「最近体重が増えてきた」「ダイエットしてもなかなかやせられない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
体重が気になり始めると、食事を極端に減らしたり、SNSや口コミで見かけた薬を試してみたりと、自己流で何とかしようとするのは自然なことです。
しかし、そうした取り組みが思わぬ健康上のリスクを招いてしまうことがあるのも事実です。
そもそも「肥満」と「肥満症」は、医学的にはまったく別のものとして扱われます。
肥満症は単に体重が多いというだけでなく、糖尿病・高血圧・睡眠中に呼吸が止まる病気(睡眠時無呼吸症候群)といった深刻な病気と深く関係する「疾患」です。
自己流でいくら頑張っても体重が減らない場合、その背景にホルモンの異常など、別の病気が隠れていることも少なくありません。
- 「肥満」と「肥満症」は医学的に別物で、診断には医師の評価が必要
- BMIだけでは内臓脂肪の蓄積量・ホルモン異常・合併症の有無を判断できない
- 体重増加の背景に別の病気が隠れているケースがある
- 自己流ダイエットは筋肉・代謝を低下させ、太りやすい体になるリスクがある
- 肥満治療薬の自己使用は副作用や飲み合わせの対処ができず危険
さらに、インターネットやSNSには体重管理に関する情報があふれていますが、その中には医学的な根拠が乏しいものも多く混じっています。
「これで10kgやせた」という体験談や、手軽に買えるサプリや薬の広告を見て自己判断で試してしまう方も増えています。
しかし、医師の管理なしに行う極端な食事制限や市販の薬の使用は、体重が一時的に減ったとしても、筋肉の減少や代謝の低下、重い副作用を引き起こす可能性があることが、さまざまな研究で示されています。
この記事では、肥満と肥満症の違いから、自己流ダイエットや、市販のサプリ・一般用医薬品、個人輸入薬、処方薬の不適切使用によるリスク、安全に体重を減らすための考え方まで、医師の立場からできるだけわかりやすくお伝えします。
体重管理に取り組んでいる方、これから始めようとしている方が、正しい知識をもって行動するための参考になれば幸いです。
- 肥満と肥満症の違いと、自己判断が難しい理由
- 自己流ダイエットや薬の不適切使用が体に与えるリスク
- 安全に体重を落とすための基本的な方法
- 医療機関に相談すべきタイミング
はじめに(免責・注意事項)
本記事は、あくまでも一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医療上の助言や診断、治療を推奨するものではありません。
GLP-1受容体作動薬をはじめとする医薬品や施術は、個人の健康状態や体質によって効果・副作用が異なる可能性があります。投薬や治療を希望される方は、必ず医師をはじめとする医療従事者と相談のうえ、十分な説明を受けてから自己責任においてご判断ください。
また、本記事で紹介する治療法の一部には日本国内で未承認の用途や自由診療に該当するものがあります。その点を十分にご理解いただき、ご自身で最新の情報を確認しながら、適切な医療機関で受診されることをおすすめいたします。
本記事の内容は公開時点の情報に基づいていますが、法改正やガイドラインの変更、医学的知見の進歩等により情報が変わる可能性があります。最新情報につきましては、必ず公的機関や各医療機関の公式情報をご確認ください。
肥満症は「ただ太っている」とは違う、医師の診断が必要な病気
「太っている」と「肥満症」は日常的には同じような意味で使われることがありますが、医学的にはまったく異なるものです。
肥満症は単に体重が多い状態ではなく、放置すると命にかかわる病気へとつながりかねない状態であり、医師による診断と治療が必要です。
「体重が増えてきたから自分でどうにかしよう」と考える前に、まず「自分の体が今どういう状態にあるのか」を正しく把握することが、すべての出発点になります。
体重を測るときに多くの方が参考にするBMI(身長と体重から計算する体格の指標)は、ひとつの目安にはなりますが、それだけでは見えてこないリスクも多くあります。
たとえばお腹の中の内臓のまわりに脂肪がどれだけ溜まっているか、血液の状態はどうか、ホルモンのバランスに異常はないか、といったことは、数値を見ただけではわかりません。
また、見た目には普通の肥満に見えても、実はホルモン分泌の異常など別の病気が体重増加の原因になっているケースもあります。
「食べすぎが原因」と決めつけてしまうと、本来発見すべき病気を見逃してしまう危険性があります。
