高血圧とEDの関係を解説!血圧が高いと勃起不全になりやすい理由と対策

高血圧とEDの関係を解説 血圧が高いと勃起不全になりやすい理由と対策

高血圧と診断されてから、以前よりも勃起しにくくなったと感じていませんか。

実は高血圧とED(勃起不全)には深い関係があります。

高血圧の方は、そうでない方に比べてEDになるリスクが約2倍高いことが分かっています。

研究によると、高血圧の患者さんの約68%が何らかのEDを経験しており、そのうち約45%が重いEDだったという報告もあります(研究により数値には幅があります)。

EDの原因は高血圧だけではありません。

高血圧を治療するために飲む薬の一部、特に「利尿薬」や古いタイプの「β遮断薬」という薬には、EDを引き起こす副作用があることが知られています。

「薬を飲み始めてから調子が悪くなった」と感じる方が多いのは、このためです。

ただし、すべての血圧の薬がEDを引き起こすわけではありません。

新しいタイプの薬の中には、EDへの影響がほとんどないものや、むしろ勃起しやすくなる可能性があるものもあります。

高血圧とEDの関係
  • 血管内皮機能の障害で陰茎への血流が悪化する
  • 動脈硬化により陰茎の細い血管が早期に影響を受ける
  • 降圧薬の副作用でEDが引き起こされる
  • 高血圧や肥満が重なると、男性ホルモンの分泌が減少する可能性
  • ストレスや睡眠不足でホルモンバランスが乱れる

良いニュースもあります。

適切に対処すれば、症状を改善できる可能性があるのです。

高血圧があってもED治療薬を安全に使える方は多くいます。

また、食事の見直しや運動といった生活習慣の改善が、高血圧とEDの両方に効くことも分かっています。

この記事では、高血圧とEDがどう関係しているのか、治療薬の影響はどうなのか、そして普段の生活でできる改善方法について、医学的な根拠に基づいて分かりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 高血圧がEDを引き起こす仕組み
  • 血圧の薬の副作用とEDの関係
  • 高血圧があってもED治療薬を使えるかどうか
  • 生活習慣の改善でEDを予防・改善する方法
  • 医師に相談する際のポイント
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧になると勃起しにくくなる3つの理由

高血圧とEDの関係は偶然ではありません。

高血圧の方は、血圧が正常な方に比べてEDのリスクが約2倍高いことが分かっています。

ある研究では、高血圧の患者さんの68.3%が何らかのEDを経験しており、そのうち45.2%が重いEDだったと報告されています(研究により数値には幅があります)。

さらに、血圧のコントロールがうまくいっていない方ほど、EDの症状も重くなる関連性が指摘されています。

高血圧とEDをつなぐ共通の問題は「血管の健康」です。

勃起は血管が正常に働いて初めて起こる現象です。

高血圧によって血管が傷つくと、その影響が陰茎(ペニス)の血流にも及びます。

血管だけでなく、神経やホルモンなど、体の様々な仕組みが関わっています。

ここからは、高血圧がEDを引き起こす主な3つの理由について、詳しく説明していきます。

血管が硬くなって陰茎に十分な血液が届かない

勃起の仕組みを簡単に説明すると、性的な刺激を受けた時に、陰茎の血管が広がって「海綿体」というスポンジ状の組織に大量の血液が流れ込むことで起こります。

しかし高血圧の状態が続くと、血管の内側を覆っている細胞が傷ついてしまいます。

すると、血管を広げる働きをする「一酸化窒素」という物質が十分に作られなくなります。

この状態を専門的には「内皮機能障害」と呼びます。

血管の内側が傷つくと、血管が硬くなって、必要な時に十分な血液を送り込めなくなります。

特に陰茎に血液を送る動脈はとても細く(直径1〜2ミリ程度)、心臓や脳の血管よりも早く影響を受けやすいのです。

このため、EDは心筋梗塞などの心臓の病気が起こる約3〜5年前に現れることがあります

ED 症状の発症から CAD 症状の発生までの期間は 2 ~ 3 年、心血管イベントの発生までの期間は 3 ~ 5 年と推定されます。

引用:PubMed Central Association between erectile dysfunction and coronary artery disease and it’s severity

