健康診断で「血圧が高め」と指摘されたけれど、具体的に何をすればよいのかわからない。
そんな悩みを抱えている方は少なくありません。
高血圧は日本人にとって最も身近な生活習慣病の一つであり、放置すると脳卒中や心筋梗塞など重大な病気につながる可能性があります。
しかし、適切な対策を取ることで、高血圧は十分に改善できる病態です。
- 生活習慣の改善(質の良い睡眠確保、ストレス管理、禁煙と節酒)
- 食事改善(減塩、ミネラル豊富な食品摂取、DASH食の実践)
- 運動習慣(週5日以上の有酸素運動、週2回以上の筋力トレーニング)
- 医療的介入(血圧値や危険因子に応じた降圧薬による薬物治療)
この記事では、高血圧を改善するために今日から実践できる具体的な方法をわかりやすく解説します。
食事、運動、生活習慣の見直しなど、医学的根拠に基づいた効果的な対策をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 高血圧とはどのような状態で、なぜ改善が必要なのか
- 生活習慣を見直すことで血圧を下げる具体的な方法
- 食事による高血圧対策のポイント
- 効果的な運動の取り入れ方
- 医療機関を受診すべきタイミング
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
高血圧を改善するために知っておきたいこと
高血圧の改善を始める前に、まず高血圧がどのような状態なのか、そしてなぜ改善が必要なのかを理解しておくことが大切です。
高血圧は自覚症状がほとんどないため「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれていますが、放置すると全身の血管や臓器に深刻なダメージを与える可能性があります。
改善への第一歩は、高血圧という状態を正しく理解することから始まります。
高血圧とは血圧が140/90mmHg以上の状態のこと
高血圧とは、血液が血管の壁を押す力が常に高い状態が続くことをいいます。
日本高血圧学会の診断基準では、診察室での測定で収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。
一方、家庭で測定する場合は135/85mmHg以上が高血圧の基準となっています。
現在、20歳以上の日本人のおよそ2人に1人が高血圧といわれており、極めて身近な健康問題です。
高血圧の大部分は、特定の病気が原因ではない「本態性高血圧」と呼ばれるタイプで、食塩の過剰摂取、肥満、運動不足、ストレスなどの生活習慣が複合的に関わって発症すると考えられています。
高血圧を放置すると脳卒中・心筋梗塞のリスクが高まる
高血圧が怖いのは、自覚症状がほとんどないまま、静かに全身の血管や臓器にダメージを与え続けるという点です。
血圧が高い状態が続くと、血管の壁に常に強い圧力がかかるため、血管が傷つきやすくなります。
傷ついた血管では動脈硬化が進行し、血管が硬く狭くなっていきます。
この動脈硬化が進むと、脳では脳梗塞や脳出血といった脳卒中のリスクが高まります。
心臓では、狭心症や心筋梗塞、心不全などの重大な病気を引き起こす可能性があります。
また、腎臓の機能が低下して腎不全に至ったり、目の網膜に出血が起こったりすることもあります。
もし高血圧が完全に予防できれば、日本では年間10万人以上の方が死亡せずに済むと推計されているほど、高血圧の影響は深刻です。
改善の鍵は減塩と体重管理といった生活習慣の見直し
高血圧の改善において最も重要なのが、生活習慣の見直しです。
国際的な研究によって、減塩、体重管理、適度な運動、節酒といった生活習慣の改善が血圧を下げる効果があることが明らかになっています。
これらの生活習慣の改善は、個人差が大きいものの降圧薬1剤分に匹敵する効果が期待できる場合もあります。
特に日本人の場合、高血圧の最大の原因は食塩の過剰摂取とされています。
若年から中年の男性では、肥満に伴う高血圧も増加傾向にあります。
そのほか、運動不足、睡眠不足、過度な飲酒、ストレスなども高血圧の原因となる生活習慣として知られています。
つまり、これらの生活習慣を一つずつ改善していくことが、高血圧改善への確実な道筋となるのです。
日々の生活習慣で血圧を改善する方法
高血圧を改善するためには、毎日の生活習慣を見直すことが欠かせません。
ここでは、日常生活の中で取り組める具体的な対策について解説します。
