高血圧で病院に通っていても、肩こりや頭痛、めまいといった症状が続いていませんか。
降圧薬を飲んでいるけれど、もっと体に優しい治療法はないのかと気になる方も多いでしょう。
実は、漢方薬は西洋医学の降圧薬とは異なるアプローチで高血圧をサポートする選択肢として注目されています。
漢方薬の特徴は、血圧の数値を直接下げることよりも、血圧が上がりやすくなっている体質そのものを改善することを目指す点にあります。
これは東洋医学の考え方に基づいており、体全体のバランスを整えることで、結果的に血圧の安定につながるというものです。
- 体質改善により血圧の安定化を緩やかにサポート
- 降圧薬だけでは改善しにくい随伴症状(肩こり・めまい・イライラ等)の緩和に役立つ
- ストレスや自律神経の乱れを体全体で緩和
- 降圧薬との併用が可能な補助的治療として位置付けられる
- 効果発現まで数週間〜数ヶ月と緩やか
降圧薬が血圧を確実に下げる一方で、漢方薬は時間をかけて体質を変えていくため、効果の現れ方は緩やかです。
ただし、降圧薬だけでは改善しにくい随伴症状には、漢方薬が役立つ可能性があります。
この記事では、高血圧に悩む方が漢方治療について正しく理解できるよう、医師の立場から詳しく解説します。
漢方薬がどのように高血圧に作用するのか、どんな種類があって自分に合ったものをどう選べばよいのか、そして降圧薬との併用は可能なのかといった疑問にお答えします。
また、副作用や注意点、保険適用についても触れていきますので、漢方治療を検討している方はぜひ参考にしてください。
漢方薬は西洋医学の降圧薬を補完する治療法として、適切に使えば高血圧管理をより快適にする可能性があります。
- 高血圧に対する漢方の効果と西洋医学との違い
- 体質や症状別の主な漢方薬の種類
- 降圧薬との併用や副作用について
- 自分に合った漢方薬の選び方と相談先
- 漢方薬の保険適用について
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
高血圧に漢方は補助的な治療選択肢になる
高血圧の治療において、漢方薬は西洋医学の降圧薬とは異なるアプローチで体をサポートする治療法です。
多くの方が「血圧が高い」と診断されると、まず降圧薬を処方されますが、薬を飲んでも肩こりやめまい、イライラといった症状が残る場合があります。
このような場合に、漢方薬が役立つ可能性があります。
漢方医学では、血圧が高いこと自体を直接的に治すのではなく、なぜ血圧が上がりやすくなっているのかという根本的な原因に着目します。
ストレスによる自律神経の乱れ、加齢による体の機能低下、血液の流れの滞りなど、様々な要因が血圧上昇の背景にあると考えるのです。
降圧薬が血管を広げたり心臓の働きを調整したりして血圧を確実に下げる効果を持つのに対し、漢方薬は体全体のバランスを整えることで、血圧の安定化や随伴症状の改善を目指すのが特徴です。
現代医学において、高血圧治療の基本は降圧薬による薬物療法です。
これは血圧を効果的に下げ、脳卒中や心筋梗塞といった重大な合併症を予防するために非常に重要です。
しかし、降圧薬だけでは改善しにくい体の不調に悩む方も少なくありません。
このような場合に、漢方薬を補助的に用いることで、生活の質を高められる可能性があります。
漢方薬は降圧薬の代わりになるものではなく、むしろ降圧薬と組み合わせることで、より包括的な高血圧管理を実現する選択肢と考えるのが適切です。
西洋医学の降圧薬は血圧を直接下げる、漢方は体質改善を目指す
西洋医学の降圧薬は、血管を拡張させたり心臓の働きを調整したりすることで、血圧を確実に下げる効果があります。
例えばカルシウム拮抗薬やACE阻害薬といった降圧薬は、服用後比較的早期に血圧を低下させることができます。
一方、漢方医学では血圧計が存在しなかった時代から、頭痛やめまい、のぼせといった症状を治療してきた歴史があります。
漢方では血圧の数値そのものよりも、その人の体質や症状全体を見て、血圧が上がりやすくなっている原因を探ります。
ストレスによる自律神経の乱れ、加齢による体の機能低下、血液の流れの滞りなど、様々な要因が血圧上昇の背景にあると考えるのです。
漢方に期待できるのは体質改善によるゆるやかな血圧の安定
漢方薬は降圧薬のように血圧を急激に下げる作用はありませんが、体質改善とともに血圧の安定化をサポートする効果が期待できます。
