「ウゴービとゼップバウンド、いったい何が違うのだろう?どちらを選べばいいのだろう?」肥満に悩む方からこうしたご相談をいただく機会が急速に増えています。
2024年から2025年にかけて日本に相次いで登場したこれらの肥満症治療薬は、週に1回の注射によって食欲を抑え、体重を減らすことが期待できる薬として、医療現場でも大きな注目を集めています。
これまでの肥満治療薬と比べて体重が減る効果が格段に高く、「食事制限や運動では体重が思うように落とせなかった」という方にとっても、有力な治療の選択肢として位置づけられています。
しかし、2つの薬は名前が違うだけでなく、含まれる成分も、体への働きかけ方も、根本的に異なります。
ウゴービ(成分名:セマグルチド)は食欲を調節するホルモン「GLP-1」に働きかける薬で、2024年2月から日本で保険診療として使えるようになっています。
一方、ゼップバウンド(成分名:チルゼパチド)はGLP-1に加え、脂肪の代謝にも関わるホルモン「GIP」にも同時に働きかける、肥満症治療薬として世界初のタイプの薬で、日本では2025年4月に発売が始まりました。
- ウゴービはGLP-1の1種類、ゼップバウンドはGLP-1+GIPの2種類のホルモンに働きかける
- 国内発売はウゴービ(2024年2月)がゼップバウンド(2025年4月)より約1年3か月早い
- 直接比較試験(SURMOUNT-5)でゼップバウンドの体重減少率が約6.5ポイント上回る
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群への保険適応はゼップバウンドのみ(2026年5月〜)
- 糖尿病治療薬としての実績も含めるとウゴービは世界的な使用経験と安全性データが豊富
どちらのホルモンに、いくつ働きかけるかという違いは、体重が減るルートの数に直結しており、効果の大きさや副作用のパターンにも影響しています。
2025年に医学専門誌「The New England Journal of Medicine」に掲載された初の直接比較研究(SURMOUNT-5試験)では、ゼップバウンドはウゴービよりも平均体重減少率で約6.5ポイント大きく体重を減らせることが報告されています。
日本での保険適用の条件はどちらも似ていますが、ゼップバウンドは2026年5月に中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群などにも適応が広がるなどの違いがあります。
基本的には肥満症の診断が必要なこと、半年以上の食事・運動療法で効果が不十分であることなど、厳格な基準が定められています。
副作用の傾向や費用の目安、そして「自分にはどちらが向いているか」という点については、まだよくわからないとおっしゃる方も多くいます。
この記事では、2つの薬の成分と仕組みの違いから体重減少効果の比較、副作用の特徴、日本での保険適用の条件と費用の目安、どちらを選ぶかの判断ポイントまでを、医師の立場からわかりやすく解説します。
- ウゴービとゼップバウンドの成分と仕組みの違い
- 体重減少効果の比較(大規模研究のデータ)
- 副作用の種類と、特に注意が必要な人の特徴
- 日本での保険適用条件と費用の目安
- どちらの薬が自分に向いているかを判断するポイント
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、あくまでも一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医療上の助言や診断、治療を推奨するものではありません。
GLP-1受容体作動薬をはじめとする医薬品や施術は、個人の健康状態や体質によって効果・副作用が異なる可能性があります。投薬や治療を希望される方は、必ず医師をはじめとする医療従事者と相談のうえ、十分な説明を受けてから自己責任においてご判断ください。
また、本記事で紹介する治療法の一部には日本国内で未承認の用途や自由診療に該当するものがあります。その点を十分にご理解いただき、ご自身で最新の情報を確認しながら、適切な医療機関で受診されることをおすすめいたします。
