MENU

腎血管性高血圧とは?薬が効きにくい高血圧の原因と治療法

腎血管性高血圧とは?薬が効きにくい高血圧の原因と治療法

「血圧の薬を何種類も飲んでいるのに、なかなか数値が下がらない」
「今まで安定していたのに、急に血圧が高くなった」
「血圧の薬を飲み始めてから、腎臓の検査で引っかかるようになった」

こんな経験をお持ちの方は、もしかすると腎臓につながる血管に問題があるかもしれません。

腎血管性高血圧(じんけっかんせいこうけつあつ)は、腎臓に血液を届ける血管(腎動脈)が狭くなることで起こる高血圧です。

高血圧には「原因がはっきりしないタイプ」と「何かの病気が原因で起こるタイプ」の2種類があります。

高血圧の方の約90〜95%は原因がはっきりしないタイプですが、腎血管性高血圧は残りの5〜10%に含まれる「原因がわかるタイプ」のひとつです。

原因がわかるということは、その原因を治療すれば血圧が良くなる可能性があるということです。

腎血管性高血圧とは
  • 腎臓に血液を届ける血管(腎動脈)が狭くなることで起こる高血圧
  • 原因の約90%は動脈硬化、約10%は血管壁の異常(線維筋性異形成)
  • 薬が効きにくい治療抵抗性高血圧の10〜40%を占める
  • 原因を治療すれば血圧改善が期待でき、特に若い女性では治癒の可能性も高い
  • 3種類以上の降圧薬でも効果不十分、急激な血圧上昇などが疑うサイン

腎血管性高血圧は高血圧全体の1〜5%ほどを占めるといわれています。

しかし、重症・難治性の高血圧の方に限ると、その割合は10〜40%にもなるという報告があります。

つまり、薬が効きにくい高血圧の方の中には、この腎血管性高血圧が隠れている可能性が意外と高いのです。

腎臓につながる血管が狭くなる原因は大きく2つあります。

ひとつは血管の内側に脂肪のかたまり(プラーク)がたまる「動脈硬化」で、55歳以上の方に多くみられます。

もうひとつは血管の壁そのものに異常が起きる「線維筋性異形成(せんいきんせいいけいせい)」という病気で、こちらは若い女性に多いのが特徴です。

この記事では、腎血管性高血圧がどのような病気なのか、なぜ血圧が上がるのか、どんなときにこの病気を疑うべきか、どのような検査で診断するのか、そしてどんな治療法があるのかについて、専門的な内容をできるだけわかりやすくお伝えします。

この記事でわかること
  • 腎血管性高血圧とは何か、どうして血圧が上がるのか
  • 「もしかして腎血管性高血圧かも?」と疑うべきサイン
  • 診断のために行われる検査の種類と流れ
  • 薬による治療やカテーテル治療など、治療の選択肢
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

