高血圧と診断されたものの、「体の調子は悪くないから大丈夫」と思っていませんか。
実は、高血圧は心不全という深刻な病気を引き起こす主な原因の一つです。
放置したまま何年も経つと、知らず知らずのうちに心臓に大きな負担がかかり続けることになります。
心不全とは、心臓が血液を全身にうまく送り出せなくなる状態のことです。
階段を上るだけで息が切れたり、足がむくんだりといった症状が現れ、日常生活が困難になってしまいます。
- 高血圧で左室肥大が進行し心臓の負担が増える
- 心筋が硬くなり拡張障害を起こし、息切れなど心不全症状を招く
- 高血圧が冠動脈硬化を進め、心筋梗塞を介して心不全を引き起こす
- 腎機能低下で塩分・水分が体に溜まりやすくなり、循環系への負荷が増大する
- 糖尿病や脂質異常を伴うと血管障害が進み心不全になりやすくなる
ただし、高血圧から心不全になるまでには、通常10年以上の時間がかかります。
つまり、今から血圧をしっかり管理すれば、心不全を防いだり、発症を遅らせたりすることが十分に可能なのです。
この記事では、高血圧がどうして心不全につながるのか、その仕組みをできるだけわかりやすくお伝えします。
そして、今日からできる予防法もご紹介します。
高血圧をきちんと管理すれば、心不全だけでなく、脳卒中や腎臓の病気なども予防できます。
まずは基本から、一緒に学んでいきましょう。
- 高血圧と心不全の関係
- 高血圧が心臓を傷める具体的な流れ
- 特に気をつけるべき高血圧のタイプ
- 心不全を防ぐための血圧管理の方法
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
高血圧は心不全の主な原因の一つ
高血圧は、心不全を引き起こす最も重要な原因の一つとして知られています。
心不全になった方の多くは、その前に高血圧があったことが分かっています。
実際、心不全患者さんの大多数に、心不全を発症する前から高血圧があったことが報告されています。
ある研究では、高血圧の方を平均約14年追跡した期間中に心不全を発症したケースが確認されています。
高血圧と診断されてから心不全を発症するまでの期間には個人差が大きく、血圧の高さや他の危険因子により変わりますが、通常は長い年月をかけて進行していきます。
この長い期間は、適切に対処することで心不全を防ぐチャンスでもあります。
高血圧を「たかが血圧が高いだけ」と軽く考えずに、心不全という深刻な結果につながる可能性があることを理解しておくことが大切です。
ここでは、高血圧とはどういう状態なのか、心不全とは何か、そして両者がどのように関係しているのかについて、基本から解説していきます。
高血圧とは血管に強い圧力がかかり続けている状態
高血圧とは、血液が血管の壁を押す力が強すぎる状態が続くことを言います。
病院で測定したとき、上の血圧が140以上、または下の血圧が90以上だと、高血圧と判断されます。
高血圧の診断基準
| 測定場所 | 上の血圧(収縮期血圧) | 下の血圧(拡張期血圧) |
|---|---|---|
| 病院 | 140 mmHg以上 | または 90 mmHg以上 |
| 家庭 | 135 mmHg以上 | または 85 mmHg以上 |
血管は本来、ゴムホースのように柔らかく弾力があります。
しかし、血圧が高い状態が長く続くと、まるで常に強い水圧がかかっているホースのように、血管は張りつめて硬くなっていきます。
これが「動脈硬化」と呼ばれる状態です。
動脈硬化は大きな血管だけでなく、体中の細かい血管にも起こります。
その結果、脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中や、心臓の血管が詰まる心筋梗塞、腎臓の働きが悪くなる腎不全など、さまざまな病気の原因となります。
- 年齢を重ねること
- 家族に高血圧の人がいること
- 太っていること
- 塩分を取りすぎること
- 運動不足
- お酒の飲みすぎ
高血圧の約9割は、はっきりした原因が分からないタイプです。
親から受け継いだ体質と、日々の生活習慣が複雑に絡み合って起こると考えられています。
心不全とは心臓のポンプ機能が低下した状態
