「マンジャロとゼップバウンドという薬の名前を耳にしたことはあるけれど、何が違うのかよくわからない」という方は多いのではないでしょうか。
肥満に悩む方の間で、近年の承認・発売を背景にこの2つの薬が注目されており、どちらを選べばいいのか、そもそも別の薬なのかと疑問に思う方も増えています。
どちらも体重を大きく減らす可能性がある薬として話題になっていますが、名前も発売のタイミングも異なるため、まったく別の薬のように感じるかもしれません。
実は、2つの薬は有効成分は同じですが、承認された使い方は異なります。
なぜ名前が違うのかというと、それぞれが「異なる病気の治療薬」として国に別々に認められているからです。
マンジャロは2型糖尿病(血糖値のコントロールが難しくなる病気)の治療薬として2022年9月に日本で認められ、ゼップバウンドは肥満症の治療薬として2024年12月に認められ、2025年3月に保険が適用(薬価収載)されるようになり、同年4月に発売されました。
この違いが、保険を使えるかどうかや、使う量の目安にも直接つながってきます。
- 治療対象:マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは肥満症と中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群
- 日本承認:マンジャロ2022年9月、ゼップバウンド2024年12月
- 標準維持量:マンジャロ週1回5mg、ゼップバウンド週1回10mg
- 保険適用:マンジャロは糖尿病診断、ゼップバウンドはBMI基準等を満たす肥満症(いずれも条件あり)
- 有効成分(チルゼパチド)は同一で、2剤の併用は不可
2つの薬の主な違いをあらかじめ整理しておきます。
まず、治療の対象となる病気が違います。
マンジャロは2型糖尿病の方に健康保険が適用されますが、ゼップバウンドの保険適用にはBMI(体格指数)や持病の種類に関する細かい条件があります。
使う量の目安も異なり、マンジャロ(糖尿病向け)は週1回5mgが標準ですが、ゼップバウンド(肥満症向け)は週1回10mgとより多い量が基本となっています。
さらに、ゼップバウンドは肥満症だけでなく、肥満に伴うBMI27以上の中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(眠っている間に呼吸が繰り返し止まる病気)の治療にも使えることが認められています。
この記事では、医師の立場から、2つの薬の成分・体への働き・承認の経緯から、保険が使える条件、どちらが合うかの考え方、知っておくべき副作用まで、順を追ってわかりやすくお伝えします。
- マンジャロとゼップバウンドの有効成分と体への働きが同じである理由
- それぞれが承認されている治療目的と承認の経緯
- 健康保険が使えるかどうかの条件と自費診療との違い
- 糖尿病の有無や治療目的に応じた薬の選び方
- 共通する副作用と使用前に知っておくべき注意点
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はじめに(免責・注意事項)
本記事は、あくまでも一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医療上の助言や診断、治療を推奨するものではありません。
GLP-1受容体作動薬をはじめとする医薬品や施術は、個人の健康状態や体質によって効果・副作用が異なる可能性があります。投薬や治療を希望される方は、必ず医師をはじめとする医療従事者と相談のうえ、十分な説明を受けてから自己責任においてご判断ください。
また、本記事で紹介する治療法の一部には日本国内で未承認の用途や自由診療に該当するものがあります。その点を十分にご理解いただき、ご自身で最新の情報を確認しながら、適切な医療機関で受診されることをおすすめいたします。
本記事の内容は公開時点の情報に基づいていますが、法改正やガイドラインの変更、医学的知見の進歩等により情報が変わる可能性があります。最新情報につきましては、必ず公的機関や各医療機関の公式情報をご確認ください。
マンジャロとゼップバウンドは同じ成分の薬だが、治療する病気が違う
マンジャロとゼップバウンドは、どちらも製造販売元が日本イーライリリー株式会社である週1回の皮下注射薬で、同じ有効成分を含んでいます。
見た目も使い方も基本的に同じですが、それぞれが認められた治療の目的が異なります。
