高血圧で耳鳴りが起こる原因と対処法|キーンという音の正体を解説

高血圧で耳鳴りが起こる原因と対処法|キーンという音の正体を解説

耳の中でキーンという高い音が鳴ったり、脈打つような音が聞こえたりする経験はありませんか。

このような耳鳴りは、高血圧と関連している可能性があります。

高血圧による耳鳴りは、内耳への血流障害や血管の状態変化によって引き起こされることがあり、放置すると聴覚機能に影響を及ぼす場合もあります。

高血圧による耳鳴りの原因
  • 内耳の血流低下(酸素不足によって耳鳴りが起こる)
  • 血管壁への圧力負担(微小血管が損傷して聴覚機能が乱れる)
  • 蝸牛動脈や血管条の血流障害(音信号の伝達が乱れる)
  • 蝸牛基底部の障害(キーンという高音の耳鳴りが起こる)
  • 血管性の異常(ドクドクと脈打つ拍動性耳鳴りが生じる)

本記事では、高血圧と耳鳴りの関係について、医学的な根拠に基づいて解説します。

高血圧と耳鳴りには関連性があることが、複数の研究で示されています。

研究によれば、高血圧患者では耳鳴りの発生率が高い傾向が報告されています。

ただし、耳鳴りの原因は多岐にわたるため、高血圧以外の要因も考慮した評価が重要です。

この記事でわかること
  • 高血圧で耳鳴りが起こるメカニズム
  • 高血圧による耳鳴りの特徴的な症状
  • すぐに医療機関を受診すべきケース
  • 血圧コントロールと日常生活での対策方法
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧で耳鳴りが起こる3つの理由

高血圧が耳鳴りを引き起こすメカニズムについて、現在の医学研究で提案されている主な説明をご紹介します。

高血圧による耳鳴りは、主に内耳の血流障害、血管の構造的変化、そして薬剤の影響という3つの経路を通じて発生する可能性が指摘されています。

内耳は非常に繊細な器官であり、正常な機能を維持するためには十分な血液供給が不可欠です。

しかし、高血圧があると内耳への血流に問題が生じ、それが耳鳴りという症状として現れることがあるのです。

血圧が高いと耳に十分な酸素が届かなくなる

血圧が高い状態が続くと、血液の粘度が上昇し、血液が流れにくくなる傾向があります。

この状態では、内耳への酸素供給が不十分になる可能性があります。

内耳の感覚細胞は酸素不足に非常に敏感であり、わずかな虚血状態でも機能障害を起こすことが知られています。

さらに、高血圧は血管壁に継続的な負担をかけます。

長期間にわたって高い圧力がかかることで、内耳周辺の微小血管が損傷を受けることがあります。

特に内耳の血液供給を担う血管は非常に細く、側副血行路(迂回路)がほとんどないため、一度障害を受けると回復が困難です。

血圧の急激な変動も内耳に影響を与える可能性があります。

降圧薬の効果が強く出すぎて血圧が急に下がった場合、内耳への血流が一時的に不足し、耳鳴りを引き起こす可能性が指摘されていますが、この関連性については更なる研究が必要とされています。

降圧療法を受けている患者における耳鳴りに関する本研究では、17.6%の患者に耳鳴りが認められた。耳鳴りは利尿薬の使用および低収縮期血圧と関連していた。さらなる研究が必要である。

引用:PubMed Prevalence of tinnitus in patients withhypertension and the impact of different anti hypertensive drugs on the incidence of tinnitus: A prospective, single-blind, observational study

耳の奥の血流が悪くなると音が鳴り始める

内耳への血液供給は、蝸牛動脈という専門的な血管系によって行われています。

この血管は前下小脳動脈から分岐し、内耳全体に血液を届けています。

重要なのは、この血管系には代替経路がほとんどないという点です。

つまり、この血管に問題が生じると、内耳全体が影響を受けやすいのです。

内耳の血流悪化による耳鳴りの仕組み
  1. 血流の脆弱性:内耳は血流の代替経路がなく、血流障害に弱い。
  2. 血管条の障害:高血圧で血管条の血流が低下し、電位や酸素バランスが乱れる。
  3. 酸素不足と細胞障害:感覚細胞が異常を起こし、耳鳴りが発生する。
  4. 高音域への影響:特に高音域(蝸牛基底部)に影響が出やすい。