つまり、EDは心臓や血管の病気を知らせる「早期警告サイン」とも言えるのです。

動脈硬化が進むと血流が悪化する

高血圧が続くと、血管の壁にコレステロールなどが溜まって血管が狭くなる「動脈硬化」が進みます。

動脈硬化は体中の血管で起こりますが、特に細い血管ほど早く影響が出ます。

陰茎への血流が悪くなると、性的な刺激があっても十分に勃起できなくなります。

高血圧になると、体の中で血管を縮める物質が増える一方で、血管を広げる物質が減ってしまいます。

すると、陰茎の内部にあるスポンジ状の組織がうまく膨らまなくなります。

実際の研究では、血管を縮める物質を注射すると勃起が終わってしまい、逆に血管を広げる薬を注射すると勃起が起こることが確認されています。

局所注射すると、これらの薬剤は海綿体平滑筋の収縮刺激を介してαアドレナリンを介した血管収縮を引き起こし、その結果、陰茎の萎縮を引き起こします。

引用:PubMed Central Safety and Efficacy of Ultra-Low-Dose Intracavernosal Adrenaline for Intraoperative Penile Erection in Transurethral Surgeries under Spinal Anesthesia

男性ホルモンの分泌が減少する可能性がある

高血圧や肥満、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満に加えて、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上が当てはまる状態)といった病気が重なると、男性ホルモンである「テストステロン」の分泌が減る可能性があります。

テストステロンは性欲を保ち、勃起機能にも関わる大切なホルモンです。

また、高血圧が長引くことで起こる慢性的なストレスや睡眠不足も、ホルモンのバランスを崩す原因になります。

1 週間の睡眠時間 5 時間制限を受けた若い健康な男性の小規模な便宜的サンプルでは、​​日中のテストステロン レベルが 10% ~ 15% 減少しました。

引用:PubMed Central Effect of 1 Week of Sleep Restriction on Testosterone Levels in Young Healthy MenFREE

高血圧の治療を長く続けている方や、いくつもの生活習慣病を抱えている方では、こうしたホルモンの変化がEDの原因の一つになっている可能性も考えられます。

高血圧の薬を飲んでからEDになった場合の対処法

血圧を下げる薬を飲み始めてから勃起しにくくなったと感じる方は少なくありません。

実際に、薬剤性のEDが全体の約20%を占め、血圧の薬はその主要な原因の一つとされています。

ただし、すべての血圧の薬がEDを引き起こすわけではなく、薬の種類によって影響は大きく違います。

古いタイプの薬はEDのリスクが高い一方で、新しいタイプの薬はEDへの影響が少ないか、むしろ勃起しやすくなる可能性があることも分かっています。

大切なのは、血圧の薬によるEDには「気持ちの問題」も大きく関わっているという点です。

「この薬は副作用でEDになる」という情報を知っているだけで、実際にEDが起こりやすくなることが研究で示されています。

薬を自分の判断で止めることはとても危険ですので、まずは医師に相談して、薬の種類を変えてもらうか、ED治療薬を併用するかなど、適切な対処法を検討することが大切です。

ここからは、血圧の薬とEDの関係について詳しく説明していきます。

降圧薬の一部にはEDを引き起こす副作用がある

すべての血圧の薬がEDを引き起こすわけではありません。

古いタイプの薬(利尿薬や一部のβ遮断薬など)はEDのリスクが高い一方で、新しいタイプの薬(ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、カルシウム拮抗薬など)はEDへの影響が少ないか、むしろ勃起しやすくなる可能性があることが分かっています。