これらの習慣は、血圧を下げるだけでなく、全身の健康維持にも役立つものばかりです。
睡眠不足は夜間高血圧を招くため、質の良い睡眠を確保しよう
十分な睡眠は、血圧管理において非常に重要な要素です。
睡眠不足や質の悪い睡眠が続くと、血圧が上昇しやすくなることが研究で示されています。
成人の場合、1日7時間以上の睡眠を確保することが推奨されています。
睡眠中は本来、血圧が日中よりも低下するのが正常な状態です。
しかし、睡眠時間が短かったり、睡眠の質が悪かったりすると、この血圧の低下が十分に起こらず、夜間も高い血圧が続いてしまいます。
夜間高血圧は、心血管疾患のリスクをさらに高めることがわかっています。
夜間血圧と血圧上昇パターンは、特に心不全において、全心血管イベント発生率と独立して関連していた。
引用:PubMed Central Nighttime Blood Pressure Phenotype and Cardiovascular Prognosis: Practitioner-Based Nationwide JAMP Study
良質な睡眠を得るためには、毎日同じ時刻に寝起きする規則正しい生活リズムを心がけることが大切です。
就寝前の数時間は、パソコンやスマートフォンなどの強い光を避け、カフェインやアルコールの摂取も控えるとよいでしょう。
また、いびきをかく、睡眠中に呼吸が止まるといった症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるため、医療機関での相談をお勧めします。
ストレスとうまく付き合うことで血圧の上昇を防ぐ
長期的なストレスは、血圧を上昇させる要因の一つです。
ストレスを感じると、体内ではストレスホルモンが分泌され、心拍数が増加し、血管が収縮します。
この状態が慢性的に続くと、高血圧の発症や悪化につながる可能性があります。
現代社会では、仕事や人間関係など、ストレスの原因を完全に取り除くことは難しいかもしれません。
しかし、ストレスとうまく付き合う方法を身につけることは可能です。
深呼吸や瞑想、ヨガといったリラクゼーション法を取り入れることで、心身の緊張を和らげる効果が期待できる場合があります。
血圧と参加者の年齢の違いによる限界があるものの、瞑想とヨガは薬物療法の有効な代替療法であることが実証されました。
引用:PubMed Blood Pressure Response to Meditation and Yoga: A Systematic Review and Meta-Analysis
また、趣味や運動など、自分が楽しめる活動に時間を使うことも、ストレス軽減に役立ちます。
家族や友人と話をしたり、屋外で自然に触れたりする時間を持つことも、精神的なリフレッシュにつながるでしょう。
もしストレスや不安が長期間続き、日常生活に支障が出ている場合は、専門家に相談することも検討してください。
禁煙の重要性と適度な飲酒量の目安
喫煙は、高血圧だけでなく、あらゆる心血管疾患のリスクを高める重大な危険因子です。
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、血圧を上昇させます。
また、喫煙は動脈硬化を促進するため、高血圧と相まって脳卒中や心筋梗塞のリスクを大幅に高めてしまいます。
ニコチンは、喫煙者に経験する急性心血管イベントや動脈硬化の促進に寄与する可能性のある薬理作用を発揮します。
引用:PubMed Central Cardiovascular Toxicity of Nicotine: Implications for Electronic Cigarette Use
禁煙は、高血圧改善のために最も重要な対策の一つといえます。
飲酒については、適量を守ることが大切です。
少量から中等量のアルコール摂取は一時的に血管を拡張させますが、過度な飲酒は血圧を上昇させる原因となります。
アメリカ心臓協会のガイドラインでは、男性は1日2ドリンク以下、女性は1日1ドリンク以下にアルコール摂取を制限することが推奨されています(1ドリンク=ビール約355ml、ワイン約150ml、日本酒約90ml相当)。
日本の基準では、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで約20g程度(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)とされています。