研究においても、特定の漢方薬によって血圧の低下傾向や、高血圧に伴う症状の改善が報告されています。
例えば、黄連解毒湯という漢方薬を用いた研究では、高血圧患者のイライラやのぼせ、不眠といった症状が有意に改善されたことが示されています。
また、七物降下湯や釣藤散といった漢方薬にも、血圧の安定化や随伴症状の改善効果が複数の研究で示唆されています。
ただし、漢方薬の効果は体質に合っているかどうかで大きく変わります。
同じ高血圧でも、体力がある方とない方、イライラしやすい方と疲れやすい方では、適した漢方薬が異なるのです。
漢方治療が向いているのは軽度の高血圧や体質的な要因がある場合
漢方治療が適している可能性があるのは、以下のような場合です。
- 軽症の高血圧で、降圧薬の開始を迷っている段階
- 生活習慣の改善とともに、薬を使わない治療を試したい
- 降圧薬を服用していても血圧が安定しない
- 複数の降圧薬を使用していて、できれば減らしたい
- 高血圧に伴う肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、イライラ、不眠などの症状が強い
- ストレスが多く、自律神経の乱れが血圧に影響している
- 白衣高血圧(病院で測ると血圧が上がる)がある
軽症の高血圧で、まだ降圧薬を開始するかどうか迷っている段階では、食事療法や運動療法とともに漢方薬を試してみる選択肢があります。
生活習慣の改善と漢方薬の併用により、降圧薬を使わずに血圧が安定する可能性もあります。
また、降圧薬を服用していても血圧がなかなか安定しない方や、複数の降圧薬を使用している方にも漢方薬の併用は有効な場合があります。
降圧薬と漢方薬を組み合わせることで、血圧がより安定する可能性があります。
さらに、高血圧に伴う肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、イライラ、不眠といった症状が強い方にも漢方治療は適しています。
これらの症状は降圧薬だけでは改善しにくいことが多く、漢方薬を加えることで症状が楽になることが期待できます。
ストレスが多く、自律神経の乱れが血圧に影響していると考えられる方や、白衣高血圧(病院で測ると血圧が上がる)の方にも、漢方薬は体質改善の観点から有用です。
高血圧によく使われる漢方薬は体質や症状で4タイプに分かれる
高血圧に用いられる漢方薬は、その人の体力や体質、現れている症状によって選択されます。
西洋医学では「高血圧」という診断名に対して同じ降圧薬が処方されることが多いですが、漢方医学では同じ高血圧でも、一人ひとりの状態に応じて異なる漢方薬が選ばれます。
これは「証(しょう)」という考え方に基づいています。
証とは、その人の体質、体力、症状などを総合的に評価した状態のことで、漢方治療ではこの証を見極めることが最も重要とされています。
大きく分けると、高血圧の漢方薬には4つのタイプがあります。
体力がありがっちりした体格の方に適した漢方薬、頭痛やめまいに悩む方向けの漢方薬、顔が赤くなりやすくイライラしがちな方向けの漢方薬、そして体力がなく疲れやすい方向けの漢方薬です。
ここでは代表的な4つの漢方薬について、それぞれどのような方に適しているのかを詳しく解説します。
ただし、実際にはもっと多くの種類があり、個々の症状や体質に合わせて細かく選択されます。
漢方薬は体質に合わないものを服用すると効果が得られないだけでなく、副作用が出る可能性もあるため、自己判断で服用するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。
高血圧に使われる主な漢方薬(体質・症状別)
| 漢方薬名 | 適した体質 | 主な症状・特徴 | 期待される効果 |
|---|---|---|---|
| 大柴胡湯(だいさいことう) | 体力がある実証タイプ | ・がっちりした体格 ・便秘がち ・上腹部が張る ・肩こり、頭痛 ・イライラしやすい | ストレスによる血圧上昇の緩和 肥満改善 自律神経の調整 |
| 釣藤散(ちょうとうさん) | 体力中等度以下中間証タイプ | ・慢性頭痛 ・朝の頭重感 ・めまい ・耳鳴り ・神経質 | 血管拡張作用 頭痛・めまいの改善 朝の症状の緩和 |
