毎年の健康診断で「血圧が高め」と言われ、どうすればいいかわからないまま時間が過ぎてしまう方は少なくありません。
「たった1回の測定で高血圧と言えるの?」「すぐに病院へ行くべきなのか、もう少し様子を見てもいいのか?」「薬を飲み始めたら一生やめられないの?」といった疑問を抱えたまま、次の健診までそのままにしてしまうケースはとても多く見られます。
高血圧は、頭痛やめまいといった体のサインがほとんど出ないまま進んでいく病気です。
「少し高いだけで体の調子は変わらない」と感じるのは自然なことですが、実際には高い血圧が血管にかけ続ける負担が、脳・心臓・腎臓といった大切な臓器をじわじわと傷め続けています。
その積み重ねの先に待っているのが、脳卒中・心筋梗塞・腎不全といった、ある日突然起こる深刻な病気です。
- 判定基準は130〜160mmHg以上で3段階に分かれる
- 上130〜139mmHgは「要経過観察」で生活改善が目安
- 上140〜159mmHgは「要再検査」で生活改善をして様子見
- 上160mmHg以上は「要精密検査」ですみやかに受診を
- まず自宅で5〜7日間の血圧記録をつけてから受診する
- 上160mmHg以上はすぐ受診、未満は生活改善を試す
- 糖尿病・腎臓病がある場合は同じ数値でも早めの受診が必要
ただし、「健診で高い数値が出たからといって、すぐに薬が必要なわけではない」ということも正しく知っておくことが大切です。
まず自分の本当の血圧をきちんと把握し、原因を理解し、毎日の生活を見直すことが、血圧管理の正しいスタートになります。
この記事では、健診結果の数値の正しい読み方から、次にとるべき具体的な行動、血圧が高くなる2つの原因、放置した場合のリスク、そして科学的な裏付けのある生活習慣の改善策まで、専門的な知識がなくても理解できるよう、順を追ってわかりやすく解説します。
健診の結果票を手元に置きながら、ぜひ参考にしてみてください。
- 健診で「血圧に引っかかる」基準と、要注意・要精密検査の判定の違い
- 健診後にまず何をすべきか、受診の急ぎ度の目安
- 高血圧の原因の8〜9割を占める「生活習慣」と、見逃されやすい別の原因
- 放置した場合の具体的なリスク
- 今日から実践できる血圧を下げるための生活習慣の改善策
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
健康診断で血圧に引っかかる基準は上140mmHg・下90mmHg以上
健康診断の結果票に「要注意」「要精密検査」と書かれていても、その基準がどういう意味なのか、よくわからないという方は多いものです。
実は「高血圧の診断基準」と「健診で受診をすすめる基準」は別々に存在しており、この違いが混乱を生むことがあります。
近年、「高血圧の基準が変わった」という情報がネットやSNSで広まりましたが、これは誤解であり、日本高血圧学会がはっきりと否定しています。
高血圧の診断基準はこれまでと変わらず、病院で測って上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、または下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上です。
大切なのは、健診での測定値がそのまま診断に直結するわけではないという点です。
測定したときの環境・緊張・直前の行動などによって数値は変わります。
そのため、健診の結果はあくまで「もう少し詳しく確認したほうがよいサインが出ている」という情報として受け取り、自宅での測定や医療機関での評価へつなげることが大切です。
まずここをしっかり理解することが、適切な対処への第一歩になります。
「要注意」「要精密検査」の判定は測定値のどの段階で出るのか
健康診断での判定の分け方は実施機関によって多少異なりますが、日本人間ドック・予防医療学会の基準では、上の血圧が130〜139mmHgは「軽度異常」、140〜159mmHgは「要再検査・生活改善」、160mmHg以上は「要精密検査・治療」とされています。