今回の成分(チルゼパチド)では、2型糖尿病薬として「マンジャロ」、肥満症・睡眠時無呼吸症候群の薬として「ゼップバウンド」という別々のブランド名で承認されています。
これが「名前は違うけれど中身は同じ」という状況が生まれる理由です。
2つの薬が別の名称で販売されているのは、開発の経緯と関係があります。
もともとこの成分は、糖尿病の治療薬として開発が進んでいました。
その後、肥満症に対しても大きな体重減少効果があることがわかり、治療薬のニーズを背景に、別途肥満症の治療薬としての開発や申請・認可が進められました。
その結果、同じ成分が2つの異なる病気の治療薬として、それぞれ別の名前で販売されることになりました。
なお、2つは同じ成分のため、同時に使うことはできません。
マンジャロとゼップバウンドの比較表
| 比較項目 | マンジャロ | ゼップバウンド |
|---|---|---|
| 有効成分 | チルゼパチド | チルゼパチド(同じ) |
| 日本での承認 | 2022年9月 | 2024年12月 |
| 治療の対象 | 2型糖尿病 | 肥満症・睡眠時無呼吸症候群 |
| 保険が使える対象 | 2型糖尿病の方 | 肥満症:最適使用推進ガイドラインに基づく条件あり 睡眠時無呼吸症候群:BMI 27以上、AHI 15/h以上など適正使用条件あり |
| 標準的な維持量 | 週1回5mg | 週1回10mg(肥満症) |
| 最大量 | 週1回15mg | 週1回15mg |
| 同時使用 | 不可 | 不可 |
2つの薬に含まれる有効成分と体への働き方はまったく同じ
マンジャロとゼップバウンドの有効成分は、どちらも「チルゼパチド」という物質です。
チルゼパチドは、食事をとったときに消化管から出てくる2種類のホルモン「GIP(ジーアイピー)」と「GLP-1(ジーエルピーワン)」に同時に働きかけるよう設計された薬です。
こうした2種類のホルモンに同時に作用できる薬はそれまでになく、チルゼパチドは世界初の「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬」として位置づけられています。
少し詳しく説明します。
GIPとGLP-1はどちらも、食後に体の中で出てくる消化管ホルモンです。
チルゼパチド全体の作用として、膵臓から血糖値に合わせたインスリンが出やすくなり、食後の血糖値が急に上がるのを抑えられます。
また、胃の動きがゆっくりになるため食後の満腹感が長続きします。
さらに、脳の食欲をコントロールする部分にも作用して「もっと食べたい」という感覚そのものを和らげる効果があると考えられています。
これらの働きはマンジャロとゼップバウンドで共通しており、どちらを使っても体の中での基本的な作用は変わりません。
マンジャロは糖尿病の治療薬、ゼップバウンドは肥満症の治療薬として国に認められている
チルゼパチドはまず、2型糖尿病の治療薬として開発が進みました。
アメリカでは2022年5月に当局が「マンジャロ」として糖尿病治療薬の認可を下し、日本でも同年9月26日に国の審査機関(PMDA)が審査し、厚生労働省が承認しています。
一方、糖尿病の臨床試験が進む中で、チルゼパチドが体重を大きく減らす効果も持つことが明らかになりました。
この結果をもとに、肥満症の治療薬としての開発が並行して進められ、アメリカでは2023年11月に「ゼップバウンド」として肥満症治療薬の認可を取得しました。
日本では2024年12月27日に肥満症治療薬として承認され、2025年3月19日に保険での使用が可能(薬価収載)となり、2025年4月11日に発売されています。
まとめると、マンジャロとゼップバウンドは「同じ成分が、異なる病気を対象として別々に認められた薬」です。
どちらが処方されるかは、患者さんがどの病気と診断されているかによって決まります。
ゼップバウンドは肥満症のほかに睡眠時無呼吸症候群の治療にも使用が認められている
日本でゼップバウンドが使えるのは、肥満症だけではありません。
2026年5月の薬の公式説明書(添付文書)の改訂により、肥満を伴う「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の治療にも使えることが新たに認められました。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に気道がふさがって呼吸が繰り返し止まる病気です。
肥満との関係が深く、のどや首まわりに脂肪がつくことで気道が狭くなりやすいと考えられています。