とても興味深いのは、血圧の薬とEDの関係に「心理的な要素」も大きく関わっているということです。

ある研究では、薬の副作用について何も知らされなかった患者さんの中でEDが起きた割合はわずか3.1%でした。

ところが、「この薬にはEDの副作用があります」と詳しく説明を受けた患者さんでは31.2%がEDを経験しました。

3 か月後、勃起不全の発生率はグループ A で 3.1%、グループ B で 15.6%、グループ C で 31.2% であった (P<0.01)。

引用:PubMed Report of erectile dysfunction after therapy with beta-blockers is related to patient knowledge of side effects and is reversed by placebo

薬そのものの作用だけでなく、「副作用が出るかもしれない」という不安がEDを引き起こすケースも少なくないのです。

利尿薬やβブロッカーは特に影響が出やすい

「チアジド系利尿薬」は、血圧の薬の中でEDを引き起こしやすい薬として知られています。

利尿薬は体の中の余分な水分を尿として出すことで血圧を下げる薬です。

利尿薬による血液量の減少や、男性ホルモンであるテストステロンの値の低下などがEDの原因として考えられています。

大規模な研究では、利尿薬を使用した男性において、プラセボと比較してEDの発現が有意に多かったと報告されています。

しかし、1年後には、利尿薬の方が他の薬剤よりも発現率が高かったことが確認されました。

引用:PubMed Central Sexual Dysfunction in Patients With Hypertension: Implications for Therapy

「β遮断薬」も、特に古いタイプのもの(プロプラノロール、アテノロールなど)はEDのリスクが高いとされています。

これらの薬はテストステロンの値を下げる作用があり、それがEDにつながる可能性があります。

ただし、新しいタイプのβ遮断薬である「ネビボロール」は、血管を広げる物質の産生を促すことで、むしろ勃起しやすくなる可能性が示されています。

一方、「ACE阻害薬」や「アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)」、「カルシウム拮抗薬」は、EDを引き起こすリスクがとても低いことが分かっています。

特にARBは、勃起機能を改善する可能性が期待できるという研究結果も報告されています。

血圧の薬とEDへの影響

薬の種類EDへの影響代表的な薬
チアジド系利尿薬影響が出やすいヒドロクロロチアジドなど
古いタイプのβ遮断薬影響が出やすいプロプラノロール、アテノロールなど
新しいタイプのβ遮断薬影響が少ない、または改善する可能性ネビボロールなど
ACE阻害薬影響が少ないカプトプリル、エナラプリルなど
ARB影響が少ない、または改善する可能性ロサルタン、バルサルタンなど
カルシウム拮抗薬影響が少ないアムロジピン、ニフェジピンなど

薬の種類を変更することでEDが改善するケースも

血圧の薬を飲み始めてからEDになった場合、薬の種類を変えることで症状が良くなる可能性があります。

ただし、自分の判断で薬を止めたり変えたりすることは絶対にやめてください。

血圧のコントロールがうまくいかなくなると、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気のリスクが高まります。

医師に相談する際は、いつ頃からEDの症状が現れたのか、薬を飲み始めた時期との関係、症状の重さなどを具体的に伝えることが大切です。

医師は、今使っている血圧の薬が本当に必要不可欠なものかどうかを判断し、できればEDのリスクが低い薬への変更を検討します。

研究では、利尿薬やβ遮断薬からARBやネビボロールに変更した患者さんで、勃起機能が改善したことが報告されています。

このレビューでは、心血管薬物治療をネビボロールまたはARBに切り替えると、男性と女性の性機能の有意な改善が達成できること、およびスタチンの使用が性機能を改善できることが実証された。

PubMed Central A review of the positive and negative effects of cardiovascular drugs on sexual function: a proposed table for use in clinical practice

