女性の高血圧の原因とは?年代別の特徴と女性ホルモンとの関係をわかりやすく解説

女性の高血圧の原因とは?年代別の特徴と女性ホルモンとの関係をわかりやすく解説

「健康診断で血圧が高めと言われた」「最近、頭痛やめまいが気になる」

そんな経験はありませんか?

高血圧というと中高年の男性に多いイメージがあるかもしれません。

でも実は、女性にも高血圧になりやすい時期や原因があるのです。

特に60代以降は、男性よりも女性の方が高血圧になりやすいことがわかっています。

アメリカで行われた大規模な健康調査によると、75歳以上の女性の約8割が高血圧だったというデータがあります。

また、閉経後の女性では約4人に3人が高血圧になるともいわれています。

高齢になると、女性の方が男性よりも血圧が高くなる傾向があるのです。

女性の高血圧の原因
  • 閉経によるエストロゲン減少で血管が硬くなり血圧が上がりやすくなる
  • ピル(経口避妊薬)の服用で血圧を上げるしくみが活発になる
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があると高血圧リスクが高まる
  • 更年期の内臓脂肪型肥満により血圧を上げるホルモンが増加する
  • 加齢による動脈硬化で血管が硬くなり上の血圧が高くなりやすい

では、なぜ女性は年齢とともに高血圧になりやすくなるのでしょうか。

その大きな理由の一つが「女性ホルモン」の変化です。

女性ホルモンには血管をしなやかに保ち、血圧を安定させる働きがあります。

閉経を迎えると女性ホルモンが減るため、血管が硬くなりやすく、血圧も上がりやすくなるのです。

ただし、女性の高血圧の原因は閉経だけではありません。

20〜30代の若い世代でも、ピル(飲み薬タイプの避妊薬)を飲んでいたり、「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)」という婦人科の病気があったりすると、血圧が上がることがあります。

また、妊娠中に血圧が上がる「妊娠高血圧症候群」は、お母さんと赤ちゃんの両方に影響を与える重大な病気で、妊婦さんの約5〜10%に起こるとされています。

高血圧は「静かな殺し屋」とも呼ばれます。

自分では気づかないうちに進行し、ある日突然、脳卒中や心臓病といった命に関わる病気を引き起こすことがあるからです。

女性の場合、高血圧による心不全や脳卒中のリスクは男性よりも高いという報告もあり、決して他人事ではありません。

でも、安心してください。

高血圧は予防できますし、すでに高血圧になっていても改善できることが多いのです。

食事や運動などの生活習慣を見直すことで血圧を下げることができますし、早めに気づいて対処すれば、深刻な病気を防ぐことができます。

この記事では、女性が高血圧になりやすい原因を年代ごとにわかりやすく解説します。

また、日常生活でできる予防・改善のコツや、病院に行くべきタイミングについてもお伝えします。

ご自身やご家族の健康管理にぜひお役立てください。

この記事でわかること
  • 女性ホルモンと血圧の関係
  • 20代・30代・40代・50代・60代以降、それぞれの年代で気をつけたいこと
  • 妊娠中に起こりやすい高血圧のリスクと注意点
  • 今日からできる高血圧の予防法・改善法
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

