血圧が急に高くなり、脳や心臓などの大切な臓器に悪影響を及ぼす状態を「高血圧緊急症」といいます。
命に関わる危険があるため、すぐに病院での治療が必要です。
普段から血圧の薬を飲んでいる方でも、薬を飲み忘れたり、強いストレスを感じたりすると起こることがあります。
- 血圧180/120mmHg以上で臓器に急性障害が起きる緊急状態
- 臓器損傷がある点で高血圧切迫症と異なり即座に入院が必要
- 脳梗塞・心筋梗塞・腎不全など重篤な合併症リスクが高い
- 最多の原因は降圧薬の服薬中断や飲み忘れによるもの
- 点滴薬で段階的に血圧を下げる治療を集中治療室で行う
高血圧緊急症で救急外来を受診される方は全体の約0.5%とそれほど多くはありませんが、いざ発症すると入院が必要になり、適切な治療を受けないと重い病気につながる可能性があります。
高血圧緊急症は、血圧が180/120mmHg以上という非常に高い値になり、脳、心臓、腎臓、太い血管などに急に障害が起きている状態です。
ただ血圧が高いだけでなく、臓器がダメージを受けていることが特徴で、すぐに治療を始めないと脳卒中や心筋梗塞といった重い病気を引き起こす可能性があります。
- 高血圧緊急症とはどんな状態なのか
- どんな症状が出るのか、危険なサインの見分け方
- なぜ起こるのか、ストレスとの関係
- 病院ではどんな治療を受けるのか
- 日常生活で気をつけるべきこと
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
高血圧緊急症は命に関わる危険な状態
高血圧緊急症とは、血圧が急激に上がるだけでなく、体の大切な臓器に急な障害が起きている深刻な状態です。
普通の高血圧とは緊急度が全く違い、すぐに病院での治療が必要になります。
放っておくと命に関わる可能性があるため、早めに気づいて対処することが大切です。
血圧が急激に上昇して臓器にダメージを与える病態
高血圧緊急症では、血圧が180/120mmHg以上というとても高い値を示すことが多いです。
血圧とは、血液が血管の壁を押す力のことですが、この力があまりに強くなりすぎると、血管に大きな負担がかかります。
例えるなら、ホースに流れる水の勢いが強すぎてホースが傷んでしまうような状態です。
普段は、血圧が少し変動しても体が自動的に調整してくれる仕組みがあります。
しかし、血圧が急激に上がりすぎると、この調整機能が追いつかなくなってしまいます。
血管の内側が傷つき、炎症が起きると、さらに血管が縮んで血圧が上がるという悪い流れができてしまいます。
特に脳では、血圧の変化から脳を守る仕組みがありますが、血圧が極端に高くなるとこの仕組みが機能しなくなります。
その結果、脳がむくんだり、頭の中の圧力が高まったりすることがあります。
心臓では、急に血圧が上がることで心臓に大きな負担がかかり、心臓の筋肉に十分な酸素が届かなくなることがあります。
腎臓でも、血管が傷ついて急に働きが悪くなることがあります。
高血圧緊急症で起こる主な臓器障害
| 臓器 | 起こりうる障害 |
|---|---|
| 脳 | 脳がむくむ、脳梗塞、脳出血 |
| 心臓 | 心筋梗塞、心不全、肺に水がたまる |
| 血管 | 大動脈が裂ける(大動脈解離) |
| 腎臓 | 急に働きが悪くなる(急性腎不全) |
これらはどれも命に関わる重い病気であり、早く見つけて適切な治療を受けることが大切です。
通常の高血圧とは緊急性が全く異なる
普通の高血圧は、長い年月をかけて少しずつ血圧が高い状態が続く病気です。
自覚症状がないことが多く、時間をかけてゆっくり治療していきます。
一方、高血圧緊急症は血圧が急に上がって臓器に障害が起きる緊急の状態で、数時間から数日という短い期間で深刻な状態になる可能性があります。
普通の高血圧では、血圧が少し高くても体が調整して臓器への血液の流れを一定に保つことができます。
しかし、高血圧緊急症では血圧の上がり方があまりに速いため、体の調整が間に合わず、臓器への血液が多すぎたり、血管が傷ついたりしてしまいます。
高血圧緊急症と高血圧切迫症の違い
| 項目 | 高血圧緊急症 | 高血圧切迫症 |
|---|---|---|
| 血圧 | 180/120mmHg以上 | 180/120mmHg以上 |
| 臓器障害 | あり | なし |
| 緊急性 | 即座に入院治療が必要 | 外来での治療が可能 |
| 血圧を下げる速度 | 数時間以内に段階的に | 数日かけてゆっくり |
この違いを知っておくことは、適切な対処をする上で重要です。
放置すると脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる
高血圧緊急症を治療しないでいると、命に関わる重い病気を引き起こす危険が大きく高まります。
研究によると、高血圧緊急症で入院した患者さんのうち約10%が亡くなると報告されています。
高血圧緊急症患者の院内死亡率は9.9%(95% CI, 1.4%~24.6%)でした。
引用:American Heart Association Journals Clinical Outcomes in Hypertensive Emergency: A Systematic Review and Meta‐Analysis
また、助かった方でも、退院後1年以内に重い心臓の病気や脳卒中になるリスクが高いことがわかっています。
脳卒中は高血圧緊急症でよく起こる合併症の一つです。
特に脳梗塞は約28%の患者さんに起こるとされています。
血圧が急に上がることで脳の血管が破れると脳出血になり、脳に重いダメージを与えます。
また、血の塊ができやすくなって脳梗塞のリスクも上がります。
