立ち上がった時にめまいや頭痛を感じることはありませんか。
実は、立ち上がると血圧が下がる人が多い中で、逆に血圧が上がってしまう「起立性高血圧」という状態があります。
この状態は、体の機能を自動的に調整する自律神経の働きがうまくいかないことで起こります。
そのまま放っておくと、心臓や血管に負担をかけ続けることになるかもしれません。
起立性高血圧は、似た名前の「起立性低血圧」ほど広く知られていません。
しかし、すでに高血圧や糖尿病をお持ちの方には比較的よくみられます。
症状が軽ければ気づかないこともあります。
ただ、立ち上がった時の頭痛や動悸、首の後ろの痛みが何度も起こるようなら、注意が必要です。
- 自律神経の働きが乱れて血圧が上がりすぎてしまう
- 糖尿病で神経がダメージを受けて調整機能が低下する
- 腎臓病やホルモンの病気が血圧を上げてしまう
- 薬の副作用で血管が縮んで血圧が上がる
- 運動不足や加齢で血管や心臓の調整力が弱まる
健康な方の場合、立ち上がると重力で血液が下半身に移動します。
そのとき、自律神経が素早く反応して血圧を正常に保ちます。
ところが起立性高血圧の方は、この調整がうまくいきません。
必要以上に血圧が上がってしまうのです。
適切に対処することで症状を和らげ、将来の健康リスクを管理することにつながる可能性があります。
まずは、この状態について正しく知ることから始めましょう。
- 起立性高血圧とは何か、どのような仕組みで起こるのか
- どのような症状が現れるのか
- 起立性高血圧が起こる原因
- 病院での診断方法
- 日常生活でできる対処法と治療の選択肢
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
起立性高血圧とは立ち上がると血圧が上昇する状態のこと
起立性高血圧とは、寝ている状態や座っている状態から立ち上がった時に、血圧が上がってしまう状態のことです。
健康な方なら、立ち上がると一時的に血圧が下がります。
でも自律神経がすぐに働いて、血圧を元に戻してくれます。
起立性高血圧の場合は、この調整がうまくいかず、逆に血圧が上がってしまうのです。
この状態は、比較的最近まで医学の分野であまり研究されてきませんでした。
しかし近年、心臓や血管への影響が明らかになってきています。
特に糖尿病や高血圧がある方では、将来的に心臓や血管の病気を起こすリスクと関連する可能性が指摘されています。
診断の基準については、世界的に統一された定義ができつつあります。
具体的には、立ち上がった時に上の血圧(収縮期血圧)が20mmHg以上上がり、なおかつ立った状態での上の血圧が140mmHg以上になる場合を起立性高血圧としています。
ちなみに、血圧は上がるけれど140mmHg未満の場合は「過剰な起立性昇圧反応」として、少し違う扱いになります。
健康な人は立つと血圧が下がるが起立性高血圧では上がる
通常、立ち上がると重力の影響で血液が下半身に移動します。
そのため、心臓に戻ってくる血液の量が一時的に減ります。
健康な方の場合、体が自動的に反応して血管を縮めます。
これによって、血圧が大きく下がらないように調整されます。
立った後も、血圧はほぼ安定したままか、少し下がる程度で済みます。
ところが起立性高血圧では、この自動調整が強く働きすぎてしまいます。
血管が必要以上にギュッと縮んだり、心臓が強く拍動しすぎたりします。
その結果、立ち上がった時に血圧が上がってしまうのです。
これは、体の血圧を調整するシステムのバランスが崩れているサインといえます。
立ったときに血圧が20mmHg以上上昇すると起立性高血圧
起立性高血圧をどう診断するかについては、これまでいろいろな定義が使われてきました。
しかし現在では、世界的に統一された基準ができつつあります。
アメリカと日本の専門学会が共同で発表した定義では、次のようになっています。
起立性高血圧の診断基準
