背中に痛みを感じたとき、「もしかして血圧と関係があるのでは」と心配になることがあるかもしれません。
実は、高血圧そのものが直接背中を痛くすることは多くありません。
しかし、高血圧が続くことで起きる血管や臓器の病気が、背中の痛みという形で現れることがあります。
高血圧は「静かな殺し屋」と呼ばれています。
なぜなら、普段は何の症状も感じないからです。
でも、知らないうちに血管が傷つき、やがて深刻な病気を引き起こすことがあります。
その病気のサインとして、背中が痛むことがあるのです。
- 高血圧が続くと血管や臓器が傷つき、その病気が背中の痛みになる
- 大動脈解離による突然の激痛や引き裂かれるような痛み
- 心筋梗塞や狭心症の痛みが背中に広がることがある
- 腎臓病に結石や感染症が加わると背中が痛む場合も
- 筋肉痛や骨の問題など血圧と無関係な原因が最も多い
特に注意してほしいのが、命に関わる病気です。
たとえば、大きな血管が裂ける「大動脈解離」や、心臓の血管が詰まる「心筋梗塞」などです。
こうした病気では、胸ではなく背中が痛むことがあります。
突然の激しい痛みや、引き裂かれるような痛みは、すぐに救急車を呼ぶべきサインです。
もちろん、背中の痛みのすべてが重大な病気というわけではありません。
筋肉痛や骨・関節の問題など、命に関わらない原因の方が多いです。
しかし、高血圧がある方は、痛みの原因をしっかり見極めることが大切です。
どんな痛みのときにすぐ病院に行くべきか、どうすれば重い病気を防げるかを知っておきましょう。
この記事では、高血圧がある方が背中の痛みを感じたときに知っておくべきことを、医師の立場から丁寧に説明していきます。
- 高血圧と背中の痛みの関係
- 背中の痛みを起こす可能性がある重大な病気
- すぐに病院を受診すべき危険なサイン
- 高血圧による病気を防ぐための方法
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
高血圧で背中が痛むのは血管や心臓からのサインかもしれない
高血圧がある方で背中が痛むとき、それは血管や心臓、腎臓などに何か問題が起きているサインかもしれません。
高血圧は普段、痛みなどの症状がないため「静かな殺し屋(サイレントキラー)」と呼ばれています。
しかし、高い血圧が長く続くと、血管や臓器に負担がかかります。
そして、様々な病気を引き起こすことがあるのです。
大切なのは、高血圧それ自体が直接背中を痛くするわけではないという点です。
そうではなく、長年の高血圧で血管の壁が傷つき、血管が硬くなったり弱くなったりします。
そして、大動脈解離や心筋梗塞といった重い病気が起きて、その結果として背中が痛むのです。
また、高血圧は心臓や腎臓にも影響します。
心臓は高い血圧に逆らって血液を送り出すため、より強く働かなければなりません。
これが心臓の負担になります。
腎臓の細い血管も傷つきやすく、腎臓の働きが悪くなることがあります。
これらの臓器の問題も、背中の痛みとして感じることがあります。
以下では、血管への負担と、高血圧で起きる病気について詳しく見ていきましょう。
血圧が高いと血管の壁に負担がかかり続ける
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁を押す力のことです。
高血圧の状態では、血管の壁に常に強い力がかかり続けます。
この状態が長く続くと、血管の壁が徐々に傷つきます。
そして、血管が硬くなったり、弱くなったりするのです。
血管の壁が弱くなると、血管が膨らんで「こぶ」ができることがあります。
これを動脈瘤といいます。
また、血管の内側の層が裂けて、血液が血管の壁の中に入り込むこともあります。
これが大動脈解離という危険な状態です。
こうした血管の異常は、背中に強い痛みとして現れることがあります。
アメリカの国立心肺血液研究所によれば、高血圧は心臓病や脳卒中の大きな原因です。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が公開した2017年から2020年の調査データによると、米国成人の48.1%(約1億1990万人)が高血圧に該当すると推計されています。
高血圧は心臓や血管に継続的なストレスをかけて、時間とともにこれらの臓器を傷つける可能性があります。
高血圧そのものより合併症で背中が痛むことが多い
大切なのは、高血圧それ自体が直接背中を痛くするわけではないということです。
むしろ、高血圧によって起きる血管や臓器の病気が、背中の痛みという症状を生み出します。
高血圧は長い時間をかけて血管にダメージを与え続けます。
その影響は体の様々な場所に現れます。