体重が減ると気道が広がり、肥満に伴う睡眠時無呼吸症候群では症状の改善が期待されるため、この薬が有効とされています。
マンジャロにはこの使い方が認められておらず、あくまで2型糖尿病の治療薬として承認されています。
また、使う量の目安も異なります。
マンジャロ(糖尿病向け)の基本の維持量は週1回5mgですが、ゼップバウンド(肥満症向け)では週1回10mgが基本とされており、睡眠時無呼吸症候群に使う場合はさらに高い週1回15mgが目標となっています。
いずれも2.5mgから始めて4週間ごとに少しずつ増やしていく方法は共通ですが、最終的に目指す量が病気の種類によって違います。
マンジャロ・ゼップバウンドの用量比較表
| 薬・治療対象 | 標準的な維持量 | 最大量 |
|---|---|---|
| マンジャロ(2型糖尿病) | 週1回5mg | 週1回15mg |
| ゼップバウンド(肥満症) | 週1回10mg | 週1回15mg |
| ゼップバウンド(睡眠時無呼吸症候群) | 週1回15mg | 週1回15mg |
※いずれも週1回2.5mgから開始し、4週間ごとに2.5mgずつ増量
保険が適用されるかどうかは、どんな病気と診断されているかで決まる
マンジャロとゼップバウンドを保険診療として受けられるかどうかは、患者さんの診断名と、それぞれの薬に定められた条件を満たすかどうかによって決まります。
同じ成分の薬であっても、保険が適用されるのは「認められた目的に使う場合」に限られます。
「体重を減らしたい」という理由だけでは、どちらの薬も保険の対象にはなりません。
保険の条件はマンジャロとゼップバウンドで大きく異なります。
マンジャロは2型糖尿病の診断がある方に保険が使えますが、ゼップバウンドは厚生労働省が定めた「この薬を使える患者さんの基準」を複数すべて満たす必要があります。
さらに、ゼップバウンドを保険で処方できる医療機関は、専門医の配置など国の定める施設要件を満たす専門施設に限られており、どのクリニックでも受けられるわけではありません。
保険が使えるかどうかで費用の負担が大きく変わるため、受診前に条件を確認しておくことをお勧めします。
マンジャロに保険が使えるのは2型糖尿病と診断されている人
マンジャロは2型糖尿病の治療薬として承認されているため、健康保険が使えるのは2型糖尿病と診断されている方です。
基本的には、食事療法や運動療法を十分に行っても効果が不十分な場合に、医師が処方を検討する薬として位置づけられています。
保険適用のための特別な手続きは必要なく、通常の保険診療の流れで進みます。
多くの方の窓口負担は3割ですが、年齢や所得によって負担割合は異なります。
糖尿病の診断がない方や、ダイエット目的でマンジャロを希望する場合は保険の対象外となり、全額自己負担になります。
チルゼパチドの糖尿病治療における効果は、複数の大規模な臨床試験(SURPASSシリーズ)で確かめられています。
血糖値のコントロールの目安となる指標(HbA1c)が1.9〜2.6ポイント改善し、体重も6.6〜13.9%減ったことが報告されています。
SURPASS-1~-5臨床試験において、チルゼパチド5mg、10mg、15mgは、試験治療終了時に糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)(-1.9~-2.6%)、体重(-6.6~-13.9%)、収縮期血圧(SBP)(-2.8~-12.6mmHg)の有意な改善を示しました。
引用:Springer Nature Link Systolic blood pressure reduction with tirzepatide in patients with type 2 diabetes: insights from SURPASS clinical program
体重80kgの方であれば、5〜11kg程度の減少に相当する計算です。
血糖値の改善を目的とした治療をしながら、体重の面でもよい効果が期待できる点がこの薬の特徴の一つです。
ゼップバウンドに保険が使えるのはBMIなどの基準を満たした肥満症の人
ゼップバウンドの保険適用(薬価収載)は2025年3月19日から始まり、同年4月11日に発売されましたが、条件は厳しく定められています。
厚生労働省が発表した基準(最適使用推進ガイドライン)に基づいており、複数の条件をすべて満たさなければなりません。
まず前提として、「肥満症」と診断されていることが必要です。
