高血圧と認知症リスクの関係とは?脳血管への影響と今日からできる予防法

高血圧と認知症リスクの関係とは?脳血管への影響と今日からできる予防法

健康診断で「血圧が高い」と指摘されても、痛みやだるさといった自覚症状がほとんどないため、そのまま様子を見てしまう方は少なくありません。

「今は特に困っていないから」と、治療や生活習慣の見直しを先延ばしにしてしまうこともよくあります。

しかし高血圧は、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気だけでなく、将来の認知症の発症リスクと関連している可能性があることが、国内外の研究から少しずつわかってきました。

特に、まだ認知症を身近に感じにくい40代・50代の方にとっても、「今」の血圧の状態が、将来の脳の健康に関わってくるかもしれない、という点は知っておく価値があります。

高血圧と認知症の関係
  • 中年期の高血圧が将来の認知症リスクと関連
  • 高齢になってからの高血圧と認知症リスクの関連は不明確
  • 特に血管性認知症との結びつきが強い
  • アルツハイマー型認知症との関連は一貫せず研究で不一致
  • 血圧管理を含む生活習慣対策は認知症リスク低下に役立つ可能性

この記事では、高血圧と認知症の関係について、現時点でわかっていることをやさしい言葉で整理してお伝えします。

具体的には、中年期の高血圧がその後の認知症のリスクにどう関わる可能性があるのか、また、認知症の中でも種類によって高血圧の影響の受け方がどう違うのかを解説します。

さらに、高血圧がなぜ脳の血管に負担をかけるのか、その仕組みについてもたとえ話を交えながらお伝えします。

そのうえで、減塩や運動といった日々の生活習慣の見直し、必要な場合の薬による治療の続け方など、認知症の予防につながる可能性がある具体的な工夫を紹介し、健康状態や機能状態(自立度・フレイルなど)に応じた血圧管理の考え方についても触れていきます。

専門的な内容も含まれますが、できるだけかみくだいて説明しますので、ご自身やご家族の血圧管理を考えるきっかけとして、ぜひ最後までお読みください。

この記事でわかること
  • 高血圧と認知症の関係についての現時点の研究結果
  • 高血圧が脳にダメージを与える仕組み
  • 血圧を整えることが認知症予防につながる可能性
  • 健康状態や機能状態(自立度・フレイルなど)に応じた血圧管理の考え方
高血圧による将来のリスクが気になる方へ

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はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧を放置すると認知症のリスクが高まる可能性がある

高血圧をそのままにしておくと、将来、認知症になるリスクが高まる可能性があるという報告が、国内外の研究で積み重ねられています。

特に注目されているのが、まだ体調の変化を感じにくい中年期(研究により異なりますが、おおむね40代〜60代)の血圧です。

この時期に血圧が高い状態が続くと、何年も、何十年も経った高齢期になってから、もの忘れや判断力の低下といった形で影響が現れてくる可能性があると考えられています。

一方で、高齢になってから初めて血圧が高くなった場合の影響については、まだ研究結果が一致しておらず、はっきりした結論は出ていません。

また、高血圧が認知症のすべてに同じように影響するわけではない点にも注意が必要です。

認知症にはいくつかの種類があり、代表的なものに、脳梗塞、脳出血、脳小血管病などの脳血管障害によって脳組織が損傷し、認知機能が低下する「血管性認知症」と、アミロイドβやタウの異常蓄積をはじめ、加齢、遺伝、血管・代謝要因などが複雑に関与する「アルツハイマー型認知症」があります。

この二つは、高血圧との関わり方が異なるとされています。

ここでは、まず中年期の血圧がその後の認知症リスクにどう関わるのかを見たうえで、認知症の種類による違いについて詳しく見ていきます。

中年期(おおむね40代〜60代)の高血圧はその後の認知症リスクに影響する

中年期に血圧が高い状態が続くと、その後の人生で認知症になるリスクが上がる可能性があるとされています。

米国国立心肺血液研究所(NHLBI)が中心的支援を行い、国立老化研究所(NIA)も関わった研究(ARIC研究)では、中年期から高血圧が続いている人は、血圧が正常だった人と比べて認知症になりやすい傾向が確認されました。

