温泉は血圧に影響する?高血圧でも安全に楽しむための入浴方法と注意点

温泉は血圧に影響する?高血圧でも安全に楽しむための入浴方法と注意点

温泉は日本人にとって身近な癒しの時間ですが、高血圧の方にとっては血圧への影響が気になるところです。

実は温泉や入浴では血圧が大きく変動することがあり、特に注意が必要です。

厚生労働省の人口動態統計によると、家庭や居住施設の浴槽で溺れて亡くなった65歳以上の高齢者は令和4年に5,824人にのぼり、交通事故による死亡者数の約2倍という深刻な状況です。

この背景には、入浴時の急激な血圧の変動が主な要因の一つとして考えられており、特に冬場の入浴中の事故死は年間約19,000人と推計され、その多くが「ヒートショック」と呼ばれる急激な血圧変動によるものとされています。

温泉が血圧に与える影響
  • 温泉入浴では血管が広がり、入浴中は血圧が一時的に下がりやすい
  • 浴槽から出た直後や寒暖差があると、血圧が急上昇・急低下しやすい
  • 42℃以上の熱い湯や長湯は交感神経を刺激し、血圧変動を大きくする
  • 41℃以下のぬるめ・短時間入浴なら血圧を穏やかに下げる可能性がある
  • 入浴前血圧160/100mmHg以上ではリスクが高まる

しかし、正しい知識を持って適切な方法で入浴すれば、高血圧の方でも安全に温泉を楽しむことができます。

むしろ研究では、適切な温度と時間での温泉入浴は血管を広げて血圧を穏やかに下げる効果があることが報告されています。

問題となるのは、熱すぎるお湯、長すぎる入浴時間、そして急激な温度変化です。

これらを避けることで、温泉の健康効果を安全に受け取ることができるのです。

この記事では、温泉が血圧に与える影響のしくみから、高血圧の方が安全に入浴するための具体的な方法まで、医学的根拠に基づいて解説します。

入浴前に確認すべき血圧の基準、おすすめのお湯の温度と入浴時間、脱衣所と浴室の温度管理の方法など、今日から実践できる具体的なポイントをお伝えします。

この記事でわかること
  • 温泉に入ると血圧がどのように変化するのか
  • 高血圧の人が温泉に入るときに注意すべきこと
  • 血圧への影響を抑えた安全な入浴方法
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

温泉に入ると血圧は一時的に下がるが、その後上昇する

温泉や入浴時の血圧の変化は、多くの方が想像する以上に複雑です。

入浴前、入浴中、お風呂から上がった後と、それぞれの段階で血圧は異なる動きを見せ、時には10〜20以上もの変動が起こることがあります。

血圧計で測る数値でいうと、上の血圧が120から140に上がったり、逆に100に下がったりすることもあるのです。

特に高血圧の方や高齢者では、この血圧の変動が心臓や脳の血管に大きな負担をかける可能性があるため、正確なしくみを理解することが重要です。

海外の研究では、入浴による血圧の変動は、薬で治療中の高血圧患者でも健康な人と同じくらい起こることがわかっており、薬を飲んでいても油断は禁物です。

ここでは、入浴中に体の中で何が起きているのか、なぜ血圧が変動するのかを、わかりやすく詳しく解説していきます。

このしくみを知ることで、後で説明する安全な入浴方法の重要性がより深く理解できるでしょう。

入浴時の血圧変化の流れ

タイミング血管の状態血圧の変化理由
脱衣所に移動収縮(縮む)上昇寒さで体温を保とうとする
入浴直後拡張(広がる)低下または上昇温かさで血管が広がるが、熱い湯では上昇することも
浴槽から出る収縮(縮む)急上昇温度差で血管が縮む

入浴直後は血管が広がって血圧が下がる

温かいお湯につかると、体温が上がって全身の血管が広がります。

血管が広がると血液の通り道が広くなるため、血液が流れやすくなり、血圧が下がります。

これはホースの口を広げると水の勢いが弱くなるのと同じ原理です。

日本人の高齢者を対象とした研究では、40.6℃のお湯に入った後、中心収縮期血圧が平均13下がったことが報告されています。

入浴後の中心収縮期血圧の低下(N=20、140.7±26.7から127.7±18.4 mmHg、低下:13.0±22.6 mmHg、P=0.019)は、上腕収縮期血圧と拡張期血圧の同等の低下(N=28、収縮期/拡張期血圧139.1±21.0/80.3±14.4から131.1±16.2/72.0±10.7 mmHg、低下:それぞれ8.0±17.5/8.3±9.6 mmHg、P=0.023およびP<0.001)よりも大きかった。