これらの病気は、手足が動かせなくなったり、言葉が話せなくなったりする後遺症を残す可能性があり、その後の生活に大きな影響を与えます。
心筋梗塞や心不全も高血圧緊急症の重大な合併症です。
血圧が急に上がると心臓に大きな負担がかかり、心臓の筋肉に十分な酸素が届かなくなって心筋梗塞を引き起こします。
肺に水がたまる状態は約24%の患者さんに見られ、息苦しさや酸素不足といった緊急事態を招きます。
大動脈解離は頻度は低いですが、亡くなる危険性が非常に高い病気で、太い血管の内側が裂けて血液が血管の壁の中に入り込んでしまう状態です。
腎臓への影響も深刻です。
腎臓の働きが急に悪くなると、場合によっては緊急で透析が必要になることもあります。
高血圧緊急症で入院した患者さんの約8%に腎不全が起こると報告されており、長期的に腎臓の機能が低下する可能性もあります。
主な合併症とその発生頻度
| 合併症 | 発生頻度 |
|---|---|
| 脳梗塞 | 約28% |
| 肺に水がたまる | 約24% |
| 腎不全 | 約8% |
| 死亡率 | 約10% |
これらの合併症を防ぐには、高血圧緊急症を早く見つけて、すぐに適切な治療を始めることが欠かせません。
激しい頭痛やめまいが代表的な症状
高血圧緊急症の症状は、どの臓器に障害が起きているかによって違いますが、多くの方に共通して見られるのが激しい頭痛です。
この頭痛は普段の頭痛とは違い、突然始まる強烈な痛みです。
吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
めまいや目が見えにくくなる、意識がもうろうとするなども重要な危険信号です。
見逃してはいけない症状のチェックリスト
高血圧緊急症で最もよく見られる症状は頭痛です。
この頭痛は、ドクンドクンと脈打つような痛みで、特に後頭部が痛むことが多く、朝方に悪化する傾向があります。
脳に影響が出ている場合、意識がぼんやりする、眠たくなる、意識を失うといった症状が進むこともあります。
目に関する症状も重要な警告サインです。
視野の一部が見えなくなる、物が二重に見える、一時的に視力が落ちるといった症状が出ることがあります。
目の検査で異常が見つかる場合、高血圧によって目の血管に深刻な影響が出ていることを示しています。
脳・神経の症状
- 激しい頭痛(特に後頭部、脈打つような痛み)
- めまい、ふらつき
- 意識がもうろうとする、眠たくなる
- 片側の手足のしびれや力が入らない
- うまく話せない
- けいれん発作
目の症状
- 視野の一部が見えなくなる
- 物が二重に見える
- 一時的に視力が落ちる
その他の症状
- 吐き気、嘔吐
- 鼻血
- 動悸
- 気持ちが落ち着かない
神経に関する症状としては、片側の手足がしびれる・力が入らない、うまく話せない、けいれん発作などが挙げられます。
これらの症状は脳の病気を示す重要なサインであり、すぐに病院を受診する必要があります。
一時的な症状であっても、放っておくと本格的な脳梗塞に進む危険があります。
その他のよく見られる症状として、鼻血、ふらつき、動悸、気持ちが落ち着かないなどがあります。
鼻血も見られることがある症状です。
これらの症状が血圧の急な上昇と関係している場合、高血圧緊急症の可能性を考える必要があります。
胸の痛みや息苦しさがあればすぐに救急車を
胸の痛みは心臓に障害が起きていることを示す非常に重要な症状です。
多くの患者さんが胸の痛みを訴えて病院を受診します。
この胸の痛みは、心臓の筋肉に酸素が足りなくなって起こる心筋梗塞や、太い血管が裂ける大動脈解離によって起こることがあります。
胸の中央から左側にかけて押さえつけられるような痛み、ギュッと締め付けられるような痛み、背中や顎に広がる痛みなどが特徴的です。
息苦しさも緊急性の高い症状です。
息苦しさを訴える患者さんも多く見られます。
心不全や肺に水がたまると、肺で酸素と二酸化炭素の交換がうまくできなくなり、ひどい息苦しさを引き起こします。
患者さんは横になることができず、座ったり立ったりした方が楽になる傾向があります。
この状態は急に悪化する可能性があり、緊急の治療が必要です。
- 胸の中央から左側にかけて押さえつけられるような痛み
- ギュッと締め付けられるような胸の痛み
- 背中や顎に広がる痛み
- 激しい息苦しさ(横になれない)
- 胸が引き裂かれるような痛み(大動脈解離の可能性)
- 左右の腕で測った血圧が大きく違う
大動脈解離の場合、突然の激しい胸の痛みや背中の痛みが特徴です。
患者さんは「胸が引き裂かれるような痛み」と表現することが多く、この痛みは時間とともに移動することがあります。
大動脈解離は亡くなる危険性が非常に高い病気で、数時間以内に適切な治療を始めないと、血管が破れて亡くなるリスクが高まります。
左右の腕で測った血圧が大きく違う場合も、大動脈解離を疑う重要な手がかりです。
これらの症状が出た場合、特に高血圧と言われたことがある方や血圧の薬を飲んでいる方は、迷わず救急車を呼んでください。
自分で車を運転して病院に行くのは、運転中に症状が悪くなる危険があるためお勧めできません。
救急隊には、血圧が高いこと、飲んでいる薬、最後に血圧の薬を飲んだ時刻、症状が始まった時刻などを正確に伝えることで、病院に着いてからすぐに治療が始められます。
症状は突然現れることが多い
高血圧緊急症の症状は、多くの場合、突然かつ急に現れます。
朝起きた時に激しい頭痛に気づく、仕事中に突然胸が苦しくなる、夕食後にめまいと吐き気が同時に襲ってくるなど、前ぶれがほとんどないまま症状が出ることが特徴です。
この突然の発症は、血圧が短い時間で急に上がることが原因で、体の調整が追いつかないために起こります。
症状が進む速さも速く、数時間から数日という短い期間で重い状態になることがあります。
