ストレスで血圧はどれくらい上がる?高血圧との関係と対処法を解説

ストレスで血圧はどれくらい上がる?高血圧との関係と対処法を解説

仕事のプレゼン前や大事な試験の前など、緊張する場面で胸がドキドキした経験は誰にでもあるでしょう。

実はこのとき、体の中では血圧が上昇しています。

ストレスと血圧には密接な関係があり、特に慢性的なストレスは高血圧の発症リスクを高める可能性があります。

「最近血圧が高めだけど、仕事のストレスが原因かもしれない」「ストレスで血圧はどのくらい上がるのだろう」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

ストレスで血圧が上がる理由と影響
  • 急性ストレスで血圧は一時的に上昇する
  • 交感神経が活性化しストレスホルモンが分泌される
  • 慢性ストレスは持続的な血圧上昇と高血圧を招く
  • ストレスが不健康な生活習慣を引き起こし、間接的に高血圧リスクを高める
  • 年齢・体質・生活習慣・遺伝で血圧反応に差が出る

ストレスによる一時的な血圧上昇は正常な体の反応ですが、長期にわたるストレスは高血圧や心血管疾患のリスク要因となります。

この記事では、ストレスと血圧の関係について科学的な根拠をもとに解説し、具体的な対処法をご紹介します。

この記事でわかること
  • ストレスによる血圧上昇の具体的な数値と個人差
  • ストレスが血圧を上げるメカニズムと高血圧との関係
  • 日常生活でできるストレス対策と血圧管理の方法
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

ストレスで血圧は10〜30mmHg上昇する

ストレスを感じたとき、血圧は一時的に上昇します。

これは体が緊張状態に対応するための自然な反応です。

しかし、実際にどのくらい上がるのか、具体的な数値を知っている人は少ないかもしれません。

ストレスによる血圧上昇の程度は、ストレスの種類や強さによって大きく異なります。

突然の緊張や不安といった急性ストレスでは一時的な上昇にとどまりますが、仕事や人間関係などの慢性的なストレスでは持続的に血圧が高い状態が続くこともあります。

また、同じストレス状況でも、人によって血圧の上がり方には大きな個人差があることが研究で明らかになっています。

年齢や体質、生活習慣、遺伝的な要因などが複雑に関係しているためです。

ここでは、科学的な研究結果に基づいて、ストレスによる血圧上昇の具体的な数値と、なぜ個人差が生じるのかについて詳しく見ていきましょう。

緊張や不安を感じたときの血圧変化

急性ストレス、つまり突然の緊張や不安を感じる場面では、血圧は短時間で上昇します。

研究によると、精神的なストレス課題(暗算テストやスピーチ課題など)を行った際、収縮期血圧(上の血圧)が平均して数mmHgから十数mmHg上昇することが報告されています。

また、診察室で医師や看護師を前にすると緊張して血圧が上がる「白衣高血圧」という現象では、臨床的に有意な白衣効果は診察室血圧が家庭血圧より20/10mmHg以上高い場合とされ、平均的な差は10/5〜15/10mmHg程度と報告されています。

ストレス場面別の血圧上昇値

ストレスの種類収縮期血圧の上昇拡張期血圧の上昇
精神的ストレス課題(暗算・スピーチなど)数〜十数mmHg
白衣高血圧(平均的な差)10〜15mmHg5〜10mmHg
職場の精神的負担1.2〜7.7mmHg0.8〜7mmHg
日常でストレスを強く感じる瞬間約1〜2mmHg約0.5〜1.5mmHg

職場のストレスに関する研究では、仕事による精神的負担が大きい人は、そうでない人と比べて収縮期血圧が1.2〜7.7mmHg、拡張期血圧が0.8〜7mmHg高いという結果が報告されています。

さらに、日常生活の中でストレスを強く感じている瞬間は、普段よりも収縮期血圧が約1〜2mmHg、拡張期血圧が約0.5〜1.5mmHg高くなることも明らかになっています。

個人内関連では、急性ストレス曝露のある瞬間(ない瞬間と比較して)は、収縮期血圧(SBP; b = 1.54)、拡張期血圧(DBP; b = 0.79)、および心拍数( b = 1.53、p値<.001)の上昇と関連していることが明らかになった。

引用:PubMed Acute and Chronic Stress Associations With Blood Pressure: An Ecological Momentary Assessment Study on an App-Based Platform