内耳の中でも特に重要なのが、血管条という組織です。

血管条は内耳の外側壁に位置し、豊富な毛細血管網を持っています。

この組織は内リンパ液の産生と、聴覚に必要な電位差の維持に関わっています。

高血圧によって血管条の微小循環に障害が生じると、この電位差が乱れ、結果として耳鳴りや難聴につながる可能性があります。

研究では、高血圧患者において蝸牛の微小循環の変化が耳鳴りの原因因子として関与している可能性が示唆されています。

研究者らは、高血圧により内耳組織の損傷リスクが高まり、血管条への血液供給が減少するため蝸牛内電位(EP)が低下する可能性があると提唱しています

引用:Statistics Canada Hypertension associated with hearing health problems among Canadian adults aged 19 to 79 years

血圧が正常範囲を超えて上昇すると、内耳の血流調節機能が破綻し、組織の酸素不足やイオンバランスの乱れが生じます。

これらの変化が、内耳の感覚細胞に影響を与え、実際には存在しない音を感じる耳鳴りという症状を引き起こすと考えられています。

また、内耳の蝸牛は音の周波数によって反応する部位が異なります。

蝸牛の基底部は高音域を担当しており、様々な障害に対して脆弱であることが知られています。

そのため、高血圧による血流障害は、まず高音域の聴力に影響を与え、キーンという高音の耳鳴りとして現れやすい傾向があります。

どんな音が聞こえる?高血圧による耳鳴りの種類

高血圧に関連する耳鳴りには、いくつかの特徴的なパターンがあります。

これらの特徴を理解することで、耳鳴りが高血圧と関連している可能性を判断する手がかりになります。

ただし、最終的な診断は医療機関での検査が必要です。

キーンという高い音や金属音が聞こえる

高血圧に伴う耳鳴りでよく報告されるのが、キーンという高い音です。

この高音性の耳鳴りは、内耳の高音域を担当する部分が血流不足の影響を受けやすいことと関連していると考えられています。

高音性の耳鳴りは、多くの場合、両耳で聞こえることが多いですが、片耳だけに感じる方もいます。

音の大きさや気になる程度は個人差が大きく、わずかに気になる程度から、日常生活に支障をきたすほど気になる場合まで様々です。

この種の耳鳴りは、特に静かな環境で気づきやすく、就寝時や集中して作業をしているときに気になることが多いようです。

また、ストレスや疲労が溜まっているとき、睡眠不足のときに悪化する傾向があります。

これは、これらの状態が血圧の変動や血流に影響を与えるためと考えられています。

心臓の鼓動に合わせてドクドク鳴るのは要注意

高血圧に関連する耳鳴りは、キーンという音以外にも様々な表現がされます。

金属音のような鋭い音、ジーッという連続音、シューッという空気が抜けるような音など、感じ方は人それぞれです。

特に注目すべきなのが、拍動性耳鳴りと呼ばれるタイプです。

これは心臓の鼓動に合わせて「ドクドク」「ズキズキ」「ドーンドーン」といった規則的な音が聞こえる耳鳴りで、血管性の原因によって起こることが多く、高血圧もその原因や増悪因子の一つとされています。

拍動性耳鳴りは、血圧が高い状態で血液が血管を通過する際の音や、血管の拍動が内耳に伝わることで生じると考えられています。

もう1つの一般的な動脈性の原因は、動脈を通る乱流です。さまざまな状態が層流を乱して乱流につながる可能性があり、この乱流が患者の耳に聞こえ、脈動性耳鳴りを引き起こします。