心不全とは、心臓が血液をうまく送り出せなくなった状態を指します。
心不全という一つの病気があるわけではなく、さまざまな心臓の病気の結果として起こる「状態」だと理解してください。
心臓は体中に血液を送るポンプの役割をしています。
このポンプの働きが弱くなると、体に必要な酸素や栄養が十分に届かなくなります。
そのため、少し動いただけで息が切れたり、疲れやすくなったりします。
また、心臓の働きが弱ると、血液の流れが滞ります。
腎臓への血の巡りが悪くなると、おしっこの量が減り、体に水分が溜まってしまいます。
その結果、足がむくんだり、体重が急に増えたりします。
さらに悪化すると、肺に水が溜まって、横になって眠れないほど息苦しくなることもあります。
- 心筋梗塞や狭心症
- 心臓の弁の病気
- 心臓の筋肉自体の病気
- 不整脈
- 高血圧
心不全の原因はいろいろありますが、心筋梗塞や狭心症、心臓の弁の病気、心臓の筋肉自体の病気、不整脈、そして高血圧などが主なものです。
中でも高血圧は、何年もかけて少しずつ心臓を弱らせていく、特に注意が必要な原因です。
高血圧の人は心不全になるリスクが約2〜3倍高い
研究によると、高血圧の人は血圧が正常な人と比べて、心不全になる危険性が男性で約2倍、女性で約3倍高いことが分かっています。
より具体的に言うと、上の血圧が160以上ある人は、血圧が140未満の人と比べて、一生のうちに心不全になる可能性が約2倍になるというデータもあります。
血圧が160/100mmHg以上の被験者では、140/90mmHg未満の被験者と比較して、CHFの生涯リスクは2倍になりました。
引用:PubMed Lifetime risk for developing congestive heart failure: the Framingham Heart Study
また別の調査では、心不全になった人のうち、男性の約4割、女性の約6割は高血圧が主な原因だったことが明らかになっています。
つまり、心不全患者さんの半数近くは、高血圧がきっかけで発症しているのです。
高血圧と心不全の関係を示す重要なデータ
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 高血圧の人の心不全リスク | 男性:約2倍、女性:約3倍 |
| 心不全患者のうち高血圧が原因 | 男性:約40%、女性:約60% |
| 血圧が10下がるごとのリスク減少 | 約28%減少 |
さらに注目すべき点として、血圧が10下がるごとに、心不全のリスクが約28%減るという研究結果があります。
これは、血圧をしっかり管理することで、心不全になる危険性を大きく減らせることを示しています。
特に知っておいていただきたいのは、高血圧と診断されてから心不全を発症するまでの時間です。
前述の研究では、高血圧の方を平均約14年追跡した期間中に心不全を発症したケースが確認されています。
この十数年という時間は、血圧をきちんとコントロールすることで心不全を防ぐための、とても貴重な「予防のチャンス」なのです。
高血圧で心臓が疲弊していくメカニズム
高血圧が長く続くと、心臓には少しずつさまざまな変化が起こります。
最初は心臓が頑張って適応しようとするのですが、やがてその頑張りが限界に達し、心臓の働きが低下していきます。
このプロセスを理解することで、予防の大切さがより実感できるはずです。
高血圧による心臓の変化は、大きく分けて三つの段階で進んでいきます。
- 第一段階:心臓の筋肉が厚くなる(高い血圧に対抗するため心筋が肥大)
- 第二段階:心臓の壁が硬くなる(血液を十分に受け入れられなくなる)
- 第三段階:血管にも影響が及ぶ(全身の血液の流れが悪くなる)
第一段階として、心臓の筋肉が厚くなります。
第二段階では、心臓の壁が硬くなり、血液を十分に受け入れられなくなります。
第三段階では、血管にも影響が及び、全身の血液の流れが悪くなっていきます。
これらの変化は同時並行で起こることもあり、互いに影響し合いながら、徐々に心不全へと進行していきます。
大切なのは、これらの変化は時間をかけて起こるということです。