女性の高血圧は「女性ホルモンの減少」が大きな原因になる

女性の血圧は、人生の中で大きく変化します。

若い頃は同じ年齢の男性よりも血圧が低いことが多いのですが、60歳前後を境に状況が変わります。

閉経を迎える頃から血圧が上がり始め、60歳以降で男性と逆転し、それ以降は女性の方が高くなることも珍しくありません。

この変化には、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が深く関わっています。

研究によると、閉経すると高血圧になるリスクが約2倍に高まるとされています。

閉経後の女性では、約4人に3人が高血圧になるというデータもあります(米国の調査に基づく)。

なぜ閉経するとこれほど血圧が上がりやすくなるのでしょうか。

それは、エストロゲンに「血管を守る力」があるからです。

エストロゲンは血管を広げてしなやかに保ち、血圧が上がるのを防いでくれています。

閉経によってエストロゲンが減ると、この守りが弱くなり、血管が硬くなったり縮みやすくなったりして、血圧が上がりやすくなるのです。

ここでは、エストロゲンがどのように血圧を調整しているのか、そして閉経後になぜ血圧が上がりやすくなるのかを、詳しくご説明します。

女性ホルモン(エストロゲン)には血管を広げて血圧を下げる働きがある

女性ホルモンの代表格である「エストロゲン」には、血管を広げる働きがあります。

エストロゲンは血管の内側の壁に働きかけて、血管をリラックスさせる物質を作り出すよう促します

血管がリラックスすると広がりやすくなり、血液がスムーズに流れるようになります。

その結果、血圧が適切な範囲に保たれるのです。

また、私たちの体には血圧を調整するしくみがいくつかあります。

その中の一つに、血管を縮めて血圧を上げる働きをするものがあるのですが、エストロゲンはこのしくみの働きを抑える方向に作用すると考えられています。

つまり、エストロゲンのおかげで、血圧が必要以上に上がらないように調整されているのです。

女性ホルモン、特にエストロゲンは、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を調節し、腎臓、心臓、血管系だけでなく中枢神経系(CNS)にも作用して心血管機能に有益な効果をもたらすことが実証されています。

引用:American Physiological Society Journal Sex differences in angiotensin II- and aldosterone-induced hypertension: the central protective effects of estrogen

さらに、エストロゲンには血管の老化を抑制する可能性があると考えられています。

血管は年齢とともに傷つきやすくなりますが、エストロゲンはこのダメージを軽くして、血管の健康を守ってくれているのです。

このように、閉経前の女性はエストロゲンのおかげで血管がしなやかに保たれ、血圧が上がりにくい状態にあります。

これが、若い女性は男性よりも高血圧が少ない理由の一つなのです。

【エストロゲンが血圧を守る3つの働き】

働き具体的な効果
血管を広げる血管の内側に働きかけ、血管をリラックスさせる物質の産生を促す
血圧上昇にブレーキをかける血管を縮めるしくみが働きすぎないように抑制する
血管の老化を防ぐ血管へのダメージを軽減し、血管の健康を維持する

閉経後にエストロゲンが減ると血圧が上がりやすくなる

閉経を迎えると、卵巣からのエストロゲンの分泌が急激に減ります。

すると、これまでエストロゲンに守られていた血管の状態が変化し、血圧が上がりやすくなります。

閉経後に起こる体の変化
  • 血管の内側の働きが低下し、血管が広がりにくくなる
  • 血圧を上げるしくみが活発になり、血管が縮みやすくなる
  • 自律神経のバランスが変わり、心臓がドキドキしたり血圧が上がったりしやすくなる
  • 代謝が落ちて体重が増えやすくなり、肥満が血圧上昇に拍車をかける

研究によると、閉経後の女性は塩分の影響を受けやすくなることがわかっています。

つまり、同じ量の塩分をとっても、閉経前よりも血圧が上がりやすくなるのです。

これは、エストロゲンの減少による体内の塩分調節の変化が一因と考えられています。

また、閉経後は夜寝ている間も血圧が下がりにくくなることが報告されています。

通常、夜は血圧が10%程度下がるのが正常ですが、この低下が見られないと、心臓や血管に負担がかかり続け、脳卒中や心臓病のリスクが高まる可能性があります。

年代別に見る女性の高血圧の原因と注意点

女性の高血圧は、年代によって原因が違います。

女性の体はホルモンバランスの変化や、妊娠・出産といったライフイベントの影響を受けやすいため、それぞれの時期に合った対策を知っておくことが大切です。

20〜30代の若い世代では、ピル(飲み薬タイプの避妊薬)を使っていたり、「多嚢胞性卵巣症候群」という婦人科の病気があったりすることが、高血圧の原因になることがあります。

この年代の高血圧は比較的少ないのですが、見逃されやすいので注意が必要です。

40〜50代になると、更年期によるホルモンの急激な変化が加わります。

女性ホルモンが減るだけでなく、代謝が落ちて体重が増えやすくなったり、ストレスや睡眠の問題が出てきたりと、血圧に影響する要因が重なりやすい時期です。

60代以降は、年齢とともに血管が硬くなる「動脈硬化」が主な原因になります。

この年代では高血圧の人の割合が男性を上回り、糖尿病や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)を一緒に持っている人も多くなります。