特に大動脈(心臓から全身に血液を送る太い血管)、心臓、腎臓などは影響を受けやすいです。
これらの臓器に問題が起きたとき、背中の痛みとして感じることがあります。
アメリカの疾病対策センターの報告では、高血圧がある成人の約4分の3(約9,300万人)が血圧をうまくコントロールできていないとされています。
高血圧の成人の4人に3人(9,290万人)は、血圧をコントロールできていない(130/80 mm Hg未満と定義)
引用:Centers for Disease Control and Prevention Health and Economic Benefits of High Blood Pressure Interventions
血圧がきちんとコントロールされていない状態が続くと、心臓発作や脳卒中、腎臓の病気などのリスクが高まります。
高血圧の人が背中の痛みを感じたとき疑うべき病気
高血圧がある方が背中に痛みを感じた場合、いくつかの重い病気の可能性を考える必要があります。
これらの病気は命に関わることもあるため、症状の特徴を理解しておくことが大切です。
背中の痛みを起こす可能性のある病気には、大きく分けて3つあります。
血管や心臓の病気(大動脈解離、心筋梗塞、狭心症)、腎臓の病気、そして筋肉や骨の問題です。
高血圧がある方は、特に血管や心臓に関する病気に注意が必要です。
これらの病気では、痛みの感じ方や一緒に現れる症状に特徴があります。
それを知っておくことで、早く気づくことができます。
背中の痛みを引き起こす主な病気の特徴
| 病気の種類 | 痛みの特徴 | その他の症状 | 緊急性 |
|---|---|---|---|
| 大動脈解離 | 突然の激しい痛み、引き裂かれるような痛み | 冷や汗、意識消失、痛みの移動 | 非常に高い |
| 心筋梗塞・狭心症 | 胸から背中への広がる痛み、圧迫感 | 息苦しさ、冷や汗、吐き気 | 非常に高い |
| 慢性腎臓病 | 通常は無症状(結石や感染症合併時に痛み) | むくみ、尿の異常、疲れ | 中程度 |
| 筋肉痛・骨格系 | 動作で変化する痛み | 動いたときの痛みの増減 | 低い |
高血圧があるからといって、背中の痛みがすべて重い病気というわけではありません。
しかし、突然の痛みや、今まで感じたことのないような痛み、他の症状を伴う痛みの場合は、重い病気の可能性を考えてすぐに病院を受診する必要があります。
以下では、それぞれの病気について詳しく見ていきましょう。
大動脈解離は命に関わる緊急事態
大動脈解離は、体の中で最も太い血管である大動脈の内側の層が裂けて、血液が血管の壁の中に入り込んでしまう病気です。
この病気は突然起こり、治療が遅れると命に関わる非常に危険な状態です。
大動脈解離の最も特徴的な症状は、突然現れる激しい痛みです。
この痛みはよく「引き裂かれるような」「刺されるような」と表現される鋭い痛みで、胸や背中に感じることが多いです。
どこで血管が裂けたかによって痛みの場所も変わります。
心臓に近い部分で起こった場合は胸の前に、心臓から離れた部分で起こった場合は背中に痛みを感じやすくなります。
医学的知見によれば、大動脈解離の症状には突然の強い胸や背中の痛みがあります。
それが引き裂かれるような、または鈍く痛むような感じとして現れるとされています。
急性大動脈解離の典型的な症状は、突然の重度の「引き裂かれるような」胸痛ですが、症状が微妙なために診断が見逃されることが多々あります。
引用:National Center for Biotechnology Information Aortic Dissection
また、汗をかく、息が苦しい、意識がもうろうとするなどの症状も伴うことがあります。
高血圧は大動脈解離の最も重要な危険因子の一つです。
血圧が高い状態が続くと、大動脈の壁に継続的なストレスがかかります。
そして壁が弱くなって裂けやすくなります。
大動脈解離は60代から70代の男性に多く見られますが、高血圧がある方では年齢に関係なく注意が必要です。
大動脈解離を疑う症状がある場合は、一刻も早く救急車を呼ぶことが重要です。
早期の診断と治療が、命を救うかどうかを大きく左右します。
心筋梗塞や狭心症でも背中に痛みが出る
心筋梗塞(心臓発作)や狭心症は、心臓に血液を送る血管が詰まったり狭くなったりして、心臓の筋肉が十分な酸素を得られなくなる病気です。
これらの病気では胸の痛みが最も一般的な症状ですが、背中や肩、腕、あごなどに痛みが広がることがあります。
心臓発作の症状には、胸の中央または左側の不快感、力が入らない、めまい、冷や汗、あごや首、背中の痛みや不快感、片腕または両腕や肩の痛みや不快感、息切れなどがあります。