下の表は、健診結果の判定区分と血圧の数値の対応をまとめたものです。
自分の結果票と照らし合わせながら確認してみてください。
健診結果の判定区分と血圧の数値の対応
| 判定区分 | 上の血圧(収縮期) | 下の血圧(拡張期) | 推奨される対応 |
|---|---|---|---|
| 異常なし | 129mmHg以下 | 84mmHg以下 | 現状の生活を継続 |
| 軽度異常 | 130〜139mmHg | 85〜89mmHg | 生活習慣の見直し・定期的な測定 |
| 要再検査・生活改善 | 140〜159mmHg | 90〜99mmHg | 生活改善を1か月行い、改善なければ受診 |
| 要精密検査・治療 | 160mmHg以上 | 100mmHg以上 | すみやかに医療機関を受診 |
厚生労働省が定めた「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」では、次のような対応が推奨されています。
上の血圧が160mmHg以上、または下の血圧が100mmHg以上の場合は、すぐに病院を受診することが求められます。
一方、上の血圧が140〜160mmHg未満、または下の血圧が90〜100mmHg未満の場合は、まず生活習慣の改善に取り組み、それでも数値が下がらなければ病院を受診するという流れが推奨されています。
ただし、心臓や血管の病気・心房細動・慢性的な腎臓の病気・糖尿病のある方、またはリスク因子が重なる方は、たとえ140〜160mmHg未満であっても早めの受診が必要です。
健康診断の血圧は原則2回測定のため、家庭血圧との比較が診断の精度を高める
健康診断での血圧測定は、制度上は原則2回測って平均を出すことになっていますが、実際の実施状況によっては1回だけの場合もあります。
そのため、その数値だけで「高血圧かどうか」を決めることはできません。
病院や健診会場で測ると、緊張から血圧が一時的に高くなることがあり、これを「白衣高血圧」と呼びます。
このような現象は珍しくないため、日本高血圧学会のガイドラインをはじめ多くのガイドラインでも、異なる日に複数回測定した値をもとに診断することをすすめています。
そこで重要になるのが「家庭血圧」、つまり自宅でリラックスして測った血圧です。
家庭での高血圧の判断基準は、病院で測るより5mmHg低い「135/85mmHg以上」とされています。
正しい家庭血圧の測り方のポイントは以下のとおりです。
- 朝起きてトイレに行ったあと、食事の前に測る
- 椅子に座って1〜2分じっと安静にしてから測定する
- 1〜2分間隔で2回測定し、その平均値を記録する
- できれば夜(就寝前)にも同様に測定する
- これを5〜7日間続ける
この記録が、診断や経過の確認に最も役立ちます。
健診で高い値が出た方は、ぜひ自宅での血圧測定を習慣にしてみてください。
健康診断後に血圧を指摘されたら、まず家庭血圧を5〜7日間記録して受診する
健診結果に「血圧が高い」と書かれていると、不安になるのは当然のことです。
しかし、健診での測定結果だけで慌てる必要はありません。
大切なのは「自分の本当の血圧はどのくらいか」をきちんと把握することです。
そのために、自宅での血圧測定を5〜7日間続けて記録し、その結果を持って医師に相談することが、最初にとるべき最善の行動といえます。
健診で高い値が出たあとにどう動くべきかは、数値の高さによって異なります。
かなり高い場合はすぐに受診が必要ですが、比較的軽い場合はまず生活習慣の見直しを先に行うというように、段階に応じた対応が日本高血圧学会や厚生労働省の指針でもすすめられています。
また、すでに糖尿病・慢性的な腎臓の病気・心臓の病気がある方や、複数のリスク因子が重なる方は、同じ血圧の数値でも通常より早い受診が必要になります。
自分がどの段階に当たるかを正しく知ることが、必要以上に不安になることなく、かつ見逃しのない対応につながります。
数値が高いほど受診を急ぐべき、受診不要な場合との判断基準
上の血圧が160mmHg以上、または下の血圧が100mmHg以上の場合は、生活改善を試みるより先に、できるだけ早く病院を受診してください。