| 黄連解毒湯(おうれんげどくとう) | 体力中等度以上実証タイプ | ・のぼせやすい ・顔面紅潮 ・イライラ ・不眠 ・目の充血 | 体の熱を冷ます 精神症状の改善 のぼせの緩和 |
| 七物降下湯(しちもつこうかとう) | 体力中等度以下虚証タイプ | ・顔色が悪い ・疲れやすい ・高齢者 ・胃腸が弱い ・耳鳴り | 血を補う 血管拡張作用 随伴症状の改善 |
体力がある方には大柴胡湯などが使われる
大柴胡湯(だいさいことう)は、比較的体力があり、がっちりとした体格の方に用いられる漢方薬です。
特に、便秘がちで上腹部が張って苦しい感じがあり、肩こりや頭痛を伴う高血圧の方に適しています。
この漢方薬は8種類の生薬から構成されており、ストレスによる過食や肥満傾向を伴う高血圧に用いられます。
研究では、大柴胡湯を服用した実証(体力のある)タイプの高血圧患者で、血圧の低下傾向が認められたことが報告されています。
大柴胡湯はイライラしやすく、ストレスを感じやすい方の高血圧に特に有効とされています。
構成生薬の一つである柴胡(さいこ)には自律神経の乱れを整える作用が示唆されており、ストレスによる血圧上昇の緩和が期待されます。
また、肥満や高脂血症を伴う高血圧の方にも用いられることがあります。
頭痛やめまいがある方には釣藤散が適している
釣藤散(ちょうとうさん)は、慢性的な頭痛やめまいを伴う高血圧の方に用いられる漢方薬です。
特に、朝起きたときに頭が重い、頭痛がするといった症状がある方に効果が期待できます。
この漢方薬には釣藤鈎(ちょうとうこう)という生薬が含まれており、基礎研究では血管拡張作用が報告されています。
釣藤散は中年以降の方や、高血圧傾向があって慢性的な頭痛が続いている方に特に適しているとされています。
釣藤散に関する小規模研究では、軽症高血圧の患者において降圧効果が認められたほか、耳鳴りの改善効果も報告されています。
また、神経質な傾向があり、気分が不安定になりやすい方の高血圧にも有効です。
比較的体力が中等度以下の方に向いており、胃腸が弱い方でも使用できる点が特徴です。
更年期などで気分が不安定になり、頭痛やめまいを伴って血圧が上昇するタイプの方にも用いられます。
のぼせやイライラがある方には黄連解毒湯が選ばれる
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)は、体力が中等度以上で、のぼせやすく顔が赤くなりやすい、イライラしやすいといった特徴がある方に用いられる漢方薬です。
この漢方薬は4種類の生薬(黄連、黄芩、黄柏、山梔子)から構成されており、すべて体の余分な熱を冷ます作用を持っています。
高血圧に伴うのぼせや顔面紅潮、精神不安、不眠、イライラといった症状の改善に効果が期待できます。
研究では、高血圧患者265名を対象とした二重盲検試験において、黄連解毒湯を服用した群で、のぼせや顔面紅潮などの随伴症状が有意に改善したことが報告されています。
高血圧随伴症状を個別に評価した場合、ほてりおよび顔面潮紅においてTJ-15群の有効性がより高かった(Wilcoxonの順位和検定、それぞれp=0.034および0.022)。
引用:PubMed Improvement of accessory symptoms of hypertension by TSUMURA Orengedokuto Extract, a four herbal drugs containing Kampo-Medicine Granules for ethical use: a double-blind, placebo-controlled study
血圧そのものを大きく下げる効果は限定的ですが、高血圧に伴う不快な症状を和らげる作用があります。
黄連解毒湯は、自律神経の緊張によって血圧が上がっているタイプの高血圧に適しているとされています。
頭に血が上ったような感じがする、目が充血しやすい、鼻血が出やすいといった症状がある方にも用いられます。
虚弱体質の方には七物降下湯が使われる
七物降下湯(しちもつこうかとう)は、体力が中等度以下で、顔色が悪く疲れやすい方の高血圧に用いられる漢方薬です。
これは日本で創案された処方で、高齢者や体力のない方の高血圧治療に広く使われています。
この漢方薬には釣藤鈎という生薬と、当帰(とうき)や地黄(じおう)といった血を補う生薬が含まれています。
