「血圧が高いのはわかっているけれど、仕事が忙しくて病院に行く時間がない」——そう感じている方は、決して少なくありません。
朝から夜まで仕事に追われ、休日も家事や育児で手がいっぱい。
健康のことが気になりながらも、受診はついつい後回しになってしまいます。
しかし、高血圧は頭が痛くなったり、体がだるくなったりといった自覚症状がほとんどないまま静かに進行する病気です。
「なんとなく元気だから大丈夫」という感覚は、残念ながら高血圧には当てはまりません。
症状がないまま血管や臓器へのダメージが少しずつ積み重なり、ある日突然、脳卒中(脳の血管が詰まったり破れたりする病気)や心筋梗塞(心臓の血管が詰まる病気)という形で表れるのが高血圧の怖さです。
世界中の研究で、高血圧はこれらの病気の最大の危険因子として一貫して報告されており、放置している期間が長くなるほどリスクは積み重なっていきます。
だからこそ、通院できない状況であっても「何もしない」ではなく、できることから今すぐ始めることが大切です。
- 起床後・就寝前に血圧を測り、自分の血圧傾向を把握する
- 塩分は1日6g未満を目標に制限する
- 1日10〜30分のウォーキングを日常に組み込む
- 睡眠時間の確保・ストレス管理で血圧上昇を防ぐ
- 通院が困難ならオンライン診療で処方を受ける
この記事では、忙しくて病院に行けない方のために、医師の立場から3つのことをお伝えします。
第一に、通院できない日が続く間でも自宅でできる血圧管理の具体的な方法(食事・運動・睡眠・測定)、第二に、スマートフォンがあれば自宅から医師の診察と薬の処方を受けられるオンライン診療の活用法、そして第三に、どれだけ忙しくても絶対に見逃してはいけない危険なサインの見分け方です。
「今の自分にできることは何か」を確認しながら、ぜひ最後まで読んでみてください。
- 高血圧を放置し続けると脳や心臓にどんな影響が出るか
- 忙しい人が自宅でできる血圧管理の具体的な方法
- オンライン診療を使って降圧薬を処方してもらう手順
- 今すぐ救急に行くべき症状の見分け方
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
忙しくて病院を後回しにしていると、気づかないうちに脳卒中・心筋梗塞のリスクが高まる
高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれることがあります。
頭が痛くなるわけでもなく、動悸がするわけでもなく、日常生活はふつうに送れてしまう——だからこそ、多くの人が受診を後回しにしてしまいます。
しかし、血圧が高い状態が続いているあいだ、体の内側では確実にダメージが積み重なっています。
血管の壁は少しずつ傷み、心臓は余分な負荷をかけられ続け、脳や腎臓にも影響が及んでいきます。
このセクションでは、高血圧を放置することで実際にどのようなリスクが生じるのかをわかりやすく説明します。
「少し高いだけだから」という判断がなぜ危険なのかを理解することが、適切な対処への第一歩です。
高血圧は症状がないまま進むため、「なんとなく元気」でも安心できない
高血圧の最も危険な特徴は、体に異変を感じにくいことです。
血圧が高くても、多くの人は普段と変わらない生活を続けられてしまいます。
そのため「調子が悪くなったら病院に行けばいい」と考えていると、気づかないうちに体の中でダメージが積み重なっていることがあります。
高血圧は心臓や血管の病気につながる重大なリスク因子であり、放置すると心筋梗塞や脳卒中といった深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
さらに問題なのは、自分が高血圧であることに気づいていない人が非常に多いという点です。
ある調査では、高血圧の一歩手前の状態にある人の93%以上、そして高血圧の人の約64%が、自分の状態を把握していなかったことが報告されています。
前高血圧の人の93%以上、および高血圧の人のかなりの割合(約64%)は、自分の状態を認識していませんでした[ 10 ]。