症状の進行スピードのイメージ
| 経過時間 | 起こりうる症状例 |
|---|---|
| 数時間以内 | 激しい頭痛、吐き気、胸痛、呼吸苦など |
| 半日〜1日 | 意識がもうろうとする、けいれん発作 |
| 数日以内 | 臓器障害が進行し命に関わる状態になる |
最初は軽い頭痛や何となく変だという程度でも、適切に対応しないと、意識がもうろうとする、けいれんが起こる、呼吸が苦しくなるといった命に関わる症状へ急に悪くなる可能性があります。
脳に影響が出ている場合、初めは軽い頭痛や目の異常から始まり、時間とともに意識がはっきりしなくなる、けいれん発作へと進むことがあります。
ただし、すべての方が典型的な症状を示すわけではありません。
- 高齢者:痛みや違和感に気づきにくい
- 糖尿病の方:神経障害で症状が鈍くなることがある
- 慢性的な高血圧の方:体が高血圧に慣れてしまい強い症状が出にくい
特にご高齢の方や糖尿病の方では、痛みを感じにくくなっているため、症状が軽かったり、普通とは違う形で現れたりすることがあります。
また、慢性的に血圧が高い状態に体が慣れている方では、かなりの高血圧でも自覚症状が少ないことがあり、注意が必要です。
家族や周りの人が気づく変化も重要です。
本人は気づいていなくても、言葉がもつれる、表情が硬い、いつもと様子が違うといった変化が見られる場合、脳への影響が出ている可能性があります。
このような場合、本人に代わって周りの人が病院に連絡することが大切です。
高血圧緊急症は時間との勝負で、症状が出てから治療を始めるまでの時間が短いほど、回復の見込みが良くなる傾向があります。
降圧薬の中断やストレスが引き金になる
高血圧緊急症が起こる原因にはいろいろありますが、最も多いのは血圧の薬をやめてしまったり、飲み忘れたりすることです。
また、強いストレスが血圧を急に上げる引き金になることもあります。
すでに高血圧の治療を受けている方でも、これらが原因で高血圧緊急症になるリスクがあることを知っておく必要があります。
治療中断や薬の飲み忘れが最も多い原因
研究によると、高血圧緊急症で救急外来を受診する患者さんの多くが、血圧の薬を飲むのをやめていたり、きちんと飲んでいなかったことが報告されています。
高血圧患者を対象とした前向き研究では、服薬アドヒアランス不良がHEの最も強力な予測因子でした[ 26 ]。
引用:Multidisciplinary Digital Publishing Institute The Management of Hypertensive Emergencies—Is There a “Magical” Prescription for All?
薬を指示通りに飲むことは、高血圧の治療で最も大切なことの一つです。
血圧の薬を急にやめると、「反跳性高血圧」という現象が起こることがあります。
これは、薬で抑えられていた血圧を上げる仕組みが急に活発になり、血圧が薬を飲む前よりも高くなってしまう状態です。
特定の薬(ベータ遮断薬やクロニジン)を突然やめると、この反動が強く現れる傾向があります。
体が薬の効果に慣れている状態から急に薬がなくなると、血管や心臓の調整機能が過剰に反応してしまうのです。
- 副作用が気になる
- 薬を飲み忘れる
- 「血圧が下がったから薬は必要ない」と自己判断
- 経済的な理由で薬を買えない
- たくさんの薬を飲むのが大変
- 自覚症状がないため必要性を実感しにくい
高血圧は自覚症状がほとんどない病気なので、薬を飲む必要性を実感しにくく、やめてしまいやすいという特徴があります。
また、高血圧と診断されたけれど治療を始めていなかった方や、高血圧だと気づいていなかった方でも高血圧緊急症になることがあります。
研究では、高血圧緊急症の患者さんの一部が、それまで高血圧と診断されていなかったことが報告されています。
定期的な健康診断や血圧測定の機会を逃していると、高血圧に気づかないまま進行し、ある日突然、高血圧緊急症として現れる可能性があります。
強いストレスで血圧が急上昇することもある
心の強いストレスは血圧を一時的に上げることが知られていますが、特に強い不安やパニック状態では、血圧が急激に大きく上がり、高血圧緊急症の引き金となることがあります。
ストレスを受けると、体は「戦うか逃げるか」という反応を示します。
この反応では、アドレナリンなどのストレスホルモンが出て、心臓がドキドキして、血管が縮むことで血圧が上がります。
急なストレスによる一時的な血圧上昇は正常な体の反応ですが、もともと高血圧がある方や、血圧の調整がうまくいかない方では、この反応が強く出すぎて、危険なレベルまで血圧が上がる可能性があります。
不安症やパニック障害を持つ方では、パニック発作の時に血圧が急上昇して、高血圧緊急症になるケースが報告されています。
長く続くストレスも高血圧緊急症のリスクを高める可能性があります。
仕事のストレス、人間関係の問題、お金の心配、孤独感などの慢性的なストレスは、交感神経を長い時間活性化させ、血管が縮んだり炎症が起きやすくなったりします。
研究では、慢性的なストレスが高血圧になるリスクを高めることが示されています。
ストレスへの対処方法と血圧への影響
| 対処方法 | 血圧への影響 |
|---|---|
| 問題解決型の対処 | 血圧上昇が少ない |
| 運動によるストレス解消 | 血圧上昇が少ない |
| 宗教的な支え | 血圧上昇が少ない |
| 対処できない状態 | 血圧上昇が大きい |
ストレスへの対処の仕方も大切です。
ストレスにうまく対応できない場合、血圧への悪い影響がより大きくなる可能性があります。
研究では、ストレスにうまく対応できない人は、高血圧のリスクが高いことが示されています。
