高血圧と診断され、どのような運動をすれば血圧が下がるのか悩んでいる方は少なくありません。
運動は薬に頼らずに血圧を下げる効果的な方法のひとつですが、やり方を間違えると逆効果になることもあります。
この記事では、高血圧の改善に役立つ運動の種類、適切な頻度や強度、そして運動する際の注意点について、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。
- 有酸素運動が最も効果的で、運動後24時間血圧低下が持続する(ウォーキング・ジョギング・水泳)
- 軽めの筋トレとの組み合わせで相乗効果が期待できる(スクワット・腕立て・チューブ運動)
- 運動頻度は週3〜5回、1回30分程度の中強度が目安(息が少し上がる程度)
- 重度高血圧や心疾患がある場合は、医師の許可を得て安全管理を行う
高血圧の改善には、定期的な運動が非常に有効です。
厚生労働省のデータによると、習慣的な運動は収縮期血圧を2〜5mmHg、拡張期血圧を1〜4mmHg低下させる効果があるとされています。
この記事を読めば、安全かつ効果的に血圧を下げるための運動方法が理解でき、今日から実践できる具体的な指針が得られます。
- 運動で血圧が下がる仕組みと期待できる効果
- 高血圧改善に効果的な運動の種類(有酸素運動、筋トレ、ストレッチ)
- 週に何回、どのくらいの強さで運動すればよいか
- 高血圧の方が運動する際の注意点と避けるべき運動
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
運動で血圧が下がるのはなぜ?効果と理由を解説
運動が高血圧の改善に効果的であることは、多くの研究で証明されています。
実際に、日本では約3,450万人が高血圧に該当すると推計されています(推計方法により4,300万人規模とする報告もあります)。
運動療法は薬物治療と並んで高血圧管理の基本となっています。
運動によって血圧が下がる仕組みと、実際にどの程度の効果が期待できるのかを見ていきましょう。
血管が広がり血液の流れがスムーズになる
運動をすると、体内ではさまざまな変化が起こります。
まず、運動中は筋肉が酸素を必要とするため、血管が広がって血液の流れがよくなります。
この状態を繰り返すことで、血管の内側にある内皮細胞の機能が改善され、血管が柔軟になっていきます。
血管が柔らかくなると、血液を送り出すときに血管壁にかかる圧力が減るため、血圧が下がりやすくなるのです。
さらに、運動を続けることで自律神経のバランスが整い、交感神経の過剰な活動が抑えられます。
交感神経が落ち着くと、血管を収縮させる作用が弱まり、血管が広がりやすい状態が保たれます。
このような複合的な作用によって、運動は血圧を下げる効果を発揮します。
また、運動後には血圧が一時的に低下する「運動後低血圧」という現象が起こります。
この効果は運動終了後、最大で約22〜24時間持続することが研究で示されており、特にもともと血圧が高い方ほど、この低下効果が大きいことがわかっています。
実際にどのくらい血圧が下がるのか
運動による血圧低下の効果は、数多くの研究で確認されています。
厚生労働省のデータによると、習慣的な運動は収縮期血圧を2〜5mmHg、拡張期血圧を1〜4mmHg低下させる効果があるとされています。
特に有酸素運動を続けた場合、収縮期血圧が3.5mmHg、拡張期血圧が2.5mmHg低下し、高血圧患者ではさらに大きな効果が見られ、収縮期血圧が8.3mmHg、拡張期血圧が5.2mmHg低下することが報告されています。
アメリカスポーツ医学会の研究によると、有酸素運動を続けることで、高血圧の方の収縮期血圧が約5〜7mmHg低下することが示されています。
また、筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)でも、収縮期血圧が2〜3mmHg低下する効果が認められています。
運動による血圧低下と心血管リスクの改善効果
| 運動の種類 | 収縮期血圧の低下 | 拡張期血圧の低下 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 有酸素運動(一般成人) | 約3.5mmHg | 約2.5mmHg | 厚生労働省 |
