高血圧と診断されて降圧薬を処方されたとき、「この薬はどのように血圧を下げるのか」「副作用が心配」「いつから効いてくるのか」と疑問や不安を感じる方は少なくありません。
アジルサルタン(商品名:アジルバ)は、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と呼ばれるグループに属する降圧薬で、2011年にアメリカのFDA(食品医薬品局)で関連成分が承認され、日本では2012年より現在のアジルサルタンとして使用が始まりました。
降圧薬のなかでも特に血圧を下げる力が強い薬として、多くの医療機関で処方されています。
アジルサルタンは、体内で血圧を上昇させる物質のはたらきをブロックすることで血管を広げ、血圧を下げます。
1日1回の服用で1日中安定した効果が続く点が大きな特徴で、副作用も比較的少ない薬とされています。
他の降圧薬(ACE阻害薬など)で起きやすい「空咳」が出にくいという利点もあります。
一方で、血圧を大きく下げる薬であるため、飲み始めたころにめまいや立ちくらみが起きることがあること、腎臓の働きに影響が出る可能性があることなど、あらかじめ知っておきたい点もあります。
また、妊娠中は絶対に服用できないこと、一部の薬との飲み合わせに注意が必要なことも覚えておいてください。
- 他のARBより受容体への結合力が強く効果が長持ちする
- 服用後1.5〜3時間で血中濃度がピークに達する
- 血圧安定まで用量調整含め1〜2ヶ月かかることがある
- 最も報告が多い副作用は下痢(約2%)で空咳は出にくい
- 高カリウム血症は自覚症状がなく血液検査での確認が必要
効果がしっかり安定するまでには一定の時間がかかります。
「あまり変わらない気がする」と感じて自己判断でやめてしまう方もいますが、これは大変危険です。
高血圧は頭痛やだるさといった自覚症状がほとんどない病気ですが、血圧が高い状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞、腎不全といった深刻な病気につながる可能性があります。
医師の指示にしたがって飲み続けながら、自宅での血圧測定を習慣にすることで、薬がきちんと効いているかどうかを自分で把握することができます。
この記事では、アジルサルタンが血圧を下げる仕組みから効果が出るまでの目安、知っておきたい副作用と対処法、服用時の重要な注意点まで、専門知識がない方にもわかりやすくお伝えします。
- アジルサルタンが血圧を下げる仕組みと、同じ種類の薬のなかでの位置づけ
- 効果が現れるまでの目安の時間と、なぜ自己判断でやめてはいけないのか
- 注意すべき副作用の種類と、すぐに病院へ行くべき症状の見分け方
- 妊娠中や他の薬との飲み合わせで特に気をつけるポイント
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
アジルサルタンは血圧を上げる物質をブロックして血圧を下げる降圧薬

アジルサルタンは、ARBというグループに属する降圧薬です。
ARBは日本でよく使われている降圧薬のひとつであり、高血圧の治療を始めるときにカルシウム拮抗薬やACE阻害薬などとともに第一選択群として選ばれる薬として位置づけられています。
アメリカ心臓病学会・アメリカ心臓協会(ACC/AHA)のガイドラインでも、ARBは高血圧治療を始める際に推奨される薬として明記されています。
アジルサルタンは、体内で血圧を上げようとする物質のはたらきをブロックすることで血管を広げ、血圧を下げます。
副作用が比較的少なく、1種類だけで使うこともあれば、カルシウム拮抗薬や利尿薬と組み合わせて処方されることもあります。
この章では、まず血圧が上がる体の仕組みとアジルサルタンがどこに作用するかをわかりやすく解説し、次に同じARBというグループのなかでアジルサルタンがどのような点で特徴的なのかについてお伝えします。
「なぜこの薬が処方されたのか」を理解することで、治療への安心感や前向きな気持ちにつながれば幸いです。