つまり、早い段階で気づいて対処すれば、進行を止めたり遅らせたりすることができるのです。
高い血圧に対抗するため心臓の筋肉が厚くなる
高血圧の状態では、心臓は高い圧力に打ち勝って全身に血液を送らなければなりません。
これは、坂道を自転車で上り続けるようなものです。
このため、心臓の筋肉、特に左側の部屋(左心室)の壁が次第に厚くなっていきます。
これは、運動を続けると腕や脚の筋肉が太くなるのと似ています。
心臓の筋肉が厚くなることを、医学用語で「左室肥大」と呼びます。
最初のうちは、筋肉が厚くなることで、より強い力で血液を押し出せるようになります。
つまり、心臓が高い血圧に対応しようと頑張っている状態です。
しかし、この状態が何年も続くと、問題が起こってきます。
心臓の筋肉が厚くなりすぎると、筋肉の一つ一つの細胞に酸素や栄養を届ける血管が足りなくなります。
また、筋肉の間に固い組織(線維)が増えて、心臓全体が硬くなっていきます。
心臓の筋肉が厚くなっている人は、心不全だけでなく、不整脈や突然死のリスクも高くなることが知られています。
したがって、LVHは心房細動、心室性不整脈、および心室頻拍(SCD)の強力かつ独立した予測因子であるにもかかわらず、著しく過小評価されています。
引用:PubMed Hypertension, left ventricular hypertrophy, and sudden cardiac death
つまり、左室肥大は心不全への道のりの重要な通過点なのです。
心臓の壁が硬くなり血液を送り出しにくくなる
心臓の筋肉が厚くなり、さらに固い線維が増えてくると、心臓の壁は硬くなっていきます。
風船を思い浮かべてください。
新しい風船は柔らかくて膨らみやすいですが、古くなると硬くなって膨らみにくくなります。
心臓も同じです。
心臓が硬くなると、血液を受け入れるために広がることができなくなります。
これを「拡張機能の障害」と呼びます。
つまり、心臓が十分に広がらないので、中に入る血液の量が減ってしまうのです。
拡張機能の障害は、高血圧による心臓の変化の中で、最も早く現れる異常の一つです。
心臓が硬くなると、心臓の中の圧力が上がり、その圧力が肺の血管に逆流します。
その結果、肺に血液が溜まって息切れなどの症状が出てきます。
興味深いことに、この段階では心臓が血液を送り出す力(収縮する力)は比較的保たれています。
にもかかわらず、息切れなどの心不全の症状が現れるのです。
このタイプの心不全は「収縮する力が保たれた心不全」と呼ばれ、高血圧の方、特に高齢の方や女性に多く見られます。
HFpEFの発生率は男女で同程度ですが、HFpEFの有病率は女性の方が男性よりも高くなっています(図1)。
引用:Journal of the American College of Cardiology Heart Failure With Preserved Ejection Fraction: JACC Scientific Statement
実際、心不全患者さんの3〜6割は、このタイプだと言われています。
さらに病状が進むと、血液を受け入れにくいだけでなく、送り出す力も弱くなってきます。
この段階になると、より重い心不全の状態となり、日常生活に大きな制限が出てしまいます。
血管にも影響が及ぶ
高血圧は心臓だけでなく、体中の血管にも悪い影響を与えます。
高い圧力を受け続けた血管は、内側の壁が傷つき、厚く硬くなっていきます。
これが動脈硬化です。
動脈硬化が進むと、血管は弾力を失い、まるで古いゴムホースのようになります。
血液の流れも悪くなります。
特に、心臓に酸素や栄養を送る血管(冠動脈)に動脈硬化が起こると、心臓の筋肉への血液供給が不足します。
その結果、胸が痛くなる狭心症や、血管が完全に詰まる心筋梗塞が起こりやすくなります。
心筋梗塞は心不全の大きな原因の一つです。
また、腎臓の血管に動脈硬化が起こると、腎臓の働きが低下します。
腎臓は体の中の水分や塩分を調節する大切な臓器です。
腎臓の働きが悪くなると、水分や塩分がうまく排出できなくなり、血圧がさらに上がるという悪循環が生まれます。