ARIC研究では、中年期から約24年間の血圧パターンを把握し、中年期・高齢期とも高血圧だった人は、両時期とも正常血圧だった人に比べ、その後の認知症の発症ハザードが約1.5倍(HR 1.49)高かったと報告されています。

中年期および老年期に高血圧であった参加者(ハザード比[HR]、1.49 [95% CI 、 1.06-2.08])と、中年期に高血圧で老年期に低血圧であった参加者(HR、1.62 [95% CI 、 1.11-2.37])は、正常血圧を維持した参加者と比較して、その後の認知症発症リスクが有意に増加した。

引用:JAMA Network Association of Midlife to Late-Life Blood Pressure Patterns With Incident Dementia

また、7件の研究をまとめたメタ解析では、中年期の収縮期血圧が140mmHgを超える人では、アルツハイマー病を発症する相対的なハザードが18%高く(HR 1.18)、160mmHgを超える人では25%高い(HR 1.25)と報告されました。

ただし、これは認知症になる絶対的な確率が18ポイントまたは25ポイント増えたという意味ではなく、観察研究を統合して得られた相対的な関連です。

また、拡張期血圧の高値については、アルツハイマー病との有意な関連は確認されませんでした。

一方で、高齢になってからの血圧と認知症リスクとの関係については、まだ研究結果が一致しておらず、はっきりした結論は出ていません。

中年期の高血圧が将来の認知機能の低下に関わる可能性がある一方で、高齢になってからの血圧の影響についてはまだよくわかっていない、ということです。

このため、「血圧管理は歳を取ってから始めればよい」と考えるのではなく、40代・50代のうちから自分の血圧と向き合っておくことが大切だと考えられます。

中年期の血圧と認知症リスクに関する主な研究結果

研究対象主な結果
ARIC研究4,761人。中年期から約24年間の血圧パターンを把握し、その後の認知症発症を評価中年期・高齢期とも高血圧だった人は、両時期とも正常血圧だった人に比べ、認知症の相対的な発症ハザードが約1.5倍(HR 1.49)
7研究のメタ解析中年期血圧とアルツハイマー病を調べた7研究収縮期血圧140mmHg超でHR 1.18、160mmHg超でHR 1.25。拡張期高血圧では有意な関連なし

認知症の種類によって高血圧の影響の受け方は異なる

認知症にはいくつかの種類があり、高血圧との関わり方もそれぞれ異なります。

先ほど触れたように、脳血管障害によって脳組織が損傷する「血管性認知症」と、アミロイドβやタウの異常蓄積をはじめ様々な要因が関与する「アルツハイマー型認知症」とでは、高血圧の影響の受け方に違いがあるとされています。

イギリスで約136万人の女性を平均21年間追跡した研究では、中年期に高血圧の治療を受けていた女性は、受けていなかった女性に比べて、認知症全体の発症ハザードが17%高く、血管性認知症では50%高いという結果でした。

一方、アルツハイマー病についてはHR 1.01(95%信頼区間0.98~1.04)で、この研究では統計学的な関連は認められませんでした。

血管性認知症(VaD)(ハザード比1.50、95%信頼区間1.45~1.56)の方がアルツハイマー病(AD)(ハザード比1.01、95%信頼区間0.98~1.04)よりも相関が高くなっています。

引用:Alzheimer’s Association Journals Hypertension in pregnancy and in midlife and the risk of dementia: prospective study of 1.3 million UK women

ただし、対象が女性に限られていること、高血圧の判定が血圧の実測値ではなく治療状況の自己申告に基づいていることには注意が必要です。

アルツハイマー病と中年期高血圧との関連については、他の研究では弱い関連が示されており、現時点では研究結果が一致していません。

血圧が脳の血管に直接負担をかけることを考えると、血管の障害から起こる血管性認知症との結びつきが強く出やすいことは、イメージしやすい結果ではないでしょうか。

一方でアルツハイマー型認知症との関係については、研究によって結果にばらつきがあり、今後さらに研究を重ねる必要があるとされています。

認知症のタイプによる高血圧との関わり方の違い(イメージ)