ここでは、それぞれの年代で特に気をつけたいことを詳しく解説します。

【年代別・女性の高血圧の主な原因】

年代主な原因特徴
20〜30代ピルの服用、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)発症率は低いが見逃されやすい
40〜50代更年期によるホルモン減少、体重増加複数の要因が重なりやすい
60代以降動脈硬化、加齢による血管の変化女性の約7割以上が高血圧に

20〜30代はピルの服用や多嚢胞性卵巣症候群が原因になることがある

若い女性の高血圧は、男性に比べると少ないのですが、注意が必要なケースがあります。

特に「ピル」の服用と「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」は、若い女性に特有の高血圧の原因として知られています。

ピルと血圧の関係

ピルには女性ホルモンの成分が含まれています。

この成分が体の中で血圧を上げるしくみを活発にしてしまうことがあり、その結果、血圧が上がる可能性があります。

研究によると、ピルを飲んでいる人は、飲んでいない人に比べて高血圧になるリスクが約1.5倍になるという報告があります。

4年間の追跡調査の後、OCP 現在および過去に OCP を使用していた人では、高血圧発症リスクがそれぞれ 1.9 倍 (95% 信頼区間 1.6~2.4)、1.2 倍 (95% 信頼区間 1.1~1.5) 高かった。

引用:American Heart Association Journals Oral Contraceptive Pills and Hypertension: A Review of Current Evidence and Recommendations

ただし、現在広く使われている低用量ピル(ホルモンの量が少ないタイプ)では、血圧への影響は比較的小さいとされています。

ピルを飲んでいる方は、定期的に血圧を測る習慣をつけましょう。

もし上の血圧が140以上、または下の血圧が90以上になったら、医師に相談することをおすすめします(ガイドラインにより基準は異なります)。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と高血圧

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、若い女性に多い婦人科の病気です。

PCOSのある女性は、そうでない女性に比べて高血圧になるリスクが約1.3〜1.7倍高いとされています。

さらに、太っていたり、血糖値が高めだったりすると、リスクはもっと高くなります。

PCOSの主な症状
  • 生理不順(生理が来ない、周期が不規則など)
  • 妊娠しにくい
  • ニキビができやすい
  • 毛深くなる(顔や体に毛が濃くなる)

ある大規模な研究では、PCOSの女性は体重や年齢、糖尿病の有無を考慮しても、高血圧になるリスクが37%高かったと報告されています。

PCOSと診断されている方は、若いうちから定期的に血圧をチェックし、バランスの良い食事や適度な運動を心がけることが大切です。

40〜50代は更年期によるホルモン減少と体重増加が重なりやすい

40〜50代は、多くの女性にとって更年期を迎える時期です。

この時期は、女性ホルモンが減るだけでなく、いろいろな要因が重なって血圧が上がりやすくなります。

更年期の症状と血圧の関係

更年期に多い症状として、急に顔がほてったり、のぼせたりする「ホットフラッシュ」があります。

実はこのホットフラッシュと血圧には関連があることがわかっています。

ホットフラッシュを経験する女性は、血管の変化を示すマーカーとなる可能性があり、高血圧との関連が報告されています。

特に、ホットフラッシュが頻繁に起こる方、症状が強い方、長期間続く方は、より注意が必要かもしれません。

体重増加の影響

更年期になると、基礎代謝(じっとしていても消費されるエネルギー)が落ちるため、体重が増えやすくなります。

特にお腹周りに脂肪がつきやすくなる「内臓脂肪型肥満」は、高血圧と深く関係しています。

太っている女性は、やせている女性に比べて、血圧を上げるホルモンの量が多いことがわかっています。

女性の場合、ウエストが90cm以上(欧米の基準では88cm以上)になると、高血圧を含む心臓や血管の病気のリスクが高まるとされています。

ホルモン補充療法と血圧

更年期の症状を和らげるために、女性ホルモンを薬で補う「ホルモン補充療法」を受けている方もいらっしゃるでしょう。

この治療と血圧の関係はやや複雑です。

飲み薬タイプのホルモン剤は血圧を上げる可能性がある一方、貼り薬タイプ(皮膚から吸収されるもの)では血圧への影響が少ないという研究結果があります。

錠剤の形で治療を受けた女性は、局所的にエストロゲンを使用した女性に比べて高血圧を発症するリスクが14%高く、膣クリームや坐剤を使用した女性に比べて19%高いことが分かった。

