高血圧の治療は、一度始めると数年、あるいはそれ以上にわたって続くことが多いです。
その長い治療のなかで、「今の病院が自分に合っていない気がする」「薬を飲んでいるのに血圧がなかなか下がらない」「引っ越して通院が遠くなった」「先生の説明が難しくて、何を聞けばいいかもわからない」といった悩みを感じることは、決して珍しいことではありません。
それでも「転院なんてしていいのだろうか」「先生に悪いな」と思い、なんとなく同じ病院に通い続けているという方も多くいらっしゃいます。
結論からお伝えすると、高血圧の治療中に転院することはまったく問題ありません。
手続きさえ正しく踏めば、これまでの治療の要約や処方されていた薬の情報を新しい病院に引き継ぐことができ、治療が途切れてしまう心配も基本的にはありません。
- 転院は患者の権利として認められている
- 紹介状があれば治療情報を新しい病院に引き継げる
- 転院先は血圧の状態や合併症の有無に応じて選ぶ
- 今の病院に連絡し紹介状をもらってから新病院を受診する
- 薬を切らさないよう残量の事前確認が必須
日本の医療保険制度はフリーアクセス(患者さんが医療機関を自由に選べる)が基本であるため、病院を変えること自体に問題はありません。
この記事では、「転院したいけれど何から始めればいいかわからない」という方のために、転院を考えるよくある理由の整理から、どんな病院を選べばよいかの考え方、紹介状を使った具体的な転院の手順、そして転院中に最も気をつけたい薬の管理まで、順を追って説明します。
難しい用語はできるだけ使わずに解説しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
- 高血圧の治療中に転院を考えてよい理由とよくある状況
- 内科・循環器内科・かかりつけ医、それぞれの特徴と選び方
- 転院の具体的な流れと紹介状(診療情報提供書)の使い方
- 転院中に薬を切らさないための注意点
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
高血圧の治療中に転院したくなる理由は?思い切って病院を変えて大丈夫
高血圧は「静かな病気」とも呼ばれ、頭痛やめまいといった自覚症状がほとんどないまま進行することが多い病気です(重症になると症状が現れることもあります)。
だからこそ、自分では気づかないうちに血管や心臓に少しずつ負担がかかり続けるため、治療をきちんと継続することがとても大切です。
国際的な高血圧管理の取り組みにおいても、「正しい診断」「適切な治療」「長期的な通院の継続(治療開始後の定期的な再評価)」という3つが重要とされています。
しかし現実には、何年も同じ病院に通い続けていても「本当にこの治療で合っているのだろうか」と不安を感じている方が少なくありません。
血圧がなかなか安定しない、薬の副作用が気になる、先生に質問しにくい雰囲気がある、といった状況が続いているのであれば、転院という選択肢を真剣に考えることは、むしろ自分の健康を守るための積極的な行動といえます。
高血圧の治療でいちばん大切なことは、血圧を目標の数値に近づけ、その状態を長く保ち続けることです。
今の病院との関係や通院のしにくさが治療を続ける妨げになっているなら、環境を変えることも立派な治療の一歩です。
この章では、転院を考えるきっかけとなりやすい具体的な状況と、転院しても治療がきちんと続けられる理由について説明します。
「薬が合わない」「説明がわからない」など転院のきっかけになりやすい悩み
転院を考えるきっかけはさまざまですが、よく聞かれる理由のひとつが「薬の副作用や効き目への不満」です。
高血圧の薬にはいくつかの種類があり、同じ高血圧でも体の状態や他の病気の有無によって、合う薬・合わない薬が人それぞれ異なります。
たとえば「薬を飲み始めてから咳が止まらない」「めまいやふらつきが出るようになった」といった変化を感じている方もいらっしゃいます。
アメリカの国立心肺血液研究所(NHLBI)も、薬の副作用が気になる場合は担当医師に相談するよう呼びかけており、用量の調整や別の薬への変更が検討されることもあると説明しています。