逆に、問題を解決しようとする対処方法を使う人や、宗教や運動を通じてストレスに対処する人では、血圧への影響が少ない傾向が見られます。
課題指向的対処行動のスコアが高い参加者は、スコアが低い参加者と比較して、高血圧リスクが有意に低かった(オッズ比[OR] 0.546、95%信頼区間[CI] 0.371-0.804)。
引用:PubMed Coping styles and lifestyle factors among hypertensive and non-hypertensive subjects
高血圧の治療中でも起こりうる
高血圧の治療を受けている方でも、高血圧緊急症になるリスクはあります。
ある研究では、高血圧緊急症で入院した患者さんの約75%が、以前から高血圧と診断されて治療を受けていたことが報告されています。
これは、治療を受けているから安心というわけではなく、継続的な管理が大切だということを示しています。
治療中の方が高血圧緊急症になる主な理由
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 血圧コントロール不十分 | ・薬の種類や量が適切でない ・生活習慣の改善ができていない ・血圧が目標値まで下がっていない |
| 二次性高血圧の見逃し | ・腎臓の病気・ホルモンの病気(褐色細胞腫など) ・血管の病気(腎動脈狭窄など) |
| 他の薬の影響 | ・痛み止め(NSAIDs) ・一部の抗うつ薬 ・ステロイド ・免疫抑制薬 ・貧血の薬 ・がんの薬 |
| 急なストレスや体調の急変 | ・手術 ・けが ・感染症 ・脱水 ・電解質バランスの崩れ |
治療中の方が高血圧緊急症になる背景には、いくつかの理由があります。
第一に、血圧のコントロールが十分でない場合です。
血圧の薬を飲んでいても、薬の種類や量が適切でない、あるいは生活習慣の改善ができていないなどの理由で、血圧が目標値まで下がっていないことがあります。
このような状態が続くと、何かのきっかけで高血圧緊急症になるリスクが高まります。
第二に、特定の病気が原因の高血圧(二次性高血圧)が見逃されている可能性があります。
腎臓の病気、ホルモンの病気、血管の病気など、特定の原因によって起こる高血圧のことです。
褐色細胞腫という腫瘍が原因の場合、ホルモンが過剰に出て、突然血圧が急上昇することがあります。
また、腎臓につながる血管が狭くなっている場合、普通の血圧の薬では十分な効果が得られないことがあります。
第三に、他の薬の影響があります。
痛み止めの薬(NSAIDs)は、血圧の薬の効果を弱めることが知られており、特にご高齢の方では血圧への影響を受けやすいとされています。
NSAIDsは腎臓のCOXを阻害することで高血圧、ナトリウム貯留、浮腫を引き起こす。
引用:American Heart Association Journals Acetaminophen, Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs, and Hypertension
また、一部の抗うつ薬、ステロイド、免疫を抑える薬、貧血の薬、がんの薬などは血圧を上げる副作用があり、高血圧緊急症の原因となることがあります。
第四に、急なストレスや体の急変が引き金になることがあります。
手術、けが、感染症などの体のストレスは、ストレスホルモンを出して血圧を急に上げる可能性があります。
また、脱水や電解質のバランスが崩れることも血圧の調整に影響を与え、高血圧緊急症のリスクを高めることがあります。
病院での点滴治療で血圧を慎重に下げる
高血圧緊急症の治療では、臓器へのさらなるダメージを防ぐために血圧を下げることが最優先となりますが、急に下げすぎると臓器への血液の流れが悪くなるリスクがあるため、慎重に段階的に下げていく必要があります。
治療は集中治療室などで厳重な監視のもとで行われ、点滴の血圧の薬を使って血圧を調整していきます。
まずは救急外来を受診して検査を受ける
高血圧緊急症が疑われる場合、まず救急外来ですぐに評価が行われます。
到着後すぐに血圧測定が行われ、両腕で測定することで太い血管が裂けていないかなどを確認します。
左右の腕で測った血圧が大きく違う場合(通常20mmHg以上の差)、大動脈解離の可能性を示唆する所見の一つです。
ただし、この所見だけで診断を確定することはできないため、総合的な判断が必要です。
- 高血圧の既往歴
- 現在飲んでいる薬
- 最後に血圧の薬を飲んだ時刻
- 症状が始まった時間
- 違法薬物の使用の有無
問診では、高血圧の既往、今飲んでいる薬、最後に血圧の薬を飲んだ時刻、症状が始まった時間、違法薬物の使用の有無などが確認されます。
これらの情報は、高血圧緊急症の原因を特定し、適切な治療方針を決める上で重要です。
診察では、意識の状態、神経の働き、心臓や肺の音、むくみの有無などが調べられます。
目の奥の検査は特に大切で、網膜の出血、視神経のむくみなどの所見は、高血圧による血管のダメージの程度を示す指標となります。
臓器へのダメージの程度を調べるために、さまざまな検査が行われます。
救急外来で行われる主な検査
| 検査項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 心電図 | 心臓への酸素不足、心臓が大きくなっていないか |
| 胸部レントゲン | 心臓が大きくなっていないか、肺に水がたまっていないか |
| 血液検査 | 腎臓の働き、電解質、心臓のダメージを示す物質、心不全のマーカー |
| 尿検査 | 尿にタンパクや血が混じっていないか(腎臓への障害) |
