的な異常も二次性高血圧の原因となります。
大動脈縮窄症は、大動脈の一部が生まれつき狭くなっている病気で、主に小児や若年者で見られます。
狭窄部より上流の上半身の血圧が上昇する一方、下半身の血圧は低くなるという特徴があります。
また、腎血管性高血圧でも触れた腎動脈狭窄は、血管の問題による高血圧の代表例です。
動脈硬化以外にも、大動脈炎症候群(高安動脈炎)という血管の炎症性疾患が原因となることもあります。
薬や生活習慣が原因になることも
薬剤誘発性高血圧は、特定の薬剤や物質が原因で血圧が上昇する状態です。
日常的に使用される薬剤の中にも、血圧を上げる可能性があるものがあります。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:痛み止めや解熱剤)
- 経口避妊薬
- ステロイド薬
- 一部の抗うつ薬
- ADHD治療薬
- 漢方薬に含まれる甘草の成分
- 市販のかぜ薬に含まれる一部の成分
睡眠時無呼吸症候群も、二次性高血圧の重要な原因として注目されています。
睡眠中に呼吸が止まることで体が低酸素状態になり、交感神経が過剰に働くことで血圧が上昇します。
特に治療抵抗性高血圧の患者さんでは、睡眠時無呼吸症候群の合併率が非常に高いことが報告されています。
過度の飲酒も血圧を上昇させる要因となります。
アルコールを多量に摂取する習慣がある方では、それが二次性高血圧の原因となっている可能性があります。
二次性高血圧のサインは?どんな症状に気をつけるべき?
二次性高血圧の症状は、原因疾患によって異なりますが、いくつかの共通する特徴や注意すべきサインがあります。
早期発見のためには、これらのサインを見逃さないことが重要です。
よくある高血圧の症状
多くの場合、二次性高血圧も本態性高血圧と同様に、初期には明らかな症状がないことがあります。
しかし、血圧が高い状態が続くと、頭痛、めまい、動悸、息切れ、疲労感などの症状が現れることがあります。
特に、血圧が非常に高くなった場合(180/120 mmHg以上)には、激しい頭痛、視力障害、胸痛、呼吸困難、意識障害などの重篤な症状が出る可能性があります。
これらは高血圧緊急症と呼ばれ、標的臓器障害の兆候を伴う場合はすぐに医療機関を受診する必要があります。
原因によって現れる独特な症状
二次性高血圧では、原因疾患に特有の症状が現れることがあり、これが診断の手がかりとなります。
原因疾患別の特徴的な症状
| 原因疾患 | 特徴的な症状 |
|---|---|
| 原発性アルドステロン症 | 筋力低下、脱力感、手足のしびれ、頻尿、多尿 |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 大きないびき、睡眠中の呼吸停止、日中の強い眠気、朝の頭痛や口渇 |
| 褐色細胞腫 | 発作的な激しい頭痛、動悸、発汗、顔面蒼白 |
| クッシング症候群 | 中心性肥満、満月様顔貌、皮膚の赤紫色の線状痕、筋力低下 |
| 腎血管性高血圧 | 片側の腎臓が小さくなる、腎機能の急激な悪化 |
原発性アルドステロン症では、低カリウム血症(血液中のカリウムが少なくなる)による筋力低下、脱力感、手足のしびれ、頻尿、多尿などの症状が見られることがあります。
ただし、カリウム値が正常範囲内であっても原発性アルドステロン症を否定できないことに注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群では、大きないびき、睡眠中の呼吸停止を家族に指摘される、日中の強い眠気、朝起きた時の頭痛や口渇、集中力の低下などが特徴的です。
褐色細胞腫では、発作的な激しい頭痛、動悸、発汗、顔面蒼白などが起こります。
これらの症状は突然現れ、数分から数時間続いた後に自然に治まることがあります。
クッシング症候群では、中心性肥満(お腹周りに脂肪がつく)、満月様顔貌(顔が丸くなる)、皮膚に赤紫色の線状痕ができる、筋力低下、骨粗鬆症などが見られます。
腎血管性高血圧では、片側の腎臓が小さくなる、腎機能の急激な悪化、特にACE阻害薬やARBという種類の降圧薬を開始した後の腎機能悪化などが特徴です。
すぐに病院に行くべき危険なサイン
以下のような症状や状況がある場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
- 血圧が180/120 mmHg以上あり、激しい頭痛、胸痛、息切れ、意識障害、けいれん、視力障害などを伴う
- 突然の激しい頭痛や胸痛
- 呼吸困難や顔面・手足のむくみが急速に悪化する
- 30歳未満で高血圧と診断された
- それまで血圧が正常だったのに、急に高血圧になった
- 3種類以上の降圧薬を使用しても血圧が140/90 mmHg未満にならない