認知症のタイプ主な病態・特徴高血圧との関係
血管性認知症脳梗塞、脳出血、脳小血管病などの脳血管障害によって脳組織が損傷し、認知機能が低下する比較的強く、一貫した関連が示されている
アルツハイマー型認知症アミロイドβやタウの異常蓄積をはじめ、加齢、遺伝、血管・代謝要因などが複雑に関与する中年期高血圧との関連を示す研究はあるが、血管性認知症ほど一貫していない

高血圧は脳の血管を傷つけて認知機能の低下を招く

高血圧がなぜ認知症のリスクに関わる可能性があるのか、その仕組みについても研究が進んでいます。

血圧が高い状態が長く続くと、脳の細い血管の壁に負担がかかり続け、血管が硬くなったり、傷んだりしていきます。

これは、水道管に強い水圧がかかり続けると、管の内側が傷んだり詰まりやすくなったりするイメージに近いものです。

具体的には、慢性的な高血圧によって脳の細い血管の壁が厚く硬くなったり、血管を保護する「関所」のような働き(血液脳関門と呼ばれる仕組みで、脳にとって有害なものが血液から脳へ入り込むのを防ぐ役割を持っています)の障害が起こりやすくなったりすることで、脳への血の巡りが不足しやすくなると報告されています。

この血流不足が長く続くと、脳の内部で情報をやり取りする神経の線維が集まっている部分(白質と呼ばれます)に、小さな損傷が少しずつ蓄積していきます。

こうした脳の血管の変化は、高齢の方の脳のMRI検査で「白質病変」として見つかることが多く、高血圧との関連が指摘されています。

高血圧が脳に負担をかける主な仕組み
  • 高い血圧が長く続くことで、脳の細い血管に慢性的な負担がかかる
  • 血管の壁が厚くなったり、血管の内側を覆う細胞の働きが低下したりする
  • 脳の血流を一定に保つ調節機能の低下や、血液脳関門の障害が起こりやすくなる
  • 慢性的な血流不足、ラクナ梗塞、脳微小出血などの小さな損傷が蓄積する
  • MRIで白質病変などとして認められ、認知機能低下のリスクに関わることがある

これらの変化は必ずこの順番で進むわけではなく、複数の変化が並行して起こり、互いに影響し合うと考えられています。

だからこそ、症状が出る前の段階から血圧をコントロールしておくことに意味があると考えられています。

血圧を整えることが認知症予防につながる

ここまで見てきたように、高血圧が続くことは将来の認知症のリスクと関係している可能性があります。

裏を返せば、血圧を適切に管理していくことは、認知症を防ぐことにつながる可能性がある取り組みだといえます。

世界の保健を担う機関である世界保健機関(WHO)は、認知症のリスクを減らすための指針の中で、高血圧の管理を、糖尿病や喫煙、運動不足、人とのつながりの少なさなどと並ぶ、重要な対策の一つに位置づけています。

こうした生活習慣病や生活習慣そのものへの対策を積み重ねることで、社会全体で見た認知症のリスクの一部は、防いだり、発症を遅らせたりできる可能性があるとされています。

ただし、血圧を管理すれば一人ひとりの認知症を必ず防げるという意味ではありません。

血圧を整えるための方法には、大きく分けて二つあります。

一つは食事や運動といった日々の生活習慣そのものを見直すこと、もう一つは医師の判断のもとで血圧を下げる薬(降圧薬)による治療を行うことです。

ここでは、それぞれがどのように血圧管理、そして認知症予防に役立つ可能性があるのかを詳しく見ていきます。

減塩や運動などの生活習慣の見直しが血圧管理の基本になる

血圧管理の基本は、まず日々の生活習慣を見直すことにあります。

中でも重要とされているのが減塩、つまり塩分を控えることです。

厚生労働省が運営する健康情報サイト「e-ヘルスネット」では、高血圧を防ぐために塩分の摂取量を減らすことの重要性が示されており、日本高血圧学会は、すでに高血圧のある方に対して、1日6グラム未満まで塩分を減らすことを強くすすめています。

日常でできる減塩の工夫
  • 醤油やソースは食材に「かける」のではなく、小皿に入れて「つける」ようにする
  • ラーメンなどの麺類の汁は飲み干さない
  • 漬け物や味噌汁は量を控えめにする
  • 香辛料や香味野菜(こしょう・しょうがなど)、酸味を活用して味に変化をつける