| 頭部CT/MRI | 脳出血、脳梗塞、脳のむくみ(神経症状がある場合) |
| 胸部CT | 大動脈解離の有無(胸や背中の痛みがある場合) |
心電図は心臓への酸素不足や心臓が大きくなっていないかを調べ、胸のレントゲン検査は心臓が大きくなっていないかや肺に水がたまっていないかを確認します。
血液検査では、腎臓の働き、電解質、心臓のダメージを示す物質、心不全のマーカーなどが測定されます。
尿検査では、尿にタンパクや血が混じっていないかを確認し、腎臓への障害を調べます。
神経の症状がある場合、頭部CTまたはMRI検査が行われ、脳出血、脳梗塞、脳のむくみなどがないか確認されます。
胸の痛みや背中の痛みがある場合は、太い血管が裂けていないかを確認するためにCT検査が必要になることがあります。
これらの検査結果をもとに、高血圧緊急症かどうかの判断が行われ、治療方針が決まります。
降圧薬の点滴でゆっくりと血圧をコントロール
高血圧緊急症と診断された場合、点滴の血圧の薬を使って、段階的に血圧を下げていきます。
治療の基本的な考え方は、最初の1時間以内に平均血圧を25%程度まで下げ、その後2〜6時間かけて160/100〜110mmHg程度まで下げることです。
ただし、太い血管が裂けている場合は例外で、より積極的に血圧を下げる必要があり、上の血圧を120mmHg未満まですぐに下げることが勧められます。
血圧を下げる標準的なスケジュール
| 時間 | 目標血圧 |
|---|---|
| 最初の1時間 | 平均血圧を25%程度まで下げる |
| その後2〜6時間 | 160/100〜110mmHg程度まで下げる |
| 例外:大動脈解離 | すぐに上の血圧を120mmHg未満に |
急に血圧を下げることは避けなければなりません。
血圧が急に下がると、脳、心臓、腎臓への血液の流れが急に減り、これらの臓器が酸素不足になったり壊死したりするリスクがあります。
特に長い間高血圧がある方は、体がある程度高い血圧に慣れているため、正常血圧まで急に下げると、かえって臓器への血液が足りなくなり、脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性があります。
このため、血圧は段階的にコントロールすることが大切です。
主な点滴降圧薬と使用される状況
| 薬剤名 | 主な適応 | 特徴 |
|---|---|---|
| ニトログリセリン | 心不全、肺に水がたまっている場合 | 心臓の負担を減らす |
| ニカルジピン/クリベジピン | ほとんどの高血圧緊急症 | 第一選択薬、広く使われる |
| ニトロプルシド | 様々な状況 | 頭の中の圧力が高い場合は注意、シアン化物中毒のリスクあり |
| ラベタロール/エスモロール | 大動脈解離、心筋梗塞 | 心臓への負担を減らす |
使う薬は、患者さんの状態に応じて選ばれます。
ニトログリセリンは主に心不全や肺に水がたまっている方に使われ、心臓の負担を減らします。
ニカルジピンやクリベジピンは、ほとんどの高血圧緊急症に使える薬で、現在の第一選択薬として広く用いられています。
ニトロプルシドも使用されますが、頭の中の圧力が高い場合は脳圧をさらに上昇させる可能性があることや、シアン化物中毒のリスクがあるため注意が必要です。
ラベタロールやエスモロールは、太い血管が裂けている方や心筋梗塞の方に適しています。
治療中は、動脈に直接針を入れて持続的に血圧を測ることが勧められます。
これにより、血圧の変化をすぐに把握し、薬の量を細かく調整することができます。
また、心電図、尿の量、意識の状態や神経の働きなども継続的に観察されます。
臓器への血液の流れが保たれているかを確認するため、症状の変化に注意深く目を配ることが重要です。
多くの場合は入院が必要になる
高血圧緊急症と診断された方は、ほぼ全員が入院治療を受けることになります。
入院期間は病気の重さや合併症によって違いますが、通常は数日から1週間程度です。
集中治療室(ICU)またはそれに準ずる病棟での管理が必要で、医師や看護師による24時間体制の監視のもとで治療が行われます。
入院の初めは点滴の血圧の薬で血圧をコントロールしますが、血圧が安定してきたら、飲み薬への切り替えが行われます。
この切り替えの時期は慎重に管理される必要があり、点滴の薬を少しずつ減らしながら、飲み薬の効果を確認していきます。
飲み薬は効果が長く続いて安定しているため、退院後の血圧管理に適しています。
高血圧緊急症でよく使われる飲み薬の組み合わせ
| 状態 | 推奨される薬の組み合わせ |
|---|---|
| 標準的な治療 | カルシウム拮抗薬 + ACE阻害薬またはARB |
| 心不全・むくみがある場合 | 上記 + 利尿薬 |
| 心筋梗塞・大動脈解離 | ベータ遮断薬 + カルシウム拮抗薬 |
飲み薬は、多くの場合、複数の薬を組み合わせて使います。
カルシウム拮抗薬(血管を広げる薬)とACE阻害薬またはARB(血圧を上げるホルモンを抑える薬)の組み合わせは、ほとんどの高血圧緊急症に使える標準的な選択肢です。
心不全やむくみがある場合は、利尿薬(おしっこを出やすくする薬)が追加されます。
心筋梗塞や太い血管が裂けている場合は、ベータ遮断薬(心臓の負担を減らす薬)とカルシウム拮抗薬の組み合わせが勧められます。
薬の選択は、患者さんの他の病気、腎臓の働き、電解質のバランスなどを考えて個別に決められます。
入院中には、高血圧緊急症の原因を探すことも同時に行われます。
特定の病気が原因の高血圧が疑われる場合、腎臓の血管の超音波検査、副腎のCT、ホルモンの検査などが行われることがあります。
原因がわかれば、その治療も始められます。
