高血圧でお悩みの方の中には、「運動はしたいけど、激しい運動は不安」「日々の生活の中で無理なく血圧管理をしたい」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
実は、ストレッチは高血圧の方でも取り組みやすく、血圧管理に役立つ可能性がある運動方法として注目されています。
カナダで行われた研究では、1日30分のストレッチを週5日、8週間続けたところ、早歩きよりも血圧を下げる効果が高かったという結果も報告されています。
ストレッチは筋肉だけでなく、血管にも働きかけることで血圧を下げる効果が期待できるのです。
特に、中年以降の方などで、その効果が認められたことが複数の研究で報告されています。
- 血管の壁が柔らかくなり血液が流れやすくなる
- 副交感神経が活発になりリラックス状態をもたらす
- ストレスホルモンが減少し血圧上昇を防ぐ
- 1日30分×週5日のストレッチで血圧低下効果が報告されている
ストレッチの最大の利点は、特別な道具や広いスペースを必要とせず、自宅で気軽に始められることです。
テレビを見ながら、仕事の合間に、就寝前のリラックスタイムにと、日常生活の中に自然に取り入れることができます。
また、年齢や体力に関係なく、自分のペースで無理なく続けられるため、運動習慣がない方や高齢の方にもおすすめできる方法です。
この記事では、高血圧の改善にストレッチがどのように役立つのか、そのしくみを医師の視点から詳しく解説します。
また、自宅で今日から始められる具体的なストレッチ方法や、安全に効果的に行うための注意点についてもご紹介します。
さらに、ストレッチの効果を最大限に引き出すための生活習慣の工夫についても触れていきます。
血圧が気になる方、薬だけに頼らない血圧管理を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
- ストレッチが血圧を下げるしくみ
- 高血圧の方におすすめの具体的なストレッチ方法
- ストレッチを安全に行うための注意点
- ストレッチと併せて取り組みたい生活習慣
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
ストレッチが血圧を下げる3つのしくみ
ストレッチが血圧を下げる効果には、体の中でいくつかの変化が関わっています。
単に筋肉を伸ばすだけでなく、血管、神経、ホルモンなど、体のさまざまな部分に働きかけることで、血圧が下がりやすい状態が整うのです。
これまで高血圧の方への運動といえば、ウォーキングやジョギングといった体を動かす運動が中心でした。
しかし最近の研究によって、ストレッチにも血圧を下げる効果があることがわかってきました。
特に興味深いのは、ストレッチによる血圧低下の仕組みが、ウォーキングなどの運動とは一部異なる仕組みで働く可能性があるという点です。
ウォーキングなどの運動が主に心臓や肺の機能を高めることで血圧を下げるのに対し、ストレッチは血管をやわらかくする、神経のバランスを整える、ストレスを和らげるという3つの働きから血圧に作用すると考えられています。
ここでは、ストレッチが血圧を下げる主な3つのしくみについて、科学的な根拠とともに詳しく解説していきます。
これらのしくみを理解することで、ストレッチをより意識的に、効果的に実践できるようになります。
血管がやわらかくなり血液が流れやすくなる
ストレッチを行うと、筋肉だけでなく、筋肉の中を通っている血管も一緒に伸ばされます。
この動きを繰り返すことで、血管の壁がやわらかくなり、血液が流れやすくなることが複数の研究で報告されています。
血管の硬さは「動脈硬化」と密接に関係しています。
一般的に動脈硬化とは、血管が硬くなって弾力を失った状態などを指します。
血管が硬いと、心臓が血液を送り出すのに大きな力が必要となり血圧が上がりやすくなります。
また、高血圧の状態が続くことで血管が硬くなるという悪循環も起こり得ます。
ある研究では、週5回、1回30分のストレッチを4週間続けたところ、中年男性の血管の硬さを示す数値が明らかに良くなったことが報告されています。
本研究の結果は、中年男性において、4週間の定期的な静的ストレッチングが動脈スティフネスを有意に低下させることを示した。
引用:PubMed Central Four weeks of regular static stretching reduces arterial stiffness in middle-aged men
特に注目すべきは、ストレッチによる血管への効果は、伸ばした部位の血管に特によく現れる傾向があります。
たとえば、足のストレッチを行うと、足の血管の硬さが改善されることが確認されています。