引用:American Heart Association Oral estrogen therapy for menopause may increase high blood pressure risk

ホルモン補充療法を受けている方や、これから始めようと考えている方は、血圧への影響について医師とよく相談してください。

【40〜50代で血圧に影響する主な要因】

要因血圧への影響
女性ホルモンの減少血管が硬くなり、血圧が上がりやすくなる
ホットフラッシュ頻繁・長期間続く場合、高血圧リスクが上がる可能性
体重増加(特に内臓脂肪)血圧を上げるホルモンが増加
ホルモン補充療法(飲み薬)血圧を上げる可能性がある

60代以降は女性の約7割が高血圧になるというデータがある

60代以降になると、女性の高血圧の割合は男性を上回る傾向が報告されています。

アメリカの調査では、60歳以上の女性の75%以上が高血圧で、75歳以上では約78%に達するというデータがあります。

この年代の高血圧には、いくつかの特徴があります。

上の血圧だけが高くなりやすい

年齢を重ねると、太い血管が硬くなります。

これが「動脈硬化」です。

血管が硬くなると、心臓が血液を送り出すときの圧力(上の血圧)が高くなりやすくなります。

下の血圧は正常なのに上の血圧だけが高い状態を「収縮期高血圧」といいます。

「上だけ高いなら大丈夫」と思われがちですが、この状態でも脳卒中や心臓病のリスクは高まるため、治療が必要です。

薬を飲んでも血圧が下がりにくいことがある

高齢の女性では、血圧の薬を飲んでいても目標の数値まで下がりにくいケースが多いことが報告されています。

ある研究では、高血圧の高齢女性のうち、血圧がしっかりコントロールできているのはわずか36%程度でした。

64.3%が薬物治療を受け、高血圧女性のうち血圧がコントロールされていたのはわずか36.1%で、最高齢群では血圧コントロール率が低かった。

引用:American Heart Association Journals Hypertension and Its Treatment in Postmenopausal Women

これは、高齢女性の高血圧がいろいろな原因(血管の硬さ、塩分への敏感さ、自律神経の変化など)が複雑に絡み合っているためと考えられています。

他の病気と一緒に起こりやすい

60代以降は、糖尿病やコレステロールの異常、腎臓の病気などを一緒に持っていることが多くなります。

これらの病気は高血圧と影響し合い、心臓病や脳卒中のリスクをさらに高めます。

定期的に健康診断を受けて、複数の病気をまとめて管理することが大切です。

【60代以降の高血圧の特徴】

特徴詳細
上の血圧だけが高い(収縮期高血圧)動脈硬化により血管が硬くなることが原因
薬が効きにくい複数の原因が絡み合い、約36%しかコントロールできていない
他の病気を合併しやすい糖尿病、脂質異常症、腎臓病などと一緒に起こりやすい