また、飲酒は体重増加の原因にもなりやすく、アルコール自体が高カロリーであることも注意が必要です。
血圧が高めの方は、休肝日を設けるなど、飲酒習慣を見直すことをお勧めします。
食事による高血圧対策のポイント
食事は高血圧改善における最も重要な要素の一つです。
特に日本人の高血圧の最大の原因とされる食塩の摂取量を減らすことは、血圧管理の基本となります。
ここでは、毎日の食事で実践できる具体的な対策をご紹介します。
1日6g未満の減塩を意識した食生活で血圧を上げないようにする
食塩の過剰摂取は、血圧を上昇させる大きな要因です。
食塩を多く摂ると血液中の塩分濃度が高まりますが、体はそれを薄めようとして血液中に水分を引き込みます。
その結果、血液量が増えて血管壁にかかる圧力が高くなり、血圧が上昇するのです。
世界保健機関(WHO)は、成人の1日の食塩摂取量を5g未満に抑えることを推奨しています。
日本高血圧学会では、高血圧患者に対して1日6g未満という減塩目標を強く推奨しており、一般の方でも「健康日本21(第三次)」では7g未満が目標とされています。
しかし、実際の日本人の平均食塩摂取量は約9.7〜9.8gと、目標値を大きく上回っているのが現状です。
- 調味料は「かける」より「つける」
- 麺類の汁は残すようにする
- 塩分を多く含む加工食品を控える
- 香辛料・ハーブなどで風味をつける
- 少しずつ薄味に慣れる
減塩を実践する上で重要なのは、食塩の多くが加工食品や調味料から摂取されているという事実を知ることです。
醤油、味噌、ソース、ドレッシングといった調味料は、かけるのではなくつけて使うだけでも食塩摂取量を減らせます。
また、ラーメンやうどんなどの麺類の汁を全部飲んでしまうと、それだけで5〜8g程度の食塩を摂取してしまうため、汁は残すようにしましょう。
新鮮な食材を使い、香辛料やハーブ、レモン汁などで風味をつけることで、食塩を減らしても美味しく食事を楽しむことができます。
徐々に薄味に慣れていくと、素材本来の味を感じられるようになり、食事の満足度も維持できるでしょう。
ミネラルは血圧を下げる効果が期待できる栄養素
減塩だけでなく、積極的に摂りたい栄養素もあります。
特に注目したいのが、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルです。
血圧を下げる効果が期待できる栄養素
| 栄養素 | 主な働き | 多く含まれる食品 |
|---|---|---|
| カリウム | 余分な塩分を排出し血圧を安定 | 野菜、果物、大豆製品、海藻類 |
| カルシウム | 血圧を安定させる | 牛乳、乳製品、小魚、大豆製品 |
| マグネシウム | 血管を広げ血圧を下げる | ナッツ類、全粒穀物、豆類 |
| 食物繊維 | 血圧・コレステロールを改善 | 野菜、果物、全粒穀物、豆類 |
カリウムには、腎臓から余分な食塩を排出しやすくする働きがあり、血圧を安定させる効果が期待できます。
野菜や果物、大豆製品、海藻類などに豊富に含まれています。
ただし、腎臓に病気がある方はカリウムの摂取制限が必要な場合があるため、主治医に相談してください。
カルシウムも血圧を安定させる効果があるとされています。
牛乳や乳製品、小魚、大豆製品などから摂取できます。特に牛乳や乳製品からのカルシウムは吸収率が高いことが知られています。
マグネシウムは血管を広げる働きがあり、ナッツ類、全粒穀物、豆類などに多く含まれています。
また、食物繊維を多く摂ることも重要です。
食物繊維には、血圧やコレステロールを改善する効果が報告されています。
これらの知見は、CVDおよび高血圧の患者にとって、食物繊維の摂取量を増やすことの有益性を強調するものである。
引用:PubMed Dietary fibre in hypertension and cardiovascular disease management: systematic review and meta-analyses
野菜、果物、全粒穀物、豆類を積極的に食事に取り入れましょう。
控えたい食品と積極的に摂りたい食品
高血圧の改善を目指すなら、控えたい食品と積極的に摂りたい食品を知っておくことが役立ちます。
控えたい食品としては、まず食塩を多く含む加工食品が挙げられます。
- 加工食品(ハム、ソーセージ、漬物、スナック菓子、インスタント食品)