ゼップバウンドの効能としては、肥満症に加えて「高血圧・脂質異常症・耐糖能障害」のいずれかを持つことが条件となります。
しかし保険を適用して治療を受けるには、その中でも「高血圧・脂質異常症・2型糖尿病」のいずれかを持ち、食事や運動を続けても十分な改善が見られない状態である必要があります。
体重が多いだけでは「肥満症」にはあたりません。
なお、BMIとは体重と身長から求める体格の指数で、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算します。
たとえば身長160cmで体重70kgの方のBMIは約27.3です。
保険の対象となるのは、以下のどちらかに当てはまる方です。
- BMIが35以上の方(身長160cmの場合、体重約90kg以上が目安)
- BMIが27以上で、肥満に関連する病気(高血圧・脂質異常症・2型糖尿病・睡眠時無呼吸症候群など)を2つ以上持っている方
さらに、薬を始める前に6か月以上の食事・運動療法を継続していることも条件です。
治療中は2か月に1回以上、管理栄養士などとの面談も義務づけられています。
保険での治療期間は最長72週間(約1年4か月)と上限が設けられています。
また、保険でゼップバウンドを処方できるのは、国の最適使用推進ガイドラインが定める施設要件を満たす医療機関のみです。
一般的なクリニックでは対応できない場合が多く、受診前に確認が必要です。
ゼップバウンドの保険適用条件まとめ
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 対象疾患 | 肥満症(高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを持ち、食事・運動療法が不十分な方) |
| BMI基準 | BMI35以上、またはBMI27以上+肥満関連疾患2つ以上 |
| 前治療 | 6か月以上の食事・運動療法の継続 |
| 治療中の管理 | 2か月に1回以上、管理栄養士等との面談 |
| 治療期間の上限 | 最長72週間(約1年4か月) |
| 処方できる医療機関 | 最適使用推進ガイドラインの施設要件を満たす医療機関のみ |
保険が使えない場合は全額自己負担の自費診療となる
上の条件に当てはまらない場合は「自費診療」となり、費用はすべて自分で負担することになります。
たとえば、糖尿病の診断がない方がマンジャロの処方を希望する場合や、ゼップバウンドの保険基準を満たさない方が使用する場合などがこれにあたります。
ただし、国のガイドラインでは美容・ダイエット目的での投与は控えるべきとされており、自費なら誰でも自由に使えるわけではありません。
自費診療の費用は、使う量・受診するクリニック・治療の期間によって異なります。
保険診療と比べて負担が大きくなるため、受診前に医療機関へ費用の目安を確認しておくことをお勧めします。
まずは医師に自分の状態が保険の条件を満たしているかどうかを確認するところから始めるとよいでしょう。
どちらの薬が合うかは糖尿病の有無と何を目指すかで変わる
マンジャロとゼップバウンドのどちらが処方されるかは、「2型糖尿病の診断があるかどうか」と「治療の主な目的」によって大まかに分かれます。
ただし、2型糖尿病がある方でも、肥満症の条件を満たせばゼップバウンドの適応になる場合があり、一概に「糖尿病の有無」だけで決まるわけではありません。
マンジャロにも体重を減らす効果はみられますが、マンジャロは血糖管理、ゼップバウンドは肥満症と、承認された治療目的がそれぞれ異なるため、患者さんの状態によって選べる薬が変わります。
医師はBMI・診断名・合併症の有無・現在の治療内容などを総合的に判断して、どちらが適切かを決めます。
「どちらを使いたいか」という希望を伝えることはできますが、最終的な判断は医師が医学的な根拠に基づいて行うものです。
まずはかかりつけ医や専門医に診てもらい、自分の状態がどちらの薬に当てはまるかを確認することが、安全で適切な治療への第一歩となります。
糖尿病があって体重も減らしたい場合はマンジャロが選ばれやすい
2型糖尿病の診断があり、血糖値の改善と体重を減らすことの両方を目指している方には、マンジャロが選択肢になりやすい状況です。
食事療法や運動療法を十分に行っても効果が不十分な2型糖尿病の方であれば、通常の保険診療の範囲内で処方を受けることができます。
ただし、肥満症の治療が主目的で一定の基準を満たす場合は、ゼップバウンドが検討されることもあります。
