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高血圧と飲酒の関係とは?お酒が血圧に与える影響と適量の目安

高血圧と飲酒の関係とは?お酒が血圧に与える影響と適量の目安

「お酒を飲むと血圧が上がるって本当?」「高血圧でもお酒は飲んでいいの?」こうした疑問をお持ちの方は少なくないでしょう。

高血圧は成人の約2人に1人が該当する国民病ですが、実は飲酒習慣が血圧に大きな影響を与えていることが、国内外の研究で明らかになっています。

厚生労働省が2024年に発表した初の飲酒ガイドラインでも、高血圧は少量の飲酒でもリスクが高まる疾患として注意喚起されています。

高血圧と飲酒の因果関係
  • 飲酒直後は血圧が下がるが、その後上昇し翌日まで影響が続く
  • 習慣的飲酒は神経系やホルモン系を介して慢性的に血圧を上げる
  • 少量の飲酒でも継続すれば高血圧のリスクが高まる
  • 飲酒量が多いほど血圧上昇の程度も大きくなる
  • 適量厳守と休肝日設定で血圧管理と飲酒の両立は可能

一方で、お酒を楽しみにしている方にとって「完全にやめなければならないのか」という点も気がかりでしょう。

実は、適量を守り、飲み方を工夫することで、高血圧のリスクを抑えながらお酒との付き合い方を見つけることは可能です。

本記事では医師の立場から、高血圧と飲酒の関係について科学的根拠に基づいて解説し、適切な飲酒量や生活習慣のポイントをご紹介します。

この記事でわかること
  • お酒が血圧に与える影響のメカニズム
  • 高血圧を悪化させる飲み方の特徴
  • 高血圧でも安全にお酒を楽しむための適量と工夫
  • 飲酒以外で気をつけたい生活習慣(睡眠・ストレス・嗜好品)
  • よくある質問への回答
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

お酒を飲むと血圧は上がる?高血圧とアルコールの関係

高血圧に悩む方がまず知っておきたいのが、飲酒と血圧の関係です。

結論から言えば、お酒は血圧に大きな影響を与えます。

しかし、その影響は飲酒直後と長期的な習慣では異なる様相を見せるため、正しく理解することが重要です。

アメリカ心臓学会が2023年に発表した大規模研究では、日本、アメリカ、韓国の成人約2万人を対象に飲酒と血圧の関係を調査しました。

その結果、日常的にアルコールを摂取する人は、摂取しない人と比較して血圧が上昇しやすく、この傾向は少量の飲酒でも認められることが明らかになっています。

デンマークの大規模研究によると、週に35杯以上飲むグループと週1〜2杯のグループを比較すると、収縮期血圧(上の血圧)で11mmHg、拡張期血圧(下の血圧)で7mmHgの差が確認されました。

日本でも、厚生労働省が2024年に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」において、高血圧は少量の飲酒でも発症リスクが高まる疾患として位置づけられています。

飲酒直後は血圧が下がるが、その後上昇する

「お酒を飲むと血圧が下がる」という話を聞いたことがある方もいるでしょう。

これは完全な誤りではありません。

実際、飲酒直後には一時的に血圧が低下する現象が起こります。

アルコールが体内で分解される過程で、アセトアルデヒドという物質が生成されます。

この物質には血管を拡張させる働きがあるため、飲酒後数時間は血圧が下がることがあります。

血管が広がることで血液の流れがスムーズになり、心臓への負担が一時的に軽減されるのです。

しかし、これは短時間の反応に過ぎません。

系統的レビュー・メタ解析によると、飲酒後6時間以内は血圧が一過性に低下しますが、その後(6~13時間以上)は血圧が上昇に転じることが示されています。

しかし、摂取後13時間以上経過すると、高用量アルコールは収縮期血圧を3.7mmHg、拡張期血圧を2.4mmHg上昇させ、心拍数の有意な増加は摂取後24時間まで持続しました。

引用:PubMed Central Alcohol Intake and Arterial Hypertension: Retelling of a Multifaceted Story