このように、高血圧、心臓の病気、腎臓の病気は、お互いに影響し合って、状態を悪化させていきます。
これを専門用語で「心腎連関」と呼んでいます。
特に注意が必要な高血圧のパターン
すべての高血圧の方が同じリスクを持っているわけではありません。
いくつかの条件が重なると、心不全になる危険性はさらに高まります。
ここでは、特に気をつけていただきたい高血圧のパターンについて説明します。
高血圧があるだけでも心不全のリスクは高まりますが、さらに他の要因が加わることで、そのリスクは掛け算のように大きくなっていきます。
例えば、高血圧の期間が長い、他の病気も持っている、生活習慣に問題があるといった場合です。
これらの要因は一つ一つが独立して作用するだけでなく、互いに影響し合って心臓へのダメージを加速させます。
自分がどのパターンに当てはまるかを知ることで、より適切な予防策を立てることができます。
もし複数の危険因子を持っている場合でも、それぞれに対処することでリスクを減らすことは可能です。
大切なのは、早めに気づいて行動を起こすことです。
血圧140/90mmHg以上の状態が数年以上続いている
高血圧の期間が長ければ長いほど、心臓へのダメージは積み重なっていきます。
上の血圧が140以上、または下の血圧が90以上の状態が何年も続いている場合、心臓にはすでに変化が起き始めている可能性があります。
研究によると、高血圧の方を追跡した期間中に心不全を発症したケースでは、長期にわたる経過があることが分かっています。
ただし、実際の進行期間には個人差が大きく、人によって違いがあります。
血圧が高い状態を長く放置するほど、また血圧の値が高いほど、心不全への進行は早まる傾向があります。
長期にわたる高血圧のもう一つの合併症である進行性腎不全は、心腎症候群(心不全および腎不全)を引き起こします。
引用:PubMed The Transition From Hypertension to Heart Failure: Contemporary Update
特に若い年齢で高血圧になった場合、長い人生の中でずっと心臓に負担がかかり続けることになるため、より積極的な管理が必要です。
逆に、若いうちから血圧が正常だった方は、その後の人生で心不全になるリスクが低いことが分かっています。
これは、早くから血圧を管理することがいかに大切かを示しています。
- 白衣高血圧:病院では緊張して血圧が上がる
- 仮面高血圧:病院では正常だが普段の生活では高い
- 夜間高血圧:夜寝ている間に血圧が十分に下がらない(心臓への負担が特に大きい)
また、病院で測る血圧だけでなく、家で測る血圧も大切です。
病院では緊張して血圧が上がってしまう「白衣高血圧」や、病院では正常なのに普段の生活では高い「仮面高血圧」もあります。
さらに、夜寝ている間に血圧が十分に下がらない「夜間高血圧」も、心臓への負担が大きいことが知られています。
糖尿病や脂質異常症を併発している
高血圧に加えて、糖尿病や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)などの病気も持っている場合、心不全のリスクは掛け算のように大きくなります。
これらの病気が重なることで、血管の老化(動脈硬化)がより早く進み、心臓や血管へのダメージが増えていきます。
糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことで血管の内側を傷つけ、心臓の筋肉にもダメージを与えます。
高血圧と糖尿病の両方がある方は、心不全のリスクが著しく高くなることが、多くの研究で明らかになっています。
脂質異常症、特に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高い状態は、血管の壁にコレステロールが溜まって動脈硬化を進めます。
心臓に血液を送る血管に動脈硬化が起こると、心筋梗塞のリスクが高まり、それが心不全の原因となります。
また、腎臓の働きが悪い「慢性腎臓病」も重要な危険因子です。
腎臓の機能が低下すると、体の中の水分と塩分のバランスをうまく調節できなくなり、血圧のコントロールがより難しくなります。