引用:PubMed Reduction in central blood pressure after bathing in hot water

この血管が広がる反応には、熱による直接的な効果のほか、体の中で作られる特別な物質が関わっています。

温かさの刺激によって血管の内側から「一酸化窒素」という物質が出てきて、血管の壁を緩めることで血管が広がります。

また、入浴中は心臓の鼓動が速くなり、体内での血液の巡りが変化することで、さらに血管が広がりやすくなります。

ただし、この物質の影響の大きさはお湯の温度や入浴時間により変わります。

カナダの研究では、40℃のお湯に10分間つかった場合、薬で治療中の高血圧の患者さんでも、血圧が正常な人と同じくらい血圧が下がることがわかっています。

高血圧治療を受けている被験者では、温水浴槽に10分間浸かると血圧が低下しますが、正常血圧の対照群と同程度の低下しか見られません。

引用:PubMed Central Are hot tubs safe for people with treated hypertension?

お湯から出ると血管が縮んで血圧が急上昇する

浴槽から出ると血圧が急激に変動することがあります。

寒い脱衣所に移動すると血管が縮んで血圧が上がる一方、温度や姿勢の変化により血圧が急に下がることもあります。

特に熱い湯に入った後は、出浴直後に血圧が20以上低下する場合があり、めまいや立ちくらみを起こす可能性があります。

特に冬場は、暖房の効いた部屋と寒い脱衣所・浴室の温度差が10℃以上になることもあります。

この急激な温度の変化が、血圧の激しい上がり下がりを引き起こす主な原因となります。

実際、入浴関連の事故の多く(約80%)が11月から4月の寒い時期に起きていることが報告されています。

この現象は「起立性低血圧」と似た状態で、水圧の消失と姿勢変化により血液が下半身に溜まり、脳への血流が一時的に減るためです。

特に降圧薬を服用している方ではよく起こります。

熱い湯ほど血圧の変動が大きくなる

お湯の温度は血圧の変動に大きく影響します。

日本の高齢者を対象とした研究では、皮膚の温度が1℃上がるごとに上の血圧が2.4上がり、心臓の鼓動が1分間に約3回増えることがわかっています。

皮膚温度が1℃上昇すると、収縮期血圧が2.41mmHg(95%信頼区間[CI]:2.03~2.79)上昇し、脈拍数が2.99bpm(95% CI:2.66~3.32)増加するという有意な関連が認められた。

引用:PubMed Central Blood pressure, pulse rate, and skin temperature during hot-water bathing in real-world settings among community-dwelling older adults: the HEIJO-KYO Study

42℃以上の熱いお湯は、体を興奮させる神経を刺激して血圧を上げることがあります。

一方、41℃以下のぬるめのお湯は体をリラックスさせる神経を働かせ、落ち着いた気分をもたらしながら穏やかに血圧を下げる可能性があります。

ニュージーランドの研究でも、40℃のお湯に20〜40分間入った後、24時間にわたって上の血圧が6〜7下がったことが報告されています。

お湯の温度と血圧への影響

お湯の温度体への影響血圧の変化
42℃以上交感神経を刺激(興奮)上昇することがある
41℃以下副交感神経を刺激(リラックス)穏やかに低下
36.5℃体温に近い穏やかに低下

温泉の成分も影響を与える可能性があります。

特に炭酸ガスを含む温泉は、同じ温度でも通常のお湯より血管を広げる作用が強いことが研究で示されています。

ただし、血圧への影響には、お湯の温度と入浴時間も大きく関わっています。

高血圧の人は長湯・熱い湯・急な温度変化に注意が必要

高血圧の方にとって、入浴は良い面と悪い面の両方があります。

適切な方法で行えば血圧を下げる効果が期待できる一方、間違った入浴方法は命に関わる事故につながる可能性があります。

高血圧の状態が続くと血管に負担がかかり、血管が硬くなる動脈硬化が進むため、健康な人よりも血圧の急激な変動による影響を受けやすくなっています。

日本の研究では、お風呂に入る前の血圧が高いほど、お風呂での事故のリスクが大きく増えることがわかっています。

また、血圧を下げる薬を飲んでいる方は、薬の効果と入浴による血圧低下が重なって血圧が下がりすぎることもあるため、より注意深く対応する必要があります。

ここでは、高血圧の方が特に注意すべき3つのポイントについて、具体的な数値の基準とともにわかりやすく解説します。

これらの注意点を守ることが、安全に入浴を楽しむための第一歩となります。

血圧が160/100以上のときは入浴を控える

日本の訪問入浴サービスでの調査では、入浴前の上の血圧が160以上の場合、入浴中の体調不良との関連が3.63倍、下の血圧が100以上の場合は14.71倍という結果が報告されています。