特に女性では、男性と同様に胸の痛みが最も多い症状ですが、それに加えて背中の痛み、息切れ、吐き気、疲れなどの症状が現れやすいことがわかっています。
アメリカ心臓協会の医学誌に発表された研究では、本人が気づかない心臓発作は男性よりも女性に多い可能性が示されています。
女性で認識されない MI の発生率が高いことは、より古い研究集団を調査したほとんどの研究と一致しています。
引用:American Heart Association Journals Sex‐Based Differences in Unrecognized Myocardial Infarction
心臓の問題が背中の痛みとして感じられる理由は、「関連痛」と呼ばれる仕組みによるものです。
心臓につながる神経と頭や首、背中につながる神経が関連しているため、脳が痛みの場所を正しく判断できません。
そして、実際には心臓の問題であっても背中の痛みとして感じることがあるのです。
高血圧は心臓病の大きな原因です。
血圧が高い状態が続くと、心臓は血液を送り出すためにより強く働かなければなりません。
そのため心臓の筋肉が厚くなったり、心臓の血管に動脈硬化が起こりやすくなったりします。
心臓発作が疑われる症状がある場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
治療が早ければ早いほど、心臓のダメージを小さく抑えられる可能性が高まります。
腎臓の病気が背中の痛みとして現れることも
腎臓は背中側、腰のあたりに左右一対ある臓器です。
高血圧が長く続くと、腎臓の細い血管が傷つき、腎臓の働きが悪くなる慢性腎臓病が起こることがあります。
アメリカの国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所によれば、慢性腎臓病の最も多い原因は糖尿病と高血圧です。
高血糖は腎臓のフィルターを傷つけます。
そして時間がたつと、腎臓が血液から老廃物や余分な水分をきちんとろ過できなくなる可能性があります。
慢性腎臓病の初期段階では、多くの場合症状がありません。
しかし、病気が進むと、尿の異常(泡立つ尿、血尿など)、むくみ、疲れ、食欲不振などの症状が現れることがあります。
慢性腎臓病そのもので背中が痛むことは稀ですが、腎臓結石や感染症を合併した場合は痛みが出ることがあります。
これらは高血圧と直接関係するわけではありませんが、高血圧がある方では腎臓の健康により注意を払う必要があります。
慢性腎臓病は心臓病のリスクも高めます。
腎臓病がある方は、腎不全に進むよりも心臓病で亡くなる可能性が高いとする研究報告もあります。
CKD 患者が ESRD に至る前に死亡する可能性は、CKD でないグループよりも 5~10 倍高い。
引用:PubMed Chronic kidney disease and cardiovascular disease in the Medicare population
高血圧と腎臓病はお互いに影響し合い、悪い循環を作ることがあるため、両方の管理が大切です。
筋肉痛や整形外科的な原因の場合もある
背中の痛みの原因が必ずしも重い病気とは限りません。
実際には、筋肉痛や骨、関節の問題など、整形外科的な原因による背中の痛みの方が一般的です。
たとえば、重いものを持ち上げたり、長時間同じ姿勢でいたり、急な動きをしたりすることで、背中の筋肉や靭帯を傷めることがあります。
また、年齢とともに起きる椎間板の変化や骨粗しょう症による圧迫骨折なども背中の痛みの原因となります。
整形外科的な原因による背中の痛みは、通常、特定の動きや姿勢で悪くなったり楽になったりすることが特徴です。
たとえば、前かがみになると痛みが強くなる、横になると楽になる、痛む場所を押すと痛みが増すなどの特徴があります。
一方、心臓や血管、内臓の病気による痛みは、体を動かすことに関係なく続く傾向があります。
そして突然始まって急に悪くなることがあります。
また、冷や汗や吐き気、息苦しさなど、他の症状を伴うことも多いです。
ただし、高血圧がある方で背中の痛みを感じた場合は、念のため病院で相談することをお勧めします。
特に痛みが突然始まった場合や、今まで経験したことのないような痛みの場合は、早めの受診が大切です。
すぐに救急車を呼ぶべき危険なサイン
背中の痛みの中には、すぐに病院を受診しなければならないものがあります。
以下のような症状がある場合は、大動脈解離や心筋梗塞などの命に関わる病気の可能性があります。
ためらわずに救急車を呼んでください。
これらの危険なサインを見逃さないことが、命を守るために非常に大切です。