上がり方は年齢や体質によって異なる

ストレスに対する血圧の反応には、大きな個人差があります。

同じストレス状況でも、ある人は血圧が大きく上昇する一方で、別の人はほとんど変化しないこともあります。

この個人差には、いくつかの要因が関係しています。

すでに高血圧がある人は、正常血圧の人と比べてストレスに対してより過剰な血圧上昇を示すことが研究で確認されています。

HTでは、強度の強いAMSに対して、NTと比較して生理学的反応性亢進が認められることは、調査対象となった全てのストレス反応性生理システムにおいて観察された。

引用:Frontiers Physiological reactivity to acute mental stress in essential hypertension—a systematic review

遺伝的な体質も影響します。

家族に高血圧の人がいる場合、ストレスに対する血圧の反応が大きくなりやすいという報告があります。

さらに、性別による違いについては研究により結果が異なり、職場ストレスと血圧上昇の関連には男女差が明確でない場合もあります。

血圧の上がり方に影響する要因
  • 既存の血圧状態:高血圧の人はストレスに対してより過剰に反応する
  • 遺伝的体質:家族に高血圧の人がいると反応が大きくなりやすい
  • 生活習慣:運動習慣や睡眠状況が反応の大きさに影響
  • 体型:肥満や運動不足の状態ではストレスによる血圧上昇が顕著に

日頃の生活習慣も重要です。

運動習慣がある人十分な睡眠をとっている人は、ストレスに対する血圧の反応が比較的穏やかである傾向があります。

逆に、肥満や運動不足、睡眠不足の状態では、ストレスによる血圧上昇がより顕著になる可能性があります。

ストレスが血圧を上げるのは体の防御反応

ストレスを感じると血圧が上がるのは、体が危険に備えるための自然な反応です。

これは太古の昔から人間に備わっている生存のための仕組みであり、決して異常なことではありません。

人間の体は、ストレスを感じると「闘争・逃走反応」と呼ばれる生理的変化を起こします。

これは野生動物などの外敵から身を守ったり、危険から素早く逃げたりするために進化の過程で獲得した能力です。

現代社会では実際に命の危険にさらされることは少なくなりましたが、仕事のプレッシャーや人間関係の悩みといった精神的なストレスに対しても、体は同じような反応を示します。

短期間であれば、この反応は私たちが困難な状況に対処するのを助けてくれます。

しかし、問題となるのは、この防御反応が長期間続いてしまう場合です。

慢性的なストレス状態では、体が常に「警戒モード」のままとなり、血圧が高い状態が維持されてしまいます。

これが高血圧の発症や進行につながる可能性があるのです。

ここでは、ストレスが血圧を上昇させる体のメカニズムと、短期的なストレスと長期的なストレスの違いについて解説していきます。

緊張すると心臓と血管に何が起こるのか

ストレスを感じると、脳がそれを認識し、体全体に「警戒態勢」を取るよう指令を出します。

この過程で中心的な役割を果たすのが、自律神経系の一つである交感神経です。

ストレス時の体の変化(メカニズム)
  1. 交感神経の活性化
    • 脳がストレスを認識し、交感神経に指令を出す
  2. ホルモンの分泌
    • 副腎からアドレナリンやノルアドレナリン(カテコールアミン)が分泌される
    • ストレスホルモンのコルチゾールも分泌される
  3. 心臓への影響
    • 心拍数が増加する
    • 一回の拍動で送り出す血液量が増える
  4. 血管への影響
    • 皮膚や内臓の血管が収縮する
    • 血管が細くなり血液が通りにくくなる
  5. 腎臓への影響
    • ナトリウム(塩分)の排出が減る
    • 体内に水分が保持され血液量が増える

交感神経が活性化されると、副腎という臓器からアドレナリンやノルアドレナリンといったホルモン(カテコールアミンと総称されます)が分泌されます。

これらのホルモンは心臓に働きかけて心拍数を増やし、心臓が一回の拍動で送り出す血液量を増加させます

その結果、全身に送られる血液の量が増え、血圧が上昇します。

同時に、血管にも変化が起こります。

カテコールアミンの作用により、特に皮膚や内臓の血管が収縮します。

血管が細くなると血液が通りにくくなり、その結果として血圧がさらに上昇します。

これは、筋肉などの重要な器官により多くの血液を送るための体の仕組みです。

また、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールも分泌されます。

コルチゾールは腎臓に作用してナトリウム(塩分)の排出を減らし、体内に水分を保持させることで血液量を増やし、血圧を上昇させる働きがあります。

研究によると、尿中のコルチゾール濃度が高い人は、6〜7年後に高血圧を発症するリスクが高いことが示されています。

正常血圧の成人400人以上を対象とした研究では、尿中に高濃度のストレスホルモンが検出された人は、その後6~7年の間に高血圧を発症する可能性が高いことが分かりました。