本記事の内容は公開時点の情報に基づいていますが、法改正やガイドラインの変更、医学的知見の進歩等により情報が変わる可能性があります。最新情報につきましては、必ず公的機関や各医療機関の公式情報をご確認ください。
ウゴービとゼップバウンドの根本的な違いは食欲や脂肪に働くホルモンの種類と数にある
まず、2つの薬の基本情報を表で確認しておきましょう。
ウゴービとゼップバウンドの比較表
| 項目 | ウゴービ | ゼップバウンド |
|---|---|---|
| 成分名 | セマグルチド | チルゼパチド |
| 働きかけるホルモン | GLP-1(1種類) | GLP-1+GIP(2種類) |
| 投与方法 | 週1回 皮下注射 | 週1回 皮下注射 |
| 国内発売 | 2024年2月 | 2025年4月 |
| SURMOUNT-5での平均体重減少 | 約13.7% | 約20.2% |
| 保険適用 | あり(条件あり) | あり(条件あり) |
食事をした後、私たちの腸からは食欲や血糖値の調節に関わるホルモンが分泌されます。
なかでも「GLP-1」と「GIP」はその代表格で、食後に腸の細胞から出て、食欲を抑えたり、血糖値の急上昇を和らげたりする働きをしています。
ウゴービとゼップバウンドはどちらも、こうしたホルモンの働きを薬として再現したものですが、「どのホルモンに働きかけるか」という設計の違いが、2つの薬を根本的に異なるものにしています。
ウゴービ(成分名:セマグルチド)はGLP-1という1種類のホルモンへの働きかけに特化した薬で、食欲を抑えて食後の満腹感を長続きさせる効果が期待できます。
一方、ゼップバウンド(成分名:チルゼパチド)はGLP-1に加え、エネルギー代謝や食欲の調節にも関わるGIPという2つ目のホルモンにも同時に働きかけることができる、肥満症治療薬として世界で初めて承認されたタイプの薬です。
いわば、ウゴービが「1種類のホルモンに届く鍵」を持つ薬だとすれば、ゼップバウンドは「2種類のホルモンに届く鍵」を同時に使える薬といえます。
この働きかけるホルモンの数の違いが、効果の大きさや副作用のパターンにも深く影響しています。
ウゴービ(セマグルチド)が働きかけるのは食欲を抑えるGLP-1ホルモンの1種類だけ
GLP-1とは、食事をとった後に主に腸の壁の細胞(L細胞など)から分泌されるホルモンです。
このホルモンが出ると、すい臓がインスリンをより多く分泌して血糖値の上昇を抑え、同時に血糖値を上げる方向に働く別のホルモン(グルカゴン)の出方を控えさせます。
また、食べ物が胃から腸へ移動するスピードをゆっくりにするため、食後の満腹感が長続きします。
脳の食欲を調節する部分にも直接信号を届けて「もうお腹がいっぱい」という感覚をつくり出すことが、複数の研究で確認されています。
私たちの体内で自然につくられるGLP-1は、分泌されてから数分のうちに分解されてしまいます。
ウゴービに含まれるセマグルチドはこのGLP-1をもとに設計された成分ですが、体内で分解されにくいよう分子の構造に工夫がされており、週1回の注射でも継続的に食欲を抑える効果を発揮します。
GLP-1に働きかける薬のグループの中でも、セマグルチドは体内に長くとどまりやすい設計になっており、週に1回という少ない頻度で高い効果を保てるよう開発されています。
ゼップバウンド(チルゼパチド)は食欲ホルモン(GLP-1)に加えて脂肪を調節するGIPにも同時に働きかける
ゼップバウンドに含まれるチルゼパチドは、GLP-1とGIPという2種類のホルモンに同時に働きかける肥満症治療薬として開発されました。
GIPとは、食事の後に主に十二指腸と小腸の上部の細胞から分泌されるホルモンです。
GIPにはインスリンの分泌を促す作用があるほか、脂肪組織やエネルギー代謝に関与する可能性があるとされています。
研究によれば、GIPとGLP-1はそれぞれ脳の中でも食欲を調節する異なる部位に働きかけており、2つを同時に活性化させることで、どちらか一方だけの場合よりも食欲を抑える効果が強まると考えられています。