血圧が高くなる仕組みと、アジルサルタンがどこに作用するか
私たちの体には、血圧を一定に保つための調整システムがあります。
そのなかで重要な役割を担っているのが「アンジオテンシンII」という物質です。
この物質は血管を締め付けて細くし、さらに体内の水分と塩分を溜め込むことで血圧を上げる作用を持っています。
アンジオテンシンIIが血管の壁にある「AT1受容体」と呼ばれる鍵穴のような部分にはまり込むことで、はじめてこの血圧を上げる作用が引き起こされます。
アジルサルタンは、このAT1受容体にあらかじめ結合することで、アンジオテンシンIIが鍵穴にはまるのを防ぎます。
アンジオテンシンIIが使おうとしている鍵穴に、先回りして別の鍵を差し込んでふさいでしまうようなイメージです。
その結果、血管の締め付けが和らいで血液が流れやすくなり、血圧が下がります。
水分・塩分の溜め込みも抑えられるため、より安定した降圧効果が期待できます。
血圧が上がる仕組みとアジルサルタンの作用点
| 体内で起きていること | アジルサルタンのはたらき |
|---|---|
| アンジオテンシンIIが血管壁の受容体(AT1)に結合する | AT1受容体に先回りして結合し、アンジオテンシンIIをブロックする |
| 血管が締め付けられて細くなる | 血管の締め付けが和らぎ、血液が流れやすくなる |
| 体内に水分・塩分が溜め込まれる | 水分・塩分の過剰な溜め込みが抑えられる |
| 血圧が上がる | 血圧が下がる |
同じARBの中でもアジルサルタンはさらに上乗せの降圧効果が期待できる
ARBにはさまざまな種類があります(ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、イルベサルタンなど)。
アジルサルタンはこれらのなかで最も新しく開発された薬です。
最大の特長は、AT1受容体への結合力が他のARBよりもやや強く、しかも一度結合するとなかなか離れないという点にあります。
鍵穴への「はまり具合」が強くて長持ちするため、1日1回の服用で24時間にわたって安定した降圧効果が続くとされています。
6,000人を超える患者データを分析した研究(PMC掲載、2024年)では、アジルサルタンは他のARBと比べて上の血圧(収縮期血圧)を平均約2.85 mmHg、下の血圧(拡張期血圧)を約2.10 mmHg追加で低下させる可能性が示されています。
アジルサルタンは、他の抗うつ薬(ARB)と比較して、臨床収縮期血圧(SBP)(平均差:-2.85 mmHg)および拡張期血圧(DBP)(平均差:-2.095 mmHg)を有意に低下させました。
引用:PubMed Central Effect of Azilsartan on clinical blood pressure reduction compared to other angiotensin receptor blockers: a systematic review and meta-analysis
また、心臓や血管の病気につながりやすい「夜間の高血圧」や「朝の高血圧」を抑える効果も期待されており、朝に血圧が高くなりやすい方にとって特に有用と考えられています。
なお、海外のデータでは薬の量が多いほど降圧効果が大きくなる傾向があり、80 mgでより強い効果が確認されていますが、日本での最大用量は40 mgとなっています。
アジルサルタンの主な特徴まとめ
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 薬の種類 | ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)のなかで最も新しい薬 |
| 受容体への結合力 | ARBのなかでも強い傾向、効果が長持ちする |
| 服用回数 | 1日1回 |
| 効果の持続時間 | 約24時間 |
| 日本での用量 | 1日20mg〜最大40mg |
| 得意なケース | 朝・夜間に血圧が高くなりやすい方 |