妊娠中の高血圧「妊娠高血圧症候群」は母子ともにリスクがある

妊娠中に血圧が高くなる状態を「妊娠高血圧症候群」と呼びます。

すべての妊婦さんの約5〜10%に起こるとされており、近年は高齢出産や肥満の増加に伴って、発症する人が増えています。

妊娠高血圧症候群は、お母さんと赤ちゃんの両方に深刻な影響を与える可能性があります。

お母さんでは脳卒中、肝臓や腎臓の障害、けいれん発作などが起こることがあります。

赤ちゃんでは、発育が遅れたり、早産になったり、最悪の場合は命に関わることもあります。

アメリカの疾病予防管理センター(CDC)によると、妊娠高血圧症候群は妊産婦が亡くなる原因の約7%を占めています。

ただし、妊娠高血圧症候群は、きちんと管理すれば重症化を防ぐことができます。

定期的に妊婦健診を受けて、血圧の変化に注意を払うことが大切です。

リスクが高い方には、予防のために低用量のアスピリンを飲むことが勧められる場合もあります。

さらに、妊娠高血圧症候群の影響は出産後も続くことがあります。

妊娠中に血圧が高くなった女性は、将来的に高血圧や心臓病、脳卒中になりやすいことがわかっています。

ここでは、妊娠高血圧症候群の種類、なりやすい人の特徴、そして出産後の注意点について詳しく解説します。

妊娠20週以降に血圧が上がる「妊娠高血圧」「妊娠高血圧腎症」とは

妊娠高血圧症候群にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が違います。

【妊娠高血圧症候群の種類】

種類特徴
妊娠高血圧妊娠20週以降に高血圧が現れる(尿タンパクなし)。出産後12週以内に正常化することが多い
妊娠高血圧腎症(子癇前症)高血圧+尿タンパク、または臓器障害を伴う。全妊娠の約2〜8%で発症
子癇(しかん)妊娠高血圧腎症+けいれん発作。緊急治療が必要
加重型妊娠高血圧腎症もともと高血圧がある人が妊娠中に妊娠高血圧腎症を発症

妊娠高血圧

妊娠20週(5か月)以降に、それまで血圧が正常だった方に高血圧が現れた状態です。

尿にタンパクは出ません。

多くの場合、出産後12週以内に血圧は正常に戻りますが、将来的に高血圧になりやすくなります。

妊娠高血圧腎症(子癇前症)

妊娠20週以降に高血圧と尿にタンパクが出る状態が見られるものです。

尿にタンパクが出ていなくても、血液を固める成分が減っている、腎臓や肝臓の働きが悪くなっている、むくみがひどい、目がかすむ、頭痛が続くなどの症状があれば、妊娠高血圧腎症と診断されることがあります。

すべての妊娠の約2〜8%で起こり、重症化するとお母さんと赤ちゃんの両方の命に関わる危険な状態になる可能性があります。

子癇(しかん)

妊娠高血圧腎症に加えて、けいれん発作を起こした状態です。

緊急事態であり、すぐに治療が必要です。

加重型妊娠高血圧腎症

もともと高血圧がある方が、妊娠中に妊娠高血圧腎症を発症した状態です。

初産・35歳以上・肥満の方は妊娠高血圧症候群になりやすい

妊娠高血圧症候群になりやすい要因として、次のようなものが知られています。

妊娠高血圧症候群のリスク要因
  • 初めての妊娠である
  • 35〜40歳以上での妊娠
  • 肥満(BMIが35以上)
  • 以前の妊娠で妊娠高血圧症候群になったことがある
  • 家族に妊娠高血圧症候群の人がいる
  • もともと高血圧・腎臓病・糖尿病がある
  • 体外受精で妊娠した
  • 双子以上を妊娠している
  • 自己免疫の病気がある

妊娠高血圧症候群の予防として、リスクが高い妊婦さんには妊娠12週以降から低用量アスピリンを飲むことが勧められる場合があります。

また、適切な体重管理と定期的な妊婦健診がとても大切です。

すぐに病院を受診すべき症状
  • 頭痛が続く
  • 目がかすむ
  • 顔や手がパンパンにむくむ
  • みぞおちのあたりが痛い

妊娠中に高血圧になった人は出産後も注意が必要

妊娠高血圧症候群は、出産すると良くなることが多いのですが、将来の健康への影響が続くことがわかっています。

研究によると、妊娠高血圧症候群を経験した女性は、経験していない女性に比べて、将来高血圧になるリスクが高く心臓病や脳卒中のリスクも約2倍高いとされています。

また、妊娠高血圧症候群の経験がある女性がエストロゲン含有ピルを使用する場合、高血圧のリスクがさらに高まる可能性が示唆されているため、使用前に医師と相談することが重要です。

妊娠中に血圧が高くなった方は、出産後も定期的に血圧を測り、健康的な生活を心がけることが大切です。

次の妊娠を考えている場合は、医師と相談しながら体調を整えていきましょう。

【妊娠高血圧症候群を経験した方の将来のリスク】

リスク詳細
将来の高血圧経験していない女性より高い
心臓病・脳卒中約2倍のリスク
ピル使用時の高血圧より早く(3か月以内に)発症する可能性

女性が高血圧を予防・改善するために今日からできること

高血圧は予防できますし、すでに血圧が高い方も改善できることが多い病気です。

必ずしも薬を飲まなくても、生活習慣を見直すだけで血圧が正常に戻ることもあります。

国際的な専門家の指針でも、生活習慣の改善は高血圧の予防・治療の基本とされています。

研究によると、いくつかの生活習慣を同時に改善すると、血圧の薬1種類を飲んだのと同じくらいの効果が期待できるそうです。

たとえば、野菜・果物・低脂肪乳製品を中心とした食事(DASH食)で上の血圧を6〜11程度下げることができ、さらに減塩を組み合わせると大きな低下が得られることもあります。

