高血圧とうつの関係を解説!両方ある場合の対処法も紹介

高血圧とうつの関係を解説!両方ある場合の対処法も紹介

高血圧の治療を続けている中で気分が落ち込んだり、逆にうつ病の症状があって血圧が高くなってきたりと、この2つの病気の関係に悩んでいる方は少なくありません。

実際に病院でも、高血圧とうつ病を同時に抱えている患者さんは珍しくありません。

そして、片方の病気がもう片方を悪化させてしまうことがわかってきています。

研究によると、うつの症状がある人は高血圧になるリスクが約42%高くなります。

また反対に、高血圧の患者さんの中にもうつの症状を抱える方が多いことが明らかになっています。

さらに心配なのは、両方の病気を同時に持っている場合です。

心臓や脳の血管の病気で亡くなるリスクが2.3倍に、全体として亡くなるリスクが1.7倍になるという深刻なデータがあります。

しかし、この関係性を正しく理解して適切に対処すれば、両方の病気をうまくコントロールすることは十分に可能です。

高血圧とうつの関係
  • うつ症状がある人は高血圧リスクが高く相互に影響し合う関係
  • 両方持つと心血管疾患や全体の死亡リスクが大幅に上昇する
  • 高血圧は脳血流変化や海馬萎縮を通じて気分の落ち込みを引き起こす
  • うつ病はストレスホルモン過剰分泌により血圧を上昇させる
  • 古い降圧薬は気分悪化の可能性、新しい薬は中立的か改善効果あり

高血圧がうつ病を引き起こす道筋としては、3つあります。

脳への血の流れが変わること、血圧を下げる薬の副作用、そして病気を抱えることによる心の負担です。

一方、うつ病が血圧を上げる仕組みとしては、生活のリズムが乱れることと、ストレスで体が常に緊張した状態になることの2つが関係しています。

この記事では、高血圧とうつ病がどのように関係しているのか、なぜお互いに影響し合うのか、そして両方の病気がある場合にどう対処すればよいのかを、できるだけわかりやすく解説します。

高血圧とうつ病は、適切な治療と生活習慣の見直しで、どちらも良い方向に向かう可能性があります。

すべてを完璧にする必要はなく、できることから少しずつ始めることが大切です。

まずはこの2つの病気の関係を正しく理解することから始めましょう。

この記事でわかること
  • 高血圧とうつ病がお互いに影響し合う仕組み
  • 高血圧がうつ病を引き起こす具体的な3つの理由
  • うつ病が血圧を上げてしまう2つの仕組み
  • 両方の病気がある場合の効果的な対処法と日常生活の工夫
  • 薬を選ぶときの注意点と医師とのコミュニケーションの大切さ
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧の人はうつ病になりやすく、うつ病の人は血圧が上がりやすい

高血圧とうつ病には深い関係があることが、世界中の研究で明らかになっています。

この2つの病気はただ同時に起こるだけでなく、お互いに悪影響を与え合います。

つまり、高血圧がうつ病を引き起こし、そのうつ病がまた血圧を上げてしまうという悪循環が生まれることがあるのです。

データで見る高血圧とうつ病の関係
  • うつ症状がある人は高血圧になるリスクが約42%高い
  • 高血圧の人の42.9%が気分の落ち込みを経験(高血圧がない人は37.5%)
  • 両方の病気を持つ場合、心臓・脳血管の病気による死亡リスクが2.3倍
  • 両方の病気を持つ場合、全体の死亡リスクが1.7倍
  • うつ症状がある高血圧患者は血圧コントロール不良のリスクが2.12倍

世界中で行われた大きな研究を見てみましょう。

うつの症状がある人は、そうでない人に比べて高血圧になる確率が約42%高くなることがわかっています。

特に、うつ病と診断されてから3年以内に高血圧になる人が多いという結果も出ています。

逆の関係も確認されています。

アメリカで行われた大規模な調査では、高血圧を持つ人の42.9%が気分の落ち込みを自己申告していました。

これは高血圧がない人の37.5%と比べると高い数字です。

もっと心配なのは、両方の病気を同時に持っている場合です。

ある研究によると、高血圧だけ、またはうつ病だけの人と比べて、心臓の病気や脳卒中で亡くなる危険性が2.3倍に、全体として亡くなる危険性が1.7倍になることが示されています。