例えば、腎臓の血管が狭くなっていることが原因なら血管を広げる治療が、腫瘍が原因なら手術で取ることが検討されます。
- 薬を飲むことの大切さ
- 自宅での血圧測定の仕方
- 生活習慣で改善する点
- 高血圧緊急症が再発する時の症状
- 退院後の外来受診の日程
退院前には、患者さんへの説明が大切なプロセスとなります。
薬を飲むことの大切さ、自宅での血圧測定の仕方、生活習慣で改善する点、高血圧緊急症が再発する時の症状などについて、医療者から詳しい説明が行われます。
退院後の外来受診の日程も決められ、継続的な血圧管理と再発を防ぐための支援体制が整えられます。
日頃の血圧管理と服薬継続で予防できる
高血圧緊急症は適切な予防により、リスクを大きく減らすことができます。
予防の基本は、日常的な血圧管理と血圧の薬を確実に飲み続けることです。
高血圧と言われている方はもちろん、まだ言われていない方でも、定期的に血圧を測り、健康的な生活習慣を心がけることで、高血圧緊急症を防ぐことができます。
毎日の血圧測定と記録が基本
家で血圧を測ることは、高血圧の管理でとても大切な役割を果たします。
病院で測る血圧よりも、日常生活での血圧の方が、心臓や血管の病気のリスクをより正確に反映することが研究でわかっています。
また、家で血圧を測ることで、病院だと緊張して血圧が高くなってしまう「白衣高血圧」や、病院では正常でも家では高い「仮面高血圧」といった、病院での測定だけでは見逃しやすい状態を見つけることができます。
正しい血圧測定の方法
| 項目 | 推奨される方法 |
|---|---|
| 測定回数 | 朝晩の2回(朝:起床後1時間以内、夜:就寝前) |
| 測定前の準備 | 5分間安静にする、トイレを済ませる |
| 測定時の姿勢 | 背もたれのある椅子に座る、腕を心臓の高さに |
| カフの装着 | 素肌または薄い服の上に直接巻く |
| 避けるべきこと | 測定前30分以内のタバコ、コーヒー、激しい運動 |
| 血圧計の種類 | 上腕式の自動血圧計(最も正確) |
血圧測定は毎日同じ時間、同じ条件で行うことがお勧めです。
一般的には、朝起きてから1時間以内(トイレの後、朝ごはんの前、血圧の薬を飲む前)と、夜寝る前の2回測ることが理想的です。
測る前には5分ほど安静にし、背もたれのある椅子に座って測ります。
腕は心臓の高さに保ち、カフ(腕に巻く部分)は素肌に直接巻くか、薄い服の上から巻きます。
測る前30分以内のタバコ、コーヒー、激しい運動は避けてください。
- 日付と時刻
- 血圧の値(上と下)
- 脈拍
- 体調の変化
- 薬を飲んだかどうか
- 特別な出来事やストレス
血圧の値を記録することも大切です。
記録帳やスマートフォンのアプリなどを使って、日付、時刻、血圧の値、脈拍、体調や薬を飲んだかどうかなどを記録しておくと、診察の時に医師が血圧のパターンや変動を確認する際に役立ちます。
血圧がいつもより大幅に高い場合(180/120mmHg以上)、特に症状がある場合は、すぐに病院に連絡するか、救急外来を受診する必要があります。
血圧計の選び方も大切です。
上腕式(二の腕で測るタイプ)の自動血圧計が最も正確でお勧めです。
手首式や指式の血圧計は持ち運びやすいですが、測る位置が心臓の高さからずれやすく、正確さが劣る傾向があります。
血圧計は定期的に病院の血圧計と比べて、正確さを確認することも大切です。
また、機器の使い方を正しく理解し、適切に測ることで、信頼できる血圧の値を得ることができます。
塩分控えめとストレス解消を心がける
生活習慣の改善は、高血圧管理の基盤となります。
特に塩分を減らすことは、血圧を下げる効果がはっきり示されている大切な対策です。
日本高血圧学会ガイドライン(JSH2019)では1日の塩分摂取量を6g未満、理想的には5g未満(WHO推奨)にすることが勧められています。
日本人の平均塩分摂取量は約10gと言われており、意識的に減塩に取り組む必要があります。
- 加工食品や外食を控える
- 醤油やソースをかけずにつけて食べる
- だしや香辛料を使って味付けを工夫する
- 食品の栄養成分表示で塩分量をチェックする
- 塩分が多い食品(ラーメン、漬物、梅干し、塩辛、インスタント食品)を控える
- 新鮮な野菜や果物を多く食べる(カリウムが塩分排出を助ける)
減塩のコツとしては、加工食品や外食を控える、醤油やソースをかけずにつけて食べる、だしや香辛料を使って味付けを工夫する、食品の栄養成分表示を見て塩分の量をチェックするなどが挙げられます。
特にラーメン、漬物、梅干し、塩辛、インスタント食品などは塩分が多いため、食べる回数や量に注意が必要です。
また、新鮮な野菜や果物をたくさん食べることで、カリウムが塩分を体の外に出すのを助け、血圧を下げるのに役立ちます。
体重管理の目標値
| 指標 | 目標値 |
|---|---|
| BMI(体格指数) | 20〜25kg/m² |
| 腹囲(男性) | 85cm未満 |
| 腹囲(女性) | 90cm未満 |
| 減量ペース | 月に1〜2kg(無理なく) |
体重管理も血圧のコントロールに大切です。
BMI(体格指数)を20〜25kg/m²の範囲に保つことが勧められており、体重が多い方が減量することで血圧が下がることが知られています。
お腹周りも重要な指標で、腹囲目標は地域により異なり、日本では男性85cm未満、女性90cm未満(メタボリックシンドローム診断基準)が用いられます。
急激なダイエットではなく、バランスの取れた食事と適度な運動で、月に1〜2kgのペースで無理なく減量することが望ましいです。
- 頻度:週5〜7日
- 時間:1日30分以上
- 強度:中くらいの強さの有酸素運動
- 種類:速歩、ジョギング、水泳、サイクリングなど