- 塩分を多く含む調味料や加工肉
- 砂糖を多く含む飲料(清涼飲料水、フルーツジュース、エナジードリンク)
- 赤身肉は適量を意識する
ハムやソーセージなどの加工肉は食塩含有量が高いため、控えめにすることが推奨されます。
インスタント食品、スナック菓子、漬物類も食塩含有量が高い傾向にあります。
赤身肉については、適量を心がけましょう。
砂糖を多く含む飲料も控えめにしましょう。
清涼飲料水やフルーツジュース、エナジードリンクなどは、体重増加の原因となり、間接的に高血圧のリスクを高めます。
実際、砂糖の摂取量を減らすことで血圧が低下したという研究報告もあります。
ただしその効果は小から中等度で、設計によるばらつきがあります。
6週間の果糖制限は、それ自体が用量依存的に拡張期血圧を低下させる。
引用:ScienceDirect Effects of fructose restriction on blood pressure: Secondary analysis of a double-blind randomized controlled trial
一方、積極的に摂りたい食品は、野菜や果物、全粒穀物、脂肪分の少ない乳製品、魚、鶏肉、ナッツ類、豆類などです。
- 野菜・果物
- 全粒穀物
- 脂肪分の少ない乳製品
- 魚・鶏肉
- ナッツ類・豆類
これらの食品を中心とした食事パターンは「DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)」と呼ばれ、高血圧の予防と改善に効果的であることが科学的に証明されています。
研究によると、DASH食を実践することで、収縮期血圧を8〜14mmHg程度下げる効果が期待できるとされています。
低ナトリウムレベルのDASH食では、高血圧のない参加者の平均収縮期血圧が7.1 mmHg低下し、高血圧の参加者では11.5 mmHg低下しました。
引用:New England Journal of Medicine Effects on Blood Pressure of Reduced Dietary Sodium and the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) Diet
運動は血圧を改善する効果的なアプローチ
運動は、高血圧の改善において非常に効果的な対策です。
定期的な運動習慣を持つことで、薬物治療に匹敵するほどの降圧効果が得られる場合もあります。
ここでは、高血圧改善に適した運動の種類と実践方法について解説します。
高血圧改善に効果的な運動はウォーキングとジョギング
高血圧の改善には、有酸素運動と筋力トレーニングの両方が推奨されています。
有酸素運動とは、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など、一定の時間継続して行う運動のことです。
研究によると、有酸素運動を定期的に行うことで、収縮期血圧を5〜7mmHg、拡張期血圧を4〜6mmHg程度下げる効果が期待できるとされています。
持久力トレーニング後の血圧低下は、高血圧患者26研究グループ(-8.3 [-10.7 ~ -6.0]/-5.2 [-6.8 ~ -3.4] mm Hg)の方が、前高血圧患者50グループ(-2.1 [-3.3 ~ -0.83]/-1.7 [-2.7 ~ -0.68])および正常血圧患者29グループ(-0.75 [-2.2 ~ +0.69]/-1.1 [-2.2 ~ -0.068])よりも大きかった(P<0.0001)。
引用:PubMed Exercise training for blood pressure: a systematic review and meta-analysis
この効果は、降圧薬1剤分に相当する場合もあり、軽度から中等度の高血圧の方にとって非常に有効な対策といえます。
有酸素運動が血圧を下げるメカニズムには、以下のように複数の要因が関わっていると考えられています。
- 血管の柔軟性が改善される
- 血管を広げる物質が増える
- 交感神経の活動が抑えられる
筋力トレーニング(レジスタンス運動)も、血圧改善に効果があることが明らかになっています。
研究によって結果にばらつきがありますが、ダンベルや自重を使った筋力トレーニングを適切に行うことで、血圧を数mmHg程度下げる効果が報告されています。