このパートでは、肥満と肥満症の違い、そして自己判断が難しい理由についてくわしく説明します。
肥満と肥満症は別物で、自分での判断はむずかしい
日本では、BMIが25以上の場合を「肥満」と定めています。
BMIとは、体重(kg)を身長(m)で2回割って出す数値で、日本肥満学会が設けた基準です。
なぜ日本独自の基準があるかというと、日本人はBMIが25を超えたあたりから血糖値の異常・高血圧・コレステロール異常といった病気のリスクが高くなりやすいことが、研究によって明らかになっているためです。
ちなみに世界保健機関(WHO)の国際基準ではBMI30以上が肥満とされていますが、日本人はそれより低い数値でも病気のリスクが高まりやすいため、日本人の健康リスクに合わせて低めの基準が設定されています。
日本肥満学会によるBMIの分類
| BMI | 分類 |
|---|---|
| 18.5未満 | 低体重(やせ) |
| 18.5以上25未満 | 普通体重 |
| 25以上30未満 | 肥満(1度) |
| 30以上35未満 | 肥満(2度) |
| 35以上40未満 | 肥満(3度)※高度肥満 |
| 40以上 | 肥満(4度)※高度肥満 |
ただし、「肥満」はあくまで体に脂肪が多く溜まっている状態を指すものであり、それ自体が病気というわけではありません。
「肥満症」と診断されるのは、肥満に加えて糖尿病・高血圧・コレステロール異常・睡眠時無呼吸症候群・関節の痛みといった体の不調を伴っている場合、もしくはお腹の内側(内臓のまわり)に脂肪が過剰に溜まっていて、将来的にそうした病気が起きやすい状態と判断される場合です。
日本肥満学会は「肥満症は医学的に減量の治療が必要な疾患」と定義しており、「なんとなく太っている」状態とはまったく別物です。
肥満と肥満症の違い
| 項目 | 肥満 | 肥満症 |
|---|---|---|
| 状態 | 体に脂肪が多く蓄積している | 肥満+健康障害がある、または内臓脂肪が過剰に蓄積している |
| 病気かどうか | 病気ではない | 医学的治療が必要な疾患 |
| 主な判断基準 | BMI 25以上 | BMI 25以上+合併症または内臓脂肪型肥満の確認 |
| 治療の必要性 | 必ずしも必要ではない | 医学的に減量治療が必要 |
さらに、BMIだけでは判断を誤ることがある点にも注意が必要です。
アメリカのCDC(疾病管理予防センター)は、BMIはスクリーニング(ふるいわけ)に役立つ指標ではあるものの、筋肉量が多い人や骨格の大きさによって実際の体脂肪量とずれが出ることがあるとしており、血圧・血液検査・診察などと組み合わせて総合的に評価することが重要だと述べています。
体重計の数字だけを見て「自分は大丈夫」と判断するのは、医学的には不十分と言わざるを得ません。
自己流で進めると、病気のサインを見逃してしまう可能性がある
肥満には大きく2種類あります。
ひとつは食べすぎや運動不足によって起こる「原発性肥満(単純性肥満)」、もうひとつは体の中の病気が原因で太ってしまう「二次性肥満(症候性肥満)」です。
二次性肥満の代表的な原因として、体の中心部に脂肪が集まるホルモン異常「クッシング症候群」や、代謝が落ちて体重が増えやすくなる「甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンの不足)」などがあります。
- クッシング症候群(副腎皮質ホルモンの過剰分泌により、お腹や顔まわりに脂肪がつきやすくなる)
- 甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが不足し、代謝が落ちて太りやすくなる)
- 多嚢胞性卵巣症候群(女性ホルモンのバランスの乱れなどで起こり、肥満と相互に影響し合う病態)
- 成長ホルモン分泌不全(脂肪が分解されにくくなる)
- 薬剤性肥満(ステロイド薬・向精神薬などの副作用による体重増加)
二次性肥満は、体重増加で医療機関を受診する患者の5〜10%程度にみられると言われていますが、外見では単純な肥満との区別がつきにくく、自己流でダイエットを続けても体重がまったく減らないことで初めて疑われるケースもあります。
こうした病気が背景にある場合、根本の原因を治療しない限り体重は減らず、放置すれば病気がさらに進んでしまう可能性があります。
肥満の二次的原因は、体重増加を呈する患者の約5~10%に影響を及ぼし、生活習慣の改善だけでは不十分な、特定の治療介入が必要となる場合があります。