さらに、血圧が極めて高く(上の血圧が180mmHg以上または下の血圧が120mmHg以上)、以下のような症状がある場合は、救急対応が必要となる可能性があるためためらわず受診することが大切です。
- 強い頭痛やめまいがある
- 胸に痛みや圧迫感がある
- 息苦しさ(呼吸困難)がある
- 目がかすんだり、視野に異常を感じる
- 手足のしびれや脱力感がある
一方、上の血圧が140〜160mmHg未満の範囲で、他に心配な要素(糖尿病・腎臓病・心臓病の既往など)がなく、体の不調もない方は、まず1か月ほど生活習慣を見直すことが先の対応です。
ただしその間も、自宅での血圧測定を続けて記録しておくことが必要です。
「まあ大丈夫だろう」と自己判断で放置するのではなく、記録を持参して医療機関できちんと評価してもらうことを心がけてください。
内科・循環器内科を受診し、測定記録と生活習慣を医師に伝える
受診する際は、内科または循環器内科が適しています。
すでにかかりつけの医師がいる方は、まずそちらに相談してみましょう。
受診時には、以下の情報を事前にまとめて持参すると、医師がより的確に判断できます。
- 自宅での血圧測定記録(日時・上下の数値・そのときの体調)
- 普段の食事の傾向(塩分の多い食品をどのくらい食べるか)
- 飲酒の頻度と量
- 喫煙の有無
- 運動習慣の有無と内容
- 現在飲んでいる薬・サプリメントの名前
1回の数値だけでなく、日々の変化や生活の背景を合わせて伝えることで、より的確な診断と適切なアドバイスが得られます。
高血圧の原因の8〜9割は生活習慣によるもので、残りは病気が引き金になる
血圧が高くなる原因は、大きく2種類に分けられます。
一つは「本態性高血圧」と呼ばれるもので、特定の病気が原因ではなく、日常の生活習慣や体質・遺伝的な要素が重なって血圧が上がるタイプです。
もう一つは「二次性高血圧」で、腎臓や副腎などの臓器に別の病気があり、それが原因で血圧が高くなっているものです。
全体の約8〜9割は本態性高血圧ですが、二次性高血圧は原因となる病気を治療しなければ、どれだけ生活を改善しても血圧が下がらないことがあります。
この2つを正しく見分けることは、治療の方向を決めるうえでとても重要です。
生活習慣の見直しで対応できる本態性高血圧か、それとも別の病気の治療が先に必要な二次性高血圧かを判断するのは医師の仕事ですが、患者さん自身が「自分にはどちらの可能性があるか」を意識しておくと、受診時に必要な情報をより正確に伝えられるようになります。
2つのタイプの主な違いを以下の表で確認しておきましょう。
本態性高血圧と二次性高血圧の違い
| 項目 | 本態性高血圧 | 二次性高血圧 |
|---|---|---|
| 割合 | 全体の約80〜90% | 全体の約5〜10% |
| 主な原因 | 生活習慣・遺伝・体質 | 腎臓・副腎などの疾患 |
| 生活改善の効果 | 期待できる | 原因疾患の治療が優先 |
| 薬への反応 | 比較的効きやすい | 効きにくい場合がある |
| 多い年齢層 | 中高年に多い | 若い方にも見られる |
塩分・肥満・運動不足・飲酒・ストレスが重なると血圧は上がりやすい
本態性高血圧の発症には、複数の生活習慣が深く関わっています。
中でも特に影響が大きいとされているのが、塩分の取りすぎです。
塩分を多く摂ると体の中に水分が溜まりやすくなり、血液の量が増えて血管にかかる圧力が高くなります。
これはホースに流れる水の量が増えると水圧が上がるのと似たイメージです。
体重が増えることも血圧上昇につながります。
体が大きくなるほど、心臓がより多くの血液を送り出す必要が生じるため、血管への負担が増えます。
また、運動不足が続くと血管のしなやかさが失われ、血圧が上がりやすい体になっていく可能性があります。
毎日のお酒の飲みすぎは血管を縮める働きがあり、慢性的に飲み続けることで血圧が上がりやすくなるとされています。
さらに、強いストレスを受けると一時的に血圧が上がります。