大動脈解離や心筋梗塞のような緊急性の高い病気では、治療を始めるまでの時間が予後を大きく左右します。
症状が現れてから数分から数時間の間に適切な治療を受けられるかどうかが、生死を分けることもあります。
「様子を見よう」「少し休めば治るだろう」と考えて時間を無駄にすることは非常に危険です。
特に高血圧がある方では、突然の背中の痛みが重い病気のサインである可能性が高いです。
以下のような症状があればすぐに行動を起こす必要があります。
また、自分で車を運転して病院に行くことは避けてください。
運転中に症状が悪くなると、自分だけでなく他の人の命も危険にさらすことになります。
- 突然の激しい背中の痛み(今まで経験したことのない痛み)
- 引き裂かれるような、刺されるような鋭い痛み
- 背中の痛みと一緒に胸の痛みや圧迫感がある
- 息苦しさや呼吸困難を伴う
- 冷や汗が出る
- めまいや意識がもうろうとする
- 吐き気や嘔吐を伴う
- 痛みが胸から背中、あるいは背中から腰へと移動する
突然の激しい痛みや引き裂かれるような痛み
今まで経験したことのないような突然の激しい背中の痛みは、大動脈解離の可能性を示す重要なサインです。
大動脈解離では、痛みが突然始まり、最初から最大の強さになることが特徴です。
痛みの感じ方も重要です。
大動脈解離による痛みは、よく「引き裂かれるような」「刺されるような」「裂けるような」と表現される鋭く強い痛みです。
この痛みは胸から背中へ、あるいは背中から腰へと移動することもあります。
血管の裂け目が大動脈に沿って広がっていくと、痛みも移動する傾向があります。
大動脈解離の典型的な症状は、突然の激しい痛みで、数分以内に最大の強さに達するとされています。
痛みの場所は裂けた位置によって異なります。
心臓に近い部分の解離では胸の前に、心臓から離れた部分の解離では背中に痛みが現れやすいです。
大動脈解離が疑われる場合は、一刻を争う緊急事態です。
すぐに救急車を呼び、病院で適切な検査と治療を受ける必要があります。
治療が遅れると、大動脈が破れて大量出血を起こしたり、重要な臓器への血流が途絶えたりする可能性があります。
胸の痛みや息苦しさを伴う場合
背中の痛みに加えて、胸の痛みや圧迫感、息苦しさがある場合は、心筋梗塞や狭心症の可能性があります。
心臓発作では、胸の中央または左側に不快な圧迫感、締め付け感、満腹感、痛みを感じることが多いです。
そしてこの痛みが背中や肩、腕、あごに広がることがあります。
心臓発作の症状には、胸の不快感(数分以上続く、または消えてまた戻ってくる)、力が入らない、めまい、冷や汗、あごや首、背中の痛み、息切れ(胸の不快感の前または最中に起こることがある)などがあります。
心臓発作が疑われる場合は、すぐに救急車を呼ぶことが重要です。
症状が現れてから治療を始めるまでの時間が短いほど、心臓のダメージを小さく抑えられます。
そして生存率が高まります。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によれば、40秒ごとに1人のアメリカ人が心臓発作を起こしており、早期の対応が命を救う鍵となります。
冷や汗や意識がもうろうとする症状
背中の痛みとともに冷や汗が出る、めまいがする、意識がもうろうとするといった症状がある場合は、非常に危険な状態です。
これらの症状は、大動脈解離や心筋梗塞などによって血圧が急に下がったり、重要な臓器への血流が足りなくなったりしていることを示している可能性があります。
大動脈解離では、約15%の患者が失神(意識消失)を起こすとされています。
低血圧(IRADでは最大30%と報告されている)[ 63 ]と失神(解離患者の15%に発生し、特にA型解離で顕著)[ 32 ]は、どちらも最も懸念される症状である。
引用:PubMed Central Current Understanding of Aortic Dissection
失神は心臓の周りに血液がたまって心臓が圧迫される状態や、大動脈が破れることなどによって起こります。
これらは命に関わる状態で、院内での死亡率が高いことがわかっています。
また、心筋梗塞でも、心臓のポンプ機能が低下して血圧が下がります。
そして脳への血流が不十分になることで意識がもうろうとすることがあります。
吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
これらの症状がある場合は、一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります。
周りに人がいる場合は助けを求めてください。