薬の変更だけでは十分に良くならない場合は、後で説明するED治療薬を一緒に使うという選択肢もあります。

高血圧があってもED治療薬は使える

高血圧の治療中でも、多くの場合ED治療薬を安全に使うことができます。

バイアグラ(シルデナフィル)やシアリス(タダラフィル)などの「PDE5阻害薬」と呼ばれる薬は、高血圧の患者さんのED治療に有効な選択肢となっています。

実際、いくつもの臨床試験で、血圧の薬で血圧がコントロールされている患者さんが(禁忌薬との併用や重篤な心臓病がない限り)ED治療薬を飲んでも、重い副作用はほとんど起こらないことが確認されています。

ただし、ED治療薬は全身の血管に作用するため、血圧を少し下げる効果があります。

また、一部の薬とは絶対に一緒に飲んではいけません。

特に「硝酸薬」(狭心症の治療薬)との併用は、血圧が急激に下がって命に危険が及ぶ可能性があるため、厳禁です。

血圧がきちんとコントロールされていることが、ED治療薬を安全に使う前提条件となります。

ここからは、高血圧の患者さんがED治療薬を使う際の注意点について詳しく説明します。

バイアグラやシアリスは血圧を少し下げる作用がある

PDE5阻害薬は、陰茎の血管を広げて勃起を助ける薬ですが、全身の血管にも軽く作用します。

研究によると、シルデナフィル100mgを飲んだ場合、上の血圧(収縮期血圧)が平均6〜8mmHg、下の血圧(拡張期血圧)が4〜5mmHg程度下がるとされています(ただし個人差があり、これより大きく下がる場合もあります)。

シルデナフィルはSBP(-6.0 mmHg、P = 0.0003)、DBP(-4.5 mmHg、P = 0.001)、および平均血圧(-5.3 mmHg、P = 0.00008)を低下させた。

引用:ResearchGate Effects of sildenafil citrate (Viagra) on blood pressure in normotensive and hypertensive men

この血圧の低下は一般的に軽いもので、健康な人や血圧の薬で血圧がコントロールされている高血圧の患者さんでは、問題になることは少ないとされています。

実際、複数の血圧の薬を飲んでいる患者さんでも、PDE5阻害薬を安全に使えることが臨床試験で確認されています。

血圧が下がることによる症状(めまい、ふらつきなど)が現れることはまれですが、もし症状が出た場合はすぐに医師に相談する必要があります。

興味深いことに、PDE5阻害薬は血圧を下げるだけでなく、血管の働きを改善する効果も報告されています。

シルデナフィルを続けて使うことで血管の機能が良くなり、勃起しやすくなるだけでなく、血圧のコントロールにも良い影響を与える可能性も一部の研究で示唆されています。

併用してはいけない薬を確認することが大切

PDE5阻害薬は多くの血圧の薬と一緒に飲むことができますが、絶対に一緒に使ってはいけない薬があります。

最も重要なのは「硝酸薬」(ニトログリセリンなど)です。

硝酸薬は狭心症(心臓の血管が狭くなって胸が痛くなる病気)の治療に使われる薬で、PDE5阻害薬と一緒に飲むと血圧が急激に下がり、命に危険が及ぶ可能性があります。

硝酸薬には、舌の下に入れる錠剤、貼り薬、スプレーなど様々な種類があります。

狭心症の治療を受けている方は、普段は硝酸薬を使っていなくても、発作が起きた時のための薬として持っている場合があるため、必ず医師に伝える必要があります。

また、「α遮断薬」という種類の血圧の薬や前立腺肥大症の治療薬と一緒に飲む場合も注意が必要です。

これらの薬もPDE5阻害薬と同じように血管を広げる作用があるため、一緒に飲むと血圧が下がりすぎる可能性があります。

ただし、飲む時間の間隔をあける、少ない量から始めるなどの工夫で安全に使えることもあります。

ED治療薬と併用してはいけない薬・注意が必要な薬
  • 絶対に併用禁止
    • 硝酸薬(ニトログリセリン、硝酸イソソルビドなど)
    • 狭心症の治療薬として使用されている
  • 併用に注意が必要
    • α遮断薬(血圧の薬、前立腺肥大症の薬)
    • 一部の抗真菌薬
    • 一部の抗生物質
    • HIV治療薬

