血圧を測ったら、上の数字が140を超えていた。
健康診断で高血圧を指摘された。
50代になってから、こうした経験をお持ちの方は少なくありません。
実際、日本人の50代では、男性の約4〜5割、女性の約2〜3割が高血圧です。
年齢が上がるほど、その割合は増えていきます。
特に女性では、閉経を迎える時期に血圧が急に上がることがよくあります。
それまで正常だった血圧が、閉経を機に一気に高くなるケースも珍しくありません。
高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれます。
なぜなら、自覚症状がないまま進行し、ある日突然、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こすからです。
アメリカでは、高血圧が主な死因、または死因の一つとして関与して亡くなる方が年間66万人以上にのぼります。
日本でも、高血圧は脳卒中や心臓病の最大の原因として知られています。
- 更年期のホルモン減少で血管の柔軟性が失われる
- 加齢で血管が硬くなり高い圧力が必要になる
- 内臓脂肪が増え血圧を上げる物質が分泌される
- 慢性的なストレスが神経を刺激し血管を収縮させる
- 長年の生活習慣の影響が血管に現れやすい年代
しかし、ここで希望を持っていただきたいことがあります。
高血圧は、適切な対策を取ればコントロールできる病気だということです。
研究によると、脳卒中のリスク要因の約90%は、生活習慣の管理などで説明できるとされています。
つまり、今から行動を起こせば、将来の重大な病気を防げる可能性が高まります。
この記事では、50代で高血圧になりやすい4つの理由から、放置するとどんな病気になるのか、今日から始められる具体的な対策、そして病院を受診すべきタイミングまで、医師の立場から分かりやすく解説します。
あなたの健康な未来のために、ぜひ最後までお読みください。
- 50代で血圧が上がりやすくなる4つの理由
- 高血圧を放置すると起こる深刻な病気
- 今日から実践できる具体的な高血圧対策
- 病院を受診すべき血圧の数値と症状
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、高血圧に関する一般的な医学情報の提供を目的として作成されたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
血圧の状態や治療方針は、年齢・体質・基礎疾患・服薬状況などにより個人差があります。降圧薬を含む医薬品の使用や生活習慣の改善を検討される場合は、必ず医師などの医療専門職にご相談のうえ、十分な説明を受けてからご自身の判断で行ってください。
また、本記事で紹介する内容の一部は、一般診療のほか自由診療に該当する可能性があります。保険適用の有無や費用、効果、副作用などについては、必ず受診先の医療機関で最新の情報をご確認ください。
本記事の情報は公開時点の医学的知見やガイドラインをもとにしていますが、今後の研究や法令改正により内容が変更となる場合があります。正確かつ最新の情報を得るために、公的機関(厚生労働省、日本高血圧学会など)や各医療機関の公式情報をあわせてご確認ください。
なぜ50代になると血圧が上がりやすくなるのか
50代は、体の様々な変化によって血圧が上がりやすい時期です。
これは単なる老化現象ではありません。
ホルモンバランスの変化、血管が硬くなること、長年の生活習慣の影響など、いくつもの要因が重なって起こります。
特に女性では、閉経を迎える時期のホルモン変化が大きく影響します。
それまで女性ホルモンによって守られていた血管が、急に老化のスピードを早めるのです。
男性でも、仕事や家庭での責任が最も重くなる時期です。
ストレスの蓄積、運動不足、お腹まわりの脂肪増加などが血圧を上げる原因になります。
興味深いのは、50歳までは男性のほうが高血圧の割合が高いという点です。
しかし、閉経後には女性の高血圧が急に増えて、男女の差がほとんどなくなります。
これは女性ホルモンの減少が、いかに血圧に大きな影響を与えているかを表しています。
- 女性ホルモンの減少により血管の柔軟性が失われる(特に女性)
- 血管が硬くなり血液を送り出すのに高い圧力が必要になる