引用:PubMed Central Impact of Blood Pressure Control on Stroke and Myocardial Infarction Risk in Hypertensive Patients With and Without Diabetes: A Narrative Review
「元気だから大丈夫」という判断が、最も危険な思い込みになりえます。
日本でも、高血圧は非常に身近な問題です。
日本には約4,300万人の高血圧患者がいますが、実際に治療を受けて血圧がうまく管理できているのは約1,200万人にとどまっています。
治療が届いていない人がいかに多いかがわかります。
なお、血圧の数値と分類を以下の表に整理しました。
自分の血圧がどのレベルにあるか、確認してみてください。
血圧の区分
| 分類 | 収縮期血圧(上) | 条件 | 拡張期血圧(下) |
|---|---|---|---|
| 正常血圧 | 120mmHg未満 | かつ | 80mmHg未満 |
| 正常高値血圧 | 120〜129mmHg | かつ | 80mmHg未満 |
| 高値血圧 | 130〜139mmHg | または | 80〜89mmHg |
| 高血圧(I度) | 140〜159mmHg | または | 90〜99mmHg |
| 高血圧(II度) | 160〜179mmHg | または | 100〜109mmHg |
| 高血圧(III度) | 180mmHg以上 | または | 110mmHg以上 |
※家庭血圧の高血圧基準は収縮期135mmHg以上・または拡張期85mmHg以上(診察室血圧より低い値が基準となります)。出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
「少し高いだけ」でも放置すると血管や臓器へのダメージが蓄積する
「140mmHgを少し超えているだけだから」と軽く考えていませんか。
血圧の数値が高ければ高いほどリスクが大きいのはもちろんですが、重要なのは「高い状態がどれだけ長く続くか」という点でもあります。
血圧が高い状態が続くと、血管の壁に常に強い圧力がかかり続けます。
これが積み重なることで、血管は少しずつ硬くなり(動脈硬化)、詰まりやすくなっていきます。
その結果、脳や心臓に酸素や栄養を届ける血流が滞り、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まるのです。
世界的な研究から、脳卒中による死亡の約半数が、収縮期血圧(血圧の上の数値)の高さに関係していることが報告されています。
高血圧は一般的であり、脳卒中の寄与リスク(25%~50%)が高く、臨床試験と観察研究の両方において、降圧療法によって初回および再発性脳卒中のリスクが低下することが示されています。
引用:PubMed Central Blood Pressure Management in Stroke: Viewpoint
高血圧は年齢に次いで、脳卒中の2番目に強い危険因子とされており、この傾向は世界各地・どの民族でも一貫しています。
血圧を下げる治療の効果についても、数字で示されています。
147件の臨床試験をまとめた解析では、収縮期血圧を10mmHg下げることで、脳卒中の発症が41%も減少したという結果が報告されています。
裏返せば、血圧を下げない期間が長くなるほど、それだけリスクが積み上がっていくということです。
脳卒中だけでなく、心臓や腎臓への影響も見逃せません。
慢性的な血圧の上昇は心臓に過剰な負担をかけて心臓の壁を分厚くさせ、やがて心不全・不整脈・冠動脈疾患(心臓に血液を送る血管の病気)・脳血管疾患・腎臓病など、さまざまな合併症につながる可能性があります。
「少し高いだけ」の期間が数年・数十年と続くことで、これらのリスクは静かに蓄積されていきます。
高血圧が引き起こす可能性のある主な合併症の代表例を以下にまとめます。
高血圧が引き起こす可能性のある主な合併症の代表例
| 影響を受ける臓器 | 起こりうる合併症 |
|---|---|
| 脳 | 脳梗塞、脳出血、認知症 |
| 心臓 | 心筋梗塞、心不全、不整脈 |
| 腎臓 | 慢性腎臓病、腎不全 |
| 目 | 網膜症(視力低下・失明) |
| 血管 | 動脈硬化、大動脈瘤 |
病院に行けない日が続くなら、まず生活習慣の見直しで血圧を下げることから始めよう