薬の副作用についてご心配な場合は、担当医にご相談ください。担当医は薬の用量を変更したり、新しい薬を処方したりすることがあります。
引用:National Heart, Lung, and Blood Institute High Blood Pressure – Treatment
もし今の病院でそういった相談がしにくいと感じるなら、転院を検討するのは自然なことです。
また、「診察時間が短くて何も聞けないまま終わってしまう」「説明が専門的すぎてよくわからない」といった、医師とのコミュニケーションへの不満も転院の理由としてよく聞かれます。
高血圧の治療では、医師と患者さんが情報をしっかり共有できることが治療の成功に深く関わるとされており、こうした不満を抱えたまま通院を続けることは、長い目で見ると治療の質にも影響しかねません。
そのほか、「引っ越しや転勤で病院が遠くなった」「血圧がいつまでたっても下がらないので、別の先生にも意見を聞いてみたい」という理由も、転院のきっかけとしてごく一般的です。
転院を考えるきっかけとして多いものを整理すると、以下のようになります。
転院のきっかけになりやすい悩み
| きっかけの種類 | 具体的な状況の例 |
|---|---|
| 薬への不満 | 副作用がつらい、飲んでいても血圧が下がらない |
| コミュニケーションへの不満 | 診察が短い、説明が難しくて理解できない、質問しにくい |
| 通院環境の変化 | 引っ越し・転勤で病院が遠くなった |
| 治療効果への疑問 | 血圧がなかなか安定しない、別の先生の意見を聞きたい |
転院しても薬や治療は引き継げるので安心して大丈夫
転院に際して多くの方が心配されるのが、「これまでの治療が全部リセットされてしまうのでは」という点です。
しかし、正しい手順を踏めば、これまでの治療の経過や検査の結果、今飲んでいる薬の要約などの情報を新しい病院に引き継ぐことができます。
この引き継ぎで中心的な役割を果たすのが「紹介状(正式には診療情報提供書といいます)」です。
紹介状には、これまでの症状の経過・血液検査などの結果・治療の内容・現在処方されている薬の情報などがまとめて記載されており、新しい担当医師がすぐに患者さんの状態を把握できるようになっています。
厚生労働省は、医療機関が患者さんの診療情報を積極的に提供することで、医師と患者さんの間に信頼関係が築かれ、より良い医療につながるという指針を定めています。
医療従事者等が診療情報を積極的に提供することにより、患者等が疾病と診療内容を十分理解し、医療従事者と患者等が共同して疾病を克服するなど、医療従事者等と患者等とのより良い信頼関係を構築することを目的とするものである。
引用:厚生労働省 ○診療情報の提供等に関する指針の策定について〔医師法〕(◆平成15年09月12日医政発第912001号)
つまり、転院は「ゼロからのやり直し」ではなく、これまで積み上げてきた治療の記録を持ったまま、より自分に合った環境へ移るためのステップです。
不安に思う必要はありません。
高血圧の転院先は内科・かかりつけ医・専門クリニックから自分に合った場所を選ぼう
転院を決めたとして、次に多くの方が迷うのが「どんな病院に転院すればいいのか」という点です。
高血圧を診てもらえる医療機関にはいくつかの種類があり、それぞれ得意としている分野や対応できる範囲が異なります。
「どこでも同じだろう」と思って選んでしまうと、後から「やっぱり合わなかった」となりかねないため、自分の状態に合った転院先を選ぶことが大切です。
たとえば、血圧の数値が比較的安定していて特に他に病気がない方と、動悸や息切れなど心臓や血管に関係しそうな症状がある方とでは、適した医療機関は変わってきます。
また「とにかく近くて通いやすいところがいい」という希望も、治療を長く続けるうえで十分に合理的な理由です。
実際、研究では定期的な受診やフォローアップを継続することが血圧のコントロールに大きく関わるとされており、通院しやすい場所を選ぶこと自体が治療の一部といっても過言ではありません。