- お腹まわりの内臓脂肪が増えて血圧を上げる物質が分泌される
- 仕事や家庭のストレスが長年蓄積して神経を刺激し続ける
ここでは、これら4つの理由を詳しくご説明します。
原因を理解すれば、効果的な対策を立てることができます。
女性は更年期でホルモンが減少し血圧が上昇する
女性の場合、50歳前後で訪れる更年期が血圧上昇の大きな転換点となります。
閉経に伴って、エストロゲンという女性ホルモンが急激に減少します。
このエストロゲンは、血管をしなやかに保ち、動脈硬化(血管が硬くなること)を防ぐ働きをしています。
更年期は、卵巣ホルモン、特にエストロゲンとプロゲステロンの産生が著しく低下する特徴があります。
引用:PubMed Central The Impact of Menopause on Cardiovascular Aging: A Comprehensive Review of Androgen Influences
エストロゲンが減ると、血管が硬くなりやすくなります。
また、血圧を上げる原因となる高脂血症(血液中の脂質が多い状態)や糖尿病のリスクも増えます。
実際、50歳までは男性に多かった高血圧や糖尿病が、閉経後には女性でも急に増えて、男女の差がほとんどなくなることが分かっています。
更年期の血圧上昇は、ほてりやめまいなど、他の更年期症状と同時に起こることも多いです。
「更年期だから仕方ない」と体調不良の一つとして見過ごしてしまうケースもあります。
しかし、この時期の血圧管理は、将来の心臓や脳の病気を予防するためにとても大切です。
血管が硬くなり血液を送り出す力が弱まる
年齢を重ねると、血管は少しずつ硬く、弾力性を失っていきます。
これを「動脈硬化」と呼びます。
50代になると、多くの方にこの変化が見られるようになります。
若い頃の血管は、ゴムホースのように柔軟です。
心臓が血液を送り出すたびに、血管が広がって血液をスムーズに全身に届けます。
しかし、年齢とともに血管壁が厚く硬くなると、血管が十分に広がらなくなります。
そのため、血液を送り出すために、より高い圧力が必要になるのです。
研究によると、上の血圧は年齢とともに上がり続けます。
一方で、下の血圧は50代をピークに低下する傾向があります。
加齢に伴い血圧のパターンが変化し、高血圧症患者の場合、収縮期血圧 (SBP) は男性と女性の両方で成人期を通じて徐々に上昇し続けるのに対し、拡張期血圧 (DBP) は 55 歳頃まで上昇し、次の 10 年間は横ばいになり、その後は横ばいまたはいくらか低下する傾向があります。
引用:PubMed Central Treating Stage 2 Hypertension
これは血管の柔軟性が失われた証拠です。
上下の血圧の差が大きくなると、血管への負担がさらに増すという悪循環が生まれます。
血管の老化は、長年の高血圧、喫煙、高コレステロール、運動不足などによって早く進みます。
特に50代は、これまでの生活習慣の影響が血管の状態として表れやすい年代といえます。
お腹まわりの脂肪が増えて血圧が上がる
50代になると、若い頃と同じ食事量でも体重が増えやすくなります。
これは基礎代謝(何もしなくても消費されるエネルギー)が低下するためです。
特にお腹まわりに脂肪がつく内臓脂肪型肥満は、血圧を上げる大きな要因です。
内臓脂肪が増えると、脂肪細胞から血圧を上げる物質などが分泌されます。
また、腎臓での塩分の排出が悪くなり、体の中に水分と塩分が溜まりやすくなります。
これが血圧を上げるのです。
体重と高血圧の関係はとても強いです。
研究では、体重を3〜5キログラム減らすだけでも血圧が下がることが分かっています。
具体的には、体重1キログラムの減少につき、上下の血圧がそれぞれ約1mmHg低下します。
10キログラムの減量なら、血圧を5〜20mmHg下げる効果が期待できます。
体重減少量が大きいほど、血圧低下率も大きくなり、1mmHgの減少は約1kgの減量に相当します。
引用:PubMed Central Lowering weight equals reduction of mortality: How far are we from the “Ithaka” of ideal weight control?
