高血圧に市販薬は効く?降圧剤との違いと正しい選び方

高血圧に市販薬は効く?降圧剤との違いと正しい選び方

「血圧が高いと言われたけれど、まずは市販薬で何とかならないだろうか」と考える方は少なくありません。

病院に行く時間がない、薬を飲み続けることへの抵抗がある、まず自分でできることから始めたい、そうした気持ちはごく自然なことです。

実際、ドラッグストアには「血圧が高めの方に」と書かれた製品が多数並んでおり、手軽に試せるように思えるのも無理はありません。

しかし結論からお伝えすると、日本では血圧を直接下げる成分が入った市販薬は、一部の生薬製剤などに限られています

ドラッグストアで買える血圧関連の製品は、「機能性表示食品」や「サプリメント」などの食品に分類されるものが多く、あくまで生活習慣の改善をサポートする補助的な役割にとどまります(一部には一般用医薬品も存在します)。

一方、病院で処方される降圧剤は、血圧が上がる原因そのものに直接作用する医薬品であり、効果・目的・仕組みのすべてにおいて市販品とは根本的に異なります

高血圧の市販薬の特徴
  • 血圧を直接下げる市販薬は一部のみ
  • 多くは機能性食品・サプリに分類される
  • 市販品は治療薬でなく補助的な位置づけ
  • 降圧剤とは仕組みも目的も根本的に異なる
  • 市販の鎮痛薬が降圧薬の効果を弱める場合も
  • 生活習慣改善と降圧薬の併用が最も効果的

この違いを知らずに「市販品で代わりになる」と思ったまま過ごすことは、脳卒中や心臓病といった深刻な病気につながるリスクがあります。

高血圧はほとんどの場合、自覚症状がないまま進行する病気だからこそ、正しい知識をもとに適切な行動をとることがとても大切です。

この記事では、市販薬でできることとできないこと、病院の薬との違い、使用するときの注意点、そして毎日の生活の中で取り組める血圧管理の方法について、順を追ってわかりやすくご説明します。

この記事でわかること
  • 高血圧の市販薬で血圧を直接下げる医薬品は一部に限られ、多くは補助的なものである
  • 病院の降圧剤と市販薬は、効果も目的もまったく異なる
  • 市販薬を使う際に注意すべき飲み合わせや、受診のサインがある
  • 生活習慣の改善は血圧管理において非常に重要な役割を果たす
はじめに(免責・注意事項)

本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。

血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。

また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。

本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。

目次

高血圧の市販薬は「根本的な治療薬」ではなく「補助的なもの」

健診で「血圧が高め」と言われたとき、あるいは高血圧と診断されたとき、「まずはドラッグストアで何か買って試してみよう」と思う方は多いのではないでしょうか。

ドラッグストアの棚には血圧に関連する製品が数多く並んでおり、処方箋なしで気軽に購入できるため、こうした選択肢が身近に感じられるのは自然なことです。

しかし、そこに並ぶ製品が実際に何であるかをよく理解しないまま使い続けることには、気づきにくいリスクがあります。

市販の血圧関連製品の多くは、病院で処方される降圧薬とはまったく別のカテゴリーのものです。

日本では、血圧を直接コントロールする成分が入った市販薬は一部の生薬製剤などに限られ、市販で購入できるものはあくまで「血圧の維持をサポートする」という補助的な位置づけのものに限られます。

この章では、市販品が実際にどのようなものなのかを整理し、活用できる場面とそうでない場面について正確にお伝えします。

高血圧向けの市販品で血圧を直接下げるものは一部に限られる

日本では、血圧を直接下げる成分が入った市販薬は一部の生薬製剤などに限られています。

ドラッグストアで見かける「血圧が高めの方に」と書かれた製品の多くは、医薬品ではなく「機能性表示食品」や「特定保健用食品(トクホ)」と呼ばれる食品のカテゴリーに分類されます。

これらは国の制度に基づく食品ですが、機能性表示食品は国が個別に評価(審査)したものではなく、病気を治すための薬としての効果があるわけでもありません。

たとえばGABA(ギャバ)という成分を含む製品は「血圧が高めの方に適した食品」として販売されていますが、これはあくまで「血圧が高めの方の健康をサポートする成分を含む食品」という位置づけであり、高血圧そのものを治療する薬ではありません。

日本の消費者庁が定める機能性表示食品の制度においても、これらの製品は「病気の治療を目的とするものではない」とはっきり定められています。

「機能性表示食品」は、医薬品ではありません。疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。

引用:消費者庁「「機能性表示食品」って何?

