高血圧性心疾患とは?症状・原因・治療をわかりやすく解説

高血圧性心疾患とは?症状・原因・治療をわかりやすく解説

高血圧が長年続くと、心臓に大きな負担がかかり続け、やがて心臓の形や働きに変化が起こります。

これが「高血圧性心疾患」です。

心臓の壁が厚くなったり、心臓が硬くなったり、心臓が血液を送り出す力が弱くなったりといった変化が徐々に進んでいきます。

最終的には心不全や狭心症、不整脈といった深刻な病気につながることもあります。

高血圧性心疾患とは
  • 長期間の高血圧で心臓に負担が蓄積して起こる病気
  • 初期は自覚症状がほとんどない場合が多い
  • 放置すると左室肥大から心不全・狭心症・不整脈などへ進行する
  • 血圧の高さだけでなく高血圧が続いた年数もリスク要因

高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、ほとんど自覚症状がないまま進行するため、多くの方が気づかないうちに心臓がダメージを受けていることがあります。

しかし、早い段階で見つけて適切な治療を行えば、病気の進行を遅らせることができ、治療内容や期間によっては心臓の肥大が改善することもあります。

本記事では、高血圧性心疾患とはどのような病気なのか、どんな症状が出るのか、何が原因なのか、どのような検査で見つけるのか、そして治療方法や毎日の生活でできる予防策について、できるだけわかりやすく解説します。

高血圧を指摘されている方、ご家族に高血圧の方がいる方、または心臓の健康が気になる方のお役に立てれば幸いです。

この記事でわかること
  • 高血圧性心疾患とはどのような病気か
  • どのような症状が現れるのか
  • 原因と病気になりやすい要因
  • 診断のために行われる検査
  • 治療方法と日常生活でできる予防策
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧性心疾患は心臓の壁が厚くなり働きが悪くなる病気

高血圧性心疾患とは、長い間高血圧が続くことで心臓の形や働きに変化が起きる病気の総称です。

血圧が高い状態が続くと、心臓は高い圧力に逆らって血液を全身に送り出さなければならず、そのために大きな負担がかかります。

この負担が長く続くことで、心臓の筋肉が厚くなったり、心臓が硬くなったり、最終的には心臓が血液を送り出す力が弱くなったりします。

高血圧性心疾患には、左室肥大(心臓の壁が厚くなること)、心不全、狭心症、不整脈など、いろいろな病気が含まれます。

これらは一つだけ起こることもあれば、いくつかが同時に起こることもあります。

心臓は全身に血液を送る大切な臓器ですので、高血圧性心疾患が進むと、日常生活に大きな支障が出たり、命に関わる病気につながったりすることもあります。

ただし、適切に血圧を管理して治療を受ければ、これらの変化が進むのを遅らせることができます。

血圧が高いと心臓が過剰に働き、徐々に疲弊していく

血圧が正常であれば、心臓は比較的楽に血液を送り出すことができます。

しかし、血圧が高い状態が続くと、心臓はより強い力で血液を押し出さなければなりません。

これは、例えるなら、軽い荷物を運ぶのと重い荷物を運び続けるのとの違いに似ています。

最初のうち、心臓は高い圧力に対抗するために筋肉を厚くすることで適応しようとします。

これを医学的には「左室肥大」と呼びます。

心臓の左側の部屋(左心室)の壁が厚くなることで、一時的には強い力で血液を送り出すことができるようになります。

しかし、この状態が長く続くと、心臓の筋肉は徐々に硬くなり、柔らかさを失っていきます。

心臓が十分に広がることができなくなると、血液を心臓に溜める力が低下します。

さらに進むと、心臓が血液を送り出す力そのものが弱まり、全身に十分な血液を送れなくなります。

この状態が心不全です。

左室肥大・心不全・狭心症などが代表的な病気

高血圧性心疾患には、いくつかの代表的な病気が含まれます。

高血圧性心疾患の主な病気

病気特徴症状
左室肥大心臓の左心室の壁が厚くなった状態初期は無症状のことが多い
心不全心臓が血液を送り出す力が低下した状態息切れ、むくみ、疲れやすさ
狭心症心臓の筋肉への血流が不足する状態胸の痛みや圧迫感
不整脈心臓の鼓動のリズムが乱れる状態動悸、めまい、失神