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| 収縮期血圧(上の血圧)の上昇 | 20mmHg以上 |
| 立位時の収縮期血圧 | 140mmHg以上 |
| 拡張期血圧(下の血圧)の上昇 | 10mmHg以上(参考) |
実際の測定では、まず寝た状態で5分間じっとしてから血圧を測ります。
その後、立ち上がってから1分後、3分後、5分後に血圧を測ります。
これによって、立った時の血圧がどれくらい上がるかを確認します。
下の血圧(拡張期血圧)も、10mmHg以上上がることがあります。
起立性低血圧は立つとめまいが起こる別の症状
起立性高血圧と間違えやすいのが「起立性低血圧」です。
起立性低血圧は、立ち上がった時に血圧が下がりすぎてしまう状態で、症状も原因も起立性高血圧とは違います。
起立性高血圧と起立性低血圧の違い
| 項目 | 起立性高血圧 | 起立性低血圧 |
|---|---|---|
| 立位時の血圧 | 上昇する | 低下する |
| 主な症状 | 頭痛、首の痛み、動悸 | めまい、立ちくらみ、失神 |
| 収縮期血圧の変化 | +20mmHg以上 | -20mmHg以上 |
| 拡張期血圧の変化 | +10mmHg以上 | -10mmHg以上 |
起立性低血圧では、立ち上がった時に上の血圧が20mmHg以上、または下の血圧が10mmHg以上下がります。
すると、めまいや立ちくらみ、ふらつきが起こります。
ひどい場合は気を失ってしまうこともあります。
これは、脳に行く血液が一時的に足りなくなるために起こります。
一方、起立性高血圧では血圧が上がります。
そのため、立ちくらみよりも頭痛や首の後ろの痛み、動悸などの症状が出やすくなります。
ただし、同じ人に両方の状態が起こることもあります。
特に糖尿病や高血圧がある方では、体の調整機能が不安定になります。
そのため、時には血圧が上がり、時には下がるということが起こり得ます。
頭痛やめまい、動悸などの症状が現れる
起立性高血圧は、軽い場合には何も症状が出ないこともあります。
しかし血圧の上がり方が大きいと、いろいろな症状が現れることがあります。
症状の種類や強さは人によって違いますし、日によって変わることもあります。
立ち上がった時や立っている時に出る症状は、血圧が上がっているという大事なサインです。
起立性高血圧でみられる症状の一つが頭痛で、後頭部や首の後ろの痛みを訴える方もいます。
この頭痛は横になると楽になるケースもあり、医師へ症状を伝える際の重要な情報の一つになります。
その他にも、動悸(心臓がドキドキする)、息苦しさ、全身のだるさなど、心臓や血管に負担がかかっていることを示す症状が出ることがあります。
症状が軽いからといってそのままにしておくと、長い間に心臓や血管に負担がかかり続けるかもしれません。
気になる症状があれば、病院で相談することをお勧めします。
立ち上がると頭痛や首の後ろの痛みを感じる
起立性高血圧でよくみられる症状の一つが頭痛です。
立ち上がった時や立っている時に、頭全体が締めつけられるような痛みや、ズキズキする痛みを感じることがあります。
後頭部や首の後ろが痛むことがあり、横になると痛みが楽になるケースも報告されています。
- 頭痛(後頭部や首の後ろに多い)
- 頭全体が締めつけられるような痛み
- ズキズキとした拍動性の痛み
- 吐き気(症状が強い場合)
- めまいやふらつき
症状が強い場合には、吐き気を伴うこともあります。
ただし、頭痛の原因はいろいろあります。
起立性高血圧による頭痛かどうかを判断するには、立った時と横になった時で症状がどう変わるかを観察することが大切です。
めまいやふらつきを感じる方もいます。
ただしこれは、起立性低血圧とは違う仕組みで起こります。
起立性高血圧でもめまいが生じることがあり、血圧変動に伴う脳血流の変化などが関係している可能性が示唆されています。
立っている時に疲れや息苦しさを感じることがある
立ち上がった時や立っている時に、全身がだるくなったり疲れやすくなったりして、いつもより早く疲れを感じることがあります。