高血圧に伴うのぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重といった症状の改善に効果が期待できます。
七物降下湯は、加齢により血圧が高めになり、様々な症状が気になる方に用いる処方として位置づけられています。
高齢者、体質虚弱、胃腸の弱い方の高血圧の随伴症状に広く用いられている漢方薬です。
小規模な研究では、虚弱体質の高血圧患者において、血圧の低下傾向や随伴症状の改善が報告されています。
SKTの経口投与は、血清中の一酸化窒素(NOx)濃度を用量依存的に上昇させ、3日間の投与でその効果を検出するのに十分でした。
引用:PubMed Enhancement of serum nitric oxide by Shichimotsu-koka-to (Kampo medicine)
また、高血圧切迫症(急激な血圧上昇)の患者に対して、七物降下湯投与により血圧が安定したという症例報告もあります。
漢方は降圧薬と併用できるが副作用と効果の出方には注意が必要
漢方薬を高血圧治療に取り入れる際には、いくつか知っておくべき重要なポイントがあります。
漢方薬は自然由来の生薬から作られているため、「副作用がない」「誰でも安全に飲める」と思われがちですが、実際にはそうではありません。
特に、すでに降圧薬を服用している方が漢方薬を追加する場合や、漢方薬だけで治療を始める場合には、正しい知識を持って臨むことが重要です。
また、漢方薬は降圧薬のように服用後すぐに効果が現れるものではありません。
体質を改善しながら徐々に効果を発揮するため、効果を実感できるまでにある程度の時間が必要です。
効果が出ないからとすぐにやめてしまったり、逆に効果がないのに漫然と続けたりすることがないよう、適切な判断が求められます。
ここでは、降圧薬との併用の可否、漢方薬の副作用、そして効果が現れるまでの期間について、医師の立場から詳しく解説します。
これらの知識を持つことで、より安全で効果的な漢方治療を受けることができます。
降圧薬と漢方薬の併用は可能だが医師への相談が必須
降圧薬と漢方薬は基本的に併用可能です。
むしろ、高血圧治療において両者を組み合わせることで、より効果的な治療ができる場合があります。
降圧薬によって血圧は下がっても、肩こりやめまいなどの症状が改善されない場合、体質に合った漢方薬を併用することで、これらの症状も改善されることがあります。
また、複数の降圧薬を服用していても血圧が十分に下がらない場合に、漢方薬の併用が血圧の安定化に役立つ場合があります。
- 甘草(かんぞう)を含む漢方薬は血圧を上昇させる可能性がある
- 複数の甘草含有漢方薬の併用や長期服用には特に注意
- 一部のカルシウム拮抗薬は柑橘類成分との相互作用の可能性に注意
- 必ず現在服用中のすべての薬を医師に伝える
- 自己判断で併用せず、医師の指導のもとで行う
甘草の主要成分であるグリチルリチンは、腎臓のホルモン調節を妨げることで、体内に塩分が蓄積し、血圧が上昇する可能性があります。
また、一部のカルシウム拮抗薬は柑橘類との相互作用が知られており、柑橘系成分を含む漢方薬との併用時には念のため注意が必要です。
このため、降圧薬を服用している方が漢方薬を追加する場合、また漢方薬をすでに服用している方が降圧薬を開始する場合は、必ず医師に相談してください。
現在服用している薬をすべて医師に伝えることが、安全で効果的な治療につながります。
漢方薬にも副作用があり体質に合わないこともある
漢方薬は自然由来の生薬から作られているため、副作用が少ないというイメージがありますが、実際には副作用が起こる可能性があります。
漢方薬の主な副作用
- 胃もたれ
- 食欲低下
- 吐き気
- 下痢
- 偽アルドステロン症(甘草含有漢方薬)
- 血圧上昇
- むくみ
- 低カリウム血症
- 筋力低下
- 不整脈
- 間質性肺炎
- 肝機能障害
- 腸間膜静脈硬化症
特に体質に合わない漢方薬を服用した場合、これらの症状が現れやすくなります。
例えば、体力のない虚弱体質の方が、体力のある方向けの漢方薬を服用すると、胃腸障害を起こしやすくなります。
また、甘草を含む漢方薬では、偽アルドステロン症という副作用が起こることがあります。
これは、血圧上昇、むくみ、低カリウム血症などの症状を引き起こし、重症化すると筋力低下や不整脈につながる可能性があります。