さらに、腎臓から出るホルモンのバランスが崩れることで、心臓への負担が増します。
- 内臓脂肪型肥満
- 高血圧
- 脂質異常
- 高血糖
「メタボリックシンドローム」、つまり内臓脂肪型肥満に加えて、高血圧、脂質異常、高血糖が重なった状態も、心不全のリスクを大きく高めます。
これらの危険因子を複数持っている場合は、それぞれをしっかり管理することが、心不全予防において極めて重要です。
喫煙や肥満などの生活習慣リスクがある
日々の生活習慣も、心不全のリスクに大きく関わっています。
特にタバコと肥満は、高血圧による心臓へのダメージをさらに悪化させる重要な要因です。
タバコは血管の内側を直接傷つけ、血管の老化を早めます。
また、タバコを吸うと交感神経が刺激されて、一時的に血圧が上がります。
長年タバコを吸い続けると、心臓や血管の病気のリスクが著しく高まり、心不全の発症リスクも増加します。
高血圧とタバコの両方がある場合、そのリスクは単純に足し算したものよりもはるかに大きくなります。
肥満、特にお腹の周りに脂肪が溜まる内臓脂肪型肥満は、インスリンの働きが悪くなったり、コレステロールの異常が起きたりと、さまざまな体の不調を引き起こします。
肥満は糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病といった既知の心血管疾患の発症の主要な危険因子です。
引用:Oxford Academic Obesity and cardiovascular health
また、体重が重いこと自体が心臓への負担を増やします。
体重が増えると、心臓はより多くの血液を送らなければならず、これが心臓の負荷となります。
最近の研究では、肥満や太り気味の方で高血圧がある場合、心不全のリスクが近年さらに増えていることが報告されています。
具体的には、1990年から2014年の期間では、それ以前の1965年から1989年の期間と比べて、肥満または太り気味の方における心不全の発症リスクが24〜62%高くなっていることが示されています。
生活習慣と心不全リスク
| 生活習慣 | 心臓への影響 |
|---|---|
| 喫煙 | 血管を傷つけ、血圧を上昇させる |
| 肥満 | 心臓の負担増、インスリン抵抗性 |
| 過度の飲酒 | 血圧上昇、心筋を弱らせる |
| 運動不足 | 血圧コントロール困難、体重増加 |
お酒の飲みすぎも心臓に良くありません。
アルコールは一時的に血圧を下げることがありますが、毎日大量に飲み続けると血圧が上がり、心臓の筋肉自体を弱らせてしまうこともあります。
運動不足も見逃せない危険因子です。
定期的な運動は血圧を下げ、体重をコントロールし、心臓の働きを良くする効果があります。
逆に体を動かさない生活は、これらの良い効果を得られないことになります。
血圧管理で心不全を防ぐ方法
高血圧から心不全への進行を防ぐには、適切な血圧管理が何より大切です。
幸いなことに、血圧をしっかりコントロールすれば、心不全のリスクを大幅に減らすことができます。
ここでは、具体的な予防方法について説明します。
- 薬による治療:医師の指導のもとで適切な降圧薬を服用
- 生活習慣の改善:減塩、運動、禁煙、体重管理など
血圧管理には大きく分けて二つの柱があります。
一つは薬による治療、もう一つは生活習慣の改善です。
この二つは車の両輪のようなもので、どちらか一方だけでは十分な効果が得られません。
薬を飲んでいるからといって生活習慣を疎かにしてはいけませんし、生活習慣に気をつけているからといって必要な薬を飲まないのも危険です。
また、定期的な検査で自分の状態を把握することも重要です。
血圧や心臓の状態を定期的にチェックすることで、問題を早期に発見し、対処することができます。
これらを組み合わせることで、心不全の予防効果は最大限に高まります。
目標血圧を維持することで心臓への負担を減らす
血圧を適切な範囲に保つことは、心不全予防の最も重要なポイントです。
現在の国内外の医療ガイドラインでは、心不全のリスクが高い高血圧の方に対して、上の血圧を130未満、下の血圧を80未満に保つことを目標としています。
血圧管理の効果を示す研究結果
