高血圧でも飛行機に乗って海外旅行はできる?注意点と安全に楽しむための準備

高血圧でも飛行機に乗って海外旅行はできる?注意点と安全に楽しむための準備

「高血圧があるけれど、海外旅行に行っても大丈夫だろうか」と不安に感じている方は少なくありません。

血圧の薬を飲んでいる方の中には、長時間のフライトや慣れない海外での生活が体に悪い影響を与えるのではないかと心配して、旅行を諦めてしまうケースもあります。

しかし、そのような心配を抱えながらも「やっぱり旅行に行きたい」という気持ちは、ごく自然なことです。

結論から言えば、血圧が中等度によくコントロールされている方であれば、事前に主治医に相談するなど適切な準備をすることで海外旅行を楽しむことは十分に可能です

大切なのは「行けるかどうか」ではなく、「どのように準備して、どのように過ごすか」という点です。

高血圧の人が飛行機で体に負担がかかる理由
  • 機内の気圧低下により血圧・心拍数が上昇しやすい
  • 気圧低下で酸素摂取量が減り心臓への負荷が増す
  • 機内の極度な乾燥で気づかぬうちに脱水が進みやすい
  • 長時間の座りっぱなしで足の血流が大幅に低下する
  • 血流悪化により血栓(エコノミークラス症候群)リスクが上がる

飛行機の機内は気圧が低く酸素が薄くなる特殊な環境で、長時間ほぼ動けない状態が続くことから、循環器に疾患がある方にとっては身体の負担になりやすい場所です。

加えて旅行中は、時差による睡眠の乱れ、慣れない食事、移動の疲れなど、日常生活にはない体への負担がいくつも重なります。

こういったことをあらかじめ知っておくことが、安全な旅行の第一歩です。

この記事では、高血圧の方が飛行機に乗る際に知っておきたいリスクと、出発前・機内・旅行中それぞれの場面でできる具体的な対策を、医学的な根拠をもとにわかりやすく解説します。

しっかり準備をして、安心して旅行を楽しんでいただければと思います。

この記事でわかること 
  • 飛行機の機内環境が血圧に与える影響
  • 出発前に医師へ相談すべきタイミングと確認事項
  • 機内での血圧を上げにくくする過ごし方 
  • 海外旅行中に血圧が乱れやすい場面とその対処法
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧の人が飛行機に乗ると身体に負担がかかりやすい理由

高血圧の方が飛行機に乗ると、地上とは異なる環境に体がさらされることで、心臓や血管に負担がかかりやすくなる場合があります。

その主な原因は、機内特有の気圧低下に伴う、実質的に取り込める酸素の減少、そして長時間にわたって体を動かせない状態が続くことです。

健康な旅行者の多くは大きな影響を感じませんが、もともと血圧が高い方や循環器疾患がある方では負担が大きくなるリスクがあります。

「飛行機に乗ること自体がそれほど体に影響するの?」と思われる方も多いかもしれません。

しかし機内は、気圧や湿度、体を動かせない環境など、地上とはいくつもの点で異なります。

これらが重なることで、血圧への影響は思いのほか大きくなることがあります。

特に、血圧が180/120mmHg以上など血圧のコントロールが安定していない状態は、医療相談の目安となりますので、搭乗前に必ず主治医に相談してください。

以下では、血圧が上がりやすい2つの主な理由を詳しく説明します。

気圧の低下が心臓や血管に負担をかける

旅客機は通常、地上から約9,000〜12,000メートルの高さを飛んでいます。

機内の気圧は地上と同じではなく、山でいうと標高1,500〜2,400メートル程度の場所に相当する低い気圧に保たれています。

地上の気圧を100とすると、機内ではおよそ74程度まで下がるイメージです。

空気中の酸素の割合自体は地上と同じ約21%のままですが、気圧が下がることで空気が薄くなり、一度の呼吸で体に取り込める実質的な酸素の量が減ります

酸素が足りなくなると、体は「もっと酸素を全身に届けなければ」と判断し、心臓がより速く・より強く動き始めます。

これが心拍数の増加と血圧の上昇につながります。

健康な成人男性22人を対象とした小規模研究では、約1時間のフライト中に血圧が約6%上昇したと報告されています。

すべての人に当てはまるわけではありませんが、高血圧の方では念のため注意が必要です。

1時間のフライト中、HR(24%)とBP(6%)は増加したが、HRVの測定値(26~45%)は減少した。

引用:PubMed Central Heart Rate and Cardiovascular Responses to Commercial Flights: Relationships with Physical Fitness 