- 血液検査でカリウム値が低い(3.5 mEq/L未満)
- 腎機能が急速に悪化している
これらのサインがある場合は、二次性高血圧の可能性を考慮し、専門的な検査を受けることが推奨されます。
二次性高血圧は治るの?治療方法について
二次性高血圧の治療の最大の特徴は、原因となっている病気を治療することで、高血圧そのものが改善したり、場合によっては完全に治る可能性があることです。
原因となっている病気を治すことが大切
二次性高血圧の治療では、まず原因疾患を特定し、その疾患に対する適切な治療を行うことが最優先となります。
原因疾患の治療方法は、その病気によって大きく異なります。
原因疾患別の主な治療法
| 原因疾患 | 治療方法 |
|---|---|
| 原発性アルドステロン症(片側) | 手術による副腎摘出 |
| 原発性アルドステロン症(両側) | ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 |
| 腎血管性高血圧(線維筋性異形成) | 経皮的腎動脈形成術 |
| 腎血管性高血圧(動脈硬化) | 薬物治療(一部で血管内治療) |
| 睡眠時無呼吸症候群 | CPAP療法 |
| 薬剤誘発性高血圧 | 原因薬剤の中止・変更 |
原発性アルドステロン症の治療
原発性アルドステロン症の場合、片側の副腎にアルドステロンを分泌する腫瘍がある場合は、手術による副腎摘出が検討されます。
手術が成功すれば、多くの患者さんで血圧が改善し、降圧薬の減量や中止が可能になることがあります。
両側の副腎に異常がある場合や手術が適さない場合は、スピロノラクトンなどのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬による薬物治療が行われます。
なお、治療方針の決定には副腎静脈サンプリング(AVS)による左右判定が重要となります。
腎血管性高血圧の治療
腎血管性高血圧では、線維筋性異形成が原因の場合、経皮的腎動脈形成術(バルーンで血管を広げる治療)が効果的であることが多く、特に若年者では高い治癒率が期待できます。
動脈硬化が原因の場合は、薬物治療が基本となりますが、一部の患者さんでは血管内治療やバイパス手術が検討されることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群では、持続陽圧呼吸療法(CPAP)という装置を使用した治療が効果的です。
CPAPによって睡眠中の呼吸が改善されると、平均2~5 mmHg程度の診察室血圧低下が期待でき、特に治療抵抗性高血圧では効果がやや大きい傾向があります。
ベースラインで血圧がコントロールされていないOSA患者が、血圧低下の点でCPAP療法から最も大きな恩恵を受けることを示した。
引用:PubMed Effect of CPAP therapy on blood pressure in patients with obstructive sleep apnoea: a worldwide individual patient data meta-analysis
薬剤誘発性高血圧の治療
薬剤誘発性高血圧では、原因となっている薬剤の中止や変更によって血圧が改善する可能性があります。
ただし、自己判断で薬を中止することは危険ですので、必ず医師に相談することが大切です。
血圧を下げる薬での治療
原因疾患の治療と並行して、あるいは原因疾患の治療が困難な場合には、降圧薬による血圧管理が行われます。
二次性高血圧でも、本態性高血圧と同様に、適切な目標血圧にコントロールすることが重要です。
日本高血圧学会の目標血圧(JSH2019)
| 年齢 | 目標血圧 |
|---|---|
| 75歳未満の成人 | 130/80 mmHg未満 |
| 75歳以上の高齢者 | 140/90 mmHg未満 |
日本高血圧学会の治療ガイドライン(JSH2019)では、75歳未満の成人は130/80 mmHg未満、75歳以上の高齢者は140/90 mmHg未満を目標としています。
高齢者では段階的に目標を達成していくアプローチが推奨されており、患者さんの年齢、併存疾患、耐容性などにより目標値は個別に調整されます。
二次性高血圧の原因によって、効果的な降圧薬の種類が異なることがあります。
例えば、腎血管性高血圧では、ACE阻害薬やARBが効果的ですが、両側の腎動脈狭窄や片腎の場合には注意が必要です。
原発性アルドステロン症では、スピロノラクトンやエプレレノンなどのミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が特に有効です。
多くの場合、複数の種類の降圧薬を組み合わせて使用することで、より効果的に血圧をコントロールすることができます。
治療を続けるとどうなる?治る可能性は?