長期的な直接の影響についてはまだ研究中ですが、ストレスからくる過食や飲みすぎなどの行動が重なることで、結果的に高血圧のリスクが高まることがあります。
主なリスク因子と血圧への影響をまとめると、以下のようになります。
高血圧のリスク要因と改善策
| リスク因子 | 血圧への影響 | 改善の方向性 |
|---|---|---|
| 塩分の摂りすぎ | 血液量が増え血管への圧力が上昇 | 1日6g未満を目標に減塩 |
| 肥満・過体重 | 心臓の負担が増し血圧が上昇 | 適正体重の維持 |
| 運動不足 | 血管のしなやかさが失われる | 週150分の有酸素運動 |
| 過度な飲酒 | 血管が縮み血圧が上昇 | 適量を守る |
| 慢性的なストレス | 一時的な血圧上昇や、過食・飲酒の引き金になる | 休息・リラクゼーション |
| 喫煙 | 血管が収縮し動脈硬化が進む | 禁煙 |
腎臓や副腎の疾患が原因の「二次性高血圧」は見逃されやすく治療法が異なる
高血圧の方全体の約5〜10%は、別の病気が原因で血圧が高くなる「二次性高血圧」とされています。
代表的な原因は以下のとおりです。
- 腎臓の病気(慢性腎臓病・腎動脈の狭窄など)
- 副腎(腎臓の上にある小さな臓器)の異常(原発性アルドステロン症・クッシング症候群など)
- 睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群
- 甲状腺の異常(甲状腺機能亢進症・低下症)
二次性高血圧は、血圧を下げる薬を何種類使っても効果が出にくいという特徴があり、「なかなか血圧が下がらない」という形で初めて気づかれることもあります。
原因となる病気を治療することで血圧が正常に戻る可能性があるため、正しく診断されることがとても重要です。
若い方で急に血圧が高くなった場合や、薬を使っても十分に血圧が下がらない場合は、二次性高血圧の可能性を医師に相談することをお勧めします。
紹介を促すべきその他の要因としては、若年高血圧患者(30歳未満)、アルドステロン/レニン比が陽性でアルドステロン値が上昇している場合(表II)、ACE阻害薬またはARBの投与開始後に血清クレアチニン値が30%以上上昇した場合、あるいは腎臓の大きさが不一致である場合などが挙げられる。
引用:PubMed Central Secondary hypertension in adults
高血圧を放置すると脳卒中・心筋梗塞・腎不全のリスクが大幅に上がる
「血圧が少し高いだけだし、体の調子も悪くないから大丈夫」と感じる方は多いと思います。
しかし高血圧は、体の中でじわじわと悪影響が積み重なっていく病気です。
自覚症状がないことが最大の落とし穴であり、これが高血圧が「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれる理由です。
血圧が高い状態が続くと、心臓・脳・腎臓・目など全身の血管がダメージを受け続け、動脈硬化(血管が硬くなり詰まりやすくなる状態)が進みます。
そして症状が現れたときには、すでに脳卒中・心筋梗塞・腎不全といった重大な合併症が起きているというケースも少なくありません。
これらの病気は命に関わるだけでなく、後遺症として体に大きな障害を残すこともあります。
医学的な研究報告によると、軽度から中等度の高血圧であっても治療せずに放置すれば、8〜10年のうちに約半数の方に臓器へのダメージが生じる可能性があると指摘しています。
「症状がない=安全ではない」という認識を持つことが、高血圧と正面から向き合う第一歩です。
自覚症状がないまま血管が傷み続け、ある日突然重篤な発作につながる
血圧が高い状態が長く続くと、血管の内側に慢性的な圧力がかかり続けます。
血管の内壁が傷つくと、そこに脂肪などが溜まって血管が狭く硬くなっていきます。
これが動脈硬化です。
時間が経つにつれて、コレステロールや脂肪などの物質も損傷部位に蓄積し、プラークを形成することがあります。
引用:American Heart Association What is High Blood Pressure?