- 全身の倦怠感や疲労感
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 心拍数の増加
- 息苦しさや胸の圧迫感
- 発汗や顔面の紅潮
- 手足の震え
動悸(心臓がドキドキすること)や心拍数が増える感じがする方もいます。
これは、血圧の上昇に対して心臓が頑張りすぎている状態です。
息苦しさや胸が圧迫される感じを訴える方もいて、これらは心臓や血管に負担がかかっている可能性を示しています。
汗をかいたり、顔が赤くなったり、手足が震えたりする症状が出ることもあります。
これらは、体を緊張させる神経(交感神経)が働きすぎている状態を示しています。
症状の出方は人それぞれで、毎回同じとは限りません。
体調や環境、水分を取った量、食事の内容などによって、症状の強さが変わることもあります。
どんな時に症状が強く出るかをメモしておくと、診断や治療に役立ちます。
放置すると心臓や血管に負担がかかる可能性がある
起立性高血圧をそのままにしておくと、長い目で見ていろいろな健康上の問題につながる可能性があることが、研究でわかってきています。
- 左室肥大(心臓の筋肉が厚くなる)
- 動脈硬化との関連
- 脳血管の無症候性病変
- 持続的な高血圧症への進行
- 腎機能への影響
立った時に何度も血圧が上がると、心臓はいつもより強い力で血液を送り出さなければなりません。
この状態が続くと、心臓の筋肉が厚くなる変化(左室肥大)と関連することが報告されています。
また、血管の壁にも負担がかかるため、動脈硬化との関連も指摘されています。
脳の血管への影響も心配されています。
研究では、起立性高血圧がある方は、脳の小さな血管に症状のない病変が多くみられることが報告されています。
これは将来、脳卒中を起こすリスクの一つになるかもしれません。
歩行時血圧を含む交絡因子をコントロールした後も、起立性血圧変化と無症候性脳血管疾患との関連は有意でした。
引用:PubMed U-curve relationship between orthostatic blood pressure change and silent cerebrovascular disease in elderly hypertensives: orthostatic hypertension as a new cardiovascular risk factor
さらに、起立性高血圧は将来的に常に血圧が高い状態(持続的な高血圧症)に進む可能性があることも示されています。
特に若い方で血圧が正常な人に起立性高血圧がみられる場合、高血圧症になる前の段階かもしれないのです。
腎臓への影響にも注意が必要です。
血圧の変動が大きいと腎臓に流れる血液が不安定になり、長い間には腎臓の働きに影響を与える可能性も考えられます。
自律神経の調節異常や病気が原因で起こる
起立性高血圧は、いろいろな要因によって引き起こされます。
多くの場合、複数の要因が重なって起こると考えられています。
もっとも大きな原因は、自律神経という体の機能を自動的に調整する神経の働きに異常が起きることです。
ただし、その背景には糖尿病や腎臓の病気などが隠れていることもあります。
また、生活習慣や環境、薬の副作用なども発症に関わっている可能性があります。
自律神経は、私たちが意識しなくても、心臓を動かしたり血圧を調整したりしています。
この働きが乱れると、血圧のコントロールがうまくいかなくなります。
特に、体を緊張させる交感神経と、リラックスさせる副交感神経のバランスが崩れると、立ち上がった時の血圧調整に異常が生じます。
原因を正しく理解することは、適切な治療法を選ぶ上でとても大切です。
血圧を調整する自律神経がうまく働かない
起立性高血圧の主な原因は、自律神経という体の機能を自動的に調整する神経の働きに異常が起きることです。
自律神経には、交感神経と副交感神経の二つがあります。