本メタアナリシスは、動的抵抗トレーニングと等尺性ハンドグリップトレーニングの血圧降下作用を裏付けています。
引用:PubMed Impact of resistance training on blood pressure and other cardiovascular risk factors: a meta-analysis of randomized, controlled trials
かつては高血圧の方には筋力トレーニングは勧められていませんでしたが、現在では、重すぎない負荷で、息を止めずに行えば安全で効果的であることがわかっています。
運動は1日30分程度、週5日以上が望ましい
アメリカ心臓協会や世界保健機関のガイドラインでは、成人に対して以下のような運動が推奨されています。
有酸素運動については、週に150〜300分の中強度の運動、または75〜150分の高強度の運動、あるいはその組み合わせを行うことが望ましいとされています。
これを1日あたりに換算すると、中強度の運動なら1日30分程度を週5日以上行うことが目安となります。
推奨される有酸素運動の目安
| 運動の種類 | 週間の目安時間 | 1日の目安 | 強度の目安 | 具体例 |
|---|---|---|---|---|
| 中強度の有酸素運動 | 150〜300分 | 約30分×週5日 | 少し息が上がる程度(会話可・歌は難しい) | 速歩き、軽いジョギング、サイクリング |
| 高強度の有酸素運動 | 75〜150分 | 約15〜25分×週5日 | 息が弾み数語ごとに息継ぎが必要 | ランニング、坂道の速歩き |
中強度の運動とは、少し息が上がる程度で、会話はできるが歌を歌うのは難しい程度の運動です。
速歩きや軽いジョギング、サイクリングなどが該当します。
高強度の運動は、呼吸と心拍数が大きく上がり、数語話すと息継ぎが必要になる程度の運動で、ランニングや坂道の速歩きなどが含まれます。
筋力トレーニングは、週2回以上行うことが推奨されています。
主要な筋肉群(脚、腰、背中、腹部、胸、肩、腕)を対象に、各運動を8〜12回繰り返すセットを2〜3セット行うとよいでしょう。
運動は、1回で30分続けて行う必要はありません。
短時間の運動を複数回に分けて行っても、健康効果が得られることが研究で示されています。
忙しい日常の中でも、通勤時に一駅分歩く、昼休みに散歩する、階段を使うといった工夫で、運動時間を確保することができます。
高血圧の人が運動時に気をつけること
運動を始める際には、いくつか注意すべき点があります。
まず、いきなり激しい運動を始めるのは避けましょう。
運動習慣がなかった方は、軽い運動から始めて、徐々に強度と時間を増やしていくことが大切です。
最初は1日10分程度のウォーキングから始め、体が慣れてきたら少しずつ時間を延ばしていくとよいでしょう。
運動中に胸の痛み、強い息切れ、めまい、ふらつきなどを感じたら、すぐに運動を中止して休憩してください。
これらの症状が頻繁に起こる場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
血圧が非常に高い状態(180/110mmHg以上)のときは、運動を控えるべきです。
また、すでに心臓病や糖尿病などの持病がある方、高齢の方は、運動を始める前に主治医に相談することをお勧めします。
重いものを持ち上げる際に息を止めてしまうと、血圧が急激に上昇する可能性があるため、筋力トレーニングを行う際は、動作中も呼吸を続けることを意識しましょう。
いつ病院に行くべき?受診の目安と治療について
生活習慣の改善は高血圧対策の基本ですが、場合によっては医療機関での治療が必要になります。
ここでは、どのようなときに受診すべきか、また医療機関ではどのような治療が行われるのかについて解説します。
受診を検討すべき血圧値は135/85mmHg以上
家庭で血圧を測定して収縮期血圧が135mmHg以上、または拡張期血圧が85mmHg以上ある場合は、高血圧の可能性があります。
健康診断で高血圧を指摘された場合も、必ず医療機関を受診することをお勧めします。
特に、血圧が160/100mmHg以上の場合は、速やかに医療機関を受診すべきです。
このレベルの高血圧は、心血管疾患のリスクが高く、早期の治療介入が重要だからです。
また、血圧が180/120mmHg以上で、以下の症状がある場合は、高血圧緊急症の可能性があり、直ちに救急医療機関を受診する必要があります。