| 有酸素運動(高血圧患者) | 約8.3mmHg | 約5.2mmHg | 厚生労働省 |
| 有酸素運動(高血圧患者) | 約5〜7mmHg | ― | アメリカスポーツ医学会 |
| 筋力トレーニング | 約2〜3mmHg | ― | アメリカスポーツ医学会 |
この数値だけを見ると小さく感じるかもしれませんが、収縮期血圧が5mmHg下がるだけで、主要な心血管疾患イベントのリスクが約10%減少することが大規模研究で示されています。
さらに、脳卒中のリスクが13%、心不全が13%、虚血性心疾患が8%、心血管死が5%減少することが確認されています。
平均4年間の追跡調査において、収縮期血圧が5mmHg低下すると、主要な心血管イベントの相対リスクが約10%低下しました。
引用:PubMed Central Lowering blood pressure significantly reduces cardiovascular risk even at normal levels
つまり、運動によるわずかな血圧の低下でも、長期的には大きな健康効果が期待できるのです。
運動の効果は、高血圧の重症度によっても異なります。
軽度から中等度の高血圧(ステージ1高血圧)で心血管リスクが低い方では、運動を含む生活習慣の改善により血圧が正常範囲まで下がる可能性があります。
一方、より重度の高血圧の方でも、薬物治療と併用することで、より良好な血圧コントロールが得られる可能性があります。
ただし、効果には個人差があるため、定期的な血圧測定と医師による評価が重要です。
高血圧の改善に効果的な運動の種類
高血圧の改善には、大きく分けて3つのタイプの運動が効果的とされています。
それぞれの運動には異なる特徴があり、組み合わせることでより高い効果が期待できます。
ここでは、有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチやヨガについて、具体例とともに解説します。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動
有酸素運動は、高血圧の運動療法において最も中心的な役割を果たす運動です。
有酸素運動とは、酸素を使って体を動かす運動のことで、比較的長い時間続けられる、リズミカルな全身運動を指します。
代表的な有酸素運動には、ウォーキング、ジョギング、ランニング、サイクリング、水泳、エアロビクスダンスなどがあります。
中でもウォーキングは、特別な道具や施設が不要で、体への負担も少ないため、高血圧の方に最も推奨される運動です。
ジョギングやランニングは、より高い運動強度を求める方や、体力がある方に適しています。
水泳や水中ウォーキングは、水の浮力によって関節への負担が軽減されるため、膝や腰に痛みがある方にも取り組みやすい運動です。
また、水圧が血液の循環を促進する効果もあります。
サイクリングは、屋外でも室内用の固定式自転車(エアロバイク)でも行えるため、天候に左右されずに続けやすいという利点があります。
代表的な有酸素運動と特徴
| 種類 | 主な特徴 | 向いている人・状況 |
|---|---|---|
| ウォーキング | 特別な道具不要・負担が少ない | 高血圧の方に最も推奨される運動 |
| ジョギング/ランニング | 強度が高く心肺機能を向上 | 体力があり、より積極的に運動したい人 |
| 水泳/水中ウォーキング | 関節への負担が軽く水圧が血流を促進 | 膝や腰に痛みがある人に適する |
| サイクリング(屋外・室内) | 天候に左右されず継続しやすい | 屋外運動が難しい人や在宅でも続けたい人 |
有酸素運動が血圧を下げる効果は、多くの研究で確認されています。
アメリカスポーツ医学会の研究によると、有酸素運動を続けることで、高血圧の方の収縮期血圧が約5〜7mmHg低下することが示されています。
この効果は、運動を1回行っただけでも現れ、運動後最大24時間持続します。
さらに、習慣的に続けることで、より持続的な血圧低下効果が得られます。