腎血管性高血圧とは?腎臓への血流が減ることで血圧が上がる病気

腎血管性高血圧は、腎臓に血液を届ける血管(腎動脈)が狭くなることで起こる高血圧です。

実は腎臓は、血圧を調節するうえでとても大切な役割を果たしています。

腎臓への血液の流れが悪くなると、腎臓は「血圧が足りない!」と勘違いして、血圧を上げるホルモンを出してしまいます。

その結果、体全体の血圧が上がってしまうのです。

この病気の大きな特徴は、「原因を治療すれば血圧が良くなる可能性がある」という点です。

一般的な高血圧は原因がはっきりしないことが多く、薬で血圧をコントロールし続ける必要があります。

しかし腎血管性高血圧は、狭くなった血管を広げる治療を行えば、薬を減らしたり、場合によっては薬なしで血圧が正常になったりすることもあります。

ただし、放っておくと腎臓の働きが少しずつ悪くなったり、心臓や脳に負担がかかったりするため、できるだけ早く見つけて適切な治療を受けることが大切です。

ここからは、この病気がどのような仕組みで起こるのか、そして血管が狭くなる原因について詳しく見ていきましょう。

腎臓に届く血液が減ると体が「血圧を上げろ」と指令を出す

腎臓には、血圧を感知するセンサーのような働きをする部分があります。

腎臓につながる血管が狭くなると、腎臓に届く血液の量が減ります。

すると、このセンサーが「血圧が低くなっている!」と感知して、「レニン」というホルモンを出します

レニンが血液中に出ると、連鎖反応のようにいくつかの物質が作られていきます。

最終的に「アンジオテンシンII」という物質ができあがりますが、これは血管をギュッと縮める強力な作用を持っています。

血管が縮むと、ホースを握りしめたときに水の勢いが強くなるのと同じように、血圧が上がります。

さらに、アンジオテンシンIIは「アルドステロン」という別のホルモンの分泌も促します。

アルドステロンは体の中に塩分と水分を溜め込むように働くため、体内の血液の量が増えて、これも血圧を上げる原因になります。

このように、腎臓への血流が減ることをきっかけに、血管が縮み、体内の水分量が増えるという「ダブルパンチ」で血圧が上がってしまうのが、腎血管性高血圧の仕組みです。

【血圧が上がる仕組み】

順序体の中で起こること結果
腎動脈が狭くなり、腎臓への血流が減少腎臓が「血圧が低い」と勘違い
腎臓から「レニン」というホルモンが分泌される血圧を上げる連鎖反応が始まる
「アンジオテンシンII」という物質ができる血管がギュッと縮む
「アルドステロン」というホルモンが分泌される体内に塩分・水分が溜まる
血管収縮+体液量増加血圧が上昇する

血管が狭くなる原因は主に「動脈硬化」と「血管壁の異常」の2つ

腎臓につながる血管が狭くなる原因は、大きく分けて2つあります。

動脈硬化による狭窄(約90%)

最も多い原因は動脈硬化です。

動脈硬化とは、血管の内側にコレステロールなどの脂肪のかたまり(プラーク)がたまって、血管が硬く狭くなる状態です。

水道管に汚れがこびりついて水の通り道が狭くなるイメージに近いかもしれません。

動脈硬化による腎血管性高血圧は、50歳以降の方に多くみられます

特に、糖尿病がある方、コレステロールや中性脂肪が高い方、タバコを吸う方、心臓や脳の血管に病気がある方はリスクが高いといわれています。

動脈硬化は少しずつ進行するため、放っておくと血管が完全に詰まってしまうこともあります。

線維筋性異形成(約10%)

もうひとつの原因は「線維筋性異形成(せんいきんせいいけいせい)」という病気です。

これは血管の壁を作っている組織が異常に増えてしまい、血管が狭くなる病気です。

動脈硬化とは違い、脂肪が溜まるわけではありません。

この病気は30〜50歳代の女性に多いのが特徴です。

血管を撮影すると、ビーズのネックレスのように血管が凸凹した形に見えることがあり、これが診断の手がかりになります。

なぜこの病気が起こるのかははっきりわかっていませんが、生まれつきの体質や遺伝が関係していると考えられています。

【2つの原因の比較】

項目動脈硬化線維筋性異形成
頻度約90%約10%
多い年齢55歳以上30〜50歳代
多い性別男性にやや多い女性に多い
原因血管内に脂肪が蓄積血管壁の組織が異常増殖
狭窄の場所腎動脈の根元付近腎動脈の中間〜末梢
画像の特徴血管の一部が狭くなるビーズ状(数珠状)に見える
リスク因子糖尿病、脂質異常症、喫煙など不明(遺伝的要因の可能性)
進行性進行しやすい比較的安定していることが多い

腎血管性高血圧を疑うべき5つのサイン

腎血管性高血圧には、一般的な高血圧とは少し違う特徴があります。

これらの特徴に気づくことが、病気を早く見つけるための第一歩になります。

高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれるほど、自覚症状がほとんどない病気です。

頭痛やめまいなどの症状が出ることもありますが、血圧が高いこと自体に気づかない方も少なくありません。

しかし腎血管性高血圧の場合は、「今まで効いていた薬が効かなくなった」「急に血圧が上がった」など、何かおかしいと感じるきっかけがあることが多いです。

以下の5つのサインに当てはまる方は、一度医師に相談することをおすすめします。

すべてに当てはまる必要はありません。

ひとつでも心当たりがあれば、検査を受けることで安心につながります。

腎血管性高血圧を疑うべき5つのサイン
  1. 薬を何種類使っても血圧が下がりにくい
  2. 今まで安定していた血圧が急に上がった
  3. 50歳以降に初めて高血圧と診断された(または30歳未満で高血圧)
  4. 血圧の薬を始めてから腎臓の数値が悪くなった
  5. お腹に聴診器を当てると血流の音(血管雑音)が聞こえる