通院できない状況でも、毎日の生活習慣を見直すことで血圧をある程度コントロールできる可能性があります。
薬のような即効性はありませんが、食事・運動・睡眠・毎日の測定という4つを意識するだけで、血圧値の改善が期待できることが多くの研究で示されています。
特に家庭での血圧測定は、今の自分の状態を知るための基本的かつ重要な手段です。
塩分を控えることや毎日少し歩くことも、お金をかけずに今日から始められる対策です。
このセクションでは、忙しい日常の中でも無理なく続けられる具体的な方法を紹介します。
ただし、これらはあくまで医師の診察や薬による治療の補助であり、それらに代わるものではありません。
降圧薬を服用中の方や、血圧が不安定な方は、後述するオンライン診療なども活用しながら、必ず医師と連携して取り組むようにしてください。
以下は、本セクションで紹介する4つの生活習慣と、それぞれに期待できる主な効果の概要です。
血圧管理に役立つ4つの生活習慣
| 取り組み | 期待できる効果 | 今日からできる第一歩 |
|---|---|---|
| 家庭血圧測定 | 悪化に早く気づける | 血圧計を用意して毎朝測る |
| 塩分制限(1日6g未満) | 収縮期血圧が数mmHg〜十数mmHg低下する可能性 | みそ汁を1日1杯にする |
| ウォーキング(1日10〜30分) | 収縮期血圧が平均約4mmHg低下する可能性 | 通勤で1駅分歩く |
| 睡眠・ストレス管理 | 交感神経の過剰な働きを抑え血圧上昇を防ぐ | 就寝時間を30分早める |
血圧は毎日自宅で測るだけで、悪化に早く気づける
病院に行けない期間であっても、自宅での血圧測定(家庭血圧測定)は続けることがとても大切です。
家庭で測る血圧は、病院で測るよりも日常の状態をより正確に反映するとされており、自分の血圧の傾向を把握するうえで非常に役立ちます。
家庭血圧測定は、高血圧を診断・管理するための信頼性が高く便利な方法として広く認められています。
正確な測定のためには、きちんと検証された機器を使い、正しい手順で測ることが重要です。
また、特に朝の血圧測定が重要とされています。
朝の家庭血圧は脳卒中のリスク予測において重要な指標であり、日本を含むアジア人では朝の血圧が上がりやすい傾向があるため、朝の血圧を管理することが心臓や血管の病気の予防につながると考えられています。
正しく測定するためのポイントをまとめました。
- 測定前の30分間は、タバコ・コーヒー・激しい運動を避ける
- 椅子に座って5分間、静かに休んでから測定する
- 上腕(二の腕)に巻くタイプの機器を使う
- カフ(腕に巻く帯)は心臓と同じ高さに保つ
- 毎日同じ時間帯(朝起床後と夜就寝前)に測定する
- 1〜2分間隔で2回測定し、平均値を記録する
米国疾病予防管理センター(CDC)は、家庭での血圧測定と医師のサポートを組み合わせることで、医療機関での測定のみの場合よりも効果的に血圧を下げられる可能性があると報告しています。
測定した数値は手帳やスマートフォンに記録しておき、次回の受診やオンライン診療の際に医師に見せると、より的確な判断につながります。
塩分を1日6g未満に抑えるだけで血圧が下がりやすくなる
塩分(食塩)をとりすぎると血圧が上がりやすくなります。
これは、体内に塩分が増えることで水分も一緒に増え、血管に流れる血液の量が増えるためです。
水が増えてホースの内側にかかる圧力が上がるイメージをしてもらうとわかりやすいかもしれません。
世界保健機関(WHO)は、成人が1日に摂取する食塩を5g未満に抑えることを推奨しており、塩分のとりすぎが血圧の上昇と心臓・血管の病気のリスク増大につながると報告しています。
日本高血圧学会では高血圧の方の目標を1日6g未満としています。
日本人の食事には、みそ汁・漬物・しょうゆ・加工食品など、塩分が多く含まれるものが多くあります。
まずは「毎日飲んでいる汁物を1杯減らす」「しょうゆはかけるより少量つけるだけにする」「加工食品を買うときに食塩相当量を確認する」といった小さな工夫から始めてみてください。
塩分制限の効果は、臨床研究でも裏づけられています。