この二つがバランスよく働くことで、血圧が適切に保たれています。
立ち上がると、通常は交感神経が働いて血管を縮めます。
これによって血圧が下がりすぎないようにします。
しかし起立性高血圧では、この交感神経の反応が強すぎてしまいます。
血管が縮みすぎたり、心臓の拍動が速くなりすぎたりして、血圧が必要以上に上がってしまうのです。
- 圧受容体(血圧センサー)の感受性の変化
- 交感神経の過剰な反応
- ノルアドレナリン(神経伝達物質)の過剰分泌
- 血管収縮の強まり
特に、血圧の変化を感じ取るセンサー(圧受容体)の感度が変わっていることが関係していると考えられています。
心臓や首の太い血管にあるこのセンサーは、血圧の変化を常に監視しています。
このセンサーの働きが変化したり、調節機能に異常が生じたりすると、血圧のコントロールがうまくいかなくなることがあります。
また、ノルアドレナリンという神経を伝える物質が出すぎることも関係している可能性があります。
立った時にノルアドレナリンが必要以上に出ると、血管が強く縮んで血圧が上がると考えられています。
糖尿病や腎臓病などの病気が引き金になることもある
いくつかの病気は、起立性高血圧を引き起こす原因になることがあります。
- 糖尿病 :神経障害により自律神経の働きが乱れる
- 遊走腎 :腎臓の位置が下がり血流が減少する
- 褐色細胞腫 :副腎の腫瘍から血圧を上げるホルモンが出る
- メタボリックシンドローム :肥満を伴う代謝異常
- 睡眠時無呼吸症候群 :睡眠中に呼吸が止まる
糖尿病は、起立性高血圧と強く関連している病気の一つです。
糖尿病が長く続くと、神経がダメージを受ける糖尿病性神経障害が起こります。
この神経障害によって自律神経の働きが乱れ、血圧調整がうまくいかなくなります。
研究では、糖尿病の患者さんに起立性高血圧がある割合は、健康な方に比べて明らかに高いことがわかっています。
正常血圧および高血圧の糖尿病患者におけるOHTの有病率は、対照群よりも有意に高かった(正常血圧患者の場合12.8 vs. 1.8%、P <0.01、高血圧患者の場合12.6 vs. 11.1%、有意差なし)。
引用:Diabetes Care Orthostatic Hypertension in Patients With Type 2 Diabetes
腎臓の病気も起立性高血圧の原因になることがあります。
特に、腎臓の位置が下がる遊走腎という状態では、立ち上がった時に腎臓につながる血管が引っ張られて血流が減ります。
すると、体が血圧を上げるホルモンを出すようになり、血圧が上昇することがあります。
褐色細胞腫という副腎にできる腫瘍がある場合にも、起立性高血圧がみられることがあります。
この腫瘍からは、血圧を上げるホルモンが出すぎてしまうため、立った時に血圧が著しく上昇することがあります。
その他、甲状腺の働きが活発になりすぎる病気、肥満を伴うメタボリックシンドローム、寝ている間に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群なども、起立性高血圧と関連することがあります。
薬の副作用や運動不足、加齢も影響する
生活習慣や環境も、起立性高血圧の発症に関係しています。
- 薬の副作用 :一部の薬が血圧を上昇させる
- 運動不足 :心臓や血管の調整機能が低下する
- 過度の塩分摂取 :体内の水分量と血液量が増加する
- 加齢 :血管の柔軟性低下と圧受容体の感受性変化
薬の副作用は、血圧の調節機能に影響を与える要因の一つです。
一部の血管を縮める薬、鼻炎や風邪薬に入っている血管を縮める成分、一部のうつ病の薬などは、血圧を上げやすくする作用があります。
また、高血圧の治療薬を飲んでいる方でも、薬の種類によっては立った時の血圧に影響を与えることがあります。
長い間運動をしていない状態が続くと、心臓や血管の調整機能が落ちます。
そのため、立ち上がった時の血圧調節がうまくいかなくなることがあります。