可能であれば横になって安静を保ちながら救急車の到着を待ちましょう。
心肺蘇生法(CPR)やAED(自動体外式除細動器)の使用が必要になる場合もあるため、周りの人に協力を求めることも大切です。
日頃の血圧コントロールが重大な病気を防ぐ
高血圧による病気を防ぐために最も大切なのは、日頃から血圧を適切な範囲にコントロールすることです。
血圧をしっかり管理することで、大動脈解離や心筋梗塞、脳卒中、腎臓病などの重い病気のリスクを大幅に減らすことができます。
血圧のコントロールは、一度達成すれば終わりというものではありません。
続けることが必要です。
生活習慣の改善、必要に応じた薬での治療、そして定期的な健康チェックを組み合わせることで、長期的に血圧を適切な範囲に保つことができます。
アメリカの疾病対策センターやWHO(世界保健機関)によれば、高血圧はアメリカにおける心臓病と脳卒中の大きな原因です。
これらはアメリカ人の主要な死因となっています。
しかし、適切な血圧管理によって、これらの病気の多くは予防できます。
血圧を下げることは、単に数値を良くするだけでなく、将来の重い健康問題を防ぐための投資と言えます。
高血圧がある方の約半数が血圧をうまくコントロールできていないという現状があります。
しかし、これは改善の余地が大きいことを意味しています。
適切な治療とセルフケアによって、多くの方が血圧を目標値まで下げることができます。
以下では、血圧をコントロールするための具体的な方法と、定期検診の大切さについて見ていきましょう。
食事・運動・薬で血圧を適正範囲に保つ
血圧をコントロールする方法には、生活習慣の改善と薬での治療があります。
多くの場合、これらを組み合わせることで効果的に血圧を下げることができます。
- 食事の工夫
- 塩分を控える(日本のガイドラインでは1日6g未満が目安)
- 新鮮な果物や野菜を豊富に摂る
- 油っぽい食事を減らす
- DASH食(高血圧を止めるための食事法)を取り入れる
- 適度な運動
- 週に2時間30分以上の中程度の運動(早歩きなど)
- 1日約30分、週5日が目安
- 座りっぱなしの時間を減らす
- その他の生活習慣
- 禁煙する
- お酒を控える(できるだけ少ない方が望ましい)
- 十分な睡眠をとる(7時間以上)
- ストレスを上手に管理する
- 適正体重を維持する
アメリカの疾病対策センターでは、新鮮な果物や野菜をたくさん含み、塩分と油っぽい食事が少ない食事を勧めています。
DASH食(高血圧を止めるための食事法)と呼ばれる食事パターンは、血圧を下げる効果が科学的に証明されています。
運動も血圧コントロールに効果的です。
アメリカの身体活動ガイドラインでは、成人は週に少なくとも2時間30分の中程度の強さの運動(早歩きやサイクリングなど)を行うことを勧めています。
これは1日約30分、週5日の運動に相当します。
運動は健康的な体重を維持し、血圧を下げるのに役立ちます。
生活習慣の改善だけで血圧が十分に下がらない場合は、医師が血圧を下げる薬を処方します。
アメリカの国立心肺血液研究所によれば、血圧の薬はそれぞれ異なる方法で効きます。
そのため医師は患者の他の健康状態も考えて薬を選びます。
処方された薬は指示通りに飲み、健康的な生活習慣と組み合わせることで、血圧をコントロールし心臓病を予防できます。
目標とする血圧の値
| ガイドライン | 目標血圧(上/下) | 対象 |
|---|---|---|
| JSH 2025(日本) | 130/80 mmHg未満 | すべての高血圧患者 |
| ACC/AHA 2025(米国) | 130/80 mmHg未満 | ほとんどの成人患者 |
2025年に発表された日本とアメリカのガイドラインでは、上の血圧130 mmHg未満、下の血圧80 mmHg未満が治療目標とする血圧の値とされています。
さらに、一部の研究では上の血圧を120mmHg未満まで下げることで、心臓や血管の病気のリスクをより減らせる可能性も示唆されています。
ただし、個々の患者さんの状態によって適切な目標値は異なります。
目標とする血圧の値は、主治医と相談して決定しましょう。
定期検診で血管の状態をチェックする
高血圧がある方は、定期的に病院を受診し、血圧の測定や血管の状態のチェックを受けることが大切です。
高血圧は「静かな殺し屋」と呼ばれるように症状がないことが多いです。
そのため定期的な検査なしでは、血管や臓器が傷ついていることに気づけません。
アメリカの疾病対策センターによれば、高血圧のアメリカ成人のうち約5人に1人は自分が高血圧であることに気づいていません。
血圧を測ることが、血圧が高すぎるかどうかを知る唯一の方法です。