左室肥大は最も早い段階で現れる変化で、心臓の左心室という部屋の壁が厚くなった状態です。

心電図や心エコー検査(心臓の超音波検査)で見つかることが多く、この段階ではまだ症状がないことがほとんどです。

しかし、心臓の壁が厚くなっていると、将来的に心不全や不整脈、突然死の危険性が高まることが研究で示されています(リスクの程度は個人により異なります)。

心不全は、心臓が血液を送り出す力が低下し、全身に十分な血液を送れなくなった状態です。

高血圧性心疾患では、心臓の壁が厚く硬くなって起こる「心臓が広がりにくくなるタイプ」と、心臓の筋肉が弱くなって起こる「心臓が縮む力が弱くなるタイプ」の両方が起こる可能性があります。

狭心症や心筋虚血も高血圧性心疾患でよく見られる症状です。

心臓の筋肉が厚くなると、心臓自身に酸素と栄養を運ぶ血管(冠動脈)からの血液が相対的に足りなくなります。

特に運動時など心臓の酸素が必要な時に、十分な酸素が届かないと、胸の痛みや圧迫感といった症状が現れることがあります。

また、高血圧性心疾患では心房細動などの不整脈も起こりやすくなります。

これは、心臓の形が変わったり、心房が大きくなったりすることで、心臓の電気信号の伝わり方に異常が生じるためです。

息切れ・動悸・むくみが高血圧性心疾患の主な症状

高血圧性心疾患の症状は、病気がどのくらい進んでいるかによって大きく変わります。

初期には全く症状がないことも多く、健康診断や他の理由で行った検査で偶然見つかることも珍しくありません。

これが高血圧性心疾患の怖いところで、自覚症状がないまま心臓のダメージが溜まっていくため、「気づいたときには既に進んでいた」というケースが少なくありません。

症状が出始めるのは、通常、心臓の働きが低下し始めてからで、最初は運動したときだけ感じる軽い症状から始まり、だんだんと何もしていないときにも症状が出るようになります。

症状の種類や強さは人によってかなり違い、同じくらい心臓が変化していても、強い症状を感じる方もいれば、ほとんど症状がない方もいます。

しかし、どのような症状であっても、それらは心臓からの大切なサインですので、早めに病院を受診することが大切です。

初期は息切れ、疲れやすさを感じることがある

高血圧性心疾患の初期の症状は、日常生活の中で少しずつ現れてきます。

初期に現れることがある症状
  • 階段や坂道での息切れ
  • 少し歩いただけで疲れを感じる
  • 運動後の動悸(心臓の鼓動を強く感じる)
  • 以前より疲れやすくなった
  • 軽いめまいやふらつき

最も多いのが、運動したときの息切れです。

以前は問題なく上れた階段や坂道で息が切れるようになったり、少し歩いただけで疲れを感じたりするようになります。

動悸(心臓の鼓動を強く感じること)も初期によく見られる症状です。

特に階段を上った後や運動した後に、心臓がドキドキと強く打つのを感じることがあります。

また、横になったときに動悸を感じやすくなる方もいます。

疲れやすさも特徴的な症状で、以前と同じことをしているのに、より疲れやすくなったと感じることがあります。

これは、心臓が血液を送り出す力が低下し始めているため、全身の組織に十分な酸素が届きにくくなっていることが原因です。

軽いめまいやふらつきを感じる方もいます。

これは、心臓から十分な血液が送り出されないことで、脳への血液が一時的に足りなくなるためです。

進行すると安静時の呼吸困難や胸の痛みが現れる

病気が進むと、症状はより目立つようになり、日常生活に大きな影響を及ぼすようになります。

段階ごとの主な症状

症状の段階主な症状特徴
初期運動時の息切れ、疲れやすさ階段や坂道で症状が出る
進行期安静時の呼吸困難、むくみ何もしていないときにも症状が出る
重症起座呼吸、夜間呼吸困難、胸痛横になると息苦しい、夜中に目が覚める