高血圧とうつ病の併存は、いずれも併存しない患者と比較して、全死因死亡率が1.7倍(95%信頼区間(CI)1.3-2.1)、CVD死亡率が2.3倍(95%信頼区間(CI)1.4-3.7)増加した。

引用:PubMed Association of hypertension and depression with mortality: an exploratory study with interaction and mediation models

中国で行われた研究でも、うつ症状がある高血圧患者は、うつ症状がない患者と比べて、血圧コントロール不良のリスクが2.12倍高いことが示されています。

血圧の数値と気分の関係は単純ではありません。

高血圧と診断されて治療が始まると、病気を抱える負担が心に影響してくることもあります。

このように2つの病気がお互いに影響し合っていることを理解することは、治療を進める上でとても大切です。

なぜなら、片方の病気だけを治療しても、もう片方の病気が良くなるのを邪魔してしまう可能性があるからです。

高血圧がうつ病を引き起こす3つの理由

高血圧を持っている方がうつ病になりやすくなる理由は、大きく分けて3つあります。

脳への直接的な影響、治療薬による影響、そして病気を抱えることによる心の負担です。

これらはそれぞれ別々に働くこともあれば、重なり合って影響することもあります。

高血圧がうつ病を引き起こす3つの経路
  1. 脳への影響:血流が不安定になり、脳の細胞や神経伝達物質に影響
  2. 薬の副作用:一部の降圧薬が気分に影響を与える可能性
  3. 心理的負担:慢性疾患を抱えることによるストレスと不安

これらの理由を知っておくことで、早めに気づいて対処することができます。

例えば、高血圧の治療を始めてから気分が変わったと感じたら、それが薬の影響なのか、それとも他の原因なのかを考える手がかりになります。

また、どんなサポートが必要なのかを医師と相談する際にも役立ちます。

それでは、3つの理由を順番に詳しく見ていきましょう。

脳への血流が不安定になると気分が落ち込みやすくなる

高血圧は脳への血の流れに影響を与え、それが気分の変化につながることがあります。

血圧が高い状態が長く続くと、脳の細胞に十分な酸素や栄養が届きにくくなってしまうのです。

研究によると、高血圧の人は脳の特定の部分、特に「海馬」という記憶や感情に関わる重要な部分で、機能の低下や萎縮が見られることがあります。

高血圧の病歴は、海馬の機能的連結性の低下、および将来記憶スコアの低下と関連していた(FDR補正p <0.01)。

引用:PubMed Central Hypertension is associated with reduced hippocampal connectivity and impaired memory

また、高血圧によって脳の中で「神経炎症」という反応が起こりやすくなります。

この炎症に関わる物質が増えると、脳の中で気分をコントロールする化学物質のバランスが崩れ、気分が落ち込みやすくなる可能性があります。

さらに、血圧が日によって大きく上がったり下がったりすると、脳への血の流れが不安定になります。

これが心の不調として現れることもあります。

特に高齢の方では、こうした影響がはっきりと現れやすいことがわかっています。

一部の血圧の薬には気分が沈む副作用がある

高血圧を治療するための薬の中には、気分が落ち込む副作用を起こす可能性があるものがあります。

ただし、すべての血圧の薬がうつ病の危険性を高めるわけではありませんので、心配しすぎる必要はありません。

血圧の薬とうつ症状の関係

薬のタイプうつ症状への影響代表的な薬剤名
古いタイプの降圧薬うつ症状を引き起こす可能性あり(研究により結論は異なる)レセルピン、メチルドーパ
アンジオテンシン受容体拮抗薬・ACE阻害薬うつ症状を軽減する可能性あり(研究により結論は異なる)エナラプリル、ラミプリル
カルシウム拮抗薬(一部)うつ症状を軽減する可能性あり(研究により結論は異なる)アムロジピン、ベラパミル
β遮断薬うつ症状のリスクを増やさない(中立的)プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール

