高血圧と眼底検査の関係とは?目の血管や網膜症とのつながりを解説

高血圧と眼底検査の関係とは?目の血管や網膜症とのつながりを解説

健診や人間ドック、あるいは内科の診察で「血圧が高いですね、眼底検査も受けておきましょう」と言われて、戸惑った経験はないでしょうか。

血圧の話をしているのに、なぜ目の検査が必要なのか、すぐには結びつかないという方は多いはずです。

高血圧は、痛みやだるさといった自覚できる症状がほとんど出ないまま進んでいくことが多い病気です。

症状がないからこそ、自分の血管が今どのような状態にあるのかを、何らかの方法で確かめておく必要があります。

ところが、体の中を通っている血管の様子を、外から直接目で見ることは、通常はできません。

そんな中で直接観察できる数少ない例外が、目の奥にある「網膜」です。

高血圧と眼底検査の関係
  • 網膜は全身の血管を直接見られる数少ない部位
  • 眼底検査で全身の血管障害の程度を推測できる
  • 目は脳・心臓・腎臓と並ぶ高血圧性臓器障害の対象
  • 動脈の狭小化・出血・白斑・視神経の腫れを確認
  • 自覚症状がなくても眼底検査で見つかることがある

網膜は、体内の細小血管を眼底検査で直接観察できる数少ない部位であり、特に全身の血管状態を推測する手がかりとして重要です。

そのため、眼底検査によって網膜の細小血管を見ることで、高血圧によって体全体の血管がどれくらい影響を受けているかを、ある程度推測できる可能性があるといわれています。

ただし、眼底の様子だけで全身の血管への影響を正確に数値化して診断できるわけではありません。

とはいえ、実際にどのようなことがわかるのか、また血圧が高い状態が続くとなぜ目の血管に負担がかかるのかについては、詳しく知らないという方がほとんどではないでしょうか。

この記事では、高血圧のある方に眼底検査がすすめられる理由や、血圧が目の血管に与えるかもしれない影響、そして眼底出血や高血圧網膜症とはどのような状態を指すのかを、医師の立場からできるだけやさしい言葉で説明していきます。

この記事でわかること
  • 高血圧の方に眼底検査がすすめられる理由
  • 眼底検査で確認できる目の状態
  • 高血圧が目の血管に与えると考えられる影響
  • 眼底出血や高血圧網膜症の特徴
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はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧の人に眼底検査が必要な理由は血管の状態を確認するため

高血圧そのものには、自覚できる症状がほとんどないとされています。

痛みやしびれなどのはっきりしたサインが出にくいため、血管の中で少しずつ変化が起きていても、本人が気づくことは難しいといわれています。

一方で、目の奥にある網膜の細小血管は、器具を使って外から直接観察できる数少ない血管です。

そのため、眼底検査によって網膜の細小血管の状態を確認することは、体全体の血管が高血圧によってどれくらい影響を受けているかを推測する手がかりになると考えられています。

ただし、この検査だけで全身の血管障害の程度を完全に診断できるわけではありません。

高血圧が長く続くことで、脳や心臓、腎臓といった体の大切な部分に負担がかかることがありますが、こうした負担は「高血圧性臓器障害」と呼ばれ、目もこの対象に含まれるとされています。

このように、眼底検査は目の病気だけを調べるものではなく、体全体の血管の健康状態を知るための手段としても位置づけられており、人間ドックの検査項目に含まれたり、健診で追加されたりすることもあります。

高血圧性臓器障害の対象としては、主に以下のような部分が挙げられます。

高血圧性臓器障害が起こりやすい主な臓器
  • 脳(脳卒中など)
  • 心臓(心肥大や心不全など)
  • 腎臓(腎機能の低下など)
  • 目(網膜の変化など)

眼底検査でわかるのは目の血管や網膜の状態

眼底検査では、眼底カメラや眼底鏡などを用いて、網膜や網膜の血管、視神経の様子を観察します。

眼科で詳しく調べる場合には目薬を使って瞳(ひとみ)を大きく広げることがありますが、健診や人間ドックでは目薬を使わずに眼底カメラで撮影されることもあります。

具体的には、血管が部分的に細くなっていないか、出血がないか、白っぽい斑点(白斑)が出ていないか、視神経の腫れがないかなどを確認するとされています。

これらの様子は、高血圧がどれくらいの強さで、どれくらいの期間続いているかを反映している可能性があるといわれています。

一方で、年齢や糖尿病、腎臓の病気、脂質の異常、喫煙なども影響することがあり、高血圧だけが原因かを判断するのは難しい場合もあります。

そのため、他の病気による血管への影響を見分ける手がかりにもなると考えられています。

ただし、眼底の様子だけで完全に見分けられるわけではなく、これまでの病歴や全身の状態、その他の検査も合わせて判断することが大切です。

検査そのものは数分ほどで終わり、体への負担も少なく痛みはほとんどありませんが、目薬を使って瞳を広げた場合は、検査後数時間はまぶしく感じたり、近くのものにピントが合いにくくなったりすることがあります。