つまり、飲酒直後の一時的な血圧低下は、長期的には血圧上昇という望ましくない結果につながる可能性があるのです。

習慣的な飲酒が高血圧を引き起こす理由

では、なぜ習慣的な飲酒は血圧を上昇させるのでしょうか。

そのメカニズムは複雑ですが、主に以下の要因が関与していると考えられています。

飲酒が血圧を上昇させる主なメカニズム
  • 交感神経を刺激し、心拍数増加・血管収縮を引き起こす
  • レニン・アンジオテンシン系を活性化し、アンジオテンシンIIが増加
  • エンドセリン分泌を促進し、血管をさらに収縮させる
  • カルシウム上昇・マグネシウム低下による血管収縮性の亢進
  • 習慣的な多量飲酒により高血圧リスクが上昇する

第一に、アルコールは交感神経系を刺激します。

交感神経が活性化されると、心拍数が増加し、血管が収縮するため、血圧が上昇します。

継続的な飲酒により、この状態が慢性化することで、安静時の血圧も徐々に高くなっていくと考えられています。

第二に、アルコールはレニン・アンジオテンシン系と呼ばれる体内の血圧調節システムに影響を与えます。

このシステムが過剰に活性化されると、血管収縮物質であるアンジオテンシンIIが増加し、血圧が上昇します。

また、アルコールはエンドセリンという血管収縮物質の分泌を促進することも報告されています。

第三に、飲酒によって体内の電解質バランスが乱れることも血圧上昇の一因です。

特に、血管の筋肉細胞内のカルシウム濃度が上昇し、マグネシウム濃度が低下することで、血管が収縮しやすくなります。

国際的な研究でも、1日あたり3杯以上の飲酒を続けると、高血圧の発症リスクが明確に上昇することが一貫して報告されています。

しかし、1 日 3 杯以上飲酒すると、飲酒しない場合または飲酒量が少ない場合と比較して、SBP と拡張期血圧 (DBP) が有意に高くなりました (アルコール摂取量が多いほど高くなります)。

引用:American Heart Association Journals Alcohol Use and Cardiovascular Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association

少量のお酒なら高血圧に影響しないのか

「少量なら問題ない」という考えは、残念ながら高血圧に関しては当てはまらない可能性が高いことが、最近の研究で明らかになっています。

2024年に発表された大規模なメタ解析(複数の研究結果を統合して分析する手法)では、1日12gのアルコール(ビール約300ml、日本酒約0.6合に相当)を基準とした場合、それ以上の飲酒量では高血圧のリスクが直線的に増加することが示されました。

特に注目すべきは、1日24g以上の飲酒で高血圧リスクが明確に上昇する点です。

基準値として12gアルコール/日を使用した場合、0、24、36、48g/日でのリスク比はそれぞれ0.89(0.84~0.94)、1.11(1.07~1.15)、1.22(1.14~1.30)、1.33(1.18~1.49)であった。

引用:American Heart Association Journals Alcohol Intake and Risk of Hypertension: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies

また、性別による違いも重要です。

女性は男性に比べてアルコール代謝の影響を受けやすく、体内の水分量が少なくアルコール分解能力も低いため、同じ量の飲酒でも血圧上昇が顕著になる傾向があります。

血圧リスクは両性とも低用量域から直線的に上昇する可能性があり、特に女性では1日12g以上で上昇が観察されています。

厚生労働省のe-ヘルスネットでも、「少量のアルコールは血圧を一時的に低下させるが、長期間の飲酒は血圧を上昇させ、高血圧の原因になりうる」と明記されています。

以前は「適度な飲酒は心臓に良い」という説もありましたが、近年の研究ではこの見解に疑問が呈されています。

高血圧に関しては、少量であっても継続的な飲酒はリスク要因となる可能性があることを認識しておくことが大切です。

高血圧を悪化させる飲み方とは

すでに高血圧の診断を受けている方や、血圧が気になり始めた方にとって、どのような飲み方が特にリスクが高いのかを知ることは重要です。

単に「量」だけでなく、「飲み方のパターン」も血圧に大きな影響を与えることが分かっています。

週末にまとめて飲む「ドカ飲み」は特に危険

平日は我慢して、週末にまとめて飲むという習慣はありませんか。

このパターンは、実は高血圧にとって最も危険な飲み方の一つです。

一度に大量のアルコールを摂取すると、血圧の急激な変動が起こります。

飲酒直後には血圧が下がりますが、その後の反動で通常以上に血圧が上昇することがあります。

この急激な変動は血管に大きな負担をかけ、動脈硬化を進行させる要因となります。

さらに、短時間に大量のアルコールを摂取することで、心臓のリズムが乱れる心房細動という不整脈のリスクも高まります。

厚生労働省のガイドラインでは、1回の飲酒で純アルコール60g以上(一時多量飲酒)を避けるべきとしており、このような短時間大量飲酒は心房細動のリスクを高めることが報告されています