昔から使われている「メチルドーパ」という薬は、製品情報で抑うつへの注意が記載されています。

「レセルピン」については歴史的にうつ誘発が懸念されてきましたが、近年のレビューでは結果が一貫せず、個別の薬剤によって結論が異なる可能性があります。

しかし朗報もあります。

最近の大規模な研究では、多くの新しいタイプの血圧の薬は、うつ病のリスクを増やさないことが示されています。

特に「β遮断薬」については、質の高い臨床試験の解析により、うつ病のリスクを増やさない(中立的である)ことが確認されています。

このメタ分析では、プラセボや実薬対照と比較して、BBはうつ病のリスク増加やうつ病による離脱症状と関連がないことがわかりました。

引用:PubMed β-Blockers and the Risk of New-Onset Depression: Meta-analysis Reassures, but the Jury Is Still Out

また、「アンジオテンシン受容体拮抗薬」や「ACE阻害薬」、一部の「カルシウム拮抗薬」(エナラプリル、ラミプリル、アムロジピン、ベラパミルなど)では、うつ症状を軽減する可能性を示した観察研究もありますが、反証や中立結果もあり、薬剤・研究によって結論は異なります。

もし血圧の薬を飲み始めてから気分が落ち込むようになった場合は、薬の副作用かもしれません。

ただし、絶対に自分の判断で薬を止めないでください。

急に薬を止めると血圧が急激に上がってとても危険です。

必ず医師に相談しましょう。

病気と付き合い続ける不安や制限がストレスになる

高血圧という病気を一生抱えていかなければならないこと自体が、心の大きな負担になることがあります。

病気を持つことによる心理的なストレスは、うつ病を引き起こす重要な原因の一つです。

高血圧と診断されると、日常生活の中でたくさんの制限が生まれます。

塩分を減らした食事を毎日続けること、お酒を控えること、体重を管理すること、定期的に病院に通うこと、毎日薬を飲むことなど、生活のいろいろな場面で「我慢」や「管理」が必要になります。

これらすべてが積み重なると、大きなストレスになってしまうのです。

慢性疾患を持つ人が抱える心の負担(研究データ)
  • ストレスを感じている:約68.7%
  • 不安を抱えている:約51.1%
  • うつ症状を経験している:約58.8%

特定施設での調査によると、慢性的な病気で入院した患者のうち、約68.7%の人がストレスを感じ、51.1%の人が不安を抱え、58.8%の人がうつの症状を経験していたと報告されています。

特に、治療にお金がかかること、周りから孤立してしまうこと、家族からのサポートが足りないこと、頻繁に病院に通うことで日常生活が乱れることなどが、心の負担を大きくする原因として挙げられています。

また、高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれます。

自分では何も症状を感じないのに、実は脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気のリスクが高まっているからです。

この「見えない恐怖」への不安も、精神的なストレスとなります。

将来への不安や健康に対する心配がずっと続くことで、少しずつ気分が落ち込んでいくことがあるのです。

うつ病が血圧を上げてしまう2つの理由

うつ病を患っている方が高血圧になりやすい仕組みも、科学的に明らかになってきています。

心の状態が体、特に血圧に影響を与える道筋は主に2つあります。

一つは日常生活が乱れることによる間接的な影響、もう一つは体のストレス反応による直接的な影響です。

うつ病が血圧を上げる2つの経路
  1. 生活習慣の乱れ:やる気の低下により、運動不足・食事の乱れ・睡眠障害が起こる
  2. ストレス反応:コルチゾールなどのストレスホルモンが過剰に分泌され、体が緊張状態になる

アメリカで行われた大規模な研究では、うつの症状を持つ人は、6〜7年後に高血圧に危険性が54%高くなることがわかりました。

これは統計的に意味のある関連です。

さらに興味深いのは、うつの症状が強い人ほど、その後高血圧になる危険性が高くなるという点です。

これらの仕組みを理解すると、うつ病の治療が血圧の管理にもつながることがわかります。

心の健康と体の健康は別々のものではなく、深くつながっています。

一方を良くすることが、もう一方を良くすることにもつながる可能性があるのです。

それでは、具体的な2つの理由を見ていきましょう。

やる気が出ずに食事や運動などの健康管理ができなくなる

うつ病の代表的な症状の一つに、何をするにもやる気が出なくなることがあります。

この症状が、健康的な生活を続けることを難しくし、結果として血圧が上がってしまうのです。

うつ病による生活習慣の変化
  • 運動する気力がなくなる → 運動不足
  • 食事に気を配る余裕がなくなる → 高カロリー・高糖分の食品を摂取しがち
  • 睡眠の問題が起こる → 80%以上の患者が睡眠障害を経験
  • 服薬や通院が億劫になる → 血圧管理が不十分に