入浴を控える目安となる血圧
  • 上の血圧(収縮期血圧)が160mmHg以上
  • 下の血圧(拡張期血圧)が100mmHg以上
  • めまい、動悸、息切れなどの症状がある時

このため、一部の介護施設や訪問入浴サービスでは、血圧が160/100以上の場合は入浴を見合わせることがあります。

血圧がこの基準を超えている場合は、まず医師に相談し、血圧を下げる治療を適切に行ってからお風呂に入ることが勧められています。

また、体調が優れない時、特にめまい、動悸、息切れなどの症状がある時は、血圧の数値にかかわらず入浴を控えるべきです。

これらの症状は、すでに心臓や血管に負担がかかっているサインかもしれません。

42度以上の熱い湯や10分以上の長湯は避ける

熱いお湯は体を興奮させる神経を刺激し、血圧が上がることがあります。

前述の研究では、42℃以上の熱いお湯は心臓への負担が大きくなる可能性が示されています。

そのため41℃以下のぬるめの温度を選ぶことが重要です。

入浴時間も重要です。

日本の政府資料によると、高齢者がお風呂に入る時間を10分以内、お湯の温度を41℃以下にすることを推奨しています。

長時間の入浴は体温が上がりすぎることを招き、心臓への負担を大きくする可能性があります。

40℃のお湯に60分間つかる実験では、10分を過ぎたあたりから血圧の低下、心臓の鼓動数と皮膚への血流の増加、体温の上昇が目立つようになることがわかっています。

これは心臓と血管に大きな負担がかかっている状態といえます。

避けるべき入浴方法
  • お湯の温度が41℃を超える熱い湯
  • 入浴時間が10分以上
  • 肩まで浸かる全身浴を長時間続ける
  • 体調が悪い時の無理な入浴

脱衣所と浴室の温度差が大きいと血圧が急変する

急激な温度の変化は「ヒートショック」と呼ばれる健康被害を引き起こす可能性があります。

ヒートショックとは、温度の急激な変化によって血圧が激しく上がったり下がったりして、気を失ったり心筋梗塞や脳卒中を起こしたりする現象です。

厚生労働科学研究(平成24-25年度) では、入浴中の急死者数は年間約19,000人と推計されており、交通事故で亡くなる方の数を大きく上回っています。

温度差が大きい場所への移動はリスクが高まります。

暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動すると血管が縮んで血圧が上がり、その後温かい浴室に入ると血管が広がって血圧が急に下がります。

このような血圧の激しい上がり下がりが、心臓や脳の血管に大きな負担をかけるのです。

ヒートショックが起こる流れ
  1. 暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動 → 血管が縮んで血圧上昇
  2. 寒い脱衣所で衣服を脱ぐ → さらに血圧が上昇
  3. 温かい浴槽に入る → 血管が広がり血圧が急降下
  4. 浴槽から出て寒い脱衣所へ → 再び血圧が急上昇

高血圧でも安全に温泉を楽しむための5つのポイント

ここまでお風呂に入る時の血圧の変化のしくみと注意すべきリスクについて説明してきましたが、適切な対策を行えば高血圧の方でも安全に温泉を楽しむことができます。

重要なのは、血圧の急激な変動を避けることです。

そのためには、お湯の温度管理、入浴時間のコントロール、水分補給、温度差の解消、そして体を段階的に温めることの5つのポイントが欠かせません。

これらは決して難しいことではなく、少しの工夫と意識で実践できるものばかりです。

実際、温泉医学や高血圧の専門家たちも、これらの方法を勧めています。

海外の研究でも、適切な温度と時間でのお風呂は血圧の管理に役立つことが繰り返し報告されています。

ここでは、科学的な根拠に基づいた具体的な入浴方法を、すぐに実践できる形でお伝えします。

これらのポイントを守ることで、温泉による癒しの効果を安全に得ることができるでしょう。

高血圧の方が安全に入浴するための5つのポイント
  1. 41℃以下のぬるめのお湯に10分程度つかる
  2. 入浴前後にコップ1杯の水を飲む
  3. かけ湯で体を段階的に温める
  4. 脱衣所と浴室を事前に暖めておく
  5. 浴槽から出る時はゆっくり立ち上がる