ホースを想像してみてください。
硬いホースよりも、やわらかいホースの方が水が流れやすいですよね。
血管も同じで、全身の血管をやわらかく保つためには、体の各部位を満遍なく伸ばすことが大切です。
リラックス効果で緊張状態がほぐれる
ストレッチには、体の緊張をほぐしてリラックスした状態をもたらす効果があります。
私たちの体には「自律神経」という、心臓の動きや血圧を自動的に調整してくれる神経の仕組みがあります。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類があり、交感神経は活動している時や緊張している時に働き、副交感神経はリラックスしている時に働きます。
日常生活で緊張やストレスが続くと、交感神経が優位な状態が長く続き、血圧が上がりやすくなります。
車にたとえると、アクセルを踏みっぱなしの状態です。
適切な強度のストレッチを行うことで副交感神経の活動が高まり、いわばブレーキがかかって、心拍数が落ち着き、血圧が下がりやすい状態になることが研究で示されています。
自律神経とストレッチの関係
| 神経の種類 | 働くタイミング | ストレッチの効果 |
|---|---|---|
| 交感神経 | 活動時、緊張時 | 活動が抑えられる |
| 副交感神経 | リラックス時 | 活動が高まる |
ある90分間のヨガストレッチを行った研究では、ストレッチ後60分から120分の時点で副交感神経の活動が増え、同時にストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの量が減ったことが報告されています。
本研究では、YOG試験において、コルチゾール濃度は実施前と比較して120分後に低下した。
引用:PubMed Central Beneficial Effects of Yoga Stretching on Salivary Stress Hormones and Parasympathetic Nerve Activity
つまり、ストレッチは体を物理的に伸ばすだけでなく、神経の働きにも作用して、血圧が下がりやすい環境を整えてくれるのです。
ストレスが和らぎ血圧の上昇を防ぐ
現代社会では、仕事や人間関係などさまざまなストレスにさらされています。
慢性的なストレスは血圧を上げる大きな要因の一つです。
ストレスを感じると、体の中でストレスホルモンが分泌され、交感神経が活発になって血圧が上昇します。
ストレッチは、このストレスによる血圧上昇を和らげる効果があります。
ゆっくりとした動きで筋肉を伸ばすことは、瞑想に近い効果をもたらし、心を落ち着かせることができます。
首や肩、背中といった部位は特にストレスで緊張しやすく、デスクワークや家事で無意識のうちに力が入ってしまいがちです。
これらの部位をほぐすことで、精神的なリラックス感が得られやすくなります。
特に中年以降の方を対象とした研究で効果が確認されています。
ストレス緩和や血管の柔軟性維持など、様々な要因が良い影響を与えていると考えられます。
日々の生活の中でストレッチを取り入れることで、ストレスによる血圧上昇を予防し、心も体も健康な状態を保つことができるのです。
高血圧の方が取り組みやすいストレッチ5選
ストレッチと一口に言っても、体のどの部位を伸ばすか、どのような姿勢で行うかによって、効果や難易度が異なります。
ここでは、高血圧の方でも安全に、そして効果的に行えるストレッチを5つご紹介します。
これらのストレッチは、特別な道具を必要とせず、自宅で気軽に始められるものばかりです。
大切なのは、痛みを感じない範囲で、ゆっくりと呼吸をしながら行うことです。
研究では、全身をバランスよく伸ばすことで、より高い血圧低下効果が得られることがわかっています。
以下のストレッチを組み合わせて、慣れてきたら、1日合計20分から30分程度を目指すとよいでしょう(必須ではありません)。
まずは短い時間からでも継続することが大切です。
朝起きた時、仕事の合間、就寝前など、生活の中で続けやすいタイミングを見つけることが、習慣化の鍵となります。
- 1回のキープ時間:20〜30秒
- 繰り返し回数:1日2〜3回
- 1日の合計時間:20〜30分を目安
- 強度:「気持ちよく伸びている」程度(痛みは感じない)
- 呼吸:ゆっくりと続ける(息を止めない)
肩や首のこりをほぐすストレッチ
首や肩は日常生活で緊張しやすい部位です。
デスクワークやスマートフォンの使用で前かがみの姿勢が続くと、この部位の筋肉が硬くなり、血の流れが悪くなります。
首や肩のストレッチは、筋肉の緊張をほぐすことなどで、頭痛や肩こりの軽減にもつながります。
- 椅子に座った状態で背筋を伸ばす
- 右手を頭の上から回して左耳の上に置く