複数の臨床試験(SURPASSシリーズ)では、チルゼパチドを使った2型糖尿病の患者さんで、血糖値の改善に加えて体重が6.6〜13.9%減少したことが報告されています。
体重80kgの方であれば、5〜11kg程度の減少に相当します。
糖尿病の治療を続けながら体重の改善も期待できる点が、この薬の特徴の一つです。
糖尿病向けの標準的な量は週1回5mgで、効果が十分でない場合は医師の判断で最大15mgまで増やすことができます。
体重を減らすことを主な目的にしている場合はゼップバウンドが選ばれやすい
2型糖尿病の診断がない方では、ゼップバウンドが主な選択肢になりやすいです。
また、2型糖尿病がある方でも、肥満症の条件を満たし、肥満症治療を主目的とする場合は、医師が目的に応じて判断しゼップバウンドの対象となることがあります。
保険適用の基準を満たす方であれば、保険診療として使用できます。
チルゼパチドを週1回使用した結果は、同じ試験でも解析方法によって異なる数値が報告されています。
「有効性推定」と呼ばれる解析では、5mgで平均16.0%、10mgで平均21.4%、15mgで平均22.5%の体重減少がみられました。
ティルゼパチドを服用した参加者は、プラセボ群(2.4%、5ポンドまたは2kg)と比較して、平均体重減少率が16.0%(5mgで35ポンドまたは16kg)、21.4%(10mgで49ポンドまたは22kg)、22.5%(15mgで52ポンドまたは24kg)でした。
引用:Eli Lilly and Company Lilly’s SURMOUNT-1 results published in The New England Journal of Medicine show tirzepatide achieved between 16.0% and 22.5% weight loss in adults with obesity or overweight
一方、医学誌(NEJM)に掲載された別の主要な解析では、5mgで平均15.0%、10mgで平均19.5%、15mgで平均20.9%減少したと報告されています。
体重80kgの方を例にとると、5mgで約13kg、15mgで約18kgの減少に相当します。
肥満症の治療に使う標準的な量は週1回10mgで、糖尿病治療時の標準量(週1回5mg)よりも高めです。
このように、肥満症の承認用量や試験の条件においては、より大きな体重減少が示されています。
ただし、効果には個人差があり、食事療法や運動療法との組み合わせが前提となります。
チルゼパチド投与量による体重減少率
| 用量 | 平均体重減少率 | 体重80kgの場合の目安 |
|---|---|---|
| 5mg | 約16% | 約13kg |
| 10mg | 約21% | 約17kg |
| 15mg | 約22.5% | 約18kg |
※SURMOUNT-1試験(72週間)の結果より。解析方法によって数値は異なります。効果には個人差があります。
2つの薬に共通する主な副作用は吐き気・下痢など消化器系の症状
マンジャロとゼップバウンドは有効成分が同じであるため、副作用の傾向も大きく重なります。
ただし、対象となる患者さんや使う量が異なるため、実際の頻度は変わることがあります。
多く報告されているのは、吐き気・下痢・便秘・嘔吐・食欲の低下・腹痛・胃のむかつきといったお腹まわりの症状です。
これらは、チルゼパチドが胃の動きを遅らせたり消化管に作用したりすることと関係していると考えられており、薬の効き目と表裏一体の面があります。
多くの場合、こうした症状は治療を始めた直後や量を増やしたタイミングで出やすく、時間が経つにつれておさまっていくことが一般的です。
ただし、症状の出やすさや強さは人によって大きく異なります。
また、持病や服用中の薬によっては使えないケースもあります。
副作用への対処法と事前に知っておくべき注意点を確認してから治療を始めることが、安心して続けるうえで大切です。
気になる症状が出たときは自己判断せず、処方医に相談してください。
- 吐き気・嘔吐:特に吐き気が多く、開始直後や増量時に起きやすい
- 下痢:水分不足につながりやすいため、こまめな水分補給が大切
- 便秘:下痢とは逆の症状として出ることもある
- 食欲の低下:体重減少を助ける一因にもなる
- 腹痛・胃のむかつき:多くは軽度〜中程度で、時間とともに改善することが多い
治療開始直後に吐き気や下痢が出やすいが、時間が経つと落ち着くことが多い