有酸素運動を始める際は、まず軽いウォーキングから始めることをお勧めします。
少しずつ歩く時間や速度を増やしていき、体が慣れてきたら、より強度の高いジョギングや水泳などに挑戦してもよいでしょう。
大切なのは、無理をせず、自分のペースで続けることです。
軽めの筋トレ(レジスタンストレーニング)
筋力トレーニング、別名レジスタンストレーニングも、高血圧の改善に効果があることが研究で明らかになっています。
以前は有酸素運動ほど推奨されていませんでしたが、近年の研究により、適切に行えば血圧を下げる効果があり、さらに将来の筋力低下(サルコペニア)やフレイル(虚弱)を予防する効果も期待できることがわかってきました。
筋力トレーニングには、ダイナミックレジスタンストレーニング(動的筋力トレーニング)とアイソメトリック(等尺性)トレーニングがあります。
高血圧の方に推奨されるのは、主にダイナミックレジスタンストレーニングで、関節を動かしながら筋肉を鍛える運動です。
- スクワット
- 腕立て伏せ
- ダンベルを使った運動
- チューブを使ったトレーニングなど
重要なのは、過度に重い負荷をかけないことです。
高血圧の方は、軽めから中程度の負荷で、ゆっくりとした動作で行うことが推奨されます。
アメリカスポーツ医学会の研究によると、筋力トレーニングによって収縮期血圧が約2mmHg、拡張期血圧が約3mmHg低下することが示されています。
効果の大きさは有酸素運動よりやや小さいものの、有酸素運動と組み合わせることで、より大きな血圧低下効果が得られる可能性があります。
筋力トレーニングを行う際の注意点として、息を止めないことが非常に重要です。
重いものを持ち上げるときに息を止めてしまうと、血圧が急激に上昇する危険があります。
動作中は自然な呼吸を心がけ、力を入れるときに息を吐き、力を抜くときに息を吸うようにしましょう。
また、高血圧の方は、最大筋力の40〜60%程度の軽めから中程度の負荷で、1セットあたり10〜15回の反復を、2〜3セット行うことが推奨されます。
非常に重い重量を使った筋力トレーニングは避けるべきです。
ストレッチやヨガで血流を促進
ストレッチやヨガなどの柔軟性を高める運動も、補助的な運動として高血圧の改善に役立つ可能性があります。
ただし、効果の大きさはプログラムの内容や個人により異なります。
これらの運動は、筋肉や関節の柔軟性を向上させるだけでなく、血管の柔軟性を高め、血流を改善する効果が期待できます。
ストレッチには、静的ストレッチ(じっと伸ばし続ける)と動的ストレッチ(動きながら伸ばす)があります。
高血圧の方には、ゆっくりと筋肉を伸ばす静的ストレッチが適しています。
肩、背中、太もも、ふくらはぎなど、全身の主要な筋肉群を伸ばすことで、全身の血流が改善されます。
柔軟性を高める運動の特徴
| 運動の種類 | 主な目的・効果 | 特徴・留意点 |
|---|---|---|
| 静的ストレッチ | 筋肉をじっと伸ばして血流を促進 | 高血圧の方に適しており、リラックス効果も高い |
| 動的ストレッチ | 体を動かしながら筋肉を伸ばす | 運動前のウォームアップに適する |
| ヨガ(ハタヨガ・リストラティブヨガなど) | 血管の柔軟性を高め、ストレスを軽減 | 穏やかなスタイルを選び、逆立ちなどは避ける |
| 太極拳・気功 | ゆっくりとした動きと呼吸法で血圧を安定 | 高齢者でも安全に実践しやすい |
ヨガは、ポーズ(アーサナ)、呼吸法(プラナヤマ)、瞑想を組み合わせた総合的な運動です。
ヨガには様々なスタイルがありますが、高血圧の方には、激しい動きの少ない穏やかなスタイル(ハタヨガやリストラティブヨガなど)が適しています。
ヨガは、身体的な効果に加えて、ストレスを軽減し、リラックス効果をもたらすことで、間接的に血圧を下げる効果も期待できます。
太極拳や気功などの伝統的な東洋の運動も、高血圧に効果がある可能性が示唆されています。
TCQEは、EHに対する効果的な補完代替療法となり得る。TCQEを実践するEH患者の血圧低下は、運動に伴う血中NO濃度の上昇と血中ET-1濃度の低下と何らかの関連がある可能性がある。