二次性高血圧の予後(治療後の経過)は、原因疾患の種類や治療のタイミング、患者さんの年齢や高血圧の持続期間などによって大きく異なります。
- 若年者で高血圧の持続期間が短い
- 原因疾患に対する根治的治療が可能
- 線維筋性異形成による腎血管性高血圧→血管形成術
- 片側の副腎腫瘍による原発性アルドステロン症→副腎摘出術
原因疾患に対する根治的な治療が可能な場合、特に若年者で、高血圧の持続期間が短く、原因疾患に対する根治的治療が可能な場合には、血圧が完全に正常化し、降圧薬が不要になる可能性があります。
例えば、線維筋性異形成による腎血管性高血圧に対する血管形成術や、片側の副腎腫瘍による原発性アルドステロン症に対する副腎摘出術などでは、比較的高い治癒率が報告されています。
ただし、高血圧が長期間続いていた場合や、高齢者の場合には、原因疾患の治療が成功しても血圧が完全には正常化しないことがあります。
これは、長期間の高血圧によって血管や心臓に不可逆的な変化が生じているためと考えられています。
このような場合でも、原因疾患の治療によって血圧がある程度改善し、必要な降圧薬の種類や量を減らすことができる可能性があります。
原因疾患の根治的治療が困難な場合でも、適切な薬物治療によって血圧をコントロールし、心血管疾患や腎臓病などの合併症を予防することが可能です。
二次性高血圧かもしれないと思ったら
二次性高血圧が疑われる場合、適切なタイミングで医療機関を受診し、必要な検査を受けることが重要です。
こんな場合は二次性高血圧の可能性が
二次性高血圧の可能性を考えるべき状況はいくつかあります。
以下のような特徴に当てはまる場合は、医師に相談し、二次性高血圧のスクリーニングを検討することが推奨されます。
- 30歳未満で高血圧と診断された
- 思春期前に高血圧が見つかった
まず年齢に関連するものとして、30歳未満で高血圧と診断された場合や、思春期前に高血圧が見つかった場合は、二次性高血圧の可能性が高くなります。
若年での高血圧発症は、本態性高血圧よりも二次性高血圧である可能性が相対的に高いため、注意深い評価が必要です。
血圧の状態に関しては、それまで血圧が正常だったのに急激に上昇した場合や、非常に高い血圧が認められる場合に注意が必要です。
特に以下のような状態は重要なサインとなります。
- 血圧が180/120 mmHg以上の重度高血圧
- 3種類以上の降圧薬を適切に使用しても血圧が140/90 mmHg未満にならない治療抵抗性高血圧
- 降圧薬による治療を開始した後、それまで効果があったのに急に効果が悪くなった場合
これらの状態は、何らかの原因疾患が隠れている可能性を示唆しています。
身体の状態や検査所見からも二次性高血圧が疑われることがあります。
血液検査でカリウム値が低い場合、特に利尿薬を使用していないにもかかわらず低カリウム血症が見られる場合は、原発性アルドステロン症の可能性を考える必要があります。
腎機能が急速に悪化している場合や、ACE阻害薬やARBを開始した後数週間でクレアチニン値が30%以上上昇した場合は、腎血管性高血圧の可能性があります。
また、特徴的な症状も重要な手がかりとなります。
- 大きないびきや睡眠中の呼吸停止、日中の強い眠気(睡眠時無呼吸症候群の可能性)
- 発作的な頭痛、動悸、発汗(褐色細胞腫の可能性)
- 中心性肥満や満月様顔貌などの特徴的な外見の変化(クッシング症候群の可能性)
その他、心不全や肺水腫を繰り返す場合、上肢と下肢で血圧に大きな差がある場合、若年者で脳卒中や心筋梗塞を起こした場合なども、二次性高血圧の可能性を考慮すべき状況です。
これらの特徴に一つでも当てはまる場合は、医師に相談することをお勧めします。
どんな検査を受けるの?