- 注意点:血圧が高い状態での激しい運動は危険、開始前に医師に相談
適度な運動も血圧管理に効果的です。
1週間のうち5〜7日、1日30分以上の中くらいの強さの有酸素運動(速歩、ジョギング、水泳、サイクリングなど)が勧められます。
運動により心臓と肺の働きが良くなり、血管の柔らかさが改善され、体重管理にも役立ちます。
ただし、血圧が高い状態での激しい運動は危険ですので、運動を始める前に医師に相談することが大切です。
お酒の量を制限することも必要です。
飲みすぎは血圧を上げるため、日本のガイドラインでは、エタノール量として男性で1日20〜30mL以下、女性で1日10〜20mL以下(日本酒換算で男性1合程度、女性0.5合程度)にすることが勧められます。
これは日本特有のエタノール量での目安であり、国際的な「標準飲酒単位」とは定義が異なる点に注意が必要です。
タバコは血管を縮めて動脈硬化を進めるため、禁煙が強く勧められます。
- リラクゼーション
- マインドフルネス
- ヨガ
- 適度な運動
- 趣味の時間を持つ
- 十分な睡眠時間を確保する
ストレス管理も大切な予防策です。
長く続くストレスは交感神経を活発にし、血圧を上げる一因となります。
リラクゼーション、マインドフルネス、ヨガ、適度な運動、趣味の時間を持つなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
十分な睡眠時間を確保することも、ストレス管理と血圧のコントロールに重要です。
研究では、睡眠不足が高血圧のリスクを高めることが示されています。
睡眠時間が短いことは、高血圧症(HTN)の発症リスクの上昇と有意に関連していました(HR: 1.07、95% CI: 1.06–1.09)。
引用:PLOS ONE Association between sleep duration and hypertension incidence: Systematic review and meta-analysis of cohort studies
自己判断で薬をやめないことが最も重要
血圧の薬を指示通りに飲み続けることは、高血圧緊急症の予防で最も大切なことです。
前に述べたように、高血圧緊急症の患者さんの多くが薬を飲むのをやめていたことが報告されており、薬をやめることは高血圧緊急症の最も強い予測因子となっています。
「血圧が下がったから薬をやめても大丈夫」という考えは危険です。
血圧の薬は血圧を下げる効果を続けるために飲み続ける必要があり、薬をやめると血圧はまた上がります。
高血圧は症状がないことが多いため、薬の必要性を実感しにくいですが、薬により臓器への長期的な悪影響を防いでいることを理解することが大切です。
副作用が気になる場合や、薬の効果に疑問を感じる場合は、自分の判断でやめずに、必ず医師に相談してください。
多くの場合、薬の種類や量を変えることで、副作用を軽くしながら効果的な血圧のコントロールを続けることができます。
また、複数の薬を飲んでいる場合、飲むスケジュールが複雑で忘れやすいこともあります。
この場合、配合剤(複数の成分を1つの錠剤にまとめた薬)を使うことで、飲む薬を減らせる場合があります。
- 毎日同じ時間に薬を飲む習慣をつける
- 薬を目につく場所に置く
- 服薬リマインダーアプリを使う
- ピルケース(薬入れ)で1週間分をまとめておく
- 家族にサポートしてもらう
薬を確実に飲むための工夫も効果的です。
毎日同じ時間に薬を飲む習慣をつける、薬を目につく場所に置く、薬を飲むことを知らせてくれるアプリを使う、ピルケース(薬入れ)を使って1週間分の薬をまとめておくなどの方法があります。
家族のサポートも大切で、家族が薬を飲むよう促したり、一緒に確認したりすることで、薬をきちんと飲めるようになることが報告されています。
お金の問題で薬を買えない場合は、病院や薬局に相談してください。
ジェネリック医薬品(成分は同じで値段が安い薬)への変更、医療費の助成制度の利用など、経済的負担を軽くする方法があります。
薬を飲むのをやめるよりも、まずは相談することが大切です。
定期的な通院も大切です。
医師の診察により、血圧のコントロール状態、薬の効果や副作用、臓器への影響などを確認し、必要に応じて治療方針を調整することができます。
通常、血圧が安定している場合でも、少なくとも2〜3か月に1回の通院がお勧めです。
通院を怠ると、血圧のコントロール状況がわからず、知らないうちに高血圧緊急症のリスクが高まっている可能性があります。
よくある質問
- 高血圧緊急症はどのくらいの頻度で起こりますか?
-
高血圧緊急症は比較的まれですが、無視できない頻度で起きています。
救急外来を受診される全患者さんのうち、約0.5%が高血圧緊急症と診断されています。
適切な血圧管理によりこのリスクは大きく低減できます。
- 家で血圧が高くなったらどうすればいいですか?
-
家で血圧を測って180/120mmHg以上の高い値が出た場合、まず5〜10分安静にしてからもう一度測ってください。
高い値が続く場合で、激しい頭痛、胸の痛み、息苦しさ、意識がもうろうとするなどの症状がある場合は、すぐに救急車を呼んでください。
症状がない場合でも、かかりつけの医師に連絡して指示を聞くことをお勧めします。
- 降圧薬を飲んでいれば高血圧緊急症にはなりませんか?
-
血圧の薬を飲んでいても、高血圧緊急症になるリスクはゼロではありません。
血圧のコントロールが十分でない場合や、薬を飲むのをやめた場合にリスクが高まります。
また、ストレスや他の薬の影響で、血圧の薬を飲んでいても血圧が急に上がることがあります。
定期的に血圧を測り、薬を飲み続けることが大切です。
- ストレスだけで高血圧緊急症になることはありますか?