引用:PubMed Central The Efficacy of Tai Chi and Qigong Exercises on Blood Pressure and Blood Levels of Nitric Oxide and Endothelin-1 in Patients with Essential Hypertension: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
これらの運動は、ゆっくりとした動きと呼吸法を組み合わせたもので、心身のリラクゼーション効果が高く、高齢者でも安全に取り組めます。
ただし、ヨガの中には逆立ちのポーズや、頭を心臓より低い位置にするポーズもあります。
これらのポーズは血圧を急激に上昇させる可能性があるため、高血圧の方は避けるべきです。
ヨガを始める際は、インストラクターに高血圧であることを伝え、適切な指導を受けることをお勧めします。
ストレッチやヨガは、有酸素運動や筋力トレーニングの前後に行うことで、怪我の予防にもつながります。
運動前には動的ストレッチで体を温め、運動後には静的ストレッチで筋肉をほぐすとよいでしょう。
週に何回?どのくらいの強さで?運動の頻度と強度
運動の効果を最大限に引き出すには、適切な頻度、強度、時間で行うことが重要です。
ここでは、高血圧の改善に効果的な運動の実践方法について、国際的なガイドラインに基づいて具体的に解説します。
理想的な運動頻度は週3〜5回
高血圧の改善のためには、定期的に運動を続けることが何よりも大切です。
厚生労働省のガイドラインでは、運動の頻度は「できれば毎日」行うことが推奨されています。
ただし、毎日が難しい場合でも、週に3〜5回以上行うことで十分な効果が期待できます。
国際的なガイドラインでは、アメリカスポーツ医学会(ACSM)が週5〜7日の運動を推奨しており、アメリカ心臓協会(AHA)は週150分以上の運動を週内に分散させることを掲げています。
高血圧改善に推奨される運動頻度と時間
| 分類 | 推奨内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 厚生労働省 | 「できれば毎日」運動を行う | 定期的な継続が最も重要 |
| ACSM(アメリカスポーツ医学会) | 週5〜7日、合計150分以上の運動を推奨 | 週90分程度でも効果が現れる |
| AHA(アメリカ心臓協会) | 週150分以上の中強度運動、または75分以上の高強度運動 | 運動を週内で分散して実施 |
アメリカスポーツ医学会では、高血圧の方に対して週150分以上の運動を推奨しています。
週90分程度でも血圧低下効果は現れ始めますが、より大きな効果を得るためには、週150分以上を目標とすることが望ましいとされています。
有酸素運動に関しては、週に150分以上の中強度の運動、または週に75分以上の高強度の運動、あるいはこれらを組み合わせて行うことが推奨されています。
たとえば、1回30分のウォーキングを週5回行う、あるいは1回25分のジョギングを週3回行うといった形です。
筋力トレーニングについては、週に2〜3回、連続しない日に行うことが推奨されます。
たとえば、月曜日と木曜日、あるいは火曜日、木曜日、土曜日といった具合に、トレーニングの間に少なくとも1日の休息日を設けることで、筋肉の回復を促します。
ACSM(アメリカスポーツ医学会)の推奨内容
| 分類 | 推奨内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 有酸素運動 | ・30分のウォーキング×週5回 ・25分のジョギング×週3回 | 強度に応じて組み合わせ可能 |
| 筋力トレーニング | 週2〜3回(連続しない日) | 例:月・木、または火・木・土 |
重要なのは、1週間の中で運動を分散させることです。
たとえば、週末にまとめて長時間運動するよりも、平日も含めて週に数回、適度な時間運動する方が、血圧コントロールには効果的です。
毎日の習慣として運動を取り入れることで、血圧を安定的に低く保つことができます。
また、運動を始めたばかりの方は、いきなり週5回を目指す必要はありません。