動脈硬化は心臓・脳・腎臓・目など体中の血管で少しずつ進んでいきます。
心臓への血の流れが悪くなれば心筋梗塞に、脳の血管が詰まったり破れたりすれば脳梗塞や脳出血(脳卒中)につながる可能性があります。
腎臓の血管が傷めば腎機能が落ち、最終的に人工透析が必要になることもあります。
厄介なのは、こうした変化が長い年月をかけてゆっくり進むため、本人が気づかないまま深刻な状態になっていることが多い点です。
高血圧が影響を及ぼす主な臓器とリスクを以下にまとめます。
高血圧が影響を及ぼす主な臓器とリスク
| 影響を受ける臓器 | 起こりうる病気 | 主な症状・後遺症 |
|---|---|---|
| 脳 | 脳梗塞・脳出血(脳卒中) | 半身まひ・言語障害・認知症 |
| 心臓 | 心筋梗塞・心不全 | 胸痛・息切れ・突然死 |
| 腎臓 | 慢性腎不全 | 透析が必要になることも |
| 目 | 高血圧性網膜症 | 視力低下・失明 |
収縮期血圧が20mmHg上がるごとに、虚血性心疾患と脳卒中の死亡リスクが約2倍になる
100万人以上を対象にした大規模なメタ解析によると、上の血圧が20mmHg上がるごとに、心臓の病気(狭心症・心筋梗塞など)および脳卒中による死亡リスクが約2倍になると報告されています。
この関係は幅広い年齢層で確認されていますが、特に40〜69歳でリスクが顕著に倍増し、80代などの高齢になるにつれてその相対的な倍率はやや緩やかになります。
40~69歳では、通常SBPの20 mmHgの差(または、ほぼそれに相当する通常DBPの10 mmHgの差)ごとに、脳卒中死亡率が2倍以上、IHDおよびその他の血管原因による死亡率が2倍以上になります。
引用:PubMed Age-specific relevance of usual blood pressure to vascular mortality: a meta-analysis of individual data for one million adults in 61 prospective studies
それでも、「少し高い程度」の積み重ねが、長期的に見ると非常に大きなリスクになることを示しています。
言い換えれば、血圧を早めに管理することで、こうした深刻なリスクをある程度下げられる可能性があるということでもあります。
NHLBIも、血圧を適切にコントロールすることで慢性腎臓病・心臓発作・心不全・脳卒中、さらには認知症のリスクを抑えられる可能性があると述べており、早い段階からの血圧管理の大切さを強調しています。
血圧を下げるために今日から取り組める生活習慣の改善ポイント
高血圧の治療の基本は、まず毎日の生活を見直すことです。
薬が不要なケースでも、薬を使うケースでも、生活習慣の改善が血圧管理の土台となります。
生活を変えることで数値が安定し、医師の判断のもとで薬の量を減らせた方もいます。
逆に、薬だけに頼って生活を変えなければ、薬の効果が十分に出ないこともあります。
ここで紹介する取り組みは、特別な道具も費用もかからず、今日から始められるものばかりです。
複数の大規模な研究で血圧を下げる効果が確かめられているものを中心にまとめました。
全部を一度に変える必要はありません。
まず自分が最も取り組みやすいものを一つ選んで2〜4週間続けることで、自宅で測る血圧の変化を実感できる可能性があります。
塩分を1日6g未満に減らすだけで収縮期血圧が数mmHg下がる可能性がある
塩分(食塩)の量を減らすことは、血圧を下げるうえで最も多くの研究で効果が確かめられている方法の一つです。
米国国立心肺血液研究所(NHLBI)が行ったDASH-Sodium試験では、塩分の摂取量を段階的に減らしていくと、それに合わせて上の血圧も段階的に下がることが確認されています。