週末の「ドカ飲み」は、たとえ週の合計飲酒量が同じであっても、毎日少量ずつ飲む場合に比べて心血管系への悪影響が大きいとされています。

毎日の晩酌が血圧を上げ続ける

「毎日お酒を飲まないと落ち着かない」という方は要注意です。

習慣的な飲酒、特に毎日の晩酌は、血圧を慢性的に上昇させる主要な原因となります。

研究では、毎日飲酒する人は飲酒しない人と比較して、高血圧の発症リスクが大幅に高いことが示されています。

これは、アルコールによる交感神経系の持続的な刺激や、血圧調節機能の障害が積み重なることが原因と考えられています。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、飲酒を控えめにすることが生活習慣の改善として推奨されており、特に毎日の飲酒習慣を見直すことの重要性が強調されています。

また、毎日の飲酒は肝臓にも大きな負担をかけます。

肝臓がアルコールを分解するには時間がかかり、ビール中瓶2本分のアルコールを処理するのに平均6〜8時間を要します。

毎日飲酒を続けると、肝臓が休む時間がなくなり、肝機能の低下を招きます。

肝機能が低下すると、体内の代謝バランスが崩れ、これも血圧上昇の一因となります。

厚生労働省も、週に飲まない日を設けることを推奨しており、連続して飲酒しないことで、肝臓をアルコールから解放し、血圧調節機能の回復を促すことができます。

塩分の多いおつまみが血圧上昇に拍車をかける

お酒を飲む際のおつまみ選びも、実は血圧に大きな影響を与えます。

多くの方が気づかないうちに、飲酒時に過剰な塩分を摂取している可能性があります。

お酒のおつまみとして好まれる食品の多くは、塩分含有量が高い傾向にあります。

塩分の多いおつまみ例
  • 漬物・干物・塩辛
  • ナッツ類・スナック菓子
  • 焼き鳥(タレ)
  • 枝豆(塩ゆで)
  • チーズ

アルコールには食欲を増進させる作用があるため、飲酒中は知らず知らずのうちにこれらの食品を多く摂取してしまいがちです。

日本人の食塩摂取量は、厚生労働省の「令和4年国民健康・栄養調査」によると平均10g前後で推移しており、目標量(成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満)を大きく上回っています。

塩分の過剰摂取は高血圧の最大の原因の一つとされており、飲酒時のおつまみがこの問題をさらに悪化させている可能性があります。

塩分を摂取すると、体内のナトリウム濃度を調整するために血液量が増加し、その結果血管にかかる圧力が高まります。これが血圧上昇のメカニズムです。

飲酒とおつまみによる塩分摂取の相乗効果は、血圧を大きく上昇させる要因となります。

お酒を飲む際は、塩分控えめのおつまみを選ぶことが重要です。

例えば、以下のような塩分が少ない食品を選ぶよう心がけましょう。

塩分控えめにしやすいおつまみ例
  • 野菜スティック
  • 冷奴(醤油は少量)
  • 刺身(醤油控えめ)
  • 蒸し鶏
  • サラダ

高血圧でも安心してお酒を楽しむための適量と飲み方

高血圧だからといって、必ずしも完全に禁酒する必要はありません。

適量を守り、飲み方を工夫することで、血圧への影響を最小限に抑えながらお酒を楽しむことは可能です。

ここでは、具体的な適量と実践的な工夫をご紹介します。

1日あたりの適量はどのくらい?具体的な目安

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では、1日に摂取するアルコール量を、男性で20〜30g、女性で10〜20g以下に控えることを推奨(純アルコール量)しています。

ここで重要なのは、お酒の「量」ではなく、含まれる「純アルコール量」で考えることです。

純アルコール量は以下の計算式で求められます。

純アルコール量の計算式
  • 飲酒量(ml)× アルコール度数(%)÷ 100 × 0.8(アルコールの比重)= 純アルコール量(g)
  • 例(アルコール度数5%のビール500mlの場合): 500ml × 5% ÷ 100 × 0.8 = 20g