また、野菜や果物、大豆製品に多く含まれるカリウムという成分には、体の中の余分な塩分を尿として排出しやすくする働きがあるとされています。

ただし、腎臓の働きが低下している方や、ACE阻害薬、ARB、カリウム保持性利尿薬など血液中のカリウムを上げることがある薬を使用している方は、カリウムをとりすぎると高カリウム血症を起こす可能性があります。

カリウムを含む減塩塩やサプリメントを使用する場合も、自己判断で始めず、主治医や管理栄養士に相談してください。

減塩に加えて、適度な運動、禁煙、飲みすぎに気をつけることといった、生活習慣全体の見直しも、血圧管理の土台になると考えられています。

降圧治療を含む適切な血圧管理は認知機能低下や認知症のリスク低下に役立つ可能性がある

生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合には、医師の判断のもとで、血圧を下げる薬(降圧薬)による治療が行われます。

この薬による血圧管理が、脳の働き(認知機能)にもよい影響を与える可能性を示した研究があります。

米国で行われた大規模な無作為化比較試験「SPRINT MIND」では、50歳以上の高血圧患者9,361人が、収縮期血圧120mmHg未満を目標とする積極治療群と、140mmHg未満を目標とする標準治療群に割り付けられました。

ここでいう140mmHg未満は、この試験で設定された比較群の目標であり、現在の日本における一般的な治療目標を示すものではありません。

追跡の結果、積極治療群では軽度認知障害の発症ハザードが相対的に19%低くなりました

集中的な血圧管理は、軽度認知障害のリスク(1000人年あたり14.6件対18.3件、HR 0.81、95% CI 0.69-0.95)および軽度認知障害または認知症の可能性のある症例の複合発生率(1000人年あたり20.2件対24.1件、HR 0.85、95% CI 0.74-0.97)を大幅に減少させた。

引用:JAMA Network Effect of Intensive vs Standard Blood Pressure Control on Probable Dementia: A Randomized Clinical Trial

軽度認知障害(MCI)とは、本人や周囲が気づく認知機能の変化があるものの、日常の基本的な生活は自立して行える状態です。

MCIと診断された方がすべて認知症に進行するわけではなく、状態が維持される方や、正常な範囲に回復する方もいます。

一方、認知症そのものについても17%低い方向にありましたが、95%信頼区間が差のない可能性を含んでおり、SPRINT MIND単独では統計学的に有意な減少とは判定されませんでした。

その後、2025年に公表された中国農村部の約3万4,000人を対象とする無作為化試験では、降圧薬の開始・調整、家庭血圧測定、生活習慣指導、服薬支援などを組み合わせた4年間の集中的な血圧管理により、全原因認知症の発症リスクが通常診療群より15%低下しました。

これらの研究から、降圧薬を含む適切な血圧管理は、認知機能低下だけでなく認知症のリスク低下にも役立つ可能性があると考えられます。

ただし、血圧を管理すれば一人ひとりの認知症を必ず防げるという意味ではありません。

SPRINT MINDの要点

項目正確な内容
対象50歳以上で心血管リスクの高い高血圧患者9,361人。糖尿病患者や脳卒中既往者などは除外
比較収縮期血圧120mmHg未満を目標とする群と、140mmHg未満を目標とする群
軽度認知障害HR 0.81。積極治療群で相対的に19%低下
認知症HR 0.83、95%信頼区間0.67~1.04。17%低い方向だったが統計学的には非有意
複合評価軽度認知障害または認知症はHR 0.85で有意に低下
注意点目標血圧への割り付けを比較した試験であり、「薬の継続だけ」の効果を調べた試験ではない

このように、降圧治療を含む適切な血圧管理は、認知症を「必ず防ぐ」ものではないものの、認知機能の低下に関わるリスクを減らす可能性がある取り組みとして期待されています。

