高血圧とは

高血圧とは、安静にしている状態で繰り返し測っても正常値より血圧が高い状態を指します。現代の成人日本人の3人に1人が高血圧と言われており、身近な病気でもある高血圧ですが、詳しくはどういう状態を指すのでしょうか。

そもそも、血圧とは心臓の働きによって送り出された血液が血管壁に与える圧力のことをいいます。心臓が縮んで動脈に血液を送り出す時を「収縮期血圧」、心臓が拡張して動脈が元に戻ろうとする時の圧力が「拡張期血圧」です。

「収縮期血圧値が140mmHg以上、または拡張期血圧値が90mmHg以上」となると高血圧と診断されます。

分類 診察室血圧 家庭血圧
  収縮期血圧 拡張期血圧 収縮期血圧 拡張期血圧
正常血圧 <120 かつ <80 <115 かつ <75
正常高値血圧 120-129 かつ <80 115-124 かつ <75
高値血圧 130-139 かつ/または 80-89 125-134 かつ/または 75-84
I度高血圧 140-159 かつ/または 90-199 135-144 かつ/または 85-89
II度高血圧 160-179 かつ/または 100-109 145-159 かつ/または 90-99
III度高血圧 ≧180 かつ/または ≧110 ≧160 かつ/または ≧100
(孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ <90 ≧135 かつ <85

血圧が上がるのは、血管壁にかかる圧力が高くなることが要因です。ですが、初期の高血圧は自覚症状を感じない場合も多く、健康診断などで高血圧を指摘されても放置してしまう人も少なくありません。しかし、長い期間高血圧の状態が続くと血管や心臓などに負担がかかり、重大な病気のリスクが高まります。
高血圧を指摘されたら「症状がないからいいや」と放置せず、早めに医療機関を受診し、診察や検査を受けることが大切です。

高血圧症を放っておくと

では、高血圧を放っておくとどうなるのでしょうか?
塩分のとりすぎなどにより、血管を流れる血液量が増加すると心拍出量(心臓から送り出される血液の量)が増え、それだけ血管壁にかかる圧力が大きくなります。
高血圧の影響はまず、血管壁が弱く細い血管に現れます。具体的には、脳や眼(網膜)、腎臓などです。

高血圧の状態が続くと、全身の血管にも大きな負担がかかります。そのため動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞といった命にかかわる疾患を引き起こす危険があります。心肥大や心不全につながるケースもあり、気づかないうちに重篤な病気が進行することから「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」とも呼ばれます。

高血圧の治療をするうえで定期に必要な検査について

高血圧には自覚症状がほとんどありませんが、高血圧を長い間放置していると、動脈の血管の柔軟性が失われる動脈硬化が起こります。高血圧の治療をする方は、現時点で合併症がどれだけ進行してしまっているか、また治療によってしっかりと合併症の進行を抑えることができているかを定期的に検査して確認することが非常に大切です。

以下に、高血圧の治療を継続していくうえで定期的に必要となる検査について、それぞれご説明します。

ABI

高血圧によって血管がどれだけ傷んでいるか、「動脈硬化」の状態を把握するための検査です。ABI検査では、両手と両足の血圧を同時に測定します。正常では足首の血圧の方が上腕の血圧より高いのですが、動脈硬化が進むと足首の血圧が上腕の血圧よりも低くなります。つまり、上腕や両足という比較的太い血管がどれだけ詰まっているかを血圧によって推定する検査です。

頸動脈エコー検査

頸動脈エコーでは、超音波を用いて首筋を走る頸動脈の中を画像としてみることができます。頸動脈は動脈の中でも太い血管であるにもかかわらず、体表から浅いところをにあるので観察がしやすく、また動脈硬化が発生しやすい部位でもあります。頸動脈を観察して大きな異常が確認された場合、全身の動脈でも同じような異常があるのではないかと推定できます。

動脈硬化も症状がなく徐々に進行していくため、少なくとも1~2年に一度、定期的にその進行の程度を確認することが大切です。特に高血圧だけでなく、糖尿病、脂質異常症も一緒に合併している場合は更に動脈硬化は進行しますので、1年に一度することをお勧めします。

高血圧の治療

高血圧の治療は、まず生活習慣を見直すことから始めます。そうしないと治療効果が上がらないばかりか、高血圧以外の生活習慣病や合併症が進行してしまうからです。高血圧治療の目的はあくまで合併症を防ぐことで、血圧を下げるのはその手段に過ぎません。

高血圧と診断後は降圧目標を設定し、適切な治療を行っていきます。治療法は高血圧の程度や合併症の有無によって変わります。主な治療法は生活習慣の改善と薬物療法です。睡眠時無呼吸症候群が原因の方はそちらの治療が優先されます。

高血圧が軽症~中等症の人は、まず生活改善から行います。生活改善を一定期間行っても血圧が下がらない場合は薬物療法を開始します。一方、重症高血圧や合併症が進行している人はすぐに薬物療法と生活改善を開始します。

生活習慣の改善について

生活習慣の改善にはいくつかのポイントがあります。
まず、毎日の食事を見直すことです。食生活が変わることで血圧が正常値に戻ることも少なくありません。塩分量を控えることが重要です。1日1gの減塩で収縮期血圧が約1㎜Hg低下することが報告されています。

また、多量のアルコールは慢性的に血圧を上げてしまいます。そのため1日の適量を守り、休肝日を設けることが理想です。喫煙習慣のある人は禁煙が必要不可欠です。喫煙は血管を収縮させ、血管壁を傷つけて動脈硬化の進行を早めるため、合併症の危険がより高くなってしまいます。

睡眠の質が悪い人は原因を検索し、治療することで、降圧が期待されます。睡眠時無呼吸症候群で、治療後に減薬ができる方をよく経験します。

減塩のポイント

  • 香味野菜や薬味、だし汁、減塩の醤油を使う。調味料は少なめに
  • 麺類のスープは飲まない
  • 漬物や汁物は少なめに。汁物は具沢山にして汁の量を減らし、塩分量を抑える
  • 料理全体に味をつけるのではなく、料理の表面に味付けを(例えば魚料理は、煮付けるよりも焼き魚か付けしょうゆで)
  • 新鮮な食材を使って料理する。インスタントや加工食品を控える。
減塩を勧めるイラスト

生活習慣を改善するうえで運動もはずせません。
運動は、血管を広げて血行をよくし血圧を下げます。また、心肺機能や筋力が鍛えられて普段から血液循環がよくなります。それによって血管が柔軟になり、血圧も正常化するのです。

また、減量やストレス解消にもよく、高血圧の治療には欠かせません。
高血圧の予防・改善には酸素を取り込みながら行う「有酸素運動」が適しています。ウォーキングやサイクリング、水泳などです。急激な運動は血管に負担をかけるため、軽く息がはずみ、少し汗ばむ程度の運動が理想です。少しずつ始めましょう。

運動の注意ポイント

  • 高血圧治療中の人は医師に相談してから始める
  • 体調が悪いときは無理せず休む
  • 運動中に頭痛やめまい、冷や汗や胸痛、手足のしびれなどがあればすぐに運動を中止する
  • 運動前・運動中には水分補給をしっかり行い、脱水を予防する
水分補給中のイラスト

最後に

自分の血圧をコントロールしていくためには、家庭で毎日血圧を測る習慣を身につけることが大切です。
家庭で血圧を測る場合は朝と夜の計2回測定をしましょう。毎日できるだけ同じ時間、同じ環境で測るようにすると、血圧の本当の状態がよくわかります。また、家庭での血圧値を手帳などに記録しておくと、病院での診察や治療に役立ちます。