- 胸の痛み
- 息切れ
- 背中の痛み
- しびれ
- 脱力感
- 視覚の変化
- 話しにくさなど
血圧がそれほど高くなくても、糖尿病、腎臓病、心臓病などの持病がある方や、家族に心血管疾患の既往がある方は、早めに医療機関で相談することをお勧めします。
生活習慣改善が基本!効果不十分なら降圧薬で治療開始
医療機関では、まず正確な血圧測定と、血圧上昇の原因となる他の病気がないかの検査が行われます。
血液検査、尿検査、心電図検査、胸部レントゲン検査などを通じて、臓器への影響や他の危険因子の有無を確認します。
治療の基本は、まず生活習慣の改善です。
医師や看護師、栄養士などから、減塩、体重管理、運動、節酒、禁煙などについて具体的な指導を受けることができます。
軽度の高血圧(140〜159/90〜99mmHg)で他の危険因子がない場合は、まず3〜6ヶ月間、生活習慣の改善に取り組み、その効果を確認します。
ただし、具体的な期間や薬物治療の開始時期は、医師が年齢や総合的なリスクを考慮して判断します。
ステージ1高血圧患者に対し、生活習慣の改善と3~6ヶ月ごとのモニタリングを推奨しています。
引用:Cleveland Clinic Journal of Medicine Managing stage 1 hypertension: Consider the risks, stop the progression
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合や、最初から血圧がかなり高い場合、他の危険因子(糖尿病、腎臓病、心臓病など)がある場合は、降圧薬による薬物治療が開始されます。
降圧薬には、以下のように様々な種類があります。
主な降圧薬の種類と特徴
| 薬の種類 | 主な作用・特徴 |
|---|---|
| カルシウム拮抗薬 | 血管を広げて血圧を下げる |
| ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬) | 血管収縮を抑え、腎保護作用もある |
| ACE阻害薬 | 血管拡張と心臓への負担軽減 |
| 利尿薬 | 体内の余分な水分・塩分を排出 |
| β遮断薬 | 心拍数を抑え心臓の負担を軽減 |
医師は、患者さんの年齢、血圧レベル、合併症の有無などを考慮して、最適な薬を選択します。
降圧薬を開始した後も、生活習慣の改善を継続することが重要です。
生活習慣が大きく改善し、血圧が良好にコントロールされている場合は、医師と相談の上、薬を減量したり中止したりできる可能性もあります。
ただし、減薬後に血圧が再上昇する場合もあり、長期的な影響については慎重なフォローアップが必要です。
自己判断で薬を中止することは非常に危険ですので、必ず医師の指示に従ってください。
定期的な健康チェックの大切さ
高血圧は自覚症状がほとんどないため、定期的に血圧を測定し、自分の血圧値を把握しておくことが非常に重要です。
まず、年に1回は健康診断を受けることをお勧めします。
健康診断では血圧測定だけでなく、心電図や眼底検査によって、高血圧が心臓や血管に与えている影響を確認できる場合があります。
また、家庭用血圧計を購入し、毎日自宅で血圧を測定する習慣をつけることも、高血圧の早期発見と管理に役立ちます。
家庭血圧は、診察室で測る血圧よりも日常の状態を反映し、より正確な血圧評価ができる場合があります。
HBP と ABP は転帰を予測する能力が同等であり、OBP よりも優れていることが示唆されました。
引用:PubMed Prognostic value of home versus ambulatory blood pressure monitoring: a systematic review and meta-analysis of outcome studies
朝起きてから1時間以内(起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前)と、夜寝る前の1日2回、測定することが推奨されています。
測定した血圧は記録し、医療機関を受診する際に持参すると、医師が治療方針を決める上で非常に参考になります。
最近では、スマートフォンのアプリで血圧を記録・管理できるものもあり、便利に活用できるでしょう。
よくある質問
- 家庭血圧と診察室血圧、どちらを信じればよいですか?