自己判断で薬をやめたり量を変えたりせず、医師の指示のもとで治療を続けることが大切です。

年代や身体の状態に応じた血圧管理のポイントを押さえることが大切

血圧管理で気をつけるべきポイントは、実は年代によって少しずつ異なります。

若いころと同じ感覚で血圧と付き合っていると、かえって体に負担をかけてしまうこともあるため、自分の年代に合った考え方を知っておくことが大切です。

日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、一般的な診察室血圧の治療目標が、年齢を問わず原則130/80mmHg未満に統一されました。

家庭血圧の治療目標は125/75mmHg未満です。

この改訂は単なる基準の簡素化ではなく、近年の大規模な臨床試験やメタ解析において、高齢者を含む幅広い患者で収縮期血圧130mmHg未満を目指すことが、心血管疾患や死亡リスクを明確に低下させることが示された科学的根拠に基づいています。

ただし、これらは高血圧の治療中に目指す数値であり、高血圧と診断する基準とは異なります。

日本の診断基準は、診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上です。

また、数字の上での目標が一つにまとまった一方で、高齢の方については、体の状態に応じて一人ひとり個別に判断することの大切さが、引き続き強調されている点も見逃せません。

高齢者では年齢だけでなく、自立度、フレイル、認知機能、起立性低血圧、転倒歴、治療への耐容性などを考慮して、目標を個別に調整します。

特に、40代から60代の中年期と、それ以降の高齢期とでは、血圧管理で意識すべきポイントが異なります。

ここでは、それぞれの年代でどのような点に気をつければよいのかを具体的に見ていきます。

年代・状態による血圧管理の考え方(目安)

年代・状態血圧管理で意識したいポイント
40代〜60代(中年期)自覚症状がなくても血圧を把握し、早めの生活習慣の見直し・治療を意識する
高齢期自立している場合は原則130/80未満を目指すが、フレイルや要介護、起立性低血圧がある場合は状態に応じて個別に目標を調整する

40代から60代(中年期)は早期からの適切な血圧管理が重要になる

40代から60代の中年期は、将来の認知症リスクに関わる可能性がある大切な時期だと考えられています。

前述の通り、この時期に血圧が高い状態が長く続くことが、高齢期の認知機能の低下と関係する可能性があるとされているためです。

自覚症状がなくても、健診や自宅での血圧測定を通じて自分の血圧を把握し、必要であれば早めに生活習慣の見直しや治療を始めることが、将来の脳の健康を守ることにつながると考えられます。

高齢期は年齢だけでなく自立度やフレイルに応じた個別管理が必要になる

高齢者の血圧管理は、「高齢だから血圧をあまり下げない」と一律に考えるものではありません。

外来へ自力で通院でき、日常生活が自立している高齢者では、若い方と同じく診察室血圧130/80mmHg未満が原則的な治療目標です。

75歳以上を対象とした複数の無作為化試験をまとめた解析でも、収縮期血圧130mmHg未満を目指す治療によって、心血管疾患や死亡のリスクが低下し、重篤な有害事象は増えなかったと報告されています。

75歳以上の患者では、収縮期血圧の集中的低下は、複合心血管イベント(リスク比[RR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.40~0.94、p  = 0.03)、全死因死亡率(RR:0.72、95% CI:0.56~0.93、p  = 0.01)、および心血管死亡率(RR:0.55、95% CI:0.35~0.88、p  = 0.01)のリスクを有意に低下させ、重篤な有害事象の増加は認められなかった(RR:1.00、95% CI:0.93~1.08、p  = 0.97)。

引用:Nature Targeting a systolic blood pressure of <130 mmHg is beneficial in adults with hypertension aged ≥75 years: a systematic review and meta-analysis

一方、フレイルが進んでいる方、日常生活に介助を必要とする方、立ち上がったときに血圧が下がる方、転倒を繰り返す方、終末期にある方などでは、より緩やかな目標が適切なことがあります。

この場合は、数値だけでなく、立ちくらみ、ふらつき、転倒、食欲低下、認知機能、生活の質などを確認しながら、医師が薬の量や目標血圧を個別に調整します。

観察研究では、中年期に高血圧があり、高齢期に低血圧となった人は、中年期・高齢期とも正常血圧だった人より、その後の認知症発症ハザードが高かったと報告されています。

ただし、この研究は血圧が「急に」下がったことや、降圧薬による下げすぎが認知症を引き起こしたことを示したものではありません。

認知症の発症前に起こる神経変性や体重減少、フレイルなどの影響で血圧が低下した可能性(逆因果)もあり、血圧低下が原因なのか結果なのかは明らかになっていません。

起立性低血圧とは、仰向けで休んだ後に立ち上がり、3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上、または拡張期血圧が10mmHg以上低下する状態です。