うつ病になると、運動をする気力がなくなったり、食事の内容に気を配る余裕がなくなったりします。

研究によると、うつの症状がある人は運動不足になりやすく、食事も栄養のバランスが悪くなりがちです。

特に、カロリーの高いファーストフードや、糖分の多いお菓子などを食べる傾向が強くなることがわかっています。

また、うつ病の人の多くが眠れない、または眠りが浅いといった睡眠の問題を抱えています。

実際に、うつ病の患者さんの80%以上が何らかの睡眠の悩みを持っているとされています。

うつ病患者の約80%にみられる過覚醒、すなわち精神的不安が、この初期の不眠症の一因となっている可能性があります。

引用:PubMed Central Sleep disorders as core symptoms of depression

よく眠れないと、血圧を調整する体の働きがうまくいかなくなります。

特に、本来なら夜間に下がるはずの血圧が下がりにくくなることが知られています。

さらに、うつ病の治療中であっても、薬を飲み続けることが難しくなったり、定期的な通院が億劫になったりすることがあります。

これによって、血圧のコントロールが十分にできなくなり、高血圧が悪化してしまう可能性があります。

こうした生活習慣の乱れが重なることで、少しずつ血圧が上がっていくのです。

ストレスで体が緊張状態になり血圧が上がる

うつ病では、ストレスに対する体の反応が過剰に働き続けることがあり、これが血圧を上げる重要な原因となります。

ストレスホルモン(コルチゾール)の影響
  • うつ病の人は体内のコルチゾールが多く分泌される
  • コルチゾール値が2倍になると心血管疾患リスクが90%増加
  • 一定量のコルチゾールで血圧の上の数字が約15mmHg上昇
  • 交感神経が活発化し、副交感神経が弱まる → 体が常に緊張状態に

うつ病の方の体の中では、「コルチゾール」というストレスホルモンが多く分泌されていることが報告されています。

このホルモンは、危険に直面したときに体を守るために出るものですが、うつ病ではこれが常に出続けてしまいます。

大規模な研究では、コルチゾールの量が2倍になると、心臓や血管の病気になる危険性が90%も増えることが示されています。

研究者らは、11年間の追跡調査期間中、コルチゾール値が2倍になるごとに心血管イベントのリスクが90%増加することを発見した。

引用:National Heart, Lung, and Blood Institute Study links high levels of stress hormones to increased blood pressure, cardiovascular events

コルチゾールには血圧を上げる作用があり、実験的に一定量を投与した研究では、血圧の上の数字が約15mmHg上がることが示されています。

また、うつ病では体の緊張を高める「交感神経」という神経の働きが活発になり、逆にリラックスさせる「副交感神経」の働きが弱くなることが研究で示されています。

簡単に言うと、体が常に緊張した状態になってしまうのです。

この状態では、心臓の鼓動が速くなり、血管が縮みやすくなり、結果として血圧が上がりやすくなります。

さらに、ストレスが長く続くと、体の中で「炎症」という異常な反応が起こりやすくなり、これも血圧を上げる原因になると考えられています。

このように、心の状態が体の状態として血圧の上昇に現れる、心と体のつながりがはっきりと見えるのです。

高血圧とうつ病の両方がある場合の対処法

高血圧とうつ病の両方を持っている場合、それぞれ別々に治療するのとは違ったアプローチが必要になることがあります。

しかし、適切な治療と日常生活の工夫で、両方の病気をうまく管理することは十分に可能です。

実際に、研究では両方の病気に配慮した総合的な治療を受けた患者さんは、どちらの病気もうまくコントロールできることが示されています。

効果的な対処法の3つの柱
  1. 医療面:医師に両方の症状を伝え、薬の組み合わせを調整
  2. 生活習慣:運動・食事・睡眠の改善で両方の病気にアプローチ
  3. 心構え:完璧を目指さず、続けられる範囲で取り組む