共作動薬であるチルゼパチドは、選択的GLP-1受容体作動薬と比較して優れた有効性で2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善するが、これらの効果を媒介するGIP受容体の役割はこれまで不明であった。
引用:Helmholtz Munich Unraveling the Mode of Action of Tirzepatide
チルゼパチドはこうした2つのルートを同時に使える点で、GLP-1だけに作用するセマグルチドとは異なります。
この2種類のホルモンへの同時作用による、食欲抑制や代謝への複合的な働きが、後で詳しく説明する体重減少効果の差につながっていると考えられています。
体重が減る効果はゼップバウンドのほうが高く、複数の大規模研究でも差が確認されている
ウゴービとゼップバウンドはどちらも、食事療法・運動療法だけでは十分な効果が得られなかった肥満症の方を対象に、数千人規模の参加者を集めた大規模な研究によって効果が慎重に確かめられています。
こうした研究は医師や専門家による厳しい審査を経た国際的な学術誌に掲載されており、薬の効果や安全性を判断するための信頼できる根拠として医療の現場でも使われています。
一般に、体重の5%以上の減少は血圧や血糖値などの健康数値の改善につながる意味のある変化とされており、10〜15%以上の減少はそれまでの肥満治療薬ではなかなか到達できなかった高い水準でした。
ウゴービとゼップバウンドはどちらもこの水準を大きく上回る体重減少を多くの参加者にもたらしており、肥満治療の選択肢として注目されている理由のひとつになっています。
ただし、どちらも食事療法・運動療法との組み合わせが前提であり、研究の結果は参加者全体の平均の傾向です。
2つの薬を直接比較した研究(SURMOUNT-5試験)では、ゼップバウンドがウゴービよりもはっきりと高い体重減少を示しました。
研究の数字はあくまでも集団全体の平均であり、実際の効果には個人差があります。
体重の変化だけでなく副作用や体への影響を医師と確認しながら判断することが大切です。
複数の研究でゼップバウンドはウゴービより体重が大きく減ることが報告されている
ウゴービの効果は「STEPプログラム」と呼ばれる一連の大規模研究によって確かめられています。
その中心となるSTEP 1試験(糖尿病のない肥満または体重が多めの成人約1,961人を対象)では、ウゴービ2.4mgを週1回使ったグループで、68週間後に平均約14.9%の体重減少が確認されました。
偽薬(見た目は同じで薬の成分が入っていないもの)を使ったグループの体重減少が平均約2.4%だったことと比べると、その差は明らかです。
体重100kgの方であれば約15kg減った計算になります。
また参加者の86%以上が5%以上の体重減少を達成しており、多くの方に実感できる効果が得られることが示されています。
セマグルチド群では、ベースラインから68週目までの平均体重変化が-14.9%であったのに対し、プラセボ群では-2.4%でした。また、セマグルチド群では、プラセボ群と比較して、5%以上の体重減少を達成した参加者の割合が有意に高くなりました。
引用:American College of Cardiology Semaglutide Treatment Effect in People With Obesity
ゼップバウンドの効果は「SURMOUNTプログラム」の研究で確かめられています。
SURMOUNT-1試験(2,539人対象)では、72週間の使用後に、用量ごとに5mgで平均約16.0%、10mgで約21.4%、最高用量の15mgで約22.5%という体重の減少が報告されています。
体重100kgの方が最高用量を使った場合、約22kgの減量に相当する数字です。
さらに2025年に医学誌「The New England Journal of Medicine」に掲載されたSURMOUNT-5試験は、2つの薬を初めて直接比べた研究として注目されています。
糖尿病のない肥満症の成人751人を対象に、ゼップバウンドとウゴービをそれぞれ最大耐用量まで段階的に増やしながら72週間使ったところ、ゼップバウンドを使ったグループの平均体重減少は約20.2%、ウゴービのグループは約13.7%でした。