この章では、それぞれの医療機関の特徴と、転院先を選ぶときに確認しておきたいポイントを説明します。
内科・かかりつけ医・専門クリニック、それぞれこんな人に向いている
一般内科は、風邪から生活習慣病まで幅広い病気を診る診療科です。
高血圧はとても一般的な病気であるため、近くの内科クリニックであれば多くの場合で診てもらうことができます。
「まだ高血圧と診断されたばかり」「血圧は少し高めだが比較的安定している」「とにかく家や職場から通いやすい場所に転院したい」という方には、まず内科のかかりつけ医を選ぶことが適しているといえます。
循環器内科は、心臓や血管の病気を専門的に診る診療科です。
血圧が長く高い状態が続くと、心臓や血管がじわじわとダメージを受け、動脈硬化(血管が硬くなること)・狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などのリスクが高まります。
こうした合併症が心配な方や、「薬を飲んでいても血圧がなかなか安定しない」「動悸・息切れ・胸の重さなど心臓に関係しそうな症状がある」という方には、循環器内科など専門性の高い医療機関への転院を検討することが適切な場合があります。
かかりつけ医とは、日常的な健康管理を長期的に担当してくれる、いわば「自分専属のホームドクター」のような存在です。
体質や生活習慣、これまでの病歴をよく知っているため、高血圧だけでなく他の健康上の悩みも気軽に相談できるというメリットがあります。
一人の医師に継続的に診てもらうことは、血圧コントロールの改善や治療の質を高めるうえでも大きな意味を持ちます。
3つの選択肢の特徴と向いている方を表にまとめると、以下のようになります。
転院先の選択肢と特徴
| 医療機関の種類 | 特徴 | こんな方に向いている |
|---|---|---|
| 一般内科 | 幅広い病気を総合的に診る。高血圧の基本的な管理が可能 | 血圧が比較的安定している、合併症がない、通いやすさを重視したい |
| 循環器内科 | 心臓・血管の病気を専門に診る。高血圧の専門的な管理が得意 | 血圧がなかなか安定しない、動悸・息切れなど心臓に関する症状がある |
| かかりつけ医 | 体質・生活習慣・病歴を長期的に把握している身近な医師 | 高血圧以外の悩みも含めて継続的に相談したい、長く通える関係を築きたい |
転院先を決める前に確認しておくと後悔しない3つのポイント
転院先を選ぶ際にまず確認したいのは、「自分の状態に合った診療ができる病院かどうか」という点です。
特に合併症がなく血圧が比較的安定していれば一般の内科で十分なことが多いですが、血圧コントロールが難しかったり、心臓・腎臓・糖尿病など他の病気も抱えている場合は、専門性の高い医療機関の方が安心です。
次に大切なのが「無理なく通い続けられる距離や環境かどうか」です。
高血圧の治療は長期戦であり、通いにくい場所を選んでしまうと、だんだん通院が滞ってしまう原因になります。
先ほど紹介した研究でも示されているように、定期的な受診やフォローアップを継続することが、血圧の良好なコントロールにつながります。
そして「担当医師と話しやすいかどうか」も、長い治療をともにするうえで非常に重要なポイントです。
初回の受診で「質問しやすい雰囲気か」「説明がわかりやすいか」を確認してみてください。
疑問をそのままにせず医師に伝えられる関係性が、治療の満足度と質を高めることにつながります。
転院先を選ぶ際の3つの確認ポイントをまとめると、以下の通りです。
- 自分の状態に合った専門性があるか(合併症の有無・血圧の安定度に応じて判断する)
- 無理なく通い続けられる距離・環境かどうか(長期的な治療のため、継続しやすい立地を重視する)
- 担当医師と話しやすいかどうか(初回受診時に雰囲気や説明のわかりやすさを確認する)
転院の基本的な流れは「今の病院に連絡→紹介状をもらう→新しい病院を受診」の3ステップ
転院の手続きは、一見するとハードルが高そうに感じるかもしれませんが、実際の流れは、一般的に大きく3つの基本ステップに分けることができます。