眼底検査で確認される主な所見をまとめると、次のとおりです。

眼底検査で確認される主な異常所見

所見どのような状態か
動脈の狭小化血管の一部が細くなっている状態
出血血管が破れて血液が漏れ出た状態
白斑(はくはん)網膜に白っぽい斑点が見える状態
視神経の腫れ視神経が集まる部分がむくんでいる状態

高血圧が続くと目の血管に負担がかかり傷つきやすくなる

血圧が高い状態が続くと、網膜の血管の壁にも負担がかかり血管が硬くなったり細くなったりする変化が起こる可能性があるとされています。

イメージとしては、ホースに強い水圧をかけ続けると、内側から少しずつ傷んでいくことに似ていると考えるとわかりやすいかもしれません。

この段階では、血管が一時的にきゅっと縮んでいるだけであることも多く、血圧をきちんとコントロールすることで、血管の状態が元に戻る可能性もあるといわれています。

ただし、すべての変化が元に戻るわけではなく、長く続いた動脈硬化による変化は残ることがあります。

高血圧の状態が長い期間続くと、血管の壁がだんだん厚く硬くなる「動脈硬化」と呼ばれる変化が進み、動脈と静脈が交わる部分で圧迫が起こるなど、元に戻りにくい変化に至る場合もあるとされています。

高血圧が持続すると、血管壁に構造的変化が生じ、硬化期へと移行します。内膜層が肥厚し、中膜層が過形成を起こし、細動脈壁に硝子変性の兆候が現れます。

引用:National Center for Biotechnology Information Hypertensive Retinopathy(StatPearls)

動脈と静脈が交わる部分での圧迫は、静脈の流れをせき止めてしまうことにつながる可能性があるともいわれています。

このように、目の血管の変化は、高血圧が続く期間や重さによって少しずつ進んでいくものと考えられており、早いうちから血圧を管理しておくことが大切とされています。

高血圧によって網膜の血管に負担がかかると眼底出血が起こり得る

眼底出血とは、網膜の血管が破れてしまい、網膜の中やその表面などに血液が漏れ出た状態のことです。

高血圧が続くことで血管の壁がもろくなったり、血液が漏れ出やすくなったり、血管が詰まって血流が悪くなったりすることが、出血の原因のひとつになると考えられています。

特に、血圧が急に大きく上がってしまった場合には、短い期間のうちに網膜の出血や視神経の腫れが起こることがあるとされ、こうした状態はすぐに医療機関で対応が必要なものとして扱われます。

血圧のコントロールがうまくいかない期間が長く続いている方や、糖尿病など血管に負担がかかりやすい持病を合わせて持っている方では、出血が起こりやすくなる可能性もあると指摘されています。

一方で、出血が起きた場所によっては見え方に影響しないこともあり、自覚症状が全くないまま、眼底検査で偶然見つかることも少なくないとされています。

そのため、見え方に変化がなくても、定期的な検査によって早めに変化に気づくことが望ましいと考えられています。

高血圧網膜症は、長期の高血圧や急激で重度な血圧上昇による目の変化

高血圧網膜症とは、高血圧が長い期間続いたり、急激に大きく血圧が上がったりすることによって、網膜の血管にさまざまな変化が起こった状態をまとめて呼ぶ言葉です。

ただし、軽い変化を「高血圧性眼底」などと区別し、重い状態のみを「高血圧網膜症」と呼ぶ場合もあります。

血管が細くなる、動脈と静脈が交わる部分で圧迫が起こる、出血や白斑が出る、視神経が腫れるなど、いくつかの変化が組み合わさって現れることがあり、その変化の程度によって段階分けされることもあるとされています。

たとえば、血管の変化が軽い段階から、出血や白斑を伴う段階、さらに視神経の腫れを伴うより進んだ段階まで、いくつかの段階に分けて評価されることがあるといわれています。