また、機内の空気は非常に乾燥しており、機内の湿度は10〜20%程度しかありません。

これは冬場の室内よりもかなり乾いた状態で、気づかないうちに体の水分が失われます。

水分が不足すると血液が濃くなり、血流が悪化して血栓(エコノミークラス症候群)ができやすくなるなど、体調悪化のリスクが高まります。

機内環境と地上の比較

項目地上(通常)機内
気圧760mmHg(基準)約560mmHg(約26%低下)
酸素の取り込みやすさ(酸素分圧)約21%の酸素を吸う状態(基準)海面で約15%の酸素を吸うのと同じ状態
湿度40〜60%程度5〜25%程度
相当する標高0m(海面)約1,500〜2,400m

長時間の座りっぱなしが血のめぐりを悪化させる

長時間のフライトでは、狭い座席にほとんど動けない状態で何時間も座り続けることになります。

普段の生活では当たり前のように足を動かしていますが、飛行機の中ではそれができません。

足の筋肉が動かないと、足の静脈(血液を心臓へ戻す血管)の流れが滞り、血液が足に溜まりやすくなります。

健康な成人18人を対象に行った試験によれば、長6時間座り続けると膝の裏を通る血管(膝窩動脈)の血流が約38%低下することが示されています。

この血流の低下により血管内壁へのずり応力(血液が流れる際に生じる刺激)が減少し、血管の内壁の働きが一時的に損なわれることがわかっています。

血液の流れが悪くなると、足の静脈の中で血のかたまり(血栓)ができることがあります。

これが「エコノミークラス症候群」と呼ばれる状態で、医学的には「深部静脈血栓症(DVT)」といいます。

怖いのは、この血栓が血流に乗って肺の血管に詰まってしまうことで、「肺塞栓」という命にかかわる状態につながる可能性があることです。

CDCは、飛行機・車・バス・電車を問わず、4時間以上の移動では血栓ができるリスクが高まると注意を促しています。

一般的な旅行者の発症リスクは約6000人に1人と低いものの、予防を意識することが大切です。

高血圧そのものが直接の大きな原因になるわけではありませんが、高齢や肥満など他の要因が重なるとリスクが高まるため注意が必要です。

エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)の主な症状
  • 足に血栓ができた場合(DVT)
    • 片方の足だけがむくむ
    • ふくらはぎや太ももが痛む・赤くなる・触ると温かい
  • 血栓が肺に流れた場合(肺塞栓)
    • 突然の息苦しさ
    • 胸の痛み
    • せきが出る・血が混じる
    • 意識がぼんやりする

これらの症状はすべてが同時に現れるとは限りません。

ひとつでも当てはまるなど疑わしい症状が現れた場合は、すぐに客室乗務員に伝えるか、到着後速やかに医療機関を受診してください。

飛行機に乗る前に済ませておきたい3つの準備

海外旅行を安全に楽しむためには、出発前の準備がとても重要です。

旅行先が遠くなればなるほど、フライト時間は長くなり体への負担も大きくなります。

たとえばハワイまでは約8時間、ヨーロッパまでは12〜13時間以上のフライトが必要で、その間は近くに医療機関がない状況が続きます。

特に大切なのは、旅行の計画が決まったらなるべく早め(出発の4〜6週間前など)に主治医に相談することです。

出発直前に慌てて相談しようとしても、診察の予約が取れなかったり、薬の調整に時間がかかることがあります。

「旅行に行っても問題ないか」「薬は十分な量を用意できているか」「時差がある国の場合、薬はいつ飲めばよいか」といった点を、余裕をもって確認しておくことが安心な旅への第一歩です。