50代では基礎代謝が低下するため、若い頃と同じ生活をしていても自然と体重が増えます。
特に閉経後の女性では、エストロゲンの減少によって内臓脂肪がつきやすくなることも分かっています。
仕事や家庭のストレスが長年蓄積している
50代は、仕事では責任ある立場を任されることが多い世代です。
家庭では、子どもの進学、親の介護など、様々な役割を担います。
こうした慢性的なストレスは、神経を刺激し続け、血圧を上げる要因の一つとなります。
ストレスを感じると、体は「戦うか逃げるか」という反応を起こします。
心臓の鼓動が速くなり、血管が収縮し、血圧が上がるのです。
これは短い時間なら問題ありません。
しかし、ストレスが長く続くと、この状態が慢性化して、常に血圧が高い状態になってしまいます。
さらに、ストレスは睡眠の質を下げます。
睡眠不足も血圧を上げる要因です。
十分な睡眠が取れないと、血圧を下げるホルモンの分泌が減ります。
また、翌日の血圧の変動も大きくなることが研究で示されています。
50代の多くの方が経験する睡眠の質の低下は、ストレスと相まって血圧上昇を加速させます。
50代の高血圧を放置すると起こる病気
高血圧は自覚症状がほとんどありません。
そのため、「少し高いだけだから大丈夫」と軽く考えてしまう方も少なくありません。
しかし、高血圧を放置すると、重大な病気のリスクが確実に高まります。
世界保健機関(WHO)は、高血圧を心臓病、脳卒中、腎不全の主要な原因として位置づけています。
そして、適切な管理によってこれらの病気の多くを予防できると報告しています。
特に大切なのは、50代という年代です。
この時期の高血圧を適切に管理するかどうかで、60代、70代以降の健康状態が大きく変わります。
研究では、40〜60代の高血圧が、将来の脳卒中、心臓病、腎臓病、さらには認知症のリスクを大幅に高めることが分かっています。
- 脳梗塞・脳出血(突然倒れて命に関わる、または重い後遺症が残る)
- 心筋梗塞(心臓の血管が詰まり、命の危険がある)
- 慢性腎臓病(最終的に透析が必要になることもある)
- 認知症(将来の記憶力や判断力の低下)
逆に言えば、今から適切な対策を取ることで、これらの病気を予防できる可能性が高いということです。
ここでは、高血圧によって引き起こされる可能性のある深刻な病気について、最新の医学的知見に基づいて説明します。
脳梗塞や心筋梗塞で突然倒れるリスクが高まる
高血圧は、脳卒中と心筋梗塞の最も重要な原因です。
世界保健機関(WHO)の報告によると、世界的な推計では、脳卒中の約54%は高血圧が関与しているとされています。
高い血圧が長い間続くと、血管の内側の壁が傷つきます。
そこにコレステロールなどが溜まって、血管が硬く、狭くなります。
これが動脈硬化です。
動脈硬化が進むと、血管が詰まったり、高い圧力で破れたりします。
その結果、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞といった命に関わる病気が突然起こるのです。
研究によると、上の血圧が10mmHg上がるだけでも、脳卒中のリスクが高まることが分かっています。
また、40〜60代の高血圧は、その後の認知症や脳血管の病気のリスクを特に高めることが、長期的な調査で明らかになっています。
40~59歳の被験者(10 mmHg上昇あたりのHR:1.22、95%信頼区間:1.15~1.30)および60~69歳の被験者(10 mmHg上昇あたりのHR:1.08、95%信頼区間:1.04~1.11;図 3A)において、SBPが高いほど認知症リスクが上昇することが示された。
引用:Nature Associations of hypertension burden on subsequent dementia: a population-based cohort study
特に注目すべき事実があります。
高血圧に関連する脳卒中のリスク要因の約90%は、生活習慣の改善や適切な治療によって説明できることが分かっています。
つまり、今から血圧をコントロールすれば、将来の重大な病気を防げるのです。
腎臓が悪くなり透析が必要になることもある
高血圧は、糖尿病に次いで、腎不全の第二の原因となっています。
腎臓は、体の中の老廃物をろ過して尿として出す臓器です。