72週目の体重の最小二乗平均変化率は、チルゼパチド群で-20.2%(95%信頼区間[CI]、-21.4~-19.1)、セマグルチド群で-13.7%(95% CI、-14.9~-12.6)でした(P<0.001)。
引用:The New England Journal of Medicine Tirzepatide as Compared with Semaglutide for the Treatment of Obesity
この差は偶然ではなく、はっきりとした差として統計的にも確認されています。
お腹周りのサイズの変化もゼップバウンドで平均約18.4cm、ウゴービで約13.0cmの減少と、ゼップバウンドのほうが大きな改善を示しています。
各試験の体重減少率をまとめると以下のとおりです。
ウゴービとゼップバウンドの体重減少効果を比較した主な臨床試験結果
| 試験名 | 薬・用量 | 期間 | 平均体重減少 |
|---|---|---|---|
| STEP 1 | ウゴービ(セマグルチド 2.4mg) | 68週間 | 約14.9%(偽薬:約2.4%) |
| SURMOUNT-1 | ゼップバウンド(チルゼパチド 5mg) | 72週間 | 約16.0%(偽薬:約2.4%) |
| SURMOUNT-1 | ゼップバウンド(チルゼパチド 10mg) | 72週間 | 約21.4% |
| SURMOUNT-1 | ゼップバウンド(チルゼパチド 15mg) | 72週間 | 約22.5% |
| SURMOUNT-5(直接比較) | ウゴービ(最大耐用量) | 72週間 | 約13.7% |
| SURMOUNT-5(直接比較) | ゼップバウンド(最大耐用量) | 72週間 | 約20.2% |
2種類のホルモンに同時に働きかけることでより大きな効果が期待できる理由
ゼップバウンドがウゴービよりも高い体重減少効果を示す理由については、SURMOUNT-5の研究者も詳しく分析しています。
GLP-1とGIPはそれぞれ脳の中で食欲を調節している場所が少しずつ異なり、2種類を同時に刺激することで、どちらか1種類だけでは届かない食欲を抑える経路にも作用できると考えられています。
また、GIPが脂肪組織やエネルギー代謝に関与する可能性があることも、より大きな体重減少に貢献していると考えられています。
ただし、このしくみの詳細はまだ研究が続いており、すべてが解明されているわけではありません。
また、ゼップバウンドで高い効果が出やすい傾向があるとはいえ、ウゴービで十分な体重減少を得られている方も多くいます。
どちらが自分に合っているかは、効果の大きさだけでなく副作用・使いやすさ・費用なども含めて医師と一緒に考えることが大切です。
吐き気などの副作用は2つの薬でよく似ているが、注意が必要な人には違いもある
ウゴービとゼップバウンドはどちらも、食欲を調節するGLP-1ホルモンへの働きかけによって、食べ物が胃から腸へ移動するスピードを遅くする作用を持っています。
この作用が食べる量を自然と減らす効果につながる一方で、吐き気やお腹の不快感といった不調が起きやすくなる原因でもあります。
こうしたお腹に関する不調は、研究でも多くの参加者に何らかの形で報告されており、これらの薬に共通して見られる特徴です。
症状が出やすいのは主に、使い始めから数週間から数か月の間、用量を少しずつ増やしていく時期です。
体が薬に慣れてくるにつれて症状が軽くなる方が多いことがわかっていますが、個人差もあります。
副作用の出やすさの傾向は2つの薬でやや異なる部分もあり、また持病や特定の状態にある方は薬を始める前に担当医に確認することが欠かせません。
最初は少ない用量から始め、医師の指示のとおりに少しずつ増やしていくことが、体への負担を最小限にとどめながら治療を続けるうえで非常に大切です。
お腹の不調(吐き気・下痢・便秘)は両薬に共通して起こりやすい代表的な副作用
研究のデータによれば、吐き気・下痢・便秘・お腹の張りや不快感といったお腹に関する症状が、ウゴービとゼップバウンドの両方で最も多く報告される副作用です。