- ゆっくりと頭を右側に傾ける
- 左側の首筋が心地よく伸びているのを感じながら20〜30秒キープ
- 反対側も同じように行う
- 両肩を耳に近づけるように上げる
- 5秒間そのままの姿勢を保つ
- ストンと力を抜いて肩を落とす
- これを3〜5回繰り返す
このストレッチは座ったままできるため、仕事の合間や休憩時間にも気軽に取り入れることができます。
肩に力が入っているなと感じたら、いつでも行ってみてください。
背中の筋肉をゆるめるストレッチ
背中の筋肉は体を支える重要な役割を果たしています。
背中が硬くなると、姿勢が悪くなり、全身の血の流れにも影響します。
背中をほぐすストレッチは、上半身全体の緊張を和らげる効果があります。
- 四つん這いの姿勢になる(手は肩の真下、膝は腰の真下)
- 息を吐きながら背中を丸める
- おへそをのぞき込むように頭を下げる(猫が背中を丸めるイメージ)
- この姿勢で5秒保つ
- 息を吸いながら背中を反らせ、顔を前方に向ける
- この動きを5〜10回繰り返す
- 両手を前で組む
- 背中を丸めながら腕を前に伸ばす
- 肩甲骨の間が広がるのを感じながら20〜30秒キープ
デスクワークの合間にもおすすめです。
腰まわりを伸ばすストレッチ
腰まわりの筋肉は、立ったり座ったりする動作で常に使われています。
腰が硬くなると、下半身の血の流れが悪くなり、腰痛の原因にもなります。
腰のストレッチは、下半身全体の血行を良くする効果があります。
- 仰向けに寝て、両膝を立てる
- 両手で右膝を抱え、胸に引き寄せる
- 左足は伸ばしたまま
- 腰から太ももの後ろが伸びているのを感じる
- 20〜30秒キープ
- 反対側も同じように行う
- 両膝を立てた状態で、膝を揃えたまま右側にゆっくりと倒す
- 顔は反対の左側に向ける
- 肩が床から離れないように注意
- 腰がねじれて伸びているのを感じながら20〜30秒キープ
- 反対側も行う
このストレッチは寝る前に行うと、一日の疲れをほぐすことができます。
布団やベッドの上で、そのままリラックスして眠りにつくこともできます。
太ももやふくらはぎを伸ばすストレッチ
下半身の大きな筋肉を伸ばすことは、全身の血流改善に特に効果的です。
太ももやふくらはぎには大きな血管が通っており、この部位をほぐすことで血液の流れが良くなります。
- 立った状態で壁や椅子に手をついて体を支える
- 右手で右足首をつかむ
- かかとをお尻に近づける
- 膝が前に出ないように注意
- 太ももの前側が伸びているのを感じる
- 20〜30秒キープ
- 反対側も同じように行う
- 壁に両手をついて立つ
- 右足を後ろに引く
- かかとを床につけたまま前に体重をかける
- 右のふくらはぎが伸びているのを感じる
- 20〜30秒キープ
- 反対側も行う
座った状態でも、足首を曲げ伸ばししたり、ぐるぐる回したりすることで、ふくらはぎの血流を良くできます。
全身の血流を促す軽いストレッチ
全身を使った軽いストレッチは、体全体の血液の流れを促し、リラックス効果も高まります。
朝起きた時や就寝前に行うと効果的です。
- 両手を上に伸ばして背伸びをする
- かかとを上げて、指先から足先まで全身を伸ばす
- 5〜10秒キープ
- ゆっくりと力を抜く
- これを3〜5回繰り返す
- 両足を肩幅より広めに開く
- 右手を上に伸ばしながら体を左側に倒す
- 体の右側全体が伸びているのを感じる
- 15〜20秒キープ
- 反対側も同じように行う
- 立った状態で足を肩幅に開く
- 膝を軽く曲げながら上体をゆっくりと前に倒す
- 手は床につかなくても構わない
- 頭の重みで自然に体が伸びるのを感じる
- 20〜30秒キープ
これらのストレッチは、組み合わせて行うことでより効果を高めることができます。
ストレッチで血圧を悪化させないための注意点
ストレッチは適切に行えば血圧管理に役立ちますが、誤った方法で行うと逆効果になることもあります。
特に高血圧の方は、血圧が急に変動すると体調を崩すリスクがあるため、安全に配慮しながら行うことが重要です。
多くの方が「ストレッチは優しい運動だから安全」と考えがちですが、実際には注意すべきポイントがいくつかあります。
たとえば、息を止めて力を入れながら伸ばすと、一時的に血圧が急に上がることがあります。
また、痛みを我慢して無理に伸ばすと、筋肉が緊張して血管が縮み、かえって血圧が上がる可能性もあります。
ここでは、ストレッチを安全かつ効果的に続けるために、特に注意していただきたい4つのポイントを解説します。
これらの注意点を守ることで、ストレッチによる血圧管理の効果を最大限に引き出し、健康的に続けることができます。
もし少しでも体調に不安を感じたら、無理をせず医師に相談することが大切です。