無作為化比較試験(参加者412人)では、塩分を抑えた食事と野菜・果物・低脂肪乳製品が豊富なDASH食(血圧を下げるために考案された食事法)を組み合わせた場合、通常の食事と比較して、高血圧の参加者では収縮期血圧が大きく低下したと報告されています。
高ナトリウムレベルのコントロール食と比較して、低ナトリウムレベルのDASH食では、高血圧のない参加者の平均収縮期血圧が7.1 mmHg低下し、高血圧の参加者では11.5 mmHg低下しました。
引用:PubMed Effects on blood pressure of reduced dietary sodium and the Dietary Approaches to Stop Hypertension (DASH) diet. DASH-Sodium Collaborative Research Group
薬を使わずにこれだけの効果が期待できるというのは、生活習慣の改善がいかに重要かを示す数字です。
以下の表に、塩分が多い食品と、代わりに選びやすい低塩分の食品の例をまとめました。
塩分が多い食品と工夫・代替のポイント
| 塩分が多く注意が必要な食品 | 食塩相当量の目安 | 工夫・代替のポイント |
|---|---|---|
| みそ汁1杯(みそ18g) | 約1.5〜2g | 具を増やして汁を少なめにする |
| たくあん小鉢1皿(50g) | 約1.3〜1.7g | 浅漬けや野菜スティックに切り替える |
| こいくちしょうゆ大さじ1(18g) | 約2.6g | 少量を直接つける。だしで風味を補う |
| カップ麺1食(70〜100g) | 約4〜6.3g | スープを残す。頻度を減らす |
| 梅干し1個(10g) | 約1.8g | 塩分控えめタイプを選ぶ |
| 食パン1枚(60g) | 約0.8g | 食べすぎに注意。無塩バターを選ぶ |
※文部科学省「食品成分データベース」 から計算。食塩相当量はメーカー・製品によって異なります。
購入時に栄養成分表示を確認する習慣をつけましょう。
1日10分のウォーキングでも継続すれば血圧改善に効果が期待できる
「運動する時間がない」という方も多いかと思います。
しかし、まとまった時間がなくても、通勤の1駅分を歩く、昼休みに少し外を歩くといった積み重ねで、一定の効果が期待できます。
運動が血圧を下げる理由は、心臓が鍛えられることで、より少ない力で体全体に血液を送り出せるようになり、血管にかかる圧力が下がるためです。
複数の研究をまとめた解析では、週3〜5回・1回20〜40分のウォーキングを約15週間続けることで、収縮期血圧が平均約4mmHg、拡張期血圧が平均約1.8mmHg下がる可能性があることが示されています。
また、1回の運動が短くても積み重ねれば十分な効果が期待できることも報告されています。
専門機関や政府機関は、週に少なくとも3日以上・1回30分の中等度の有酸素運動を推奨していますが、10分の運動を1日3回に分けて合計30分にする方法も認められています。
まずは「今日10分だけ歩いてみる」という気軽な気持ちから始めてみてください。
忙しい方でも取り入れやすい運動の例を以下にまとめます。
忙しい方でも取り入れやすい運動の具体例
| 場面 | 具体的な取り組み | 目安の時間 |
|---|---|---|
| 通勤・移動中 | 1〜2駅分を歩く / エレベーターより階段を使う | 10〜15分 |
| 昼休み | オフィス周辺を軽く歩く | 10〜15分 |
| 帰宅後 | 夕食前に近所を1周歩く | 10〜20分 |
| 在宅勤務中 | 1時間に1回、5〜10分のストレッチや歩き | 5〜10分 |
なお、運動中に胸の痛み・強いめまい・呼吸の苦しさを感じた場合はすぐに運動を中止し、医師に相談してください。
睡眠不足・慢性的なストレスは血圧を上げる原因になるため対策が必要
忙しい毎日の中で、睡眠時間が削られ、ストレスが慢性化している方も多いのではないでしょうか。
実は、睡眠不足とストレスはどちらも血圧を上げる大きな要因です。
眠れていないと血圧が上がりやすくなる理由は、自律神経の乱れにあります。
睡眠不足は体にとってストレスのかかる状態であり、交感神経(緊張や興奮をつかさどる神経)が活性化されます。
その結果、血管を収縮させるホルモンが増えて血圧が上昇し、高血圧につながりやすくなると考えられています。