年齢や状態によりますが、少なくとも年に1回程度は血圧を測ることが勧められています。
- 血圧測定(少なくとも年1回、高血圧がある方はより頻繁に)
- 家庭での血圧測定(毎日、朝と夜の2回などが推奨されます)
- コレステロール検査(年1回)
- 血糖値検査(年1回)
- 尿検査(年1回、腎臓の状態をチェック)
- 心電図検査(必要に応じて)
- 血管の状態のチェック(必要に応じて)
家での血圧測定も非常に有効です。
家庭用の血圧計を使って定期的に血圧を測り、記録することで、医師とより良い治療方針を決めることができます。
日本の高血圧学会のガイドラインでは、家で測った血圧が病院で測った血圧よりも心臓や血管の病気の予測に優れていることが示されています。
そのため家での血圧測定が勧められています。
また、血圧だけでなく、コレステロール値や血糖値などの検査も定期的に受けることが大切です。
これらの危険因子が重なると、心臓病や脳卒中のリスクがさらに高まります。
医師は心臓や血管の病気のリスクを評価するための計算ツールを使って、患者に最適な治療法を提案します。
高血圧がある方で、糖尿病や腎臓病、心臓病などの他の病気がある場合は、より頻繁な検査や専門医への紹介が必要になることがあります。
自分の健康状態について医師とよく相談し、適切な検査やフォローアップを受けるようにしましょう。
よくある質問
- 高血圧の薬を飲んでいれば背中の痛みは起こりませんか
-
高血圧の薬を飲んでいても、背中の痛みを起こす病気が絶対に起こらないわけではありません。
薬を飲むことで血圧がきちんとコントロールされていれば、大動脈解離や心筋梗塞などのリスクは大幅に減ります。
しかしゼロにはなりません。
薬を飲んでいても、突然の激しい背中の痛みなど、心配な症状があれば必ず病院を受診してください。
- 背中の痛みが数日続いていますが、様子を見ても大丈夫ですか
-
背中の痛みが数日続いている場合、原因によって対応が異なります。
痛みが筋肉痛のように徐々に良くなっている場合は様子を見ても良いかもしれません。
しかし痛みが変わらない、悪くなっている、他の症状を伴う場合は病院を受診すべきです。
特に高血圧がある方では、念のため医師に相談することをお勧めします。
- 血圧が正常でも背中が痛むことはありますか
-
はい、血圧が正常でも背中の痛みは起こります。
背中の痛みの原因は高血圧だけではなく、筋肉や骨の問題、内臓の病気など様々です。
ただし、普段血圧が正常でも、大動脈解離や心筋梗塞などの重い病気は起こる可能性があります。
そのため突然の激しい痛みや他の症状を伴う場合は速やかに病院を受診してください。
- 背中の痛みで受診するときは何科に行けばよいですか
-
突然の激しい痛みや、胸の痛み・息苦しさを伴う場合は、すぐに救急車を呼んでください。
それ以外の場合は、まずかかりつけ医や内科を受診するのが良いでしょう。
医師が診察して、必要に応じて循環器内科や整形外科など専門の科を紹介してくれます。
高血圧で定期的に通院している方は、その病院に相談するのも良い方法です。
まとめ
高血圧そのものは通常、背中の痛みなどの症状を起こしません。
しかし、高血圧によって生じる血管や臓器の病気が背中の痛みとして現れることがあります。
特に注意が必要なのは、大動脈解離や心筋梗塞といった命に関わる病気です。
突然の激しい背中の痛み、引き裂かれるような痛み、胸の痛みや息苦しさを伴う痛み、冷や汗や意識障害を伴う痛みがある場合は、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
これらは重い病気のサインである可能性があります。
最も大切なのは、日頃から血圧を適切にコントロールすることです。
食事や運動などの生活習慣の改善、必要に応じた薬での治療、定期的な健康チェックによって、高血圧による病気のリスクを大幅に減らすことができます。
高血圧があり背中の痛みを感じた場合は、自己判断せず病院に相談することをお勧めします。
早期の診断と適切な治療が、重い病気から身を守る鍵となります。
American Heart Association What are the Signs and Symptoms of High Blood Pressure?
National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases High Blood Pressure & Kidney Disease
MedlinePlus Vascular Diseases