ここでは、出発前に必ず済ませておきたい3つのポイントを解説します。

血圧が不安定なときは出発前に医師へ相談する

血圧が薬でしっかりコントロールできている方であれば、多くの場合、飛行機での旅行そのものが制限されることはありません。

しかし、血圧が180/120mmHg以上のような非常に高い状態や、薬を飲んでいても血圧が大きく上下して安定しない状態では、事前に医療機関で相談することが強く勧められます。

また、最近(数日〜数週間以内)心筋梗塞や脳卒中を起こした方、安静にしていても胸が痛む方、脈が乱れる不整脈がうまく治療できていない方なども、飛行が可能かどうか主治医の判断を仰ぐ必要があります。

搭乗前に特に医師への相談が必要な状態
  • 上の血圧が180mmHg以上など、血圧が非常に高く安定していない
  • 最近(数日〜数週間以内)心筋梗塞・脳卒中を起こした
  • 安静にしていても胸の痛みがある(不安定狭心症)
  • 薬で治療しても脈の乱れ(不整脈)がコントロールできていない
  • 重度の心不全がある

旅行を考えたら、まず主治医に「飛行機での旅行をしても大丈夫か」を確認することを強くおすすめします。

その際、旅行先・日程・フライト時間を具体的に伝えると、医師がより的確なアドバイスをしやすくなります。

また海外旅行の場合、万が一旅先で体調を崩したときのために、飲んでいる薬の名前・量・飲み方を英語(可能であれば現地の言語)で書いた医師の診断書を作成してもらっておくと安心です。

現地の病院でもスムーズに対応してもらいやすくなります。

降圧薬は機内持ち込みで手元に置いておく

血圧を下げる薬(降圧薬)は、旅行中も毎日欠かさず飲み続けることが大切です。

旅行中に薬を飲み忘れてしまうことが、血圧が乱れる原因として最も多いケースのひとつです。

スーツケースに薬を入れて預け荷物にしてしまうと、荷物が届かなかった場合や、機内で急に必要になった場合に取り出せません。

降圧薬は必ず機内に持ち込む手荷物の中に入れて、すぐ手の届く場所に置いておきましょう。

薬の量は、旅行日数よりも数日分多めに準備しておくことをおすすめします。

フライトの遅延や悪天候による日程変更など、思わぬ事情で帰国が遅れることもあるからです。

また、税関等でのトラブルを避けるため、薬は別のケースに移し替えず、元の容器(薬袋やシート)のまま持ち込みましょう。

もし薬が足りなくなった場合に備えて、薬の「一般名(成分の名前)」をメモしておくと、現地の薬局でも同じ成分の薬を探しやすくなります。

なお、旅行前に海外旅行傷害保険に加入しておくことも役立ちます。

その際、高血圧などの持病(既往症)が補償の対象外になっていないか必ず確認してください。

【薬の準備チェックリスト】
  • 旅行日数+数日分の余裕を持って薬を用意する
  • 降圧薬は預け荷物ではなく、機内持ち込みの手荷物に入れる
  • 薬の「一般名(成分名)」をメモしておく
  • 薬は別のケースに移さず、元の容器のまま持参する
  • 英語(または現地語)の診断書(薬の名称・用量・飲み方を記載)を主治医に作成してもらう
  • 薬の紛失に備えて、ラベルの写真をスマートフォンに保存しておく