研究データでも、睡眠と高血圧の関係はしっかりと示されています。
睡眠不足・短時間睡眠・慢性的な不眠は、他のリスク要因を取り除いても血圧の上昇や高血圧のリスク増大と関連することが、複数の研究をまとめたレビューで確認されています。
本研究結果は、不眠症が高血圧リスクの有意な上昇と関連していることを示唆しています。
引用:PubMed Insomnia and the risk of hypertension: A meta-analysis of prospective cohort studies
また、慢性的なストレスも同様に自律神経を刺激し、アドレナリンやコルチゾールというストレスホルモンの分泌を促します。
これらのホルモンは心拍数を上げ、血管を緊張させるため、血圧が高い状態が続きやすくなります。
睡眠とストレスの改善に向けて、今日からできる取り組みを以下にまとめます。
- 毎日できるだけ同じ時間に寝起きする
- 寝る1時間前はスマートフォンやパソコンの画面を見ない
- 寝室を暗く、静かに、涼しく保つ
- 寝る前のカフェインやアルコールを控える
- 深呼吸を1日数回意識的に行う
- 湯船につかる入浴習慣を取り入れる
- 好きな音楽を聴く・軽い散歩をするなど、自分なりのリラックス方法を持つ
- 仕事とプライベートの時間を意識的に切り分ける
通院が難しいならオンライン診療を使えば、スマホだけで降圧薬の処方を受けられる場合がある
生活習慣の改善だけでは血圧のコントロールに限界がある場合や、すでに降圧薬(血圧を下げる薬)を飲んでいるが通院が難しい場合には、オンライン診療が有効な選択肢になります。
オンライン診療とは、スマートフォンやパソコンのビデオ通話機能を使って、自宅や職場にいながら医師の診察を受け、薬を処方してもらえる仕組みです(病状や医師の判断、初診時のルール等により処方できない場合もあります)。
病院への移動や待合室での物理的な待ち時間が省け、夜間や休日に対応しているサービスもあります。
日本での研究では、オンライン診療を通じた高血圧管理が通常の通院と同等以上の血圧コントロール効果をもたらす可能性が示されており、忙しさや時間のなさを理由に治療が途切れてしまうリスクを下げる手段としても注目されています。
ただし、オンライン診療にはできることとできないことがあります。
このセクションでは、適用の範囲と注意点、利用の流れと費用の目安を整理してお伝えします。
オンライン診療でできること・できないこと、受診前に知っておくべき注意点
オンライン診療はすべての状況に対応できるわけではありません。
自分がオンライン診療を使えるかどうか、事前に確認しておくことが大切です。
高血圧は家庭での血圧測定で主要な情報を得られるため、外来受診の間隔を調整しながらオンラインで管理を継続しやすい疾患のひとつとされています。
ただし、オンライン診療だけで管理を続けるのではなく、原則として定期的に対面での検査(血液検査など)も組み合わせて受けることが推奨されます。
医師の指示に従って、適切なタイミングで対面受診を組み合わせてください。
以下の表に、オンライン診療でできること・できないことを整理しました。
オンライン診療と対面診療の比較
| 項目 | オンライン診療 | 対面診療 |
|---|---|---|
| 薬の継続処方 | ◎ 対応可能(症状が安定している場合) | ◎ 対応可能 |
| 生活習慣の相談・指導 | ◎ 対応可能 | ◎ 対応可能 |
| 血圧値の確認・管理 | ○ 家庭血圧の数値をもとに対応 | ◎ 診察室で測定可能 |
| 初めての高血圧診断 | △ 検査が必要な場合は対面が必要 | ◎ 対応可能 |
| 血液検査・尿検査・心電図 | ✕ オンライン単体では対応不可(対面等が必要) | ◎ 対応可能 |
| 聴診・触診などの身体診察 | ✕ オンライン単体では対応不可(対面等が必要) | ◎ 対応可能 |
| 緊急性が高い症状への対応 | ✕ 対応不可(救急受診が必要) | ◎ 対応可能 |
オンライン診療の費用と手続きの流れ
オンライン診療の利用手順はサービスによって異なりますが、一般的には次のような流れになります。