腎臓には細い血管がたくさん集まっているため、高い血圧による影響を受けやすいのです。
高血圧が続くと、腎臓の細い血管が傷つき、血の流れが悪くなります。
すると腎臓は「血圧が低い」と勘違いして、血圧を上げるホルモンを出してしまいます。
その結果、さらに血圧が上がるという悪循環に陥ります。
この状態が続くと、腎臓の働きが少しずつ低下します。
最終的には、人工透析(機械で血液をきれいにする治療)が必要になることもあります。
アメリカの成人の約半数が高血圧です。
そのうち約5人に1人が慢性腎臓病を抱えているというデータがあります。
米国では高血圧の成人の約5人に1人(20%)がCKDを患っている可能性がある。
引用:National Kidney Foundation High Blood Pressure and Chronic Kidney Disease
日本でも、高血圧と慢性腎臓病の関連は強いです。
適切な血圧管理によって、腎臓の機能低下を遅らせることができます。
腎臓病が進むと、体の中に余分な水分や塩分が溜まります。
そうすると、さらに血圧が上がるという悪循環が起こります。
早い時期に血圧をコントロールすることが、腎臓を守るためにとても大切です。
将来的に認知症になる可能性が上がる
近年の研究で、40〜60代の高血圧が将来の認知症リスクを高めることが分かってきました。
特に50代での高血圧は、20〜30年後のアルツハイマー型認知症や血管性認知症の発症リスクを大きく上げることが、大規模な研究で示されています。
高血圧が認知症を引き起こす仕組みはいくつかあります。
まず、高血圧によって脳の細い血管が傷つきます。
すると、脳の白質病変(脳の中の異常な変化)と呼ばれる状態が起こります。
この白質病変は、記憶力や判断力などの低下と深く関係しています。
また、高血圧は、記憶に大切な海馬という脳の部分の萎縮(縮むこと)とも関連していることが、画像検査で確認されています。
興味深いことに、高血圧の治療を長く続けることで、認知症のリスクを下げられる可能性が示されています。
複数の研究をまとめた分析によると、治療期間を5年未満、5〜12年、12年以上のグループで比較した結果、長く治療を続けた人ほど認知症になりにくいことが示されました。
研究結果によると、降圧療法の期間が長いほど、認知症のリスクが低くなることが示されました。
引用:PubMed Central The Role of Hypertension in Cognitive Dysfunction
50代から血圧をしっかり管理することは、脳の健康を守り、将来の認知症予防につながる大切な投資といえます。
今日から実践できる50代の高血圧対策
高血圧を改善するには、生活習慣の見直しが最も重要です。
薬による治療も必要な場合がありますが、まずは日常生活でできることから始めましょう。
研究では、適切な生活習慣の改善によって、血圧の薬1種類分に匹敵する効果が得られる場合があることが示されています。
世界中の高血圧治療のガイドラインは、薬を使う前にまず生活習慣の改善を勧めています。
なぜなら、生活習慣の改善は血圧を下げるだけでなく、糖尿病や脂質異常症(コレステロールなどが高い状態)など、他の生活習慣病の改善にもつながるからです。
また、軽い高血圧なら、生活習慣の改善だけで血圧が正常範囲まで下がることも珍しくありません。
- 塩分を1日6グラム未満(小さじ1杯分)まで減らす
- ウォーキングなど軽い運動を週5日続ける
- 体重を3〜5キログラム減らす
- お酒は適量(日本酒1合、ビール中瓶1本程度)を守る
- 夜はしっかり眠りストレスをためない
ここでは、科学的に効果が証明されている具体的な対策を詳しくご紹介します。
すべてを一度に始める必要はありません。
できることから一つずつ取り入れていき、無理なく続けられる方法を見つけることが大切です。
小さな変化の積み重ねが、大きな健康改善につながります。
塩分は1日小さじ1杯分まで減らす
日本人の高血圧の最大の原因は、塩分の取り過ぎです。
世界保健機関(WHO)は1日の塩分摂取量を5グラム未満(小さじ1杯弱)にすることを勧めています。
日本の高血圧治療ガイドラインでは1日6グラム未満を目標としています。
