高尿酸血症とは

細胞の核に存在する核酸の主成分であるプリン体。プリン体は、細胞の代謝・増殖などに利用され生命活動に必要な物質です。そのため、細胞を持つ動物、植物ともに摂取すると必ず体内に入ってくるプリン体ですが、実は、体の中のプリン体の約80%は体内で生成されると言われています。そのプリン体が肝臓で代謝されて最終産物となったものが尿酸で、尿や便として身体の外に排泄されていきます。

血液中の尿酸の濃度を示した血清尿酸値が⒎0mg/dLを超えると、高尿酸血症と診断されます。

尿酸値が高いだけでは、自覚症状はありません。しかし、その状態が継続、増悪していくと、尿酸が結晶となりさまざまな臓器で炎症を起こすようになります。

これらは、男性に圧倒的に多いといわれます。女性は女性ホルモンによって尿酸値がコントロールされているため、男性に比べ少ないのです。閉経後には女性ホルモンが減少するため、高尿酸血症の方は増加すると言われています。

高尿酸血症を放置すると、尿酸が関節や腎臓などで結晶のかたまりとなって炎症を起こし、痛風発作、尿管結石・膀胱結石などの尿路結石、さらには腎障害も引き起こします。足の親指の付け根が急に歩けないほど痛く腫れるのは痛風発作の代表的症状です。また高尿酸血症の人はたいてい、メタボリックシンドロームに該当し、動脈硬化が進行しやすい状態にあり、より注意が必要です。

高尿酸血症の代表的な合併症

高い血清尿酸値の状態が続くと、尿酸が結晶化し、関節に沈着し、急性関節炎を引き起こします。これが痛風発作です。そのほか、結晶の沈着する場所により、下記のようなさまざまな症状を起こすこともあります。

痛風発作

ある日突然、足の親指などの関節が腫れて激痛におそわれるのが痛風発作です。発作は過食や飲酒、脱水、尿酸値を下げる薬物療法の開始時など尿酸値が変動するときに起きやすくなります。激しい痛みは1週間ほどで落ち着きますが、それまでは鎮痛薬なしでは苦痛です。

痛風結節

痛風発作を治療せずに放置しておくと、手足の関節、耳の軟骨、腱、皮下などに尿酸の塊が沈着し、こぶのように腫れてきます。これを痛風結節といいます。通常、痛みはありませんが、炎症を起こし痛みを伴うことがあります。また、痛風結石は最終的に関節が変形することもあります。痛風結節のある方は、ない方に比べて、高血圧や心血管疾患、脳血管疾患が有意に多いと言われています。

痛風腎

尿酸結晶が腎臓内に沈着し、間質性腎炎と呼ばれる炎症を起こします。結果として腎臓の機能が低下し、さらに悪化すると腎不全に陥ることもあります。透析導入患者さんの1%ほどとも言われていますが、蛋白尿等の症状は出にくく、診断が遅れることにつながります。そのため、高尿酸血症の方は常に腎機能に注意する必要があります。

尿路結石

尿の中の尿酸等が結晶化して小さな石のようになります。結石のできる場所で、尿管結石、膀胱結石とも呼ばれます。尿路系に留まっているうちは痛みはありませんが、尿路で詰まると痛みで転がりまわるなどの激痛が起こります(水腎症)。一生涯のうちに100人中4人が一度は尿路結石になると言われてるほどですが、あまり重要視されてないことが多いです。

高尿酸血症の方の中には、糖尿病脂質異常症高血圧症肥満などの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD),メタボリックシンドロームを合併している方が多くいます。末期腎不全の発症率と尿酸値の上昇には因果関係があり、たかが痛風、尿酸値が高いだけ、と自己判断せずに受診して今の状態を評価してもらいましょう。

高尿酸血症の原因

原因としては尿酸値の過剰な産生、プリン体の過剰摂取、尿酸排泄の低下の3つの機序が考えられます。

尿酸の過剰産生

がんになっている方は尿酸を多量に産生する傾向があります。がんは通常よりも細胞増殖活動が活発になるからです。(細胞増殖の亢進)