実際に日本での研究では、オンライン診療(ビデオ診察・薬の郵送)を受けた高血圧患者のグループは、通常の通院グループと比べて1年後の収縮期血圧が有意に低く(125mmHg対131mmHg)、血圧を目標値以内にコントロールできた割合も高かった(85.3%対70.0%)と報告されています。
オンライン診療の一般的な利用の手順
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①予約 | ウェブサイトやアプリから希望の日時を選んで予約(夜間・休日も対応しているサービスあり) |
| ②事前問診 | 現在の血圧値・服用中の薬・既往歴などをオンラインで入力 |
| ③ビデオ診察 | スマートフォンやパソコンを使って医師と画面越しに診察 |
| ④処方・薬の受け取り | 処方箋が発行され、薬が自宅や指定薬局に郵送される |
費用については、健康保険が適用されるサービスでは対面診療と同様に保険が使えることが多く、自由診療の場合は全額自己負担になります。
また、システム利用料や配送料などの別途費用が発生する場合もあります。
初診か再診か、処方される薬の種類によっても費用は異なりますので、利用前に確認しておきましょう。
なお、初めて高血圧の治療を始める場合は、最初だけ対面での受診が必要になるケースもあります。
すでに他の医療機関で処方を受けている方が継続処方を希望する場合は、オンライン診療を利用しやすい状況です。
利用を検討している方は、サービスの対応範囲を事前に確認したうえで申し込んでみてください。
次の症状が出たら迷わず救急へ、忙しくても絶対に見逃してはいけないサイン
どれだけ忙しくても、次に挙げる症状が現れた場合はすぐに119番に電話するか、救急外来を受診してください。
「少し休めば治るかもしれない」「仕事があるから後で」という判断が、取り返しのつかない結果につながることがあります。
高血圧は普段は症状がないからこそ、何か体に異変を感じたときには、すでに重大な状態に進んでいる可能性があります。
特に血圧が急激に上昇した「高血圧緊急症」と呼ばれる状態では、脳・心臓・腎臓などの大切な臓器が急速にダメージを受けるリスクがあり、一刻も早い治療が回復の鍵を握ります。
日頃から家族や一緒に住む人にもこれらのサインを共有しておくと、いざというときに冷静に動けます。
頭痛・めまい・手足のしびれは高血圧の緊急サインである可能性がある
高血圧が急激に悪化した状態を「高血圧緊急症」と呼びます。
この状態では、血圧の急上昇によって脳・心臓・腎臓などに一気にダメージが及びます。
高血圧緊急症では、激しい頭痛・めまい・意識がぼんやりする・息苦しさ・胸の痛み・尿が出にくい・吐き気・視力の変化などの症状が現れることがあり、こうした症状が出た場合は速やかな対処が必要です。
米国心臓協会(AHA)は、血圧が180/120mmHg以上で、胸痛・呼吸困難・背中の痛み・しびれ・脱力・視力の変化・言葉が出ないなどの症状を伴う場合は、ただちに救急車を呼ぶよう呼びかけています。
以下の症状が一つでも当てはまる場合は、ためらわずに119番に電話してください。
高血圧の緊急サインである可能性がある症状
| こんな症状が出たらすぐ救急へ | 疑われる状態 |
|---|---|
| 今まで経験したことがないほどの突然の激しい頭痛 | 脳出血・くも膜下出血の可能性 |
| 突然、顔・手・足の片側がしびれる・力が入らない | 脳梗塞・脳出血の可能性 |
| ろれつが回らない・言葉がうまく出てこない | 脳梗塞の可能性 |
| 突然、視力が落ちる・視野の一部が欠ける | 網膜動脈閉塞・脳梗塞の可能性 |
| 激しい胸の痛みや、胸が強く圧迫されたり締めつけられる感覚 | 心筋梗塞・大動脈解離の可能性 |
| 突然、意識がぼんやりする・話の内容が理解できない | 高血圧性脳症・脳卒中の可能性 |
これらの症状は脳卒中や心筋梗塞、高血圧による脳のむくみ(高血圧性脳症)のサインである可能性があります。
「少し様子を見よう」は禁物です。
また、症状が出たときに自分で車を運転しようとするのも危険です。
すぐに救急車を呼ぶか、近くにいる人に助けを求めてください。
よくある質問(FAQ)
- 血圧の自己測定値はどのくらいから「高い」と判断すればよいですか?