引用:American Heart Association Elevated stress hormones linked to higher risk of high blood pressure and heart events

短期間のストレスと長期間のストレスの違い

短期間の急性ストレスによる血圧上昇は、通常、ストレスの原因がなくなれば数分から数十分で元の水準に戻ります

これは正常な反応であり、健康な人の体は一時的な血圧変動にうまく対応できます。

しかし、問題となるのは慢性的なストレスです。

仕事のプレッシャーや人間関係の悩みなど、長期間にわたってストレスが続く状態では、交感神経の活性化や各種ホルモンの分泌が持続します

この状態が続くと、体はいわば「常に警戒モード」となり、血圧が慢性的に高い状態が維持されるようになります。

短期間のストレスと長期間のストレスの比較

項目短期間(急性)のストレス長期間(慢性)のストレス
血圧上昇の持続時間数分〜数十分で元に戻る慢性的に高い状態が維持される
体への影響一時的、健康への影響は限定的血管へのダメージ、動脈硬化の進行
生活習慣への影響ほとんどなし過食、飲酒増加、運動不足、睡眠不足
高血圧リスク低い高い

慢性的なストレスは、血管そのものにも影響を与えます。

繰り返されるストレスにより血管の内側を覆っている内皮細胞がダメージを受け、血管が硬くなったり、炎症を起こしたりします。

これが動脈硬化の進行につながり、さらに血圧を上昇させる悪循環を生み出します。

大量の証拠から、内皮機能障害がストレス媒介性アテローム性動脈硬化症およびCVDの発症に重要な役割を果たしていることが実証されている(68、109、185 )。

引用:American Physiological Society Chronic stress and endothelial dysfunction: mechanisms, experimental challenges, and the way ahead

また、慢性的なストレスは生活習慣にも影響します。

ストレスが続くと、過食や飲酒量の増加、運動不足、睡眠不足といった行動パターンに陥りやすくなります。

これらの生活習慣の乱れも高血圧の原因となります。

実際、ストレスそのものが直接高血圧を引き起こすというよりも、ストレスによって引き起こされる不健康な生活習慣が高血圧につながるケースが多いと考えられています。

研究では、社会的なつながりが少ない人や、結婚生活の質が低い人職場で強いストレスを感じている人などは、高血圧を発症するリスクが高いことが示されています。

さらに、うつ病や不安障害といった精神的な問題もストレスの結果として生じ、これらも血圧の上昇と関連があることが報告されています。

日常生活でできるストレス対策と血圧管理

ストレスによる血圧上昇を防ぐためには、日常生活の中でストレスを適切に管理することが重要です。

幸いなことに、科学的な根拠に基づいた効果的な方法がいくつも存在します。

高血圧の治療や予防において、生活習慣の改善は薬物療法と並ぶ基本的な柱とされています。

日本の厚生労働省や日本高血圧学会のガイドラインでも、食塩摂取の制限、適正体重の維持、運動、節酒、禁煙とともに、ストレス管理の重要性が指摘されています。

特に軽度の高血圧(収縮期血圧140〜159mmHg、拡張期血圧90〜99mmHg)の段階では、生活習慣の改善だけで血圧が正常範囲に戻ることも少なくありません

ストレス対策として推奨されている方法には、リラクゼーション技法、運動、十分な睡眠などがあります。

これらは特別な費用や道具を必要とせず、日常生活の中で誰でも実践できるものばかりです。

重要なのは、自分に合った方法を見つけて継続することです。

一つの方法にこだわる必要はなく、複数の方法を組み合わせることでより効果的にストレスと血圧を管理することができます。

ここでは、科学的に効果が証明されている具体的な方法をご紹介します。

すぐに実践できるリラックス方法

ストレス対策として科学的に効果が確認されているのが、リラクゼーション技法です。

その中でも特に研究が進んでいるのが、瞑想、ヨガ、深呼吸などの方法です。

効果が証明されているリラクゼーション技法

方法主な効果実践のポイント
瞑想(マインドフルネス・超越瞑想)収縮期血圧:約5mmHg低下
拡張期血圧:約3mmHg低下
交感神経を抑制し副交感神経を活性化
減塩や運動と組み合わせると効果的
ヨガ血圧低下効果ありリラックスを促すポーズと深い呼吸が効果的
深呼吸・プログレッシブ・マッスル・リラクゼーションストレス軽減効果特別な道具不要で手軽に実践可能
有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)収縮期血圧:3〜8mmHg低下
拡張期血圧:2〜5mmHg低下
できれば毎日30分以上の中等度運動
質の良い睡眠ストレスホルモンのバランスを整える成人は7〜9時間の睡眠確保が推奨