まずは週2〜3回から始めて、体が慣れてきたら徐々に頻度を増やしていくとよいでしょう。
無理なく続けられるペースを見つけることが、長期的な成功につながります。
息が少し上がる程度の中強度が目安
運動の強度、つまり「どのくらいの強さで運動するか」も、血圧低下効果に影響します。
高血圧の方には、中強度(中等度)の運動が最も推奨されています。
中強度とは、「ややきつい」と感じる程度の運動強度で、会話はできるが歌を歌うのは難しい、というレベルです。
具体的には、運動生理学では最大酸素摂取量の40〜60%程度の強度とされています。
より簡単な目安としては、最大心拍数の50〜70%程度の強度です。
最大心拍数は、おおよそ「220−年齢」で計算できます。
たとえば50歳の方であれば、220−50=170が最大心拍数なので、その50〜70%である85〜119拍/分程度が目標心拍数となります。
ただし、心拍数を正確に測るのが難しい場合や、血圧の薬(特にベータ遮断薬)を服用していて心拍数が正確に反映されない場合もあります。
そのような場合は、自分の感覚で「ややきつい」と感じる程度を目安にするとよいでしょう。
中強度運動の目安
| 判定方法 | 目安の内容 |
|---|---|
| 主観的な感覚 | 「ややきつい」と感じる程度(会話はできるが歌は難しい) |
| 運動生理学的指標 | 最大酸素摂取量の40〜60%程度 |
| 心拍数による目安 | 最大心拍数の50〜70%(※最大心拍数=220−年齢) |
| 具体的な運動例 | ・ウォーキング:少し息が上がる早歩き ・ジョギング:会話できる程度の速さ |
ウォーキングであれば、散歩のようにのんびり歩くのではなく、少し早歩きで、呼吸が少し速くなる程度のペースが中強度に相当します。
ジョギングでは、隣の人と会話しながら走れる程度の速さが目安です。
重要なのは、「きつすぎる」運動は避けることです。
息が切れて会話ができないほどの高強度の運動は、血圧を急激に上昇させる可能性があるため、高血圧の方には推奨されません。
特に運動を始めたばかりの方や、血圧が高めの方は、軽めの強度から始めて、徐々に強度を上げていくことが安全です。
また、運動中に胸の痛みや息切れ、めまい、強い疲労感などを感じた場合は、すぐに運動を中止し、医師に相談することが大切です。
自分の体の声に耳を傾け、無理をしないことが何よりも重要です。
1回の運動時間は30分程度を目指す
1回の運動時間については、30分以上が推奨されています。
厚生労働省のガイドラインでも、「運動量は30分以上」とされており、これは国際的なガイドラインとも一致しています。
ただし、30分の運動は必ずしも連続して行う必要はありません。
2018年の米国身体活動ガイドラインでは、10分未満の短い運動でも、合算することで健康効果が得られることが明記されています。
たとえば、朝10分、昼10分、夕方10分といった具合に、1日のうちに何回かに分けて行っても、同様の効果が得られることが研究で示されています。
全体として、私たちの研究結果は、成人は1回の運動でも、1日を通して短い運動を積み重ねることでも、同様の健康効果を得られる可能性が高いことを示唆しています。
引用:Springer The Effects of Continuous Compared to Accumulated Exercise on Health: A Meta-Analytic Review
忙しい方でも、細切れの運動を積み重ねることで十分な健康便益が期待できます。
週単位で見ると、中強度の有酸素運動を週に150分以上行うことが目標となります。
これを週5日で割ると、1日30分の計算になります。
もし高強度の運動を行う場合は、週に75分以上が目標となり、1日あたり約15分程度となります。
運動時間と強度の目安
| 種類 | 目標時間(週あたり) | 1日あたりの目安 | 特徴・補足 |
|---|---|---|---|
| 中強度の有酸素運動 | 150分以上 | 約30分×週5日 | 会話ができる程度の強度が目安 |
| 高強度の有酸素運動 | 75分以上 | 約15分×週5日 | 息が弾むが無理のない範囲で実施 |