- 痛みを感じるほど無理に伸ばさない
- 息を止めずに自然な呼吸を続ける
- 血圧が高い状態では激しい動きを避ける
- 気になる症状があれば必ず医師に相談する
痛みを感じるほど無理に伸ばさない
ストレッチは「気持ちよく伸びているな」と感じる程度で行うことが大切です。
痛みを感じるほど強く伸ばすと、筋肉が反射的に縮んでしまい、かえって緊張が高まります。
また、無理なストレッチは筋肉や腱を傷める原因にもなります。
実践する際の目安として、「少し伸びているな」から「痛気持ちいい」と感じる手前を意識すると、無理なく続けやすいでしょう。
「痛気持ちいい」くらいがちょうど良いと覚えておきましょう。
体が硬い方は、最初は伸びる範囲が狭くても構いません。
続けるうちに徐々に柔軟性が高まり、より深く伸ばせるようになります。
焦らず、自分の体と対話しながら進めることが大切です。
他の人と比べる必要はありません。
息を止めずに自然な呼吸を続ける
ストレッチ中に息を止めてしまうと、一時的に血圧が上がることがあります。
これは、息を止めて力むことで胸の中の圧力が高まり、血圧が上がるという現象です。
重い物を持ち上げる時に息を止めてしまうのと同じ状態になってしまいます。
ストレッチ中は、ゆっくりと深い呼吸を続けることが重要です。
息を吸う時に筋肉を準備し、息を吐く時にゆっくりと伸ばすようにすると、筋肉がよりリラックスして伸びやすくなります。
例えば4秒かけて鼻から息を吸い、6秒から8秒かけて口からゆっくり吐くというリズムなどを目安にするとよいでしょう。
「吸う」よりも「吐く」時間を長くすることがポイントです。
- 鼻から息を吸う:4秒かけてゆっくり
- 口から息を吐く:6〜8秒かけてゆっくり
- 呼吸のタイミング:息を吐くときに伸ばす
- 絶対にしないこと:息を止める
呼吸を意識することで、ストレッチの効果が高まるだけでなく、副交感神経の働きも促され、血圧を下げる効果がより期待できます。
呼吸法は、収縮期血圧(−7.06 [-10.20, −3.92]、P = <0.01)および拡張期血圧(−3.43 [-4.89, −1.97]、P = <0.01)mmHgを低下させるという、わずかながらも有意な効果を示しました。
引用:PubMed Central Effect of breathing exercises on blood pressure and heart rate: A systematic review and meta-analysis
最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れてくると自然にできるようになります。
血圧が高い状態では激しい動きを避ける
普段よりも血圧が高いと感じる時や、体調が優れない時は、激しいストレッチは控えましょう。
特に、上の血圧が180以上、または下の血圧が110以上の場合は、重症の高血圧に相当するため、一般的な目安としてストレッチを含む運動そのものを控え、医師に相談することが推奨されています(※基準はガイドラインや個人の状態によって異なる場合があります)。
これは、運動によってさらに血圧が上がる危険性があるためです。
- 上の血圧が180以上
- 下の血圧が110以上
- 普段より明らかに血圧が高い
- 体調がすぐれない
- めまいや頭痛がある
また、急に立ち上がったり、頭を下にする姿勢から急に起き上がったりすると、めまいや立ちくらみを起こすことがあります。
特に血圧を下げる薬を飲んでいる方は、姿勢を変える時はゆっくりと行うよう注意が必要です。
前屈のストレッチから起き上がる時は、ゆっくりと時間をかけて体を起こしましょう。
朝起きてすぐは血圧が変動しやすい時間帯ですので、起床後はまず軽く体を動かし、少し時間を置いてからストレッチを始めるとよいでしょう。
布団の中で軽く手足を動かしてから起き上がるのがおすすめです。
気になる症状があれば必ず医師に相談する
ストレッチ中やストレッチ後に、胸の痛み、息切れ、激しい頭痛、めまい、動悸などの症状が現れた場合は、すぐに中止して医師に相談してください。
これらの症状は、血圧が急に変動したり、心臓に負担がかかっている可能性があります。
我慢して続けることは絶対に避けましょう。
- 胸の痛みや圧迫感
- 激しい息切れ
- 激しい頭痛
- めまいやふらつき
- 動悸(心臓がドキドキする)
- 冷や汗
- 吐き気
また、すでに高血圧の治療を受けている方は、ストレッチを始める前に主治医に相談することをおすすめします。
特に、心臓病や脳の血管の病気になったことがある方、糖尿病や腎臓病も患っている方は、運動の種類や強さについて医師の指導を受けることが大切です。