用量を増やしていく時期に特に出やすく、症状の強さは軽いものから中程度のものがほとんどで、多くの方は時間が経つにつれて慣れていきます。
2型糖尿病の患者さんを対象にウゴービとゼップバウンドを直接比べた大規模研究(SURPASS-2試験、NEJM 2021年掲載)では、吐き気が出た割合はゼップバウンド(5mg〜15mg)で17〜22%、ウゴービ(1mg)で18%、下痢はゼップバウンドで13〜16%、ウゴービで12%と報告されており、お腹に関する副作用の発生率は両薬でほぼ同じくらいでした。
肥満症の患者さんを対象にした直接比較研究(SURMOUNT-5試験)では、胃腸関連の副作用を理由に治療を途中でやめた割合がゼップバウンドで2.7%、ウゴービで5.6%と、ゼップバウンドのほうが少ない傾向が見られました。
複数の研究や臨床の経験から、ウゴービでは吐き気や便秘が出やすい傾向がある一方、ゼップバウンドでは下痢の報告がやや多いという指摘もあります。
ただし副作用の出方は個人差が非常に大きく、「こちらのほうが体に合う」は人によって異なります。
- 吐き気
- 下痢
- 便秘
- お腹の張り・不快感
- 食欲の低下
すい臓の持病、重い胃腸疾患がある方や妊娠中の方は使用前に必ず医師への確認が必要
ウゴービとゼップバウンドはどちらも、すべての方が使える薬ではありません。
次のような状態や病歴がある方は、薬を始める前に必ず担当医に相談してください。
- のどの付け根にある甲状腺という器官にできる特定の種類のがん(甲状腺髄様がん)にかかったことがある方、またはご家族にその方がいる場合※
- ホルモンをつくる複数の器官に腫瘍ができる遺伝性の病気(多発性内分泌腫瘍2型)がある方※
- 過去にすい臓に炎症(膵炎)が起きたことがある方・すい臓の病気を持つ方
- 妊娠中・妊娠を計画している方(ウゴービの場合は妊娠予定の2か月前には使用を中止する必要があります)・授乳中の方
- 胃や腸に重い病気がある方
※米国では使用禁忌とされていますが、日本の添付文書では扱いが異なるため医師への確認が必要です。
使い始めた後に激しいお腹の痛みや嘔吐、急な視力の変化、皮膚のかゆみや発疹などが現れた場合は、すぐに医療機関に連絡してください。
少量から始めて徐々に増やすスケジュールを医師の指示どおりに守ることが、副作用を抑えながら治療を続けるうえで非常に重要です。
費用・保険が使える条件・日本での入手しやすさにも2つの薬で見逃せない違いがある
ウゴービとゼップバウンドは日本に登場した時期が異なります。
ウゴービは2023年3月に国(厚生労働省)から安全性と効果が認められて販売許可を取得し、同年11月に保険が使えるための薬の価格(薬価)が定まり、2024年2月22日から正式に使えるようになりました。
アジアで初めての販売で、世界では6か国目の認可でした。
一方、ゼップバウンドは2024年12月27日に販売許可を取得し、2025年3月19日に薬価が決まり、2025年4月11日から販売が始まっています。
ウゴービに比べると約1年3か月ほど後に国内で使えるようになった薬で、現時点ではウゴービのほうが国内での使用実績が長く、海外での使用経験や糖尿病治療薬としてのデータを含めると、積み上がっているデータも多い状況です。
どちらの薬も高い効果が期待できる一方、誰でも気軽に使えるわけではなく、保険で使うための厳格な条件が国によって定められています。
条件を満たしていても処方できる医療機関が限られているため、治療を希望する場合にはまず専門の医療機関を受診することが必要になります。
保険が使えるかどうかで費用の負担は大きく変わるため、自分の状態が条件に当てはまるかを事前に確認しておくことが大切です。
肥満症と診断されれば健康保険が使える可能性があるが、適用条件の確認が必要
ウゴービとゼップバウンドはどちらも、厚生労働省が定めた「最適使用推進ガイドライン」に従って処方される薬です。
保険が使えるかどうかは、まず「肥満症」という医学的な病名がつくかどうかにかかっています。
体重が多いだけでは病名はつかず、肥満が原因で健康上の問題が起きている状態が「肥満症」です。
この診断がつくことが保険適用の前提条件となります。