引用:National Center for Biotechnology Information Pulsatile Tinnitus

この種の耳鳴りがある場合は、血管の異常や血流の問題を示唆している可能性があるため、医療機関での精密検査が推奨されます。

また、首の向きを変えたり、特定の体勢をとったりすることで耳鳴りの音が変化する場合も、血管性の要因が関与している可能性を示唆しています。

頭痛やめまい、動悸も一緒に起こることが多い

高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれ、多くの場合は自覚症状がありません

しかし、血圧が非常に高くなった場合(180/120 mmHg以上)や急激に上昇した場合には、耳鳴り以外にも様々な症状が現れることがあります。

頭痛は、血圧が非常に高い場合に現れることがあります。

特に後頭部や首の付け根あたりの重い痛みや圧迫感として感じられることがあり、朝起きたときに症状が強い傾向があります。

めまいやふらつきも、血圧が非常に高い場合に現れることがあります。

特に立ち上がったときや頭を動かしたときに症状が出やすく、これは血圧の変動が内耳の平衡機能に影響を与えるためと考えられています。

代表的な症状と特徴

症状現れやすい状況・特徴主な原因・関連
頭痛後頭部や首の付け根の重い痛み、朝方に強い高血圧による血管圧迫や血流変化
めまい・ふらつき立ち上がった時、頭を動かした時に出やすい血圧変動が内耳の平衡機能に影響
動悸・息切れ階段を上る、軽い運動時などに出やすい心臓が高い圧に対抗して強く働く
肩こり・首こり慢性的に感じることが多い血流の滞りや筋緊張との関連
視力のかすみ・目の充血長時間の作業や疲労時に出やすい高血圧が眼の血管に影響

動悸や息切れも、血圧が非常に高い場合に感じることがあります。

これは、心臓が高い圧力に対抗して血液を送り出すために、より強く働かなければならないことが原因です。

階段を上るときや軽い運動をしたときに、以前よりも疲れやすくなったと感じる場合は、高血圧の可能性を考慮すべきかもしれません。

肩こりや首のこりも、高血圧患者でよく報告される症状です。

これは血流の問題や筋肉の緊張と関連していると考えられています。

視力のかすみや目の充血を感じる方もおり、これは高血圧が眼の血管にも影響を与えるためです。

ただし、これらの症状は高血圧以外の原因でも現れることがあるため、症状の有無だけで判断せず、定期的な血圧測定と医療機関での検査が重要です。

こんな時はすぐ病院へ|放っておくと危険な症状

耳鳴りと高血圧が同時に存在する場合、いくつかの重要な注意点があります。

特に、緊急性の高い状態を見逃さないことが大切です。

また、適切な時期に医療機関を受診することで、より深刻な合併症を予防できる可能性があります。

激しい頭痛や手足の麻痺がある時は救急車を

以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

場合によっては、救急対応が必要なこともあります。

救急受診が必要となる主な症状

症状の種類具体的なサイン・特徴疑われる疾患・背景
激しい頭痛突然の強い痛み/ハンマーで殴られたような痛み脳出血・くも膜下出血など脳血管障害
手足のしびれ・脱力片側のしびれ、動かしにくさ、言葉が出にくい脳梗塞・脳出血など脳卒中
視覚の異常急な視力低下・視野の欠け眼の血管障害・脳の視覚中枢障害
強いめまい・嘔吐立てないほどのめまい、吐き気・嘔吐を伴う内耳や脳幹の循環障害
突然の難聴片耳の急な聞こえづらさ突発性難聴・内耳の血流障害
拍動性の耳鳴り新たに出現、または急に悪化血管の異常(動脈瘤・動静脈奇形など)

突然の激しい頭痛を伴う耳鳴りは、特に注意が必要です。

これまで経験したことのないような強い頭痛や、「頭をハンマーで殴られたような」と表現されるような突然の激痛は、脳血管の異常を示唆している可能性があります。

次のような症状が伴う場合は脳卒中の可能性を示唆しており、すぐに医療機関を受診すべきです。

脳卒中が疑われる主な症状
  • 片側の手足のしびれや脱力感
  • 言葉が出にくい
  • ろれつが回らない
  • 顔の片側が動かしにくい

急激な視力低下や視野の一部が欠けるといった視覚の変化がある場合も、高血圧による眼の血管障害や脳の問題を示唆している可能性があります。

めまいが強く、立っていられない、吐き気や嘔吐を伴うといった症状がある場合も、内耳の循環障害が深刻な状態にある可能性があるため、早めの受診が推奨されます。

突然の難聴、特に片耳だけ急に聞こえにくくなった場合は、突発性難聴や内耳の血流障害の可能性があります。

この場合、早期治療が聴力の回復に重要な役割を果たすため、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

拍動性の耳鳴りが新たに出現した場合や、以前からある拍動性耳鳴りが急に悪化した場合も、血管の異常を示唆している可能性があるため、精密検査を受けることをお勧めします。