瞑想には様々な種類がありますが、中でもマインドフルネス瞑想や超越瞑想と呼ばれる方法の効果が多く報告されています

研究によると、定期的な瞑想の実践により、収縮期血圧が約5mmHg、拡張期血圧が約3mmHg低下する効果が示されています。

MB-BPはベースラインから収縮期血圧を5.9mmHg低下させ(95%信頼区間-9.1~-2.8mmHg)、事前に規定された解析において対照群よりも6ヶ月時点で4.5mmHg優れた結果を示した(95%信頼区間-9.0~-0.1mmHg)ことを示した。

引用:American Heart Association Journals Effect of Adapted Mindfulness Training in Participants With Elevated Office Blood Pressure: The MB‐BP Study: A Randomized Clinical Trial

ただし、効果には個人差や手法による違いがあり、減塩や運動などと組み合わせた補助療法として取り入れると効果的です。

瞑想は交感神経の活動を抑制し、副交感神経を活性化させることで、体をリラックス状態に導きます。

ヨガも血圧管理に有効です。

ヨガは身体的なポーズ、呼吸法、瞑想を組み合わせた総合的な実践法で、複数の研究で小〜中等度の降圧効果が確認されています。

特に、リラックスを促すポーズや、ゆっくりとした深い呼吸を伴うヨガが効果的とされています。

平均して、ヨガは対照群と比較して、収縮期血圧(加重平均効果サイズ、−0.47、95%信頼区間、−0.62~0.32、−5.0 mmHg)および拡張期血圧(加重平均効果サイズ、−0.47、95%信頼区間、−0.61~−0.32、−3.9 mmHg)の中等度の低下をもたらした(収縮期血圧および拡張期血圧ともにP <.001)。

引用:Mayo Clinic Proceedings Yoga as Antihypertensive Lifestyle Therapy: A Systematic Review and Meta-analysis

深呼吸やプログレッシブ・マッスル・リラクゼーション(筋肉の緊張と弛緩を繰り返す方法)なども、補助療法として合理的なストレス対策として推奨されています。

これらの方法は特別な道具や場所を必要とせず、日常生活の中で簡単に取り入れることができます。

運動もストレス軽減と血圧管理の両方に効果があります。

定期的な有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど)は、収縮期血圧を3〜8mmHg、拡張期血圧を2〜5mmHg低下させる効果があることが示されています。

運動は体内のエンドルフィンという物質の分泌を促し、これが自然な気分の向上とストレス軽減につながります。

日本高血圧学会のガイドラインでは、できれば毎日、30分以上の中等度の有酸素運動が推奨されています。

睡眠の質と量も重要です。

十分な睡眠をとることで、ストレスホルモンのバランスが整い、血圧の日内変動が正常に保たれます。

健康な血圧管理のためには、成人は少なくとも6時間以上(国内ガイドライン)、心血管疾患予防の観点からは7〜9時間米国心臓協会)の質の良い睡眠を確保することが推奨されています。

睡眠不足は交感神経の活動を高め、血圧上昇につながることが研究で示されています。

血圧が気になるときは早めに医師へ相談を

自分でできるストレス対策を実践しても血圧が高い状態が続く場合や、血圧が140/90mmHg以上の場合は、医療機関を受診することが重要です。

高血圧は自覚症状がほとんどないため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれています。

症状がないからといって放置すると、知らないうちに心臓、血管、腎臓、脳などに深刻なダメージが蓄積されていきます。

早期発見と適切な治療により、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な合併症を予防することができます。

医療機関を受診すべきケース
  • 血圧が140/90mmHg以上の場合
  • 生活習慣の改善を試みても血圧が下がらない場合
  • 自覚症状がなくても定期的な健康診断で高血圧を指摘された場合