筋力が落ちることで、立った時に下半身に溜まった血液を心臓に戻す働きが弱まることも関係しています。
塩分の取りすぎは高血圧全般に悪影響を及ぼします。
塩分を多く取ると体に水分が溜まりやすくなり、血液の量が増えるため、血圧管理全体にとってマイナスとなる可能性があります。
年齢も大切な要因です。
年を取ると血管の柔らかさが失われ、血圧を感じ取るセンサーの働きも変わります。
そのため、高齢の方では起立性高血圧が起こりやすくなります。
診断には起立試験で立った時の血圧を測定する
起立性高血圧の診断は、主に血圧を測ることで行われます。
症状だけでは判断が難しいため、実際に血圧の変化を確認することが大切です。
診断の基本になるのは起立試験です。
寝ている状態と立った状態で血圧を比べることで、起立性高血圧があるかどうかを判定します。
また、もっと詳しく血圧の変動パターンを知るために、24時間血圧を測り続ける検査を行うこともあります。
さらに、起立性高血圧の背景にある原因を調べるために、血液検査や心電図検査、画像検査などを追加で行うこともあります。
これらの検査を組み合わせることで、起立性高血圧があるかどうかだけでなく、その原因や重症度、どんな治療が良いかを決めるために必要な情報が得られます。
家庭での血圧測定も診断にとても大切です。
医師の指導のもとで定期的に測ることをお勧めします。
横になった状態と立った状態で血圧を比較する
診断の基本になるのは起立試験という検査です。
この検査では、まず横になった状態で5分間じっとしてから血圧を測ります。
その後、立ち上がってもらって、立った状態での血圧を測ります。
- 横になった状態で5分間安静にする
- 横になったまま血圧を測定する
- 立ち上がる
- 立ち上がってから1分後に血圧を測定
- 立ち上がってから3分後に血圧を測定
- (必要に応じて)5分後にも測定
測るタイミングは、立ち上がってから1分後、3分後、時には5分後にも測ります。
これは、血圧の変化が時間とともにどうなるかを見るためです。
人によっては、立ち上がった直後は血圧が普通でも、しばらく立っていると徐々に上がってくることがあります。
測る時には、上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)の両方を記録します。
起立性高血圧の診断基準は、横になった状態から立った状態で上の血圧が20mmHg以上上がり、かつ立った状態での上の血圧が140mmHg以上になる場合とされています。
病院での測定だけでなく、家でも血圧を測ることをお勧めします。
家庭で血圧を測る場合は、朝起きた時や夕方など、いくつかの時間帯で座った状態と立った状態の両方で測ると、より正確な診断につながります。
病院では緊張して血圧が上がってしまう「白衣高血圧」という現象もあります。
リラックスした自宅での測定値は、診断に大切な情報を与えてくれます。
24時間血圧計で1日の血圧変動を確認することもある
もっと詳しく血圧の変動を調べるために、24時間血圧計を使った検査を行うことがあります。
この検査では、腕に小さな血圧計をつけて、普段通りの生活をしながら24時間にわたって定期的に血圧を測ります。
24時間血圧測定によって、日中の活動している時、夜寝ている時、朝起きた時など、いろいろな場面での血圧の変化がわかります。
起立性高血圧がある方では、日中の血圧の変動が大きく、夜間の血圧が極端に変動する(下がりすぎる、あるいは下がらないなど)現象がみられることがあります。
最近では、体の位置を感知するセンサーが入った24時間血圧計も開発されています。
この装置を使うと、立っている時、座っている時、横になっている時の血圧を自動的に区別して記録できます。
起立性高血圧の診断の助けとなることが期待されています。
血液検査や心電図で原因となる病気を調べる
起立性高血圧が見つかった場合、必要に応じてその原因を調べるための検査を行うことがあります。
原因を調べるための検査