放置すると聞こえにくくなったり重大な病気につながる

耳鳴りを伴う高血圧を放置すると、いくつかの深刻なリスクがあります。

まず、聴覚機能への影響です。

内耳への血流不足が長期間続くと、感覚細胞が徐々にダメージを受け、難聴が進行する可能性があります。

特に高音域の聴力低下が進みやすく、一度失われた聴覚細胞は再生しないため、永続的な難聴につながることがあります。

再循環開始後、蝸牛機能を長期間追跡すると、15~30分間の虚血により有毛細胞の喪失と永久的な蝸牛機能障害が誘発される

引用:PubMed Central Ischemia-Reperfusion Injury of the Cochlea: Pharmacological Strategies for Cochlear Protection and Implications of Glutamate and Reactive Oxygen Species

高血圧自体のリスクも見逃せません。

血圧が高い状態が続くと、心臓や血管、腎臓、脳などの重要な臓器にダメージが蓄積していきます。

脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎不全などの重大な合併症のリスクが高まります。

耳鳴りそのものが生活の質に与える影響も無視できません。

慢性的な耳鳴りは睡眠障害の原因となることがあり、それが続くとストレス、不安、うつ状態を引き起こす可能性があります。

これらの精神的な影響は、さらに血圧を上昇させる悪循環を生むこともあります。

また、耳鳴りが血管の異常や脳の問題など、より深刻な疾患のサインである可能性もあります。

例えば、動静脈瘻や脳腫瘍といった疾患でも耳鳴りが症状として現れることがあり、これらは早期発見と治療が重要です。

集中力の低下や仕事の効率低下も、慢性的な耳鳴りの影響として報告されています。

別の研究8では、ストループ テストを使用して耳鳴りのある人の選択的注意を評価し、耳鳴りグループの反応時間は他のグループよりも遅い(1559 ミリ秒)という結論に達しました。

引用:PubMed Central Auditory attention in individuals with tinnitus

常に気になる音が聞こえている状態では、集中して作業することが難しくなり、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。

これらのリスクを考えると、耳鳴りと高血圧のいずれか、あるいは両方がある場合は、自己判断で放置せず、適切な医療機関で評価を受けることが重要です。

耳鳴りを軽減する血圧管理と治療法

高血圧に関連する耳鳴りへの対処は、根本的な原因である高血圧のコントロールと、耳鳴り自体への対応の両面から考える必要があります。

以下では、医学的に推奨されている対処法について説明します。

適切な降圧が内耳への血流を改善する

高血圧による耳鳴りへの対処として、血圧を適切な範囲にコントロールすることが重要です。

血圧が正常化することで内耳への血流が改善する可能性がありますが、耳鳴りの治療では認知行動療法や補聴器(難聴を伴う場合)などの対応も重要とされています。

定期的な血圧測定も重要です。

家庭で血圧を測定することで、自身の血圧の変動パターンを把握し、治療の効果を確認できます。

血圧手帳などを活用して記録を残すことで、医師との診察時により正確な情報を共有できます。

血圧の目標値は、年齢や合併症の有無によって異なります。

近年のガイドラインでは、診察室血圧で130/80 mmHg未満を目標とすることが推奨される傾向にあり、日本のガイドライン(JSH2025)では家庭血圧で125/75 mmHg未満を目標としています。

ただし、個人の耐容性や状態に応じて医師が適切な目標を設定します。

減塩・運動・体重管理など生活習慣の見直し

生活習慣の改善は、高血圧のコントロールと耳鳴りの軽減の両方に効果が期待できます。

食事の改善

食事の改善は、血圧管理の基本です。

減塩を心がけることが特に重要で、1日の食塩摂取量を6グラム未満に抑えることが推奨されています。

加工食品や外食は塩分が多い傾向があるため、できるだけ自炊を増やし、調味料の使用量を控えることが有効です。

野菜や果物を多く摂取することで、カリウムやマグネシウムなどのミネラルを補給でき、血圧のコントロールに役立ちます。

適度な運動・体重管理

適度な運動も血圧管理に効果的です。

有酸素運動、例えばウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどを、週に150分程度行うことが推奨されています。