医師は、血圧測定だけでなく、生活習慣の詳細な聞き取りや必要に応じた検査を行い、あなたに最適な治療方針を提案します。

場合によっては、生活習慣の改善だけでなく、降圧薬による治療が必要になることもあります。

また、ストレスが血圧に大きく影響していると判断された場合、ストレス管理のための具体的なアドバイスや、必要に応じて専門家(心理士など)への紹介が行われることもあります。

家庭での血圧測定も推奨されています。

家庭用血圧計を使って朝晩定期的に血圧を測定し記録することで、診察室では分からない日常の血圧の変動を把握することができます。

これは医師が適切な診断と治療方針を立てる上で非常に有用な情報となります。

よくある質問

ストレスを感じたとき、すぐに血圧は上がりますか?

はい、ストレスを感じるとほぼ即座に血圧が上昇します。

緊張や不安を感じた瞬間から数秒から数分以内に交感神経が活性化し、心拍数の増加と血管収縮が起こり、血圧が上がります。

ただし、ストレスの原因がなくなれば通常は元の水準に戻ります。

白衣高血圧は治療が必要ですか?

白衣高血圧(診察室でのみ血圧が高くなる状態)は、完全に無害というわけではありません

研究によると、白衣高血圧の人は正常血圧の人と比べて将来的に持続性高血圧を発症するリスクが高いことが示されています。

定期的な家庭血圧測定と医師による経過観察が推奨されます。

ストレスによる血圧上昇を防ぐサプリメントはありますか?

現時点では、医薬品と同等の降圧効果が証明されたサプリメントは存在しません。

一部のサプリメント(ニンニクオメガ3脂肪酸など)にわずかな降圧効果を示す限定的な研究結果がありますが、効果は小さく用量依存的であり、対象も限定的です。

医師の処方による治療の代わりにはなりませんので、補助的な使用を考える場合は必ず医師に相談してください。

運動するとかえって血圧が上がりませんか?

運動中は一時的に血圧が上昇しますが、これは正常な反応です。

定期的な運動習慣を続けることで、安静時の血圧は低下します。

ただし、すでに血圧が非常に高い場合(収縮期血圧180mmHg以上など)や心臓病がある場合は、運動を始める前に必ず医師に相談し、適切な運動強度の指導を受けてください。

仕事のストレスが多いのですが、転職しないと血圧は下がりませんか?

転職が唯一の解決策というわけではありません。

職場でのストレス管理方法を工夫することで血圧への影響を軽減できる可能性があります。

例えば、休憩時間の深呼吸、適度な運動習慣、十分な睡眠、職場での人間関係の改善などが有効です。

ただし、過度な長時間労働や著しいストレス環境が続く場合は、健康を最優先に考えて環境の変化を検討することも重要です。

まとめ

ストレスを感じると血圧は一時的に上昇しますが、その上昇幅は個人差が大きく、数mmHgから30mmHg程度まで様々です。

これは体が危険に備えるための自然な防御反応であり、短期間であれば健康への影響は限定的です。

しかし、仕事や人間関係などによる慢性的なストレスは、交感神経の過剰な活性化や血管へのダメージを通じて、持続的な血圧上昇や高血圧の発症につながる可能性があります。

また、ストレスは過食、飲酒、運動不足といった不健康な生活習慣を引き起こし、これらが間接的に高血圧のリスクを高めます。

ストレスによる血圧上昇を防ぐためには、瞑想やヨガなどのリラクゼーション技法、定期的な有酸素運動、十分な睡眠といった日常生活での対策が効果的です。

これらの方法は科学的な研究によってその効果が確認されており、薬物療法と並ぶ高血圧管理の重要な柱となっています。

血圧が140/90mmHg以上の場合や、生活習慣の改善を試みても血圧が下がらない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

高血圧は自覚症状がないまま進行しますが、適切な治療により脳卒中や心筋梗塞などの重篤な合併症を予防することができます。

健康な血圧を維持するために、ストレス管理と定期的な血圧測定を習慣化することをお勧めします。

参考文献・参考サイト

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PubMed Exercise training for blood pressure: a systematic review and meta-analysis

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PubMed Cardiovascular Events and Mortality in White Coat Hypertension: A Systematic Review and Meta-analysis

The Journal of Nutrition Garlic and Heart Disease

Multidisciplinary Digital Publishing Institute Omega-3 Fatty Acids in Arterial Hypertension: Is There Any Good News?

World Health Organization Long working hours increasing deaths from heart disease and stroke: WHO, ILO

この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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