| 研究内容 | 結果 |
|---|---|
| SPRINT試験(上の血圧を120未満にコントロール) | 心不全リスクが38%減少 |
| 大規模メタ解析(上の血圧が10下がるごと) | 心不全リスクが約28%減少 |
アメリカで行われた大規模な研究(SPRINT試験)では、上の血圧を120未満に厳しくコントロールしたグループは、140未満を目標とした通常の治療グループと比べて、心不全の発症リスクが38%も減ったことが分かりました。
これは、より厳しい血圧管理が心不全予防に効果的であることを示す重要な結果です。
また、上の血圧が10下がるごとに、心不全のリスクが約28%減るという研究結果もあります。
これは、たとえ「ちょっと高めかな」という程度の血圧でも、できるだけ低く保つことが心不全予防に役立つ可能性を示しています。
ただし、血圧を下げすぎることにも注意が必要です。
特にご高齢の方や、すでに心不全になっている方では、血圧が低すぎると逆に体調が悪くなることがあります。
年齢や持っている病気、全身の状態を考えながら、一人ひとりに合った目標血圧を設定することが大切です。
- ACE阻害薬
- ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)
- カルシウム拮抗薬
- 利尿薬(サイアザイド系など)
血圧を下げる薬(降圧薬)にはいくつかの種類があります。
ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、利尿薬などがよく使われます。
中でも、サイアザイド系などの利尿薬や、体内のホルモンの働きを調整する薬(レニン・アンジオテンシン系に作用する薬)は、研究で心不全の予防効果が示されています。
多くの場合、適切に血圧をコントロールするには、複数の薬を組み合わせて使う必要があります。
減塩や運動など毎日の生活で実践できること
薬による治療と同じくらい、日々の生活習慣の見直しも血圧管理と心不全予防において極めて重要です。
今日からできる具体的な対策をご紹介します。
塩分を控えることが最も大切
まず何より大切なのが、塩分を控えることです。
日本高血圧学会は、高血圧の方に対して1日6g未満の食塩摂取を推奨しています。
ちなみに日本人の平均的な塩分摂取量は1日10g以上と言われているので、かなり減らす必要があります。
塩分を取りすぎると血圧が上がるだけでなく、心臓の筋肉が厚くなったり硬くなったりすることを直接促す可能性も指摘されています。
- 加工食品(ハム、ソーセージ、漬物など)や外食を減らす
- 醤油やソースなどの調味料を控えめにする
- だしや香辛料、レモンなどを使って味に変化をつける
- 食品を買うときに栄養成分表示を確認し、ナトリウムや食塩相当量の少ない商品を選ぶ
減塩のコツとしては、加工食品(ハム、ソーセージ、漬物など)や外食を減らす、醤油やソースなどの調味料を控えめにする、だしや香辛料、レモンなどを使って味に変化をつける、といった方法があります。
また、食品を買うときに栄養成分表示を見て、ナトリウムや食塩相当量の少ない商品を選ぶことも効果的です。
一方で、野菜や果物に多く含まれるカリウムを積極的に摂ることもお勧めします。
カリウムは体の中の余分な塩分を外に出す手助けをして、血圧を下げる効果があります。
ただし、腎臓の働きが悪い方はカリウムを控える必要がある場合もあるため、医師に相談してください。
体重を適正に保つ
体重管理も重要です。
太っている方が体重を減らすと、血圧が下がり、心臓への負担も軽くなります。
食べすぎを避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
野菜や果物、低脂肪の乳製品を多く取り、脂っこいものを控える「DASH食」という食事パターンは、血圧を下げる効果が実証されています。
定期的に体を動かす
運動も効果的です。
ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を、週に合計150分以上(1日30分×週5日程度)行うことが推奨されています。