| 筋力トレーニング | 週2〜3回 | 1回30〜40分 | 各筋群を1〜3セット(10〜15回ずつ) |
| ウォーミングアップ/クールダウン | 各5〜10分 | 運動前後に実施 | 血圧の急変やケガの予防に有効 |
筋力トレーニングについては、1回のセッションで主要な筋肉群(胸、背中、肩、腕、腹部、脚)を鍛える運動を行います。
各筋肉群に対して1〜3セット、各セット10〜15回の反復を行うことが推奨されており、全体で30〜40分程度の時間がかかります。
運動を始めたばかりの方は、いきなり30分を目指す必要はありません。
まずは10分、15分と短い時間から始めて、体が慣れてきたら徐々に時間を延ばしていくとよいでしょう。
また、運動前後には5〜10分程度のウォーミングアップ(準備運動)とクールダウン(整理運動)を行うことで、怪我の予防や血圧の急激な変動を防ぐことができます。
大切なのは、長時間の激しい運動を時々行うことよりも、適度な強度の運動を定期的に続けることです。
毎日の生活の中に運動を取り入れ、習慣化することが、高血圧改善への近道となります。
高血圧の人が運動するときに気をつけること
運動は高血圧の改善に効果的ですが、正しく行わなければ逆効果になったり、健康を害したりする可能性もあります。
ここでは、高血圧の方が安全に運動を行うための注意点と、避けるべき運動について詳しく解説します。
運動を始める前に医師に相談する
運動療法を始める前に、まず医師に相談することが非常に重要です。
特に以下のような方は、必ず医師の診察を受け、運動の可否や適切な運動内容について指導を受けるべきです。
- 収縮期血圧が180mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上の重度高血圧の方
- 心臓病・腎臓病などの合併症がある方
- 糖尿病を患っている方
- 喫煙歴のある方
- 肥満のある方
- 45歳以上の男性、または55歳以上の女性で、これまで運動習慣がなかった方
重度の高血圧(Ⅲ度高血圧:収縮期血圧が180mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上)の方は、運動を始める前に薬物治療で血圧を下げる必要があります。
血圧が非常に高い状態で運動すると、脳出血や心臓発作などの重大な合併症を引き起こす危険があります。
また、心臓病や腎臓病などの合併症がある方、糖尿病の方、喫煙歴のある方、肥満の方なども、運動を始める前に医師の評価を受けることが推奨されます。
特に45歳以上の男性や55歳以上の女性で、これまで運動習慣がなかった方が中強度以上の運動を始める場合は、事前に運動負荷試験などの検査を受けることが望ましいとされています。
医師の診察では、現在の血圧の状態、心血管系の健康状態、その他の合併症の有無などが評価されます。
そして、個人の状態に応じた適切な運動の種類、強度、頻度、時間についてアドバイスを受けることができます。
また、現在服用している薬が運動に影響を与える可能性についても確認できます。
運動を始めた後も、定期的に血圧を測定し、医師に報告することが大切です。
家庭での血圧測定も有効で、運動前後の血圧の変化を記録することで、運動の効果を確認できます。
避けるべき運動と禁忌
高血圧の方が避けるべき運動や活動がいくつかあります。
これらを知っておくことで、安全に運動を続けることができます。
まず、非常に重い重量を使った筋力トレーニングは避けるべきです。
最大筋力の80%以上の高負荷でのトレーニングや、少ない回数しかできないような重いウエイトを使った運動は、血圧を急激に上昇させる危険があります。
高血圧の方に推奨される基本は、中強度の有酸素運動と中等度負荷のレジスタンストレーニングです。
アイソメトリック運動(等尺性運動)については、以前は推奨されていませんでしたが、最近の研究で血圧低下効果が示されています。
様々な運動トレーニングモード、特に等尺性運動は安静時血圧を改善する。
引用:British Journal of Sports Medicine Exercise training and resting blood pressure: a large-scale pairwise and network meta-analysis of randomised controlled trials