アジルサルタンの効果は約2週間で現れ、1〜2ヶ月で治療が安定する
「飲み始めてどのくらいで効いてくるの?」という疑問はとても自然なことです。
アジルサルタンは服用から1.5〜3時間ほどで血液中の濃度がピークに達するとされています。
血圧への降圧効果の大部分は最初の2週間で現れますが、米国国立医学図書館(MedlinePlus)の情報でも、しっかりとした効果を感じられるまでに約2週間程度かかるとされています。
さらに、用量の調整が行われた場合など、治療全体として血圧が安定した水準に落ち着くまで1〜2ヶ月を要することもあります。
血圧は1日のなかでも朝・夜・運動後など状況によって大きく変わるものです。
薬が効いていないように感じるときでも、気温の変化やストレス・疲れなどによって一時的に血圧が高くなっているだけのケースも多くあります。
この章では、効果が安定するまでの流れと、自己判断でやめることの危険性、そして自宅での血圧測定を活用して治療の状況を自分で把握する方法についてお伝えします。
服用開始からの効果の目安
| 時期 | 体内・血圧の変化 |
|---|---|
| 服用後1.5〜3時間 | 血液中の薬の濃度がピークに達する |
| 最初の2週間以内 | 降圧効果の大部分が現れる |
| 約2週間後 | 効果をしっかり感じられるようになる目安 |
| 1〜2ヶ月後 | 用量調整後も含め、血圧が安定した水準に落ち着いてくる |
| 2〜4週間以内 | 腎機能・血中カリウム・血圧のモニタリングが推奨される |
効果が安定するまで時間がかかるため、自己判断で飲むのをやめてはいけない
アジルサルタンを飲み始めて「血圧があまり変わっていない気がする」と感じても、まだ薬の効果が十分に安定していない時期である可能性があります。
自己判断で服用をやめてしまうと、血圧が再び上がるリスクがあります。
高血圧は「頭が痛い」「体がつらい」といった自覚症状がほとんどないため、「調子がよさそうだから飲まなくても大丈夫」と判断するのは大変危険です。
降圧薬を飲み続けることで血圧が適切にコントロールされ、脳卒中・心筋梗塞・腎不全といった重大な病気のリスクを下げることが期待されています。
また、腎臓専門の国際ガイドライン(KDIGO)では、アジルサルタンのような降圧薬を飲み始めたり量を変えたりした場合、2〜4週間以内に血圧・腎臓の状態・血液中のカリウムの量を確認することが推奨されています。
量の調整後は特に体調の変化に気をつけながら、定期的に受診を続けることが大切です。
- 高血圧は自覚症状がほとんどなく、「調子がよい」は血圧が正常なサインではない
- 服用をやめると血圧が再び上昇し、脳卒中・心筋梗塞・腎不全のリスクが高まる
- 薬の効果が安定するまでには数週間〜数ヶ月かかることがある
- 用量変更後は腎機能や血中カリウム値の確認が特に重要
家庭での血圧測定で「効いているかどうか」を自分で確認できる
病院で測った血圧と、自宅でリラックスして測った血圧は、異なる値になることがよくあります。
緊張から病院では血圧が高めに出てしまう「白衣高血圧」や、反対に病院では正常でも自宅では高くなっている「仮面高血圧」というケースもあります。
アメリカ心臓協会(AHA)と米国医師会(AMA)の共同声明でも、降圧薬の効き具合を確認したり、高血圧の診断・管理を行ううえで、自宅での血圧測定が有効だと推奨されています。
したがって、自己測定血圧モニタリングは、米国における高血圧の診断と管理を改善する大きな可能性を秘めている。
引用:PubMed Self-Measured Blood Pressure Monitoring at Home: A Joint Policy Statement From the American Heart Association and American Medical Association
自宅での測定には、上腕(二の腕)に巻くタイプの自動血圧計を使うことが推奨されています。