手順を知らないまま動いてしまうと、「紹介状を頼むのが遅くなって薬が切れそうになった」「何を持参すればよいかわからなかった」といったトラブルが起きやすくなります。
あらかじめ流れを理解しておくことで、落ち着いて転院の準備を進めることができます。
最初にすることは、今かかっている病院に「転院したい」と伝えて紹介状をお願いすること。
次に、転院先の病院を選んで予約を取ること。
そして、必要なものを準備したうえで新しい病院を受診することです。
この章では、それぞれのステップで何をすればよいか、具体的に説明します。
転院の流れを整理すると、以下の3ステップになります。
転院の基本的な流れ
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ① 今の病院へ連絡 | 担当医師に転院の意向を伝え、紹介状を依頼する | 理由の詳しい説明は不要。早めに依頼しておくと安心 |
| ② 転院先の病院を決める | 自分の状態と通院環境に合った病院を選び、予約を取る | 薬の残量も確認しておく |
| ③ 新しい病院を受診する | 紹介状・お薬手帳・血圧記録などを持参して初診を受ける | 疑問はその場で遠慮なく質問する |
今の病院への伝え方と、紹介状をもらっておくと転院がスムーズになる理由
まずやることは、今の病院の担当医師に「転院したい」という気持ちを伝え、紹介状を作成してもらうことです。
「先生に失礼になるのでは」「ちゃんとした理由を説明しないといけないのでは」と気を遣う方も多いのですが、そこまで心配する必要はありません。
「通院が遠くなった」「別の病院に移りたい」という一言で十分です。
理由を詳しく話す義務はなく、担当医師も転院という選択肢を否定することはありません。
紹介状の正式名称は「診療情報提供書」といいます。
これは、今の病院から転院先の病院へ、患者さんの医療情報をまとめて伝えるための書類です。
これまでの症状の経過・血液検査などの結果・治療の内容・現在飲んでいる薬の名前と量などが記載されており、新しい担当医師が患者さんの状態をすぐに把握できるよう作られています。
厚生労働省が定めた書式では、診断名・症状の経過・薬の情報・各種検査のデータ(血液検査・心電図・画像など)が盛り込まれることになっています。
紹介状を作成してもらうと「診療情報提供料」という費用がかかります。
保険が3割負担の場合、自己負担額の目安はおよそ750円程度です(実際の負担割合や、医療機関による事務手数料・添付資料の有無などで金額は変動することがあります)。
一方、紹介状なしで制度の対象となる一部の大きな病院(特定機能病院や200床以上の地域医療支援病院など)を受診した場合は、「選定療養費」として数千円〜1万円以上が別途かかることもあります。
費用の面でも、紹介状を用意しておくほうがお得になる場合がほとんどです。
なお、紹介状の作成には数日かかることもあるため、転院の予定が決まったら早めに担当医師に相談しておきましょう。
初めて転院先を受診するときに持っていくと役立つもの
新しい病院への初めての受診では、紹介状以外にも、いくつかのものを持参するとスムーズに診察を受けることができます。
転院先への初回受診時に持参したいものは、以下の通りです。
- 紹介状(診療情報提供書):今の病院に作成してもらった、治療情報の引き継ぎ書類
- お薬手帳:これまで処方された薬の名前・量・期間が記録されており、紹介状を補う情報源になる
- マイナンバーカード(マイナ保険証)または資格確認書:初診の手続きに必須
- 家庭での血圧測定記録(血圧手帳など):日常の血圧の変動を医師に伝えるのに役立つ
- 現在飲んでいる薬の現物または薬の袋・シート:薬の確認をその場でスムーズに行うために有効
転院中に薬が途切れると血圧が乱れやすいので薬の管理だけは慎重に
転院の準備を進めるなかで、特に気をつけていただきたいのが「薬を途切れさせないこと」です。
高血圧の薬は、自己判断で急にやめてしまうと血圧が一気に跳ね上がることがあります。
これを「リバウンド高血圧」と呼び、場合によっては脳や心臓に大きな負担をかけてしまうリスクもあります。