引用:National Center for Biotechnology Information Secondary Causes of Obesity and Comprehensive Diagnostic Evaluation
また、肥満に関連して起こりうる病気も、自己流では見逃されやすい点があります。
肥満は、直接的な原因とは限らないものも含め200以上の病気との関係が報告されており、特に以下のような病気との関係は非常に深いことが知られています。
- 2型糖尿病(血糖値が慢性的に高くなる病気)
- 高血圧
- 脂質異常症(コレステロール・中性脂肪の異常)
- 高尿酸血症・痛風
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群(睡眠中に呼吸が止まる、または浅くなる)
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(お酒を飲まない人に起こる脂肪肝など)
- 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞など)
- 脳梗塞
- 変形性膝関節症などを含む運動器疾患(膝や腰の痛みなど)
- 月経異常・女性不妊
- 肥満関連腎臓病
これらの病気は自覚症状が出にくく、気づかないうちに進んでいることが多いため、血液検査や医師の診察を通じて早めに発見することがとても大切です。
自己流ダイエットや薬の不適切な使用は、体に思わぬ負担をかけることがある
「とにかく食べなければやせる」「話題の薬を一度試してみよう」と考えたことがある方は少なくないかもしれません。
しかし、医師の管理なしに行う極端な食事制限や、自己判断で使う肥満治療薬には、体に深刻な悪影響をもたらす可能性があることが、さまざまな研究によって明らかになっています。
特に危険なのは「短期間で大きく体重を落とすこと」を目標にした方法です。
体重が急に減ると成功したように見えますが、実際には脂肪だけでなく筋肉や体内の水分まで失っていることが多く、体の代謝(エネルギーを使う機能)を低下させてしまいます。
ダイエット後にリバウンドを繰り返してしまう方の多くに、こうした問題が関係していると考えられています。
また近年、インターネットやSNSを通じて肥満治療薬を個人輸入したり、医師の処方なしに入手するケースが増えています。
そうした薬の中には正規品と見た目が変わらない偽造品も出回っており、副作用が出ても適切な対処ができないまま服用を続けることは非常に危険です。
WHOのグローバル監視・モニタリングシステム(GSMS)は、2022年以降、すべての地域でセマグルチド偽造品の報告が増加していることを確認しています。
引用:World Health Organization WHO issues warning on falsified medicines used for diabetes treatment and weight loss
薬の効果ばかりに目が向きがちですが、使用中の体の状態の確認や、他の薬との飲み合わせへの対応は、医師のもとでなければ安全に行うことができません。
このパートでは、自己流ダイエットと、市販薬や処方薬の不適切使用それぞれのリスクについて、具体的にお伝えします。
医師の管理なしの極端な食事制限は筋肉を落とし、かえって太りやすい体になる
「食べなければやせる」という考え方は一見正しそうですが、カロリーを極端に減らすことは、むしろ体に悪い影響を与えることがあります。
エネルギーが大幅に不足すると、体は脂肪だけでなく筋肉もエネルギーとして分解するようになります。
筋肉は何もしていない状態(安静時)でも多くのカロリーを消費する組織であるため、筋肉が減ると体がエネルギーを使う量(基礎代謝)が下がり、同じ食事量でも太りやすい体になってしまいます。
また、急激に体重を落とすと体が「食べ物が手に入らない非常事態だ」と判断し、エネルギーをできるだけ節約しようとする働き(代謝適応)が起きることが、複数の研究で報告されています。
体脂肪が少なく、カロリー摂取量が少ないことは、エネルギーが利用できないことを示しており、エネルギーを節約し、エネルギー摂取を促進する恒常性内分泌反応を裏付けています。
引用:National Center for Biotechnology Information Metabolic Consequences of Weight Reduction
これによって、ダイエットが終わって普通の食事量に戻した際に体重が元に戻る「リバウンド」の一因になることがあります。