肥満も過剰産生の原因と考えられています。溶血性貧血、激しい運動(無酸素運動)などの細胞破壊の亢進でも尿酸は過剰産生されます。

その他、抗がん剤などの薬剤性や尿酸を過剰に産生する遺伝性の病気もありますが、多くはありません。

プリン体の多い食品の取り過ぎ

レバー、干し椎茸、煮干しなどのプリン体の多い食品や飲酒習慣には注意です。ビールは特にプリン体を含むお酒として有名ですが、アルコール自体が内因性プリン体分解の亢進と尿酸排泄を低下させるため尿酸値は上昇します。プリン体ゼロのものを飲んでも尿酸値は上昇する可能性があり、アルコールの種類には関係く、尿酸値の高い方は控えたほうがbetterです。

尿酸の排泄低下

もっとも多い原因であると報告されています。遺伝的な要素もありますが、乳酸が過剰に存在すると尿酸排泄が障害を受けるとも言われています。利尿剤などの薬剤性、アルコール摂取、水分不足、激しい運動(無酸素運動)などがあります。

原因は一つの機序だけでなく、オーバーラップするものもあるため、上記の状態に当てはまる数が多い人ほど発症しやすくなり要注意です。大きな合併症を引き起こす可能性のある高尿酸血症ですので、小さなできる努力からはじめることで、予防が可能です。

高尿酸血症の治療

高尿酸血症の治療はまず、痛風の症状を防ぎ、合併症である腎障害や尿路結石を発症、悪化させないことを目標とします。
また、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などの生活習慣病が高率に合併することが知られていて、このような合併症が虚血性心疾患や脳血管障害の発症率を高くしているのではないかと言われています。これらの点を踏まえて、合併症のある方は、血清尿酸値を⒍0mg/dL以下にコントロールすることが望ましいとされています。

治療の基本は、生活習慣の改善です。日常生活の見直しが必須ですし、これなくして、薬剤だけで尿酸値をさげる薬をつかうのはいかがなものかと思います。
薬剤としては、尿酸が産生されにくくする薬や体外への排泄を促す薬を病態により、使用することになります。また、降圧薬のいくつかは、尿酸値を下げる効果のあるものがあり、高血圧のある少し尿酸値の高い人には有効な治療薬になります。(AEC阻害薬、カルシウム拮抗薬、ロサルタンなど)

高尿酸血症の治療指針

治療指針のフローチャート

生活習慣の改善について

生活習慣の改善として、肥満を解消するような食生活、飲酒制限、運動の3つを心がけましょう。

食生活

1日の摂取エネルギーを抑えて肥満を解消するだけで尿酸値は下がります。プリン体を多く含む食品の取り過ぎに注意しましょう。また、体内の酸性、アルカリ性は食事に関係なく調節されていますが、尿中は食事のとり方により多少変化します。尿をアルカリ性にする食品を積極的に摂り、たくさんの尿で尿酸を排泄しましょう。そのため、水やお茶(カフェインなし)もしっかり飲みましょう。しかし、果糖入りの清涼飲料水は尿酸値を上昇させるので控えましょう。

高尿酸血症の人は 肉や魚に片寄った食事をしている人が多いのも特徴です。以下のような食事に気を付け、適度にバランスの良い食事を心掛けることが必要です。バランスの良い食事は、他の合併症となる動脈硬化や腎臓病の予防のためにも必要です。

プリン体が多い食品(取りすぎに気を付けましょう)

干し椎茸、イワシ干物、鰹節、煮干し、あん肝、鶏レバー、モツ、白子、牛肉ヒレ、ロース、えび、かにみそなど、主に動物性食品に多く含まれています。

尿をアルカリにする食品(意識して取りたい食品)
野菜、海藻、イモ類、キノコ類、果物

飲酒制限

アルコールは肝臓での尿酸産生を増加させ、アルコールが体内で分解される時に作られるアセトアルデヒドは腎臓からの尿酸排泄を阻害します。またアルコールの飲みすぎは、エネルギー過剰につながり肥満の原因になります。

尿酸値への影響を最低限に保つ目安は1日にビールなら500ml、日本酒なら1合、ワインなら180ml、焼酎なら100ml、ウイスキーなら60mlまでにしましょう。ただし、この量なら大丈夫というわけではありません。それぞれの許容もありますので、ご相談ください。

運動

激しい無酸素運動は控え、ウォーキングなど話しながらでもできるような有酸素運動で肥満やストレスを解消しましょう。激しい運動はかえって尿酸値の上昇につながります。高血圧、糖尿病、脂質異常症などの改善にもつながりますので、程よい運動はとても有用です。