転院の手続きを進めている最中に薬が切れてしまわないよう、事前の準備をきちんと整えておくことが大切です。
転院の手続きそのものは決して難しいことではありませんが、この「薬の引き継ぎ」だけは慎重に対応してください。
もし転院先への初回受診までに薬の残りが少なくなりそうな場合は、今の病院でまとめて多めに処方してもらえないか相談してみましょう。
この章では、薬を安全につなぎながら転院するための具体的な注意点と、転院後に血圧が安定するまでの見通しについて説明します。
薬を切らさないために転院前にやっておくべきこと
高血圧の薬を急にやめると血圧が急激に上がる「リバウンド高血圧」が起こりやすいことは、これまでの研究でも報告されています。
特にクロニジン(中枢性の降圧薬)やベータ遮断薬(心臓の働きを調整する薬)といった種類の薬では、急にやめたときのリスクが高いとされています。
薬を急に中断することで体の神経系が過剰に反応し、重篤な心臓や血管のトラブルにつながる可能性も否定できません。
降圧薬の急激な中止は、通常、直ちに影響を及ぼすことはありませんが、交感神経活動亢進、重度の高血圧、虚血性心血管イベント、または死亡などの症状や徴候を伴う場合があります。
引用:PubMed Abrupt discontinuation of antihypertensive therapy
転院先の初回受診の予約が決まったら、今手元にある薬の残量をすぐに確認してください。
受診日までの日数に対して薬が足りない場合は、今の病院で受診して「次の病院を受診するまでのつなぎとして多めに処方してもらえないか」と相談してみましょう。
ただし、病状や処方日数の上限、制度などにより必ず多めに出せるとは限りません。
薬を自分の判断で減らしたり、飲むのをやめたりすることは絶対に避けてください。
薬を変えたり調整したりする場合は、必ず医師の指示のもとで行うことが原則です。
転院前に薬の管理でやっておくべきことを整理すると、以下の通りです。
- 手元にある薬の残量を確認し、転院先の初回受診日まで足りるか計算する
- 残量が不足しそうな場合は、今の病院で多めに処方してもらえないか相談する(※必ず多めに出せるとは限りません)
- 自己判断での減薬・中断は絶対にしない
- 薬の調整が必要な場合は、必ず医師の指示のもとで行う
転院後、血圧が落ち着くまでには数週間かかることがある
新しい病院に初めてかかると、担当医師は患者さんの状態をより正確に把握しようとするため、追加の検査を行うことがあります。
また、今まで飲んでいた薬の種類や量が見直されることもあります。
薬が変わった場合、段階的な用量調整などが必要になることも多く、血圧が安定するまでには数週間から数か月程度の時間がかかることがあります(安定までの期間には個人差があります)。
焦らず新しい担当医師と相談しながら経過を見守ることが大切です。
イギリスのNICEガイドライン(国の医療基準)では、高血圧の患者さんは少なくとも年に1回、血圧の状態・生活習慣・症状・薬の状況について定期的に確認を受けることが推奨されています。
転院後も、この定期的な通院のリズムをなるべく早く整えることが重要です。
受診の際には、自宅で測った血圧の記録を持参するようにしましょう。
毎朝・毎晩など決まったタイミングで測定した記録があると、担当医師が日常の血圧の変化をより正確に把握でき、治療の調整がしやすくなります。
転院後の経過について、時系列のイメージを示すと以下の通りです。
転院後の経過イメージ
| 時期 | 起こりうること |
|---|---|
| 初回受診 | 紹介状をもとに診察。追加の検査が行われることがある |
| 受診後〜数週間 | 薬の種類・量が見直される場合がある。血圧が変動することも |
| 数週間〜数か月後 | 段階的な薬の調整などにより、血圧が徐々に安定してくる(期間には個人差あり) |
| 安定後 | 定期的な通院を継続しながら、血圧のコントロールを維持していく |
よくある質問(FAQ)
- 転院するとき、今の病院に理由を正直に話さないといけませんか?