しかし、日本人の平均的な塩分摂取量は1日約10グラムと、目標値を大きく上回っています。
塩分を減らすと、確実に血圧が下がります。
研究では、高血圧の方の場合、1日の塩分摂取量を6グラム減らすことで、上の血圧が約6mmHg、下の血圧が約2mmHg低下するという報告があります。
特に高齢の方や高血圧の方では、塩分を減らす効果がより大きく現れる傾向があります。
塩分の多い食品の例
| 食品 | 1回分の塩分量 |
|---|---|
| ラーメン1杯 | 約6〜7グラム(汁まで飲んだ場合) |
| カップ麺1個 | 約5グラム(汁まで飲んだ場合) |
| 梅干し1個 | 約2グラム |
| 漬物1皿 | 約2〜3グラム |
| 味噌汁1杯 | 約1.5グラム |
※塩分量は商品により異なります。目安としてご活用ください。
塩分を減らすための具体的な方法をご紹介します。
まず大切なのは、加工食品や調味料に注意することです。
日本人が摂る塩分の多くは、食卓の塩ではありません。
加工食品、外食、調味料から来ています。
例えば、ラーメン1杯には約6〜7グラム、カップ麺には約5グラムの塩分が含まれています(汁まで含んだ目安)。
食品を買う時は、栄養成分表示を確認して、食塩相当量の少ないものを選びましょう。
料理をする時は、レモンや酢などの酸味、だしのうま味、香辛料やハーブの香りを使うと良いです。
塩分が少なくても、満足できる味付けができます。
漬物や梅干しなど、塩分の多い食品は控えめにしましょう。
代わりに、新鮮な野菜や果物を積極的に食べることをお勧めします。
ウォーキングなど軽い運動を週5日続ける
定期的な運動は、血圧を下げる効果的な方法です。
研究によると、有酸素運動を続けることで、高血圧の方は平均して上の血圧が約8mmHg、下の血圧が約3〜5mmHg程度低下することが分かっています。
推奨される運動の目安
| 運動の種類 | 頻度・時間の目安 |
|---|---|
| ウォーキング | 1日30分、週5日 |
| ジョギング | 週3〜4回 |
| サイクリング | 週3〜4回 |
| 水泳 | 週2〜3回 |
お勧めの運動は、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などです。
アメリカ心臓協会のガイドラインでは、週に150分以上の中程度の強さの運動、または週に75分以上の強めの運動を勧めています。
これを日常生活に置き換えると、1日30分程度の早歩きを週5日行うのが理想的です。
運動が血圧を下げる仕組みはいくつかあります。
運動によって血管が柔らかくなります。
また、過剰に働いていた神経の活動が抑えられて、心拍数や心臓から送り出される血液の量が適正になります。
さらに、運動はインスリン(血糖を下げるホルモン)の働きを良くして、体重管理にも役立ちます。
50代から運動を始める場合は、無理のない範囲で少しずつ増やしていくことが大切です。
まずは1日10分のウォーキングから始めて、慣れてきたら徐々に時間を延ばしていきましょう。
運動中に息切れや胸の痛みを感じたら、すぐに中止して医師に相談してください。
体重を3〜5kg減らすだけで血圧は下がる
肥満は高血圧の大きな原因です。
減量は、血圧を下げる最も効果的な方法の一つです。
研究によると、体重を5〜10%減らすだけで血圧が明らかに下がり、血圧の薬の量を減らせる可能性があることが示されています。
具体的には、別の研究において体重1キログラムの減量につき、上下の血圧がおおよそ1mmHg程度低下すると報告されています。
つまり、体重70キログラムの方が5キログラム減量すれば、約5mmHgの血圧低下が期待できるということです。
体重減少1kgあたりで血圧低下は、収縮期血圧で-1.05 mmHg(95% CI、-1.43~-0.66)、拡張期血圧で-0.92 mmHg(95% CI、-1.28~-0.55)でした。
引用:PubMed Influence of weight reduction on blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials
この効果は塩分を減らすこととは別に現れます。
減量と塩分制限を組み合わせると、さらに大きな効果が得られます。