これが男性の1日あたりの適量の下限に相当します。

厚生労働省の「健康日本21」でも、「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコール量約20g程度を目安としています。

具体的なお酒の種類別の適量は次のセクションで詳しく説明しますが、大まかな目安として、男性ならビール中瓶1本(500ml)程度、女性ならその半分程度と考えると分かりやすいでしょう。

ただし、これはあくまで目安であり、個人の体質、年齢、健康状態によって適量は異なります。

高血圧の治療中の方は、必ず主治医に相談し、個別の指導を受けることが重要です。

ビール・焼酎・ワインなど、お酒の種類による違いと適量

お酒の種類によってアルコール度数が異なるため、同じ量を飲んでも純アルコール量は大きく変わります。

以下に、主なお酒の種類別に、純アルコール量約20gに相当する量をまとめました。

お酒の種類別・純アルコール量約20gに相当する量

お酒の種類アルコール度数純アルコール約20gに相当する量
ビール5%500ml(中瓶1本、ロング缶1本)
日本酒15%180ml(1合)弱
焼酎25%100ml(0.5合強)
ウイスキー・ブランデー43%60ml(ダブル1杯)
ワイン12%200ml弱(グラス2杯弱)
缶チューハイ7%350ml(通常の缶1本)
缶チューハイ9%280ml(通常の缶1本の約80%)