安静時の呼吸困難は、心不全が進んだサインです。

何もしていないときや、じっと座っているときでも息苦しさを感じるようになります。

特に横になると息苦しくなり座ると楽になる「起座呼吸」や、夜間に突然息苦しくなって目が覚める「発作性夜間呼吸困難」といった症状は、心不全の特徴的な症状です。

胸の痛みや胸の圧迫感が現れることもあります。

これは心臓の筋肉への血液が足りなくなる狭心症の症状で、多くの場合、運動したときや階段を上るときなど、心臓に負担がかかるときに起こります。

痛みは胸の真ん中や左側に感じられ、多くは数分程度続きます。

ただし、痛みが15分以上続く場合は速やかに受診が必要です。

むくみも進行期の重要な症状です。

最初は足首や足の甲にむくみが現れ、靴がきつく感じられることがあります。

病状が進むと、むくみは足全体やふくらはぎに広がり、ひどい場合にはお腹にも水が溜まることがあります。

むくみは特に夕方や夜に悪化し、朝には軽くなることが多いです。

咳やゼーゼーという音(喘鳴)が出ることもあります。

これは、肺に血液が溜まることで起こる症状で、特に横になったときや夜間に悪化しやすいです。

また、不整脈による症状として、心臓の鼓動が速くなったり不規則になったりする感覚、めまい、失神などが起こることがあります。

重症の場合には、突然死の危険性も高まります。

長年の高血圧と塩分過多・運動不足が主なリスク要因

高血圧性心疾患の最大の原因は、言うまでもなく長く続く高血圧です。

しかし、その背景にはさまざまな要因が関係しています。

高血圧そのものも、遺伝と生活習慣が複雑に関わって起こります。

塩分の摂りすぎ、運動不足、肥満、ストレスなどは高血圧の主なリスク要因です。

さらに、高血圧以外にも、糖尿病、脂質異常症、喫煙、お酒の飲みすぎなど、心臓や血管に悪い影響を及ぼす危険な要因が重なることで、高血圧性心疾患になる危険性は相乗的に高まります。

これらの危険な要因の多くは、生活習慣を改善することで管理できるものですが、逆に言えば、不健康な生活習慣を続けることで、危険性が確実に溜まっていくということでもあります。

高血圧性心疾患を予防するには、これらの危険な要因を理解し、できるだけ多くの要因をコントロールすることが大切です。

収縮期血圧140mmHg以上の状態が数年続くと発症リスクが高まる

高血圧性心疾患になるかどうかには、血圧の高さとそれが続く期間の両方が関係しています。

WHO日本の基準では、診察室での収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上の状態が続くと高血圧と診断され、心臓への負担が溜まっていきます。

※mmHg(ミリメートルエイチジー)は血圧を測る単位で、水銀柱ミリメートルの略です。

血圧の高さとリスク

血圧の上昇リスクの増加
115/75mmHgから20mmHg上昇するごと心血管疾患による死亡リスクが約2倍(40-69歳での研究に基づく)

研究によると、収縮期血圧が115/75mmHgを超えて20mmHg上がるごとに、心臓や血管の病気で亡くなる危険性が約2倍になることがわかっています。

また、血圧が高い状態が長く続くほど、心臓の形が変わりやすくなります。

特に注意が必要なのは、高血圧に気づいていない方、あるいは治療を受けていない方です。

高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるように、ほとんど自覚症状がないまま進行するため、知らないうちに心臓に深刻なダメージが溜まっていることがあります。