薬を何種類使っても血圧が下がりにくい

利尿薬を含む3種類以上の降圧薬を十分な量飲んでも血圧が目標まで下がらない場合、または4剤以上必要な場合を「治療抵抗性高血圧」と呼びます。

このような状態のとき、腎血管性高血圧が隠れている可能性があります。

一般的な高血圧であれば、適切な薬を飲めば多くの場合は血圧がコントロールできます。

しかし腎血管性高血圧では、腎臓が常に「血圧を上げろ」というホルモンを出し続けているため、薬だけでは太刀打ちできないことがあるのです。

今まで安定していた血圧が急に上がった

これまでずっと血圧が安定していたのに、半年以内に急に血圧が高くなった場合は要注意です。

また、今まで効いていた血圧の薬が急に効かなくなったという場合も同様です。

特に、上の血圧(収縮期血圧)が180mmHgを超えるような重い高血圧が突然現れた場合は、できるだけ早く精密検査を受けることをおすすめします。

このような急な変化は、腎臓への血流に何か問題が起きているサインかもしれません。

50歳以降に初めて高血圧と診断された

30歳未満で高血圧が見つかった場合や、50歳を過ぎてから初めて高血圧と診断された場合は、腎血管性高血圧など二次性高血圧の可能性があります。

そのため、50歳を過ぎてから初めて「高血圧ですね」と言われた場合は、動脈硬化によって腎臓の血管が狭くなっていることが疑われます。

反対に、30歳より若い方で高血圧が見つかった場合は、線維筋性異形成という病気による腎血管性高血圧を考える必要があります。

若い方の高血圧は珍しいため、原因を調べることが大切です。

血圧の薬を始めてから腎臓の数値が悪くなった

ACE阻害薬やARBという種類の血圧の薬を飲み始めてから、血液検査で腎臓の数値(クレアチニン値)が30%以上悪くなった場合は、腎血管性高血圧を強く疑う手がかりになります。

これらの薬は普通の高血圧にはとても効果的なのですが、両方の腎臓につながる血管が狭くなっている場合や、片方の腎臓しか働いていない場合には、腎臓を守る仕組みを邪魔してしまうことがあります

その結果、腎臓の働きが急に悪くなることがあるのです。

お腹に聴診器を当てると血流の音が聞こえる

医師がお腹に聴診器を当てたとき、「シュー」という音が聞こえることがあります。

これは「血管雑音」と呼ばれるもので、狭くなった血管を血液が勢いよく流れるときに出る音です。

この音が聞こえれば腎血管性高血圧の可能性が高くなりますが、実際にこの音が聞こえる患者さんは半分以下といわれています。

67 人の患者は 1 本以上の腎動脈の狭窄または閉塞を有し、27 人 (40%) に血管雑音が聴取された。

引用:JAMA Network Abdominal Bruits: Clinical and Angiographic Correlation

つまり、音が聞こえなくても腎血管性高血圧ではないとは言い切れません。

他のサインと合わせて総合的に判断することが大切です。

以下に当てはまる項目があれば、かかりつけ医に相談することをおすすめします。

セルフチェックリスト
  • □ 3種類以上の降圧薬を飲んでいるが、血圧が140/90mmHg以上のまま
  • □ 半年以内に血圧が急に上がった、または薬が効かなくなった
  • □ 55歳以降に初めて高血圧と診断された
  • □ 30歳未満で高血圧と診断された
  • □ ACE阻害薬やARBを飲み始めてから腎臓の検査値が悪化した
  • □ 左右の腎臓の大きさが違うと言われたことがある

腎血管性高血圧の検査方法と診断までの流れ

「もしかして腎血管性高血圧かも?」と疑われた場合、いくつかの検査を組み合わせて診断を進めていきます。

残念ながら、たった1回の検査で確実に診断できる方法はありません。

そのため、体への負担が少ない検査から始めて、必要に応じてより詳しい検査に進んでいくのが一般的な流れです。

検査は大きく分けて2種類あります。

ひとつは超音波やCT、MRIなどを使った検査で、体を傷つけずに行えます。

もうひとつはカテーテル(細い管)を血管の中に入れて行う検査で、より正確な情報が得られますが、体への負担は大きくなります。

どの検査を行うかは、患者さんの状態や腎血管性高血圧である可能性の高さ、腎臓の働き具合などを考慮して決められます。

ここからは、それぞれの検査について詳しく見ていきましょう。

【検査の流れ】

腎血管性高血圧が疑われる
        ↓
  超音波検査(エコー)
   [体への負担:小]
        ↓
   異常が疑われる場合
        ↓
  CT検査 または MRI検査
   [体への負担:中]
        ↓
   治療が必要と判断された場合
        ↓
  カテーテル検査(確定診断+治療)
   [体への負担:大]