アメリカの肥満啓発団体「Obesity Action Coalition」の資料によると、1日800kcal以下という非常に低いカロリーの食事を医師の管理なしに続けた場合、筋肉や骨を含む「脂肪以外の体重」が25%以上失われるケースもあるとされています(※すべての人に一律に当てはまるわけではありません)。
研究によって明らかになっている主なリスクをまとめると、以下の通りです。
- 筋肉量の低下による基礎代謝の減少(やせにくく・太りやすい体になる)
- 代謝適応が起こり、リバウンドの一因になる可能性
- 除脂肪体重(筋肉・骨など)が大きく(ケースによっては25%以上)失われる可能性
- 急激な体重減少による胆石(胆のうにできる石)形成リスクの上昇
- ミネラル不足(鉄・亜鉛・カリウム・マグネシウムなど)による抜け毛・強い疲労感・不整脈
こうしたリスクが重なるため、極端な食事制限は医師の指導なしには行うべきではないと考えられています。
肥満症の薬を自己判断で使うと、副作用や効果不足のリスクがある
近年、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれる種類の肥満治療薬(セマグルチドなど)が注目を集めています。
これは食欲を抑えたり血糖値をコントロールしたりする効果が報告されている薬ですが、SNSや個人輸入サイトなどを通じて、医師の指導なしに使う方が増えているという報告があります。
しかし、こうした使い方には複数の重大なリスクが伴います。
アメリカのNIDDK(国立糖尿病・消化器・腎臓疾患研究所)は、肥満治療薬は重い副作用が出ることもあるため、使用前に必ず医師へ既往歴(これまでかかった病気)や他の薬との飲み合わせを確認する必要があると明示しています。
GLP-1受容体作動薬については、甲状腺(のどにあるホルモンを作る器官)への影響についての注意情報があります。
また、FDA(アメリカ食品医薬品局)の2026年時点の評価では、うつ症状や自殺念慮のリスク増加は確認されていませんが、気分の変化があれば医師へ相談するよう促されています。
- 適切な量がわからず過剰に使用してしまう危険性
- 偽造品・粗悪品を手にするリスク(正規品と見た目で区別がつかない場合がある)
- 副作用(吐き気・嘔吐・下痢・めまい・強い倦怠感・気分の落ち込みなど)が出ても対処できない
- 他に飲んでいる薬との飲み合わせの問題を見逃す
- 突然やめた際のリバウンドや食欲が戻ってしまう可能性
肥満治療薬はその効果が認められている一方で、「誰に・どの量を・どのようなサポートとセットで」使うかを医師が判断することが、安全な使用の前提になっています。
安全に体重を落とすには、食事・運動・医療の組み合わせが基本
肥満症の治療は、食事を減らしたり運動を増やしたりするだけではありません。
現在の医学的なガイドラインでは、食事の見直し・体を動かすこと・生活習慣の改善、この3つを組み合わせることが基本とされており、状況に応じて薬の使用も加わります。
最も大切な考え方は「できるだけ早くやせること」ではなく、「体に無理をかけず、長く続けられる方法で体重を管理すること」です。
急いで体重を落とす方法は一時的に数字を下げることはできても、筋肉の減少や代謝の低下を招き、長い目で見ると健康を損なうリスクがあることは前のパートでお伝えした通りです。
一方で、医学的に推奨されているゆっくりとしたペースで取り組めば、体への負担を抑えながら血圧・血糖値・血中脂質といった体の中の数値を改善できる可能性があります。
また、肥満症の治療では「なぜ太っているのか」という原因を明らかにすることがとても重要です。
食べすぎや運動不足が原因なのか、ストレスや睡眠不足が関係しているのか、それともホルモンの異常など病気が背景にあるのかによって、適切なアプローチはまったく変わってきます。
自己流では見えにくいこうした原因を把握したうえで、その人に合った計画を立てることが、医療機関での治療の大きな強みです。
このパートでは、安全な体重の落とし方の考え方と、クリニックで受けられるサポートについて解説します。
急激なダイエットより「緩やかに減らす」ほうが体への負担が少ない
NIH(アメリカ国立衛生研究所)やNHLBI(アメリカ国立心肺血液研究所)のガイドラインによると、体に負担が少なく効果的とされる体重の減り方のペースは「1週間で約0.5〜1kg」程度とされています。
これは、1日あたりの摂取カロリーを消費カロリーより約300〜1,000kcal少なくする(適切なマイナス幅は体格によります)ことで達成できる水準です。
このペースを守ることで、筋肉量を大幅に落としたり、代謝を下げたりするリスクを抑えながら体重を管理できると考えられています。