高血圧の原因の大部分は、はっきりとした原因がわからない「本態性高血圧」です。

これは、遺伝と環境(生活習慣)が複雑に絡み合って起こると考えられています。

残りの5〜10%程度は、腎臓の病気やホルモンの異常などが原因で起こる「二次性高血圧」です。

肥満・喫煙・糖尿病・家族歴もリスク要因になる

高血圧性心疾患になりやすくする要因は、高血圧以外にもたくさんあります。

高血圧性心疾患の主なリスク要因

生活習慣に関わるもの

  • 塩分の摂りすぎ(1日10g以上)
  • 運動不足
  • 肥満
  • 喫煙
  • お酒の飲みすぎ
  • ストレス

病気に関わるもの

  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 慢性腎臓病

変えられないもの

  • 年齢(65歳以上)
  • 性別(男性、閉経後の女性)
  • 家族歴

塩分の摂りすぎは、高血圧の主な危険因子です。

塩分を摂りすぎると、体の中に水分が溜まりやすくなり、血液の量が増えて血圧が上がります。

日本人の平均的な塩分摂取量は1日約9.6グラムですが、世界保健機関(WHO)は1日5グラム未満を勧めています。

肥満も大切な危険因子です。

体重が増えると、全身に血液を送るために心臓はより強く働かなければならず、血圧も上がりやすくなります。

さらに、肥満は高血圧とは別に心臓に負担をかけることがわかっています。

従来、肥満は全身性高血圧と同様に後負荷増加に反応して起こると考えられてきましたが、肥満は血圧とは無関係に左室肥大と関連していることがエビデンスによって実証されています。

引用:PubMed Central The Role of Obesity in the Development of Left Ventricular Hypertrophy Among Children and Adolescents

運動不足は、高血圧の危険性を高めるだけでなく、肥満や糖尿病など他の危険因子も増やします。

定期的に運動することは血圧を下げる効果があり、心臓の健康を保つために欠かせません。

喫煙は、血管を縮ませて血圧を上げるとともに、動脈硬化を進めます。

タバコを吸う方は吸わない方に比べて心臓や血管の病気になる危険性がかなり高いことが多くの研究でわかっています。

糖尿病があると、高血圧性心疾患になる危険性がさらに高まります。

糖尿病は血管にダメージを与え、高血圧と相まって心臓への負担を増やします。

糖尿病の罹患率と死亡率の主な原因は心血管疾患であり、高血圧によって悪化します。

引用:PubMed Central Diabetes, Hypertension, and Cardiovascular Disease: Clinical Insights and Vascular Mechanisms

慢性腎臓病も高血圧性心疾患と深く関係しています。

腎臓の働きが低下すると血圧の調節が難しくなり、さらに心臓への負担が増します。

年齢も無視できない要因で、年齢が上がるにつれて血管は硬くなり、高血圧になりやすくなります。

65歳以上の高齢者では心不全になる方が特に多くなります。

これは米国においてますます深刻な問題となっており、65歳以上の人口は2007年の4,000万人から2017年には5,100万人に増加し、2060年には9,500万人に達すると予測されています。

引用:American Heart Association Journals Targeting Age-Related Pathways in Heart Failure

性別では、男性の方が女性よりも高血圧性心疾患になりやすい傾向がありますが、閉経後の女性では危険性が上がります。

家族歴がある場合、遺伝によって高血圧や心臓・血管の病気になる危険性が高まる可能性があります。

お酒の飲みすぎも血圧を上げる要因となります。

適度な飲酒は問題ありませんが、飲みすぎは高血圧の危険性を高めます。

心電図・心エコー・血液検査で心臓の状態を調べる

高血圧性心疾患を診断するには、詳しい問診、診察、そしていろいろな検査が必要です。

早く見つけて適切に評価することが、治療方針を決めて、病気が進むのを防ぐ上でとても大切です。

診断では、まず高血圧があるかどうかとその程度を調べ、次に心臓にどのような変化が起きているかを調べます。

心臓の形の変化(心臓の壁が厚くなっているか、心房が大きくなっているかなど)や働きの変化(心臓が縮む力や広がる力が低下しているか)を詳しく調べることで、病気がどのくらい進んでいるかを把握し、適切な治療計画を立てることができます。