-
両方とも重要な情報ですが、一般的には家庭血圧のほうが日常の血圧をより正確に反映していると考えられています。
診察室では緊張して血圧が上がってしまう「白衣高血圧」や、逆に診察室では正常でも家庭では高い「仮面高血圧」という現象もあります。
ただし、家庭血圧計は正しい方法で測定することが大切ですので、測定方法については医師や薬剤師に確認しましょう。
- 若いうちから血圧が高いのは遺伝でしょうか?
-
高血圧には遺伝的な要因も関与していますが、それだけではありません。
両親が高血圧であっても、適切な生活習慣を維持することで、高血圧の発症を予防したり、発症を遅らせたりすることができる可能性があります。
家族歴がある方は、若いうちから減塩、適正体重の維持、定期的な運動などに気をつけることが特に重要です。
- 血圧の薬は一度飲み始めたら一生やめられないのですか?
-
必ずしもそうではありません。
降圧薬を開始した後に、生活習慣の大幅な改善によって血圧が安定した場合、医師の判断と管理のもとで薬を減量したり中止したりできることがあります。
ただし、ただし、減薬後に血圧が再上昇する場合もあり、長期的な影響については慎重なフォローアップが必要です。
薬を減らせるかどうかは個人差が大きく、また自己判断での中止は危険ですので、必ず医師に相談してください。
- コーヒーやお茶のカフェインは血圧に悪影響ですか?
-
フェインは一時的に血圧を上昇させることがありますが、習慣的に摂取している方では、その効果は小さくなる傾向があります。
欧州食品安全機関(EFSA)は、健康な成人の場合、1日400mg程度(コーヒーなら3〜4杯程度)までのカフェイン摂取は安全としています。
ただし、カフェインに対する感受性には個人差があり、妊娠中や心疾患がある方は配慮が必要です。
- 血圧を下げるサプリメントは効果がありますか?
-
一部のサプリメントには血圧を下げる効果が報告されているものもありますが、その効果は一般的に軽度であり、生活習慣の改善や必要に応じた薬物治療の代わりにはなりません。
サプリメントを使用する場合は、医師に相談し、他の薬との相互作用がないか確認することが大切です。
まとめ
高血圧は、適切な対策を取ることで十分に改善できる病態です。
最も重要なのは、毎日の生活習慣を見直すことです。
減塩を中心とした食事の改善、定期的な運動習慣、質の良い睡眠、ストレス管理、禁煙、節酒といった対策は、どれも血圧を下げる効果が科学的に証明されています。
これらの対策は、一度にすべてを完璧に実践する必要はありません。
できることから一つずつ始めて、少しずつ習慣として定着させていくことが大切です。
小さな改善の積み重ねが、やがて大きな効果となって現れます。
また、自分の血圧値を把握し、定期的に健康診断を受けることも忘れないでください。
血圧が高めだと指摘されたら、早めに医療機関を受診し、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
必要に応じて降圧薬による治療を受けることで、将来の重大な病気を予防することができます。
高血圧の改善は、あなた自身の健康な未来への投資です。
今日から、できることから始めてみませんか。
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横浜市保土ケ谷区 日本人は塩分をとりすぎています!
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