吐き気・嘔吐・下痢・便秘・お腹の張りや痛み・食欲の低下などが、特に治療開始後や量を増やした直後に起きやすいとされています。
アメリカの審査機関(FDA)の資料によると、これらはチルゼパチドの臨床試験に参加した患者さんの5%以上に報告された代表的な副作用です。
多くは軽い〜中程度のもので、時間とともに落ち着いていくことが多いとされています。
副作用を少しでも和らげるためには、一度の食事を少量にする・脂肪分の多い食事を控える・食後すぐに横にならないといった工夫が助けになる場合があります。
また、チルゼパチドは4週間ごとに少しずつ量を増やしていく決まったスケジュールがあり、体が薬に慣れる時間をつくることで副作用を出にくくする工夫がされています。
症状が強いと感じたときは、医師の判断で増量を一時的に止めたり量を下げることもできます。
下痢や嘔吐が続く場合は体から水分が失われやすくなり、腎臓に負担がかかることがあるため、こまめに水分を補うようにしてください。
持病や服用中の薬によっては使えない場合があるため、必ず事前に医師へ相談する
チルゼパチドを含む薬を使ってはいけない方が定められています。
動物実験で甲状腺の一部の細胞に腫瘍が生じることが確認されており、甲状腺の特定のがん(甲状腺髄様がん)を過去に患ったことがある方またはそのご家族にいる方、あるいは複数の内分泌腺(ホルモンを分泌する器官)に腫瘍ができやすい遺伝的な病気(MEN2)の方は、米国では使用できない(禁忌)とされています。
日本の基準でも安全性は確立しておらず、慎重な判断が必要です。
また、この薬の成分に対してアレルギー反応を起こしたことがある方も使用できません。
そのほかにも注意が必要な場合があります。
膵臓の炎症(膵炎)を過去に起こしたことがある方への使用は、安全性の確認が十分でないため慎重な対応が求められます。
インスリン製剤や、血糖を強く下げるタイプの糖尿病薬と一緒に使うと、血糖が下がりすぎる(低血糖)リスクが高まる可能性があります。
また、下痢や嘔吐で体から水分が不足すると、腎臓の機能が低下している方では腎臓への影響が大きくなるおそれがあります。
受診の際は、今使っているすべての薬(市販薬やサプリメントを含む)と持病を必ず医師に伝えてください。
マンジャロとゼップバウンドは同じ成分のため、同時に使うことはできません。
- 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性の昏睡や前昏睡のある方
- 1型糖尿病の方
- 重い感染症にかかっている方や、手術の前後、大きなケガをしている方
- 甲状腺の特定のがん(甲状腺髄様がん)を過去に患ったことがある方、またはそのご家族にいる方※
- 複数の内分泌腺に腫瘍ができやすい遺伝的な病気(MEN2)の方※
- この薬の成分に対してアレルギー反応を起こしたことがある方
※米国では禁忌。日本では安全性未確立で慎重な判断が必要。
- 腎臓の機能が低下している方(脱水による影響に注意)
- 膵臓の炎症(膵炎)を過去に起こしたことがある方
- インスリン製剤や血糖を強く下げる糖尿病薬を使っている方(低血糖のリスク)
マンジャロとゼップバウンドに関するよくある質問
- マンジャロとゼップバウンドはまったく同じ薬ですか?
-
成分は同じですが、それぞれ異なる病気の治療薬として別々に国に認められた薬です。
マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは肥満症を対象としており、保険が使える条件もそれぞれの治療目的に基づいて定められています。
2つを同時に使うことはできません。
- 体重を減らしたい場合、どちらの薬を選べばよいですか?
-
2型糖尿病の診断があり血糖管理を目的とする場合はマンジャロ、肥満症の治療目的で基準を満たせばゼップバウンドが検討されます。
どちらが自分に合うかは診断名やBMI・合併症の有無によって医師が判断します。
体重が気になる方はまずかかりつけ医や専門医に相談し、自分の状態がどちらの条件に当てはまるか確認することをお勧めします。
- 保険が使えないケースでは費用はどのくらいかかりますか?
-
費用は、使う量・受診するクリニック・治療の期間によって異なります。
保険適用外となるため全額自己負担ですが、処方には医師による適応や安全性の判断が必要です。
なお、美容やダイエット目的での使用は国の基準で推奨されていません。
保険が使えるかどうかも含め、医師と十分に相談してから治療方針を決めてください。
- 副作用が出た場合はどうすればよいですか?