壁スクワット(壁に背中をつけて座る姿勢を保持する)やハンドグリップなどが代表例ですが、これらは医療者の処方管理のもとで行えば効果的です。
ただし、息を止めて行うと血圧が急上昇するため、呼吸を続けながら行うことが重要です。
高強度インターバルトレーニング(HIIT)については、管理された高血圧患者において、医療者の監督下で段階的に導入すれば、血圧低下や心肺機能改善が期待できることが複数の研究で示されています。
特に、ステージ1の高血圧(収縮期血圧130〜139mmHgまたは拡張期血圧80〜89mmHg)で他のリスク因子がない方には効果的で安全であることが示されています。
HIITは、関連するリスク因子のないステージ1高血圧患者に対して、監督下で実施された場合にのみ安全であると考えられる。
引用:PubMed Central Effect of High-Intensity Interval Training on Exercise Capacity, Blood Pressure, and Autonomic Responses in Patients With Hypertension: A Systematic Review and Meta-analysis
ただし、重度の高血圧の方や心血管リスクが高い方は自己判断での高強度運動を避けるべきです。
HIITを検討する場合は、必ず医師や運動専門家に相談してください。
競技スポーツや、激しい身体接触を伴うスポーツ(ラグビー、格闘技など)も、血圧の急激な変動や怪我のリスクがあるため、血圧がコントロールされていない方には推奨されません。
欧州ガイドラインでは、血圧が140/90mmHg未満にコントロールされていれば競技参加が可能とされていますが、それ以上の場合は正常化するまで制限が必要です。
スカイダイビングやスキューバダイビングなどの特殊なスポーツについては、個別のリスク評価が必要です。
スキューバダイビングは、血圧が適切にコントロールされていれば、医師の評価のもとで可能な場合があります。
ただし、収縮期血圧が160mmHg以上または拡張期血圧が100mmHg以上の場合は、治療と再評価が必要です。
いずれの場合も、必ず医師に相談し、個別のリスク評価を受けてください。
また、運動の際に息を止める動作は絶対に避けてください。
息を止めると血圧が急激に上昇します(バルサルバ効果)。
重いものを持ち上げるときや、腹筋運動をするときなど、つい息を止めがちですが、常に自然な呼吸を心がけることが重要です。
運動中にこんな症状が出たら中止する
運動中に以下のような症状が現れた場合は、すぐに運動を中止し、休息を取る必要があります。
症状が改善しない場合や、重篤な症状の場合は、速やかに医療機関を受診してください。
運動を中止すべき症状と考えられる原因
| 症状 | 考えられる原因・状態 | 対応 |
|---|---|---|
| 胸の痛み・圧迫感・不快感 | 狭心症・心筋梗塞など心疾患の可能性 | すぐに中止し医療機関へ |
| 強い息切れ・呼吸困難 | 心肺機能の異常、血圧急上昇 | 運動を中止し休息、改善しなければ受診 |
| めまい・立ちくらみ・ふらつき | 血圧変動・脳血流低下 | 安静にし、改善しなければ受診 |
| 激しい頭痛・視界のぼやけ・吐き気 | 血圧の過度上昇(高血圧緊急症) | 運動を中止し、医療機関を受診 |
| 過度の疲労・筋肉痛・けいれん | 過剰な負荷や脱水 | 休息・水分補給を行う |
胸の痛みや圧迫感、不快感がある場合は、心臓に問題が生じている可能性があります。
狭心症や心筋梗塞の兆候である可能性があるため、すぐに運動を中止し、医療機関を受診してください。
強い息切れや呼吸困難も、運動を中止すべきサインです。
通常の運動であれば、呼吸が少し速くなる程度ですが、息が切れて会話ができない、呼吸が苦しくて続けられないといった状態は異常です。
めまいや立ちくらみ、ふらつきがある場合も注意が必要です。
これらは血圧が急激に変動している、あるいは脳への血流が不十分になっている可能性を示しています。