時差がある国では服薬タイミングを事前に医師と決めておく

降圧薬は基本的に、毎日同じ時間に飲むことが大切とされています。

ところが時差が大きい国へ旅行すると、「現地時間の何時に飲めばいいのか」がわからなくなりがちです。

一つの方法として、出発地(日本)の時間を基準にして薬を飲み続けるという案もありますが、すべての薬や旅行行程に当てはまる一般則ではありません。

スマートフォンのアラーム機能で日本時間に合わせたリマインダーを設定しておくと、飲み忘れ防止に役立ちます。

ただし、時差が大きい地域への旅行では、薬の種類や体の状態によって対応の仕方が変わることもあります。

自己判断で服薬の時間を大幅にずらすのは危険なため、出発前に必ず主治医へ「時差がある場合はどのタイミングで飲めばよいか」を確認しておきましょう

なお、薬を飲み忘れた場合の対応(気づいた時点で飲むか、次まで待つかなど)は薬によって異なるため、事前に医師へ確認しておきましょう。

ただし、自己判断で2回分を一度に飲むことは危険ですので避けてください。

主な旅行先の時差と服薬タイミングの目安

旅行先日本との時差服薬の考え方
韓国・台湾±0〜1時間ほぼ変更不要
タイ・ベトナム−2時間大きな調整は不要なことが多い
ハワイ−19時間事前に医師と確認が必要
ヨーロッパ−8〜9時間事前に医師と確認が必要
アメリカ本土−14〜17時間事前に医師と確認が必要

※時差が大きい地域への旅行では、必ず出発前に主治医へ服薬タイミングを相談してください。

機内での過ごし方を工夫することで血圧の上昇を抑えられる

飛行機に乗ってしまった後は、機内の環境そのものを変えることはできません。

しかし、自分の行動を少し工夫することで、血圧が上がりにくい状態を保つことは十分に可能です。

水分の取り方、体の動かし方、食事の選び方という3つのポイントを意識するだけで、機内での体への負担はずいぶん変わります。

意外と見落とされやすいのが、「地上では問題なかったことが、機内では体への影響が大きくなりやすい」という点です。

たとえばお酒は機内のほうが酔いが回りやすく、塩分の多い食事も血圧を上げる原因になります。

また長時間動けない座席での血流悪化も、じわじわと体に積み重なっていきます。

高血圧の方は特に、これらを意識して機内での行動を整えることが大切です。

以下では、機内で実践できる3つの具体的な工夫を解説します。

アルコールは控えて水をこまめに飲む

飛行機に乗ると、旅行気分からついアルコールを飲みたくなる方も多いと思います。

しかし高血圧の方にとって、機内でのお酒は特に注意が必要です。

アルコールには尿の量を増やす働きがあるため、飲むと体の水分が失われやすくなります。

水分が足りなくなると血液が濃くなり、体調不良の原因になるため注意が必要です。

また、アメリカ心臓協会のガイドラインでは、アルコール自体が血圧を上げる要因になりうると注意喚起されているため、機内での飲酒には慎重な対応が必要です。

2024年に発表された研究では、機内と同じ低い気圧の環境でお酒を飲んだ人は、通常の気圧の環境で眠った人に比べて血中の酸素濃度が低く、心拍数が高かったという結果が出ています。

睡眠中のSpO2は中央値(25パーセンタイル/75パーセンタイル)で85.32%(82.86/85.93)に低下し、心拍数は中央値(25パーセンタイル/75パーセンタイル)で87.73 bpm(85.89/93.86)に上昇した。

引用:PubMed Effects of moderate alcohol consumption and hypobaric hypoxia: implications for passengers’ sleep, oxygen saturation and heart rate on long-haul flights

機内では地上よりもアルコールの影響が体に強く出やすいため、高血圧の方は特に注意が必要です。

水分補給については、お水やミネラルウォーターをこまめに飲むことを心がけましょう。

機内の乾燥した空気の中では、気づかないうちに脱水が進みます。

保安検査を通過した後に水を購入するか、空のボトルを持参して機内で補充してもらうと便利です。

コーヒーやエナジードリンクなどカフェインが多い飲み物は一時的に血圧を上げる可能性がありますが、反応には個人差が大きく、習慣的に飲んでいる人では上がりにくいという報告もあります。

そのため一律に避ける必要はありませんが、普段飲み慣れていない方は特に飲みすぎに注意しましょう

機内での飲み物の選び方

飲み物高血圧の方への影響おすすめ度
水・ミネラルウォーター脱水予防に役立つ◎ 積極的に飲む
お茶(緑茶・麦茶など)比較的問題は少ない○ 適量であれば可
コーヒー・エナジードリンクカフェインが一時的に血圧を上げる可能性(個人差あり)△ 飲みすぎに注意
アルコール脱水・血圧上昇・酸素濃度低下を招く× できるだけ控える