機能性表示食品などでは「血圧が高めの方の血圧を下げる機能があります」といった表現が用いられることがありますが、「高血圧症を治療する」といった医薬品的効能効果を食品やサプリメントがうたうことは薬機法で認められていないため、市販の食品が処方薬の代わりになるものでないことは明らかです。

市販の血圧関連製品と医療用降圧薬の違い

項目市販の血圧関連製品病院で処方される降圧剤
分類機能性表示食品・サプリメント・一部の一般用医薬品医薬品
目的健康維持・生活習慣のサポート高血圧の治療
血圧への作用血圧を下げる機能が報告されているものもあるが、医薬品のような直接的・強力な効果はない血圧上昇の原因に直接作用
購入方法処方箋不要・市販で購入可医師の処方が必要
効果の確認食品としての機能性評価臨床試験による有効性・安全性の確認

市販薬が役立てる場面は「生活習慣の改善サポート」に限られる

では、市販の血圧関連製品がまったく意味がないかというと、そうとは言い切れません。

血圧がやや高め(高値血圧)の段階であれば、食事や運動などの生活習慣の見直しとあわせてGABA杜仲葉エキスなどの機能性食品を補助的に活用することで、血圧値の改善に多少なりとも寄与する可能性はあります。

ただし、「可能性がある」という表現には大切な前提があります。

それは、「すでに診断されている高血圧の治療の代わりとして使うのではなく、あくまで健康的な生活習慣を支えるための補助として使う」という点です。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の統合医療部門(NCCIH)でも、サプリメントや機能性食品だけで高血圧を治療することは推奨されておらず、医師の指導のもとで生活習慣の改善と組み合わせて使うことが重要とされています。

しかし、これらの製品が血圧を下げるというエビデンスは限られており、血圧への影響も小さいです。高血圧治療薬と同等の効果を持つサプリメントは存在しません。

引用:National Center for Complementary and Integrative Health Hypertension (High Blood Pressure)

市販品が活用できる場面があるとすれば、それは診断を受ける前の予防段階や、医師と相談したうえでの補助的な使用に限られます。

「市販品を使えば大丈夫」という考え方は、治療の開始を遅らせることにつながりかねないため注意が必要です。

病院の降圧剤と市販薬は「目的も効果も別もの」と考えよう

市販品が補助的な役割にとどまるのに対し、病院で処方される降圧剤は高血圧の治療を目的としてつくられた医薬品です。

その違いは「効き目が強いか弱いか」という単純なものではなく、「何に働きかけるか」「どのような仕組みで血圧を下げるか」という根本的な部分が異なります

降圧剤にはいくつかの種類があり、患者さんの状態や原因に合わせて使い分けられています。

また、処方された薬を自己判断でやめたり、市販品に切り替えたりすることが、脳卒中や心臓病などの重大な病気につながるリスクがあることも、多くの方が見落としやすいポイントです。

この章では、降圧剤の種類とそれぞれのはたらきをわかりやすく整理したうえで、なぜ処方薬と市販薬を同じものとして考えてはいけないのかをご説明します。

降圧剤は血圧の原因に直接アプローチする処方薬

処方される降圧剤は、血圧が上がる原因となるしくみに直接働きかけることで、血圧を医学的に管理する薬です。

代表的なものを簡単にご紹介します。

「カルシウム拮抗薬」は、血管の筋肉をゆるめて血管を広げることで血圧を下げる薬です。

血管が広がると血液の通り道が大きくなり、心臓が血液を送り出す際の負担が減ります。

「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」や「ACE阻害薬」は、体の中で血圧を上げる働きをするホルモンの作用をブロックすることで血圧を下げます。