41度以下のぬるめの湯に10分以内が目安

高血圧の方におすすめのお湯の温度は41℃以下です。

この温度は少しぬるめに感じるかもしれませんが、体をリラックスさせる神経を働かせて落ち着いた気分をもたらし、血管を穏やかに広げてくれます。

ニュージーランドの研究では、36.5℃の体温に近いお湯でも、40分程度つかることで40℃のお湯と同じように24時間後の血圧を下げる効果が認められています。

高血圧患者における温水浸漬では、収縮期血圧の臨床的に意味のある低下が明らかであり、これらの効果は浸漬時間(20 分対 40 分)や水温(36.5 ℃対 40 ℃)に関係なく存在しました。

引用:PubMed Central Both hot- and thermoneutral-water immersion reduce 24-h blood pressure in people with hypertension: A randomized crossover study

お風呂に入る時間は10分以内が適切です。

日本の高齢者を対象とした研究では、夜の温泉入浴と翌朝の血圧低下との関連性が示唆されていますが、これも適切な温度と時間でお風呂に入ることが前提となっています。

半身浴もおすすめの方法です。

肩までつかる全身浴では水圧で心臓や肺に負担がかかりますが、みぞおちの下までつかる半身浴なら水圧による負担を減らすことができます。

ただし、半身浴でも長時間の入浴は避け、10分以内を目安にしましょう。

高血圧の方におすすめの入浴方法

項目推奨される方法理由
お湯の温度41℃以下体をリラックスさせ、血圧を穏やかに下げる
入浴時間5〜10分程度心臓への負担を最小限に抑える
入浴方法半身浴(みぞおちの下まで)水圧による心臓への負担を減らす
入浴時刻夜間がおすすめ翌朝の血圧低下効果が期待できる

入浴前後にコップ1杯の水を飲む

お風呂に入っている間は汗や体の表面から水分が失われ、血液の水分が減って血液が濃くなります。

体が水分不足の状態になると血液の濃さが上がり、血液がドロドロになって血流が悪くなる可能性があります。

お風呂に入る前にコップ1杯(約200ml)の水分を取ることで、お風呂に入っている間の水分不足を防ぐことができます。

また、お風呂から上がった後も同じように水分補給を行うことで、体の中の水分バランスを整えることができます。

水分補給をする時は、常温または温かい飲み物がおすすめです。

冷たい飲み物は温まった体を急に冷やし、胃や腸に負担をかける可能性があります。

また、アルコールは尿が出やすくなる作用があり、水分不足を助長するため避けるべきです。

水分補給のポイント

タイミングおすすめの飲み物
入浴前コップ1杯(約200ml)常温の水、白湯
入浴後コップ1杯(約200ml)常温の水、白湯
避けるべき飲み物
  • 冷たい飲み物(胃腸に負担をかける)
  • アルコール(利尿作用で水分不足を助長する)
  • 甘い飲み物(血糖値が上がる)

かけ湯で体を慣らしてから入る

いきなり浴槽に入ると、温度の差による血圧の急な変動が起こりやすくなります。

これを防ぐため、お風呂に入る前には必ずかけ湯をして、体をお湯の温度に慣らしましょう。

かけ湯は心臓から遠い部位から始めるのが一般的です。

足先→膝→太もも→腰→お腹→肩→胸の順に、徐々に心臓に近づけていくとよいでしょう。

この方法により、体が段階的に温度の変化に慣れていきます。

かけ湯の順序
  1. 足先にかける
  2. 膝にかける
  3. 太ももにかける
  4. 腰にかける
  5. お腹にかける
  6. 肩にかける
  7. 胸にかける