減量のためには、健康的な食事と運動を組み合わせることが最も効果的です。
DASH食(ダッシュ食)という食事法があります。
これは野菜、果物、全粒穀物(玄米など)、低脂肪の乳製品を中心にして、脂っこいものや甘いものを控える食事法です。
血圧を下げる効果が科学的に証明されています。
急激なダイエットではなく、無理のない範囲で、例えば1ヶ月に1〜2キログラム程度のゆっくりとした減量を目指しましょう。
これが、リバウンドを防ぎ、長く体重を維持するために大切です。
また、ウエスト周りを男性85センチメートル未満、女性90センチメートル未満に保つことも、お腹の脂肪を減らして血圧を管理する上で良い目標となります。
お酒は日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本まで
適度な飲酒は心臓や血管の病気のリスクを下げる可能性があるという報告もあります。
しかし、飲み過ぎは確実に血圧を上げます。
習慣的にたくさんお酒を飲む方ほど、血圧が高く、高血圧になる割合も高いことが多くの研究で示されています。
お酒の適量(1日あたり)
| 性別・体格 | アルコール量 | お酒の種類と量の目安 |
|---|---|---|
| 男性 | エタノール20〜30ml | 日本酒1合、ビール中瓶1本、ウイスキーダブル1杯のいずれか |
| 女性・小柄な男性 | エタノール10〜20ml | 上記の半分〜3分の2程度 |
飲酒量と血圧の関係を調べた研究では、飲酒量を約80%減らすと、1〜2週間で血圧が下がることが確認されています。
また、軽い高血圧の方が飲酒量を1日約56ミリリットルから約26ミリリットルに減らしたところ、上の血圧が明らかに低下したという日本の研究もあります。
高血圧治療ガイドラインでは、男性は1日にエタノール換算で20〜30ミリリットル以下を上限としています。
これは日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ウイスキーならダブル1杯程度です。
女性や体格の小さい男性は、エタノール10〜20ml程度(男性の半分〜3分の2程度)が目安です。
これ以上の飲酒は血圧を上げるだけでなく、心臓や血管の病気のリスクも高めます。
お酒を飲む時は、週に2日程度はお酒を飲まない日(休肝日)を作ることも勧められています。
また、お酒を飲む時には塩分の多いおつまみを避けて、野菜や魚などヘルシーな食品を選びましょう。
塩分の取り過ぎを防げます。
夜はしっかり眠りストレスをためない工夫をする
十分な睡眠は、血圧管理にとってとても大切です。
睡眠不足や睡眠の質が悪いと、神経が過剰に働いて血圧が上がることが分かっています。
また、睡眠時無呼吸症候群(寝ている間に呼吸が止まる病気)は、薬が効きにくい高血圧と関連があり、適切な治療が必要です。
- 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
- 寝る前のコーヒーやお酒は避ける
- 寝室は涼しく、暗く、静かな環境にする
- 寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控える
良い睡眠を取るためには、規則正しい生活リズムを保つことが大切です。
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるようにしましょう。
寝る前のコーヒーやお酒は避けましょう。
寝室は涼しく、暗く、静かな環境を整えます。
寝る前にスマートフォンやパソコンを使うのを控えると、睡眠の質が良くなります。
ストレスを上手に管理することも、血圧コントロールには欠かせません。
慢性的なストレスは神経を刺激し続けて、血圧を上げます。
ストレスへの対処法は人それぞれです。
深呼吸、瞑想、ヨガなどのリラックス法が効果的であることが研究で示されています。
また、趣味、運動、友人との交流など、自分なりのストレス解消法を見つけることも大切です。
仕事や家庭での役割が多い50代だからこそ、意識的に自分のための時間を作りましょう。
心と体をリフレッシュすることが、長く健康でいるために大切です。
50代の高血圧、いつ病院に行くべきか
高血圧は自覚症状がほとんどありません。