二次性高血圧が疑われる場合、段階的に検査が進められます。
まず初期のスクリーニング検査として、基本的な血液検査や尿検査が行われます。
初期のスクリーニング検査では以下のような項目が確認されます。
- 血液検査: 電解質(ナトリウム、カリウム)、腎機能(クレアチニン、尿素窒素)、血糖、脂質など
- 尿検査: 蛋白尿や血尿の有無、尿中のアルブミン排泄量
- 心電図: 心臓への影響を確認
- 胸部X線検査: 心臓の大きさや肺の状態を確認
これらの初期検査で異常が見つかった場合や、臨床所見から特定の疾患が疑われる場合には、より専門的な検査へと進みます。
原発性アルドステロン症の検査
原発性アルドステロン症が疑われる場合には、早朝の血中アルドステロン濃度とレニン活性を測定し、アルドステロン・レニン比を算出します。
なお、2025年の内分泌学会ガイドラインでは高血圧患者全般での広いスクリーニングが推奨されており、見逃し防止の観点からARR測定の適応が拡大しています。
この比が高い場合には、確定診断のための負荷試験が行われることがあります。
さらに副腎のCT検査やMRI検査で腫瘍の有無を確認し、治療方針を決定するために副腎静脈サンプリングという専門的な検査が必要になることもあります。
腎血管性高血圧の検査
腎血管性高血圧が疑われる場合には、まず腎動脈の超音波検査で血流の状態を確認します。
その後、CT血管造影またはMR血管造影で腎動脈の詳細な画像を得ることができます。
診断が確定しない場合や治療方針の決定のために、腎動脈造影検査という侵襲的な検査が行われることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、まず自宅で行える簡易睡眠検査が実施されます。
この検査で睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと判断された場合、入院して終夜睡眠ポリグラフ検査という精密検査を受けることがあります。
この検査では、睡眠中の脳波、呼吸状態、酸素飽和度など多くの項目を同時に測定し、睡眠時無呼吸症候群の重症度を正確に評価します。
褐色細胞腫の検査
褐色細胞腫が疑われる場合には、血中または尿中のカテコールアミンとその代謝産物を測定します。
これらの値が高い場合、副腎のCT検査やMRI検査で腫瘍の位置を特定します。
必要に応じて、MIBGシンチグラフィという特殊な画像検査が行われることもあります。
これらの検査は、患者さんの症状や初期検査の結果に基づいて、医師が必要と判断したものが選択されます。
すべての患者さんがすべての検査を受けるわけではなく、個々の状況に応じて適切な検査が計画されます。
いつ病院に行けばいい?