運動は血圧を下げるだけでなく、心臓の働きを良くし、体重をコントロールし、ストレスを減らす効果もあります。
推奨される運動量
| 運動の種類 | 推奨量 |
|---|---|
| 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など) | 週に合計150分以上(1日30分×週5日程度) |
ただし、すでに心臓の病気がある方や、運動中に胸が痛くなるなどの症状が出る方は、医師に相談の上、適切な運動の強さを決めることが大切です。
タバコは必ずやめる
タバコを吸っている方は、必ず禁煙してください。
タバコは血管を傷つけ、血圧を上げ、心臓や血管の病気のリスクを著しく高めます。
禁煙すれば、これらのリスクは時間とともに下がっていきます。
お酒はほどほどに
お酒は適度な量にとどめましょう。
飲みすぎは血圧を上げ、心臓に悪影響を及ぼします。
一般的には男性で日本酒なら1合程度、女性ではその半分程度が目安とされていますが、高血圧や心臓病がある方では節酒や禁酒が望ましい場合も多くあります。
また、肝臓の病気がある方、薬を服用中の方などは、さらに厳格な制限が必要なため、必ず医師に相談してください。
飲酒量の目安
| 性別 | 目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 男性 | 日本酒1合程度 | 高血圧や心臓病がある方は節酒・禁酒が望ましい場合も |
| 女性 | 日本酒0.5合程度 | 同上 |
ストレスをためない
ストレスも血圧を上げる要因になります。
十分な睡眠をとる、好きなことをする時間を持つ、リラックスできる方法を見つけるなど、自分に合ったストレス解消法を見つけることが大切です。
定期的な検査で早期に発見する
高血圧や心臓の異常を早く見つけるためには、定期的な健康診断と適切な検査が重要です。
血圧を定期的に測る
血圧測定は最も基本的で大切な検査です。
病院での測定に加えて、家での血圧測定も推奨されます。
家で測る血圧は、病院で緊張して血圧が上がってしまう「白衣高血圧」や、病院では正常なのに普段は高い「仮面高血圧」を見つけるのに役立ちます。
朝起きたときと夜寝る前の1日2回測ることが推奨されています。
- 朝起きたとき(起床後1時間以内、排尿後、朝食・服薬前)
- 夜寝る前(就寝前)
- 1日2回の測定を推奨
- リラックスした状態で測定
心電図や心臓の超音波検査
心電図検査では、心臓が大きくなっていないか、不整脈がないか、過去に心筋梗塞を起こしていないかなどが分かります。
心臓の超音波検査(心エコー)は、心臓の詳しい構造や動きを見ることができる検査です。
心臓の筋肉が厚くなっていないか、心臓がちゃんと動いているか、弁に異常がないかなどを確認できます。
主な検査とその目的
| 検査名 | わかること |
|---|---|
| 心電図 | 心臓の肥大、不整脈、過去の心筋梗塞 |
| 心エコー(超音波検査) | 心筋の厚さ、心臓の動き、弁の状態 |
| 血液検査(BNP/NT-proBNP) | 心臓への負担の程度 |
| 血液検査(その他) | 糖尿病、脂質異常症、腎機能 |
血液検査
血液検査では、BNPやNT-proBNPという心臓の負担を示す数値を測ることができます。
これらの値が高い場合、心臓に負担がかかっている、または心不全の初期段階にある可能性があります。
また、糖尿病、コレステロールの異常、腎臓の働きなどもチェックすることが大切です。
これらの病気は心不全のリスクを高めるため、早く見つけて適切に管理する必要があります。
高血圧と言われている方は、定期的に病院を受診し、血圧のコントロール状態や臓器への影響がないかを確認することが大切です。
血圧が安定していない場合は月1回程度、安定している場合でも少なくとも年に1回は受診し、健康診断で検査結果を確認することをお勧めします。
- 血圧が安定していない場合:月1回程度
- 血圧が安定している場合:少なくとも年1回
血圧が安定していても、定期的なチェックを怠らないことが、心不全予防の鍵となります。
よくある質問
- 高血圧でも体調が悪くなければ治療しなくていいのでは?