また、脱衣所と浴室を事前に暖めておくことも重要です。

脱衣所にはヒーターを置き、浴室はお風呂に入る前にシャワーのお湯を流したり、浴槽の蓋を開けておいたりして蒸気で温めておくとよいでしょう。

これにより部屋との温度差を小さくし、ヒートショックのリスクを減らすことができます。

温度差を小さくする工夫
  • 脱衣所にヒーターを置いて暖める
  • 入浴前にシャワーで浴室を温める
  • 浴槽の蓋を開けて蒸気で浴室を温める
  • リビングと脱衣所・浴室の温度差をできるだけ小さくする

よくある質問

温泉に入ると血圧は上がりますか、下がりますか

お風呂に入るタイミングによって変化します。

温かいお湯につかると血管が広がり血圧は下がりますが、浴槽から出て寒い場所に移動すると血管が縮んで血圧は急に上がる可能性があります。

全体としては適切な方法でお風呂に入れば、お風呂から上がった後、数時間にわたって血圧が下がる傾向が研究で報告されています。

高血圧で薬を飲んでいますが、温泉に入っても大丈夫ですか

降圧薬を飲んでいる方は、薬の効果とお風呂による血圧低下が重なり、血圧が下がりすぎることがあります。

お風呂に入る前に血圧を測り、160/100以上の場合は入浴を控え、医師に相談することをおすすめします。

薬でコントロールされている場合でも、長湯や熱すぎる湯は避け、体調に異変を感じたら無理せず入浴を中止してください。

食後や飲酒後の温泉は避けたほうがよいですか

はい、避けるべきです。

食後は一時的に血圧が下がることがあり、その状態でお風呂に入ると血圧の変動が大きくなる可能性があります。

また、アルコールには血管を広げる作用があり、お風呂による血圧低下と重なって急激な血圧低下を引き起こすことがあります。

食後は1〜2時間程度空けてからお風呂に入りましょう。

まとめ

温泉は血圧を一時的に下げる効果がありますが、入り方を間違えると急激な血圧の変動を引き起こし、心臓や脳に大きな負担をかける可能性があります。

特に高血圧の方は、以下のポイントを守って安全に温泉を楽しみましょう。

安全な入浴のためのチェックリスト
  • お風呂に入る前に血圧を測り、160/100以上の場合は入浴を控える
  • お湯の温度は41℃以下のぬるめに設定する
  • 入浴時間は10分以内に抑える
  • 脱衣所と浴室を事前に暖めて温度差を小さくする
  • お風呂に入る前と入った後にコップ1杯の水分補給を行う
  • かけ湯で体を段階的に温めてから入る
  • 浴槽から出る時はゆっくり立ち上がる

これらの注意点を守れば、高血圧の方でも温泉による健康効果を安全に得ることができます。

体調が優れない時や、めまい・動悸などの症状がある時は無理にお風呂に入らず、医師に相談することが大切です。

日頃から血圧のコントロールをしっかり行い、適切な生活習慣を心がけることで、より安全に温泉を楽しむことができます。

参考文献・参考サイト

消費者庁 コラムVol.4 冬に増加する高齢者の事故に注意! ー 入浴中の溺水事故

警察庁交通局「令和4年における交通事故 の発生状況について

PubMed Reduction in central blood pressure after bathing in hot water

PubMed Central Passive heat therapy improves cutaneous microvascular function in sedentary humans via improved nitric oxide-dependent dilation

PubMed Central Are hot tubs safe for people with treated hypertension?

福岡県 ヒートショックを予防しましょう

PubMed Central Blood pressure, pulse rate, and skin temperature during hot-water bathing in real-world settings among community-dwelling older adults: the HEIJO-KYO Study

PubMed Central Both hot- and thermoneutral-water immersion reduce 24-h blood pressure in people with hypertension: A randomized crossover study

PubMed Central Acute vascular effects of carbonated warm water lower leg immersion in healthy young adults

J-STAGE「入浴介護に関連した体調不良・事故発生と入浴前血圧, 体温との関連:症例対照研究

政府広報オンライン 交通事故死の約3倍?!冬の入浴中の事故に要注意!

PubMed Human cardiovascular responses to a 60-min bath at 40 degrees C

厚生労働省「浴室内の死亡として報告された事例についての検討

PubMed Central Night-Time Hot Spring Bathing Is Associated with a Lower Systolic Blood Pressure among Japanese Older Adults: A Single-Institution Retrospective Cohort Study

九州大学学術情報リポジトリ「入浴の人体に及ぼす生理的影響 : 安全な入浴をめざ して

この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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