立ちくらみやふらつきを伴うことがありますが、無症状の場合もあります。

立ちくらみだけで起立性低血圧と判断することはできないため、気になる症状がある場合は血圧を記録し、自己判断で薬を変更せず主治医に相談してください。

よくある質問

高血圧を治療すれば認知症は防げますか?

血圧を管理することは、認知症のリスクを下げる可能性がある対策の一つとされていますが、治療をすれば必ず認知症を防げるというものではありません。

WHOのガイドラインでも、高血圧を含む複数の生活習慣への対策によって、社会全体で見た認知症のリスクの一部を減らせる可能性がある、とされている段階です。

血圧がどのくらいから認知症のリスクが上がりますか?

認知症リスクだけを区切る、はっきりとした血圧の境界値は決まっていません

中年期(50歳時点)の収縮期血圧140mmHg以上と認知症リスクとの関連を示した研究があり、同じ研究では130mmHg以上でも関連を認めています。

したがって、140mmHg未満なら認知症リスクの観点から完全に安全、という意味ではありません

日本では診察室血圧140/90mmHg以上が高血圧の診断基準ですが、治療中の一般的な目標は130/80mmHg未満です。

1回の測定だけで判断せず、健診や家庭で繰り返し高い場合は医療機関へ相談してください。

認知症を予防するために今日からできることはありますか?

塩分を控えること、適度に体を動かすことといった生活習慣の見直し、自宅での血圧測定を習慣にすること、そして気になることがあれば医療機関に相談することが挙げられます。

血圧以外にも、禁煙や飲みすぎに気をつけること、バランスのよい食事など、生活習慣全体を見直すことが、認知症予防の観点からも大切だとされています。

まとめ

高血圧、特に中年期からの高血圧は、将来の認知症、中でも血管性認知症のリスクと関係している可能性があることが、国内外の研究で示されてきました。

これは、高い血圧の状態が長く続くことで脳の細い血管が傷つき、脳への血の巡りが不足しやすくなることが一因ではないかと考えられています。

この記事の要点
  • 中年期からの高血圧は、将来の認知症、特に血管性認知症のリスクと関係する可能性がある
  • 高血圧は脳の細い血管を傷つけ、血の巡り不足を通じて脳にダメージを与える可能性がある
  • 減塩や運動などの生活習慣の見直しは血圧管理の基本
  • 降圧治療を含む適切な血圧管理は、認知機能低下や認知症のリスクを減らす可能性がある
  • 血圧管理のポイントは健康状態や機能状態(フレイルや要介護状態など)によって異なり、一人ひとりに合わせた目標設定が大切

一方で、血圧を適切に管理することは、認知機能の低下に関わるリスクを減らす可能性がある取り組みとして期待されています。

塩分を控える、適度に体を動かすといった生活習慣の見直し、そして必要な場合の治療を続けることは、いずれも将来の脳の健康を守るための土台となるものです。

血圧について気になる点がある方は、自己判断せず、かかりつけの医療機関へご相談ください。

参考文献・参考サイト

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厚生労働省 健康づくりサポートネット(e-ヘルスネット) 高血圧

特定非営利活動法人 日本高血圧学会 高血圧の10 のファクト~国民の皆さんへ

National Institutes of Health Office of Dietary Supplements Potassium – Health Professional Fact Sheet

JAMA Network Effect of Intensive vs Standard Blood Pressure Control on Probable Dementia: A Randomized Clinical Trial

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Nature Key highlights of the Japanese Society of Hypertension Guidelines for the management of elevated blood pressure and hypertension 2025 (JSH2025)

Nature Epidemiological and clinical evidence on blood pressure management for the prevention of dementia: striving for a healthy 100-year life

Nature Targeting a systolic blood pressure of <130 mmHg is beneficial in adults with hypertension aged ≥75 years: a systematic review and meta-analysis

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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