大切なのは、医師としっかりコミュニケーションをとること、生活習慣を見直すこと、そして無理なく続けられる範囲で取り組むことの3つです。

薬による治療と生活習慣の改善を組み合わせることで、より良い効果が期待できます。

例えば、運動は血圧を下げる効果と同時に気分を良くする効果があり、食事の改善も両方の病気に良い影響を与えます。

ただし、一度にすべてを完璧にやろうとすると、かえってストレスになってしまうことがあります。

焦らず、できることから少しずつ始めることが何より大切です。

ここでは、両方の病気がある場合の具体的な対処法を3つの観点から解説します。

両方の症状を医師に伝えて薬の組み合わせを調整してもらう

高血圧とうつ病の両方がある場合、最も重要なのは、医師にすべての症状を正直に伝えることです。

高血圧の治療で循環器科(心臓や血管の専門科)に通っている方は、気分の落ち込みややる気が出ないことについても相談しましょう。

逆に、精神科や心療内科でうつ病の治療を受けている方は、血圧の状態についてもきちんと報告することが大切です。

なぜこれが重要かというと、先ほど説明したように、血圧の薬の中には気分を良くする効果が期待できるものもあれば、逆に悪化させる可能性のあるものもあるからです。

医師はあなたの状態を総合的に見て、両方の病気に配慮した薬の選択や量の調整を行うことができます。

特に、「アンジオテンシン受容体拮抗薬」や「ACE阻害薬」、一部の「カルシウム拮抗薬」は、うつ症状を軽減する可能性を示した観察研究がありますが、薬剤により結果は異なります。

「β遮断薬」については、うつ病リスクを増やさない(中立的)ことが確認されています。

また、抗うつ薬の中にも血圧に影響を与えるものがあります。

医師は薬同士の相性を考えながら、あなたに最適な組み合わせを選びます。

自宅で定期的に血圧を測って記録したり、気分の変化を日記につけたりしておくと、診察のときに医師と情報を共有しやすくなり、より良い治療につながります。

軽い運動や規則正しい生活でどちらにも良い効果が期待できる

生活習慣を見直すことは、高血圧とうつ病の両方に良い影響を与える可能性があることが、たくさんの研究で示されています。

特に運動は、両方の病気に対して効果的です。

生活習慣改善による効果

改善項目高血圧への効果うつ病への効果
有酸素運動収縮期血圧を平均4mmHg低下、拡張期血圧を平均3mmHg低下気分を良くする脳内物質が増加
筋力トレーニング血圧低下効果あり(小〜中等度)うつ症状の軽減効果あり
DASH食(野菜・果物中心)血圧低下効果が実証済み気分への好影響を示す観察研究あり
規則正しい睡眠血圧の日内変動の改善と関連うつ症状が軽減

研究によると、高血圧の患者さんが運動を続けると、血圧が下がるだけでなく、気分も明るくなることがわかっています。

ある研究では、6ヶ月間ウォーキングやジョギングなどの運動を続けた高血圧の患者さんは、運動をしなかった人と比べて、血圧が改善し、さらに気分の落ち込みも明らかに減ったという結果が出ています。

運動の効果は、ウォーキングやジョギングのような有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングにも認められています。

多くの研究をまとめた結果によると、有酸素運動は血圧の上の数字を平均4mmHg、下の数字を3mmHg下げる効果があり、同時に気分も良くすることが示されています。

有酸素運動は、平均収縮期血圧および拡張期血圧の有意な低下と関連していた(それぞれ-3.84 mmHg [95% CI, -4.97~-2.72 mmHg]、-2.58 mmHg [CI, -3.35~-1.81 mmHg])。

引用:PubMed Effect of aerobic exercise on blood pressure: a meta-analysis of randomized, controlled trials