手首や指先で測るタイプは精度が低くなりやすいため、AHAは上腕式を推奨しています。
測定タイミングは、朝(起床後1時間以内・朝食前・薬を飲む前)と夜(寝る前)の1日2回が理想で、毎回2回測定して平均を記録しておくとより正確です。
測定前は最低5分間、静かに椅子に座って落ち着いてから測定しましょう。
自宅での正常な血圧の目安は115/75 mmHg未満とされています。
なお、高血圧と診断される基準は自宅で135/85 mmHg以上(病院では140/90 mmHg以上)であり、測定記録を受診時に持参すると、医師が薬の効き具合や量の調整を判断するうえで大変役に立ちます。
- 上腕(二の腕)に巻くタイプの自動血圧計を使う
- 測定前は5分以上、静かに椅子に座って安静にする
- 腕は心臓と同じ高さに置き、おしゃべりや携帯電話の操作はしない
- 朝(起床後1時間以内・朝食前・服薬前)と夜(就寝前)の1日2回測定する
- 毎回2回測定し、その平均値を記録する
- 測定前30分以内の喫煙・運動・カフェインは避ける
高血圧の目安(日本高血圧学会ガイドラインより)
| 測定場所 | 高血圧の目安(上の血圧/下の血圧) |
|---|---|
| 自宅での測定 | 135/85 mmHg以上 |
| 病院での測定 | 140/90 mmHg以上 |
アジルサルタンの副作用で注意したいのは低血圧症状・腎機能の低下・高カリウム血症
アジルサルタンは副作用が比較的少ない薬で、多くの方は問題なく飲み続けることができます。
FDAの処方情報によると、4,814名の患者を対象とした臨床試験において、プラセボ(偽薬)と比べて2%以上多く報告された副作用は下痢のみでした(偽薬グループの0.5%に対して、アジルサルタングループでは2%)。
ただし、飲み始めのころや利尿薬(おしっこを増やして体の水分を排出する薬)と一緒に使っているとき、また体内の水分や塩分が少ない状態では、血圧が急に下がりすぎることがあり、めまいや立ちくらみとして現れることがあります。
また、腎臓への血流の調整に関わる薬であるため、腎臓の働きの変化にも注意が必要です。
副作用が疑われる症状が出た場合は、自己判断で薬をやめずに、まず担当医に相談することが大切です。
この章では、比較的起きやすい副作用から、頻度は低くても見逃せない重大な症状まで段階的にお伝えします。
副作用の全体像を事前に知っておくと、万が一のときに早めに気づいて対応することができます。
副作用の一覧と対応の目安
| 症状 | 頻度の目安 | 注意が必要なケース | 対応 |
|---|---|---|---|
| 下痢 | 約2%(最も報告が多い) | 継続する場合 | 担当医に相談 |
| めまい・立ちくらみ | 数%以下 | 飲み始め・利尿薬併用時・水分不足時 | 急な姿勢変化を避ける。続く場合は相談 |
| だるさ・頭痛・吐き気 | 頻度不明 | 症状が気になる場合や長引く場合 | 担当医に相談 |
| 高カリウム血症 | まれ(無自覚のことが多い) | 腎機能低下・糖尿病・特定薬との併用 | 定期的な血液検査で確認 |
| 腎機能の低下 | まれ | 腎臓病・脱水・NSAIDs併用時 | 定期的な血液検査で確認 |
| 血管性浮腫・ショック・急性腎障害・肝機能障害・横紋筋融解症 | 頻度不明 | 全員 | すぐに服用を中止し、救急受診 |
頻度は高くないが、だるさ・高カリウム血症などにも注意が必要
日本の添付文書やFDAの処方情報によると、アジルサルタンで報告されている副作用としては、めまい・立ちくらみのほかに、体のだるさ、頭痛、吐き気、筋肉のけいれんなども挙げられています。
これらの症状がみられ、気になる場合や長引く場合は、自己判断せずに担当医に相談してください。
もうひとつ気をつけたいのが、血液中のカリウムが増えすぎる「高カリウム血症」です。
アジルサルタンには、腎臓がカリウムを体外に排出しにくくする働きがあるため、特定の状況ではカリウムが体内に溜まりやすくなることがあります。