「利尿薬」は、体にたまった余分な塩分と水分を尿として排出することで血液の量を減らし、血圧を下げます

β遮断薬」は、心臓の動きを穏やかにすることで、心拍数や心収縮力を下げ、心臓が一度に送り出す血液の量を抑えます

これらの薬はいずれも、臨床試験(実際に人に使って効果と安全性を確かめる試験)を経て、国が承認した医薬品です。

アメリカ国立心肺血液研究所(NHLBI)の高血圧治療ガイドラインでも、生活習慣の改善だけでは血圧のコントロールが難しい場合に、これらの薬が第一の治療法として推奨されています。

世界保健機関(WHO)も、高血圧は心臓病・脳卒中・腎臓病の主な原因のひとつであり、適切な薬による治療でこれらの病気のリスクを大きく下げられる可能性があると報告しています。

主な降圧剤の種類とはたらき

種類血圧を下げるしくみ主な特徴
カルシウム拮抗薬血管の筋肉をゆるめて血管を広げる幅広く使われる第一選択薬のひとつ
ARB/ACE阻害薬血圧を上げるホルモンの作用をブロックする腎臓を保護する効果も期待できる
利尿薬余分な塩分・水分を尿として排出し血液量を減らす塩分の摂り過ぎによる高血圧に有効な場合がある
β遮断薬心拍数や心収縮力を下げて心臓から送り出す血液量を抑える心臓病を合併している方に使われることが多い

市販薬は症状の緩和や体質改善を補うもので、降圧剤の代わりにはならない

降圧剤が血圧の上がる原因そのものに働きかけるのに対し、市販の機能性食品やサプリメントは体の調子を整えるためのサポートをするものです。

作用の仕組みがまったく異なるため、「効き目が弱い降圧剤」という理解も正確ではなく、「目的も種類もまったく別のもの」として考える必要があります。

特に気をつけていただきたいのは、処方された降圧薬を自己判断で市販品に切り替えることです。

高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれるほど、ふだんは自覚症状がほとんどありません。

しかし治療を中断すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まることが知られています。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)のデータでも、高血圧を適切に管理することで心臓や血管の病気による死亡リスクを大幅に下げられることが示されています。

薬剤師を含むチームベースのケアを活用することで、高血圧がコントロールされていない米国の成人において、5年間で最大91,900件の心臓発作、139,000件の脳卒中、および115,400件の心血管疾患による死亡を予防できる可能性があります。

引用:Centers for Disease Control and Prevention Health and Economic Benefits of High Blood Pressure Interventions

処方薬が出ている場合は、医師の指示なく服用をやめたり、量を変えたりすることは絶対に避けてください。

市販薬を使う前に確認したい「3つの注意点」

高血圧の方が市販薬を使うときに、意外と見落とされやすいリスクがいくつかあります。

血圧に関係する製品だけでなく、日常的によく使う風邪薬や頭痛薬の中にも、血圧に影響したり、処方された降圧薬の効果を弱めたりする成分が含まれていることがあります。

また、血圧が急に上がったときに出てくる体のサインを市販薬でごまかそうとすることで、本来すぐに受診すべき状況を見逃してしまうケースも少なくありません。

高血圧はふだんは自覚症状がないからこそ、体が何かのサインを出しているときは素早い判断が求められます。

この章では、市販薬を使う前に知っておきたい飲み合わせのリスクと、「病院を先に受診すべき症状」について具体的にご説明します。

他の薬との飲み合わせで思わぬ副作用が出ることがある

高血圧の方が特に注意しなければならないのが、よく使われる市販薬との飲み合わせの問題です。

頭痛や発熱のときに手軽に使われる鎮痛・解熱薬には、「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と呼ばれる成分が含まれるものがあります。