特に、複数の甘草含有漢方薬を併用している場合や、高齢者、腎機能が低下している方は注意が必要です。
まれではありますが、漢方薬による重大な副作用として、間質性肺炎、肝機能障害、腸間膜静脈硬化症などが報告されています。
これらの副作用は長期間服用した場合に起こりやすいとされています。
体質に合わない漢方薬を服用すると、全く効果が得られないこともあります。
漢方医学では「証」という概念があり、患者さんの体質や症状に合った漢方薬を選ぶことが非常に重要です。
同じ高血圧でも、証が違えば異なる漢方薬が選択されます。
このため、漢方薬を服用する際は、医師や薬剤師に自分の体調や他に服用している薬について詳しく伝え、適切な漢方薬を選んでもらうことが大切です。
服用中に気になる症状が現れた場合は、すぐに服用を中止して医師に相談しましょう。
効果が実感できるまで数週間から数ヶ月かかる
漢方薬の効果が現れるまでの期間は、症状の種類や個人の体質によって大きく異なります。
漢方薬の効果が現れるまでの目安
| 症状のタイプ | 効果が現れる期間 | 具体例 |
|---|---|---|
| 急性症状 | 数日〜1週間 | 風邪、下痢、鼻血、二日酔い |
| 一般的な変化 | 1〜2週間 | 何らかの体調変化を実感 |
| 慢性的な症状 | 1ヶ月以上 | 高血圧、肩こり、めまい |
| 体質改善 | 数ヶ月 | 根本的な体質の変化 |
一般的には、服用を開始してから1~2週間で何らかの変化が現れることが多いとされています。
急性の症状に対しては、漢方薬でも比較的早く効果が現れることがあります。
例えば、風邪や下痢などでは、短期間で改善することがあります。
鼻血や二日酔いに対しては、数日以内に効果が認められることもあります。
しかし、高血圧のような慢性的な状態では、効果を実感できるまでにある程度の時間が必要です。
一般的には、少なくとも1ヶ月程度は継続して服用する必要があります。
体質改善を目指す場合は、数ヶ月かかることもあります。
大切なのは、服用を始めてから自分の体調変化をよく観察することです。
一番困っている症状が変わらなくても、他の症状が改善したり、体調が全体的に良くなったりしていれば、その漢方薬が体質に合っている可能性があります。
そのような場合は、継続して服用することで、さらなる改善が期待できます。
逆に、1ヶ月以上服用しても全く変化がない場合や、他の不快な症状が現れた場合は、その漢方薬が体質に合っていない可能性があります。
このような場合は、医師や薬剤師に相談して、別の漢方薬に変更することを検討しましょう。
また、漢方薬の効果は降圧薬に比べると緩やかです。
血圧を急激に下げる必要がある場合や、すでに高血圧による臓器障害が進行している場合は、西洋医学の降圧薬による治療が優先されます。
漢方薬はあくまで体質改善や随伴症状の緩和を目的とした補助的な治療と考えるのが適切です。
漢方薬は医師や薬剤師に相談して体質に合ったものを選ぶ
漢方薬を使った治療で最も重要なのは、自分の体質や症状に合った漢方薬を選ぶことです。
同じ「高血圧」という診断を受けた方でも、体力がある方とない方、イライラしやすい方と疲れやすい方、便秘がちな方と胃腸が弱い方では、適した漢方薬がまったく異なります。
これは西洋医学の考え方とは大きく異なる点で、漢方医学ならではの特徴です。
また、漢方薬はどこで相談できるのか、保険は使えるのかといった実際的な疑問も多いでしょう。
最近では様々な場所で漢方薬を入手できるようになりましたが、それぞれに特徴があり、費用や相談の深さも異なります。
ここでは、自分に合った漢方薬を見つけるための具体的な方法、相談できる場所の選び方、そして費用や保険適用について詳しく解説します。
正しい知識を持って漢方治療を始めることで、より効果的で安全な治療を受けることができます。
自己判断で選ばず専門家に「証」を診てもらう
漢方治療で最も大切なのは、自分の「証(しょう)」を正しく判断してもらうことです。
証とは、その人の体質や体力、現在の症状を総合的に評価した状態のことを指します。
漢方医学では、この証に基づいて最適な漢方薬を選択します。
証を判断するためには、「四診(ししん)」という独自の診察法が用いられます。
- 望診(ぼうしん): 顔色、表情、体型、姿勢などを観察する
- 聞診(ぶんしん): 声の調子、咳の出方、呼吸音、体臭などを確認する