まずは超音波検査で腎臓の血流をチェックする

腎血管性高血圧が疑われたとき、最初に行われることが多いのが超音波検査(エコー検査)です。

妊婦健診でお腹の赤ちゃんを見るのと同じ原理の検査で、超音波を使って腎臓やその血管の状態を画像で確認します。

の検査の良いところは、放射線を使わないこと、造影剤(血管を見やすくする薬)を注射しなくて済むことです。

そのため、腎臓の働きが弱っている方にも安心して行えます。

また、繰り返し検査しても体への害がありません。

血管が狭くなっている部分では、血液が勢いよく流れるため、血流の速度が速くなります。

超音波検査ではこの血流の速さを測ることで、血管が狭くなっているかどうかを推測できます。

また、左右の腎臓の大きさに1.5cm以上の差がある場合も、腎血管性高血圧を疑う手がかりになります。

ただし、この検査は検査を行う技師の腕前に左右される面があります。

また、お腹に脂肪が多い方や、腸にガスが溜まっている場合は、うまく画像が撮れないことがあります。

CTやMRIで血管の狭まり具合を詳しく確認する

超音波検査で「怪しい」と判断された場合や、より詳しく調べる必要がある場合は、CTやMRIを使った検査が行われます。

CT検査(CT血管造影)

造影剤という薬を点滴しながらCT撮影を行い、腎臓につながる血管の立体的な画像を作ります。

血管がどこでどのくらい狭くなっているかを、かなり正確に把握できます。

研究によると、この検査で腎動脈の狭窄を見つける感度は90%前後と非常に高いことがわかっています。

ただし、造影剤を使うため、もともと腎臓の働きが弱っている方には腎臓に負担がかかる可能性があります。

そのような場合は、医師と相談して検査の方法を決めることになります。

MRI検査(MR血管造影)

MRIを使って腎臓の血管を撮影する検査です。

CTと違って放射線を使わないのが特徴です。

また、造影剤を使わなくても血管を撮影できる方法があります。

造影剤を使う場合でも、腎臓の働きがある程度保たれている方には行えますが、重度の腎障害がある場合は慎重に判断されます。

診断の精度はCTとほぼ同じくらい高く、90%前後の確率で血管の狭窄を見つけられるとされています。

ただし、検査時間が長く、狭い筒の中に入る必要があるため、閉所恐怖症の方には向かない場合があります。

【各検査の比較】

検査診断精度放射線造影剤腎機能低下時特徴
超音波検査中程度なし不要○安全最初に行うスクリーニング検査
CT検査90%前後あり必要△注意必要立体画像で全体像を把握できる
MRI検査90%前後なし不要も可○比較的安全放射線なし、閉所恐怖症に注意
カテーテル検査最も高いあり必要△注意必要確定診断+そのまま治療可能