イブプロフェンや、鎮痛目的で使われる量のアスピリンなどが代表的な例です(心筋梗塞予防などで処方される低用量アスピリンとは扱いが異なります)。

これらの成分は、腎臓でのナトリウム(塩分)の再吸収を増やしてしまうことがあり、結果として血圧が上がりやすくなる可能性があります。

また、ARBやACE阻害薬、利尿薬といった降圧薬の効果を弱めてしまう相互作用があることも報告されています。

NSAIDsは血圧を上昇させる傾向が高く、PG生成の増加を介して作用する可能性のある薬剤(利尿薬、ベータ遮断薬、ACE阻害薬)と相互作用する傾向があるからです。

引用:PubMed Interaction of antihypertensive drugs with anti-inflammatory drugs

風邪薬や鼻炎薬の中には、「プソイドエフェドリン」などの成分が入っているものがあります。

この成分は血管を収縮させる作用があるため、一時的に血圧を上昇させることがあります。

高血圧の方はこうした成分が含まれる製品の使用に注意が必要です。

購入前に薬剤師に相談するとよいでしょう。

さらに、一部のサプリメント(甘草エキスや、かつてダイエット目的で使われていたエフェドラを含む製品など)にも血圧に影響する成分が含まれている場合があります。

降圧薬を服用中の方は、新しいサプリメントを始める前に必ず医師や薬剤師に確認するようにしてください。

高血圧の方が注意したい市販薬・サプリメントの例

種類注意が必要な成分の例血圧への影響
鎮痛・解熱薬イブプロフェン、鎮痛量のアスピリンなど(NSAIDs)血圧が上がりやすくなる・降圧薬の効果を弱める可能性がある
風邪薬・鼻炎薬プソイドエフェドリン血管を収縮させ、一時的に血圧を上昇させる可能性がある
サプリメント甘草エキス、エフェドラ含有製品血圧に影響する成分を含む場合がある

※上記はあくまで代表的な例です。市販薬やサプリメントを使用する際は、必ず薬剤師または医師にご相談ください。

頭痛・めまい・動悸があるときは市販薬より先に受診を

血圧がとても高い状態(目安として上の血圧が180mmHg以上かつ/または下の血圧が120mmHg以上など)になると、強い頭痛・めまい・動悸・目のかすみ・吐き気といった症状が現れることがあります。

このような症状が出たときは、市販薬で様子を見ることなく、すぐに医療機関を受診することが大切です。

「高血圧緊急症」とは、単に血圧の数値が高いだけでなく、脳・心臓・腎臓などの大切な臓器に急激なダメージ(急性臓器障害)が生じている状態を指し、速やかな医療対応が必要です。

アメリカ心臓協会(AHA)のガイドラインでも、このような状況では市販薬での対処は適切でなく、すぐに医療機関を受診することが強く推奨されています。

また、高血圧はほとんどの場合、長い間症状がないまま進んでいきます

「症状がないから大丈夫」ということにはならないため、定期的な血圧測定と医師によるフォローアップが欠かせません。

厚生労働省の「令和5年(2023)患者調査の概況 」によると、高血圧は日本で最も患者数が多い生活習慣病のひとつです。

厚生労働省のウェブサイトでも、自覚症状が現れにくい病気に対して定期的な健診と早めの対応の大切さを呼びかけています。

以下のような症状がある場合は、市販薬で対処しようとせず、速やかに医療機関を受診してください。

すぐに受診を検討すべき症状チェックリスト
  • 突然の強い頭痛
  • ひどいめまいやふらつき
  • 動悸や脈の乱れ
  • 視野がかすむ・ぼやける
  • 吐き気・嘔吐
  • 手足のしびれや脱力感
  • 胸の痛みや圧迫感

市販薬と並行して続けたい、血圧を下げる生活習慣

高血圧の管理において、薬物療法と同じくらい大切とされているのが生活習慣の見直しです。

毎日の食事・運動・睡眠は血圧の数値に直接影響することが多くの研究で示されており、生活習慣を整えることで血圧をある程度改善できる可能性があります。

また、すでに降圧薬を飲んでいる方でも、生活習慣を改善することで薬の効果がより高まり、場合によっては医師の判断で薬の量を減らせる可能性もあります。

ただし、生活習慣の改善だけですべてをまかなうことには限界もあるため、薬との組み合わせで取り組むことが基本です。

この章では、特に血圧の改善に役立つ可能性が高い食事・運動・睡眠のポイントと、処方薬との相乗効果についてご説明します。

減塩・適度な運動・良質な睡眠が血圧改善に効果的な理由

食事面でもっとも重要とされているのが、塩分(ナトリウム)の摂り過ぎを控えることです。

塩分を多く摂ると体の中の水分量が増えて血液の量も増え、心臓が血液を押し出すときの圧力が高まります。

これが血圧上昇につながります。

WHO(世界保健機関)は、成人が1日に摂る食塩の量を5g未満に抑えることを推奨しており、これにより脳卒中や心臓・血管の病気のリスクを下げる可能性があるとしています。