二次性高血圧が疑われる場合、できるだけ早期に医療機関を受診することが望ましいですが、状況によって緊急性は異なります。
緊急性が高く、すぐに受診が必要な状況としては、以下が挙げられます。
- 血圧が180/120 mmHg以上で、頭痛、胸痛、呼吸困難、意識障害などの症状を伴う
- 視力が急に低下した、または視野が欠ける
- 突然の激しい頭痛や胸痛
- 呼吸が苦しい、顔や足がひどくむくむ
- けいれんが起きた
これらは高血圧緊急症と呼ばれる状態で、すぐに治療を開始しないと脳卒中や心筋梗塞などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
このような場合は、すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶべき状況です。
早めの受診が推奨される状況としては、以下が挙げられます。
- 30歳未満で高血圧と診断された
- 複数の降圧薬を使用しても血圧がコントロールできない
- それまで正常だった血圧が急に上昇した
- 血液検査でカリウムが低いと指摘された
- 大きないびきや日中の強い眠気などがある
これらの状況では、数日以内に受診することが推奨されます。
早期に原因を特定し、適切な治療を開始することで、より良い治療効果が期待できます。
通常の受診でよい状況としては、以下が挙げられます。
- 現在の降圧薬治療で血圧はコントロールできているが、二次性高血圧の可能性を確認したい
- 家族に二次性高血圧の人がいて、自分も心配
これらの場合は、次回の定期受診時に医師に相談する程度で問題ありません。
受診する診療科については、まずはかかりつけの内科や循環器内科で構いません。
二次性高血圧が疑われた場合、必要に応じて専門医へ紹介されます。
専門医への紹介例
| 疑われる原因 | 紹介先の診療科 |
|---|---|
| 腎臓関連の二次性高血圧 | 腎臓内科 |
| ホルモン異常 | 内分泌内科 |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 呼吸器内科、睡眠医療専門医 |
例えば、腎臓に関連する二次性高血圧が疑われる場合は腎臓内科へ、ホルモン異常が疑われる場合は内分泌内科へ、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は呼吸器内科や睡眠医療の専門医へ紹介されることがあります。
医師が適切な専門医を判断してくれますので、まずは身近な医療機関を受診することが第一歩となります。
よくある質問(FAQ)
- 二次性高血圧は治りますか?
-
原因疾患によって異なりますが、適切な治療を行うことで血圧が改善したり、場合によっては完全に治る可能性があります。
特に若年者で、高血圧の持続期間が短く、原因疾患に対する根治的治療が可能な場合には、治癒率が高くなります。
ただし、長期間高血圧が続いていた場合は、完全には正常化しないこともありますが、それでも治療によって血圧のコントロールが改善することが期待できます。
- 若い人でも二次性高血圧になることはありますか?
-
はい、若い方でも二次性高血圧になることは十分にあります。
むしろ、30歳未満で高血圧と診断された場合は、二次性高血圧の可能性がより高くなると考えられています。
若年者では、腎血管性高血圧(特に線維筋性異形成による)、原発性アルドステロン症、大動脈縮窄症などが原因として多く見られます。
- 健康診断で高血圧を指摘されました。二次性高血圧かどうか調べるべきですか?
-
すべての高血圧患者さんが詳しい検査を受ける必要はありません。
まずは、二次性高血圧を疑うべき特徴(30歳未満での発症、重度の高血圧、治療抵抗性など)があるかどうかを医師と相談しましょう。
基本的な血液検査や尿検査で異常が見つかった場合や、上記のような特徴がある場合には、さらに詳しい検査を受けることが推奨されます。
- 二次性高血圧の検査は保険適用されますか?
-
はい、二次性高血圧が疑われる医学的な理由がある場合、必要な検査は基本的に健康保険の適用対象となります。
ただし、検査の種類によっては入院が必要になったり、費用が高額になったりすることもあります。
検査前に、担当医に検査の必要性や費用について確認しておくとよいでしょう。
- 降圧薬が効きにくい場合は二次性高血圧を疑うべきですか?