近年、アルコール度数9%の缶チューハイが増えていますが、これらは見た目の量は少なくても、純アルコール量が多いため注意が必要です。

例えば、9%の缶チューハイ350mlには約25gの純アルコールが含まれており、これは適量を超えています。

お酒の種類によって血圧への影響に違いがあるかについては、複数の研究で調査されていますが、明確な差は認められていません。

重要なのはお酒の種類ではなく、摂取する純アルコール量です。

自分が普段飲んでいるお酒の純アルコール量を計算し、適量を守ることが何より大切です。

休肝日を作る、水を飲むなど実践したい工夫

適量を守ることに加えて、飲み方の工夫も血圧管理に重要です。

以下の実践的なポイントを取り入れることで、飲酒による血圧への影響を軽減できます。

週に飲酒しない日を設ける

厚生労働省のガイドラインでは、毎日飲酒を避けるため、週に飲酒しない日を設けることを推奨しています。

連続して飲酒しないことで、肝臓をアルコールから解放し、血圧調節機能の回復を促すことができます。

休肝日を設けることは、アルコール依存症の予防にも効果的です。

飲酒の合間に水や炭酸水を飲む 

お酒を飲む際に、合間に水(チェイサー)や炭酸水を飲むことで、飲酒ペースを落とし、アルコール摂取量を抑えることができます。

これにより、飲酒ペースの制御を通じて血中アルコール濃度の上昇を緩和し、血圧への影響を和らげることが期待できます。

また、水分補給により脱水を防ぐことも、血圧管理に役立ちます。

食事をとりながら飲む 

空腹時の飲酒は、アルコールの吸収が早く、血中アルコール濃度が急上昇します。

食事をとりながら飲酒することで、アルコールの吸収が緩やかになり、血圧の急激な変動を抑えることができます。

時間を決めてダラダラ飲みを避ける

長時間にわたってダラダラと飲み続けると、総飲酒量が増えてしまいます。

飲酒の時間を決めておくことで、飲酒量のコントロールがしやすくなります。

塩分控えめのおつまみを選ぶ 

前述のとおり、おつまみの塩分は血圧上昇の大きな要因です。

野菜中心のおつまみや、塩分を使わない調理法のものを選びましょう。

降圧薬を服用している方は医師に相談

降圧薬を服用している方が飲酒すると、薬の効果とアルコールの血管拡張作用が重なり、血圧が下がりすぎてめまいや吐き気を起こすことがあります。

降圧薬を服用中の方は、飲酒について必ず主治医に相談してください。

これらの工夫を組み合わせることで、高血圧があってもより安全にお酒を楽しむことができます。ただし、最も重要なのは定期的な血圧測定と医師との相談です。

自己判断せず、専門家の指導を受けながら適切な飲酒習慣を築いていきましょう。

お酒以外にも注意!高血圧と関係する生活習慣

高血圧の管理には、飲酒だけでなく、他の生活習慣も大きく影響します。

特に睡眠、ストレス、その他の嗜好品は血圧と密接に関係しており、これらを総合的に見直すことが重要です。

睡眠不足が続くと血圧が下がりにくくなる

十分な睡眠は血圧管理において極めて重要な役割を果たしています。

睡眠不足と高血圧の関係は、近年多くの研究で明らかにされてきました。

通常、人間の血圧は睡眠中に約10~20%低下します。

これは「夜間血圧低下」と呼ばれる現象で、心臓や血管を休ませるための重要な生理機能です。

しかし、睡眠時間が不足したり、睡眠の質が低下したりすると、この夜間血圧低下が起こりにくくなります。

アメリカ心臓協会の研究によると、睡眠時間が7時間未満の人は、高血圧を発症するリスクが7%高くなり、特に5時間未満の睡眠しかとれていない人では、リスクが11%も高くなることが報告されています。

この研究では、睡眠時間が7時間未満の場合、高血圧の発症リスクが7%上昇し、睡眠時間が5時間未満の場合、そのリスクは11%にまで急上昇することが明らかになった。

引用:American College of Cardiology Getting Too Little Sleep Linked to High Blood Pressure

睡眠不足がなぜ血圧を上げるのか、そのメカニズムには複数の要因が関与しています。

睡眠不足が血圧を上げる主なメカニズム
  • 交感神経が活性化し、心拍数増加・血管収縮を起こす
  • コルチゾールやカテコールアミン分泌が増加し、血圧上昇を促す
  • 食欲ホルモンの乱れにより肥満リスクが高まり、間接的に血圧を上げる
  • 睡眠障害(例:睡眠時無呼吸症候群)が高血圧の直接的要因になる

まず、睡眠不足は交感神経系を活性化させ、心拍数の増加や血管の収縮を引き起こします。

また、ストレスホルモンであるコルチゾールやカテコールアミンの分泌が増加し、これらも血圧上昇に寄与します。

さらに、睡眠不足は食欲調節ホルモンのバランスを崩し、肥満のリスクを高めることで、間接的にも血圧上昇につながります。

世界保健機関(WHO)のデータによると、世界中で30〜79歳の12.8億人が高血圧を抱えており、その中には睡眠不足が関与しているケースも少なくないと考えられています。

高血圧の予防・改善のためには、成人で7〜9時間の睡眠を確保することが推奨されています。

また、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害がある場合は、それ自体が高血圧の原因となるため、適切な治療が必要です。

ストレスで血圧が上がるのはなぜか

日常生活におけるストレスも、血圧に大きな影響を与えることが知られています。

研究では、正常血圧の成人でも、ストレスホルモンであるコルチゾールの尿中濃度が高い人は、追跡期間中に高血圧を発症するリスクが高いことが示されました。

特に、コルチゾール値が上昇するごとに、心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中)の発症リスクが有意に増加することが報告されています。

中央値11.2年の追跡期間において、コルチゾールの2倍増加ごとに心血管イベントの発症リスクが増加した(aHR 1.90 [95% CI 1.16~3.09])が、カテコールアミンでは増加は見られなかった。

引用:Ovid Urinary Stress Hormones, Hypertension, and Cardiovascular Events: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis

ストレスが血圧を上昇させるメカニズムは複雑ですが、主に交感神経系とホルモン系を介した作用が関与しています。

ストレスが血圧を上げる主なメカニズム
  • 交感神経が活性化し、心拍数増加・血管収縮を起こす
  • アドレナリン・ノルアドレナリンなどのホルモンが分泌され血圧上昇
  • ストレス状態が慢性化すると高血圧が恒常化

ストレスを感じると、体は「闘争・逃走反応」と呼ばれる状態になり、アドレナリンやノルアドレナリンなどのストレスホルモンが分泌されます。

これらのホルモンは心拍数を増加させ、血管を収縮させることで、血圧を一時的に上昇させます。

短期的なストレスによる血圧上昇は一時的なものですが、慢性的なストレスが続くと、この状態が持続し、やがて恒常的な高血圧につながる可能性があります。

実際、仕事上のストレス、人間関係のストレス、経済的なストレスなどが長期間続くと、高血圧の発症リスクが高まることが複数の研究で確認されています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)も、うつ病、不安障害、ストレス、PTSDなどの精神的な問題が長期間続くと、心拍数の増加や高血圧などの身体的な健康問題を引き起こす可能性があると指摘しています。