薬の安全性を審査する国の機関(PMDA)が公開しているガイドラインによれば、保険が適用されるのは次のいずれかに当てはまる方です。
- パターンA:BMI(体重÷身長²で計算する肥満の度合いを示す指標。例えば身長170cmで体重78kgの方はBMI約27)が35以上の高度肥満で、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病※のいずれかがある方
- パターンB:BMIが27以上で、高血圧・コレステロールや中性脂肪の異常・2型糖尿病※のいずれかがあり、かつ以下のような肥満に関連する健康上の問題を2つ以上持っている方
※ゼップバウンドの場合は耐糖能障害を含みます。
- 食後に血糖値が正常に戻りにくい状態(耐糖能障害・2型糖尿病)
- コレステロールや中性脂肪の異常(脂質異常症)
- 高血圧
- 痛風・高尿酸血症
- 心臓の血管の病気(狭心症・心筋梗塞など)
- 脳梗塞
- お酒を飲まないのに肝臓に脂肪がたまる病気(非アルコール性脂肪肝疾患)
- 睡眠中に呼吸が止まる病気(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)
- 骨や関節の病気(運動器疾患)
- 肥満に関連する腎臓の病気(肥満関連腎臓病)
- 月経の異常・不妊 など
さらに、薬を始める前に少なくとも6か月以上の食事療法・運動療法を続けてきた経緯があり、その間に2か月に1回以上は管理栄養士から栄養指導を受けて記録しているにもかかわらず、十分な効果が得られなかったことが必要です。
加えて、ウゴービとゼップバウンドを保険適用で処方できる医療機関は、日本糖尿病学会・日本内分泌学会・日本循環器学会のいずれかの専門医が常勤している施設に限られます。
さらに、内科・循環器内科・内分泌内科・代謝内科・糖尿病内科などを標榜する教育研修施設であることや、常勤管理栄養士による指導体制、副作用への対応体制が整っていることも求められます。
一般的なクリニックでは保険での処方ができない場合があるため、かかりつけ医に紹介先を相談されることをおすすめします。
保険が適用されない場合の費用の目安と、長く使い続けるために知っておくべきポイント
保険が適用された場合、患者さんの自己負担は1〜3割となり、所得や年齢によって異なりますが、通常の医療費と同じ仕組みが使われます。
保険が使えない場合(費用を全額自分で払う自由診療)は医療機関ごとに料金が設定されるため、診察料や検査料なども含めると月あたり数万円から、場合によってはさらに高額になることもあります。
具体的な金額は受診する医療機関に直接ご確認ください。
ウゴービとゼップバウンドはどちらも、薬をやめると体重が元に戻りやすいことが研究で示されています。
医学的には長期管理が重要とされていますが、日本の保険診療では処方できる期間に上限(ウゴービは最大68週間、ゼップバウンドは最大72週間)が定められており、使い始めから終了を見据えた計画を立てることが重要です。
食事療法・運動療法を並行して続けることは、薬の効果を最大限に引き出すだけでなく、将来的に薬を使うのをやめた場合にも体重をできるだけ維持するうえで役立ちます。
どちらの薬が合うかは体の状態・効果の目標・費用のバランスで人それぞれ異なる
「どちらの薬が自分に合っているか」という問いに、一概に「こちらが正解」とは言えません。
ウゴービとゼップバウンドはそれぞれ異なる特徴を持っており、体重が減る効果の大きさだけで選ぶべきものではないからです。
最も大切なのは、現在の健康状態・これまでの病歴・ふだん飲んでいる薬との飲み合わせ・副作用への体の反応しやすさ・長く続けられる費用かどうか、といった複数の点を担当医と一緒に確認したうえで総合的に判断することです。
研究データはあくまでも多くの方を対象にした平均の結果であり、「ある薬が平均的に高い効果を示した」ことは、その効果がすべての方に同じように現れることを意味するわけではありません。
効果の大きさだけでなく、長期間にわたって安全に使い続けられるかどうか・費用面で無理なく続けられるかどうかも、同じくらい大切な判断材料です。