-
3種類以上の降圧薬(利尿薬を含む)を適切な用量で使用しても血圧が140/90 mmHg未満にならない場合は、治療抵抗性高血圧と呼ばれ、二次性高血圧の可能性が高くなります。
また、薬の飲み忘れがないかどうかも重要なポイントです。
降圧薬が効きにくいと感じた場合は、医師に相談し、二次性高血圧のスクリーニング検査を受けることを検討しましょう。
まとめ
二次性高血圧は、特定の病気や薬剤が原因で起こる高血圧であり、全高血圧患者さんの約10%を占めています。
近年、原発性アルドステロン症の見逃しが多く、実際の頻度はより高い可能性も指摘されています。
原因となる疾患を見つけて適切に治療することで、血圧が改善したり、場合によっては完全に治る可能性があるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
- 30歳未満での高血圧発症
- 急激な血圧上昇
- 重度の高血圧(180/120 mmHg以上)
- 治療抵抗性高血圧(3種類以上の降圧薬でコントロール困難)
- 低カリウム血症
- 大きないびきや日中の強い眠気
- 発作的な頭痛・動悸
特に、30歳未満での高血圧発症、急激な血圧上昇、重度の高血圧、治療抵抗性高血圧などの特徴がある場合は、二次性高血圧の可能性を積極的に考慮する必要があります。
また、原因疾患に特有の症状(低カリウム血症、大きないびき、発作的な頭痛・動悸など)がないかどうかも重要なチェックポイントです。
二次性高血圧が疑われる場合は、適切なタイミングで医療機関を受診し、必要な検査を受けることが大切です。
基本的な血液検査や尿検査から始まり、必要に応じてより専門的な検査へと進んでいきます。
原因疾患が特定された後は、その疾患に応じた治療が行われます。
手術による根治的治療が可能な場合もあれば、薬物治療が中心となる場合もあります。
いずれの場合も、定期的な経過観察と適切な血圧管理を継続することで、心血管疾患や腎臓病などの合併症を予防することができます。
高血圧と診断された方、特に若い方や治療がうまくいかない方は、二次性高血圧の可能性について医師と相談してみることをお勧めします。
早期発見と適切な治療によって、より良い健康状態を維持することができるでしょう。
National Center for Biotechnology Information Secondary Hypertension
American Academy of Family Physicians Secondary Hypertension: Discovering the Underlying Cause
American Heart Association Journals Clinical Management of Primary Aldosteronism: An Update
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
American Heart Association Journals 2025 AHA/ACC/AANP/AAPA/ABC/ACCP/ACPM/AGS/AMA/ASPC/NMA/PCNA/SGIM Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation and Management of High Blood Pressure in Adults
National Center for Biotechnology Information Hypokalemia
Wiley Online Library Common Secondary Causes of Resistant Hypertension and Rational for Treatment
Frontiers in Pharmacology Hypertension in chronic kidney disease: What lies behind the scene
Nature Chapter 13. Secondary hypertension
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Endocrine Society Diagnosis of Cushing’s Syndrome Guideline Resources
National Center for Biotechnology Information Coarctation of the Aorta
Multidisciplinary Digital Publishing Institute Effects of Licorice Functional Components Intakes on Blood Pressure: A Systematic Review with Meta-Analysis and NETWORK Toxicology
Lippincott Williams & Wilkins Hypertensive Emergencies: A Review
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Oxford Academic Pheochromocytoma and Paraganglioma: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline
National Center for Biotechnology Information Cushing’s Syndrome
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PubMed Central Diagnosis and management of primary aldosteronism
National Center for Biotechnology Information Efficacy of revascularization for renal artery stenosis caused by fibromuscular dysplasia: a systematic review and meta-analysis
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一般社団法人 日本動脈硬化学会「二次性高血圧の原因疾患と 示唆する所見、鑑別に必要な検査」
Kidney International KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Blood Pressure in Chronic Kidney Disease
Endocrine Society Primary Aldosteronism
American Heart Association Journals Revascularization for Renovascular Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association
American Academy of Sleep Medicine Clinical use of a home sleep apnea test
PubMed Central Pheochromocytoma and Paraganglioma: From Clinical Findings to Diagnosis
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子」
厚生労働省 国民健康保険の給付について


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