Cleveland Clinic Aortic Dissection: Symptoms & Treatment
National Heart, Lung, and Blood Institute What Is High Blood Pressure?
Centers for Disease Control and Prevention High Blood Pressure Facts
Centers for Disease Control and Prevention Health and Economic Benefits of High Blood Pressure Interventions
National Center for Biotechnology Information Aortic Dissection
Mayo Clinic Aortic Dissection – Symptoms and Causes
Centers for Disease Control and Prevention About Heart Attack Symptoms, Risk, and Recovery
American Heart Association Journals Sex‐Based Differences in Unrecognized Myocardial Infarction
National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Causes of Chronic Kidney Disease in Adults
Mayo Clinic Chronic Kidney Disease – Symptoms and Causes
Kidney Care UK Pain in Kidney or Urine Diseases
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Mayo Clinic Back Pain – Causes
American Heart Association Warning Signs of a Heart Attack
PubMed Central Diagnosis and acute management of type A aortic dissection
Centers for Disease Control and Prevention Heart Disease Facts and Statistics
PubMed Central Current Understanding of Aortic Dissection
World Health Organization Hypertension
PubMed Dietary salt intake in Japan – past, present, and future
National Heart, Lung, and Blood Institute DASH Eating Plan
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American Heart Association New high blood pressure guideline emphasizes prevention, early treatment to reduce CVD risk
Centers for Disease Control and Prevention FastStats: Sleep in Adults
American College of Cardiology New in Clinical Guidance | High Blood Pressure Focus of New ACC/AHA Guideline
PubMed A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control
U.S. Preventive Services Task Force Recommendation: Hypertension in Adults: Screening
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子」
American Heart Association The American Heart Association PREVENT™ Online Calculator


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