また、高血圧のある方を対象にした研究では、減塩と野菜・果物・低脂肪乳製品を中心としたDASH食(心臓によいとされる食事法)を組み合わせると、上の血圧が11mmHg以上下がった例も報告されています。
高ナトリウムレベルのコントロール食と比較して、低ナトリウムレベルのDASH食では、高血圧のない参加者の平均収縮期血圧が7.1 mmHg低下し、高血圧の参加者では11.5 mmHg低下しました。
引用:PubMed Effects on blood pressure of reduced dietary sodium and the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet. DASH-Sodium Collaborative Research Group
日本高血圧学会では、高血圧のある方には1日の食塩摂取量を6g未満に抑えることをすすめています。
日本人の平均的な食塩摂取量はこれをかなり上回っているため、まずは以下のような小さな取り組みから始めてみましょう。
- しょうゆ・みそは「減塩タイプ」に切り替える
- みそ汁・スープ類は1日1杯を目安にする
- ラーメン・うどんなどのスープは飲み干さない
- 漬物・加工肉・スナック菓子などを控える
- 外食時は「塩分控えめ」のメニューを選ぶ
- 食卓に塩・ソースを置かない
週150分以上の有酸素運動・禁煙・節酒・良質な睡眠が血圧管理に重要
34件の試験・約1,800人を対象にしたデータをまとめた分析では、週に有酸素運動を30分増やすごとに上の血圧が約1.78mmHg下がり、週150分の時点で最も大きな効果(上の血圧で約7.23mmHg、下の血圧で約5.58mmHg)が確認されています。
ウォーキング・軽いジョギング・水泳・自転車こぎなど、会話しながらできる程度の運動を、週合計150分を目安に行うことがすすめられています。
一度に30分まとめて取れなくても、10分ずつ3回に分けるなど、生活の中に少しずつ組み込む形でも同じ効果が期待できるとされています。
タバコは血管を縮める作用があり、血圧を一時的に上昇させるだけでなく動脈硬化を進める要因にもなります。
禁煙することで、心臓や血管の病気のリスクを下げられる可能性があります。
お酒については、飲みすぎが血圧上昇と関連していることが多くの研究で示されており、適度な量にとどめることが大切です。
また、慢性的な寝不足や眠りの質が低い状態が続くと、自律神経のバランスが乱れて血圧が上がりやすくなる可能性があります。
毎日少なくとも7時間(できれば7〜9時間)の睡眠を心がけ、寝る前のスマートフォンの使用やカフェインを控えることも、睡眠の質を高め、結果として血圧の管理に有益と考えられています(ただし、減塩や運動に比べると直接的に血圧を下げるというデータはまだ少なめです)。
以下の表に、各生活習慣の改善による血圧低下の目安をまとめます。
数値はあくまで参考ですが、複数の取り組みを組み合わせることでより大きな効果が期待できます。
生活習慣の改善による血圧低下の目安
| 生活習慣の改善 | 上の血圧の低下目安 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 減塩(1日6g未満) | 数〜約11mmHg | DASH-Sodium試験(NHLBI) |
| 有酸素運動(週150分) | 約5〜7mmHg | PubMedメタ分析(2023年) |
| 適正体重の維持 | 体重1kg減で約1mmHg | AHA/ACC ガイドライン |
| 禁煙 | 血管保護・動脈硬化抑制 | AHA ガイドライン |
| 節酒 | 数mmHg(特にお酒をよく飲む方の場合) | 複数のランダム化試験 |
| 睡眠の改善 | 自律神経の安定化 | 複数の観察研究 |
よくある質問(FAQ)
- 健康診断の1回の測定だけで高血圧と診断されることはありますか?