多くの場合、軽い段階から中くらいの段階では自覚できる症状がほとんどないとされていますが、重い段階まで進むと、視界がかすんだり、見える範囲の一部が欠けたように感じたりすることがあるとされています。

治療の基本は、高血圧網膜症そのものというより、もとになっている血圧をしっかりコントロールすることにあり、血圧管理がうまくいくことで、網膜の変化が良くなる可能性があるといわれています。

また、高血圧網膜症がみられる方では、脳卒中や腎臓のはたらきの低下など、他の部分にも負担がかかっている可能性が指摘されており、目の状態を確認することが、体全体の健康管理を考えるきっかけになるとも考えられています。

高血圧性網膜症は、体内の他の部位の全身標的臓器障害 (例えば、腎臓病) のマーカーとして長い間考えられてきました。

引用:Nature Hypertensive eye disease

高血圧網膜症の段階と特徴について、一般向けの目安として次のように整理されています。

高血圧網膜症の段階別の所見と症状の目安

段階の目安主な所見自覚症状の目安
軽い段階血管の狭小化など軽度の変化ほとんどなし
中くらいの段階出血や白斑を伴う変化ほとんどなし〜わずかな違和感
進んだ段階視神経の腫れを伴う変化視界のかすみ、視野の一部欠損など

よくある質問

高血圧の人は眼底検査をどのくらいの頻度で受ければよいですか?

検査を受ける間隔は、血圧のコントロールがうまくいっているかどうかや、糖尿病などの持病があるかどうかに加え、過去の眼底所見などによっても変わるとされています。

高血圧や糖尿病がある方では、少なくとも年に1回程度の眼底検査が目安になることが多いといわれていますが、具体的な間隔については、かかりつけの医師に相談しながら決めることが望ましいと考えられています。

眼底検査は痛みや体への負担がありますか?

眼科では瞳を広げる目薬を使うことがありますが、検査そのものに痛みや体への負担はほとんどないとされています。

目薬を使った場合は、検査後数時間ほど、まぶしく感じたり、近くのものにピントが合いにくくなったりすることがあるため、検査を受けた日は車の運転を控えることがすすめられています。

眼底出血が見つかったらどのように対処すればよいですか?

眼底出血が見つかった場合は、自分で判断せずにまずは眼科を受診し、原因や出血の部位・重症度を評価してもらうことが大切です。

その上で、高血圧や糖尿病、脂質異常症、血液疾患などの全身の病気が疑われる場合には内科(または高血圧の治療を受けている診療科)とも連携して経過を見てもらうことが推奨されています。

眼科での原因に応じた治療とあわせて、血圧のコントロールを続けることが、出血が良くなることや、再び起こることを防ぐことにつながる可能性があるといわれています。

まとめ

高血圧と眼底検査は、一見あまり関係がないように感じるかもしれませんが、網膜の血管は体全体の血管の状態を映し出す数少ない手がかりとされており、両者には深いつながりがあると考えられています。

高血圧が続くことで、目の血管にも少しずつ負担がかかり、眼底出血や高血圧網膜症といった変化につながる可能性があります。

多くの場合、初期には自覚できる症状がないため、症状がないからと安心せず、血圧のコントロールとあわせて、定期的な眼底検査を受けておくことが、目と体全体の健康を守る一歩になると考えられています。

気になる症状がある方や、眼底検査を受けるタイミングに迷っている方は、かかりつけの医師に相談してみることをおすすめします。

参考文献・参考サイト

National Heart, Lung, and Blood Institute High Blood Pressure Symptoms

ScienceDirect The New Era of Retinal Imaging in Hypertensive Patients

Centers for Disease Control and Prevention About High Blood Pressure

公益社団法人 日本人間ドック・予防医療学会 眼底健診判定マニュアル

Cleveland Clinic Fundus Photography

National Eye Institute Get a Dilated Eye Exam

American Heart Association How High Blood Pressure Can Lead to Vision Loss

MSDマニュアル プロフェッショナル版 高血圧性網膜症

National Center for Biotechnology Information Hypertensive Retinopathy(StatPearls)

MedlinePlus High blood pressure and eye disease

Cleveland Clinic Retinal Hemorrhage

公益社団法人 日本眼科医会 高血圧性網膜症

PubMed Central A Review of Hypertensive Retinopathy and Chorioretinopathy

Nature Hypertensive eye disease

National Center for Biotechnology Information Retinal Hemorrhage(StatPearls)

公益社団法人 日本眼科医会 40歳を過ぎたら受けよう!!眼底検査 目の健康を守るために

この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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