運動をすると、脳の中で気分を良くする物質が増えるためと考えられています。

筋力トレーニングにも血圧を小〜中等度下げる効果があり、うつ症状を軽減する効果も確認されています。

食事については、野菜や果物をたくさん食べて、脂っこいものを控える食事が勧められます。

「DASH食」という高血圧を防ぐための食事法は、血圧を下げる効果が実証されています。

気分面への好影響を示す観察研究もありますが、因果関係の確立には更なる研究が必要です。

睡眠の質を良くすることも大切です。

毎日できるだけ同じ時間に寝て起きる、朝は日光を浴びるなど、体のリズムを整えることは、夜間の血圧低下の改善やうつ症状の軽減と関連があります。

完璧を目指さず続けられる範囲で取り組むことが大切

生活習慣の改善と聞くと、すべてを完璧にやらなければいけないと感じて、かえってストレスになってしまうことがあります。

しかし、大切なのは完璧さではなく、長く続けることです。

無理なく続けるためのヒント
  • 運動:毎日30分が難しければ、まずは10分の散歩から、週2〜3回でもOK
  • 食事:すべてを管理しようとせず、1日1食だけ野菜を多めに、塩分の多い加工食品を減らす
  • サポート:家族や友人に協力してもらう、同じ目標を持つグループに参加する
  • 心構え:小さな一歩でも前進していることを認める、自分を責めない

研究では、いくつかの生活習慣の改善を組み合わせた場合でも、患者さんに「できる範囲で」取り組んでもらう方が、厳しい目標を設定するよりも長期的には効果的であることが示されています。

例えば、毎日30分の運動が難しければ、まずは10分の散歩から始める、週に2〜3回だけ行うなど、無理のない目標を立てることが大切です。

食事についても、すべての食事を完璧に管理しようとするのではなく、1日1食だけ野菜を多めにする、塩分の多い加工食品を減らすなど、小さな変化から始めることが勧められます。

ある研究では、「野菜を増やす」「運動を週3回する」といった具体的な指示を受けた人たちは、単に「健康的な生活をしてください」とだけ言われた人たちよりも、気分の改善が大きく、血圧の薬を増やす必要がある人も少なかったという結果が出ています。

また、一人で頑張るのが難しい場合は、家族や友人に協力してもらったり、同じ目標を持つグループに参加したりすることも効果的です。

研究によると、集団で運動するプログラムに参加した高齢の高血圧患者は、一人で運動するよりも続けられる人が多く、気分や不安の改善効果も大きかったと報告されています。

集団運動は高齢患者のメンタルヘルスを効果的に改善する可能性がある。さらに、対処能力の変化は、集団運動がメンタルヘルスにプラスの影響を与えていることを示唆している。

引用:PubMed Central Intervention of Collective Exercise on the Mental Health of Elderly Hypertensive Patients

最も大切なのは、自分を責めないことです。

うつ病ではやる気が出なくなるため、健康的なことを続けるのが難しくなります。

これは病気の症状であって、あなたの意志が弱いからではありません。

小さな一歩でも前に進んでいることを認めながら、焦らず取り組んでいきましょう。

よくある質問

高血圧の薬を飲むとうつになりますか

すべての血圧の薬がうつ病の危険性を高めるわけではありません。

一部の古いタイプの薬では気分への影響が指摘されていますが、研究によって結論は異なります。

最近の質の高い研究では、多くの血圧の薬がうつ病のリスクを増やさないことが示されています。

一部の薬では気分への好影響を示した観察研究もありますが、反証や中立結果もあり、因果関係は確定していません。

もし薬を飲み始めてから気分の変化を感じたら、自己判断で薬を止めずに、必ず医師に相談してください。

うつ病の治療をすると血圧は下がりますか

うつ病の治療で気分が良くなると、生活習慣が整いやすくなり、間接的に血圧にも良い影響が出る可能性があります。

ただし、一部の抗うつ薬(特にSNRIと呼ばれるタイプ、代表例:ベンラファキシン)は用量依存的に血圧を上げることがあるため、高血圧がある場合は医師にそのことを伝えて、適切な薬を選んでもらうことが大切です。