急激なダイエットと緩やかな減量の比較
| 項目 | 急激なダイエット | 医学的に推奨されるペース |
|---|---|---|
| 体重の減り方 | 週1kgを超えるペース(とくに週2〜3kg以上) | 週約0.5〜1kg程度 |
| 筋肉への影響 | 大きく落ちやすい | 比較的維持しやすい |
| 代謝への影響 | 低下しやすい | 維持しやすい |
| リバウンドのリスク | 高い | 低め |
| 栄養不足のリスク | 高い | 低め |
目標とする減量ペースについては、米国ガイドラインでは6カ月間で現在の体重の約10%、日本肥満学会では肥満症で3%、高度肥満症で5〜10%の減量を目指すとされています。
また65歳以上の方については、目標とするBMIがやや高めに設定されています。
減らしすぎによる転倒や骨折、フレイル(心身の衰え)やサルコペニア(筋肉の減少)のリスクのほか、持病を含めた個別判断が必要になるためです。
食事については、特定の食品を極端に制限するのではなく、必要なエネルギー量の範囲内で、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂ることが大切です。
運動については、以下のように2種類を組み合わせることが理想的です。
- 有酸素運動(ウォーキング・水泳・自転車こぎなど):血糖値・中性脂肪の改善、心肺機能の向上、糖尿病予防に効果的とされている
- 筋力トレーニング(スクワット・腕立て伏せなど):減量中の筋肉量の維持に効果的とされている
クリニックに相談すると、原因に合わせた治療プランが組んでもらえる
クリニックで肥満症の治療に取り組む最大のメリットは、「その人の体の状態や原因に合わせた個別のプランが立てられること」です。
体重が増えている原因が食べすぎや運動不足なのか、ストレスや睡眠の問題なのか、あるいはホルモン異常などの病気なのかによって、取るべき対策はまったく異なります。
血液検査や、必要に応じたホルモン検査やお腹のCT検査(体の断面を画像で見る検査)などを通じて、内臓脂肪がどれくらい溜まっているかを正確に把握したうえで、治療の方向性を決めることができます。
- 問診・身体測定(BMI・ウエスト周囲長の確認)
- 血液検査(血糖値・コレステロール・肝機能など。必要に応じてホルモン値も)
- 必要に応じて腹部CT検査(内臓脂肪量の確認)
- 食事・運動・行動療法の指導
- 効果が不十分な場合は薬物療法の検討
NIDDK(アメリカ国立糖尿病・消化器・腎臓疾患研究所)は、効果的な体重管理プログラムでは6カ月間に14回以上、医療の専門家と面談を重ねているケースが多いとしており、継続的なサポートの重要性を強調しています。
自己流では「続けるモチベーションが保てない」という悩みを抱えやすいですが、定期的に医師や専門スタッフに相談できる環境があることで、適切なペースで無理なく取り組みやすくなります。
食事や運動だけでは十分な効果が出ない場合は、医師の判断のもとで薬を使う選択肢も検討されます。
薬を使う場合は、どの患者さんに適しているかを見極めたうえで処方され、定期的な体の状態の確認とセットで進められます。
体重が適切に管理されることで血圧や血糖値が下がるケースも多く、生活習慣病の予防・改善という点からも、専門家に相談することには大きな意義があります。
こんな症状や状態があれば、迷わず医療機関に相談を
肥満に悩んでいる方で、以下に当てはまるものがある場合は、自己流の対処を続けるのではなく、できるだけ早めに医療機関を受診することをお勧めします。
体の不調があらわれている方:
- 健康診断で血圧・血糖値・コレステロール値の異常を指摘された
- 夜間にいびきがひどく、日中も強い眠気がある(睡眠時無呼吸症候群の可能性)
- 膝や腰の痛みが続いている(原因は多様だが肥満関連の可能性も)
ダイエットがうまくいかない方:
- 数カ月取り組んでも体重がまったく変わらない
- 食事量や運動量は変えていないのに急に体重が増えてきた
別の病気が隠れている可能性がある方:
数値の基準に当てはまる方:
- BMIが25以上でいずれかの体の不調を伴っている
- ウエスト周囲長が男性85cm以上・女性90cm以上(内臓脂肪が多い状態の目安)
自覚症状がない場合でも、内科的なリスクが蓄積していることがあります。
「これくらいなら大丈夫」と判断せず、まずは一度受診してみることをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
- 自分で「肥満症」かどうかを判断することはできますか?