-
通常、1回の測定だけで高血圧と診断されることはありません。
国際高血圧学会(ISH)をはじめ多くのガイドラインは、日を変えて複数回測定した数値をもとに診断することをすすめています。
ただし、上の血圧が180mmHg以上または下の血圧が120mmHg以上で、心臓や血管に問題のサインが見られる場合は、1回の測定でも即時の対応が必要とされます。
まずは自宅での血圧記録を続けて、医師に相談することをお勧めします。
- 血圧の薬は飲み始めたらずっと続けなければいけませんか?
-
必ずしもそうではありません。
日本高血圧学会の資料にもあるように、生活習慣の改善によって血圧が十分に下がった場合、医師の判断のもとで薬を減らしたり中止できることもあります。
ただし、高血圧の管理は長期や生涯にわたる取り組みになることが多いため、基本的には長く飲み続ける必要があるケースも少なくありません。
自己判断で薬を止めると血圧が急に上がることがあり危険ですので、必ず医師に相談してから判断するようにしてください。
- 上の血圧と下の血圧はどちらがより重要ですか?
-
どちらも大切ですが、50歳を超える中高年以降は「上の血圧(収縮期血圧)」が心臓や血管のリスクをより強く反映するとされています。
一方、50歳未満の若い方では「下の血圧(拡張期血圧)」が高い場合にも注意が必要なことがあります。
両方の数値を定期的に記録して、医師に総合的に判断してもらうことが大切です。
まとめ
健康診断で血圧に引っかかった場合、最初にすべきことは「自分の本当の血圧をきちんと把握すること」です。
健診での測定はあくまで目安ですので、自宅での血圧測定を5〜7日間続けて記録し、その結果を持って内科・循環器内科を受診することが最善の対応です。
上の血圧が160mmHg以上の場合は早めの受診を、140〜160mmHg未満の場合はまず生活習慣の改善に取り組み、改善が見られなければ受診することがすすめられています。
高血圧の原因の約8〜9割は生活習慣によるものですが、腎臓や副腎の病気が原因の「二次性高血圧」という可能性も頭に置いておく必要があります。
放置すると脳卒中・心筋梗塞・腎不全といったリスクが大きく高まりますので、体の調子が悪くなくても、結果と向き合って早めに動くことが大切です。
塩分を減らす・週150分の有酸素運動・禁煙・節酒・十分な睡眠といった生活習慣の改善は、血圧管理の土台として科学的に効果が認められている方法です。
すべてを一度に変えようとせず、できることから一つずつ取り組んでいきましょう。
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「特定健診における受診勧奨判定値についての正しいご理解を」
公益社団法人 日本人間ドック・予防医療学会「判定区分(2026年4月1日改定)」
厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)第2編別紙5・別添資料フィードバック文例集等」
厚生労働省「令和2年度以降における特定健康診査及び特定保健指導の実施並びに健診実施機関等により作成された記録の取扱いについて」
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子」
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」
National Institute for Health and Care Excellence Hypertension in adults: diagnosis and management
厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧
PubMed Central Secondary hypertension in adults
World Health Organization Hypertension
National Heart, Lung, and Blood Institute What Is High Blood Pressure?
American Heart Association What is High Blood Pressure?
American Heart Association 2025 High Blood Pressure (BP) Guideline
特定非営利活動法人 日本高血圧学会 高血圧の10 のファクト~国民の皆さんへ
Centers for Disease Control and Prevention About Sleep and Your Heart Health
American Heart Association Sleep, Women and Heart Disease
American Heart Association How Does Sleep Affect My Health?
American Heart Association Smoking and High Blood Pressure
PubMed Effects of alcohol reduction on blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials
PubMed Central Sleep Apnea, Autonomic Disturbances, and Blood Pressure Variability
American Heart Association Journals 2020 International Society of Hypertension Global Hypertension Practice Guidelines
American Heart Association Understanding Blood Pressure Readings


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