ストレス管理は高血圧の予防・改善に重要です。

適度な運動、趣味の時間を持つ、十分な休息をとる、必要に応じて専門家のサポートを受けるなど、自分に合ったストレス対処法を見つけることが大切です。

タバコやエナジードリンクも血圧を上げる要因に

飲酒以外の嗜好品も、血圧に影響を与えることがあります。

喫煙と血圧

喫煙は高血圧との関係が複雑で、研究によって結果が異なることがあります。

タバコに含まれるニコチンは、交感神経を刺激し、血管を収縮させるため、喫煙直後には血圧が数mmHg~十数mmHg上昇することが、複数の研究で報告されています。

しかし、長期的な喫煙と高血圧の関係については、必ずしも単純ではありません。

一部の研究では、現在喫煙している人は非喫煙者と比較して血圧が低いという結果も報告されています。

結果から、喫煙者は非喫煙者および元喫煙者と比較して調整血圧が低いことが明らかになった。

引用:BioMed Central The association between smoking and blood pressure in men: a cross-sectional study

これは、ニコチンの慢性的な曝露により、血圧調節機能に何らかの変化が生じるためと考えられていますが、詳しいメカニズムは完全には解明されていません。

ただし、喫煙は高血圧以外にも、心筋梗塞、脳卒中、動脈硬化など、多くの心血管疾患のリスクを高めることが確実に証明されています。

また、高血圧と喫煙が両方ある場合、心血管疾患のリスクは相乗的に高まります。

そのため、血圧への直接的な影響の有無にかかわらず、喫煙は避けるべき習慣です。

カフェインと血圧

コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインも、一時的に血圧を上昇させることがあります。

カフェインには交感神経を刺激する作用があり、摂取後に血圧が数mmHg上昇することが報告されています。

ただし、習慣的にコーヒーを飲んでいる人では、カフェインに対する耐性が形成され、血圧への影響は小さくなる傾向があります。

一方、普段カフェインを摂取しない人が突然大量に摂取すると、血圧が大きく上昇する可能性があります。

特にエナジードリンクは、高濃度のカフェインに加えて糖分も多く含まれているため注意が必要です。

エナジードリンク摂取後には血圧と心拍数が上昇する可能性が報告されています。

EDの急性中等度摂取は青少年のSBPおよび/またはDBPを上昇させ[ 23、24、28 ] 、心拍リズムに影響を与え[ 26 ]、動脈硬化を測定するためのパラメータを変化させます

引用:European Journal of Epidemiology Chronic high consumption of energy drinks and cardiovascular risk in adolescents—results of the EDKAR-study

また、過剰な糖分摂取は肥満や糖尿病のリスクを高め、これらは高血圧の危険因子となります。

高血圧が気になる方は、カフェインの摂取量にも注意を払い、過剰摂取を避けることが賢明です。

これらの生活習慣要因は、飲酒と同様に、高血圧の発症や悪化に関わっています。

総合的な生活習慣の見直しが、効果的な血圧管理につながります。

よくある質問(FAQ)

高血圧と診断されたら完全に禁酒すべきですか?

必ずしも完全に禁酒する必要はありません。

日本高血圧学会のガイドラインでは、適量を守れば飲酒は可能とされています。

ただし、医師の指示がある場合や、血圧のコントロールが難しい場合は禁酒が推奨されることもあります。

大切なのは、適量(男性で純アルコール20〜30g、女性で10〜20g以下)を守り、週に飲酒しない日を定期的に設けることです。

降圧薬を服用している方は、必ず主治医に飲酒について相談してください。

血圧を下げる効果があるお酒はありますか?

特定のお酒に血圧を下げる効果があるという科学的根拠はありません。

赤ワインに含まれるポリフェノールが心臓に良いという説もありますが、高血圧に関しては、お酒の種類よりも摂取する純アルコール量が重要です。

どのお酒であっても、過剰に飲めば血圧は上昇します。

飲酒制限はどのくらいの期間続ければ効果が出ますか?

個人差はありますが、飲酒量を減らすことで、比較的短期間で血圧の改善が期待できます。

メタ解析によると、飲む量が多いほど、減らした時の効果が大きいとされています。

継続的に適量を守ることで、数週間から数カ月で効果を実感できる可能性があります。

飲酒後に血圧が下がることがありますが問題ないですか?