1〜2時間に一度は体を動かして血流を保つ

前の章でも触れたとおり、長時間座りっぱなしでいると足の血流が悪くなり、血栓ができるリスクが高まります。

CDCは、長距離移動中はこまめに足を動かしてふくらはぎの筋肉を収縮させ、血の流れをよくすることを勧めており、具体的には座ったままでも「足首を上下に曲げ伸ばしする」「かかとを上げ下げしてふくらはぎの筋肉を動かす」といった動作が有効です。

また片方の膝を両手で抱えて15秒間保持し、左右それぞれ10回繰り返すストレッチも効果的とされています。

1〜2時間に一度は立ち上がって通路を少し歩くだけでも、血流を保つのに役立ちます。

ただし、乱気流が起きたときはすぐに席に戻ってシートベルトを締めることが最優先です。

座席を選べる場合は通路側にすると立ち上がりやすく、体を動かすタイミングを作りやすくなります。

また、弾性ストッキング(着圧ソックス)は足の血流を助け血栓予防にも効果があるとされていますが、主に血栓リスクが高い方向けですので、使用については長時間フライトの前に医師に相談してみるとよいでしょう。

座ったままできる血流改善エクササイズ
  • 足首の曲げ伸ばし:つま先を上に向けてから下に向ける動作を繰り返す
  • かかとの上げ下げ:かかとをゆっくり上げて、ゆっくり下ろす
  • 膝抱えストレッチ:片膝を両手で抱えて15秒キープ。左右10回ずつ
  • 足首回し:足首をゆっくり大きく回す(左右それぞれ)

これらのエクササイズは1〜2時間ごとを目安に行い、できれば合わせて通路を少し歩くとより効果的です。

機内食は塩分が高めなので食べすぎに注意する

機内食は、食事を作ってから提供するまでに時間がかかることや、機内では気圧の低下・低湿度・騒音の影響で味を感じにくくなることから、地上の食事と比べて塩分が多めに作られていることがあります。

塩分の摂りすぎは血圧を上げる代表的な原因のひとつです。

全部食べきる必要はないので、味が濃い料理やしょっぱいスナックなどは無理に食べず、量を調節することも大切な判断です。

航空会社によっては、事前に「減塩食(塩分を控えた食事)」をリクエストできる場合があります。

搭乗の数日前に航空会社のウェブサイトや電話で確認してみましょう。

旅先の食事全般についても同様で、外食が多くなる旅行中は塩分のとりすぎに注意が必要です。

レストランで料理を注文する際に、塩や調味料を控えてもらうよう伝えるだけでも、毎日の塩分量を少し抑えることができます。

海外旅行中も血圧管理を続けることが安全な旅につながる

飛行機を降りた後も、体への気配りは続けることが大切です。

海外旅行中は、時差による睡眠の乱れ、慣れない食事、長時間の移動、現地の気温や湿度の違いなど、普段の生活にはない負担が毎日重なります。

旅行中は気分が高ぶって「多少疲れていても大丈夫」と感じることもありますが、体の血管や心臓への負担は確実に積み重なっています。

高血圧の方で血管の動脈硬化(血管が硬くなる状態)が進んでいる場合、旅先での環境の変化や疲労をきっかけに、心筋梗塞や脳卒中といった重篤な発作が起きることがあると指摘されています。