また、高血圧性心疾患と似た症状を示す他の心臓の病気(肥大型心筋症、心臓弁膜症、アミロイドーシスなど)と区別することも大切です。

これらの病気は治療法が違うため、正確な診断が必要不可欠です。

最近、画像診断の技術が進歩したことで、より早く、より詳しく心臓の変化を捉えられるようになってきています。

心臓の壁の厚さや動きを画像で確認できる

高血圧性心疾患を診断するには、いくつかの大切な検査が使われます。

検査名何がわかるか特徴
心電図心臓の電気的活動、不整脈、左室肥大の有無基本的な検査、短時間で実施可能
心エコー検査心臓の壁の厚さ、大きさ、動き、弁の状態最も重要な検査、左室肥大の検出率が高い
心臓MRI心臓の構造、心筋線維化最も正確だが費用が高い
胸部X線心臓の大きさ、肺のうっ血全体像を把握
血液検査腎機能、電解質、BNP(心不全マーカー)心臓への負担の程度を評価

心電図は、最も基本的な検査です。

心臓の電気的な活動を記録することで、心臓の壁が厚くなっているかどうかや不整脈があるかを確認できます。

心電図では、心臓の壁が厚くなっていることを示す特定の波形のパターンを見つけることができます。

ただし、心電図での検出率は低い傾向があり、特に軽度の場合は見逃される可能性があります。

心エコー検査(心臓の超音波検査)は、高血圧性心疾患を診断する上で最も大切な検査の一つです。

超音波を使って心臓の形や働きをリアルタイムで観察でき、心臓の壁の厚さ、心臓の大きさ、心臓の動き、弁の状態などを詳しく調べることができます。

心エコー検査は心電図よりも心臓の壁が厚くなっているのを見つけやすく、病状が進んでいる場合ほど高い確率で検出できます。

最近では、より進んだ心エコー技術により、従来の検査では見つけられなかった心臓の働きの細かい変化も捉えられるようになっています。

心臓MRI(心臓の磁気共鳴画像検査)は、心臓の形や働きを調べる最も正確な画像検査です。

心臓の重さを測る精度が高く、また心臓の筋肉が硬くなる変化を見つけるのにも優れています。

ただし、費用が高く、すべての病院で受けられるわけではないため、心エコー検査で診断がはっきりしない場合や、より詳しい評価が必要な場合に使われます。

胸のレントゲン検査では、心臓の大きさや形、肺に血液が溜まっているかどうかを確認できます。

血液検査では、腎臓の働き、電解質(ナトリウム、カリウムなど)、血糖値、脂質などを調べます。

また、BNPやNT-proBNPといった心不全のマーカーを測ることで、心臓への負担の程度を調べることができます。

定期検診で早期発見すれば進行を防げる可能性がある

高血圧性心疾患を早く見つけるには、定期的な健康診断がとても大切です。

血圧測定は最も基本的ですが大切な検査で、病院での測定に加えて、24時間血圧を測る検査や家庭での血圧測定を行うことで、より正確に血圧を評価できます。

病院で測った血圧だけでは、病院でだけ血圧が高くなる「白衣高血圧」や、病院では正常だが実際は高血圧である「仮面高血圧」を見逃す可能性があるためです。

早期発見のメリット
  • 心臓の壁が厚くなるのを遅らせることができる
  • 場合によっては改善させることもできる
  • 心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中など)のリスクを下げられる