生活習慣を改善すると、血圧を下げる以外にもいいことがたくさんあります。

糖尿病やコレステロールの異常を防いだり、体重を管理しやすくなったり、ストレスが軽くなったりと、体全体の健康につながります。

すでに薬を飲んでいる方も、生活習慣の改善を一緒に行うことで、薬の効き目がよくなったり、薬の量を減らせたりする可能性があります。

特に女性の場合、閉経後は塩分の影響を受けやすくなるため、減塩の効果が出やすいです

また、運動による血圧低下の効果も期待できます。

ここでは、今日から実践できる具体的な対策と、病院に行くべきタイミングについてお伝えします。

減塩・適度な運動・体重管理が血圧を下げるカギになる

【高血圧の予防・改善に効果的な生活習慣】

対策具体的な目標期待できる効果
減塩1日6g未満閉経後は特に効果が出やすい
運動週150分以上の有酸素運動上の血圧 約8、下の血圧 約5 低下
体重管理体重を5〜10%減らす血圧低下+他の健康効果も
節酒女性は1日アルコール10〜15g程度までビール350ml缶1本程度が目安
禁煙完全にやめる血管へのダメージを防ぐ

塩分を減らす

塩分のとりすぎは、血圧を上げる大きな原因の一つです。

特に閉経後の女性は塩分の影響を受けやすいため、減塩の効果が出やすいといえます。

1日の塩分は6g未満に抑えることが勧められていますが、 厚生労働省の「令和5年 国民健康・栄養調査」によると日本人女性の平均は約9gとされており、まだまだ減らす余地があります。

加工食品や外食には塩分がたくさん含まれていることが多いので、買い物のときに栄養成分表示をチェックする習慣をつけましょう。

味付けには、塩の代わりにレモンや酢、香辛料を使うのもおすすめです。

適度な運動をする

定期的に体を動かすと、血圧を下げる効果があります。

ウォーキング、水泳、自転車こぎなどの有酸素運動を、1週間に合計150分以上(たとえば1日30分を週5日)行うことが勧められています。

研究によると、運動を続けると、高血圧の人は上の血圧が約8、下の血圧が約5下がるとされています。

閉経後の女性を対象にした研究では、有酸素運動と筋トレを組み合わせることで、血管のしなやかさが改善し、血圧が下がったと報告されています。

系統的レビューとメタアナリシスは、高血圧の閉経後女性において、運動トレーニングが動脈硬化を改善し、血圧を低下させる可能性を示唆しました。

引用:PubMed Central Effectiveness of exercise training on arterial stiffness and blood pressure among postmenopausal women: a systematic review and meta-analysis

体重を管理する

適正な体重を維持することは、血圧管理においてとても大切です。

体重を5〜10%減らすだけでも血圧が下がることが研究で示されています。

適度な体重減少(5~10%)も収縮期血圧と拡張期血圧、HDLコレステロールの改善に関連しています。

引用:PubMed Central Weight Loss and Improvement in Comorbidity: Differences at 5%, 10%, 15%, and Over