-
日本高血圧学会のガイドラインでは、家庭で測った血圧の高血圧の目安は、上(収縮期)が135mmHg以上、または下(拡張期)が85mmHg以上とされています。
ただし、1回だけ高くても必ずしも高血圧とは限りません。
複数日にわたって継続して高い値が出る場合は、自己判断せずに医師に相談することをお勧めします。
- 降圧薬を飲んでいれば、生活習慣の改善はしなくてもよいですか?
-
薬で血圧の数値が落ち着いていても、生活習慣の改善は引き続き大切です。
塩分を控えたり、適度に体を動かしたりすることで、薬の効果がより出やすくなる可能性があります。
将来的に必要な薬の量を減らすことにもつながりえます。
薬と生活習慣の改善を組み合わせることが、高血圧管理の基本です。
- 病院に行けない期間が続いた場合、まず何をすればよいですか?
-
まず自宅での血圧測定を毎日続けることから始めましょう。
その記録をもとに、オンライン診療や電話相談を活用して医師に状況を伝えることをお勧めします。
特に以前から降圧薬を服用していた方は、自己判断で薬をやめると血圧が急上昇することがあります(薬剤により差があります)。
薬が手元にある間はそのまま続けつつ、できるだけ早く医師に相談してください。
まとめ
高血圧は症状がなくても、放置するほど脳卒中・心筋梗塞・腎臓病などのリスクが少しずつ積み重なる病気です。
「忙しくて病院に行けない」という状況でも、今日からできることはあります。
まず毎日の家庭血圧測定を習慣にして、自分の血圧の傾向を把握しましょう。
食事では1日の塩分を6g未満にすることを意識し、1日10〜30分のウォーキングを生活に取り入れ、十分な睡眠とストレスを減らす工夫も並行して取り組んでみてください。
通院が難しい場合はオンライン診療の活用も選択肢のひとつです。
特にすでに診断を受けていて薬を継続したい方にとっては、時間を節約しながら治療を続けるうえで有効な手段となります。
ただし、突然の激しい頭痛・顔や手足の片側のしびれ・胸の痛み・ろれつが回らないなどの症状が現れた場合は、すぐに救急要請をしてください。
高血圧の自己管理はできることから始めることが大切ですが、医師への相談を必要以上に先延ばしにすることは避け、気になることがあれば早めに医師に伝えるようにしましょう。
PubMed Epidemiology of hypertension in Japan: beyond the new 2019 Japanese guidelines
特定非営利活動法人 日本高血圧学会 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子
PubMed Central Blood Pressure Management in Stroke: Viewpoint
Mayo Clinic Get the most out of home blood pressure monitoring
PubMed Central Home Blood Pressure Monitoring: Current Status and New Developments
American Heart Association The rules for measuring blood pressure – and why they exist
Centers for Disease Control and Prevention Measuring Your Blood Pressure
World Health Organization Sodium reduction
文部科学省 食品成分データベース
PubMed Central Walking for hypertension
厚生労働省 高血圧症を改善するための運動
PubMed Insomnia and the risk of hypertension: A meta-analysis of prospective cohort studies
National Center for Biotechnology Information Physiology, Stress Reaction
厚生労働省 オンライン診療について
PubMed Central Home monitoring of blood pressure
PubMed Central Efficacy of Telemedicine in Hypertension Care Through Home Blood Pressure Monitoring and Videoconferencing: Randomized Controlled Trial
National Center for Biotechnology Information Hypertensive Emergency
American Heart Association When To Call 911 About High Blood Pressure
Mayo Clinic Subarachnoid hemorrhage – Symptoms and causes
Centers for Disease Control and Prevention Signs and Symptoms of Stroke
American Stroke Association Stroke Symptoms
Mayo Clinic Heart attack – Symptoms and causes
National Center for Biotechnology Information Hypertensive Encephalopathy
National Health Service High blood pressure
American Heart Association Journals 2017 ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults
National Health Service Common questions about ramipril


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