健康診断で高血圧を指摘された場合や、心臓の壁が厚くなっている所見が見られた場合には、心エコー検査などのより詳しい検査を受けることが勧められます。

早く見つけて適切な治療を始めれば、心臓の壁が厚くなるのが進むのを遅らせたり、場合によっては改善させたりすることも可能性があります。

研究によると、適切な血圧の治療によって心臓の壁の厚さが改善した患者さんでは、心臓や血管の病気になる危険性が下がることがわかっています。

本メタアナリシスは、高血圧における心エコー図上のLVHの退縮は、様々な交絡因子を調整した後でも、心血管イベントの減少と関連していることを示唆している。

引用:PubMed Risk reduction after regression of echocardiographic left ventricular hypertrophy in hypertension: a meta-analysis

また、高血圧性心疾患になりやすい方(高血圧の家族がいる、肥満、糖尿病などの危険因子を持つ方)は、より若い年齢から定期的な検診を受けることが大切です。

降圧薬で血圧を下げ、減塩と適度な運動で予防する

高血圧性心疾患の治療は、血圧をコントロールすることを中心に、心臓への負担を軽くし、病気が進むのを防ぐことを目的としています。

治療にはお薬による治療と生活習慣の改善の両方が大切で、どちらか一方だけでは十分な効果が得られません。

お薬による治療では、患者さんの年齢、他の病気があるかどうか、血圧の高さなどを考えて、最適な血圧の薬を選びます。

多くの場合、複数のお薬を組み合わせることで、より効果的に血圧をコントロールできます。

一方、生活習慣の改善は、お薬の効果を高めるだけでなく、お薬の量を減らしたり、場合によってはお薬が必要なくなったりする可能性もあります。

さらに、生活習慣の改善は、高血圧だけでなく、糖尿病や脂質異常症など、他の心臓や血管の危険因子の改善にもつながります。

治療の目標は、単に血圧を下げることだけでなく、心臓の働きを維持し、心不全や心筋梗塞、脳卒中といった重大な病気を予防することです。

そのためには、医師の指示に従って継続的に治療を受けることが何よりも大切です。

薬物療法で心臓への負担を軽減し、症状の悪化を防ぐ

高血圧性心疾患の治療において、血圧を適切にコントロールすることが最も大切です。

現在、主に使われる血圧の薬には以下の種類があります。

高血圧性心疾患の治療に使用される主な薬

薬の種類働き主な効果特に適している方
ACE阻害薬血圧を上げるホルモンの生成を抑える心臓の肥大改善心不全、糖尿病、慢性腎臓病の方
ARB血圧を上げるホルモンの働きをブロックACE阻害薬と同様ACE阻害薬で咳が出る方
カルシウム拮抗薬血管を広げる降圧効果が強い、脳卒中予防高齢者、日本人
利尿薬体内の水分と塩分を減らす体液量を減らす心不全を伴う方
β遮断薬心拍数を減らす心臓への負担軽減心筋梗塞後、心不全の方

ACE阻害薬(エース阻害薬)は、血圧を上げるホルモンであるアンジオテンシンIIができるのを抑えます。

ACE阻害薬は血圧を下げるだけでなく、心臓の形が変わるのを抑え、心臓の壁が厚くなるのを改善する効果があることが多くの研究でわかっています。

心不全の患者さんや糖尿病の患者さん、慢性腎臓病の患者さんに特に有効とされています。

ARB(エーアールビー)は、アンジオテンシンIIの働きを直接ブロックします。

効果はACE阻害薬と似ていますが、ACE阻害薬の主な副作用である空咳が起こりにくいため、ACE阻害薬で咳が問題になる患者さんの代わりのお薬として使われることが多いです。