以下では現時点の医学的な知見をもとに、どちらの薬がどのような状況の方に選ばれやすいかの傾向をご説明します。
あくまでも目安として参考にしていただき、最終的な判断は必ず専門医との相談のもとで行ってください。
ウゴービが選択肢になりやすいのは使用実績の長さや安全性データの豊富さを重視する人
ウゴービはゼップバウンドよりも日本での使用実績が長く、糖尿病治療薬としての実績も含めると、世界的にも多くの患者さんに使われてきたことで、安全性に関するデータが豊富に蓄積されています。
また、海外の大規模な研究では心臓病や脳卒中などの心臓・血管の病気のリスクを下げる可能性も確認されており、そうしたリスクが高い方への使用において一定の科学的な根拠が整っている薬といえます。
ただし、日本では心血管リスク低下の目的での保険適用は認められていません。
週1回のセマグルチド皮下投与は、プラセボと比較して、心血管死、非致死性心筋梗塞、および脳卒中からなる主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連していることが示された。
引用:American College of Cardiology Semaglutide Effects on Cardiovascular Outcomes in People With Overweight or Obesity – SELECT
体重が減る平均的な大きさはゼップバウンドよりも控えめですが、それでも従来の肥満治療薬と比べてはるかに高い効果が期待できます。
新しい薬よりも使用実績が長い薬を選びたい方や、国内外の安全性データが多い薬を希望する方には、ウゴービが選択肢になりやすいです。
- 国内外での使用実績が長い薬を希望している
- 心臓・血管の病気のリスクが高い
- まず実績のある薬を選択肢として考えたい
ゼップバウンドが選ばれやすいのはより高い体重減少効果を優先したい人
ゼップバウンドは、直接比較した研究(SURMOUNT-5試験)で平均体重減少率がウゴービよりも約6.5ポイント大きいことが示されており、より高い体重減少効果を目指している方に向いている可能性があります。
これまでの食事療法・運動療法だけで体重管理が難しかった方にとっては、次の選択肢として考慮されやすい薬です。
また、ウゴービで十分な効果が得られなかった場合の切り替えについても、明確なデータは限られますが、医師の判断で検討されることがあります。
ウゴービとゼップバウンドでは副作用の出方が異なる場合があり、薬の切り替えで症状が変わる可能性もあります。
ただし、どちらが体に合うかは個人差が非常に大きいため、医師と慎重に相談する必要があります。
さらに、ゼップバウンドは2025年4月に日本で販売が始まり、2026年5月には中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群などにも適応が広がるなど情報が更新されていますが、国内での長期的な使用に関するデータはウゴービと比べてまだ少ない段階にあります。
これらのことを踏まえたうえで、担当医から最新の情報を十分に確認しながら、ご自身に合った治療を選んでいただくことをおすすめします。
- より高い体重減少効果を優先したい
- ウゴービで十分な効果が得られなかった経緯がある
- ウゴービが体に合わず、別の薬を検討したい
よくある質問(FAQ)
- ウゴービとゼップバウンドを同時に使うことはできますか?
-
2つの薬を同時に使うことは現在認められておらず、安全性を確かめた研究もありません。
どちらか一方を選んで使う形での治療が原則です。
薬を変更したい場合は、自己判断で行わず必ず担当医に相談してください。
- 保険適用の対象でなくてもこれらの薬を使えますか?
-
保険の条件を満たさない場合でも、費用を全額自分で払う自由診療であれば処方できる医療機関があります。
ただし費用が大きく異なるため、事前に医療機関へ確認が必要です。
保険の適用基準は医学的に治療が必要な肥満症の方を対象としたものであり、単純なダイエット目的での使用はガイドラインの趣旨に合いません。
- これらの薬は一生使い続ける必要がありますか?