医師に相談する際に伝えるべき情報

ED治療薬を希望する場合、医師に以下の情報を正確に伝えることが大切です。

医師に伝えるべき情報のチェックリスト
  • 現在飲んでいるすべての薬(血圧の薬、他の病気の薬、サプリメント、市販薬など)
  • これまでにかかった病気(心臓病、脳卒中、腎臓病、肝臓病など)
  • 現在の血圧の値とコントロール状況
  • EDの症状がいつ頃から始まったか
  • EDがどのくらいの頻度で起こるか
  • 性行為の頻度や状況

また、性行為そのものが心臓に負担をかけるため、心臓の状態が良くない方では性行為自体を控えるよう指導されることもあります。

医師はこれらの情報をもとに、ED治療薬を使っても安全かどうか、どの種類の薬が適しているか、どのくらいの量から始めるかを判断します。

血圧がきちんとコントロールされていることが、ED治療薬を安全に使う前提条件となります。

血圧がとても高い状態(目安として上の血圧が170以上、下の血圧が110以上など)や、逆に低すぎる状態(上の血圧が90未満、下の血圧が50未満)では、ED治療薬の使用が勧められない場合があります。

食事と運動で高血圧もEDも改善できる

生活習慣を見直すことは、高血圧とEDの両方に効果が期待できる大切な対策です。

薬による治療も大切ですが、根本的な原因に対処するという意味で、生活習慣の見直しは欠かせません。

研究によると、地中海式の食事法を実践したり、定期的に運動したりすることで、EDが改善するケースが報告されています。

特に軽いEDから中くらいのEDの場合、生活習慣を改善するだけで薬を使わずに症状が良くなる可能性もあります。

また、生活習慣を改善すると高血圧のコントロールにも役立つため、一石二鳥の効果が期待できます。

体重を今より5〜10%減らすだけでも血圧が下がり、EDの症状が軽くなることがあります。

ただし、急激な変化は長続きしにくいため、無理のない範囲で少しずつ習慣を変えていくことが大切です。

ここからは、具体的にどのような生活習慣の改善がEDと高血圧に効くのかを説明します。

減塩と野菜中心の食事が血管の健康を保つ

「地中海式食事法」が高血圧の患者さん(特に肥満やメタボリックシンドロームの方)のEDを改善する効果があることが、研究で示されています。

地中海式食事法とは、野菜や果物、全粒穀物(玄米や全粒粉のパンなど)、魚、オリーブオイルなどを中心に食べて、赤身の肉や加工食品を控える食事のパターンです。

ある研究では、肥満やメタボリックシンドロームを持つ男性が地中海式食事法を実践したところ、EDが改善したり、完全になくなったりする効果が認められました。

IIEFスコアが22以上であった男性は、介入群では13名、対照群では2名でした(P=0.015)。

引用:PubMed Mediterranean diet improves erectile function in subjects with the metabolic syndrome

この食事法が効果的な理由は、血管を健康にし、体の炎症を抑え、血管を広げる物質の産生を促すためと考えられています。

具体的には、体に良くない脂肪や糖分、精製された炭水化物(白米、白いパンなど)を減らすことで血管の損傷を防ぎ、抗酸化物質(体のサビを防ぐ成分)を多く含む食品を摂ることで血管の働きを高める効果が期待できます。

日本人の食生活に当てはめると、塩分を控えめにし、野菜や海藻、大豆製品、魚を積極的に食べ、揚げ物や脂肪の多い肉、加工食品を控えることがお勧めです。

また、体重が多い方は、体重を今より5〜10%減らすだけでも血圧低下の効果が期待されており、血圧がコントロールされることでEDの改善につながる可能性があります。

高血圧とEDを改善する食事のポイント
  • 積極的に摂りたい食品:野菜、果物、魚、海藻、大豆製品、全粒穀物、オリーブオイル
  • 控えめにしたい食品:塩分、揚げ物、脂肪の多い肉、加工食品、精製された炭水化物(白米、白いパンなど)
  • 体重管理:現在の体重から5〜10%減らすことを目標に