-
強いストレスや不安、パニック状態では血圧が一時的に大きく上がることがあります。
もともと高血圧がある方や血圧の調整がうまくいかない方では、ストレスがきっかけとなって高血圧緊急症になる可能性があります。
ただし、健康な方が普通のストレスだけで高血圧緊急症になることは極めてまれです。
- 一度高血圧緊急症になったら繰り返しやすいですか?
-
高血圧緊急症を一度経験した方は、再び起こるリスクが高いことが知られています。
適切な血圧管理と薬を飲み続けることが行われない場合、再び起こる率は高くなります。
しかし、退院後に血圧をしっかりコントロールし、定期的に通院して薬を飲み続けることで、再び起こるリスクを大きく減らすことができます。
生活習慣の改善も再発を防ぐために大切です。
まとめ
高血圧緊急症は、血圧が180/120mmHg以上に急に上がり、脳、心臓、腎臓などの大切な臓器に急な障害が起きる深刻な状態です。
激しい頭痛、胸の痛み、息苦しさ、意識がもうろうとするなどの症状が突然現れた場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
起こる原因で最も多いのは血圧の薬をやめてしまったり、飲み忘れたりすることで、強いストレスもきっかけになることがあります。
すでに高血圧の治療を受けている方でも、血圧のコントロールが十分でない場合や自分の判断で薬をやめた場合には、高血圧緊急症になるリスクがあります。
治療は集中治療室で厳重な監視のもとで行われ、点滴の血圧の薬で段階的に血圧をコントロールしていきます。
急に血圧を下げると臓器への血液の流れが悪くなるリスクがあるため、最初の1時間で平均血圧を25%程度下げ、その後数時間かけて目標値まで下げます。
ほとんどの場合、入院治療が必要です。
毎日の血圧測定と記録
- 朝晩2回、同じ条件で測定
- 上腕式の自動血圧計を使用
- 180/120mmHg以上で症状がある場合はすぐに受診
生活習慣の改善
- 塩分を1日5g未満に
- 適度な運動(週5〜7日、1日30分以上)
- 適正体重の維持(BMI 20〜25kg/m²)
- 禁煙・節酒
- ストレス管理と十分な睡眠
服薬の継続
- 自己判断で薬をやめない
- 副作用や疑問があれば医師に相談
- 服薬を忘れない工夫をする
- 定期的な通院(2〜3か月に1回)
予防には日常的な血圧管理が欠かせません。
毎日決まった時間に血圧を測って記録すること、塩分を1日5g未満にすること、適度な運動、体重管理、禁煙、お酒を控える、ストレスを管理するなどの生活習慣の改善が大切です。
何よりも、血圧の薬を自分の判断でやめずに、確実に飲み続けることが高血圧緊急症を防ぐ上で最も大切です。
副作用が気になる場合や疑問がある場合は、必ず医師に相談してください。
定期的に通院することで、血圧のコントロール状況を確認し、必要に応じて治療を調整することができます。
高血圧緊急症は適切な管理で予防できる病気ですので、毎日の血圧管理を怠らないようにしましょう。
American Heart Association Journals Clinical Outcomes in Hypertensive Emergency: A Systematic Review and Meta‐Analysis
National Center for Biotechnology Information Hypertensive Crisis
European Journal of Internal Medicine One-year outcomes following a hypertensive urgency or emergency
Cardioaragon 2024 ESC Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension
Multidisciplinary Digital Publishing Institute The Management of Hypertensive Emergencies—Is There a “Magical” Prescription for All?
JAMA Network Withdrawal of Antihypertensive Therapy: Hypertensive Crisis in Renovascular Hypertension
American Heart Association Journals Hypertensive Urgencies and Emergencies : Prevalence and Clinical Presentation
EMCrit Hypertensive emergency & antihypertensive medications
PubMed Coping styles and lifestyle factors among hypertensive and non-hypertensive subjects
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル | 重症高血圧」
American Heart Association Journals Acetaminophen, Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs, and Hypertension
Merck Manuals Aortic Dissection – Heart and Blood Vessel Disorders
British Medical Journal Ophthalmoscopy: a “blind spot” in clinical assessment of hypertensive emergencies
National Center for Biotechnology Information Hypertensive Emergency
Healthcare Safety Investigation Branch Investigation report: Delayed Recognition of Acute Aortic Dissection
Israel Emergency Medicine Evaluation and management of hypertensive emergency
The Hospitalist How Should Hypertensive Emergencies Be Managed?
Journal of Hypertension 2023 ESH Guidelines for the management of arterial hypertension The Task Force for the management of arterial hypertension of the European Society of Hypertension
PubMed Central Home Blood Pressure Monitoring: Current Status and New Developments
Journal of Hypertension a 2021 position paper by the Working Group on Blood Pressure Monitoring and Cardiovascular Variability of the European Society of Hypertension
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」
American Heart Association Monitoring blood pressure at home can be tricky. Here’s how to do it right.
American Heart Association When to Call 911 for High Blood Pressure
一般社団法人 日本循環器病予防学会「血圧測定法」
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
World Health Organization Sodium reduction
厚生労働省「令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要」
World Health Organization Increasing potassium intake to reduce blood pressure and risk of cardiovascular diseases in adults
European Society of Cardiology Part I. Highlights from the clinical consensus statement by the European Society of Cardiology on obesity and cardiovascular disease: obesity: generalities and lifestyle interventions
厚生労働省「メタボリックシンドロームの診断基準」
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子」
PubMed Central Thirty-Day Readmissions after Hospitalization for Hypertensive Emergency


コメント