日本人の平均的な食塩摂取量はこれを大きく上回っているため、意識的に減塩に取り組むことは非常に意義があります。

カリウムを多く含む食品(野菜・果物・豆類など)を積極的に食べることも、体内のナトリウムを排出しやすくする効果が期待でき、血圧を下げる助けになる可能性があります。

ただし、腎臓の機能が低下している方は高カリウム摂取が問題になることがあるため、医師にご相談ください。

アメリカ国立心肺血液研究所(NHLBI)が提唱する「DASHダイエット」は、減塩と野菜・果物・低脂肪乳製品を多く摂る食事法を組み合わせたもので、複数の研究で高血圧への効果が確認されています。

運動については、ウォーキングや水泳などの「有酸素運動」を週に150分程度(たとえば1日30分を週5日)続けることで、上の血圧(収縮期血圧)を平均して4〜9mmHg程度下げる効果が期待できる可能性があるとされています。

睡眠の質も血圧に大きく関係しています。

睡眠が不足したり、眠りが浅かったりすると、自律神経の中の「交感神経」が過剰に働いてしまい、血圧が上がりやすくなる可能性があることが複数の研究で報告されています。

特に「睡眠時無呼吸症候群(眠っている間に呼吸が止まる病気)」は高血圧との関係が深く、この病気を適切に治療することで血圧が改善するケースがあることも知られています。

血圧改善のために今日からできる生活習慣のポイント

分野取り組みの内容期待できる効果
食事(減塩)1日の食塩摂取量を6g未満を目標に(WHOは5g未満を推奨)血圧上昇の原因となる塩分・水分量の増加を抑える
食事(カリウム)野菜・果物・豆類を積極的に摂る(※腎機能が低下している方は要相談)体内の余分なナトリウムの排出を促す
運動週150分程度の有酸素運動(ウォーキング・水泳など)収縮期血圧を平均4〜9mmHg程度下げる可能性がある
睡眠毎日一定の時間に就寝・起床し、7時間程度の睡眠を確保する交感神経の過活動を抑え、血圧の上昇を防ぐ
禁煙・節酒喫煙をやめる、飲酒量を適切な範囲に抑える血管へのダメージを減らし、血圧管理をしやすくする

生活習慣の改善は降圧剤の効果を高める可能性がある

生活習慣の改善は、降圧薬と一緒に取り組むことでより大きな効果が期待できる可能性があります。

たとえば、薬を飲みながら減塩や運動を続けることで、薬の量を減らせる場合や、血圧の数値がより安定しやすくなる場合があることが臨床の現場でも確認されています。

アメリカ心臓協会(AHA)とアメリカ心臓病学会(ACC)が出している高血圧の治療ガイドライン(2017年版)でも、「生活習慣の改善はすべての高血圧の患者さんに対して勧められるもので、薬での治療を補う形で行うことが大切」と明記されています。

一方で、生活習慣の改善だけでは目標とする血圧値まで下げられないケースも多くあります。

その場合は医師の判断のもとで降圧薬を続けたり、新たに始めたりすることが必要です。

市販品や生活習慣の改善を「薬を飲まずに済む方法」として考えるのではなく、「血圧を総合的に管理するためのひとつの手段」として位置づけることが大切です。

よくある質問(FAQ)

血圧が少し高いだけなら市販薬で様子を見てもいいですか? 

血圧がやや高め(上の血圧が130〜139mmHg、または下の血圧が80〜89mmHg程度)の段階であれば、まずは食事や運動などの生活習慣の改善を中心に取り組むことが勧められます。

ただし、心血管疾患などのリスク状況によっては薬物療法が検討されることもあります。

市販の機能性食品を補助的に使うこと自体は否定されるものではありませんが、自己判断だけで長期間様子を見続けることにはリスクが伴います

定期的に血圧を測り、改善が見られない場合や数値が上がり続ける場合は、早めに医療機関へご相談ください。

降圧剤は一度飲み始めたら一生飲み続けなければなりませんか? 