カルシウム拮抗薬は、血管の筋肉にカルシウムが入るのを抑え、血管を広げて血圧を下げます。

血圧を下げる効果が強く、研究では脳卒中の予防にも有用であることが示されています。

高齢者や日本人を含むアジア人では特に効果的とされています。

利尿薬は、腎臓からの塩分と水分の排出を促し、体の中の水分量を減らすことで血圧を下げます。

特にサイアザイド系利尿薬は、長年にわたって高血圧治療の基本的なお薬として使われています。

心不全も一緒にある場合には、ループ利尿薬が使われることもあります。

β遮断薬(ベータ遮断薬)は、心拍数を減らし、心臓が縮む力を弱めることで心臓への負担を軽減します。

心筋梗塞の後の患者さんや心不全の患者さんに特に有用です。

多くの患者さんでは、一つのお薬だけでは十分に血圧をコントロールできないため、異なる働きをする複数のお薬を組み合わせて使うことが一般的です。

研究によると、高血圧の治療を受けている成人の70%以上が、最終的には2種類以上の血圧の薬が必要になるとされています。

原発性高血圧症の治療を受ける成人の 70 % 以上は、最終的には少なくとも 2 種類の降圧剤が必要になります。

引用:American Academy of Family Physicians Managing Hypertension Using Combination Therapy

治療の目標となる血圧の値は、年齢や他の病気によって違いますが、多くのガイドラインでは上の血圧を130mmHg未満、下の血圧を80mmHg未満を目指します。

ただし、高齢者や特定の病気がある場合には、もう少し緩やかな目標が設定されることもあります。

1日の塩分を6g未満に抑え、週3回以上の有酸素運動が効果的

お薬による治療と並んで、生活習慣の改善は高血圧性心疾患の治療と予防においてとても大切です。

生活習慣の改善項目

改善項目具体的な目標期待される効果
塩分制限1日6g未満血圧を2-8mmHg低下
運動週150分以上の中等度の有酸素運動血圧を4-9mmHg低下
体重管理適正体重の維持1kg減で血圧1mmHg低下
禁煙完全禁煙動脈硬化の予防
節酒男性1日2ドリンク以下、女性1日1ドリンク以下
※1ドリンク=純アルコール約10-14g相当
血圧上昇の予防

塩分を減らすことは、最も効果的な生活習慣改善の一つです。

世界保健機関(WHO)は、1日の塩分摂取量を5グラム未満に抑えることを勧めています。

日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧の患者さんの塩分摂取目標を1日6グラム未満としています。

塩分を減らすことで、上の血圧を2-8mmHg程度下げる効果が期待できます(効果には個人差があります)。

塩分を減らす具体的な方法
  • 加工食品や外食を控える
  • 料理の味付けを薄くする
  • 減塩の調味料を使う
  • カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂る

具体的には、加工食品や外食を控え、料理の味付けを薄くし、減塩の調味料を使うことが勧められます。

また、カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂ることで、ナトリウム(塩分)の排出を促すことができます。

定期的な運動も血圧を下げる効果があります。

米国心臓協会は、週に少なくとも150分の中くらいの強さの有酸素運動(速歩、水泳、サイクリングなど)、または週75分の激しい有酸素運動を勧めています。

定期的な運動により、上の血圧を4-9mmHg程度下げる効果が期待でき、心臓の働きを改善し、体重管理にも役立ちます。

体重管理も大切です。

肥満の方が体重を減らすことで、血圧が大きく改善することがあります。

研究では、体重を1kg減らすごとに、血圧が約1mmHg下がることが示されています。

体重減少1kgあたりで血圧低下は、収縮期血圧で−1.05 mmHg(95% CI、−1.43~−0.66)、拡張期血圧で−0.92 mmHg(95% CI、−1.28~−0.55)でした。

引用:American Heart Association Journals Influence of Weight Reduction on Blood Pressure: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials

禁煙は必須です。

喫煙は血管を縮ませ、動脈硬化を進めるため、心臓や血管の病気になる危険性を大幅に高めます。

お酒の制限も推奨されます。

飲みすぎは血圧を上げるため、男性では1日2ドリンク以下、女性では1日1ドリンク以下(1ドリンク=純アルコール約10-14g相当)に制限することが望ましいとされています。