| 検査の種類 | 調べる内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 血糖値・HbA1c | 糖尿病の有無 | 糖尿病性神経障害の確認 |
| クレアチニン・尿検査 | 腎臓の機能 | 腎機能障害の評価 |
| 甲状腺ホルモン | 甲状腺の働き | 甲状腺機能異常の確認 |
| メタネフリン類・カテコールアミン | 副腎ホルモン | 褐色細胞腫の有無 |
| 心電図 | 心臓のリズムと状態 | 左室肥大などの確認 |
| 心拍変動解析 | 自律神経のバランス | 自律神経機能の評価 |
| 超音波・CT検査 | 腎臓の位置と形態 | 遊走腎の確認 |
血液検査では、糖尿病があるかどうかを確認するために血糖値やヘモグロビンA1cを測ります。
腎臓の働きを評価するために、クレアチニンという物質の量や尿検査を行います。
また、甲状腺ホルモンを測ることで、甲状腺の働きに異常がないかを確認することもあります。
褐色細胞腫という腫瘍が疑われる場合には、血液や尿の中のメタネフリン類という物質の濃度を測ります(補助的にカテコールアミンを調べることもあります)。
これによって、副腎から血圧を上げるホルモンが出すぎていないかを調べることができます。
心電図検査では、心臓のリズムや心臓の筋肉の状態を確認します。
長い間血圧が上がっていると心臓に負担がかかります。
その場合、心臓の筋肉が厚くなる変化が心電図に現れることがあります。
自律神経の働きを詳しく調べるために、心拍変動解析という検査を行うこともあります。
この検査では、心電図から得られる心拍数の細かい変動を分析して、自律神経のバランスを評価できます。
画像検査として、腎臓の位置や形を確認するために超音波検査やCT検査を行うこともあります。
特に、腎臓の位置が下がる遊走腎が疑われる場合には、立った時と横になった時で腎臓の位置がどう変わるかを確認します。
生活習慣の改善と必要に応じて薬物治療を行う
起立性高血圧の治療は、まず生活習慣を見直すことから始めます。
原因となる病気がある場合はその治療を優先し、症状が強い場合には薬を使った治療も検討します。
治療の目的は、症状を軽くすることと、将来的な心臓や血管の病気のリスクを考慮した管理を行うことです。
生活習慣を改善するだけで症状をコントロールできる方もいれば、薬が必要になる方もいます。
どんな治療をするかは、起立性高血圧の重さ、症状の強さ、他にどんな病気があるかなどを総合的に見て決めます。
大切なのは、急に血圧が変動するのを避けながら、立った時の血圧を適切な範囲に保つことです。
ただし、血圧を下げすぎると横になった時に低血圧になってしまう可能性があります。
そのため、慎重な調整が必要です。
定期的に血圧を測って医師と相談を続けながら、自分に合った治療法を見つけていくことが大切です。
ゆっくり立ち上がる、脱水予防や塩分制限などの対処法
日常生活でできる対処法として、まず動作をゆっくり行うことが大切です。
急に立ち上がらず、座った状態で数秒待ってから立ち上がると、血圧の急な変動を抑えられます。
朝起きる時も、いきなり起き上がらず、ベッドの端に座って数十秒待ってから立ち上がるようにしましょう。
- 動作をゆっくり行う
- 急に立ち上がらない
- 座った状態で数秒待つ
- ベッドの端に座ってから立つ
- 脱水予防を心がける
- こまめな水分補給を心がける
- (心臓・腎臓病がある場合は医師と相談)
- 塩分は医師の指導のもとで
- 過度な摂取を避ける
- 特に高血圧併発時は過度な摂取を避ける
- 立ち仕事の工夫
- 長時間の立ち仕事を避ける
- 足踏みやかかとの上げ下げで血流促進
- 食事の工夫
- 一度に大量に食べない
- 少量を複数回に分ける
脱水状態は自律神経の働きに影響するため、適度な水分補給を心がけます。
ただし、心臓や腎臓に病気がある方は、主治医と相談して適切な水分量を決める必要があります。
基本的に通常の高血圧と同様に、塩分の取りすぎには注意が必要です。