激しい頭痛や、視界がぼやける、吐き気や嘔吐などの症状も、血圧が危険なレベルまで上昇している可能性があります。
これらの症状が現れた場合は、すぐに運動を中止し、医療機関を受診してください。
過度の疲労感や、筋肉の痛み、けいれんなども、運動の強度が高すぎる、あるいは体調が優れていないサインです。
無理をせず、休息を取ることが大切です。
運動中の血圧が過度に上昇した場合は、運動を中止すべきです。
- 収縮期血圧が 250mmHg以上 または拡張期血圧が 115mmHg以上 → 運動を中止
- 安静時血圧が 収縮期200mmHg以上 または 拡張期110mmHg以上 → 運動開始禁止
- 運動後も血圧が 180/120mmHg以上 の場合 → 高血圧緊急症の可能性、すぐに受診
アメリカスポーツ医学会(ACSM)とアメリカ心臓協会(AHA)では、収縮期血圧250mmHg以上または拡張期血圧115mmHg以上を相対的中止基準としています。
一方、安静時の血圧が収縮期200mmHg以上または拡張期110mmHg以上の場合は、そもそも運動を開始すべきではありません。
また、運動後に休息しても血圧が180/120mmHg以上のままである場合は、高血圧緊急症の可能性があるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。
運動前後には、準備運動(ウォーミングアップ)と整理運動(クールダウン)を必ず行いましょう。
これにより、血圧の急激な変動を防ぎ、怪我のリスクも減らすことができます。
また、運動中はこまめに水分補給を行い、脱水を防ぐことも大切です。
よくある質問
- 薬を飲んでいても運動は必要ですか?
-
はい、血圧を下げる薬を服用していても、運動療法は重要です。
運動と薬物療法を併用することで、より良好な血圧コントロールが期待でき、場合によっては薬の量を減らせる可能性もあります。
ただし、服用している薬の種類によっては運動時の注意点がありますので、医師に相談してください。
- 運動は朝と夜、どちらが効果的ですか?
-
最も重要なのは、自分の生活リズムに合わせて続けやすい時間帯を選び、運動を習慣化することです。
研究結果は混在していますが、夕方から夜の運動の方が血圧低下効果がやや大きい可能性を示す研究もあります。
ただし、個人差が大きく、服薬スケジュールや生活パターンとあわせて個別に最適化することが大切です。
なお、血圧を正確に測定するためには、運動の前後30分は測定を避けることが推奨されています。
- 寒い日や暑い日の運動はどうすればよいですか?
-
極端な気温は血圧に影響を与えるため注意が必要です。
寒い日は血管が収縮して血圧が上がりやすいので、十分なウォーミングアップを行い、温かい服装で運動しましょう。
暑い日は脱水で血圧が不安定になりやすいため、こまめな水分補給と涼しい時間帯での運動を心がけてください。
まとめ
高血圧の改善には、定期的な運動が非常に効果的です。
有酸素運動を中心に、週150分以上の中強度運動(または週75分以上の高強度運動)を目標に、週3〜5回以上、1回30分程度の運動を続けることで、収縮期血圧が3〜8mmHg、拡張期血圧が2〜5mmHg低下することが期待できます。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動に加えて、軽めの筋力トレーニングやストレッチを組み合わせることで、より高い効果が得られます。
ただし、重度の高血圧の方や、心臓病などの合併症がある方は、運動を始める前に必ず医師に相談してください。
運動中に胸の痛みやめまい、強い息切れなどの症状が現れた場合は、すぐに運動を中止し、必要に応じて医療機関を受診することが大切です。
無理をせず、自分の体調に合わせて、継続できる運動習慣を身につけることが、高血圧改善への第一歩となります。
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厚生労働省「高血圧症を改善するための運動」
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