高血圧の原因や重さ、生活習慣改善の成果によっては、医師の判断で薬を減らしたり、やめることを検討したりする場合もあります。

ただし、自己判断で飲むのをやめると血圧が急に変動して危険なことがあります。

薬を続けるかどうかの判断は、必ず主治医と相談したうえで決めるようにしてください。

市販の血圧計で測った数値は信頼できますか?

 正しい方法で使えば、家庭用の血圧計は医療機関での測定値に近い信頼性が得られるとされています。

日本高血圧学会の資料でも、家庭での血圧測定は高血圧の診断や管理に役立つとして推奨されており、以下のタイミングで測ることが基本とされています。

測定結果を記録しておき、受診時に医師に見せると、より正確な診断や治療に役立てることができます。

  • 朝:起床後1時間以内(トイレの後・食事や薬を飲む前・座って1〜2分安静にしてから)
  • 夜:寝る前(座って1〜2分安静にしてから)

まとめ

日本では血圧を直接下げる成分が入った市販薬は一部に限られており、ドラッグストアで販売されている血圧関連の製品の多くは機能性食品やサプリメントとして補助的な役割を担うものです。

生活習慣の改善を助けることはあっても、処方された降圧薬の代わりにはなりません。

病院で処方される降圧剤は、血圧が上がる原因に直接働きかける医薬品であり、市販品とは仕組みも目的もまったく異なります。

特に、処方薬を自己判断で市販品に切り替えたり、服用をやめたりすることは脳卒中や心臓病のリスクを高める可能性があるため、変更を考える場合は必ず医師に相談してください。

市販薬を使う際には、頭痛薬や風邪薬との飲み合わせにも注意が必要です。

また、強い頭痛・めまい・動悸などの症状が現れた場合は、市販薬で対処しようとせず、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。

毎日の生活習慣の見直し(減塩・運動・良質な睡眠)は、薬との組み合わせで血圧管理に大きな効果が期待できます。

市販品はあくまで補助的なものとして活用しながら、医師の指導のもとで高血圧と上手に向き合っていきましょう。

参考文献・参考サイト

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消費者庁 機能性表示食品について

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小林製薬 高めの血圧が気になる方に 血圧ヘルプ

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National Center for Biotechnology Information Hypertensive Crisis

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厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況

厚生労働省 健診・保健指導のあり方

World Health Organization Sodium reduction

厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要

American Heart Association A Primer on Potassium

National Heart, Lung, and Blood Institute DASH Eating Plan

National Heart, Lung, and Blood Institute JNC 7 Express

PubMed Central The Role of Continuous Positive Airway Pressure in Blood Pressure Control for Patients With Obstructive Sleep Apnea and Hypertension: A Meta‐Analysis of Randomized Controlled Trials

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特定非営利活動法人 日本高血圧学会「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子

PubMed Rebound hypertension following abrupt cessation of clonidine and metoprolol. Treatment with labetalo

特定非営利活動法人 日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう

この記事を書いた人

伊藤 信久のアバター 伊藤 信久 医師・グレースメディカルクリニック院長

福岡県出身。鹿児島大学医学部卒業後、大学病院の心臓外科に勤務。冠動脈バイパス術・弁置換術などの高度な心臓手術を多数担当。
その後、恩師が開業したクリニックで一次診療に従事。地域医療の最前線で多くの患者と向き合う中で「患者さんに最も近い距離で診療すること」の重要性を再認識し、開業医として地域医療に貢献することを決意。2014年に熊本市でグレースメディカルクリニックを開設した。現在は院長として、高血圧をはじめとする循環器・生活習慣病の診療に注力。心臓外科で培った循環器の知見を活かし、「血圧から全身を守る医療」をモットーに地域の健康づくりと啓発活動を続けている。

主な資格・所属学会
・日本外科学会
・日本循環器学会
・点滴療法研究会

地域の“かかりつけ医”として、高血圧を中心とした生活習慣病の早期発見と予防、継続的な血圧管理に力を注ぎ、患者一人ひとりの「より良い血圧コントロールと健康」の実現を目指している。

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