飲酒直後に一時的に血圧が下がるのは、アルコールの血管拡張作用によるものです。

しかし、これは短時間の現象であり、その後血圧は上昇します。

一時的な血圧低下を「お酒は血圧に良い」と誤解しないことが重要です。長期的には、習慣的な飲酒は血圧を上昇させます。

高血圧の薬を飲んでいてもお酒は飲めますか?

降圧薬を服用している方が飲酒すると、薬の効果とアルコールの血管拡張作用が重なり、血圧が下がりすぎる可能性があります。

これにより、めまい、ふらつき、吐き気などの症状が現れることがあります。

降圧薬を服用中の方は、飲酒について必ず主治医に相談し、指示に従ってください。

自己判断での飲酒は危険です。

まとめ

高血圧と飲酒の関係について、科学的根拠に基づいて解説してきました。

重要なポイントをまとめます。

飲酒は血圧に大きな影響を与えます。

飲酒直後には一時的に血圧が下がりますが、長期的には血圧を上昇させ、高血圧の発症リスクを高めます。

特に、週末のドカ飲みや毎日の晩酌、塩分の多いおつまみとの組み合わせは、血圧を大きく上昇させる要因となります。

しかし、高血圧だからといって完全に禁酒する必要はありません。

適量を守り、飲み方を工夫することで、血圧への影響を最小限に抑えることができます。

男性で1日純アルコール20〜30g以下、女性で10〜20g以下を目安とし、週に飲酒しない日を定期的に設けることが推奨されています。

また、高血圧の管理には、飲酒だけでなく、睡眠、ストレス管理、禁煙などの総合的な生活習慣の見直しが重要です。

最も大切なのは、定期的な血圧測定と医師との相談です。

自分の血圧の状態を正しく把握し、専門家の指導を受けながら、適切な飲酒習慣と生活習慣を築いていきましょう。

高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれ、自覚症状がないまま進行することが多い疾患です。

早期からの予防と適切な管理が、将来の心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患を防ぐ鍵となります。

参考文献・参考サイト

厚生労働省 e-ヘルスネット 高血圧

American Heart Association Even just 1 alcoholic drink a day may increase blood pressure

The American Journal of Medicine Type of Alcohol and Blood Pressure: The Copenhagen General Population Study 

厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン

PubMed Central Alcohol Intake and Arterial Hypertension: Retelling of a Multifaceted Story

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American Heart Association Journals Alcohol Use and Cardiovascular Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association

American Heart Association Journals Alcohol Intake and Risk of Hypertension: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Nonexperimental Cohort Studies

厚生労働省 e-ヘルスネット アルコールと循環器疾患

PLOS ONE Binge Drinking and Blood Pressure: Cross-Sectional Results of the HAPIEE Study

PubMed Central A Randomized Trial of Home Blood-Pressure Reduction by Alcohol Guidance During Outpatient Visits: OSAKE Study

特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019

山口県教育委員会「飲酒翌朝の飲酒運転を防止するために

厚生労働省「みんなに知ってほしい飲酒のこと

厚生労働省「令和4年 国民健康・栄養調査結果の概要

厚生労働省 e-ヘルスネット 飲酒量の単位

厚生労働省 健康日本21 アルコール

PubMed Central Absorption and Peak Blood Alcohol Concentration After Drinking Beer, Wine, or Spirits

National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism Harmful Interactions: Mixing Alcohol with Medicines

American Heart Association Journals Pathophysiology of the Nondipping Blood Pressure Pattern

American College of Cardiology Getting Too Little Sleep Linked to High Blood Pressure

American Heart Association Journals Effect of Sleep Disturbances on Blood Pressure 

World Health Organization More than 700 million people with untreated hypertension

Ovid Urinary Stress Hormones, Hypertension, and Cardiovascular Events: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis

Centers for Disease Control and Prevention About Heart Disease and Mental Health

American Heart Association Smoking and High Blood Pressure

BioMed Central The association between smoking and blood pressure in men: a cross-sectional study

European Journal of Epidemiology Chronic high consumption of energy drinks and cardiovascular risk in adolescents—results of the EDKAR-study

American Heart Association What does the sugar in beverages do to your body?

PubMed Central The effect of a reduction in alcohol consumption on blood pressure: a systematic review and meta-analysis

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