- 問診(もんしん): 症状、病歴、生活習慣、食事の好みなどを詳しく尋ねる
- 切診(せっしん): 脈や腹部を触れて診る
- 脈診: 脈の強さ、速さ、リズムを診る
- 腹診: お腹を触って抵抗や圧痛を確認する
- 舌診: 舌の色、形、苔の状態を観察する
これらの診察を通じて、その人の体質が「実証(体力がある)」か「虚証(体力がない)」か、「気・血・水」のどの要素に問題があるかなどを判断します。
市販の漢方薬を自己判断で購入することも可能ですが、体質に合わない漢方薬を選んでしまうと、効果が得られないだけでなく、副作用が現れる可能性もあります。
特に、複数の漢方薬を同時に服用する場合は、生薬の重複により副作用のリスクが高まります。
そのため、漢方薬を初めて試す場合や、症状が複雑な場合は、必ず漢方に詳しい医師や薬剤師に相談することをお勧めします。
専門家は、あなたの体質や現在の症状、生活習慣などを総合的に評価し、最適な漢方薬を提案してくれます。
漢方外来や漢方薬局、内科でも相談できる
漢方薬について相談できる場所は、いくつかあります。
それぞれに特徴がありますので、自分に合った方法を選びましょう。
漢方薬の相談先と特徴
| 相談先 | メリット | デメリット | 費用 | こんな方におすすめ |
|---|---|---|---|---|
| 漢方外来(専門医) | ・本格的な漢方診察 ・四診による詳細な診断 ・体質に最適な処方 ・保険適用 | ・医療機関が限られる ・予約が必要な場合が多い | 保険診療(1〜3割負担) | 本格的な漢方治療を受けたい方 |
| 一般内科クリニック | ・通いやすい ・保険適用 ・他の病気も一緒に診てもらえる | ・医師の漢方知識に差がある ・詳しい漢方診察は期待できない場合も | 保険診療(1〜3割負担) | 気軽に漢方を試したい方 かかりつけ医がいる方 |
| 漢方薬局 | ・じっくり相談できる ・煎じ薬も可能 ・個別化された調合 ・専門知識が豊富 | ・保険適用外 ・費用が高い | 全額自費(1日400〜650円程度) | 時間をかけて相談したい方 煎じ薬を希望する方 |
| オンライン診療 | ・自宅で受診可能 ・薬の配送あり ・時間の融通が利く ・保険対応もあり | ・対面診察ではない ・初診は制限がある場合も | 保険診療または自費 | 通院が難しい方 忙しい方 |
まず、漢方外来のある医療機関では、漢方専門医による本格的な漢方治療を受けることができます。
日本東洋医学会が認定する漢方専門医は、漢方医学に精通しており、四診を用いた詳細な診察を行って、一人ひとりに最適な漢方薬を処方してくれます。
漢方外来では医療保険が適用されますが、実施している医療機関は限られています。
漢方外来がない一般の内科やクリニックでも、医師に希望すれば漢方薬を処方してもらえることがあります。
ただし、すべての医師が漢方に詳しいわけではないため、事前に漢方薬の処方が可能かどうか確認するとよいでしょう。
一般の医療機関では、西洋医学的な診断を行った上で、保険適用されている医療用漢方薬の中から処方されます。
漢方薬局では、漢方の専門知識を持った薬剤師に相談することができます。
じっくりと時間をかけて体質や症状を聞いてもらえるのが特徴です。
また、煎じ薬など、より個別化された漢方薬を調合してもらえることもあります。
ただし、漢方薬局での相談や購入は医療保険の適用外となり、全額自己負担となります。
最近では、オンライン診療で漢方相談ができるサービスも増えています。
スマートフォンやパソコンを使って医師の診察を受け、漢方薬を自宅に配送してもらえる便利なサービスです。
保険診療に対応しているオンライン診療もあります。
どの方法を選ぶかは、あなたの状況や希望によります。
本格的な漢方治療を受けたい場合は漢方外来、気軽に相談したい場合はかかりつけ医や薬局、じっくり相談したい場合は漢方薬局が適しているでしょう。
医師の処方なら保険適用で漢方薬が使える
医療機関で医師の診察を受けて処方される漢方薬は、基本的に医療保険が適用されます。
現在、148種類の医療用漢方製剤が保険適用の対象となっています。
- 医師が診断した病気や症状に対して、その漢方薬が適応となっている
- 治療目的であること(予防目的や美容目的は対象外)
- 定められた用法・用量の範囲内であること