-
BMIやウエスト周囲長はひとつの目安になりますが、正式な診断には血液検査や医師による評価が必要です。
BMIが25以上でも肥満症に当たらないケースもあれば、BMIが25以上で見た目や体重の数字が極端に高くなくても、お腹の内側に脂肪が多い場合は肥満症と診断されるケースもあります。
気になる方はまず医師に相談されることをお勧めします。
- ダイエットサプリや市販・要指導の肥満関連薬は使ってもいいですか?
-
成分や品質の管理が十分でない製品も多く、医薬品として認可されているものでも医師の指示なしに使うことにはリスクが伴います。
他の薬との飲み合わせによる悪影響や、肝臓・心臓に関わる副作用が報告されている製品もあるため、使用を考えている場合は事前に医師や薬剤師に相談されることをお勧めします。
- 「食事制限+運動」を自己流でやっていますが、それでも医師に相談したほうがいいですか?
-
取り組み自体はとても大切なことですが、方法が体に合っているかどうかを確認する意味でも、一度受診する価値があります。
特に何らかの病気がある方、数カ月続けても体重が変わらない方、体調に変化を感じている方は、早めに相談することで安全かつ効果的な方針が立てられる可能性があります。
まとめ
肥満症は「ただ太っている」状態とは異なり、医師による診断と治療が必要な疾患です。
自己流のダイエットは、筋肉の減少や代謝の低下、リバウンドといった問題を引き起こす可能性があります。
また、サプリメントや薬の自己判断での使用も、予期せぬ成分の混入や飲み合わせによる副作用などのリスクを伴います。
また、肥満の背景に甲状腺の異常やホルモン疾患などが隠れているケースもあるため、自己判断だけで対処し続けることにはリスクが伴います。
安全に体重を管理するためには、食事・運動・医療を組み合わせることが基本です。
多くの成人の一般的な目安として、1週間に0.5〜1kg程度のゆっくりとしたペースで、体に負担をかけずに取り組むことが、長期的な健康につながります(年齢や持病、肥満の程度により適切なペースは異なります)。
「もしかして肥満症かもしれない」と感じている方や、ダイエットを続けても効果が出ない方は、ぜひ一度かかりつけ医や専門クリニックへの相談をご検討ください。
World Health Organization Obesity and overweight
J-STAGE Definition, criteria, and core concepts of guidelines for the management of obesity disease in Japan
一般社団法人 日本肥満学会(JASSO) あなたの肥満、治療が必要な「肥満症」かも!?
Centers for Disease Control and Prevention About Body Mass Index (BMI)
National Center for Biotechnology Information Secondary Causes of Obesity and Comprehensive Diagnostic Evaluation
European Association for the Study of Obesity Obesity health complications
Obesity Action Coalition The Risks of the Crash Diet
National Center for Biotechnology Information Metabolic Consequences of Weight Reduction
National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Prescription Medications to Treat Overweight & Obesity
World Health Organization WHO issues warning on falsified medicines used for diabetes treatment and weight loss
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 医療用医薬品 詳細表示(ウゴービ皮下注)
U.S. Food and Drug Administration FDA Requests Removal of Suicidal Behavior and Ideation Warning from Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonist (GLP-1 RA) Medications
National Center for Biotechnology Information Summary of Evidence-Based Recommendations – Clinical Guidelines on the Identification, Evaluation, and Treatment of Overweight and Obesity in Adults
Centers for Disease Control and Prevention Steps for Losing Weight
NIH News in Health Healthy Weight Control
National Center for Biotechnology Information Treatment Guidelines – Clinical Guidelines on the Identification, Evaluation, and Treatment of Overweight and Obesity in Adults
MedlinePlus Diet for rapid weight loss: MedlinePlus Medical Encyclopedia
J-STAGE 肥満症診療ガイドライン 2022 の要旨と概説
Centers for Disease Control and Prevention Benefits of Physical Activity
PubMed Central Preserving Healthy Muscle during Weight Loss
National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Choosing a Safe & Successful Weight-loss Program
National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Treatment for Overweight & Obesity
厚生労働省 健康づくりサポートネット(e-ヘルスネット) 睡眠時無呼吸症候群 / SAS
National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Cushing’s Syndrome
National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases Hypothyroidism (Underactive Thyroid)
厚生労働省 腹囲(ウエスト周囲長)に関する エビデンス
食品安全委員会 健康食品について