BMI(体重[kg]÷身長[m]÷身長[m]で計算)が25以上の方は、まずは無理のない範囲で少しずつ体重を落とすことを目標にしましょう。

急激なダイエットよりも、バランスの良い食事と運動を組み合わせて、長く続けられる方法がおすすめです。

その他のポイント

お酒は控えめにしましょう。

女性の場合、1日のアルコール量は10〜14g程度(ビールなら350ml缶1本くらい)までが目安です。

ただし、少量の飲酒でも血圧への影響はゼロではないため、できるだけ少なくすることが望ましいとされています。

タバコは血圧を上げるだけでなく、血管を傷つけて動脈硬化を進めてしまうので、禁煙をおすすめします。

また、野菜・果物・低脂肪の乳製品をたっぷりとる「DASH食」という食事法は、血圧を下げるのに効果的であることが知られています。

定期的に血圧を測り、気になる数値があれば早めに受診する

高血圧は「静かな殺し屋」とも呼ばれます。

自分では気づかないうちに進行し、ある日突然、脳卒中や心臓病として現れることがあるからです。

だからこそ、定期的に血圧を測ることがとても大切です。

家で血圧を測る大切さ

病院で測る血圧だけでなく、家で測る血圧も大切です。

特に更年期の女性は血圧が変動しやすいことがあります。

病院では正常なのに家では高い(これを「仮面高血圧」といいます)、逆に病院では高いのに家では正常(「白衣高血圧」といいます)というケースがあります。

家庭用の血圧計を使って、毎日決まった時間朝起きてトイレを済ませた後と、夜寝る前に測る習慣をつけましょう。

家庭での血圧測定のポイント
  • 毎日決まった時間に測る(朝と夜の2回がおすすめ)
  • 朝は起きてトイレを済ませた後、朝食前に測る
  • 夜は寝る前に測る
  • 測定前は1〜2分座って安静にする
  • 測った数値は記録しておく

病院に行く目安

家で測った血圧が、上の血圧135以上、または下の血圧85以上が続く場合は、病院を受診しましょう(日本・欧州の基準)。

なお、一部のガイドラインでは130/80以上を高血圧とする場合もあります。

また、健康診断で高血圧と言われた方、妊娠中に血圧が高くなった経験がある方、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や更年期の症状がある方は、積極的に血圧を管理していくことをおすすめします。

高血圧はきちんと治療すれば、脳卒中や心臓病のリスクを大きく減らすことができます。

【病院を受診する目安】

状況目安
家庭血圧上の血圧135以上、または下の血圧85以上が続く
(日本・欧州基準。米国など一部では130/80以上)
診察室血圧上の血圧140以上、または下の血圧90以上
(日本・欧州基準。米国など一部では130/80以上)
その他健診で指摘された、妊娠高血圧症候群の経験がある、PCOSや更年期症状がある

よくある質問

閉経すると必ず高血圧になりますか

閉経したからといって、必ず高血圧になるわけではありません。

ただ、閉経後は高血圧になりやすくなるのは事実です。

バランスの良い食事、適度な運動、適正体重の維持といった生活習慣に気をつけることで、高血圧のリスクを下げることができます。

ピル(経口避妊薬)を飲んでいると血圧に影響がありますか

ピルに含まれる女性ホルモンの成分は、血圧を上げる可能性があります。

特に昔のピル(ホルモンの量が多いタイプ)ではその傾向が強かったのですが、今使われている低用量ピルでは影響は比較的小さいとされています。

ピルを飲んでいる間は定期的に血圧を測り、高くなったら医師に相談しましょう。

すでに高血圧がある方は、ピル以外の避妊法を検討することも一つの方法です。

妊娠高血圧症候群は出産後に治りますか

多くの場合、妊娠高血圧症候群は出産後12週以内に良くなります。

ただし、一度経験すると、将来的に高血圧や心臓病、脳卒中になりやすいことがわかっています。

出産後も定期的に血圧を測り、健康的な生活を続けることが大切です。

出産後に「激しい頭痛が続く」「目がかすむ」「息が苦しい」「胸が痛い」といった症状があれば、すぐに病院を受診してください。

まとめ

女性の高血圧は、年代やライフステージによって原因が異なります。

若い世代ではピルの服用や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、妊娠中は妊娠高血圧症候群、更年期以降は女性ホルモンの減少が主な原因になります。

特に閉経後は高血圧の人が急増し、60代以降では女性の約7割以上が高血圧になるというデータもあります。

でも、高血圧は予防も改善もできる病気です。

塩分を減らす、適度に運動する、体重を管理するといった生活習慣の見直しは、どの年代でも効果的です。

また、定期的に血圧を測ることで、早めに気づいて対処することができます。

ご自身の年代やライフステージに合った対策をすることで、高血圧やその合併症を防ぎ、健康な毎日を送ることができます。

血圧が気になる方、高血圧と診断された方は、ぜひ一度お近くの医療機関にご相談ください。

参考文献・参考サイト

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この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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