- 保険診療を行っている医療機関で処方されること
保険適用で漢方薬を処方してもらうためには、いくつかの条件があります。
まず、医師が診断した病気や症状に対して、その漢方薬が適応となっていることが必要です。
それぞれの漢方薬には、保険適用が認められている効能・効果が定められており、それ以外の目的では保険適用になりません。
また、治療目的であることが前提となります。
予防目的や美容目的での処方は、保険適用の対象外となります。
用法・用量も定められた範囲内である必要があります。
保険適用の漢方薬は、窓口での支払いが自己負担割合(1~3割)に応じた額で済むため、市販の漢方薬や漢方薬局で購入する煎じ薬に比べて、かなり安価に入手できます。
ただし、診察料や調剤料は別途かかります。
生薬を煎じて飲む煎じ薬も、制度上は保険適用が可能です。
しかし、煎じ薬の処方には高度な漢方知識が必要なため、対応できる医療機関は限られています。
また、手間や原料費の高騰により、煎じ薬については自由診療(全額自己負担)としている医療機関も増えています。
医療機関によっては、すべての診療を自由診療としているところもあります。
そのような医療機関では、たとえ保険適用が可能な漢方薬を処方する場合でも、全額自己負担となります。
漢方薬の処方を希望する場合は、受診前に医療機関に問い合わせて、保険診療で漢方薬を処方しているかどうか確認するとよいでしょう。
よくある質問
- 漢方薬だけで高血圧を治療できますか
-
漢方薬だけで高血圧を完全にコントロールすることは困難です。
軽症の高血圧で、生活習慣の改善とともに漢方薬を用いることで血圧が安定する場合もありますが、基本的には西洋医学の降圧薬による治療が優先されます。
漢方薬は体質改善や随伴症状の緩和を目的とした補助的な治療と考えるのが適切です。
- 降圧薬を飲んでいますが、漢方薬を追加しても大丈夫ですか
-
降圧薬と漢方薬は基本的に併用可能です。
むしろ、降圧薬だけでは改善しない肩こりやめまいなどの症状に対して、漢方薬を併用することで効果が期待できます。
ただし、甘草を含む漢方薬の過剰摂取や、一部のカルシウム拮抗薬と柑橘類との相互作用には注意が必要です。
必ず医師に相談してから併用してください。
- 漢方薬に副作用はありますか
-
漢方薬にも副作用はあります。
最も多いのは胃もたれや食欲低下などの胃腸症状です。
また、甘草を含む漢方薬では偽アルドステロン症(血圧上昇、むくみなど)が起こることがあります。
まれに間質性肺炎や肝機能障害などの重大な副作用も報告されています。
気になる症状が現れた場合は、すぐに医師に相談しましょう。
- 効果が出るまでどのくらいかかりますか
-
漢方薬の効果が現れる時期は個人差がありますが、一般的には1~2週間で何らかの変化が現れることがあります。
高血圧のような慢性的な状態では、少なくとも1ヶ月程度は継続して服用する必要があります。
体質改善を目指す場合は、数ヶ月かかることもあります。
1ヶ月以上服用しても全く変化がない場合は、医師に相談して別の漢方薬への変更を検討しましょう。
- 市販の漢方薬と病院で処方される漢方薬に違いはありますか
-
医療用漢方製剤と一般用漢方製剤(市販薬)は、同じ処方名であれば成分上の違いはほとんどありません。
ただし、医療機関で処方される場合は医師の診察を受けて体質に合ったものを選んでもらえ、保険が適用されるため費用が安くなります。
市販の漢方薬を購入する場合は、薬剤師に相談し、自己判断で複数を併用しないよう注意しましょう。
まとめ
高血圧に対する漢方治療は、血圧を直接下げるというより、体質を改善し血圧が安定しやすい状態を作ることを目指す補助的な治療法です。
西洋医学の降圧薬が確実に血圧を下げる効果を持つのに対し、漢方薬は体全体のバランスを整えることで、血圧の安定化や随伴症状の改善を図ります。
漢方薬は体質や症状によって4つのタイプに大きく分けられ、体力がある方には大柴胡湯、頭痛やめまいがある方には釣藤散、のぼせやイライラがある方には黄連解毒湯、虚弱体質の方には七物降下湯などが用いられます。
降圧薬と漢方薬の併用は可能ですが、医師への相談が必須です。
漢方薬にも副作用があり、特に甘草を含む漢方薬の過剰摂取には注意が必要です。
効果が実感できるまでには数週間から数ヶ月かかることが一般的です。