-
吐き気や下痢などは治療開始直後に多く見られますが、一般には時間が経つと落ち着いてくることが多いです。
症状が強い場合や嘔吐・腹痛が続く場合は、自己判断で使用を止めたり量を変えたりせず、処方医に早めに連絡してください。
症状の程度に応じて量の調整などで対応できることがあります。
まとめ
マンジャロとゼップバウンドは、同じ成分「チルゼパチド」を含む注射薬ですが、それぞれ異なる病気の治療薬として国に認められています。
マンジャロは2型糖尿病、ゼップバウンドは肥満症およびBMI27以上の中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群を対象とした薬で、保険が使える条件もそれぞれの治療目的に基づいて定められています。
どちらの薬を使えるかは診断名や体の状態によって変わります。
費用の面でも保険が使えるかどうかで大きな差が出るため、受診前に条件を把握しておくことが大切です。
副作用はお腹まわりの症状が多く、少しずつ量を増やす仕組みや食事の工夫で和らぐことが一般的です。
ただし、まれに膵臓の炎症や脱水による腎臓の機能低下などの重大な副作用が起こることもあるため、異常を感じたらすぐに医師に相談することが重要です。
体重や肥満についてお悩みの方は、自己判断せずまず専門医にご相談ください。
自分の状態に合った治療方針を一緒に考えることが、安全で効果的な治療への第一歩です。
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PMDA(医薬品医療機器総合機構) マンジャロ皮下注アテオス(チルゼパチド)医療用医薬品情報(医療関係者向け)
日本イーライリリー株式会社 製品一覧
田辺ファーマ株式会社 世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ」2型糖尿病に対する国内製造販売承認を取得
日本イーライリリー株式会社/田辺三菱製薬株式会社 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」薬価基準収載ならびに発売日のお知らせ
田辺ファーマ株式会社 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の適応追加承認を取得 さらに肥満症の適応症に「耐糖能異常等」の追加承認を取得
PMDA(医薬品医療機器総合機構) ゼップバウンド皮下注アテオス(チルゼパチド)添付文書
U.S. Food and Drug Administration Drug Trials Snapshots: MOUNJARO
PMDA(医薬品医療機器総合機構) マンジャロ皮下注アテオス 審査結果報告書
U.S. Food and Drug Administration FDA Approves New Medication for Chronic Weight Management
PubMed Central The effect of surgical weight loss on upper airway fat in obstructive sleep apnoea
厚生労働省 医療費の一部負担(自己負担)割合について
厚生労働省 GLP-1受容体作動薬及びGIP/GLP-1受容体作動薬の適正使用について
Springer Nature Link Systolic blood pressure reduction with tirzepatide in patients with type 2 diabetes: insights from SURPASS clinical program
厚生労働省 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(販売名:ゼップバウンド皮下注)~肥満症~
厚生労働省 医薬品医療機器等法上の効能・効果等の変更に伴う留意事項の一部改正等について(保医発0518第2号)
日本イーライリリー株式会社 ゼップバウンド(チルゼパチド)について投与対象となる患者に条件等はあるか?(最適使用推進ガイドライン、留意事項通知について)
Eli Lilly and Company Lilly’s SURMOUNT-1 results published in The New England Journal of Medicine show tirzepatide achieved between 16.0% and 22.5% weight loss in adults with obesity or overweight
The New England Journal of Medicine Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity
U.S. Food and Drug Administration MOUNJARO (tirzepatide) Prescribing Information
National Institute for Health and Care Excellence Tirzepatide: local formulary information
日本イーライリリー株式会社 糖尿病治療薬マンジャロⓇの使い方
U.S. Food and Drug Administration ZEPBOUND (tirzepatide) Prescribing Information
PMDA(医薬品医療機器総合機構) マンジャロ皮下注アテオス(チルゼパチド)添付文書
本記事で説明した治療・薬剤の情報は、あくまで一般的な理解の一助とするものであり、個人の症状や体質、既往症によって適切さが異なる場合があります。
自由診療や未承認の医薬品・適応外使用に関する治療は、国の承認を得た医療行為ではなく、自己責任のもとで行われるものです。必ず担当の医師と十分に相談のうえ、リスクや費用を含め総合的に判断してください。
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