そのため、いつ病院に行くべきか迷う方も多いでしょう。
しかし、適切なタイミングで医療機関を受診して、専門家のアドバイスを受けることは、将来の重大な病気を予防する上でとても大切です。
実際、研究によれば、早い時期に高血圧の治療を始めることで、脳卒中のリスクを約40%、心筋梗塞のリスクを約20%減らせるとされています。
特に50代は、高血圧の治療を始める最適なタイミングです。
この時期にしっかりと血圧を管理すれば、60代、70代以降も健康的に生活できます。
また、高血圧の裏には、腎臓の病気やホルモンの異常など、特定の病気が隠れている場合もあります。
これらの原因を早く見つけて治療すれば、高血圧が改善する可能性もあります。
- 血圧が140/90mmHg以上を繰り返し超える
- 頭痛、めまい、動悸などの症状がある
- 健康診断で高血圧を指摘された
ここでは、病院を受診すべき具体的なタイミングについて説明します。
上の血圧が140、下の血圧が90を超えたら受診する
日本高血圧学会の基準では、病院での測定で上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上の場合を高血圧としています。
何回か測って繰り返しこの値を超える場合は、医療機関を受診することをお勧めします。
血圧の基準値
| 測定場所 | 正常血圧 | 高血圧の基準 |
|---|---|---|
| 病院・診察室 | 120/80mmHg未満 | 140/90mmHg以上 |
| 家庭 | 115/75mmHg未満 | 135/85mmHg以上 |
※治療の基準や目標値は、ガイドラインの改訂により変更される可能性がありますので、最新版の情報をご確認ください。
ただし、1回の測定だけで判断するのは避けましょう。
血圧は時間帯、測る場所の環境、体調によって変わります。
家で血圧を測る場合は、朝起きてトイレを済ませた後、朝食や薬を飲む前に測ります。
そして、寝る前にも測ります。
1日2回測定して、5〜7日間の平均値で判断することが勧められています。
家で測る場合は、135/85mmHg以上が高血圧の目安です。
血圧が140〜159/90〜99mmHgの軽い高血圧でも、他の危険な要因(糖尿病、喫煙、コレステロールが高い、肥満など)がある場合や、臓器に障害がある場合は、より積極的な治療が必要になります。
健康診断で高血圧を指摘された場合は、自分で判断せず、必ず医療機関で詳しい検査を受けることが大切です。
頭が痛い、めまいがする、胸がドキドキするなら早めに相談
通常、高血圧に自覚症状はありません。
しかし、血圧がとても高い場合や、急に血圧が上がった場合には、様々な症状が現れることがあります。
特に以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
- 激しい頭痛
- めまい、ふらつき、耳鳴り
- 視界がぼやける
- 動悸(心臓がドキドキする)、息切れ
- 胸の圧迫感
- 突然の激しい頭痛
- 吐き気や嘔吐
- 意識がもうろうとする
- 手足のしびれや麻痺
- ろれつが回らない
重度の高血圧では頭痛が起こることもありますが、必ずしも高血圧特有の症状とは限りません。
めまいやふらつき、耳鳴り、視界がぼやけるなども、血圧の急な上昇によって起こることがあります。
また、動悸(心臓がドキドキする)、息切れ、胸の圧迫感などは、高血圧によって心臓に負担がかかっている可能性があります。
さらに重大な症状もあります。
突然の激しい頭痛、吐き気や嘔吐、意識がもうろうとする、手足のしびれや麻痺、ろれつが回らないなどの症状が現れた場合です。
これらは、高血圧性脳症(脳に異常が起こる)や脳卒中の可能性があります。
すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
尿に血が混じる、むくみが強いなどの症状は腎臓などの病気のサインかもしれません。
高血圧が背景にある場合もあるため、早めに医師に相談することが大切です。
健康診断で血圧が高いと言われたら放置しない
職場の健康診断や人間ドックで「血圧が高め」「要注意」「要精密検査」などと言われた場合は、必ず医療機関で詳しい検査を受けましょう。
「少し高いだけだから大丈夫」と軽く考えて放っておくことは、将来の重大な病気につながる可能性があります。