ストレスへの対処も見逃せません。

長く続くストレスは血圧を上げる可能性があるため、リラックスする方法や適度な休息を取り入れることが有益です。

DASH食(ダッシュ食:高血圧を防ぐ食事法)を取り入れることも効果的です。

これは、野菜、果物、全粒穀物、低脂肪の乳製品を多く摂り、飽和脂肪酸やコレステロールを控える食事のパターンで、血圧を大きく下げる効果があることが研究でわかっています。

これらの生活習慣改善を複数組み合わせることで、大きな降圧効果が得られる可能性があります。

研究によると、DASH食に加えて、塩分を減らす、お酒を控える、体重を減らす、有酸素運動をするといった複数の生活習慣改善を組み合わせた高血圧の患者さんでは、上の血圧が14.2mmHg、下の血圧が7.4mmHg下がったという報告があります。

PREMIER試験では、アルコールと塩分の制限、減量、有酸素運動を組み合わせたDASHダイエットにより、高血圧患者の血圧が14.2/7.4mmHg低下し、高血圧の有病率が6か月間で38%から12%に低下したことが明らかになりました。

引用:PubMed Central Hypertension and lifestyle modification: how useful are the guidelines?

よくある質問(FAQ)

高血圧性心疾患は治りますか

完全に治すことは難しいですが、適切な治療と生活習慣の改善により、病気が進むのを遅らせたり、症状を良くしたりすることは可能性があります。

早く見つけて治療を始めれば、心臓の肥大(壁が厚くなること)が改善することもあります。

血圧の薬は一生飲み続けなければいけませんか

多くの場合、長く飲み続ける必要がありますが、生活習慣を大きく改善することで、薬の量を減らせたり、場合によっては中止できたりする可能性もあります。

ただし、医師の指示なく自分の判断で薬をやめることは危険です。

高血圧があっても症状がなければ大丈夫ですか

いいえ、高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるように、症状がなくても心臓や血管に確実にダメージを与えています。

症状が出る頃には既に重大な変化が起きていることが多いため、症状があるかどうかに関わらず治療が必要です。

塩分を減らす以外に食事で気をつけることは

野菜や果物を多く摂り、カリウムを十分に摂ること、飽和脂肪酸やコレステロールを控えること、適切なカロリー摂取で体重を管理することが大切です。

DASH食(ダッシュ食)と呼ばれる食事のパターンが勧められています。

運動はどのくらいすればよいですか

週に150分程度の中くらいの強さの有酸素運動(速歩など)が勧められています。

これを週3回以上に分けて行うのが効果的です。

ただし、既に心臓の病気がある場合は、運動を始める前に医師に相談することが大切です。

まとめ

高血圧性心疾患は、長い間高血圧が続くことで心臓の形や働きに変化が起きる病気です。

初期には症状がないことが多いですが、進むと息切れ、動悸、むくみ、胸の痛みといった症状が現れ、最終的には心不全や重い病気につながる可能性があります。

最大の原因は長く続く高血圧ですが、塩分の摂りすぎ、肥満、運動不足、喫煙、糖尿病なども大切な危険因子です。

診断には心電図、心エコー検査、血液検査などが使われ、定期的な健康診断で早く見つけることが大切です。

治療は、ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、利尿薬などの血圧の薬と、塩分を減らすこと(1日6グラム未満)、定期的な運動(週150分以上)、体重管理、禁煙といった生活習慣の改善を組み合わせて行います。

高血圧性心疾患は予防できる病気です。

血圧を定期的に測り、高血圧を早く見つけて適切に治療すること、そして健康的な生活習慣を続けることが、心臓を守る最善の方法です。

気になる症状がある場合や、健康診断で高血圧を指摘された場合には、早めに病院を受診することをお勧めします。

参考文献・参考サイト

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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