-
日本の保険診療では、ウゴービは最長68週間、ゼップバウンドは最長72週間という投与期間の制限が設けられています。
薬をやめると体重が元に戻りやすいことが研究で示されているため、使用を中断した後も食事・運動療法を続けることが体重を保つうえで重要です。
どのくらいの期間使うかについては、担当医と相談しながら決めていくことをおすすめします。
まとめ
ウゴービ(セマグルチド)とゼップバウンド(チルゼパチド)は、どちらも肥満症治療のために開発された週1回注射の薬ですが、成分・仕組み・効果・副作用・日本での使用状況にいくつかの重要な違いがあります。
ウゴービはGLP-1という1種類のホルモンに働きかける薬で、2024年2月から日本で使えるようになっています。
ゼップバウンドはGLP-1とGIPの2種類のホルモンに同時に働きかける世界初のタイプの肥満症治療薬で、2025年4月に日本での販売が始まりました。
2025年に発表されたSURMOUNT-5試験という直接比較の研究では、ゼップバウンドはウゴービよりも平均体重減少率で約6.5ポイント大きく体重を減らせることが示されており、効果の大きさではゼップバウンドが優れている傾向があります。
副作用は両薬とも吐き気・下痢・便秘などのお腹の不調が中心で、用量を増やす時期に出やすい傾向があります。
保険適用の条件は両薬で似ていますが、ウゴービは高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあることが前提です。
ゼップバウンドは2026年5月から、肥満症では高血圧・脂質異常症・耐糖能障害のいずれかがあること、さらに中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群にも適応が追加されています。
そのうえで、BMIの基準(27以上で健康問題2つ以上、または35以上で健康問題1つ以上)を満たし、食事・運動療法で効果不十分であることが求められます。
どちらが自分に合うかは、体重減少の目標・健康状態・副作用の出やすさ・費用面のバランスを踏まえて専門医と相談しながら判断することが最も重要です。この記事が、治療の選択を考える際の参考のひとつになれば幸いです。
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 週1回皮下投与のGLP-1受容体作動薬「ウゴービ® 皮下注」〔一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)〕、発売のお知らせ
日本イーライリリー株式会社 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」 薬価基準収載ならびに発売日のお知らせ
KEGG MEDICUS(日本医薬情報センター) 医療用医薬品 : ウゴービ
KEGG MEDICUS(日本医薬情報センター) 医療用医薬品 : ゼップバウンド
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PubMed Central The Discovery and Development of Liraglutide and Semaglutide
Frontiers in Endocrinology Mechanisms of action and therapeutic applications of GLP-1 and dual GIP/GLP-1 receptor agonists
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Helmholtz Munich Unraveling the Mode of Action of Tirzepatide
American College of Cardiology Semaglutide Treatment Effect in People With Obesity
Eli Lilly and Company Lilly’s tirzepatide delivered up to 22.5% weight loss in adults with obesity or overweight in SURMOUNT-1
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Oxford Academic Pharmacological Management of Obesity: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline
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American College of Cardiology SURMOUNT-5: Greater Loss of Weight, Waist Circumference With Tirzepatide Than Semaglutide
Wegovy® (Novo Nordisk) Prescribing Information
ロイター(Reuters Japan) ノボノルディスク、肥満症薬「ウゴービ」を日本発売 来年2月
田辺三菱製薬株式会社 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の適応追加承認を取得 さらに肥満症の適応症に「耐糖能異常等」の追加承認を取得
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) ゼップバウンド皮下注2.5mgアテオス/5mgアテオス/7.5mgアテオス/10mgアテオス/12.5mgアテオス/15mgアテオス 添付文書
厚生労働省 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド皮下注アテオス)
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 別添 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)
University of Glasgow Enlighten (Research Repository) Continued treatment with Tirzepatide for maintenance of weight reduction in adults with obesity: The SURMOUNT-4 randomized clinical trial
American College of Cardiology Semaglutide Effects on Cardiovascular Outcomes in People With Overweight or Obesity – SELECT