ただし、起立性低血圧を合併している場合など、医師の指示が異なることもあります。
長時間立ち続ける仕事は避けることも効果的です。
どうしても立っている必要がある場合には、足踏みをしたり、かかとを上げ下げしたりすることで、下半身の血液の流れを良くすることができます。
食事は、一度にたくさん食べるのではなく、少しずつ何回かに分けて食べることをお勧めします。
食後には血液が消化器に集まるため、大量の食事の後には血圧の変動が大きくなることがあります。
適度な運動で筋力をつけると血圧の調節が改善する
定期的な運動は、心臓や血管の働きを良くし、自律神経のバランスを整える効果があります。
特に下半身の筋力を強くすることで、立った時の血液の流れが良くなります。
運動を始める時は、ご自身の体力に合わせて、無理のない範囲で運動を始めることをお勧めします
血圧管理の対策として、ウォーキングなどの有酸素運動を取り入れていきます。
ただし、運動を始めた当初は症状が一時的に悪くなることがあります。
無理をせず、少しずつ運動量を増やしていくことが大切です。
運動の強さは、軽いものから中くらいが適切です。
激しい運動は血圧を急に変動させる可能性があるため、避けるべきです。
運動中や運動後に強い症状が出た場合には、すぐに休んで主治医に相談することが必要です。
原因となる病気がある場合はその治療を優先する
起立性高血圧の背景に他の病気がある場合、まずその病気の治療を行うことが優先されます。
- 糖尿病
- 血糖値のコントロール改善
- 食事療法・運動療法・薬物療法の組み合わせ
- 神経障害の進行を抑える
- 褐色細胞腫
- 手術による腫瘍の摘出
- ホルモン過剰分泌の解消
- 薬剤性
- 原因薬剤の中止または変更
- (必ず医師と相談)
- 高血圧症併発
- 降圧薬の種類を慎重に選択
- 立位時の血圧上昇に注意
糖尿病が原因の場合には、血糖値をコントロールすることが大切です。
血糖値が安定することで、神経障害が進むのを抑え、自律神経の働きが改善される可能性があります。
食事療法、運動療法、薬による治療を適切に組み合わせて、血糖値を目標の範囲内に保つことを目指します。
褐色細胞腫が見つかった場合には、手術で腫瘍を取り除くことを検討します。
腫瘍を取り除けば、血圧を上げるホルモンが出すぎることがなくなり、起立性高血圧も改善する可能性があります。
薬が原因の起立性高血圧の場合には、原因になっている薬をやめたり変えたりすることを検討します。
ただし、自分の判断で薬をやめることは危険です。
必ず主治医と相談して決めてください。
高血圧症も一緒にある場合の治療は、注意深く行う必要があります。
普通の高血圧治療薬の中には、立った時の血圧をさらに上げてしまう可能性があるものもあります。
そのため、薬の選び方には慎重な判断が求められます。
症状が強い場合は血圧を下げる薬を使用する
生活習慣の改善だけでは症状がコントロールできない場合や、立った時の血圧がとても高い場合には、薬を使った治療を検討します。
薬物療法の選択肢
| 薬の種類 | 作用 | 注意点 |
|---|---|---|
| アルファ遮断薬(ドキサゾシン、プラゾシン) | 血管の過度な収縮を抑える | 就寝前の服用が効果的 |
| クロニジン | 中枢性の交感神経抑制 | 重症例に使用 |
アルファ遮断薬という種類の薬は、起立性高血圧の治療に使われることがあります。
この薬は、神経の働きを抑えることで血管が縮みすぎるのを防ぎ、立った時の血圧上昇を和らげます。
ドキサゾシンやプラゾシンという薬が選択肢となることがあります。
クロニジンという薬も、重い起立性高血圧に対して使われることがあります。
この薬は脳に作用して、強すぎる神経の働きを抑える作用があります。
ただし、薬を使う治療をする時には、横になった時の血圧が下がりすぎないように注意が必要です。
起立性高血圧の患者さんの中には、横になった時の血圧が低めになる方もいます。