腎臓の働きが低下している方、血糖コントロールが難しい糖尿病のある方、カリウムを増やす作用のある薬(カリウム保持性利尿薬、カリウムのサプリメントなど)を併用している方は特に注意が必要です。
高カリウム血症は自覚症状が出にくいのですが、重症化すると脈が乱れる(不整脈)危険があります。
また、スーパーなどで売られている塩分控えめの「減塩塩」のなかにはカリウムが含まれている製品があるため、使っている方はあらかじめ担当医に伝えておきましょう。
定期的な血液検査でカリウム値と腎臓の状態を確認しておくことが重要です。
- 腎臓の働きが低下している方
- 血糖コントロールが難しい糖尿病のある方
- カリウム保持性利尿薬やカリウムサプリメントを使っている方
- 市販の「減塩塩」(カリウムが含まれる製品)を日常的に使っている方
血管性浮腫やショックなど、すぐに受診すべき重大な副作用もある
頻度は不明ですが、重篤な状態につながる重大な副作用も報告されています。
日本の添付文書(PMDA患者向け資料)には、次のような症状が重大な副作用として記載されています。
- 顔・まぶた・唇・舌・のどなどが突然腫れる(血管性浮腫)
- 急激な血圧低下によるショック・失神・意識を失う
- 急性腎障害、血液中のカリウムが危険なほど増える(高カリウム血症)
- 肝臓の機能障害
- 筋肉が溶け出して腎臓にダメージを与える状態(横紋筋融解症)
なかでも血管性浮腫は、のどが腫れて息苦しくなることがあり、命に関わる危険があります。
このような症状が現れたときは、すぐに薬を飲むのをやめ、速やかに医療機関を受診してください。
また、理由のわからないひどいだるさ、おしっこの量が急に極端に少なくなる、赤褐色の尿が出る、肌や白目が黄色くなる(黄疸)といった症状が続く場合も、すぐに医師に相談が必要です。
これらはまれな副作用ではありますが、放置すると重篤化する危険があります。
体に気になる変化があれば、「たいしたことないかな」と思わず、早めに受診することをお勧めします。
- 顔・まぶた・唇・舌・のどが突然腫れてきた
- 息苦しさや呼吸のしにくさを感じる
- 急に意識が遠くなる、気を失った
- おしっこの量が急に極端に少なくなった、または赤褐色の尿が出た
- 皮膚や白目が黄色みを帯びてきた(黄疸)
- 原因不明のひどいだるさや筋肉の痛みが続く
上記のいずれかが当てはまる場合は、自己判断せず直ちに服用を中止し、医療機関を受診してください。
アジルサルタンは妊娠中の服用禁止・降圧薬との併用に特に注意が必要
アジルサルタンを飲むにあたっては、他の薬との組み合わせや体の状態によって注意が必要なケースがいくつかあります。
なかでも最も重要なのは、妊娠中は絶対に服用できないという点です。
また、一部の痛み止めや他の降圧薬との飲み合わせには気をつける必要があります。
一方で、アジルサルタンは食事の影響をほぼ受けないため(食後に飲んでも空腹時と血液中の濃度はほとんど変わりません)、食事のタイミングを気にせず1日1回服用できる使いやすい薬です。
正しく使えば多くの方が安全に血圧をコントロールできます。
この章では、食べ物や他の薬との関係、腎臓や肝臓に持病がある場合の注意点、妊娠・授乳中の禁忌について詳しくお伝えします。
現在飲んでいる薬(市販薬やサプリメントも含む)や自分の体の状態については、あらかじめ担当医や薬剤師にすべて伝えておくことが、安全に治療を続けるうえでとても大切です。
グレープフルーツや利尿薬との組み合わせで効果や副作用が変わることがある
アジルサルタンは、一部の降圧薬とは異なり、グレープフルーツについての特別な注意喚起は添付文書上で確認されていません。
ただし、他の薬との組み合わせには注意が必要なものがあります。
水分を体の外に出す薬(利尿薬)を多めに使っている場合、体の水分・塩分が不足した状態でアジルサルタンを飲み始めると、血圧が急に下がりすぎることがあります。
そのような場合は、最初に飲む量を少なめにすることが推奨されています(FDAの処方情報より)。