最終的にはカテーテル検査で確定診断を行う

カテーテル検査は、腎動脈の狭窄を診断するうえで最も信頼性の高い検査とされています。

太ももの付け根や手首の血管から、カテーテルという細い管を入れ、腎臓の血管まで進めて造影剤を流しながら撮影します。

この検査では、血管がどこでどのくらい狭くなっているかを最も正確に見ることができます。

さらに、狭くなっている部分の前後で血圧を測ることで、その狭さが本当に問題を起こしているレベルかどうかも判断できます。

一般的に、上の血圧で20mmHg以上の差があることなどを目安に、治療が必要な狭さと判断されます。

RAS境界域の症例では、動脈内圧を測定し、収縮期圧較差ピークが10%以上、または絶対圧較差が20mmHgであれば、血行動態的に有意な狭窄の兆候とみなされます。

引用:PubMed Central Arterial Interventions for Renovascular Hypertension

この検査の大きなメリットは、検査と同時に治療ができることです。

もし治療が必要な狭窄が見つかれば、そのままバルーン(風船)で血管を広げる治療に移ることができます。

ただし、血管の中に管を入れる検査なので、まれに血管を傷つけたり、血の塊ができたりする合併症が起こる可能性があります。

そのため、この検査を行うかどうかは、本当に必要かどうかを十分に検討したうえで決められます。

腎血管性高血圧の治療法と改善の見込み

腎血管性高血圧の治療の目標は、血圧を適切な範囲にコントロールし、心臓・脳・腎臓などへの悪影響を防ぐことです。

治療法には大きく分けて「薬による治療」と「血管を広げる治療(カテーテル治療や手術)」があり、患者さんの状態や原因によって最適な方法が選ばれます。

以前は「血管が狭くなっているなら広げればいい」という考え方が主流でした。

しかし最近の研究で、すべての患者さんに血管を広げる治療が効果的というわけではないことがわかってきました。

特に動脈硬化が原因の場合は、まず薬でしっかり治療し、それでも効果が不十分なときだけ血管を広げる治療を考える、というのが現在の一般的な考え方です。

一方、若い女性に多い線維筋性異形成が原因の場合は、血管を広げる治療で高血圧が「治る」可能性があります。

そのため、積極的に治療を行うことが検討されます。

それぞれの治療法について、詳しく見ていきましょう。

治療法の選択の流れ

まずは薬で血圧をコントロールする

腎血管性高血圧の治療では、まず薬で血圧をコントロールすることが基本となります。

アメリカの心臓病の専門学会のガイドラインでは、ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、β遮断薬などの降圧薬が推奨されています。

特にACE阻害薬とARBは、血圧を上げる原因となっているホルモンの働きを直接抑える薬なので、理論的には腎血管性高血圧に最も効果的と考えられています。

実際に、これらの薬を使った患者さんでは、心臓病や脳卒中のリスクが下がったという研究報告があります。

ただし注意点があります。

両方の腎臓につながる血管が狭くなっている場合や、片方の腎臓しか働いていない場合には、ACE阻害薬やARBを使うと腎臓の働きが急に悪くなることがあります。

このような場合には、カルシウム拮抗薬やβ遮断薬など、別の種類の薬が選ばれることがあります。

動脈硬化が原因の場合は、血圧の薬だけでなく、コレステロールを下げる薬(スタチン)を飲んだり、タバコをやめたり、糖尿病をしっかり管理したりすることも大切です。

これらの対策は、動脈硬化がさらに進むのを防ぎ、心臓病や脳卒中のリスクを下げる効果があります。

【主な降圧薬の種類と特徴】

薬の種類働き腎血管性高血圧での注意点
ACE阻害薬血圧を上げるホルモンの産生を抑える両側狭窄では腎機能悪化の可能性あり
ARB血圧を上げるホルモンの作用を抑える両側狭窄では腎機能悪化の可能性あり
カルシウム拮抗薬血管を広げる比較的安全に使用できる
β遮断薬心臓の働きを穏やかにする比較的安全に使用できる
利尿薬体内の余分な水分を排出する他の薬と組み合わせて使用

血管を広げるカテーテル治療で根本改善を目指せることも

薬だけでは血圧がうまくコントロールできない場合や、特定の条件に当てはまる場合には、カテーテルを使って狭くなった血管を広げる治療が検討されます。

バルーン治療(経皮的腎動脈形成術)

カテーテルの先端に取り付けた小さな風船(バルーン)を、狭くなっている部分まで進めて膨らませ、血管を内側から押し広げる治療です。

風船を膨らませるのは一瞬ですが、これによって血管の通り道が広がります。

線維筋性異形成が原因の場合は、この治療が第一選択とされています

ステント留置術

ステントとは、金属でできた網目状の小さな筒のことです。

バルーンで血管を広げた後、このステントを狭かった部分に置いてくることで、血管が再び狭くなるのを防ぎます。

動脈硬化が原因の場合は、バルーンだけで広げても再び狭くなりやすいため、ステントを一緒に使うことが多いです。

これらの治療が検討されるのは、薬を何種類使っても血圧が下がらない場合、腎臓の働きが急に悪くなっている場合、息苦しさや足のむくみなど心不全の症状を繰り返している場合などです。

血管治療が検討される条件
  • 3種類以上の降圧薬を使っても血圧がコントロールできない(治療抵抗性高血圧)
  • ACE阻害薬やARBで腎機能が急激に悪化した
  • 繰り返す心不全や急性肺水腫(息苦しさ)がある
  • 腎臓の働きが急速に悪くなっている
  • 片方の腎臓が萎縮してきている