定期的に血圧を測定し、ストレッチの効果や体調の変化を記録することも有効です。
血圧計は家電量販店や薬局で購入できますので、自宅に一台用意しておくと便利です。
数値の変化を医師と共有することで、より適切な治療や生活指導を受けることができます。
ストレッチの効果を高める生活習慣
ストレッチは血圧管理に役立ちますが、それだけで高血圧が改善するわけではありません。
血圧は、食事、運動、睡眠、ストレスなど、さまざまな要因の影響を受けて変わります。
そのため、ストレッチの効果を最大限に引き出すためには、生活習慣全体を見直すことが重要です。
たとえば、ストレッチに加え塩分を減らす食事などを一緒に行うことで、生活習慣改善の効果が組み合わさり、よりよい結果につながることが期待できます。
ここでは、ストレッチと併せて取り組んでいただきたい3つの生活習慣をご紹介します。
これらは、どれも特別な費用や道具を必要とせず、日常生活の中で実践できるものばかりです。
一度にすべてを完璧に行う必要はありません。
できることから少しずつ始めて、無理なく続けることが大切です。
血圧管理のための生活習慣3本柱
| 生活習慣 | 目標 | 期待される効果 |
|---|---|---|
| 塩分制限 | 1日3g減塩した場合 | 脳卒中の死亡リスク22%減、心臓病の死亡リスク16%減(推計) |
| 有酸素運動 | 週150分(1日30分×5日) | 上の血圧5mmHg低下 |
| 質の良い睡眠 | 1日7〜8時間 | 高血圧リスクの軽減 |
塩分を控えた食事を心がける
食塩の取りすぎは、高血圧の主な原因の一つです。
塩分を取りすぎると、血液の中のナトリウムという成分が増え、体が水分を引き込んで血液の量が増えます。
その結果、血管にかかる圧力が高まり、血圧が上がります。
世界保健機関(WHO)は、大人の1日あたりの食塩摂取量を5グラム未満(小さじ1杯程度)に抑えることを推奨しています。
しかし、多くの国では平均摂取量が9グラムから12グラムと、推奨量の2倍以上になっています。
研究によると、食塩摂取量を1日3グラム減らすだけで、脳卒中による死亡リスクが22パーセント、心臓病による死亡リスクが16パーセント減ると推計されています。
1日あたりの塩分摂取量を3グラム減らすと血圧が下がり、脳卒中と虚血性心疾患による死亡がそれぞれ22%と16%減少することになります。
引用:World Health Organization Diet, nutrition and hypertension
- 加工食品を控える(インスタント食品、冷凍食品、スナック菓子)
- 新鮮な食材を使った料理を心がける
- 塩の代わりに香辛料を使う(ハーブ、スパイス、レモン汁、お酢)
- 調味料の使用量に注意する(醤油、ソース、味噌)
- 減塩タイプの調味料を選ぶ
- 外食を控える
塩分を減らすためには、加工食品や外食を控え、新鮮な食材を使った料理を心がけることが大切です。
インスタント食品、冷凍食品、スナック菓子などには多くの塩分が含まれています。
また、塩の代わりにハーブやスパイス、レモン汁、お酢などを使って味付けをする工夫も効果的です。
醤油やソースなどの調味料も塩分が多いため、使う量に注意しましょう。
減塩タイプの調味料を選ぶのも一つの方法です。
ウォーキングなど軽い運動を取り入れる
ストレッチに加えて、ウォーキングなどの体を動かす運動を組み合わせることで、血圧管理の効果がさらに高まります。
ウォーキングなどの運動は心臓や肺の機能を高め、血管の健康を保つのに役立ちます。
アメリカ心臓協会や米国の疾病対策センターは、大人に対して週に合計150分の中くらいの強さの運動を推奨しています。
これは1日30分、週5日のウォーキングに相当します。
研究では、定期的な運動により上の血圧が約5mmHg下がることが報告されており、この程度の血圧低下でも、心臓病で亡くなるリスクが9パーセント、脳卒中で亡くなるリスクが14パーセント減ると推計されています。
- 通勤時に一駅分歩く
- 昼休みに散歩する
- 買い物は徒歩で行く
- エレベーターではなく階段を使う
- 家事を積極的に行う
- 犬の散歩の時間を延ばす
ウォーキングは特別な道具も必要なく、いつでもどこでも始められる運動です。
通勤時に一駅分歩く、昼休みに散歩する、買い物は徒歩で行くなど、日常生活の中で工夫して取り入れることができます。
運動を始める際は、急に激しい運動をするのではなく、軽い運動から徐々に強さを上げていくことが大切です。
まずは10分からでも構いません。
質の良い睡眠で体を休める
睡眠不足は血圧を上げる要因の一つです。
睡眠中は副交感神経が優位になり、血圧が下がって体が休む状態になります。
しかし、睡眠時間が短いと、この休む時間が十分に取れず、血圧が高い状態が続いてしまいます。