週3回以上の有酸素運動が効果的

定期的な運動は、高血圧とEDの両方に効果があることが分かっています。

10件の研究を分析した大規模なレビューでは、週に3〜4回、1回40分程度の中くらいから少しきつめの有酸素運動を行うことで、EDの改善効果が期待できるという結果が報告されています。

本レビューは、運動不足、肥満、高血圧、メタボリックシンドローム(MetS)、および/または顕性CVDに起因する動脈性EDの男性において、監督下での中強度の有酸素運動を週4回、6ヶ月間40分間行うことで勃起機能が改善されることを示しています。

引用:PubMed Central Physical Activity to Improve Erectile Function: A Systematic Review of Intervention Studies

運動が勃起しやすくする仕組みはいくつかあります。

まず、運動によって血管の働きが良くなり、血管を広げる物質が増えることで血の流れが良くなります。

また、運動は男性ホルモンであるテストステロンのレベルを上げ、ストレスを減らし、自信を高める効果もあります。

さらに、体重が減ることで、肥満によるホルモンバランスの乱れや体の慢性的な炎症も改善されます。

運動の種類としては、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動がお勧めです。

ただし、運動を始める前には、特に心臓の病気にかかったことがある方や長い間運動をしていなかった方は、医師に相談することが大切です。

骨盤底筋(尿道や肛門を締める筋肉)を鍛える「ケーゲル体操」も、EDの改善に役立つ可能性があります。

イギリスの研究では、ケーゲル体操を1日2回、3ヶ月間続けた男性で、勃起機能が大きく改善したと報告されています。

効果的な運動の目安
  • 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど
  • 頻度:週3〜4回以上
  • 時間:1回30〜40分程度
  • 強度:中くらいから少しきつめ(会話ができるくらい)
  • 骨盤底筋体操(ケーゲル体操):1日2回、継続して行う

十分な睡眠とストレス解消も重要

睡眠不足や慢性的なストレスは、高血圧とEDの両方を悪化させる原因です。

睡眠が足りないと、血圧を上げるホルモンが出て、血管の修復が妨げられます

また、ストレスホルモンである「コルチゾール」が増えると、男性ホルモンであるテストステロンの分泌が抑えられ、勃起しにくくなります。

十分な睡眠時間を確保することは、ホルモンのバランスを整え、心と体の回復を促すために大切です。

目安としては1日7〜8時間の睡眠がお勧めです。

また、ストレスを解消するために、趣味を楽しむ、自然の中で過ごす、深呼吸や瞑想などのリラックス法を取り入れる、信頼できる人に相談するなどの方法も効果的です。

うつ病や不安障害を持つ男性では、EDのリスクが高くなる(双方向の関連がある)という報告もあります。

うつ病への曝露とEDリスクを評価する研究の統合オッズ比は1.39(95%信頼区間:1.35-1.42、出版物46件、研究48件)であった。

引用:PubMed Erectile Dysfunction and Depression: A Systematic Review and Meta-Analysis

心の健康を保つことは、性の機能を維持することにも深く関わっています。

心の不調を感じる場合は、専門家に相談することも検討してください。

また、タバコと飲み過ぎもEDのリスクを高めます。

タバコは血管を傷つけ、血の流れを悪くします。

禁煙することで血管の働きが良くなり、EDが改善する可能性があります。

お酒は適量に留めることが望ましいですが、飲み過ぎは神経系やホルモンに悪影響を与え、勃起しにくくなります。

生活習慣改善のポイント
  • 睡眠:1日7〜8時間を目標に
  • ストレス解消:趣味、自然との触れ合い、深呼吸、瞑想、信頼できる人への相談
  • 禁煙:血管の健康を守るために禁煙する
  • 節酒:飲み過ぎに注意し、適量を守る
  • 心の健康:うつや不安を感じたら専門家に相談する