-
詳しい理由を説明する必要はありません。
「通院が不便になった」「別の病院に移りたい」とだけ伝えれば十分です。
患者さんには自分が通いたい医療機関を自由に選ぶ権利があり、担当医師もそれを理解しています。
気まずさを感じる必要はなく、「紹介状をお願いしたい」と率直に伝えてください。
- 紹介状がなくても転院できますか?
-
紹介状がなくても転院先での受診自体は可能です。
ただし、制度の対象となる一部の大きな病院(特定機能病院や該当する200床以上の病院など)の場合は、紹介状なしで受診すると「選定療養費」として数千円〜1万円以上の追加費用がかかることがあります。
また、紹介状がないと担当医師がこれまでの治療の経緯を知らない状態で診察が始まるため、同じような検査を一からやり直すことになる場合もあります。
スムーズに治療を引き継いでもらうためにも、できるだけ紹介状を用意することをお勧めします。
- 転院後も同じ薬を続けて処方してもらえますか?
-
紹介状に今の処方内容が記載されていれば、新しい担当医師は同じ薬を引き続き処方することができます。
ただし、診察の結果として薬の種類や量が変わる場合もあります。
自分の判断で薬を変えたりやめたりすることは危険ですので、変更が必要な場合は必ず医師と相談するようにしてください。
まとめ
高血圧の治療中に「病院を変えたい」と思うことは、決して珍しいことでも、失礼なことでもありません。
自分に合った治療環境を選ぶことは、長期にわたる高血圧の管理において、とても大切な一歩です。
転院を進める際に押さえておきたいポイントは3つあります。
まず、今の病院に転院の意向を伝えて紹介状を作成してもらうこと。
次に、自分の状態(血圧の安定度・合併症の有無など)に合った転院先を選ぶこと。
そして、転院の手続きの間に薬が途切れないよう、薬の残量を事前に確認しておくことです。
転院後は、新しい担当医師のもとで定期的に通院を続け、必要に応じて薬の調整を受けてください。
自宅での血圧測定を習慣にして記録を持参することで、医師との情報共有がしやすくなり、より的確な治療につながります。
高血圧の治療を途切れさせないこと、そして自分に合った医療の場を選ぶことが、これからの健康を守る大切な土台になります。
転院に不安を感じている方は、まず今の担当医師に、気軽に相談してみることから始めてみてください。
お体の状態や治療方針については、必ず担当医師にご相談ください。
公益社団法人 日本医師会 日本の医療保険制度の優れた特徴
Centers for Disease Control and Prevention About High Blood Pressure (Hypertension)
PubMed Central Scaling up effective treatment of hypertension—A pathfinder for universal health coverage
National Health Service Side effects of ramipril
National Heart, Lung, and Blood Institute High Blood Pressure – Treatment
厚生労働省 ○診療情報の提供等に関する指針の策定について〔医師法〕(◆平成15年09月12日医政発第912001号)
PubMed Central How many hypertensive patients can be controlled in “real life”: an improvement strategy in primary care
World Health Organization Hypertension
National Institute for Health and Care Excellence Quality statement 6: Referral to a specialist for adults with resistant hypertension
厚生労働省 令和7年7月31日 かかりつけ医機能報告制度に係る自治体向け説明会(第3回)
厚生労働省 診療情報提供書
厚生労働省 診療報酬制度について
厚生労働省 患者のみなさまへ 医療機関の機能・役割に応じた適切な受診を行うようお願いします。
厚生労働省 使う準備はできていますか?お手元に、マイナ保険証か資格確認書を。
PubMed Central Drug Discontinuation Effects Are Part of the Pharmacology of a Drug
PubMed Abrupt discontinuation of antihypertensive therapy
PubMed Central Development of an entirely remote, non‐physician led hypertension management program
PubMed Central Diagnosis and management of hypertension in adults: NICE guideline update 2019
特定非営利活動法人 日本高血圧学会 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子
日本赤十字社 大阪赤十字病院 紹介状について


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