-
高血圧は「静かな殺し屋」とも呼ばれ、自覚症状がほとんどないまま心臓や血管にダメージを与え続けます。
症状が出たときには既に臓器が傷んでいることが多いため、症状がなくても医師の指導のもとで適切な治療を受けることが大切です。
- 血圧を下げる薬を一度飲み始めたら一生やめられないのですか?
-
薬が必要かどうかは、その方の状態によって変わります。
生活習慣を改善して血圧が十分に下がれば、医師の判断で薬を減らしたり、やめたりできる場合もあります。
ただし、研究では薬を中止すると血圧が再び上昇する例が多いことが報告されています。
自分の判断で勝手にやめるのは危険ですので、必ず医師の管理のもとで段階的に評価してもらうことが大切です。
- 家で測る血圧と病院で測る血圧、どちらを重視すべきですか?
-
どちらも大切ですが、普段の生活での血圧を反映する家庭血圧は、将来の心臓や血管の病気のリスクを知る上でより重要とされています。
家で測って、上が135以上、または下が85以上が続く場合は、医師に相談することをお勧めします。
- 塩分を減らすのは高血圧の人だけでいいのでしょうか?
-
塩分の取りすぎは、今は高血圧でない人も、将来高血圧になるリスクを高めます。
世界保健機関は、すべての大人に対して1日5g未満の食塩摂取を推奨しており、予防の観点からも減塩は大切です。
- 心不全の初期症状にはどんなものがありますか?
-
階段や坂道を上るときの息切れ、疲れやすさ、足のむくみ、夜中にトイレに何度も行く、体重が急に増えるなどが初期症状として現れることがあります。
こうした症状がある場合は、早めに病院を受診することをお勧めします。
まとめ
高血圧は心不全の最も重要な原因の一つです。
適切な管理をせずに放置すると、心臓に深刻なダメージを与え続けます。
高血圧の方は、血圧が正常な方と比べて心不全になるリスクが2〜3倍高く、心不全患者さんの約半数は高血圧が主な原因で発症しています。
高血圧が心不全を引き起こす流れは次のようになります。
まず、高い血圧に対抗するために心臓の筋肉が厚くなります。
やがて心臓の壁が硬くなり、血液を十分に受け入れたり送り出したりできなくなります。
この過程には通常、数年から十数年の期間があり、この間に適切な血圧管理を行えば、心不全の発症を予防したり遅らせたりすることができます。
特に注意が必要なのは、高血圧が長期間続いている場合、糖尿病やコレステロールの異常などの他の病気も持っている場合、そしてタバコを吸っていたり太っていたりする場合です。
これらの要因が重なると、心不全のリスクはさらに高まります。
- 目標血圧:上130未満、下80未満
- 減塩:1日6g未満
- 運動:週150分以上の有酸素運動
- 体重管理:適正体重の維持
- 禁煙:必須
- 節酒:ほどほどに
- 定期検査:血圧測定、心電図、血液検査など
心不全を予防するには、血圧を上130未満、下80未満に保つことを目標とし、必要に応じて血圧を下げる薬による治療を受けることが重要です。
同時に、1日6g未満の減塩、適正体重の維持、週150分以上の運動、禁煙、お酒はほどほどになど、生活習慣の改善も欠かせません。
また、定期的な健康診断を受け、血圧や心臓の状態を確認することで、問題を早く見つけて対処できます。
家での血圧測定も、日常的な血圧管理に役立ちます。
高血圧と言われても、適切な治療と生活習慣の改善で、心不全をはじめとするさまざまな病気を予防することは十分に可能です。
体調が悪くなくても油断せず、医師の指導のもとで継続的に血圧管理を行うことが、健康な生活を送るための鍵となります。
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