「旅行中だから仕方ない」という気持ちで無理をするのではなく、日ごろと同じように体のケアを続けることが、元気に旅行を楽しむための条件です。

旅行前に血圧がしっかりコントロールされていれば、旅行中も安定していることが多いため、薬を毎日きちんと飲み続けることが最も基本的で大切なことです。

以下では、旅行中に特に気をつけたい場面と、それぞれの対処法を解説します。

疲労・気温差・時差は血圧を乱す原因になる

海外旅行は、空港での手続きや長時間の移動、乗り継ぎなど、出発前からすでに体と心に負担がかかる場面がたくさんあります。

時差、睡眠不足、フライトの遅れ、言葉の壁など、海外旅行に伴うさまざまなストレスは理論上血圧に影響する懸念がありますが、実際には薬を続けていれば旅行中も血圧は安定していることが多いという報告もあり、旅行中も降圧薬を飲み続けることの大切さが強調されています。

暑い地域への旅行では、熱ストレスや汗による脱水から心臓への負荷が増え、血流の悪化や血栓などのリスクが高まることがあります。

反対に寒い地域では、体が体温を守ろうとして血管を縮め、血圧が上がりやすくなります。

また高地(山の多い地域など標高が高い場所)では空気が薄くなるため、心臓がより多く働く必要があり、血圧や心拍数が上がりやすい状態になります。

臨床研究によれば、高い場所に到着すると、体が薄い酸素に慣れようとして心拍数や血圧が一時的に上がり、通常は数日で体が順応していくとされています。

高地への移動に伴う血圧上昇は、主に低酸素症による自律神経系の亢進に関連した短期的な順応反応である。

引用:PubMed Central Altitude‐Related Hypertension

旅行初日はとにかくゆっくり過ごし、体を新しい環境に少しずつ慣らしていくことが大切です。

また、時差による「社会的時差ボケ」では、朝の血圧が上がりやすくなるという報告もあります。

旅行中も服薬時間を守り、休息をしっかり取ることが重要です。

旅行先の環境別・血圧への影響と対策

環境血圧への影響対策
暑い地域(東南アジア・南欧など)熱ストレスや脱水により血流が悪化し体調不良リスクが増加こまめな水分補給・直射日光を避ける
寒い地域(北欧・冬のヨーロッパなど)血管が収縮して血圧が上昇しやすい重ね着で体を冷やさないようにする
高地(ペルー・チベット・アルプスなど)酸素不足で心拍数・血圧が一時的に上昇初日はゆっくり過ごし、体を慣らす
時差がある地域睡眠の乱れがストレスとなり血圧が不安定に服薬時間を守り、休息をしっかり取る

現地で体調が悪化したときは早めに医療機関を受診する

旅行中に、胸が締め付けられるような痛み・いつもより激しい頭痛・目がかすむ・手足のしびれ・突然息が苦しくなる・咳や血痰が出る・失神する・意識がぼんやりするといった症状が現れた場合は、その場で休もうとするだけでなく、速やかに現地の医療機関を受診してください。

これらは血圧が急激に上がったときや、脳卒中・心筋梗塞の初期に現れることがある症状です。

早めに対処するほど、回復の見込みが大きく変わります。

すぐに医療機関を受診すべき症状
  • 胸が痛む・締め付けられる感じがする
  • いつもと違う激しい頭痛がある
  • 目がかすむ・視野が狭くなる
  • 手足にしびれや脱力感がある
  • 突然息が苦しくなる・咳が出る・血痰が出る
  • 意識がぼんやりする・失神する・ふらつく

万が一に備えて、海外旅行傷害保険に出発前に加入しておきましょう。

多くの保険では加入時に高血圧などの持病を申告する必要があり、補償の対象になることを確認することが重要です。

申告なしに現地で治療を受けると、カバーが無効になることがあります。

通常の保険でカバーされない場合、CDCが案内しているように既往症のある旅行者向けに特化した特別な保険が有益なケースもあるため、合わせて検討してみましょう。

また、現地の医療機関へのアクセスや探し方を事前にチェックして情報を整理しておくと安心です。

滞在先の国の緊急電話番号(救急車を呼ぶ番号など)をスマートフォンにメモしておくことも、いざという時のための備えになります。

なお、海外旅行保険の加入時には、持病の申告が必要かどうかを必ず確認してください。

よくある質問(FAQ)

血圧の薬を飲んでいれば飛行機に乗っても問題ありませんか?