血圧を下げる薬を飲むことで、横になった時に低血圧になってしまう可能性があるからです。
そのため、薬を始める時には、立った時と横になった時の両方の血圧を定期的に測りながら、慎重に薬の量を調整していく必要があります。
家での血圧測定を続けて、主治医と情報を共有することが、適切な治療を行う上でとても大切です。
よくある質問
- 起立性高血圧は完全に治りますか
-
起立性高血圧が治るかどうかは、その原因によって違います。
一時的な原因、例えば脱水や薬の副作用によるものなら、原因を取り除けば良くなる可能性が高いでしょう。
一方、糖尿病で神経がダメージを受けていたり、年齢による自律神経の変化が原因だったりする場合には、完全に治すことは難しいかもしれません。
ただし、適切な治療と生活習慣の改善によって、症状をコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることはできます。
定期的に病院を受診しながら、長い目で見て管理していくことが大切です。
- 起立性高血圧を放置するとどうなりますか
-
そのままにしておくと、何度も血圧が上がることで心臓や血管に負担がかかり続けます。
これによって、心臓の筋肉が厚くなったり、血管が硬くなったりする可能性があります。
また、脳の小さな血管に病変ができるリスクや、将来的に常に血圧が高い状態に進むリスクも指摘されています。
症状がなくても、定期的に血圧を測って、必要なら病院を受診することをお勧めします。
- 家庭でできる対処法で最も効果的なものは何ですか
-
いくつかの対処法を組み合わせることがもっとも効果的ですが、特に大切なのは、ゆっくりとした動作で急な姿勢変化を避けることです。
急に立ち上がらず、段階的に姿勢を変えることで血圧の急な変動を防げます。
また、適度な運動で下半身の筋力を保つことも、長い目で見た改善につながる可能性があります。
- どのような時に医療機関を受診すべきですか
-
立ち上がった時に頭痛、めまい、動悸などの症状が何度も起こる場合には、病院での診察をお勧めします。
特に、症状が日常生活に支障をきたす場合や、糖尿病や高血圧などの持病がある場合には、早めの受診が望ましいでしょう。
また、立った時に血圧がとても高くなる場合や、胸の痛みや呼吸困難などの強い症状が出た場合には、すぐに病院を受診してください。
- 高血圧の薬を飲んでいる場合、起立性高血圧の治療はどうなりますか
-
すでに高血圧の治療を受けている方の場合、今飲んでいる薬の種類や量の調整が必要になることがあります。
一部の降圧薬は立った時の血圧をさらに上げてしまう可能性がある一方、別の種類の薬は起立性高血圧の改善に良い場合があります。
自分の判断で薬をやめたり変えたりすることは避けて、必ず主治医と相談しながら治療方針を決めることが大切です。
まとめ
起立性高血圧は、立ち上がった時に血圧が上がってしまう状態で、自律神経という体の調整機能に異常が起きることが主な原因です。
症状が出ない場合もありますが、頭痛、めまい、動悸などの症状が現れることがあります。
そのままにしておくと、心臓や血管への負担が積み重なる可能性があります。
診断は、起立試験という寝た状態と立った状態での血圧測定を中心に行われます。
必要に応じて、24時間血圧測定や血液検査などの追加検査を行います。
治療は、生活習慣の改善を基本とします。
ゆっくりとした動作、適度な水分補給、定期的な運動がお勧めです。
原因となる病気がある場合はその治療を優先し、症状が強い場合には薬を使った治療も検討されます。
起立性高血圧は、適切に管理することで症状をコントロールし、健康リスクを減らすことができます。
気になる症状がある場合や、糖尿病や高血圧などの持病がある場合には、医療機関で相談することをお勧めします。
定期的に血圧を測る習慣をつけて、自分の血圧の変化に注意を払うことが、健康管理の第一歩となります。
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