どちらを先に治療すべきですか

両方の病気を同時に治療することが理想的です。

どちらか一方だけを治療しても、もう一方が良くなるのを邪魔してしまう可能性があるため、両方を一緒に診てもらうことが勧められます。

医師と相談しながら、それぞれの病気に対する治療の計画を立てましょう。

両方の病気があると治りにくいですか

確かに両方の病気が同時にあると治療が複雑になることがありますが、適切な治療を受ければ改善は十分に期待できます。

研究では、高血圧とうつ病の両方に配慮した治療を受けた患者さんは、どちらの病気もうまくコントロールできることが示されています。

生活習慣の改善だけで両方治せますか

生活習慣の改善は両方の病気に良い影響を与えますが、それだけで完全に治療できるとは限りません。

特に症状が重い場合は薬による治療が必要になることが多いです。

生活習慣の改善は、薬による治療と組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。

まとめ

高血圧とうつ病は、お互いに影響し合う複雑な関係にあります。

高血圧は、脳への血の流れの変化、一部の薬の副作用、病気を抱えることによる心の負担などを通じて、うつ病の危険性を高めます。

一方でうつ病は、生活習慣の乱れやストレスホルモンの影響によって、血圧を上げてしまいます。

両方の病気がある場合は、医師に両方の症状をしっかりと伝え、薬の選択や組み合わせを慎重に調整してもらうことが大切です。

また、運動や食事、睡眠といった日常生活の改善は、両方の病気に対して良い効果が期待できます。

完璧を目指す必要はありません。

小さな一歩から始めて、無理なく続けられる範囲で取り組むことが、長く健康を保つための鍵となります。

一人で抱え込まず、病院や家族のサポートを得ながら、前向きに治療に取り組んでいきましょう。

参考文献・参考サイト

PubMed Depression increases the risk of hypertension incidence: a meta-analysis of prospective cohort studies

PubMed Associations of depression with hypertension and citizenship among U.S. adults: A cross-sectional study of the interactions of hypertension and citizenship

PubMed Association of hypertension and depression with mortality: an exploratory study with interaction and mediation models

PubMed Central Hypertension is associated with reduced hippocampal connectivity and impaired memory

PubMed The association between blood pressure variability and depressive symptoms among middle-aged and older adults: Nationwide population-based cohort study

Mayo Clinic Methyldopa (Oral Route, Intravenous Route)

PubMed Central The effects of reserpine on depression: A systematic review

PubMed β-Blockers and the Risk of New-Onset Depression: Meta-analysis Reassures, but the Jury Is Still Out

PubMed Antihypertensive Drugs and Risk of Depression: A Nationwide Population-Based Study

PubMed Central Angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers and risk of depression among older people with hypertension

Springer Nature Link Prevalence and correlates of stress, anxiety, and depression in patients with chronic diseases: a cross-sectional study

Centers for Disease Control and Prevention Depression and Incident Hypertension: The Strong Heart Family Study

PubMed Central Sleep disorders as core symptoms of depression

National Heart, Lung, and Blood Institute Study links high levels of stress hormones to increased blood pressure, cardiovascular events

PubMed Cortisol and hypertension

Cambridge University Press A meta-analysis of heart rate variability in major depression

The New England Journal of Medicine Collaborative Care for Patients with Depression and Chronic Illnesses

PubMed Central Effects of Exercise and Weight Loss on Depressive Symptoms among Men and Women with Hypertension

PubMed Effect of aerobic exercise on blood pressure: a meta-analysis of randomized, controlled trials

JAMA Network Association of Efficacy of Resistance Exercise Training With Depressive Symptoms: Meta-analysis and Meta-regression Analysis of Randomized Clinical Trials

The New England Journal of Medicine A Clinical Trial of the Effects of Dietary Patterns on Blood Pressure 

ScienceDirect Effects of insomnia and restless legs syndrome on sleep arterial blood pressure: A systematic review and meta-analysis

PubMed Central Lifestyle Interventions Reduce the Need for Guideline-Directed Antihypertensive Medication

PubMed Central Intervention of Collective Exercise on the Mental Health of Elderly Hypertensive Patients

PubMed Central Antidepressant Drugs Effects on Blood Pressure

この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

コメント

コメントする

目次