自分に合った漢方薬を見つけるには、自己判断で選ばず、医師や薬剤師に「証」を診てもらうことが大切です。
漢方外来、漢方薬局、一般の内科など、様々な相談先があります。
医師の処方であれば保険適用で漢方薬を使うことができます。
高血圧治療において、漢方薬は西洋医学の降圧薬を補完する選択肢として有用です。
特に、降圧薬だけでは改善しにくい随伴症状がある場合や、軽症の高血圧で生活習慣改善とともに治療を始める場合に適しています。
体質に合った漢方薬を選び、医師の指導のもとで適切に使用することで、より快適な高血圧管理が期待できます。
PubMed Central Hypertension and headache: a coincidence without any real association
PubMed Central Highlights of the 2019 Japanese Society of Hypertension Guidelines and perspectives on the management of Asian hypertensive patients
American Heart Association Journals 2020 International Society of Hypertension Global Hypertension Practice Guidelines
PubMed Central Prescription of Kampo Drugs in the Japanese Health Care Insurance Program
J-STAGE Comparative Effectiveness of Angiotensin II Receptor Blockers in Patients With Hypertension in Japan
PubMed Central Traditional Chinese Medicine Syndromes for Essential Hypertension
PubMed Enhancement of serum nitric oxide by Shichimotsu-koka-to (Kampo medicine)
日本医学雑誌 (1)高血圧における漢方治療のエビデンス[特集:循環器疾患における漢方治療のエビデンス]
北里大学医学部 漢方外来|Q&A
J-STAGE 本態性高血圧症患者における大柴胡湯の血圧および血清リポ蛋白, アポ蛋白レベルに及ぼす効果
ScienceDirect Endothelium-dependent and-independent vasoactive actions of a japanese kampo medicine, saiko-ka-ryukotsu-borei-to
J-STAGE 釣藤散が耳鳴の治療経過中に 速やかな降圧効果を示した1症例
クラシエ 【漢方解説】耳鳴りに七物降下湯(しちもつこうかとう)
J-STAGE 繰り返す高血圧切迫症に対して七物降下湯が奏効した5症例
PubMed Effects of Kampo medicines on P-glycoprotein
PubMed Interaction of grapefruit juice and calcium channel blockers
Nature 18β-glycyrrhetyl-3-O-sulfate would be a causative agent of licorice-induced pseudoaldosteronism
Center for Safety of Chinese Herbal Therapy Interstitial Pneumonia
Multidisciplinary Digital Publishing Institute Identifying Crude Drugs in Kampo Medicines Associated with Drug-Induced Liver Injury Using the Japanese Adverse Drug Event Report Database: A Comprehensive Survey
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