薬を飲んで血圧が中等度によくコントロールされている方であれば、最近の心血管イベントや不安定な症状がない限り、飛行機での旅行そのものが制限されることは通常ありません

ただし、薬を飲んでいても血圧の変動が大きい方や、最近体調が不安定な方は、出発前に主治医に確認することをおすすめします。

エコノミークラスよりビジネスクラスのほうが安全ですか?

座席が広いビジネスクラスのほうがリスクが低い傾向はあるものの、はっきりとした違いがあるわけではありません。

CDCによれば、4時間以上の移動であれば飛行機・車・バス・電車を問わず血栓リスクがあるとされており、座席の種類よりも「こまめに体を動かすかどうか」のほうがずっと重要です。

長距離便の血栓リスク研究でも、窓側席と比べて通路側席のほうがリスクが低いとされており、座席の種類より動けるかどうかが重要とされています。

どのクラスに乗る場合でも、定期的に足を動かす習慣を忘れずに。

血圧計を機内に持ち込むことはできますか?

手首式や上腕式の携帯型血圧計は、通常は医療機器として機内への持ち込みが可能ですが、機内での使用可否や電池の扱いは航空会社によって異なるため、事前に確認しておくと無難です。

血圧の変動が気になる方は持参しておくと、体調の変化に早めに気づくことができて安心です。

まとめ

高血圧がある方でも、血圧がきちんとコントロールされており、しっかりと準備を整えれば、海外旅行を安全に楽しむことは十分に可能です。

大切なのは以下のポイントです。

出発前は、早めに主治医に旅行の計画を伝えて飛行機に乗っても問題ないかを確認し、降圧薬を十分な量用意して必ず手荷物に入れておきましょう。

時差がある国への旅行では、服薬のタイミングも事前に医師と確認しておくと安心です。

機内では、アルコールを控えて水をこまめに飲み、1〜2時間に一度は足を動かして血のめぐりを保つことが重要です。

航空会社によっては機内食の塩分が高めの場合があるため食べすぎに注意し、可能であれば事前に低塩分などの特別食(減塩食)をリクエストしておくのもおすすめです。

旅行中は、疲れや気温の変化・時差に気をつけながらしっかり休息を取り、薬の服用を欠かさず続けましょう

胸の痛みや激しい頭痛など気になる症状が出たときは、早めに現地の医療機関を受診してください。

場面別・高血圧の方が旅行中に気をつけるポイント

場面主な注意点
出発前主治医に相談・薬を多めに準備・英語等での診断書を用意
空港・搭乗前薬は手荷物に・脱水に備えて水を用意
機内水をこまめに飲む・アルコール控える・1〜2時間ごとに体を動かす・特別食(減塩食)の事前予約を検討
旅行中全般薬を毎日飲む・無理をしない・体調変化に早めに対応する
緊急時すぐに現地の医療機関を受診・海外旅行保険を活用する

不安なことがあれば一人で判断せず、かかりつけの医師に気軽にご相談ください。

参考文献・参考サイト

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Centers for Disease Control and Prevention Understanding Your Risk for Blood Clots with Travel

PubMed Compression stockings for preventing deep vein thrombosis in airline passengers

ScienceDirect Tasting in the air: A review

日本航空株式会社 Special inflight meal menu

PubMed Central Prevalence of hypertension among travelers and stability of blood pressure control during travel: a cross-sectional descriptive study and prospective cohort study

Centers for Disease Control and Prevention Clinical Overview of Heat and Cardiovascular Disease

American Heart Association What Cold Weather Does to the Body and How to Protect Yourself This Winter

PubMed Central Altitude‐Related Hypertension

PubMed Central Acute social jetlag augments morning blood pressure surge: a randomized crossover trial

Mayo Clinic Hypertensive Crisis: What Are the Symptoms?

Centers for Disease Control and Prevention Travelers with Chronic Illnesses

GOV.UK Foreign Travel Insurance

PubMed Central Travel-Associated Venous Thromboembolism

NARITA INTERNATIONAL AIRPORT Prohibited Items and Safety Inspections

この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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