複数の研究によると、1日の睡眠時間が5時間以下の人は、7時間から8時間眠る人と比べて高血圧のリスクが高くなる傾向にあることが報告されています。
また、睡眠時間が9時間以上と長すぎる場合も、高血圧のリスクとの関連が指摘されることがあります。
適切な睡眠時間は個人差がありますが、一般的には7時間から8時間が推奨されています。
睡眠時間と高血圧リスクの関係
| 睡眠時間 | 高血圧のリスク | 評価 |
|---|---|---|
| 5時間以下 | 高くなる | 短すぎる |
| 7〜8時間 | 基準 | 最適 |
| 9時間以上 | 研究により異なる | やや長すぎる |
- 寝る時間と起きる時間をなるべく同じにする
- 寝る前のコーヒーやお酒を控える
- 寝室を暗く静かで涼しい環境に保つ
- 寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を避ける
- 就寝前に軽いストレッチを行う(ただし激しいストレッチは避ける)
- 寝る2〜3時間前には食事を済ませる
質の良い睡眠を得るためには、寝る時間と起きる時間をなるべく同じにする、寝る前のコーヒーやお酒を控える、寝室を暗く静かで涼しい環境に保つ、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を避けるなどの工夫が有効です。
また、睡眠の質を高めるために、就寝前に軽いストレッチを行うこともおすすめです。
体をほぐすことでリラックスし、より深い眠りにつくことができます。
ただし、激しいストレッチは逆に目が覚めてしまうので、ゆっくりとしたストレッチを心がけましょう。
よくある質問
ストレッチと高血圧に関して、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。
- ストレッチはどのくらいの頻度で行えばよいですか
-
研究では、1日30分、週5日のストレッチで血圧低下効果が確認されています。
ただし、毎日少しずつでも続けることが大切です。
最初は1日10分から15分程度から始めて、習慣化できたら徐々に時間を延ばしていくとよいでしょう。
朝起きた時、仕事の合間、就寝前など、生活の中で取り入れやすいタイミングを見つけることがポイントです。
完璧を目指すよりも、続けることを優先しましょう。
- ストレッチだけで血圧は下がりますか
-
ストレッチには血圧を下げる効果が期待できますが、それだけで高血圧が完全に改善するわけではありません。
食事の見直し、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理など、生活習慣全体を改善することが重要です。
また、すでに血圧を下げる薬を飲んでいる方は、自己判断で薬をやめずに、必ず医師の指示に従ってください。
ストレッチは薬の効果を補う役割として考えましょう。
- 血圧が高いときにストレッチをしても大丈夫ですか
-
上の血圧が180以上、または下の血圧が110以上の場合は、一般的にストレッチを含む運動は控えることが推奨されます(※基準はガイドラインや個人の状態によって異なる場合があります)。
血圧が非常に高い状態では、運動により血圧がさらに上がり、心臓や血管に負担がかかる可能性があります。
まずは医師の診察を受け、血圧を適切な範囲にコントロールすることが優先です。
家で血圧を測って、いつもより明らかに高い場合は無理をしないでください。
- どのタイミングでストレッチを行うのが効果的ですか
-
特に決まった時間はありませんが、リラックスできる時間帯に行うとより効果的です。
朝起きた時のストレッチは、一日の活動に向けて体を目覚めさせるのに役立ちます。
夜寝る前のストレッチは、一日の疲れをほぐし、質の良い睡眠につながります。
仕事の合間に行うストレッチは、座りっぱなしによる血の流れの悪化を防ぎます。
自分の生活リズムに合わせて、続けやすいタイミングを選びましょう。
- ストレッチの効果はどのくらいで現れますか
-
個人差はありますが、研究では8週間程度続けることで血圧低下効果が現れることなどが報告されています。
ただし、体の柔軟性や血管の状態の改善には時間がかかるため、少なくとも2か月から3か月は続けることを目安とすることをおすすめします。
効果を実感するためには、定期的に血圧を測定し、記録をつけることも大切です。
すぐに大きな変化が見られなくても、焦らず継続することが重要です。
体の変化は少しずつ現れます。
まとめ
ストレッチは、高血圧の方でも安全に取り組めて、血圧管理に役立つ可能性がある運動方法です。