運動は血圧を下げるだけでなく、ストレス解消にも役立ちます。

ただし、急激な運動や過度な運動は血圧を急上昇させる可能性があるため、自分の体力に合わせて徐々に始めることが大切です。

体重管理も重要な要素です。

肥満は高血圧の大きなリスク因子であり、体重を適正範囲に保つことで血圧のコントロールが容易になります。

急激なダイエットではなく、持続可能な方法で徐々に減量することが推奨されます。

節酒・禁煙

アルコールの摂取について、近年のガイドラインでは可能であれば控えることが推奨されています。

飲酒する場合は、男性で1日2杯以下、女性で1日1杯以下に抑えることが望ましいとされています。

習慣的な過度の飲酒は血圧を上昇させる要因となります。

禁煙も非常に重要です。

喫煙は血管を収縮させ、血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を促進します。

禁煙は高血圧だけでなく、全身の健康にとって重要な対策です。

睡眠・ストレス管理

十分な睡眠をとることも大切です。

睡眠不足は血圧を上昇させる要因となります。

質の良い睡眠を確保するために、就寝時間を一定にする、寝室を静かで暗い環境に保つなどの工夫が有効です。

ストレス管理も血圧コントロールに役立ちます。

慢性的なストレスは血圧を上昇させる要因となるため、リラクゼーション法や趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが推奨されます。

深呼吸や瞑想、ヨガなども効果的な方法として知られています。

カフェイン

カフェインについては、一時的に血圧を上昇させる作用がありますが、長期的な高血圧リスクとの関連は明確ではありません。

耳鳴りへの影響については個人差が大きく、カフェイン制限で改善するという確証は得られていません

ただし、血圧測定の30分前はカフェイン摂取を避けることが推奨されています。

降圧薬治療・音響療法・認知行動療法の選択肢

医療機関では、高血圧の程度や合併症の有無、患者さんの状態に応じて、適切な治療法が選択されます。

主な治療法の特徴と注意点

治療法特徴注意点
降圧薬治療生活習慣の改善で効果が得られない場合に検討一部の薬で耳鳴り・難聴の報告あり
音響療法耳鳴りの視覚を和らげる効果は限定的
認知行動療法耳鳴りによる苦痛の軽減専門的な指導が必要
カウンセリング耳鳴りへの不安やストレスの軽減継続的な支援が有効な場合もある
補聴器の使用難聴を伴う場合に推奨される症状や聴力により効果が異なる
血管内治療・外科的治療血管の異常が原因の場合に検討対象となるケースは限られる

降圧薬による治療は、生活習慣の改善だけでは十分な血圧コントロールが得られない場合に検討されます。

降圧薬にはいくつかの種類があり、それぞれ作用機序が異なります。

医師は患者さんの年齢、合併症、副作用のリスクなどを考慮して、最適な薬剤を選択します。

ただし、一部の降圧薬は耳鳴りを引き起こす可能性があります。

特にループ利尿薬(フロセミドなど)は、高用量で使用した場合や他の薬剤との併用時に耳毒性(難聴や耳鳴り)が報告されています。

しかし、高用量のループ利尿薬をシスプラチンやゲンタマイシンなどの耳毒性のある薬剤と同時に投与すると、有毛細胞の大幅な減少や永久的な難聴が発生することが多い

引用:PubMed Central Ototoxic effects and mechanisms of loop diuretics

チアジド系利尿薬では稀とされています。

もし降圧薬を開始した後に耳鳴りが出現したり悪化したりした場合は、医師に相談することが重要です。

薬剤の種類を変更することで症状が改善する可能性があります。

降圧薬使用時の注意点
  • ループ利尿薬(例:フロセミド)は高用量で耳毒性の報告あり
  • チアジド系利尿薬では耳鳴りの発生は稀
  • 降圧薬開始後に耳鳴りが出現・悪化した場合は医師に相談
  • 薬剤変更により症状が改善する場合もある

耳鳴りそのものへの対応としては、耳鼻咽喉科での専門的な評価と治療が選択肢となります。

聴力検査や画像検査などを通じて、耳鳴りの原因をより詳しく調べることができます。

耳鳴りに対する治療法には、音響療法、カウンセリング、認知行動療法などがあります。

認知行動療法は、耳鳴りに関連する苦痛を軽減する効果が示されています。

CBTは治療終了時に耳鳴りが生活の質に及ぼす影響を軽減する可能性がある(標準化平均差(SMD)-0.56、95%信頼区間(CI)-0.83~-0.30、10件の研究、参加者537名、確実性が低い)。