原因や年齢によって治療効果に差がある

腎血管性高血圧の治療効果は、原因となっている病気や患者さんの年齢、高血圧になってからの期間などによって大きく変わります。

線維筋性異形成が原因の場合

若い女性に多い線維筋性異形成では、バルーン治療の効果が比較的良いことがわかっています。

複数の研究をまとめた報告によると、治療後に高血圧が「治った」(薬を飲まなくても血圧が正常に保てる状態)人は約36〜46%、「良くなった」(薬の量を減らせた、または血圧が下がった)人を含めると約80〜90%にのぼります。

ただし、年齢が高いほど、また高血圧が長く続いていた人ほど、治る確率は低くなります。

高血圧が長く続くと、血管や心臓、腎臓などに負担がかかり続けるため、元に戻りにくくなると考えられています。

動脈硬化が原因の場合

動脈硬化による腎血管性高血圧では、残念ながら血管を広げる治療の効果は線維筋性異形成ほど良くありません。

大規模な研究では、薬による治療にステント治療を追加しても、血圧の下がり具合や腎臓の働きの改善に大きな差は見られませんでした。

そのため、動脈硬化が原因の場合は、まずは薬でしっかり治療することが基本です。

それでも血圧がコントロールできない場合や、腎臓の働きが急速に悪くなっている場合、心不全を繰り返す場合などに限って、血管を広げる治療が検討されます。

【原因別の治療効果の比較】

項目線維筋性異形成動脈硬化
血管治療後の治癒率約36〜46%約10〜20%
改善率(治癒+改善)約80〜90%約30〜60%
治療効果に影響する因子年齢、高血圧の期間腎機能、動脈硬化の程度
第一選択の治療バルーン治療薬物療法
血管治療の位置づけ積極的に検討条件を満たす場合に検討

※治療成績は研究によって幅があります。

よくある質問

腎血管性高血圧について、患者さんからよくいただく質問にお答えします。

腎血管性高血圧は完治しますか?

線維筋性異形成が原因の場合、特に若い方で高血圧になってからの期間が短いほど、血管を広げる治療で完治(薬を飲まなくても血圧が正常に保てる状態)できる可能性があります。

一方、動脈硬化が原因の場合は完治することは少なく、一生涯にわたって血圧の管理と動脈硬化の予防を続ける必要があることが多いです。

腎血管性高血圧になりやすいのはどんな人ですか?

動脈硬化が原因のタイプは、55歳以上の方、糖尿病がある方、コレステロールや中性脂肪が高い方、タバコを吸う方、すでに心臓や脳の血管に病気がある方に多いです。

線維筋性異形成が原因のタイプは、30〜50歳代の女性に多く、原因ははっきりわかっていませんが、生まれつきの体質や遺伝が関係していると考えられています。

自分で腎血管性高血圧かどうか判断できますか?

ご自身で判断することは難しいです。

ただし、「薬を何種類飲んでも血圧が下がらない」「急に血圧が上がった」「血圧の薬を飲み始めてから腎臓の検査値が悪くなった」などに心当たりがある場合は、腎血管性高血圧の可能性があります。

気になる症状がある方は、早めにかかりつけの医師に相談し、必要な検査を受けることをおすすめします。

まとめ

腎血管性高血圧は、腎臓に血液を届ける血管が狭くなることで起こる高血圧です。

一般的な高血圧とは違い、原因を適切に治療すれば血圧の改善が期待できるのが大きな特徴です。

腎血管性高血圧のポイント
  • 高血圧全体の1〜5%、治療抵抗性高血圧では10〜40%を占める
  • 原因は「動脈硬化(約90%)」と「線維筋性異形成(約10%)」の2つ
  • 原因を治療すれば血圧の改善が期待できる
  • 早期発見・早期治療が大切

「薬を何種類飲んでも血圧が下がらない」「急に血圧が上がった」「55歳を過ぎて初めて高血圧と言われた」「血圧の薬を飲み始めてから腎臓の数値が悪くなった」

このようなサインがある方は、腎血管性高血圧が隠れている可能性があります。

ぜひ一度、かかりつけの医師に相談してみてください。

診断は超音波検査からCTやMRI、必要に応じてカテーテル検査へと段階的に進められます。

治療は薬による血圧コントロールが基本ですが、状況によってはバルーンやステントで血管を広げる治療が行われることもあります。

特に線維筋性異形成が原因の若い方は、早めに治療を受けるほど良い結果が期待できます。

高血圧でお悩みの方、特に今の治療がうまくいっていないと感じている方は、ぜひ専門医に相談してみることをおすすめします。

コメント

コメントする

目次