ストレッチが血圧を下げるしくみとしては、血管をやわらかくして血液の流れを良くすること、副交感神経を活発にしてリラックス状態をもたらすこと、ストレスを和らげて血圧の上昇を防ぐことが挙げられます。
日常生活の中で無理なく続けられるストレッチとして、首や肩、背中、腰、太もも、ふくらはぎなど、全身をバランスよく伸ばすことが大切です。
ただし、痛みを感じるほど無理に伸ばさない、呼吸を止めない、血圧が非常に高い時は控えるなど、安全に行うための注意点を守りましょう。
ストレッチの効果を最大限に引き出すためには、塩分を控えた食事、ウォーキングなどの軽い運動、質の良い睡眠といった生活習慣の改善も併せて行うことが重要です。
血圧が気になる方は、まず医師に相談し、自分に合った方法で無理なく続けることから始めてみてください。
継続することで、少しずつ体の変化を実感できるはずです。
PubMed Central Four weeks of regular static stretching reduces arterial stiffness in middle-aged men
PubMed Central Four weeks of lower-limb static stretching reduces regional arterial stiffness in middle-aged and older women
PubMed Central The Efficacy of Stretching Exercises on Arterial Stiffness in Middle-Aged and Older Adults
PubMed Central Beneficial Effects of Yoga Stretching on Salivary Stress Hormones and Parasympathetic Nerve Activity
PubMed Effect of neck exercises on cervicogenic headache: a randomized controlled trial
PubMed Central Hemodynamic responses during and after multiple sets of stretching exercises performed with and without the Valsalva maneuver
PubMed Central Muscle sympathetic nerve activity responses to dynamic passive muscle stretch in humans
PubMed Central Effect of breathing exercises on blood pressure and heart rate: A systematic review and meta-analysis
Sports Medicine Australia Position Statement on Exercise and Hypertension
Mayo Clinic Orthostatic hypotension (postural hypotension) – Symptoms & causes
PubMed Central The Risk of Waking Up Impact of the morning surge in blood pressure
Centers for Disease Control and Prevention About Heart Attack Symptoms, Risk, and Recovery
World Health Organization Sodium reduction
World Health Organization Diet, nutrition and hypertension
American Heart Association How much physical activity do you need?
Centers for Disease Control and Prevention Adult Activity: An Overview
PubMed Exercise and Hypertension
PubMed Sleeping Difficulties, Sleep Duration, and Risk of Hypertension in Women
Centers for Disease Control and Prevention FastStats: Sleep in Adults


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