よくある質問(FAQ)

高血圧だと必ずEDになりますか

いいえ、高血圧の方全員がEDになるわけではありません。

ただし、高血圧の方は血圧が正常な方に比べてEDのリスクが約2倍高いことが分かっています。

血圧をしっかりコントロールし、生活習慣を改善することでリスクを下げることができます。

ED治療薬を飲むと血圧が下がりすぎる心配はありませんか

バイアグラなどのED治療薬は血圧を少し下げる作用がありますが、血圧の薬で血圧がコントロールされている方では、ほとんどの場合安全に使うことができます

ただし、「硝酸薬」という種類の薬(狭心症の治療薬)を使っている方は絶対に一緒に飲めません。

必ず医師に相談し、飲んでいる薬をすべて伝えてください。

薬を飲まずにEDを改善する方法はありますか

生活習慣の改善がEDの予防と改善に効果的です。

具体的には、塩分を控えて野菜中心の食事にする、週3回以上の有酸素運動をする、適正体重を維持する、タバコをやめる、お酒は控えめにする、十分に眠る、ストレスをためないようにするなどがお勧めです。

特に軽いEDの場合、これらの生活習慣の改善だけで症状が良くなる可能性があります。

降圧薬を飲み始めてからEDになりました。薬をやめてもいいですか

自分の判断で薬を止めることは絶対に避けてください。

血圧のコントロールがうまくいかなくなると、脳卒中や心筋梗塞などの命に関わる病気のリスクが高まります。

まずは医師に相談し、薬の種類を変えてもらえないか、ED治療薬を一緒に使えないかなどを相談してください。

性行為自体が高血圧に悪影響を与えることはありますか

普通の性行為は、軽い運動くらいの負担しかかからないため、血圧がコントロールされている方であれば問題ありません。

ただし、最近心筋梗塞や脳卒中を起こした方、重い心不全がある方など、心臓の状態が良くない場合は、性行為を控えるよう指導されることがあります

心配な場合は医師に相談してください。

まとめ

高血圧とEDには深い関係があり、高血圧の方はEDになるリスクが約2倍高いことが分かっています。

高血圧が続くと血管の働きが悪くなり、陰茎への血流が悪化することがEDの主な原因です。

また、血圧を下げる薬の中には、特に利尿薬や古いタイプのβ遮断薬のように、EDを引き起こしやすいものがあります。

ただし、新しいタイプの薬(ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬など)はEDへの影響が少なく、むしろ勃起しやすくなる可能性もあります。

高血圧があってもED治療薬を使えるケースは多く、血圧がコントロールされている方であれば、バイアグラやシアリスなどのPDE5阻害薬を安全に使えることが臨床試験で確認されています。

ただし、硝酸薬(狭心症の薬)とは絶対に一緒に飲めません。

ED治療薬を希望する場合は、医師に今飲んでいる薬をすべて伝え、安全性を確認してもらうことが大切です。

何より大切なのは、生活習慣の改善です。

塩分を控えて野菜中心の食事にする、週3回以上の有酸素運動をする、適正体重を維持する、タバコをやめる、お酒は控えめにする、十分に眠る、ストレスをためないようにするなどは、高血圧とEDの両方を改善する効果が期待できます。

特に軽いEDの場合、生活習慣を改善するだけで症状が良くなる可能性もあります。

高血圧の治療中にEDが気になる場合、恥ずかしがらずに医師に相談することが大切です。

血圧の薬の種類を変えてもらったり、ED治療薬を追加してもらったり、生活習慣の改善指導を受けたりすることで、多くの場合改善が期待できます。

高血圧もEDも、適切な治療とケアで十分にコントロールできる病気です。

自分の判断で薬を止めたり、そのままにしたりせず、医療機関を受診して適切な治療を受けてください。

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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