また、市販の痛み止めや解熱剤(イブプロフェン・ロキソプロフェンなどのNSAIDs)と一緒に使うと、アジルサルタンの血圧を下げる効果が弱まったり、腎臓の働きが悪化したりする可能性があるとされています。
さらに、気分の浮き沈みを安定させる薬(リチウム)を飲んでいる方は、アジルサルタンによってリチウムの血中濃度が上がりすぎることがあるため、必ず担当医に伝えてください。
また、ACE阻害薬などの他の降圧薬との併用にはリスクがあり、糖尿病の方がアリスキレン(直接的レニン阻害薬)と一緒に服用することは禁じられています。
飲んでいる薬やサプリメントはすべて担当医・薬剤師に伝えておくことが重要です。
主な飲み合わせの注意点
| 組み合わせる薬・食品 | 起こりうる影響 | 対応 |
|---|---|---|
| 利尿薬(高用量) | 血圧が急に下がりすぎる可能性がある | 開始用量を低めに調整する |
| NSAIDs(イブプロフェン・ロキソプロフェンなど) | 降圧効果が弱まる・腎機能が悪化する可能性がある | 可能な限り避け、担当医に相談 |
| リチウム(気分安定薬) | リチウムの血中濃度が上昇する可能性がある | 必ず担当医に申告し、血中濃度を定期確認 |
| アリスキレン(糖尿病の方) | 腎障害・高カリウム血症・低血圧のリスク増加 | 糖尿病患者への併用は禁忌 |
| グレープフルーツ | 特段の記載なし | 添付文書上の特別な注意喚起は確認できない |
| 減塩塩(カリウムが含まれる製品) | 高カリウム血症のリスクが高まる可能性がある | 腎機能低下のある方は担当医に相談 |
| ACE阻害薬 | 腎障害や高カリウム血症等のリスクが高まる可能性がある | 併用には注意が必要なため担当医に相談 |
腎臓病・肝臓病のある方は服用前に必ず医師に伝える
アジルサルタンは、腎臓の働きが大きく低下している場合、薬が体内に残りやすくなることがあります。
そのため、腎臓の機能に問題がある方は慎重な服用が必要です。
また、腎臓へ向かう血管が細くなっている(腎動脈狭窄)方では、アジルサルタンを飲むことで腎臓への血流がさらに減り、腎臓の働きが急激に悪化するリスクがあるとされています。
一方、慢性腎臓病(特に尿にタンパクが出ている場合)や糖尿病を合わせ持っている高血圧の方に対しては、腎臓を保護する目的でARBが推奨されることがあります。
適切に使えば、高血圧による腎臓へのダメージを和らげる効果も期待できるのです。
肝臓に持病がある方については、薬の分解に影響が出る可能性があるため、服用前に必ず担当医に伝えてください。
妊娠中および妊娠している可能性がある女性は飲めません(禁忌)。
日本の添付文書によると、妊娠中期や後期にアジルサルタンを服用すると、赤ちゃんの腎臓の発達障害、羊水が少なくなる、頭の骨の形成不全、低血圧、腎不全、最悪の場合は死亡といった深刻な影響が生じる可能性があります。
飲んでいる最中に妊娠がわかった場合は、すぐに服用をやめて担当医に連絡してください。
授乳中についても、赤ちゃんへの影響が十分に確かめられていないため、授乳は推奨されていません。
- 腎臓の機能が低下している、または腎臓の血管が細くなっている(腎動脈狭窄)
- 肝臓に持病がある ・糖尿病がある
- 妊娠中、妊娠の可能性がある、または授乳中
- 現在飲んでいる薬(市販薬・サプリメントを含むすべて)
よくある質問(FAQ)
- アジルサルタンは一生飲み続けなければなりませんか?
-
高血圧は多くの場合、生活習慣の改善だけでは十分にコントロールしきれない慢性的な状態です。
アジルサルタンをはじめとする降圧薬は、高血圧そのものを完全に治癒させるのではなく血圧を「コントロールする」薬であるため、継続的な服用が必要になることが多いです。
ただし、食事・運動・体重管理などの生活改善によって血圧が安定した場合には、医師の判断で減薬・中止が検討されることもあります。
必ず担当医と相談のうえ、服薬の継続について判断するようにしてください。
- アジルサルタンを飲んでいる間、食事で気をつけることはありますか?