引用:Cochrane Library Cognitive behavioural therapy for adults with tinnitus

難聴を伴う場合は補聴器の使用が推奨されますが、音響療法単独の効果については更なる研究が必要とされています。

重度の拍動性耳鳴りで、血管の異常が原因となっている場合は、血管内治療や外科的治療が検討されることもあります。

特に動静脈瘻、静脈洞狭窄、傍神経節腫瘍などの治療可能な疾患では、適切な介入により症状の改善が期待できます。

ただし、これらの治療が必要となるケースは限られています。

定期的な経過観察も重要です。

血圧や耳鳴りの状態を定期的にチェックすることで、治療の効果を確認し、必要に応じて治療方針を調整することができます。

よくある質問(FAQ)

高血圧による耳鳴りは治りますか?

高血圧による耳鳴りが完全に消失するとは限りません。

血圧を適切にコントロールすることで症状が軽減する可能性はありますが、耳鳴りの管理では認知行動療法や補聴器(難聴を伴う場合)など、耳鳴りとの付き合い方を学ぶアプローチも重要とされています。

早期に対処することで改善の可能性が高まるため、症状に気づいたら早めに医療機関を受診することが推奨されます。

耳鳴りがしたら必ず高血圧なのでしょうか?

耳鳴りの原因は非常に多岐にわたり、高血圧はその一つの可能性に過ぎません。

加齢による聴力低下、騒音への曝露、耳の疾患、ストレス、薬の副作用など、様々な要因が耳鳴りを引き起こす可能性があります。

耳鳴りがあるからといって必ずしも高血圧とは限りませんが、血圧測定を含めた総合的な検査を受けることが大切です。

急に耳鳴りが始まった場合はどうすればよいですか?

急に耳鳴りが始まった場合、特に片耳だけの場合や、めまい・難聴を伴う場合は、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。

突発性難聴などの疾患の可能性があり、早期の認識と治療が聴力の回復に重要な役割を果たします。

また、激しい頭痛や神経症状を伴う場合は、緊急性が高い可能性があるため、すぐに医療機関を受診するか救急車を呼ぶことを検討してください。

血圧を下げれば耳鳴りもなくなりますか?

血圧を適切にコントロールすることで耳鳴りが改善する可能性はありますが、必ずしも完全になくなるとは限りません。

耳鳴りの管理では、認知行動療法など耳鳴りとの付き合い方を学ぶアプローチも有効とされています。

降圧治療は医師の指導のもと、徐々に調整していくことが重要です。

耳鳴りを放置するとどうなりますか?

耳鳴りを放置すると、原因となっている疾患が進行する可能性があります。

高血圧が原因の場合、血圧のコントロール不良により心臓や血管、腎臓などに深刻な合併症が生じるリスクがあります。

また、内耳への血流不足が続くことで、難聴が進行する可能性もあります。

さらに、慢性的な耳鳴りはストレスや睡眠障害、生活の質の低下につながることがあるため、適切な対処が推奨されます。

まとめ

高血圧と耳鳴りには関連性があることが、複数の研究で示されています。

内耳への血流障害や血管の状態変化により、キーンという高音や拍動性の耳鳴りが生じることがあります。

耳鳴りを伴う高血圧の対処には、血圧の適切なコントロールが基本となります。

生活習慣の改善、必要に応じた降圧薬による治療、そして耳鳴りそのものへの対応を組み合わせることで、症状の改善が期待できます。

特に、突然の激しい頭痛や神経症状を伴う場合、急激な難聴やめまいを伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。

また、慢性的な耳鳴りがある場合も、自己判断で放置せず、医師の診察を受けることが重要です。

日常生活では、減塩、適度な運動、適正体重の維持、禁煙、十分な睡眠など、血圧管理に効果的な生活習慣を心がけましょう。

これらの対策は、高血圧だけでなく全身の健康維持にも役立ちます。

耳鳴りは生活の質に大きな影響を与える可能性があります。

気になる症状がある場合は、早めに医療機関で相談し、適切な対処法を見つけることをお勧めします。

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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