健康診断での血圧測定は、1回だけのことが多いです。
緊張などで一時的に血圧が上がっている「白衣高血圧」の可能性もあります。
これは、医療機関で測ると血圧が高く出るが、普段は正常という状態です。
逆に、健康診断では正常でも、日常生活では血圧が高い「仮面高血圧」という状態もあります。
医療機関では、何回か測定したり、家での血圧の記録を見たりして、正確な診断を行います。
必要に応じて、24時間血圧を測る検査も行います。
また、高血圧の裏には、腎臓の病気やホルモンの異常など、特定の病気が隠れている場合があります。
これを二次性高血圧と言います。
これらの病気は、原因を治療することで高血圧が良くなる可能性があります。
特に若い方、急に血圧が上がった方、普通の血圧の薬が効きにくい方では、詳しい検査が必要です。
50代は、高血圧の治療を始める最適なタイミングです。
この時期にしっかりと血圧を管理すれば、60代、70代以降も健康的に生活できます。
よくある質問(FAQ)
- 50代で血圧が正常でも、将来高血圧になる可能性はありますか
-
はい、可能性はあります。
今は血圧が正常でも、年齢とともに血圧は上がる傾向にあります。
特に塩分の多い食事、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣が続くと、将来高血圧になるリスクが高まります。
今から生活習慣を整えることで、将来の高血圧を予防できます。
- 降圧薬を飲み始めたら一生やめられないのですか
-
必ずしもそうとは限りません。
生活習慣を改善して血圧が十分に下がり、安定した状態が続けば、医師の判断で薬を減らしたり中止したりできる場合があります。
ただし、自分の判断で薬をやめることは危険です。
必ず医師に相談してください。
- 家庭用血圧計は正確ですか
-
正しく使えば、家庭用血圧計(上腕式が推奨されます)は十分正確です。
ただし、測り方が大切です。
座って1〜2分静かにしてから、腕に巻く部分(カフ)を心臓の高さに合わせて測りましょう。
また、定期的に病院の血圧計と比べて、ずれがないか確認することをお勧めします。
- 血圧は1日のうちでどのくらい変わりますか
-
血圧は1日の中で大きく変わります。
通常、朝起きて活動を始めると上がり、夜になると下がります。
また、食事、運動、ストレス、気温などによっても変わります。
そのため、同じ時間帯に測って、何日間かの平均値で判断することが大切です。
- カフェインやコーヒーは血圧に影響しますか
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カフェインは一時的に血圧を上げることがあります。
コーヒーを飲んだ直後は、血圧が数mmHg上がることがあります。
しかし、この効果は一時的です。
ただし、カフェインに敏感な方や、1日に何杯もコーヒーを飲む習慣がある方は、飲む量を控えめにすることをお勧めします。
まとめ
50代は、体の様々な変化によって血圧が上がりやすい年代です。
女性では更年期のホルモン変化、男女ともに血管が硬くなること、お腹の脂肪が増えること、長年のストレスの積み重ねが、血圧を上げる主な原因となります。
高血圧を放っておくと、脳梗塞や心筋梗塞といった命に関わる病気、腎臓が悪くなって透析が必要になること、さらには将来の認知症のリスクが大きく高まります。
しかし、適切な対策を取ることで、これらのリスクを大きく減らすことができます。
今日から実践できる対策として、塩分を1日6グラム未満に減らすこと、できれば毎日の運動、3〜5キログラムの減量、お酒を適度にすること、十分な睡眠とストレス管理が効果的です。
これらの生活習慣の改善は、血圧の薬と同じくらいの効果があることが研究で示されています。
血圧が140/90mmHg以上になったら、頭痛やめまいなどの症状があったら、あるいは健康診断で血圧が高いと言われたら、必ず医療機関を受診してください。
50代から適切な血圧管理を始めることで、60代、70代以降も健康で活動的な生活を送ることができます。
あなたの健康な未来のために、今日から一歩を踏み出しましょう。
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