-
アジルサルタンの添付文書上ではグレープフルーツについての特別な注意喚起はなく、一律に特定の食品を厳しく制限する指示はありません。
ただし高血圧の治療全体としては、塩分の摂りすぎを避けることが引き続き大切です。
また、腎臓の働きが低下して医師からカリウム制限の指示を受けている方などでは、バナナ・アボカド・いも類などカリウムの多い食品の食べすぎに注意が必要な場合があります(すべての人に一律の制限があるわけではありません)。
食事内容に不安がある場合は、担当医や管理栄養士にご相談ください。
- 副作用が心配で飲み始めるのをためらっています。どうすればよいですか?
-
アジルサルタンを含むARBは、降圧薬のなかでも副作用が出にくい部類の薬として知られています。
大規模な臨床試験でも、多くの患者が大きなトラブルなく服用を続けており、ACE阻害薬など他の降圧薬でみられることのある「空咳」が起きにくいという特徴があります。
ただし体質や持病によっては注意が必要な場合もあるため、飲み始める前に不安な点を担当医に率直に伝えることをお勧めします。
飲み始めてから気になる症状が現れた場合も、自己判断でやめてしまうのではなく、まず医師に相談するようにしましょう。
まとめ
アジルサルタンは、体内で血圧を上げようとするアンジオテンシンIIという物質のはたらきをブロックすることで血圧を下げる降圧薬(ARB)です。
同じグループの薬のなかでも受容体への結合力が特に強く、1日1回の服用で1日中安定した降圧効果が期待できる点が特徴です。
効果の大部分は最初の2週間で現れますが、用量調整も含め治療全体として血圧が安定するまでには1〜2ヶ月かかることがあります。
「あまり効いていない気がする」と感じても自己判断でやめず、医師の指示にしたがって飲み続けることが重要です。
自宅での血圧測定を習慣にすることで、薬の効き具合をより正確に把握できます。
副作用はめまい・立ちくらみや腎臓の状態の変化に特に注意が必要ですが、多くの方は問題なく飲み続けられます。
ただし頻度不明ですが血管性浮腫など重い副作用が起こることもあります。
また、妊娠中の服用は絶対に禁忌であること、ACE阻害薬など他の薬との飲み合わせに注意が必要なこと、腎臓・肝臓に持病がある方は事前に必ず医師に伝えること(特にアルブミン尿や蛋白尿がある場合に推奨されることがあります)を覚えておいてください。
体に気になる変化があれば、自己判断せず早めに担当医に相談されることをお勧めします。
American College of Cardiology New in Clinical Guidance | High Blood Pressure Focus of New ACC/AHA Guideline
U.S. Food and Drug Administration EDARBI (azilsartan medoxomil) tablets – Full Prescribing Information (2024)
European Medicines Agency Edarbi – Summary of Product Characteristics (EPAR)
PubMed Central Unique binding behavior of the recently approved angiotensin II receptor blocker azilsartan compared with that of candesartan
日本医薬情報センター(JAPIC)「医薬品インタビューフォーム アジルサルタン錠・アジルサルタン顆粒(2025年9月改訂 第21版)」
MedlinePlus Azilsartan: MedlinePlus Drug Information
Kidney Disease: Improving Global Outcomes(KDIGO) Executive summary of the KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease: known knowns and known unknowns
American Heart Association Home Blood Pressure Monitoring
特定非営利活動法人 日本高血圧学会「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子」
National Center for Biotechnology Information Azilsartan
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「患者向医薬品ガイド アジルバ錠10mg・アジルバ錠20mg・アジルバ錠40mg・アジルバ顆粒1%(2025年9月更新)」
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「アジルバ錠10mg・アジルバ錠20mg・アジルバ錠40mg・アジルバ顆粒1%(2025年9月改訂 第6版) 添付文書」


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